(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】被覆材付き配管部材用サドル
(51)【国際特許分類】
F16L 3/12 20060101AFI20240625BHJP
F16L 3/123 20060101ALI20240625BHJP
F16L 3/127 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
F16L3/12 B
F16L3/123
F16L3/127
(21)【出願番号】P 2020172989
(22)【出願日】2020-10-14
【審査請求日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2019190089
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000128968
【氏名又は名称】株式会社オンダ製作所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 大介
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-027194(JP,A)
【文献】特開2006-336411(JP,A)
【文献】実開昭58-089679(JP,U)
【文献】米国特許第03848839(US,A)
【文献】実開昭53-082653(JP,U)
【文献】特開平06-191548(JP,A)
【文献】実開昭61-077619(JP,U)
【文献】特開昭48-084312(JP,A)
【文献】特開2015-068486(JP,A)
【文献】特開2006-207603(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0181453(US,A1)
【文献】特開2014-202377(JP,A)
【文献】特開2017-089750(JP,A)
【文献】特開2019-142263(JP,A)
【文献】特開2019-163850(JP,A)
【文献】特開2013-245696(JP,A)
【文献】特開平09-196238(JP,A)
【文献】中国実用新案第210600466(CN,U)
【文献】特開2019-207012(JP,A)
【文献】特開2020-193634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/00-3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工面に取り付けられる
とともに被覆材付き配管部材を挿通させるための開口が長手方向の中央部分に切り欠かれて形成された略長方形板状のベースと、前記ベースに立設されて
前記被覆材付き配管部材の外周を保持可能な保持環と
が一体成形されたサドルであって、
前記保持環は、前記保持環の端縁が前記ベースよりも前記保持環の軸線方向の外側に延出された延出部を有して
おり、
前記延出部の前記軸線方向における延出長さが、前記ベース側たる基端部側ほど小さい、
被覆材付き配管部材用サドル。
【請求項2】
前記保持環の前記基端部には、前記ベースが、前記軸線方向と直交する方向の両側に向かってそれぞれ突出するようにして連結されている、
請求項1に記載の被覆材付き配管部材用サドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆材付き配管部材用サドルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、配管部材をスラブに固定するために用いられる配管部材用サドル(以下、サドル)が開示されている。このサドルは、平面視略長方形板状の取付けベースと、取付けベースの上面に連設され、配管部材を抱持可能な抱持空間を有する抱持部とを備えている。
【0003】
取付けベースの長手方向の両端部には、取付けベースをその板厚方向に貫通する孔が形成されている。取付けベースの長手方向における中央部分には、幅方向の全域に亘って切り欠かれた開口が形成されている。抱持部には、取付けベースの幅方向に沿って延びる貫通孔が形成されている。この貫通孔が上記抱持空間とされている。
【0004】
配管部材の施工に際しては、取付けベースの開口が広がるように抱持部を変形させるとともに、同開口を通じて抱持空間内に配管部材を挿通させる。そして、ねじを取付けベースの各孔に挿通するとともにスラブに固定することで、サドルを介して配管部材がスラブに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ヘッダなどの配管部材の施工に際して、配管部材の外周を発泡ウレタンなどの保温材で被覆する場合がある。この場合、例えば
図14に示すように、ヘッダ40は、ヘッダ40の軸線を中心に相対回動可能に連結された複数のヘッダピース41により構成されている。こうしたヘッダ40では、各ヘッダピース41を覆う複数の保温材50がヘッダ40の軸線方向において互いに隣り合って配置される。ここで、従来のサドル110によって保温材50付きのヘッダ40を抱持すると、以下の不都合が生じるおそれがある。すなわち、サドル110は、ヘッダピース41の分岐部42と干渉しないように保温材50同士の境界51を跨いで配置される。ここで、抱持部130の軸線方向における幅が小さいと、
図15に示すように、抱持部130が保温材50同士の間に入り込むことで保温材50が位置ずれするおそれがある。その結果、ヘッダ40の外周の一部が保温材50で被覆されなくなることで保温性や見栄えが損なわれるおそれがある。
【0007】
なお、こうした問題は、保温材付き配管部材用サドルに限らず、遮光材などの他の被覆材付き配管部材用サドルにおいても同様にして生じる。
本発明の目的は、被覆材の位置ずれを抑制できる被覆材付き配管部材用サドルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための被覆材付き配管部材用サドルは、施工面に取り付けられるベースと、前記ベースに立設されて被覆材付き配管部材の外周を保持可能な保持環とを備える。前記保持環は、前記保持環の端縁が前記ベースよりも前記保持環の軸線方向の外側に延出された延出部を有している。
【0009】
同構成によれば、保持環と被覆材との接触面積が延出部の分だけ大きくなるため、被覆材が保持環から受ける圧力が分散される。また、例えば被覆材同士の境界を跨いでサドルを配置する場合、被覆材同士の間に保持環が入り込もうとすることが延出部によって規制される。さらに、ベースの軸線方向の幅は保持環に比べて小さいため、配管部材に対してサドルを取り付ける際に、ベースが配管部材の邪魔になりにくい。したがって、被覆材の位置ずれを抑制できる。
【0010】
上記被覆材付き配管部材用サドルにおいて、前記延出部の前記軸線方向における延出長さが、前記ベース側ほど小さいことが好ましい。
例えば複数のヘッダピースを有するヘッダのように配管部材の軸線方向に直交する方向に向かって突出する複数の分岐部を有する被覆材付き配管部材においては、配管部材に対してサドルを組み付ける際に、分岐部同士の間の制限されたスペースにベース及び保持環の基端部を挿通させる必要がある。
【0011】
この点、上記構成によれば、延出部によって保持環の軸線方向における長さを大きくしつつも、分岐部同士の間の制限されたスペースに対してベース及び保持環の基端部を容易に挿通させることができる。
【0012】
上記被覆材付き配管部材用サドルにおいて、前記延出部は、前記保持環における前記軸線方向の両側にそれぞれ形成されていることが好ましい。
同構成によれば、保持環と被覆材との接触面積が更に大きくなるため、被覆材が保持環から受ける圧力が更に分散される。また、例えば被覆材同士の境界を跨いでサドルを配置する場合、被覆材同士の間に保持環が入り込もうとすることが一層規制される。したがって、被覆材の位置ずれを一層抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被覆材の位置ずれを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】被覆材付き配管部材用サドルの一実施形態を示す斜視図。
【
図6】同実施形態のサドルが組み付けられた保温材付きヘッダを示す斜視図。
【
図7】同実施形態のサドルが組み付けられた保温材付きヘッダを示す平面図。
【
図8】被覆材付き配管部材用サドルの別の実施形態を示す斜視図。
【
図13】同実施形態のサドルが組み付けられた保温材付きヘッダ及び一の実施形態のサドルが組み付けられた保温材付きヘッダを示す側面図。
【
図14】従来のサドルが組み付けられた保温材付きヘッダを示す平面図。
【
図15】
図14に対応する図であって、保温材が位置ずれしている状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1~
図7を参照して、一実施形態について説明する。なお、本実施形態では、給水・給湯用の配管に用いられる保温材付き回転ヘッダを施工面に取り付けるためのサドルとして本発明を具体化している。なお、保温材付き回転ヘッダが本発明に係る被覆材付き配管部材に相当する。
【0016】
図1~
図5に示すように、サドル10は、施工面に取り付けられる略長方形板状のベース20と、ベース20の上面に立設されて保温材付き回転ヘッダ(以下、ヘッダ40)の外周を保持可能な保持環30とを備えている。サドル10は、硬質樹脂材料により一体成形されている。
【0017】
ベース20は、保持環30の軸線方向(以下、軸線方向A)に直交する方向に沿って延在している。
ベース20の延在方向(以下、延在方向L)の両端部21には、ベース20をその板厚方向Tに貫通する孔22が形成されている。
【0018】
ベース20における延在方向Lの中央部分には、その幅方向、すなわち軸線方向Aの全体にわたって切り欠かれた開口23が形成されている。
図3に示すように、保持環30は、ベース20に連結された一対の基端部31を有している。各基端部31の幅、すなわち軸線方向Aの長さは、ベース20の幅と同一である。保持環30は、各基端部31同士の間において保持環30の端縁32がベース20よりも保持環30の軸線方向Aの外側に延出された延出部33を有している。本実施形態では、延出部33は、保持環30における軸線方向Aの両側にそれぞれ形成されている。
【0019】
図3~
図5に示すように、保持環30のうち延出部33が設けられている部分の軸線方向Aにおける長さは、ベース20側ほど小さい。すなわち、保持環30の軸線方向Aにおける長さは、ベース20から最も離れている頂部34において最大となる。
【0020】
次に、ヘッダ40及び保温材50について説明する。
図6及び
図7に示すように、ヘッダ40は、ヘッダ40の軸線方向Aを中心に相対回動可能に連結された複数(本実施形態では3つ)のヘッダピース41を備えている。各ヘッダピース41は、軸線方向Aに直交する方向に沿って延びる分岐部42を有している。
【0021】
また、ヘッダ40には、各ヘッダピース41の外周を覆う複数(本実施形態では3つ)の保温材50が軸線方向Aにおいて互いに隣り合って配置される。保温材50は、例えば略円筒状をなしており、発泡ウレタンなどにより形成された本体部と、本体部の外周を被覆する被覆部とを有している。互いに隣り合う保温材50同士の境界51は、互いに隣り合うヘッダピース41の分岐部42同士の間に位置する。
【0022】
サドル10は、互いに隣り合う分岐部42同士の間のスペースに配置される。すなわち、サドル10は、互いに隣り合う保温材50同士の境界51を跨いでヘッダ40及び保温材50に取り付けられる。
【0023】
ヘッダ40の施工に際しては、ベース20の両端部21を互いに離間させるようにして保持環30を弾性変形させることでベース20の開口23を広げる。そして、開口23を通じて保持環30の内部にヘッダ40を挿通させる。このとき、サドル10のベース20と保持環30の基端部31とが互いに隣り合う分岐部42同士の間のスペースに挿通される。このようにしてヘッダ40及び保温材50に対してサドル10が組み付けられると、保持環30の弾性復元力によって保温材50が押圧されることで保温材50を介してヘッダ40が保持される。そして、ねじ(図示略)をベース20の各孔22に挿通するとともに施工面に固定することで、サドル10を介してヘッダ40が施工面に固定される。
【0024】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
(1)保持環30は、保持環30の端縁32がベース20よりも保持環30の軸線方向Aの外側に延出された延出部33を有している。
【0025】
こうした構成によれば、保持環30と保温材50との接触面積が延出部33の分だけ大きくなるため、保温材50が保持環30から受ける圧力が分散される。また、例えば保温材50同士の境界51を跨いでサドル10を配置する場合、保温材50同士の間に保持環30が入り込もうとすることが延出部33によって規制される。さらに、ベース20の軸線方向Aの幅は保持環30に比べて小さいため、ヘッダ40に対してサドル10を取り付ける際に、ベース20がヘッダ40の邪魔になりにくい。したがって、保温材50の位置ずれを抑制できる。
【0026】
(2)延出部33の軸線方向Aにおける延出長さが、ベース20側ほど小さい。
こうした構成によれば、延出部33によって保持環30の軸線方向Aにおける長さを大きくしつつも、分岐部42同士の間の制限されたスペースに対してベース20及び保持環30の基端部31を容易に挿通させることができる。
【0027】
(3)延出部33は、保持環30における軸線方向Aの両側にそれぞれ形成されている。
こうした構成によれば、保持環30と保温材50との接触面積が更に大きくなるため、保温材50が保持環30から受ける圧力が更に分散される。また、例えば保温材50同士の境界51を跨いでサドル10を配置する場合、保温材50同士の間に保持環30が入り込もうとすることが一層規制される。したがって、保温材50の位置ずれを一層抑制できる。
【0028】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0029】
図8~
図12に示す別の実施形態のサドル10(Long)は、
図1~
図7に示す実施形態のサドル10と比較して、保持環30の基端部31が上下方向に長くつまり保持環30の高さが高く設定されている。この場合、
図13に示すように、複数(本実施形態においては2つ)のヘッダ40を隣接して配置する際において、低い方のサドル10と高い方のサドル10(Long)とを併用した場合、低い方のサドル10が取り付けられたヘッダ40に接続されるパイプPの高さが、高い方のサドル10(Long)が取り付けられたヘッダ40の最下部よりも低くなるように、両方のサドル10,10(Long)の保持環30の高さを設定する。このようにすれば、低い方のサドル10が取り付けられたヘッダ40に接続されるパイプPが、高い方のサドル(Long)が取り付けられたヘッダ40の下を、曲折することなく真っすぐに通過でき、これらサドル10,10(Long)の組みによる配管施工性が良好となる。
【0030】
なお、
図13に示すように、両方のサドル10,10(Long)において保持環30の高さは、高い方のサドル10(Long)が取り付けられたヘッダ40の最下部が、低い方のサドル10が取り付けられたヘッダ40の最上部よりも低くなるように設定すると、これらサドル10,10(Long)の組み、ひいてはこれらが取り付けられた複数のヘッダ40を高さ方向においてコンパクトに配置でき、例えば高さ方向のスペースが限られた床下等の配管に好適となる。
【0031】
この場合、
図13に示すように、高い方のサドル10(Long)が取り付けられたヘッダ40に接続されるパイプPが、低い方のサドル10が取り付けられたヘッダ40の最上部よりも高くなるように、両方のサドル10,10(Long)の保持環30の高さを設定すると、例えば高い方のサドル10(Long)が取り付けられたヘッダ40に接続されるパイプPが
図13とは逆で紙面裏方向に向かって延びるような当該ヘッダ40の配置では、当該パイプPは、低い方のサドル10が取り付けられたヘッダ40の上を、曲折することなく真っすぐに通過でき、これらサドル10,10(Long)の組みの配管施工性がさらに良好となる。
【0032】
・上記実施形態では、被覆材の一例として保温材50について例示したが、被覆材は保温材50に限定されず、例えば保温機能を有していない遮光材などの他の被覆材を用いてもよい。
【0033】
・本発明に係るサドル10は、配管部材の一例として、相対回動可能に連結された複数のヘッダピース41を備える回転ヘッダ40について例示したが、配管部材は回転ヘッダ40に限定されず、複数の分岐部の突出方向を変更不能なヘッダに対して本発明を適用することもできる。また、配管部材は分岐部を有するヘッダに限定されず、分岐部を有していない配管部材に対して本発明に係るサドル10を適用することもできる。
【0034】
・保持環30は、保温材50をほぼ全周に亘って囲繞するものに限定されず、半割りの環状であってもよい。
・ベース20は、延在方向Lの中央部分に開口23が形成された、所謂両サドルに限定されず、片サドルであってもよい。
【0035】
・延出部33は、保持環30における軸線方向Aの片側のみに設けられていてもよい。
・延出部33の軸線方向Aにおける延出長さが保持環30の周方向において一定であってもよい。
【0036】
・延出部の形状は、上記実施形態及び上記変更例において例示したものに限定されない。要するに、保持環の端縁がベースよりも保持環の軸線方向の外側に延出されているものであればよい。
【0037】
・サドルは、硬質樹脂材料によって形成されるものに限定されず、例えば金属製であってもよい。
・本発明に係るサドルは、給水・給湯用の配管部材を施工面に固定するものに限定されず、被覆材付きの配管部材であれば、オイルなどの水以外の流体用の被覆付き配管部材に対して適用することもできる。
【0038】
上記実施形態から把握できる技術的思想について記載する。
(1)施工面に取り付けられるベースと、前記ベースに立設されて配管部材の外周を保持可能な保持環とを備えるサドルであって、前記ベースに対する前記保持環の高さが異なる複数の前記サドルからなる組において、低い方の前記サドルが取り付けられた前記配管部材に接続されるパイプの高さが、高い方の前記サドルが取り付けられた前記配管部材の最下部よりも低くなるように、複数の前記サドルの前記保持環の高さが設定されているサドルの組み。
【0039】
(2)複数の前記サドルの前記保持環の高さは、高い方の前記サドルが取り付けられる配管部材の最下部が、低い方の前記サドルが取り付けられる配管部材の最上部よりも低くなるように設定されている技術的思想(1)に記載のサドルの組み。
【0040】
(3)高い方の前記サドルが取り付けられる前記配管部材に接続されるパイプが、低い方の前記サドルが取り付けられる前記配管部材の最上部よりも高くなるように、複数の前記サドルの前記保持環の高さが設定されている技術的思想(2)に記載のサドルの組み。
【符号の説明】
【0041】
10,110…サドル、20…ベース、21…端部、22…孔、23…開口、30…保持環、31…基端部、32…端縁、33…延出部、34…頂部、40…ヘッダ、41…ヘッダピース、42…分岐部、50…保温材、51…境界、130…抱持部。