(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】容量絶縁型電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M3/28 Q
(21)【出願番号】P 2020175864
(22)【出願日】2020-10-20
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】平井 和斗
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健一
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-123258(JP,A)
【文献】特開2016-115515(JP,A)
【文献】特開平09-074741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子を有し、当該スイッチング素子が所定のスイッチング周波数でON/OFFすることにより入力電力を交流電力に変換する1次側回路と、
前記1次側回路に接続された第1接続線及び第2接続線と、
前記第1接続線上に設けられた第1コンデンサと、
前記第2接続線上に設けられた第2コンデンサと、
前記両接続線によって前記両コンデンサを介して前記1次側回路に接続され、前記両接続線から入力される交流電力を直流電力に変換する2次側回路と、
前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサよりも前記2次側回路寄りに設けられ、前記第1接続線と前記第2接続線とを接続する第3接続線と、
前記第3接続線上に設けられた励磁インダクタと、
前記第1接続線上又は前記第2接続線上に設けられた共振インダクタと、
前記両コンデンサ、前記共振インダクタ及び前記励磁インダクタを含む共振回路と、
前記スイッチング素子を制御する制御部と、
を備え、
前記共振インダクタは、前記励磁インダクタよりも前記1次側回路寄りに設けられており、
前記共振回路は、前記両コンデンサのキャパシタンス及び前記両インダクタのインダクタンスに基づく第1共振周波数と、前記両コンデンサのキャパシタンス及び前記共振インダクタのインダクタンスに基づく周波数であって前記第1共振周波数よりも高い第2共振周波数とを有し、
前記制御部は、
前記スイッチング周波
数を制御することにより、前記2次側回路から出力される直流電力の電圧である出力電圧を制御し、
昇圧動作を行う場合には、前記スイッチング周波数を前記第1共振周波数から前記第2共振周波数までの範囲内で制御する一方、
降圧動作を行う場合には、前記スイッチング周波数を前記第2共振周波数よりも高くすることを特徴とする容量絶縁型電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量絶縁型電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トランスを用いて1次側回路と2次側回路との間で電力伝送を行う絶縁型の電力変換装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に示すような絶縁型の電力変換装置では、トランスを介して1次側回路と2次側回路との間で電力伝送が行われる。これにより、何らかの異常が発生した場合であっても、1次側回路及び2次側回路間で直流電力が伝送される事態が生じにくいため、安全性の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記のようにトランスを用いる場合、トランスの体格及び重量に起因して電力変換装置の大型化及び重量化が懸念される。
これに対して、例えば、トランスではなくコンデンサを用いて、1次側回路と2次側回路との間で電力伝送を行う容量絶縁型電力変換装置が考えられる。しかしながら、コンデンサを用いる場合、2次側回路から出力される電圧である出力電圧を制御しにくいといった課題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、その目的は出力電圧を制御できる容量絶縁型電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する容量絶縁型電力変換装置は、スイッチング素子を有し、当該スイッチング素子が所定のスイッチング周波数でON/OFFすることにより入力電力を交流電力に変換する1次側回路と、前記1次側回路に接続された第1接続線及び第2接続線と、前記第1接続線上に設けられた第1コンデンサと、前記第2接続線上に設けられた第2コンデンサと、前記両接続線によって前記両コンデンサを介して前記1次側回路に接続され、前記両接続線から入力される交流電力を直流電力に変換する2次側回路と、前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサよりも前記2次側回路寄りに設けられ、前記第1接続線と前記第2接続線とを接続する第3接続線と、前記第3接続線上に設けられた励磁インダクタと、前記スイッチング素子を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記スイッチング周波数、前記スイッチング素子のデューティ比、又は前記1次側回路の交流電力の位相を制御することにより、前記2次側回路から出力される直流電力の電圧である出力電圧を制御することを特徴とする。
【0007】
かかる構成によれば、スイッチング素子がスイッチング周波数でON/OFFすることにより、入力電力を直流電力に変換する電力変換が行われる。
この場合、1次側回路と2次側回路との間に両コンデンサが介在しているため、両者が絶縁されている。これにより、何らかの要因によって異常が発生した場合であっても、直流電力が1次側回路と2次側回路との間を伝送することを抑制できるため、安全性の向上を図ることができる。
【0008】
特に、本構成によれば、トランスではなく、両コンデンサによって絶縁が実現されている。一般的に、両コンデンサは、トランスと比較して、軽量及び小型になり易い。これにより、トランスを用いる構成と比較して、軽量化及び小型化を図ることができる。
【0009】
また、本構成によれば、スイッチング周波数、デューティ比又は位相に応じて、入力電力の電圧に対する出力電圧の比率である変換比が変わる。この特性に着目し、本構成の制御部は、スイッチング周波数、デューティ比又は位相を制御することにより、出力電圧を制御する。これにより、両コンデンサを用いて絶縁する構成において、出力電圧を制御することができる。
【0010】
上記容量絶縁型電力変換装置について、前記第1接続線上又は前記第2接続線上に設けられた共振インダクタと、前記両コンデンサ、前記共振インダクタ及び前記励磁インダクタを含む共振回路と、を備えているとよい。
【0011】
かかる構成によれば、スイッチング素子のターンオンをゼロ電圧スイッチングとすることができるため、損失の低減及びサージの抑制を図ることができる。
上記電力変換装置について、前記共振インダクタは、前記励磁インダクタよりも前記1次側回路寄りに設けられているとよい。
【0012】
かかる構成によれば、励磁インダクタを流れる電流は共振インダクタにも流れる。これにより、共振インダクタも、スイッチング素子のスイッチング動作に伴い励磁するインダクタンス成分として機能するため、励磁インダクタのインダクタンスを下げることができる。したがって、励磁インダクタの小型化などを図ることができる。
【0013】
上記容量絶縁型電力変換装置について、前記共振回路は、前記両コンデンサのキャパシタンス及び前記両インダクタのインダクタンスに基づく第1共振周波数と、前記両コンデンサのキャパシタンス及び前記共振インダクタのインダクタンスに基づく周波数であって前記第1共振周波数よりも高い第2共振周波数とを有し、前記制御部は、昇圧動作を行う場合には、前記スイッチング周波数を前記第1共振周波数から前記第2共振周波数までの範囲内で制御する一方、降圧動作を行う場合には、前記スイッチング周波数を前記第2共振周波数よりも高くするとよい。
【0014】
かかる構成によれば、スイッチング周波数を制御することにより、昇圧と降圧との双方を行うことができる。
上記容量絶縁型電力変換装置について、前記共振インダクタは、前記励磁インダクタよりも前記2次側回路寄りに設けられているとよい。
【0015】
かかる構成によれば、励磁インダクタを流れる電流が共振インダクタに流れることを抑制できるため、共振インダクタによって生じる損失を低減できる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、容量絶縁型電力変換装置において出力電圧を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】容量絶縁型電力変換装置の一例を示す回路図。
【
図2】スイッチング周波数と変換比との関係を示すグラフ。
【
図3】別例の容量絶縁型電力変換装置を示す回路図。
【
図4】別例の容量絶縁型電力変換装置を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、容量絶縁型電力変換装置の一実施形態について説明する。なお、以下の記載は、容量絶縁型電力変換装置の一例を示すものであり、容量絶縁型電力変換装置が本実施形態の内容に限定されるものではない。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の容量絶縁型電力変換装置10は、例えば蓄電装置101と負荷102とに接続される。詳細には、容量絶縁型電力変換装置10は、入力端11,12及び出力端21,22を備えている。入力端11,12は、蓄電装置101に接続され、出力端21,22は、負荷102に接続される。
【0020】
容量絶縁型電力変換装置10は、蓄電装置101から入力端11,12に入力される放電電圧Vbの直流電力を、所望の電圧の直流電力に変換して出力端21,22を介して負荷102に向けて出力するDC/DCコンバータ装置である。本実施形態では、放電電圧Vbの直流電力が「入力電力」に対応する。
【0021】
容量絶縁型電力変換装置10は、1次側回路30と、2次側回路40と、第1接続線LN1及び第2接続線LN2と、第3接続線LN3と、共振回路50と、を備えている。
1次側回路30は、スイッチング素子Q1~Q4を有し、当該スイッチング素子Q1~Q4が所定のスイッチング周波数fでON/OFFすることにより入力電力を交流電力に変換するものである。
【0022】
例えば、1次側回路30は、第1中間線30aによって互いに直列に接続された第1上アームスイッチング素子Q1及び第1下アームスイッチング素子Q2と、第2中間線30bによって互いに直列に接続された第2上アームスイッチング素子Q3及び第2下アームスイッチング素子Q4と、を有している。
【0023】
1次側回路30は入力端11,12に接続されている。詳細には、両上アームスイッチング素子Q1,Q3は、第1入力端11に接続されており、両下アームスイッチング素子Q2,Q4は、第2入力端12に接続されている。入力電力としての放電電圧Vbの直流電力は、1次側回路30に入力される。
【0024】
2次側回路40は、両接続線LN1,LN2から入力される交流電力を直流電力に変換(換言すれば整流)するものである。2次側回路40は、出力端21,22に接続されており、2次側回路40によって変換された直流電力は出力端21,22から出力される。
【0025】
2次側回路40は、例えばダイオードブリッジを有している。詳細には、2次側回路40は、第3中間線40aによって互いに順方向に接続された第1上アームダイオードD1及び第1下アームダイオードD2と、第4中間線40bによって互いに順方向に接続された第2上アームダイオードD3及び第2下アームダイオードD4と、を有している。また、2次側回路40は、ダイオードブリッジから出力される直流電力を平滑化する平滑コンデンサ41を有している。
【0026】
両接続線LN1,LN2は、1次側回路30と2次側回路40とを接続するものである。換言すれば、両接続線LN1,LN2は、1次側回路30に接続されており、2次側回路40は、両接続線LN1,LN2によって1次側回路30に接続されている。詳細には、第1接続線LN1は、第1中間線30aと第3中間線40aとを接続しており、第2接続線LN2は、第2中間線30bと第4中間線40bとを接続している。
【0027】
共振回路50は、第1接続線LN1上に設けられた第1コンデンサC1と、第2接続線LN2上に設けられた第2コンデンサC2と、を有している。1次側回路30と2次側回路40とは、両コンデンサC1,C2を介して接続されている。
【0028】
両コンデンサC1,C2のキャパシタンスは例えば同一である。ただし、これに限られず、両コンデンサC1,C2のキャパシタンスは異なっていてもよい。
第3接続線LN3は、両コンデンサC1,C2よりも2次側回路40寄りに設けられており、両接続線LN1,LN2を接続している。詳細には、第3接続線LN3は、第1接続線LN1における第1コンデンサC1と2次側回路40とを接続している部分と、第2接続線LN2における第2コンデンサC2と2次側回路40とを接続している部分と、を接続している。
【0029】
本実施形態の共振回路50は、励磁インダクタL1と、共振インダクタL2と、を備えている。
励磁インダクタL1は、第3接続線LN3上に設けられている。励磁インダクタL1は、例えば専用のコイルで構成されていてもよいし、第3接続線LN3に含まれる寄生インダクタンスによって構成されていてもよい。励磁インダクタL1のインダクタンスは、例えば共振インダクタL2のインダクタンスよりも高い。なお、説明の便宜上、以降の説明において励磁インダクタL1を流れる電流を励磁電流ともいう。
【0030】
共振インダクタL2は、例えば第1接続線LN1上に設けられている。共振インダクタL2は、例えば専用のコイルで構成されていてもよいし、第1接続線LN1に含まれる寄生インダクタンスによって構成されていてもよい。
【0031】
本実施形態では、共振インダクタL2は、励磁インダクタL1よりも1次側回路30寄りに設けられている。詳細には、共振インダクタL2は、第1接続線LN1上において、第1コンデンサC1と、第3接続線LN3との接続点との間に設けられている。このため、励磁電流は共振インダクタL2にも流れる。したがって、共振インダクタL2においても逆起電力が発生する。すなわち、本実施形態では、両インダクタL1,L2が、スイッチング素子Q1~Q4のスイッチング動作に伴い励磁するインダクタンス成分として機能する。
【0032】
本実施形態の共振回路50は、両コンデンサC1,C2と両インダクタL1,L2とによって構成されている。1次側回路30と2次側回路40とは、共振回路50を介して接続されているといえる。
【0033】
かかる構成によれば、両コンデンサC1,C2によって、1次側回路30と2次側回路40とが絶縁されている。詳細には、両コンデンサC1,C2によって、1次側回路30と2次側回路40との間での直流電力の伝送が遮断(換言すれば規制)されている。一方、両コンデンサC1,C2を介した交流電力の伝送は可能となっている。
【0034】
すなわち、本実施形態において容量絶縁型とは、両コンデンサC1,C2によって1次側回路30及び2次側回路40間の直流電力の伝送が遮断されている形式を意味しており、1次側回路30及び2次側回路40間の交流電力の伝送は許容されている。
【0035】
ここで、本実施形態の共振回路50は、2種類の共振周波数fm1,fm2を有している。第1共振周波数fm1は、両コンデンサC1,C2のキャパシタンスと両インダクタL1,L2のインダクタンスによって決まる共振周波数である。第2共振周波数fm2は、両コンデンサC1,C2のキャパシタンスと共振インダクタL2のインダクタンスによって決まる共振周波数である。第2共振周波数fm2は、第1共振周波数fm1よりも高い。
【0036】
図1に示すように、容量絶縁型電力変換装置10は、1次側回路30の各スイッチング素子Q1~Q4を制御する制御部としての制御回路60を備えている。
制御回路60は、例えば各スイッチング素子Q1~Q4を制御するための制御処理を実行するプログラムや必要な情報が記憶されたメモリと、上記プログラムに基づいて制御処理を実行するCPUとを有する構成でもよい。
【0037】
ただし、これに限られず、制御回路60は、例えば専用ハードウェア回路を有する構成でもよいし、1又は複数の専用ハードウェア回路とソフトウェア処理を実行するCPUとの組み合わせでもよい。換言すれば、制御回路60の具体的な構成は任意であり、例えば1つ以上の専用のハードウェア回路、及び、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサの少なくとも一方によって実現されていればよい。
【0038】
制御回路60は、各スイッチング素子Q1~Q4を所定のスイッチングパターンでON/OFFさせる。
例えば、第1上アームスイッチング素子Q1及び第2下アームスイッチング素子Q4がON状態であり、且つ、第1下アームスイッチング素子Q2及び第2上アームスイッチング素子Q3がOFF状態であるスイッチングパターンを第1パターンとする。そして、第1上アームスイッチング素子Q1及び第2下アームスイッチング素子Q4がOFF状態であり、且つ、第1下アームスイッチング素子Q2及び第2上アームスイッチング素子Q3がON状態であるスイッチングパターンを第2パターンとする。制御回路60は、スイッチング周波数fでスイッチングパターンを第1パターンと第2パターンとに交互に切り替える。これにより、放電電圧Vbの直流電力が交流電力に変換される。
【0039】
ここで、本実施形態の制御回路60は、スイッチング周波数fを制御することにより、2次側回路40(換言すれば出力端21,22)から出力される直流電力の電圧(以下、「出力電圧Vout」という。)を制御する。この点について
図2を用いて以下に詳細に説明する。
図2は、スイッチング周波数fに対する変換比Rを模式的に示すグラフである。変換比Rとは、放電電圧Vbに対する出力電圧Voutの比率である。
【0040】
図2に示すように、本実施形態の容量絶縁型電力変換装置10においては、変換比Rはスイッチング周波数fに応じて変動する。詳細には、スイッチング周波数fが第1共振周波数fm1である場合に変換比Rが最大となる。変換比Rの最大値は「1」よりも大きい。そして、スイッチング周波数fが第1共振周波数fm1よりも大きくなるに従って変換比Rは小さくなり、スイッチング周波数fが第2共振周波数fm2となるとき、変換比Rは「1」となる。スイッチング周波数fが第2共振周波数fm2よりも高くなると、変換比Rは、「1」よりも小さくなる。
【0041】
すなわち、スイッチング周波数fが第1共振周波数fm1から第2共振周波数fm2までの範囲内(fm1≦f≦fm2)であれば、変換比Rは「1」以上となるため、出力電圧Voutは放電電圧Vb以上となる。つまり、スイッチング周波数fが第1共振周波数fm1から第2共振周波数fm2までの範囲内である場合、容量絶縁型電力変換装置10において昇圧動作が行われる。
【0042】
また、fm1≦f≦fm2である条件下では、各スイッチング素子Q1~Q4は、電圧が0Vとなっている状態でスイッチングを行うことが可能である。すなわち、fm1≦f≦fm2である条件下での各スイッチング素子Q1~Q4のターンオンは、ゼロ電圧スイッチング(ZVS)である。換言すれば、fm1≦f≦fm2である条件下でのスイッチング素子Q1~Q4のターンオン時のスイッチング方式は、ソフトスイッチング方式となっている。
【0043】
ちなみに、fm1≦f≦fm2である条件下では、2次側回路40の各ダイオードD1~D4の動作は、ゼロ電流スイッチング(ZCS)となっている。これにより、リカバリー電流が発生しにくいため、順方向電圧の低いダイオードを用いることができる。したがって、損失の低減を図ることができる。
【0044】
一方、スイッチング周波数fが第2共振周波数fm2よりも大きい場合(f>fm2)、変換比Rは「1」未満となるため、出力電圧Voutは放電電圧Vbよりも低くなる。すなわち、スイッチング周波数fが第2共振周波数fm2よりも高い場合、容量絶縁型電力変換装置10において降圧動作が行われる。
【0045】
制御回路60は、例えば、放電電圧Vbと上記周波数特性とに基づいて、所望の出力電圧Voutが出力されるようにスイッチング周波数fを制御する。詳細には、制御回路60は、放電電圧Vbと出力電圧Voutの目標値とに基づいて、目標となる変換比Rを導出し、当該変換比Rが得られるスイッチング周波数fで各スイッチング素子Q1~Q4を制御する。
【0046】
例えば、制御回路60は、昇圧動作を行う場合には、スイッチング周波数fを第1共振周波数fm1から第2共振周波数fm2までの範囲内で制御する一方、降圧動作を行う場合には、スイッチング周波数fを第2共振周波数fm2よりも高くする。
【0047】
次に本実施形態の作用について説明する。
各スイッチング素子Q1~Q4がスイッチング周波数fでON/OFFすることにより電力変換が行われる。本実施形態では、1次側回路30によって放電電圧Vbの直流電力が交流電力に変換され、1次側回路30、両コンデンサC1,C2及び励磁インダクタL1によって電圧変換が行われる。そして、電圧変換された交流電力が2次側回路40によって整流される。この場合、スイッチング周波数fを変更することにより変換比Rが変更され、出力電圧Voutが変更される。
【0048】
以上詳述した本実施形態によれば以下の効果を奏する。
(1)容量絶縁型電力変換装置10は、1次側回路30と、1次側回路30に接続された第1接続線LN1及び第2接続線LN2と、第1コンデンサC1と、第2コンデンサC2と、第3接続線LN3と、励磁インダクタL1と、2次側回路40と、制御部としての制御回路60と、を備えている。
【0049】
1次側回路30は、スイッチング素子Q1~Q4を有し、当該スイッチング素子Q1~Q4が所定のスイッチング周波数fでON/OFFすることにより、入力電力としての放電電圧Vbの直流電力を交流電力に変換する。コンデンサC1,C2は接続線LN1,LN2上に設けられている。第3接続線LN3は、両コンデンサC1,C2よりも2次側回路40寄りに設けられており、第1接続線LN1及び第2接続線LN2を接続している。励磁インダクタL1は、第3接続線LN3上に設けられている。2次側回路40は、両接続線LN1,LN2によって両コンデンサC1,C2を介して1次側回路30に接続されており、両接続線LN1,LN2から入力される交流電力を直流電力に変換する。制御回路60は、スイッチング素子Q1~Q4を制御するものであり、スイッチング周波数fを制御することにより、2次側回路40から出力される直流電力の電圧である出力電圧Voutを制御する。
【0050】
かかる構成によれば、スイッチング素子Q1~Q4がスイッチング周波数fでON/OFFすることにより、容量絶縁型電力変換装置10にて入力電力を直流電力に変換する電力変換が行われる。
【0051】
この場合、1次側回路30と2次側回路40との間に両コンデンサC1,C2が介在しているため、両者が絶縁されている。これにより、何らかの要因によって異常が発生した場合であっても、直流電力が1次側回路30と2次側回路40との間を伝送することを抑制できるため、安全性の向上を図ることができる。
【0052】
特に、本実施形態では、トランスではなく、両コンデンサC1,C2によって絶縁が実現されている。一般的に、両コンデンサC1,C2は、トランスと比較して、軽量及び小型であるとともに安価である。これにより、トランスを用いる構成と比較して、軽量化、小型化及びコストの低減を図ることができる。
【0053】
また、上記両コンデンサC1,C2及び励磁インダクタL1を有する容量絶縁型電力変換装置10では、スイッチング周波数fに応じて、入力電力の電圧(本実施形態では放電電圧Vb)に対する出力電圧Voutの比率である変換比Rが変わる。この特性に着目し、本実施形態の制御回路60は、スイッチング周波数fを制御することにより、出力電圧Voutを制御する。これにより、両コンデンサC1,C2を用いて絶縁する構成において、出力電圧Voutを制御することができる。
【0054】
(2)容量絶縁型電力変換装置10は、第1接続線LN1上又は第2接続線LN2上(本実施形態では第1接続線LN1上)に設けられた共振インダクタL2と、両コンデンサC1,C2及び両インダクタL1,L2を含む共振回路50と、を備えている。
【0055】
かかる構成によれば、各スイッチング素子Q1~Q4のターンオンをZVSとすることができるため、損失の低減及びサージの抑制を図ることができる。
(3)共振インダクタL2は、励磁インダクタL1よりも1次側回路30寄りに設けられている。
【0056】
かかる構成によれば、励磁インダクタL1を流れる電流である励磁電流は共振インダクタL2にも流れる。これにより、共振インダクタL2も、スイッチング素子Q1~Q4のスイッチング動作に伴い励磁するインダクタンス成分として機能するため、励磁インダクタL1のインダクタンスを下げることができる。したがって、励磁インダクタL1の小型化などを図ることができる。
【0057】
(4)共振回路50は2種類の共振周波数fm1,fm2を有する。第1共振周波数fm1は、両コンデンサC1,C2のキャパシタンスと両インダクタL1,L2のインダクタンスに基づく共振周波数である。第2共振周波数fm2は、両コンデンサC1,C2のキャパシタンスと共振インダクタL2のインダクタンスに基づく共振周波数である。第2共振周波数fm2は、第1共振周波数fm1よりも高い。
【0058】
かかる構成において、制御回路60は、昇圧動作を行う場合には、スイッチング周波数fを第1共振周波数fm1から第2共振周波数fm2までの範囲内に制御する一方、降圧動作を行う場合には、スイッチング周波数fを第2共振周波数fm2よりも高くする。
【0059】
かかる構成によれば、スイッチング周波数fを制御することにより、昇圧と降圧との双方を行うことができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。また、技術的に矛盾が生じない範囲内で上記実施形態と各別例とを組み合わせてもよい。
【0060】
○
図3に示すように、共振インダクタL2は、励磁インダクタL1よりも2次側回路40寄りに設けられていてもよい。例えば、共振インダクタL2は、第1接続線LN1における第3接続線LN3との接続点と2次側回路40との間の部分上に設けられていてもよい。この場合、励磁電流が共振インダクタL2に流れることを抑制できるため、共振インダクタL2によって生じる損失を低減できる。
【0061】
○ 共振インダクタL2と第1コンデンサC1とは逆に配置されていてもよい。詳細には、共振インダクタL2が第1コンデンサC1よりも1次側回路30の近くに設けられていてもよい。
【0062】
○ 1次側回路30は、入力電力を交流電力に変換することができればその具体的な回路構成は任意である。
例えば、
図4に示すように、1次側回路30は、互いに直列に接続された直列キャパシタCx、上アームスイッチング素子Qx及び下アームスイッチング素子Qyを有する構成でもよい。直列キャパシタCx及び両アームスイッチング素子Qx,Qyの直列接続体は、入力端11,12に接続されている。
【0063】
この場合、第1接続線LN1は、第1入力端11と直列キャパシタCxとを接続する線と、2次側回路40とを接続している。第2接続線LN2は、両アームスイッチング素子Qx,Qyを接続する線と2次側回路40とを接続している。
【0064】
また、共振回路50の具体的な回路構成は任意である。例えば、容量絶縁型電力変換装置10は、第3接続線LN3とは別に第4接続線LN4を有していてもよい。第4接続線LN4は、例えば共振インダクタL2及び両コンデンサC1,C2よりも1次側回路30寄りに配置されている。詳細には、第4接続線LN4は、第1接続線LN1における1次側回路30と共振インダクタL2とを接続している部分と、第2接続線LN2における1次側回路30と第2コンデンサC2とを接続している部分とを接続している。
【0065】
共振回路50は、第3接続線LN3上に設けられた第1励磁インダクタL1とは別に、第4接続線LN4上に設けられた第2励磁インダクタL3を備えている。つまり、本別例の共振回路50は、両コンデンサC1,C2と各インダクタL1,L2,L3とによって構成されている。
【0066】
かかる構成によれば、両アームスイッチング素子Qx,Qyのデューティ比に応じて、出力電圧Voutが変化する。したがって、制御回路60は、両アームスイッチング素子Qx,Qyのデューティ比を制御することにより出力電圧Voutを制御する。これにより、コンデンサC1,C2を用いて1次側回路30と2次側回路40とを絶縁しつつ、所望の出力電圧Voutを実現することができる。
【0067】
○ 制御回路60は、1次側回路30の位相を制御することにより出力電圧Voutを制御するものでもよい。換言すれば、容量絶縁型電力変換装置10は、位相シフト方式のDC/DCコンバータでもよい。
【0068】
○ 要は、容量絶縁型電力変換装置10は、スイッチング素子を有する1次側回路30、2次側回路40、両接続線LN1,LN2、両コンデンサC1,C2及び励磁インダクタL1を有し、スイッチング周波数f、デューティ比又は位相に応じて出力電圧Voutが変化するように構成されていればよい。そして、制御回路60は、スイッチング周波数f、デューティ比又は位相を制御することにより出力電圧Voutを制御するものであればよい。
【0069】
○ 2次側回路40は、共振回路50から入力される交流電力を直流電力に変換することができればその具体的な回路構成は任意である。例えば、2次側回路40は、ダイオードに代えて、2次側スイッチング素子を有し、当該2次側スイッチング素子がスイッチング周波数fでON/OFFすることにより電力変換を行う構成でもよい。
【0070】
また、2次側回路40は、共振回路50から入力される交流電力を昇圧又は降圧しながら直流電力に変換するものであってもよい。この場合、1次側回路30におけるスイッチング周波数f、スイッチング素子Q1~Q4のデューティ比又は位相と、2次側回路40との双方を制御することにより出力電圧Voutを制御する構成でもよい。つまり、容量絶縁型電力変換装置10は、1次側回路30のみで出力電圧Voutを制御する構成に限られない。
【0071】
○ 共振回路50は、両コンデンサC1,C2及び両インダクタL1,L2以外の素子を含んでもよい。要は、共振回路50は、少なくとも両コンデンサC1,C2及び両インダクタL1,L2を有していればよい。
【0072】
○ 共振インダクタL2は、第2接続線LN2上に設けられていてもよい。また、共振インダクタL2は、第1接続線LN1上と第2接続線LN2上との双方に設けられていてもよい。
【0073】
○ 共振インダクタL2を省略してもよい。この場合であっても、容量絶縁型電力変換装置10において電力変換は可能である。ただし、スイッチング素子Q1~Q4のターンオン時にソフトスイッチング方式を実現することができる点に着目すれば、容量絶縁型電力変換装置10は共振インダクタL2を有している方がよい。
【0074】
○ 容量絶縁型電力変換装置10は、2次側回路40と出力端21,22との間に設けられたDC/DC変換回路又はDC/AC変換回路を別途備えていてもよい。
○ 容量絶縁型電力変換装置10は、DC/DCコンバータであったがこれに限られない。例えば、容量絶縁型電力変換装置10は、入力電力として交流電力が入力されるものであって、当該交流電力を直流電力に変換するAC/DC変換装置でもよい。すなわち、入力電力は、蓄電装置101の電力に限られず、任意であり、例えば交流電力であってもよい。この場合、容量絶縁型電力変換装置10は、入力電力を整流して1次側回路30に出力する整流回路を備えてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10…容量絶縁型電力変換装置、30…1次側回路、40…2次側回路、50…共振回路、60…制御回路、C1…第1コンデンサ、C2…第2コンデンサ、LN1…第1接続線、LN2…第2接続線、LN3…第3接続線、L1,L3…励磁インダクタ、L2…共振インダクタ、Q1~Q4…スイッチング素子、f…スイッチング周波数、fm1…第1共振周波数、fm2…第2共振周波数、Vout…出力電圧。