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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20240625BHJP
   G01P 5/06 20060101ALI20240625BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B66F9/24 S
G01P5/06 H
B66F11/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020190557
(22)【出願日】2020-11-16
(65)【公開番号】P2022079378
(43)【公開日】2022-05-26
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小西 将士
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-42600(JP,A)
【文献】特開2018-199535(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0044149(US,A1)
【文献】特開2011-33266(JP,A)
【文献】特開2017-88351(JP,A)
【文献】国際公開第2016/056132(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/24
G01P 5/06
B66F 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置と、
前記作業装置を移動可能に支持する車両部と、
前記作業装置に設けられた風速測定装置と、を備える作業車両であって、
前記風速測定装置は、
風速計と、
前記風速計を使用位置と前記使用位置より下方の格納位置との間で上下スライド可能に支持する支持部と、を備える、作業車両。
【請求項2】
前記支持部は、前記風速計を前記使用位置と前記格納位置とで固定可能な蝶ボルトを有する、請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記支持部は、
前記風速計から下方へ延びる柱状部材と、
前記柱状部材を上下動可能に挿通し、側面に貫通孔部を有する筒状部材と、を有し、
前記蝶ボルトは、前記貫通孔部に挿通されて前記柱状部材を固定する、請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記風速計は複数の風杯を有する風杯型風速計であり、
前記風速計が前記格納位置にあるときに前記風速計の回転を規制する規制部を備える、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の作業車両。
【請求項5】
前記規制部は、前記風杯の何れか1つを水平方向に挟む位置に配置される一対の挟持部材を有する、請求項4に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風速測定装置を備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から高所作業車等の作業車両には風速測定装置を備えたものがある。例えば、高所作業車のバスケットに風杯型風速計を設けることで、高所での作業性の向上を図っている。高所作業車に風速測定装置を設ける場合、走行中に風速計が測定可能範囲を超えた風速を受けることを防止するため、風速計を格納可能な風速測定装置とする必要がある。例えば、風速計を回動させて横に倒した状態に格納する方式が提案されている。
【0003】
しかしながら、この方式では、ピンを差し込むことにより風速計を固定しているため、ピンが錆びると抜き差しできず、風速計を移動させることができないという問題がある。また、風速計を横に倒した状態において、内部に雨水が浸入しやすく、故障しやすいという問題もある。そのため、高所作業車には、これらの問題が生じない風速測定装置が必要とされている。
【0004】
ところで、特許文献1には、3段伸縮電動ジャッキに風速計を取り付けることで風速計を上下動可能とした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-173423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1は風力発電装置に関する技術であり、作業車両とは技術分野が異なるため、適用することは難しい。例えば、特許文献1の3段伸縮伝動ジャッキを有する風速測定装置を高所作業車のバスケットに設けることは、大型化及び高コスト化するため、現実的ではない。高所作業車のバスケットにおいては、スペースが限られ、荷重も限られている。そのため、高所作業車のバスケットに設けられる風速測定装置には、小型で簡易な構成であることが求められる。
【0007】
本発明は、風速計を使用位置と格納位置との間で移動可能とする風速測定装置を備えた作業車両において、小型で簡易な構成であるとともに、風速計を移動させやすく、雨水が浸入しにくい構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の作業車両は、作業装置と、前記作業装置を移動可能に支持する車両部と、前記作業装置に設けられた風速測定装置と、を備える作業車両であって、前記風速測定装置は、風速計と、前記風速計を使用位置と前記使用位置より下方の格納位置との間で上下スライド可能に支持する支持部と、を備えるものである。
【0009】
上記の構成によれば、支持部が、風速計を使用位置と格納位置との間で上下スライド可能に支持する構成であるため、風速計を使用位置と格納位置との間で移動可能とする構成を小型かつ簡易に実現できるとともに、風速計を移動させやすく、雨水が浸入しにくい風速測定装置を備えた作業車両を実現することができる。風速測定装置が適切に使用されることにより、作業性の向上を図ることができる。
【0010】
上記の作業車両において、前記支持部は、前記風速計を前記使用位置と前記格納位置とで固定可能な蝶ボルトを有する構成とすることができる。
【0011】
上記の構成によれば、蝶ボルトにより支持部を任意の位置で固定することができる。
【0012】
上記の作業車両において、前記支持部は、前記風速計から下方へ延びる柱状部材と、前記柱状部材を上下動可能に挿通し、側面に貫通孔部を有する筒状部材と、を有し、前記蝶ボルトは、前記貫通孔部に挿通されて前記柱状部材を固定する構成とすることができる。
【0013】
上記の構成によれば、支持部を小型かつ簡易に実現できる。
【0014】
また上記の作業車両において、前記風速計は複数の風杯を有する風杯型風速計であり、前記風速計が前記格納位置にあるときに前記風速計の回転を規制する規制部を備えるようにしてもよい。
【0015】
上記の構成によれば、規制部により、風速計が格納位置にあるときに風速計が回転することを防止できる。よって、作業車両の走行中に風速計が測定可能範囲を超えた風速を受けて故障することを抑制できる。
【0016】
また上記の作業車両において、前記規制部は、前記風杯の何れか1つを水平方向に挟む位置に配置される一対の挟持部材を有する構成とすることができる。
【0017】
上記の構成によれば、規制部を小型かつ簡易に実現できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、風速計を使用位置と格納位置との間で移動可能とする風速測定装置を備えた作業車両において、小型で簡易な構成であるとともに、風速計を移動させやすく、雨水が浸入しにくい構成を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態の高所作業車の全体構成を示す側面図である。
図2図1のバスケット周辺の拡大図である。
図3】風速計が使用位置にある状態の風速測定装置の斜視図である。
図4図3の風速測定装置の側面図である。
図5図3の風速測定装置の正面図である。
図6図3の風速測定装置の平面図である。
図7】風速計が格納位置にある状態の風速測定装置の斜視図である。
図8図7の風速測定装置の側面図である。
図9図7の風速測定装置の正面図である。
図10図7の風速測定装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、風速測定装置を備えた高所作業車を例に説明するが、風速測定装置の設置対象は作業車両であれば特に限定はなく、例えばクレーンであってもよい。また、図1に示すように前後、左右及び上下方向を規定し、以下の説明を行う。
【0021】
[高所作業車]
図1に示すように、高所作業車1は、主に車両部2と作業装置3により構成されている。車両部2は、作業装置3を支持し、左右一対の前輪4及び後輪5を備えている。また、車両部2は、高所作業を行う際に接地させて安定を図るアウトリガ6を備えている。
【0022】
作業装置3は、起伏及び旋回可能に構成されたブーム7を備えている。ブーム7の先端には、バスケット8が設けられている。バスケット8は、ブーム7に対してパン・チルト・スイング等の動作が可能となっている。また、バスケット8は、ブーム7に対して、図示しないレベリング機構を介して支持されており、バスケット8の姿勢を水平に保持することができるように構成されている。そしてブーム7は、車両部2によって、所望の作業位置に移動可能に構成されている。
【0023】
図2に示すように、バスケット8には、バスケット8における風速を測定するための風速測定装置9が設けられている。風速測定装置9は、バスケット8の内側におけるブーム7の先端側の左右中央付近に配置され、バスケット8の柵81に取り付けられている。なお、風速測定装置9の位置には特に限定はなく、バスケット8の内側のどの位置であってもよいし、バスケット8の外側周囲に位置していてもよい。
【0024】
[風速測定装置]
図3から図6に示すように、風速測定装置9は、風速計91と、支持部92と、規制部93とを備えている。風速計91は、風杯型風速計であり、本体911と、本体911に回転可能に支持される回転軸部912と、回転軸部912の先端に設けられる3つの風杯913と、風杯913への接触を規制するガード914とを有する。
【0025】
本体911は、下端部に円板部911Aを有している。回転軸部912は、本体911の内部から上方へ突出している。風杯913は、内側が凹部になった半球状の部材である。風杯913の数は複数であれば特に限定はない。ガード914は、風杯913を囲むように十字に配置された4つの環状部材で構成され、本体911に固定されている。なお、ガード914は必須の構成ではない。
【0026】
風速計91は図示しない制御装置に電気的に接続されている。制御装置は風速計91で測定された測定値から風速を算出する。算出した風速は、例えば制御装置においてバスケット8の地上高や作業半径に自動制限を掛ける演算に用いられる。これにより、風速に応じて高所での作業を制限(禁止)することができ、高所での作業性の向上を図ることができる。なお、風速計91の種類は、風杯型風速計に限定されることはなく、例えば風車型風速計などを用いることもできる。
【0027】
支持部92は、風速計91を使用位置(図3に示す位置)と使用位置より下方の格納位置(図7に示す位置)との間で上下スライド可能に支持する部材である。使用位置は、風速計91が風速を測定可能な位置であり、例えば、図4に示すように、風杯913がバスケット8の柵81の上端より高くなる位置である。格納位置は、風速計91が規制部93に規制される位置であり、例えば、図8に示すように、風速計91がバスケット8の柵81の上端より低い位置において、風杯913及びガード914の1つが規制部93により水平方向に挟まれる位置である。
【0028】
このように、風速計91を横に倒した状態で格納せず、風速計91を上下スライドさせて格納するため、風速計91の内部に雨水が浸入しにくい。よって、風速計91の故障を抑制できる。
【0029】
支持部92は、柱状部材921と、取付部材922と、筒状部材923と、蝶ボルト924とを有している。
【0030】
柱状部材921は、風速計91から下方へ延びる円柱状の部材である。柱状部材921は、上端部に円板部921Aを有している。円板部921Aは、本体911の円板部911Aとボルト等で固定される。これにより、風速計91が支持部92に固定される。
【0031】
取付部材922は、バスケット8の柵81にボルト等により固定される板状の部材である。筒状部材923は、取付部材922の前端に一体に設けられた上下方向に延びる円筒状の部材である。筒状部材923は、柱状部材921を上下動可能に挿通する。筒状部材923は、側面(例えば前側面)に円形の貫通孔部923A(図4参照)を有している。貫通孔部923Aの外側には蝶ボルト924を螺合可能なナット923Bが固定されている。
【0032】
蝶ボルト924は、ナット923Bに螺合され、貫通孔部923Aに挿通されている。蝶ボルト924を締めることにより、蝶ボルト924の先端部が柱状部材921の側面を押圧して柱状部材921を固定する。これにより、柱状部材921は上下方向に任意の位置で固定可能となる。よって、柱状部材921に支持される風速計91は、使用位置と格納位置とで固定可能となる。
【0033】
蝶ボルト924を用いることにより、ピンを差し込む方式のようにピンが錆びると抜き差しできなくなるということがなく、蝶ボルト924が多少錆びたとしても回すことができ、風速計91を移動させやすい。なお、柱状部材921を固定する固定部材は、蝶ボルト924に限定されることはなく、例えば、筒状部材923の上端にスリットを設け、筒状部材823のスリット部分の外周にC字型のクランプとクランプを締め付けるレバーとを設けてもよい。
【0034】
規制部93は、図7から図10に示すように、風速計91が格納位置にあるときに風速計91の回転を規制する部材である。規制部93により、風速計91が格納位置にあるときに風速計91が回転することを防止できる。よって、走行中に風速計91が測定可能範囲を超えた風速を受けて故障することを抑制できる。規制部93は、取付部材931と、一対の挟持部材932とを有している。取付部材931は、バスケット8の柵81にボルト等により固定されるとともに、挟持部材932をボルト等により固定する部材であり、L字型の板材を組み合わせて構成される。
【0035】
一対の挟持部材932は、ボルト等により取付部材931に固定され、風杯913の何れか1つ及びガード914の何れか1つを水平方向に挟む位置に配置されるブロック状の部材である。これにより、規制部93を小型かつ簡易に実現できる。
【0036】
挟持部材932同士の対向面932Aは、図10に示すように、平面視で後方から前方へ向かって間隔が拡がるハの字型に配置されている。また、挟持部材932の上部に形成された第1傾斜面932Bは、図9に示すように、背面視で上方から下方へ向かって間隔が狭まる逆ハの字型に配置されている。これにより、風速計91を使用位置から格納位置へ移動させるときに、風杯913及びガード914は第1傾斜面932Bに沿ってスムーズに対向面932A間に案内される。したがって、風速計91を容易に格納位置へ格納することができる。
【0037】
また、挟持部材932の上部に形成された第2傾斜面932Cは、図8に示すように、側面視で上方から下方へ向かって後方から前方へ傾斜している。これにより、風速計91を使用位置から格納位置へ移動させるときに、挟持部材932で挟持されるガード914に隣り合うガード914が第2傾斜面932Cに沿ってスムーズに挟持部材932の前方へ案内される。したがって、ガード914が挟持部材932に引っ掛かることがない。
【0038】
規制部93の材料には特に限定はなく、樹脂や金属を用いることができる。特に、樹脂を用いることにより、金属製の風杯913と衝突した際に風杯913の損傷を抑制することができる。
【0039】
なお、支持部92は、風速計91を使用位置と格納位置との間で上下スライド可能に支持可能であり、蝶ボルト924を有していれば、その形態には特に限定はなく、上記以外の形態であってもよい。
【0040】
このような風速測定装置9によれば、支持部92が、風速計91を使用位置と格納位置との間で上下スライド可能に支持し、蝶ボルト924を有する構成であるため、風速計91を使用位置と格納位置との間で移動可能とする構成を小型かつ簡易に実現できるとともに、風速計を移動させやすく、雨水が浸入しにくい風速測定装置9を実現することができる。風速測定装置9が適切に使用されることにより、高所での作業性の向上を図ることができる。
【0041】
なお、風速測定装置の変形例として、風速計を上下動不可能にし、規制部を上下動可能に構成してもよい。この構成は、例えば、規制部を風速計の回転を規制する上位置と風速計の回転を規制しない下位置との間で上下スライド可能に支持する支持部を備え、支持部が規制部を上位置と下位置とで固定可能な蝶ボルトを有することで実現することができる。
【0042】
また、風速測定装置の付加的な構成として、高所作業車は、風速計が規制部により規制されていることを検出するリミットスイッチ等のセンサと、センサの検出結果から、風速計が規制部により規制されていない場合に運転者に向けてランプ等で警報する警報器とを備えていてもよい。警報器は、例えばブームを格納したときのセンサの検出結果に応じて出力するように構成することができる。これにより、風速計が使用位置にある状態で高所作業車を走行させることを抑制できる。よって、走行中に風速計が測定可能範囲を超えた風速を受けて故障することを抑制できる。
【符号の説明】
【0043】
1 高所作業車(作業車両)
2 車両部
3 作業装置
9 風速測定装置
91 風速計
92 支持部
93 規制部
913 風杯
921 柱状部材
923 筒状部材
923A 貫通孔部
924 蝶ボルト
932 挟持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10