(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04M 3/56 20060101AFI20240625BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20240625BHJP
【FI】
H04M3/56 Z
G06Q10/04
(21)【出願番号】P 2020191039
(22)【出願日】2020-11-17
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】菅田 光留
【審査官】小松崎 里沙
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-148931(JP,A)
【文献】特開2019-090917(JP,A)
【文献】国際公開第2007/139040(WO,A1)
【文献】特開2014-178959(JP,A)
【文献】特開2019-220067(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110767236(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 3/00
3/16- 3/20
3/38- 3/58
7/00- 7/16
11/00-11/10
G06Q10/00-10/10
30/00-30/08
50/00-50/20
50/26-99/00
G10L15/00-17/26
G16Z99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の参加者が参加するコミュニケーションにおける前記複数の参加者それぞれの発話の時系列上の区間である発話区間を判定する発話判定部と、
前記コミュニケーションについて、予め定められた時間長さの基準分析区間の境界を設定し、前記設定された前記基準分析区間の境界が前記複数の参加者の前記発話区間の少なくとも1つに含まれる場合に、当該基準分析区間の境界に最も近い、前記複数の参加者のどの前記発話区間にも属さない時間である無発話時間に対応する時点を、実際に前記コミュニケーションの分析を行うための時間区間である実際分析区間の境界の時点と設定することによって、複数の前記実際分析区間の境界を設定する分析区間決定部と、
を有する情報処理システム。
【請求項2】
前記分析区間決定部は、予め、前記コミュニケーションの開始時点から終了時点まで、前記基準分析区間に対応する間隔で複数の前記基準分析区間の境界を設定し、設定された複数の前記基準分析区間の境界それぞれを用いて、複数の前記実際分析区間の境界の時点が前記無発話時間に対応する時間となるように、複数の前記実際分析区間の境界を設定する、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記分析区間決定部は、
前記基準分析区間の境界を設定し、設定された前記基準分析区間の境界を用いて前記実際分析区間の境界の時点が前記無発話時間に対応する時間となるように前記実際分析区間の境界を設定することを、前記コミュニケーションの開始時点から、順次行う、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記分析区間決定部は、
前記コミュニケーションの開始時点から前記基準分析区間に対応する時間だけ後に前記基準分析区間の境界を設定する第1の工程を実行し、
設定された前記基準分析区間の境界を用いて、前記実際分析区間の境界の時点が前記無発話時間に対応する時間となるように、前記実際分析区間の境界を設定する第2の工程を実行し、
設定された前記実際分析区間の境界の時点から、前記基準分析区間に対応する時間だけ後に前記基準分析区間の境界を設定する第3の工程を実行し、
前記第2の工程と前記第3の工程とを繰り返すことで、複数の前記実際分析区間の境界の時点をそれぞれ設定する、
請求項3に記載の情報処理システム。
【請求項5】
情報処理装置が、
複数の参加者が参加するコミュニケーションにおける前記複数の参加者それぞれの発話の時系列上の区間である発話区間を判定し、
前記コミュニケーションについて、予め定められた時間長さの基準分析区間の境界を設定し、前記設定された前記基準分析区間の境界が前記複数の参加者の前記発話区間の少なくとも1つに含まれる場合に、当該基準分析区間の境界に最も近い、前記複数の参加者のどの前記発話区間にも属さない時間である無発話時間に対応する時点を、実際に前記コミュニケーションの分析を行うための時間区間である実際分析区間の境界の時点と設定することによって、複数の前記実際分析区間の境界を設定する、
情報処理方法。
【請求項6】
複数の参加者が参加するコミュニケーションにおける前記複数の参加者それぞれの発話の時系列上の区間である発話区間を判定するステップと、
前記コミュニケーションについて、予め定められた時間長さの基準分析区間の境界を設定し、前記設定された前記基準分析区間の境界が前記複数の参加者の前記発話区間の少なくとも1つに含まれる場合に、当該基準分析区間の境界に最も近い、前記複数の参加者のどの前記発話区間にも属さない時間である無発話時間に対応する時点を、実際に前記コミュニケーションの分析を行うための時間区間である実際分析区間の境界の時点と設定することによって、複数の前記実際分析区間の境界を設定するステップと、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理方法及びプログラムに関し、特に、コミュニケーションに関する処理を行う情報処理システム、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
グループワーク、ディスカッション又は会議等の、複数の参加者が参加するコミュニケーションの場の盛り上がり度を算出する技術が知られている。この技術に関連し、特許文献1は、複数の会議場間で行われる遠隔会議を支援する会議支援装置を開示する。特許文献1にかかる会議支援装置は、ある会議場における参加者の動作を表す動作情報に基づき会議における発言動作を認識し、この認識結果に基づいてある会議場の盛り上がりの度合いを示す会議場活性度を算出する。上記の会議場活性度としては、例えば、会議場における単位時間当たりの発言動作の量がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
あるコミュニケーションにおいて、場の盛り上がりの度合い又は場の雰囲気といったコミュニケーションの状態は、時間とともに変化する可能性がある。このようなコミュニケーションの状態の変遷を把握するためには、コミュニケーションをある時間幅ごとに複数に区切り、時間の推移に沿ってその時間幅の区間ごとにコミュニケーションの指標を分析するということが行われる。このような分析では、例えば、各区間における各参加者の発話長さを分析することが行われる。ここで、コミュニケーションの参加者のいずれかが発話している途中で時間幅を区切ってしまうと、参加者の発話長さを適切に取得することができないおそれがある。したがって、コミュニケーションの状況を適切に分析することができないおそれがある。
【0005】
本発明は、複数の参加者によるコミュニケーションの状況をより適切に分析することを可能とする、情報処理システム、情報処理方法及びプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる情報処理システムは、複数の参加者が参加するコミュニケーションにおける前記複数の参加者それぞれの発話の時系列上の区間である発話区間を判定する発話判定部と、予め定められた時間長さの基準分析区間を用いて、実際に前記コミュニケーションの分析を行うための時間区間である複数の実際分析区間の境界の時点が前記複数の参加者のどの前記発話区間にも属さない時間である無発話時間に対応する時間となるように、複数の前記実際分析区間の境界を設定する分析区間決定部と、を有する。
【0007】
また、本発明にかかる情報処理方法は、複数の参加者が参加するコミュニケーションにおける前記複数の参加者それぞれの発話の時系列上の区間である発話区間を判定し、予め定められた時間長さの基準分析区間を用いて、実際に前記コミュニケーションの分析を行うための時間区間である複数の実際分析区間の境界の時点が前記複数の参加者のどの前記発話区間にも属さない時間である無発話時間に対応する時間となるように、複数の前記実際分析区間の境界を設定する。
【0008】
また、本発明にかかるプログラムは、複数の参加者が参加するコミュニケーションにおける前記複数の参加者それぞれの発話の時系列上の区間である発話区間を判定するステップと、予め定められた時間長さの基準分析区間を用いて、実際に前記コミュニケーションの分析を行うための時間区間である複数の実際分析区間の境界の時点が前記複数の参加者のどの前記発話区間にも属さない時間である無発話時間に対応する時間となるように、複数の前記実際分析区間の境界を設定するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0009】
本発明は、このように構成されているので、参加者の発話の途中で実際分析区間が区切られることが抑制される。したがって、実際分析区間において参加者の発話長さを適切に取得できるので、コミュニケーションの状況をより適切に分析することが可能となる。
【0010】
また、好ましくは、前記分析区間決定部は、前記コミュニケーションについて、前記基準分析区間の境界を設定し、前記設定された前記基準分析区間の境界が前記複数の参加者の前記発話区間の少なくとも1つに含まれる場合に、当該基準分析区間の境界に最も近い前記無発話時間に対応する時点を、前記実際分析区間の境界の時点と設定する。
このような構成により、実際分析区間の長さが基準分析区間の長さにより近くなる。したがって、複数の実際分析区間の長さのバラツキを抑制することが可能となる。
【0011】
また、好ましくは、前記分析区間決定部は、予め、前記コミュニケーションの開始時点から終了時点まで、前記基準分析区間に対応する間隔で複数の前記基準分析区間の境界を設定し、設定された複数の前記基準分析区間の境界それぞれを用いて、複数の前記実際分析区間の境界の時点が前記無発話時間に対応する時間となるように、複数の前記実際分析区間の境界を設定する。
このような構成により、複数の実際分析区間の境界の時点を一度に設定することができるので、処理を簡略化することが可能となる。
【0012】
また、好ましくは、前記分析区間決定部は、前記基準分析区間の境界を設定し、設定された前記基準分析区間の境界を用いて前記実際分析区間の境界の時点が前記無発話時間に対応する時間となるように前記実際分析区間の境界を設定することを、前記コミュニケーションの開始時点から、順次行う。
このような構成により、実際分析区間の長さと基準分析区間の長さとのズレを抑制することが可能となる。
【0013】
また、好ましくは、前記分析区間決定部は、前記コミュニケーションの開始時点から前記基準分析区間に対応する時間だけ後に前記基準分析区間の境界を設定する第1の工程を実行し、設定された前記基準分析区間の境界を用いて、前記実際分析区間の境界の時点が前記無発話時間に対応する時間となるように、前記実際分析区間の境界を設定する第2の工程を実行し、設定された前記実際分析区間の境界の時点から、前記基準分析区間に対応する時間だけ後に前記基準分析区間の境界を設定する第3の工程を実行し、前記第2の工程と前記第3の工程とを繰り返すことで、複数の前記実際分析区間の境界の時点をそれぞれ設定する。
このような構成により、複数の実際分析区間の境界を順次設定することを、より確実に実行することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の参加者によるコミュニケーションの状況をより適切に分析することを可能とする、情報処理システム、情報処理方法及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態1にかかる情報処理システムを示す図である。
【
図2】実施の形態1にかかる情報処理装置の構成を示す図である。
【
図3】実施の形態1にかかる情報処理システムによって実行される情報処理方法を示すフローチャートである。
【
図4】実施の形態1にかかる発話判定部の判定処理を説明するための図である。
【
図5】実施の形態1にかかる発話判定部によって生成される発話推移グラフを例示する図である。
【
図6】実施の形態1にかかる基準分析区間設定部によって発話推移グラフに基準分析区間境界が配置された状態を例示する図である。
【
図7】実施の形態1にかかる実際分析区間設定部が実際分析区間境界を設定する方法を説明するための図である。
【
図8】実施の形態2にかかる情報処理システムによって実行される情報処理方法を示すフローチャートである。
【
図9】実施の形態2にかかる情報処理方法を説明するための図である。
【
図10】実施の形態2にかかる情報処理方法を説明するための図である。
【
図11】実施の形態2にかかる情報処理方法を説明するための図である。
【
図12】実施の形態2にかかる情報処理方法を説明するための図である。
【
図13】実施の形態2にかかる情報処理方法を説明するための図である。
【
図14】実施の形態2にかかる情報処理方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施の形態1)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0017】
図1は、実施の形態1にかかる情報処理システム1を示す図である。本実施の形態にかかる情報処理システム1は、複数の参加者が参加するコミュニケーションの状況を分析する。したがって、情報処理システム1は、コミュニケーション分析システム(又は単に分析システム)として機能する。あるいは、情報処理システム1は、コミュニケーションの分析を支援する分析支援システム(又は単に支援システム)として機能する。
【0018】
なお、「コミュニケーション」は、例えば、グループワーク、ディスカッション又は会議等であるが、これらに限定されない。また、本実施の形態にかかる情報処理システム1は、コミュニケーションの分析を行う際に、コミュニケーションを複数の時系列上の区間に分割して、分割された区間ごとにコミュニケーションの指標を分析する。これにより、コミュニケーションの状態の時間的な推移を分析することができる。
【0019】
実施の形態1にかかる情報処理システム1は、複数の集音装置10と、情報処理装置100とを有する。集音装置10と、情報処理装置100とは、有線又は無線のネットワーク2を介して接続され得る。
【0020】
集音装置10は、マイクを内蔵している。集音装置10は、音声を検出するセンサとして機能する。集音装置10は、参加者それぞれの発話を集音するように構成されている。集音装置10は、コミュニケーションの参加者のそれぞれに装着され得る。例えば、集音装置10は、バッジのように構成されることによって参加者に装着されてもよい。あるいは、集音装置10は、参加者の首に掛けられるように構成されることによって参加者に装着されるようにしてもよい。あるいは、集音装置10は、参加者の頭部に装着されるようにしてもよい。集音装置10を装着した参加者は、コミュニケーションにおいて発話を行う。集音装置10は、集音装置10を装着した参加者の発話を集音する。これにより、集音装置10は、各参加者の発話を示す発話データ(音声データ)を取得する。なお、以下、用語「発話」は、発話を示す発話データをも示し得る。
【0021】
また、集音装置10は、参加者の発話(発声)の音圧の変化を検出してもよい。この場合、集音装置10は、発話データとして、対応する参加者の発話による音圧の時系列データを検出する。つまり、集音装置10は、参加者ごとの発話データ(音圧データ)を取得する。
【0022】
ここで、本実施の形態にかかる情報処理システム1は、コミュニケーションの状況を分析する際に、参加者の発話の内容を把握する必要はない。したがって、集音装置10は、発話の内容が把握できる程度に精度よく発話を集音する必要はない。例えば、集音装置10が発話を集音する際のサンプリングレートを十分(例えば20Hz程度に)下げることにより、発話の内容が把握されることなく、単に参加者がどのタイミングで発話したかのみを把握することができる。これにより、参加者の心理的抵抗感を抑制することができる。
【0023】
情報処理装置100は、複数の集音装置10のそれぞれから、各参加者の発話(発話データ)を取得する。情報処理装置100は、各参加者が発話を行ったタイミングに基づいて、コミュニケーションを実際に分析するための、時系列上の(時間軸上の)複数の分析区間(実際分析区間)を設定する。その際に、情報処理装置100は、実際分析区間の境界が参加者の発話の途中とならないように、実際分析区間を設定する。ここで、実際分析区間は、実際にコミュニケーションの分析を行う際のコミュニケーションの単位となる時間区間である。
【0024】
そして、情報処理装置100は、各参加者の発話を用いて、設定された複数の実際分析区間それぞれについて、複数の参加者の発話を分析する。これにより、参加者の発話の途中で実際分析区間が区切られることが抑制される。したがって、実際分析区間において参加者の発話長さを適切に取得できるので、コミュニケーションの状況をより適切に分析することが可能となる。詳しくは後述する。なお、情報処理装置100は、コミュニケーションの推移及びコミュニケーションにおける発話を分析する、分析装置として機能し得る。あるいは、情報処理装置100は、コミュニケーションの分析を支援する分析支援装置(又は単に支援装置)として機能する。
【0025】
図2は、実施の形態1にかかる情報処理装置100の構成を示す図である。情報処理装置100は、主要なハードウェア構成として、制御部102と、記憶部104と、通信部106と、インタフェース部108(IF;Interface)とを有する。制御部102、記憶部104、通信部106及びインタフェース部108は、データバスなどを介して相互に接続されている。
【0026】
制御部102は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサである。制御部102は、制御処理及び演算処理等を行う演算装置としての機能を有する。記憶部104は、例えばメモリ又はハードディスク等の記憶デバイスである。記憶部104は、例えばROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)等である。記憶部104は、制御部102によって実行される制御プログラム及び演算プログラム等を記憶するための機能を有する。また、記憶部104は、処理データ等を一時的に記憶するための機能を有する。記憶部104は、データベースを含み得る。
【0027】
通信部106は、集音装置10等の他の装置とネットワーク2を介して通信を行うために必要な処理を行う。通信部106は、通信ポート、ルータ、ファイアウォール等を含み得る。インタフェース部108(IF;Interface)は、例えばユーザインタフェース(UI)である。インタフェース部108は、キーボード、タッチパネル又はマウス等の入力装置と、ディスプレイ又はスピーカ等の出力装置とを有する。インタフェース部108は、ユーザ(オペレータ)によるデータの入力の操作を受け付け、ユーザに対して情報を出力する。
【0028】
また、情報処理装置100は、構成要素として、発話取得部112、発話判定部114、分析区間決定部120、分析部132、及び分析結果出力部134を有する。分析区間決定部120は、基準分析区間設定部122と、実際分析区間設定部124とを有する。発話取得部112、発話判定部114、分析区間決定部120、分析部132、及び分析結果出力部134は、それぞれ、発話取得手段、発話判定手段、分析区間決定手段、分析手段、及び分析結果出力手段としての機能を有する。基準分析区間設定部122及び実際分析区間設定部124は、それぞれ、基準分析区間設定手段及び実際分析区間設定手段としての機能を有する。
【0029】
なお、各構成要素は、例えば、制御部102の制御によって、プログラムを実行させることによって実現できる。より具体的には、各構成要素は、記憶部104に格納されたプログラムを、制御部102が実行することによって実現され得る。また、必要なプログラムを任意の不揮発性記録媒体に記録しておき、必要に応じてインストールすることで、各構成要素を実現するようにしてもよい。また、各構成要素は、プログラムによるソフトウェアで実現することに限ることなく、ハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアのうちのいずれかの組み合わせ等により実現してもよい。また、各構成要素は、例えばFPGA(field-programmable gate array)又はマイコン等の、ユーザがプログラミング可能な集積回路を用いて実現してもよい。この場合、この集積回路を用いて、上記の各構成要素から構成されるプログラムを実現してもよい。以上のことは、後述する他の実施の形態においても同様である。
【0030】
発話取得部112は、複数の参加者が参加するコミュニケーションにおける複数の参加者それぞれの発話(発話データ)を取得する。発話判定部114は、コミュニケーションにおける複数の参加者それぞれの発話の時系列上の区間である発話区間を判定する。具体的には、発話判定部114は、発話取得部112によって取得された発話に基づいて、複数の参加者それぞれの時系列上の発話区間(発話時間)を判定する。つまり、発話判定部114は、複数の参加者それぞれが、分析対象のコミュニケーションにおいて、いつ発話を行い、いつ発話を行わなかったかを判定する。そして、発話判定部114は、コミュニケーションの開始から終了までの複数の参加者それぞれの発話区間の時間的な推移を示す、発話推移グラフを生成する。発話推移グラフについては
図5を用いて後述する。なお、発話判定部114が各参加者の発話区間を判定する方法については後述する。
【0031】
分析区間決定部120は、複数の基準分析区間の境界と無発話時間とに応じて、複数の実際分析区間の境界の時点を設定する。言い換えると、分析区間決定部120は、基準分析区間を用いて、複数の実際分析区間の境界の時点が無発話時間に対応する時間となるように、複数の実際分析区間の境界を設定する。ここで、好ましくは、分析区間決定部120は、分析対象のコミュニケーションについて、基準分析区間の境界を設定する。そして、分析区間決定部120は、設定された基準分析区間の境界が複数の参加者の発話区間の少なくとも1つに含まれる場合に、当該基準分析区間の境界に最も近い無発話時間に含まれる時点を、実際分析区間の境界の時点と設定する。詳しくは後述する。
【0032】
ここで、基準分析区間は、予め定められた時間長さの時間区間である。また、複数の基準分析区間の長さは、互いに同じであるとする。例えば、基準分析区間の長さは10分であるが、これに限定されない。また、基準分析区間の長さは、分析の方法によって定められてもよい。例えば、ある1つのコミュニケーションの状態の変遷を分析する場合であっても、ある分析方法で分析を行うときは基準分析区間を10分とし、別の分析方法で分析を行うときは基準分析区間を5分としてもよい。
【0033】
また、無発話時間は、複数の参加者の誰もが発話を行っていない時間(期間)である。つまり、無発話時間は、複数の参加者のどの発話区間にも属さない時間である。無発話時間は、無発話期間又は無発話区間と称してもよい。また、上述したように、実際分析区間は、実際にコミュニケーションの分析を行うための分析区間である。実際にコミュニケーションの分析を行う際は、この実際分析区間ごとに、複数の参加者の発話が分析される。ここで、本実施の形態においては、ある分析において、基準分析区間は一定であるが、実際分析区間は一定とは限らない。
【0034】
ここで、基準分析区間は、コミュニケーションの状態の変遷を分析する際に、各参加者の発話を分析するための基準の時間区間となる。上述したように、コミュニケーションの状態の変遷の分析では、時間区間ごとに各参加者の発話を分析する。この場合、時間区間の長さのバラツキが大きいと、適切に分析を行うことができないおそれがある。例えば、あるコミュニケーションに対してある分析方法で分析を行う場合に、ある時間帯では10分間の時間区間で分析を行ったのに、別の時間帯では5分間の時間区間で分析を行うと、コミュニケーションの状態の変遷の分析を適切に行うことができないおそれがある。したがって、本実施の形態では、この分析を行うための時間区間のバラツキを抑制するために、基準分析区間を設ける。そして、分析区間決定部120は、なるべく基準分析区間の長さに近い長さとなるように、実際分析区間を設定する。
【0035】
基準分析区間設定部122は、予め、基準分析区間の長さを設定する。基準分析区間設定部122は、分析対象のコミュニケーションに対応する発話推移グラフに、基準分析区間(基準分析区間の境界)を設定する。実際分析区間設定部124は、分析対象のコミュニケーションに対応する発話推移グラフに、複数の実際分析区間(実際分析区間の境界)を設定する。詳しくは後述する。
【0036】
分析部132は、複数の実際分析区間それぞれについて、複数の参加者の発話を分析する。分析方法については、コミュニケーションの変遷を分析できる任意の方法が考えられる。分析方法の具体例については後述する。分析結果出力部134は、分析部132による分析結果を出力する。
【0037】
図3は、実施の形態1にかかる情報処理システム1によって実行される情報処理方法を示すフローチャートである。
図3に示すフローチャートは、情報処理装置100によって実行される分析方法(分析支援方法又は支援方法)を示す。ここで、以下に示す説明では、適宜、後述する
図5~
図7を用いて、参加者A、参加者B及び参加者Cが参加するコミュニケーションについて分析を行う例について説明する。
【0038】
発話取得部112は、複数の参加者それぞれの発話を取得する(ステップS102)。具体的には、発話取得部112は、集音装置10から、複数の参加者それぞれの発話を示す発話データを取得する。さらに具体的には、発話取得部112は、発話データとして、参加者ごとの発話に伴う、音圧の時間ごとの推移を示す音圧データを取得する。音圧データについては、後述する
図4に例示されている。
【0039】
次に、発話判定部114は、各参加者の発話区間を判定する(ステップS104)。これにより、発話判定部114は、発話推移グラフを生成する。具体的には、発話判定部114は、各参加者の音圧データにおいて、音圧値が予め定められた閾値よりも大きい時間区間を、その参加者の発話区間と判定する。
【0040】
図4は、実施の形態1にかかる発話判定部114の判定処理を説明するための図である。
図4は、ある参加者(例えば参加者A)の音圧データを用いて発話区間を判定する方法を説明するための図である。音圧データは、音圧の時間的な推移を示す。
図4に例示する音圧データは、横軸を時間とし、縦軸を音圧値としている。そして、
図4に示すように、発話判定部114は、音圧値が閾値よりも大きな区間を、発話区間と判定する。
図4の例では、参加者Aについて、3つの発話区間が判定されている。発話判定部114は、上記の処理を全ての参加者について行うことによって、各参加者の発話区間を判定する。
【0041】
なお、発話判定部114は、音声データにおけるノイズを判定し、そのノイズの区間を発話区間と判定しないようにして、発話区間を判定してもよい。その際に、発話判定部114は、ある参加者(例えば参加者A)の発話区間を判定する際に、その参加者と距離が近い他の参加者(例えば参加者B及び参加者C)の音圧データを用いて、ノイズを判定してもよい。この場合、集音装置10は、参加者同士の距離を把握するための位置情報を検出するセンサを有してもよい。そして、音圧データは、位置情報と対応付けられていてもよい。
【0042】
具体的には、発話判定部114は、参加者Aの発話区間を判定する際に、参加者Aの音圧データの形状と、参加者B及び参加者Cの音圧データの形状とを比較し、形状が類似する区間を、ノイズと判定してもよい。ここでいうノイズとは、例えば、どの参加者の発話とは異なる外乱(騒音)である。また、参加者Aのすぐ近くに参加者Bがいて、参加者Aの集音装置10で参加者Bの発話を集音してしまう場合もある。この場合、発話判定部114は、参加者Aの音圧データの形状と、参加者Bの音圧データの形状とを比較し、形状が類似するが参加者Bの音圧データにおける音圧よりも低い区間を、参加者Bの発話区間だと判定し、参加者Aの発話区間と判定しないようにしてもよい。したがって、ここでいうノイズは、判定対象の参加者の近くにいる別の参加者の発話に対応し得る。
【0043】
また、発話判定部114は、コミュニケーションに参加する全ての参加者について発話区間を判定する。そして、発話判定部114は、複数の参加者の発話区間を同じ時系列上に並べることで、
図5に例示するような発話推移グラフを生成する。
【0044】
図5は、実施の形態1にかかる発話判定部114によって生成される発話推移グラフを例示する図である。
図5の横軸は、時間を示す。「00:00」は、コミュニケーションの開始時点を示す。「00:10」は、コミュニケーションの開始時点から10分後の時点を示す。
図5に示す発話推移グラフは、参加者A~Cの発話区間を含む。参加者Aの発話区間は、発話区間SpA#1,SpA#2,SpA#3,SpA#4である。参加者Bの発話区間は、発話区間SpB#1,SpB#2,SpB#3である。参加者Cの発話区間は、発話区間SpC#1,SpC#2,SpC#3,SpC#4である。この発話推移グラフは、各参加者がいつ発話を行い、いつ発話を行わなかったかを示す。
【0045】
また、
図5において、無発話時間は、参加者Aの発話区間SpA#1~SpA#4、参加者Bの発話区間SpB#1~SpB#3、及び、参加者Cの発話区間SpC#1~SpC#4が、互いに重なっていない時間である。例えば、参加者Bの発話区間SpB#1の終了時点SpB#1eと参加者Aの発話区間SpA#2の開始時点SpA#2sとの間の時間は、無発話時間Si_B1A2である。また、参加者Cの発話区間SpC#2の終了時点SpC#2eと参加者Aの発話区間SpA#3の開始時点SpA#3sとの間の時間は、無発話時間Si_C2A3である。また、参加者Aの発話区間SpA#4の終了時点SpA#4eと参加者Cの発話区間SpC#4の開始時点SpC#4sとの間の時間は、無発話時間Si_A4C4である。
【0046】
図3のフローチャートの説明に戻る。分析区間決定部120は、予め、コミュニケーションの開始時点から終了時点まで、基準分析区間に対応する間隔で、複数の基準分析区間の境界(基準分析区間境界)を設定する(ステップS106)。具体的には、基準分析区間設定部122は、発話推移グラフに対して、コミュニケーションの開始時点から終了時点まで、一度に、基準分析区間に対応する間隔で、複数の基準分析区間境界を配置する。これにより、発話推移グラフには、等間隔で、複数の基準分析区間境界が配置されることとなる。つまり、発話推移グラフには、同じ長さの複数の基準分析区間が、時間軸上に互いに連結して配置されることとなる。なお、基準分析区間境界は、基準分析区間の終了時点に対応する。実施の形態1では、基準分析区間境界は、ある基準分析区間とその次の基準分析区間との境界に対応する時点である。
【0047】
図6は、実施の形態1にかかる基準分析区間設定部122によって発話推移グラフに基準分析区間境界が配置された状態を例示する図である。ここで、基準分析区間60の時間長さをTs(分)とする。例えば、Ts=10(分)であるが、これに限定されない。実施の形態1では、コミュニケーションの開始時点ts0から、コミュニケーションの終了時点まで、Ts分おきに、基準分析区間境界が配置されている。
図6において、例えば、コミュニケーションの開始時点ts0からTs分後に、1番目の基準分析区間境界ts1が配置されている。また、基準分析区間境界ts1からTs分後に、2番目の基準分析区間境界ts2が配置されている。また、基準分析区間境界ts2からTs分後に、3番目の基準分析区間境界ts3が配置されている。なお、コミュニケーションの終了時点の近傍において、ある基準分析区間境界tsX(図示せず)からコミュニケーションの終了時点までの間の時間がTs未満となった場合は、基準分析区間境界tsXからコミュニケーションの終了時点までの間には、基準分析区間境界を配置しない。
【0048】
図3のフローチャートの説明に戻る。分析区間決定部120は、設定された複数の基準分析区間境界それぞれと無発話時間とに応じて、複数の実際分析区間の境界(実際分析区間境界)を設定する(ステップS108)。具体的には、実際分析区間設定部124は、設定された複数の基準分析区間境界それぞれを用いて、複数の実際分析区間境界の時点が無発話時間に対応する時間となるように、複数の実際分析区間境界(実際分析区間)を設定する。さらに具体的には、実際分析区間設定部124は、複数の基準分析区間境界それぞれについて、基準分析区間境界の時点が発話区間の少なくとも1つに含まれる場合に、当該基準分析区間境界に最も近い無発話時間に対応する時間を、実際分析区間境界の時点と設定する。なお、実際分析区間設定部124は、基準分析区間境界の時点が無発話時間に含まれる場合に、当該基準分析区間境界の時点を実際分析区間境界の時点と設定する。なお、実際分析区間境界は、対応する実際分析区間の終了時点に対応する。つまり、実際分析区間境界は、対応する実際分析区間とその次の実際分析区間との境界に対応する時点である。
【0049】
図7は、実施の形態1にかかる実際分析区間設定部124が実際分析区間境界を設定する方法を説明するための図である。
図7は、
図6に例示するように発話推移グラフに基準分析区間境界が配置された場合に対応する。実際分析区間設定部124は、基準分析区間境界が配置された発話推移グラフにおいて、基準分析区間境界がいずれかの参加者の発話区間に含まれる場合に、その基準分析区間境界に最も近い無発話時間に対応する時点を、実際分析区間境界の時点と設定する。
【0050】
図7において、1番目の基準分析区間境界ts1は発話区間SpB#1に含まれている。この場合、実際分析区間設定部124は、基準分析区間境界ts1に最も近い無発話時間である無発話時間Si_B1A2に含まれる時点を、1番目の実際分析区間70-1に対応する1番目の実際分析区間境界ta1の時点と設定する。
図7の例では、実際分析区間設定部124は、無発話時間Si_B1A2において基準分析区間境界ts1に最も近い、発話区間SpB#1の終了時点SpB#1eに対応する時点を、実際分析区間境界ta1の時点と設定している。このようにして、実際分析区間設定部124は、コミュニケーションの開始時点ts0から実際分析区間境界ta1までの、時間長さTa1(分)の実際分析区間70-1を設定する。
【0051】
また、2番目の基準分析区間境界ts2は発話区間SpC#2に含まれている。この場合、実際分析区間設定部124は、基準分析区間境界ts2に最も近い無発話時間である無発話時間Si_C2A3に含まれる時点を、2番目の実際分析区間70-2に対応する2番目の実際分析区間境界ta2の時点と設定する。
図7の例では、実際分析区間設定部124は、無発話時間Si_C2A3において基準分析区間境界ts2に最も近い、発話区間SpC#2の終了時点SpC#2eに対応する時点を、実際分析区間境界ta2の時点と設定している。このようにして、実際分析区間設定部124は、実際分析区間境界ta1から実際分析区間境界ta2までの、時間長さTa2(分)の実際分析区間70-2を設定する。
【0052】
また、3番目の基準分析区間境界ts3は発話区間SpA#4に含まれている。この場合、実際分析区間設定部124は、基準分析区間境界ts3に最も近い無発話時間である無発話時間Si_A4C4に含まれる時点を、3番目の実際分析区間70-3に対応する3番目の実際分析区間境界ta3の時点と設定する。
図7の例では、実際分析区間設定部124は、無発話時間Si_A4C4において基準分析区間境界ts3に最も近い、発話区間SpA#4の終了時点SpA#4eを、実際分析区間境界ta3の時点と設定している。このようにして、実際分析区間設定部124は、実際分析区間境界ta2から実際分析区間境界ta3までの、時間長さTa3(分)の実際分析区間70-3を設定する。
【0053】
これにより、実際分析区間70-1には、発話区間SpA#1、発話区間SpC#1及び発話区間SpB#1が、途中で途切れることなく含まれることとなる。また、実際分析区間70-2には、発話区間SpA#2、発話区間SpB#2及び発話区間SpC#2が、途中で途切れることなく含まれることとなる。また、実際分析区間70-3には、発話区間SpA#3、発話区間SpB#3、発話区間SpC#3及び発話区間SpA#4が、途中で途切れることなく含まれることとなる。
【0054】
図3のフローチャートの説明に戻る。分析部132は、S108の処理によって設定された複数の実際分析区間それぞれについて、複数の参加者の発話を分析する(ステップS120)。分析結果出力部134は、S120の処理による分析結果を出力する(ステップS122)。例えば、分析結果出力部134は、ディスプレイであるインタフェース部108に、分析結果を表示させてもよい。
【0055】
分析部132による分析方法の具体例について説明する。例えば、分析部132は、実際分析区間の中で、その区間に含まれる各発話区間の長さを取得する。そして、分析部132は、複数の実際分析区間それぞれについて、発話区間の長さ(発話時間)の平均値を算出する。
図7の例では、分析部132は、例えば、実際分析区間70-1について、発話区間SpA#1の長さと、発話区間SpC#1の長さと、発話区間SpB#1の長さとの平均値を算出する。
【0056】
分析部132は、この発話区間の長さの平均値を用いて、コミュニケーションの状態を評価する。例えば、分析部132は、発話区間の長さの平均値が大きいほど、その実際分析区間において、じっくりと議論がなされていると評価する。一方、分析部132は、発話区間の長さの平均値が小さいほど、その実際分析区間において、テンポよく意見が交わされていると評価する。分析部132は、このような、複数の実際分析区間における分析結果から、コミュニケーションの状態の変遷を判定することができる。
【0057】
また、発話区間の長さ(発話時間)の変化量の重みは、同じ変化量であっても、発話区間の長さによって異なり得る。例えば、短い発話時間(例えば5秒)の発話区間における1秒の変化と、長い発話時間(例えば50秒)の発話区間における1秒の変化とを比較すると、短い発話時間の発話区間における1秒の変化の方が、重みが大きい。したがって、発話時間を対数で変換することによって、長い発話時間の変化量の重みを軽減することができる。具体的には、発話区間iの発話時間をTiとすると、分析部132は、Xi=log10(Ti+1)を算出する。そして、分析部132は、複数の実際分析区間それぞれについて、Xiの平均値を算出する。そして、分析部132は、算出されたXiの平均値を用いて、上述したようにコミュニケーションの状態を評価する。なお、Xiの対数の底は、10でなくてもよく、任意であってもよい。
【0058】
また、分析部132は、複数の実際分析区間それぞれについて、発話率を算出してもよい。発話率は、対応する実際分析区間kの時間長さTa_kに対する、その実際分析区間において参加者のいずれかが発話を行っている時間の合計時間Tb_kの割合である。なお、実際分析区間kにおける無発話時間の合計時間をTc_kとすると、Tb_k=Ta_k-Tc_kである。そして、分析部132は、この発話率を用いて、コミュニケーションの状態を評価してもよい。例えば、分析部132は、発話率が大きいほど、その実際分析区間において、議論が盛り上がっていると評価してもよい。
【0059】
また、分析部132は、複数の実際分析区間それぞれについて、発話数を算出してもよい。
図7の例では、分析部132は、実際分析区間70-1について発話数を3個と算出し、実際分析区間70-2について発話数を3個と算出し、実際分析区間70-3について発話数を4個と算出する。そして、分析部132は、この発話数を用いて、コミュニケーションの状態を評価してもよい。例えば、分析部132は、発話数が大きいほど、その実際分析区間において、テンポよく議論がなされていると評価してもよい。
【0060】
実施の形態1にかかる情報処理装置100は、上述したように、予め定められた時間長さの基準分析区間を用いて、複数の実際分析区間の境界の時点が無発話時間に対応する時間となるように、複数の実際分析区間の境界を設定するように構成されている。これにより、参加者の発話の途中で実際分析区間が区切られることが抑制される。したがって、実際分析区間において参加者の発話長さを適切に取得できるので、コミュニケーションの状況をより適切に分析することが可能となる。
【0061】
また、実施の形態1にかかる情報処理装置100は、上述したように、分析対象のコミュニケーションについて、基準分析区間の境界を設定する。そして、情報処理装置100は、設定された基準分析区間の境界が複数の参加者の発話区間の少なくとも1つに含まれる場合に、当該基準分析区間の境界に最も近い無発話時間に含まれる時点を、実際分析区間の境界の時点と設定する。これにより、実際分析区間の長さが基準分析区間の長さにより近くなる。例えば、基準分析区間の長さが10分である場合、各実際分析区間の長さを10分に近づけることが可能となる。したがって、複数の実際分析区間の長さのバラツキを抑制することが可能となる。
【0062】
また、実施の形態1にかかる情報処理装置100は、予め、コミュニケーションの開始時点から終了時点まで、基準分析区間に対応する間隔で複数の基準分析区間の境界を設定する。そして、情報処理装置100は、設定された複数の基準分析区間の境界それぞれを用いて、複数の実際分析区間の境界の時点が無発話時間に対応する時間となるように、複数の実際分析区間の境界を設定する。このような構成により、複数の実際分析区間の境界の時点を一度に設定することができるので、処理を簡略化することが可能となる。
【0063】
なお、
図7の例では、実際分析区間境界は、無発話時間の開始時点又は終了時点(つまりある発話区間の終了時点又は開始時点)に設定されているが、これに限定されない。実際分析区間境界は、無発話時間に含まれる任意の時点であってもよい。また、例えば、実際分析区間境界は、無発話時間に含まれる時点のうち、対応する実際分析区間の長さが基準分析区間の長さに最も近くなる時点に設定されてもよい。これにより、設定される実際分析区間の長さが基準分析区間の長さにより近くなる。したがって、実際分析区間の長さのバラツキをさらに低減することができる。このことは、後述する実施の形態2においても同様である。
【0064】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2においては、実際分析区間の境界を設定する方法が、実施の形態1と異なる。なお、実施の形態2にかかる情報処理システム1のハードウェア構成については、
図1に示した実施の形態1にかかる情報処理システム1のハードウェア構成と実質的に同様であるので、説明を省略する。また、実施の形態2にかかる情報処理装置100の構成については、
図2に示したものと実質的に同様であるので、説明を省略する。
【0065】
なお、実施の形態2にかかる情報処理装置100(分析区間決定部120)は、基準分析区間の境界を設定し、設定された基準分析区間の境界それぞれと無発話時間とに応じて実際分析区間の境界の時点を設定することを、コミュニケーションの開始時点から、順次行う。つまり、実施の形態2にかかる分析区間決定部120は、基準分析区間の境界を設定し、設定された基準分析区間の境界を用いて実際分析区間の境界の時点が無発話時間に対応する時間となるように実際分析区間の境界を設定することを、コミュニケーションの開始時点から、順次行う。
【0066】
図8は、実施の形態2にかかる情報処理システム1によって実行される情報処理方法を示すフローチャートである。
図8に示すフローチャートは、情報処理装置100によって実行される分析方法(分析支援方法又は支援方法)を示す。なお、
図8に示すフローチャートを説明した後で、
図9~
図14を用いて、発話推移グラフを用いた具体例を説明する。
【0067】
発話取得部112は、S102の処理と同様にして、複数の参加者それぞれの発話を取得する(ステップS202)。発話判定部114は、S104の処理と同様にして、各参加者の発話区間を判定する(ステップS204)。これにより、発話判定部114は、
図5に例示したような発話推移グラフを生成する。
【0068】
次に、分析区間決定部120は、コミュニケーションの開始時点から基準分析区間に対応する時間だけ後に基準分析区間境界を設定する(ステップS206)。このS206の処理を、第1の工程と称する。具体的には、基準分析区間設定部122は、コミュニケーションの開始時点から基準分析区間の時間長さTsだけ後に、1番目の基準分析区間境界の時点を設定する。このようにして、基準分析区間設定部122は、第1の工程を実行する。S206の処理については、
図9を用いて後述する。
【0069】
次に、分析区間決定部120は、設定された基準分析区間境界と無発話時間とに応じて、実際分析区間境界を設定する(ステップS208)。このS208の処理を、第2の工程と称する。具体的には、実際分析区間設定部124は、設定された基準分析区間の境界を用いて、実際分析区間の境界の時点が無発話時間に対応する時間となるように、実際分析区間の境界を設定する。さらに具体的には、実際分析区間設定部124は、基準分析区間境界の時点が発話区間の少なくとも1つに含まれる場合に、当該基準分析区間境界に最も近い無発話時間に対応する時間を、実際分析区間境界の時点と設定する。さらに言い換えると、実際分析区間設定部124は、基準分析区間境界が配置された発話推移グラフにおいて、基準分析区間境界がいずれかの参加者の発話区間に含まれる場合に、その基準分析区間境界に最も近い無発話時間に対応する時点を、実際分析区間境界の時点と設定する。このようにして、実際分析区間設定部124は、第2の工程を実行する。
【0070】
ここで、分析区間決定部120は、設定されたn番目の基準分析区間境界と無発話時間とに応じて、n番目の実際分析区間境界を設定する。なお、「n」は1以上の整数であって、コミュニケーションの開始時点からの順序を示す。また、実際分析区間設定部124は、基準分析区間境界の時点が無発話時間に含まれる場合に、当該基準分析区間境界の時点を実際分析区間境界の時点と設定する。S208の処理については、
図10,
図12及び
図14を用いて後述する。
【0071】
次に、分析区間決定部120は、S208の処理で設定された実際分析区間境界の時点から基準分析区間に対応する時間だけ後に基準分析区間境界を設定する(ステップS210)。このS210の処理を、第3の工程と称する。具体的には、基準分析区間設定部122は、n番目の実際分析区間に対応するn番目の実際分析区間境界の時点から基準分析区間の時間長さTsだけ後に、(n+1)番目の基準分析区間境界の時点を設定する。このようにして、基準分析区間設定部122は、第3の工程を実行する。S210の処理については、
図11及び
図13を用いて後述する。
【0072】
次に、分析区間決定部120は、S210の処理で設定された基準分析区間境界に対応する時点がコミュニケーションの終了時点を超えたか否かを判定する(ステップS212)。設定された基準分析区間境界に対応する時点がコミュニケーションの終了時点を超えていない場合(S212のNO)、全ての実際分析区間の境界の設定が終了していないので、処理はS208に進む。そして、分析区間決定部120は、コミュニケーションの終了時点まで、S208の処理(第2の工程)とS210の処理(第3の工程)とを繰り返し実行することで、複数の実際分析区間の境界の時点をそれぞれ設定する。
【0073】
一方、設定された基準分析区間境界に対応する時点がコミュニケーションの終了時点を超えた場合(S212のYES)、分析区間決定部120(実際分析区間設定部124)は、コミュニケーションの終了時点を実際分析区間境界に設定する(ステップS214)。これにより、全ての実際分析区間の境界の設定が終了する。分析部132は、S120の処理と同様にして、複数回実行されたS210の処理によって設定された複数の実際分析区間それぞれについて、複数の参加者の発話を分析する(ステップS220)。分析結果出力部134は、S220の処理による分析結果を出力する(ステップS222)。
【0074】
図9~
図14は、実施の形態2にかかる情報処理方法を説明するための図である。以下、
図9~
図14を用いて、実施の形態1と同様に、参加者A、参加者B及び参加者Cが参加するコミュニケーションについて分析を行う例について説明する。
【0075】
図9は、実施の形態2にかかるS206の処理(第1の工程)を説明するための図である。基準分析区間設定部122は、コミュニケーションの開始時点ts0からTs分後に、1番目の基準分析区間境界ts1bを配置する(S206)。なお、上述したように、Tsは、基準分析区間60の時間長さである。また、Ts1bは、実施の形態1にかかるTs1と同じであり得る。
【0076】
図10は、実施の形態2にかかるS208の処理(第2の工程)を説明するための図である。
図10は、1番目の実際分析区間を設定する方法を例示している。
図10は、
図9に例示するように発話推移グラフに1番目の基準分析区間境界ts1bが配置された場合に対応する。
図10において、1番目の基準分析区間境界ts1bは発話区間SpB#1に含まれている。この場合、実際分析区間設定部124は、基準分析区間境界ts1bに最も近い無発話時間である無発話時間Si_B1A2に含まれる時点を、1番目の実際分析区間境界ta1bの時点と設定する。このようにして、実際分析区間設定部124は、コミュニケーションの開始時点ts0から1番目の実際分析区間境界ta1bまでの、時間長さTa1b(分)の、1番目の実際分析区間72-1を設定する。なお、Ta1bは、実施の形態1にかかるTa1と同じであり得る。
【0077】
図11は、実施の形態2にかかるS210の処理(第3の工程)を説明するための図である。
図11は、
図10に例示するように発話推移グラフに1番目の実際分析区間境界ta1bが配置された場合に対応する。基準分析区間設定部122は、1番目の実際分析区間境界ta1bから、基準分析区間60の時間長さであるTs分後に、2番目の基準分析区間境界ts2bを配置する。なお、
図11の例では、基準分析区間境界ts2bに対応する時点はコミュニケーションの終了時点を超えていないので、処理はS208に進む。
【0078】
図12は、実施の形態2にかかるS208の処理(第2の工程)を説明するための図である。
図12は、2番目の実際分析区間を設定する方法を例示している。
図12は、
図11に例示するように発話推移グラフに2番目の基準分析区間境界ts2bが配置された場合に対応する。
図12において、2番目の基準分析区間境界ts2bは発話区間SpA#3に含まれている。この場合、実際分析区間設定部124は、基準分析区間境界ts2bに最も近い無発話時間である無発話時間Si_C2A3に含まれる時点を、2番目の実際分析区間境界ta2bの時点と設定する。このようにして、実際分析区間設定部124は、1番目の実際分析区間境界ta1bから2番目の実際分析区間境界ta2bまでの、時間長さTa2b(分)の、2番目の実際分析区間72-2を設定する。なお、Ta2bは、実施の形態1にかかるTa2と異なり得る。
【0079】
図13は、実施の形態2にかかるS210の処理(第3の工程)を説明するための図である。
図13は、
図12に例示するように発話推移グラフに2番目の実際分析区間境界ta2bが配置された場合に対応する。基準分析区間設定部122は、2番目の実際分析区間境界ta2bから、基準分析区間60の時間長さであるTs分後に、3番目の基準分析区間境界ts3bを配置する。なお、
図13の例では、基準分析区間境界ts3bに対応する時点はコミュニケーションの終了時点を超えていないので、処理はS208に進む。
【0080】
図14は、実施の形態2にかかるS208の処理(第2の工程)を説明するための図である。
図14は、3番目の実際分析区間を設定する方法を例示している。
図14は、
図13に例示するように発話推移グラフに3番目の基準分析区間境界ts3bが配置された場合に対応する。
図14において、3番目の基準分析区間境界ts3bは、いずれの発話区間にも含まれておらず、無発話時間Si_A4C4に含まれている。この場合、実際分析区間設定部124は、基準分析区間境界ts3bの時点を、そのまま、3番目の実際分析区間境界ta3bの時点と設定する。このようにして、実際分析区間設定部124は、2番目の実際分析区間境界ta2bから3番目の実際分析区間境界ta3bまでの、時間長さTa3b(分)の、3番目の実際分析区間72-3を設定する。なお、Ta3bは、実施の形態1にかかるTa3と異なり得る。
【0081】
実施の形態2にかかる情報処理装置100は、基準分析区間の境界を設定し、設定された基準分析区間の境界を用いて実際分析区間の境界の時点が無発話時間に対応する時間となるように実際分析区間の境界を設定することを、コミュニケーションの開始時点から、順次行うように構成されている。このような構成により、実施の形態1にかかる方法と比較して、実際分析区間の長さを基準分析区間の長さに近づけることが可能となる。
【0082】
すなわち、上述した実施の形態1にかかる情報処理装置100は、一度に、複数の基準分析区間境界を設定するように構成されている。このような方法によって設定された基準分析区間境界を用いて実際分析区間境界を設定すると、各実際分析区間の長さと基準分析区間の長さとのズレが大きくなるおそれがある。例えば、n番目の実際分析区間境界に着目すると、実施の形態1では、n番目の実際分析区間の長さは、n番目の基準分析区間境界と無発話時間との関係だけでなく、(n-1)番目の基準分析区間境界と無発話時間との関係の影響を受ける。したがって、実施の形態1の場合では、各実際分析区間の長さと基準分析区間の長さとのズレが大きくなるおそれがある。
【0083】
これに対し、実施の形態2にかかる情報処理装置100は、n番目の実際分析区間境界から基準分析区間の長さ分だけ後に(n+1)番目の基準分析区間境界の時点を設定する。そして、実施の形態2にかかる情報処理装置100は、この設定された基準分析区間境界に近い無発話時間の時点に(n+1)番目の実際分析区間境界を設定する。これにより、1つの実際分析区間境界を設定するごとに、基準分析区間の長さに応じてこの設定を行うことができるので、各実際分析区間の長さと基準分析区間の長さとのズレを小さくすることができる。例えば、n番目の実際分析区間境界に着目すると、実施の形態2では、n番目の実際分析区間の長さは、n番目の基準分析区間境界と無発話時間との関係の影響を受ける。したがって、実施の形態2の場合では、実施の形態1と比較して、各実際分析区間の長さと基準分析区間の長さとのズレを抑制する(小さくする)ことができる。
【0084】
また、実施の形態2にかかる情報処理装置100は、第1の工程を実行し、第2の工程を実行し、第3の工程を実行し、第2の工程と第3の工程とを繰り返すことで、複数の前記実際分析区間の境界の時点をそれぞれ設定するように構成されている。このような構成により、複数の実際分析区間の境界を順次設定することを、より確実に実行することができる。
【0085】
(変形例)
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述したフローチャートにおいて、複数の処理の順序は、適宜、変更可能である。また、上述したフローチャートにおいて、複数の処理のうちの1つは、省略されてもよい。例えば、
図3のS120及びS122の処理は、省略されてもよい。
図8についても同様である。
【0086】
また、
図2に記載した各構成要素は、物理的に1つの装置で実現されることに限定されない。例えば、分析部132及び分析結果出力部134は、他の装置で実現されてもよい。また、
図2に記載した各構成要素は、クラウドコンピューティングによって実現されてもよい。
【0087】
また、上述した実施の形態では、発話を集音装置10で収集して音圧データを生成し、その音圧データから各参加者の発話区間を判定するとしたが、このような構成に限られない。つまり、マイク(センサ)によって発話を検出しなくてもよい。例えば、参加者自身又は他の作業者が、カウンタ等を用いて、発話を行った時間を入力してもよい。例えば、ある参加者が発話を行ったタイミングでカウンタの発話開始ボタンを押下し、発話が終了したタイミングでカウンタの発話終了ボタンを押下することで、発話区間を判定してもよい。つまり、発話判定部114が発話区間を判定する際に、集音装置10によって取得された発話データを用いることに限定されない。
【0088】
また、上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【符号の説明】
【0089】
1 情報処理システム
10 集音装置
60 基準分析区間
70,72 実際分析区間
100 情報処理装置
112 発話取得部
114 発話判定部
120 分析区間決定部
122 基準分析区間設定部
124 実際分析区間設定部
132 分析部
134 分析結果出力部