(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】鉄塔部材チェック装置およびチェックプログラム
(51)【国際特許分類】
E02D 27/42 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
E02D27/42 Z
(21)【出願番号】P 2020200750
(22)【出願日】2020-12-03
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】金正 利政
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-38253(JP,A)
【文献】特開2002-324087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00-27/52
E04H 12/00-12/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔の基礎寸法と、前記鉄塔の主柱最下位の継手ボルト数とを含む鉄塔入力情報を取得する入力情報取得手段と、
前記鉄塔入力情報と所定の演算基準とに基づいて、前記鉄塔のいかり材の寸法と、前記いかり材を取り付けるためのいかり材用ボルトの本数を演算する演算手段と、
を備えることを特徴とする鉄塔部材チェック装置。
【請求項2】
前記演算手段は、前記いかり材用ボルトがバランスよく配置されるように、前記いかり材用ボルトの縦横の配置数を演算する、
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄塔部材チェック装置。
【請求項3】
前記鉄塔入力情報に、前記鉄塔の基準高さ、下押さえ幅および上押さえ幅の寸法を含み、
前記演算手段は、前記鉄塔入力情報に基づいて前記鉄塔の転び値を演算する、
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の鉄塔部材チェック装置。
【請求項4】
前記鉄塔入力情報に、前記鉄塔の各主柱の全長を含み、
前記演算手段は、前記各主柱を構成する主柱材が規定長さ以下および規定重量以下となるように、前記各主柱材の長さを演算する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の鉄塔部材チェック装置。
【請求項5】
コンピュータを、
鉄塔の基礎寸法と、前記鉄塔の主柱最下位の継手ボルト数とを含む鉄塔入力情報を取得する入力情報取得手段と、
前記鉄塔入力情報と所定の演算基準とに基づいて、前記鉄塔のいかり材の寸法と、前記いかり材を取り付けるためのいかり材用ボルトの本数を演算する演算手段、
として機能させることを特徴とする鉄塔部材チェックプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄塔のいかり材の寸法やボルト本数などを演算・チェックする鉄塔部材チェック装置およびチェックプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
送電鉄塔などは大きな構造物で長期間使用されるものであり、転倒や損傷などが生じると電力供給や周囲環境などに大きな悪影響を及ぼすことになる。このため、大型鉄塔の脚材と地盤との定着耐力を大幅に改善できる、という鉄塔用基礎の構築方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この構築方法は、実規模フーチングを作製して実験により寸法効果の影響を検証し、いかり材に分布する荷重、せん断などを考慮した設計によって鉄塔基礎の脚材を基礎に定着させるものである。
【0003】
一方、例えば、電力会社が鉄塔建替工事などのために鉄塔部材を購入する場合、安全性や組立性などを確保するために、鉄塔メーカーから提示された鉄塔組立図に対して、いかり材の寸法やボルト本数などに間違いがないかを、電力会社側でチェック・確認する必要がある。この際、電力会社の担当者が、製作基準・算出基準を参照しながら、鉄塔のいかり材の寸法やボルト本数などを1つ1つ手計算で行ってチェックしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、製作基準・算出基準を参照しながら、鉄塔のいかり材の寸法やボルト本数などを手計算するには、多大な労力と時間を要するばかりでなく、算出ミス・チェックミスが生じるおそれがあった。
【0006】
そこで本発明は、鉄塔のいかり材の寸法やボルト本数などを適正かつ容易に取得可能な鉄塔部材チェック装置およびチェックプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、鉄塔の基礎寸法と、前記鉄塔の主柱最下位の継手ボルト数とを含む鉄塔入力情報を取得する入力情報取得手段と、前記鉄塔入力情報と所定の演算基準とに基づいて、前記鉄塔のいかり材の寸法と、前記いかり材を取り付けるためのいかり材用ボルトの本数を演算する演算手段と、を備えることを特徴とする鉄塔部材チェック装置である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の鉄塔部材チェック装置において、前記演算手段は、前記いかり材用ボルトがバランスよく配置されるように、前記いかり材用ボルトの縦横の配置数を演算する、ことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の鉄塔部材チェック装置において、前記鉄塔入力情報に、前記鉄塔の基準高さ、下押さえ幅および上押さえ幅の寸法を含み、前記演算手段は、前記鉄塔入力情報に基づいて前記鉄塔の転び値を演算する、ことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から3に記載の鉄塔部材チェック装置において、前記鉄塔入力情報に、前記鉄塔の各主柱の全長を含み、前記演算手段は、前記各主柱を構成する主柱材が規定長さ以下および規定重量以下となるように、前記各主柱材の長さを演算する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、コンピュータを、鉄塔の基礎寸法と、前記鉄塔の主柱最下位の継手ボルト数とを含む鉄塔入力情報を取得する入力情報取得手段と、前記鉄塔入力情報と所定の演算基準とに基づいて、前記鉄塔のいかり材の寸法と、前記いかり材を取り付けるためのいかり材用ボルトの本数を演算する演算手段、として機能させることを特徴とする鉄塔部材チェックプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1および請求項5に記載の発明によれば、鉄塔の基礎寸法と主柱最下位の継手ボルト数とを含む鉄塔入力情報が取得されると、この鉄塔入力情報と所定の演算基準とに基づいて、鉄塔のいかり材の寸法といかり材用ボルトの本数とが自動演算される。このように、いかり材の寸法やいかり材用ボルトの本数を適正かつ容易に取得することができ、算出・チェックに要する労力や時間を削減できるばかりでなく、算出ミスを防止して鉄塔の安全性、健全性を高めることが可能となる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、バランスよくいかり材用ボルトが配置されるように縦横の配置数が自動演算されるため、配置数の検討・チェックに要する労力や時間を削減できるばかりでなく、検討ミスを防止して鉄塔の安全性、健全性を高めることが可能となる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、鉄塔の基準高さ、下押さえ幅および上押さえ幅の寸法が取得されると、この鉄塔入力情報と所定の演算基準とに基づいて、鉄塔の転び値が自動演算される。このため、転び値の算出・チェックに要する労力や時間を削減できるばかりでなく、算出ミスを防止して鉄塔の安全性、健全性を高めることが可能となる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、鉄塔の各主柱の全長が取得されると、この鉄塔入力情報と所定の演算基準とに基づいて、各主柱を構成する主柱材の長さが自動演算される。このため、各主柱材の長さの算出・チェックに要する労力や時間を削減できるばかりでなく、算出ミスを防止して鉄塔の安全性、健全性を高めることが可能となる。しかも、規定長さ以下および規定重量以下となるように主柱材の長さが演算されるため、安全性や組立性、取扱性、運搬性などを確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明の実施の形態に係る鉄塔部材チェック装置を示す概略構成図である。
【
図2】この発明の実施の形態における送電鉄塔を示す正面図である。
【
図3】
図2の送電鉄塔の各脚の高さ関係を示す図である。
【
図4】
図2の送電鉄塔の基礎周辺を示す拡大図である。
【
図5】
図2の送電鉄塔のいかり材用ボルトの配置状態を示す図である。
【
図6】
図2の送電鉄塔の各脚の位置関係を示す概略平面図である。
【
図7】
図1の鉄塔部材チェック装置による基礎据付寸法チェック表を示す図である。
【
図9】
図1の鉄塔部材チェック装置による主柱材チェック表を示す図である。
【
図10】この発明の実施の形態における主柱の基準ゲージと補正後ゲージとを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0018】
図1は、この発明の実施の形態に係る鉄塔部材チェック装置1を示す概略構成図である。この鉄塔部材チェック装置1は、鉄塔のいかり材の寸法やボルト本数などを演算・チェックする装置であり、この実施の形態では、鉄塔が
図2~
図6に示すような送電鉄塔100の場合について、主として説明する。
【0019】
ここで、この実施の形態では、電力会社が送電鉄塔100を建て替えるために鉄塔部材を購入する際に、安全性や組立性などを確保するために、鉄塔メーカーから提示された鉄塔組立図に対して、いかり材の寸法やボルト本数などに間違いがないかを、電力会社側でチェック・確認するものとする。そして、鉄塔部材チェック装置1は、鉄塔メーカーのコンピュータなどと通信自在に接続され、鉄塔メーカーのコンピュータなどから後述する鉄塔入力情報を含む鉄塔組立図を受信・取得するものとする。
【0020】
鉄塔部材チェック装置1は、主として、鉄塔データベース2と、表示部3と、入力部(入力情報取得手段)4と、通信部(入力情報取得手段)5と、演算部(演算手段)6と、これらを制御などする中央処理部7とを備える。
【0021】
鉄塔データベース2は、送電鉄塔100の構造や鉄塔部材などに関する情報を記憶する記憶手段であり、例えば、鉄塔入力情報の一部(後述する制限長さIN12や制限重量IN13など)を記憶する。表示部3は、各種情報や画像を表示するディスプレイであり、例えば、後述する基礎据付寸法チェック表や主柱材チェック表を表示する。入力部4は、各種情報や指令を入力するためのインターフェイスであり、通信部5は、鉄塔メーカーのコンピュータなどの外部装置と通信するためのインターフェイスである。
【0022】
この実施の形態では、基本的に通信部5を介して鉄塔メーカーのコンピュータなどから鉄塔入力情報を受信・取得するが、鉄塔入力情報の一部または全部を入力部4で入力・取得してもよい。
【0023】
鉄塔入力情報とは、鉄塔部材チェック装置1で演算すべき寸法や本数、配置数、転び値などの演算対象を演算するために必要な情報である。この実施の形態では、
図7、
図8に示す基礎据付寸法チェック表や
図9に示す主柱材チェック表における黒塗り部(〇〇等で示した情報)であり、次のような情報が含まれる。ここで、この実施の形態では、
図2に示すように、送電鉄塔100の主柱102は、地面GLから所定の高さ(継脚高さ)である基準脚BL0から第1のベンド点BL1まで第1の転び(傾斜度)で傾斜し、第1のベンド点BL1からさらに上方の第2のベンド点BL2まで第2の転びで傾斜している。
【0024】
・送電鉄塔100の基礎寸法IN1(
図4に示すように、略逆T字型の基礎101の垂直部101aの付け根の寸法)
・送電鉄塔100の主柱最下位の継手ボルト数IN2(主柱102を構成する最下位の主柱材102aとその上の主柱材102aとを連結する継手ボルトの本数)
・送電鉄塔100の第1の基準高さIN3(
図2に示すように、基準脚BL0から第1のベンド点BL1までの高さ)
・送電鉄塔100の第2の基準高さIN4(
図2に示すように、第1のベンド点BL1から第2のベン2点BL2までの高さ)
・送電鉄塔100の第1の幅IN5(
図2に示すように、基準脚BL0における送電鉄塔100の幅寸法)
・送電鉄塔100の第2の幅IN6(
図2に示すように、第1のベンド点BL1における送電鉄塔100の幅寸法)
・送電鉄塔100の第3の幅IN7(
図2に示すように、第2のベンド点BL2における送電鉄塔100の幅寸法)
【0025】
ここで、後述するように、基準脚BL0から第1のベンド点BL1までの転び値を演算する際には、第1の幅IN5が下押さえ幅で第2の幅IN6が上押さえ幅となり、第1のベンド点BL1から第2のベン2点BL2までの転び値を演算する際には、第2の幅IN6が下押さえ幅で第3の幅IN7が上押さえ幅となる。
【0026】
・送電鉄塔100の各主柱102の全長IN8(詳細は後述する)
【0027】
ここで、
図6に示すように、略正四角形の頂部に配置された4つの主柱102、a脚~d脚で送電鉄塔100が構成され、
図3に示すように、a脚の主柱102を基準にして、b脚の主柱102の片継脚が0.5m(b脚の地面がa脚の地面より0.5m低く)、c脚の主柱102の片継脚が2.0mでd脚の主柱102の片継脚が0mとなっている。また、
図2、
図3における符号FLは、施工基面を示す。
【0028】
演算部6は、鉄塔入力情報と所定の演算基準とに基づいて演算対象を演算するタスク・プログラムである。まず、鉄塔メーカーのコンピュータなどから受信した鉄塔組立図から鉄塔入力情報を抽出・取得し、
図7、
図8に示す基礎据付寸法チェック表や
図9に示す主柱材チェック表における黒塗り部に鉄塔入力情報を入力・記入する。そして、鉄塔入力情報と所定の演算基準(送電用山形鋼鉄塔製作基準など)とに基づいて、演算対象を演算して基礎据付寸法チェック表や主柱材チェック表などに入力・記入する。具体的には、次のような演算対象を演算する。
【0029】
第1に、基礎寸法IN1と主柱最下位の継手ボルト数IN2とを含む鉄塔入力情報と、所定の演算基準とに基づいて、送電鉄塔100のいかり材103の寸法と、いかり材103を取り付けるためのいかり材用ボルト104の本数を演算する。ここで、
図4において、中心線CLから左側は、第1の面(例えば、a脚とd脚を正面から見た面)における基礎101の周辺を示し、中心線CLから右側は、第1の面に略垂直な第2の面(例えば、a脚とb脚を正面から見た面)における同基礎101(いかり材103)の周辺を示す。つまり、いかり材103の底面は、平面図上で(上から見て)T字状に延びている。そして、演算対象であるいかり材103の寸法は、第1の面に延びる長い底辺の寸法OUT1と、第2の面に延びる短い底辺の寸法OUT2である。
【0030】
具体的には、次のような算出式に従って演算・算出する。
【0031】
長い底辺の寸法OUT1=基礎寸法IN1+第1の規定長(例えば、200mm)
短い底辺の寸法OUT2=長い底辺の寸法OUT1÷2+第2の規定長(例えば、100mm)
また、いかり材103を主柱102に取り付けるために必要ないかり材用ボルト104の本数OUT3は、次の算出規定・ルールに従って演算・算出する。すなわち、本数OUT3は、主柱最下位の継手ボルト数IN2の80%を切り上げした整数値とする。例えば、主柱最下位の継手ボルト数IN2が12本の場合、12×80%=9.6のため10本とする。このような算出式および算出規定が所定の演算基準となっており、後述する他の演算対象についても同様である。ここで、演算される本数OUT3は、後述するように、いかり材103の縦方向と横方向に配置されるいかり材用ボルト104の総和であり、縦横で重複・共有するいかり材用ボルト104の数も含まれる。
【0032】
このような演算を各主柱102(a脚~d脚)に対して行い、その結果OUT1、OUT2、OUT3を
図8に示す基礎据付寸法チェック表に入力する。
【0033】
第2に、いかり材用ボルト104がバランスよく配置されるように、次の演算規定に従って、いかり材用ボルト104の縦横の配置数を演算する。ここで、
図4に示すように、第1の面においては、逆T字状にいかり材用ボルト104を配置し、第2の面においては、L字状にいかり材用ボルト104を配置するものとする。まず、いかり材用ボルト104の本数OUT3を縦方向・略垂直方向と横方向・略水平方向とに半数ずつ振り分ける。例えば、本数OUT3が10本の場合、縦方向に5本、横方向に5本として略等間隔に配置する。この結果、第2の面においては、
図4に示すように、L字状に縦方向に5本、横方向に5本配置し、角部(黒丸)のいかり材用ボルト104が縦横で重複・共有するいかり材用ボルト104となる。
【0034】
一方、第1の面の横方向においては、中心部の(縦方向に配置される)いかり材用ボルト104を中心に、左右に等しい数を配置する。例えば、
図5に示すように、縦横で重複・共有するいかり材用ボルト104(図中黒丸)が2本ある場合、残りの3本では、左右に等しく配置できないため、1本足して6本する。
【0035】
この結果、縦方向の配置数OUT4が5本、第2の面における横方向(横短)の配置数OUT4が5本、第1の面における横方向(横長)の配置数OUT4が6本となる。このような演算を各主柱102(a脚~d脚)に対して行い、各配置数OUT4を
図8に示す基礎据付寸法チェック表に入力する。
【0036】
第3に、送電鉄塔100の基準高さIN3、IN4、下押さえ幅および上押さえ幅を含む鉄塔入力情報と、所定の演算基準とに基づいて、送電鉄塔100の転び値を演算する。すなわち、基準脚BL0から第1のベンド点BL1までにおける主柱102の横方向のずれ量(根開き)、第1のベンド点BL1から第2のベンド点BL2までにおける主柱102の横方向のずれ量を転び値として演算する。この際、隣接する主柱102側(例えば、a脚からb脚側)への転び値と、対角の主柱102側(例えば、a脚からc脚側)への転び値(二転び値)とを演算する。すなわち、この実施の形態では、
図7に示すように、基準脚BL0から第1のベンド点BL1までにおける、隣接する主柱102側への転び値OUT5と、対角の主柱102側への二転び値OUT6、第1のベンド点BL1から第2のベンド点BL2までにおける、隣接する主柱102側への転び値OUT7と、対角の主柱102側への二転び値OUT8を演算する。
【0037】
具体的には、次のような算出式に従って演算・算出する。
転び値OUT5=[(下押さえ幅IN5-上押さえ幅IN6)÷(基準高さIN3-ベンド下IN91(例えば、20mm))]÷2×1000
2転び値OUT6=転び値OUT5×√2
転び値OUT7=[(下押さえ幅IN6-上押さえ幅IN7)÷(基準高さIN4+ベンド下IN92(例えば、20mm))]÷2×1000
2転び値OUT8=転び値OUT7×√2
【0038】
これらの転び値OUT5、6、7、8は、高さ1m当たりに傾く水平方向の長さ(根開き)を示し、これらの値が規定値内であるか否かを判定し、その判定結果を基礎据付寸法チェック表に入力・記入するようにしてもよい。
【0039】
また、この実施の形態では、これらの転び値OUT5、6、7、8による実長OUT9、10、11、12(高さ1m当たりの斜辺の長さ、例えば、OUT9=√(OUT5
2+1000
2))を演算し、転び値OUT5に基づいて主柱102の傾斜角度(傾きの度数)OUT13を演算する。さらに、傾斜角度OUT13に基づいて、ゲージの補正係数OUT14を演算する。ここで、補正係数OUT14とは、
図10に示すように、傾斜した主柱102(主柱材102a)の一辺から長手方向に垂直に延びる基準ゲージと、同一辺から水平に延びて基準ゲージの自由端に至る補正後ゲージと長さの比(基準ゲージの長さ/補正後ゲージの長さ)を示す。
【0040】
また、同様にして所定の演算基準に基づいて、
図8に示すように、各主柱102(a脚~d脚)に対して、基礎基準深さ、基礎深さ、転び測定用高さ、基礎立上り部の根開き(背と基線)、地面・GL部の根開き、基礎下部の根開き、転びの測定用設計値、面方向の斜距離、対角の斜距離を演算するが、ここでは詳述を省略する。
【0041】
第4に、送電鉄塔100の各主柱102の全長IN8を含む鉄塔入力情報と、所定の演算基準とに基づいて、各主柱102を構成する主柱材102aが規定長さ以下および規定重量以下となるように、各主柱材102aの長さを演算する。すなわち、複数の主柱材102aを連結して全長がIN8の主柱102を構成する際に、主柱材102aが規定長さ以下および規定重量以下となるように、主柱材102aの長さを演算する。ここで、この実施の形態では、別の鉄塔入力情報に基づいて各主柱102の全長IN8を演算することで、間接的に全長IN8を取得する。
【0042】
すなわち、
図9に示すように、各主柱102(a脚~d脚)の最下パネル高さIN10と片継脚IN11とが鉄塔入力情報に含まれ、次のような算出式に従って各主柱102の全長IN8を演算・算出する。
全長IN8=(最下パネル高さIN10+片継脚IN11)×転び値の実長OUT9/1000
【0043】
次に、このような全長IN8の主柱102を構成するために必要で、規定長さ以下および規定重量以下の主柱材102aの長さと本数を演算する。この際、安全性や組立性、取扱性、運搬性などを向上させるために、すべての主柱102の主柱材102aの長さができるだけ近くなるように演算する。すなわち、主柱材102aの制限長さIN12と制限重量IN13とが鉄塔入力情報に含まれ、まず、主柱材102aが制限長さIN12以下になるように全長IN8の分割数(本数)OUT15を演算する。続いて、各主柱材102aの長さができるだけ近くなるように(特定の主柱材102aのみが長すぎないように)、追加分割数(本数)OUT16を演算する。
【0044】
例えば、a脚、b脚の全長IN8が15000mm、c脚の全長IN8が8100mm、d脚の全長IN8が6000mmで、制限長さIN12が8000mmとする。この場合、a脚、b脚、c脚の分割数OUT15は「2」、d脚の分割数OUT15は「0」(分割しないで1本)と演算する。この分割数OUT15で、a脚、b脚の主柱材102aの長さが7500mm、c脚の主柱材102aの長さが4050mm、d脚の主柱材102aの長さが6000mmとなり、a脚、b脚の主柱材102aが他に比べて長く取扱性などが劣る。このため、a脚、b脚の追加分割数OUT16を「1」、c脚、d脚の追加分割数OUT16を「0」と演算する。
【0045】
この結果、a脚、b脚は、3本で構成されて主柱材102aの長さOUT17が5000mm、c脚は、2本で構成されて主柱材102aの長さOUT17が4050mm、d脚は、1本で構成されて主柱材102aの長さOUT17が6000mmとなる。このように、この実施の形態では、追加分割数OUT16を自動的に演算しているが、入力部4から任意の値を入力できるようにしてもよい。
【0046】
次に、各主柱材102aの重量OUT18を、鉄塔データベース2に記憶された主柱材102aの単位長さ当たりの重量と、長さOUT17に従って演算する。そして、重量OUT18が制限重量IN13以下であるか否かを判定し、制限重量IN13よりも大きい場合には、制限重量IN13以下になるまで分割数OUT15または追加分割数OUT16を増やす。その結果、制限重量IN13以下になった時点で判定結果OUT19に「〇」を入力・記入する。
【0047】
以上のように、この鉄塔部材チェック装置1によれば、まず、送電鉄塔100の基礎寸法IN1と主柱最下位の継手ボルト数IN2とを含む鉄塔入力情報が取得されると、この鉄塔入力情報と所定の演算基準とに基づいて、送電鉄塔100のいかり材103の寸法OUT1、2といかり材用ボルト104の本数OUT3とが自動演算される。このように、いかり材103の寸法OUT1、2やいかり材用ボルト104の本数OUT3を適正かつ容易に取得することができ、算出・チェックに要する労力や時間を削減できるばかりでなく、算出ミスを防止して送電鉄塔100の安全性、健全性を高めることが可能となる。
【0048】
しかも、バランスよくいかり材用ボルト104が配置されるように縦横の配置数OUT4が自動演算されるため、配置数OUT4の検討・チェックに要する労力や時間を削減できるばかりでなく、検討ミスを防止して送電鉄塔100の安全性、健全性を高めることが可能となる。
【0049】
また、送電鉄塔100の基準高さIN3、IN4、下押さえ幅および上押さえ幅の寸法(送電鉄塔100の幅IN5、6、7)が取得されると、この鉄塔入力情報と所定の演算基準とに基づいて、送電鉄塔100の転び値OUT5、6、7、8が自動演算される。このため、転び値OUT5、6、7、8の算出・チェックに要する労力や時間を削減できるばかりでなく、算出ミスを防止して送電鉄塔100の安全性、健全性を高めることが可能となる。
【0050】
また、送電鉄塔100の各主柱102の全長IN8が演算、取得されると、この鉄塔入力情報と所定の演算基準とに基づいて、各主柱102を構成する主柱材102aの長さが自動演算される。このため、各主柱材102aの長さの算出・チェックに要する労力や時間を削減できるばかりでなく、算出ミスを防止して送電鉄塔100の安全性、健全性を高めることが可能となる。しかも、規定長さ以下および規定重量以下となるように主柱材102aの長さが演算されるため、安全性や組立性、取扱性、運搬性などを確保することが可能となる。
【0051】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態は、鉄塔メーカーから受信した鉄塔組立図からすべての鉄塔入力情報を抽出・取得して、全演算対象を演算する場合について説明したが、個々・特定の鉄塔入力情報(例えば、送電鉄塔100の基準高さIN3、4および幅IN5、6、7)を入力、取得して、個々・特定の演算対象(例えば、転び値OUT5、6、7、8)を演算するようにしてもよい。また、鉄塔が送電鉄塔100の場合について説明したが、送電鉄塔100以外の鉄塔にも適用できることは勿論である。
【0052】
ところで、次のような鉄塔部材チェックプログラムを汎用のコンピュータにインストールして鉄塔部材チェック装置1を構成してもよい。すなわち、コンピュータを、送電鉄塔100の基礎寸法IN1と、送電鉄塔100の主柱最下位の継手ボルト数IN2とを含む鉄塔入力情報を取得する入力情報取得手段(入力部4、通信部5)と、鉄塔入力情報と所定の演算基準とに基づいて、送電鉄塔100のいかり材103の寸法や、いかり材103を取り付けるためのいかり材用ボルト104の本数などを演算する演算手段(演算部6)、として機能させることを特徴とする鉄塔部材チェックプログラム。
【符号の説明】
【0053】
1 鉄塔部材チェック装置
2 鉄塔データベース
3 表示部
4 入力部(入力情報取得手段)
5 通信部(入力情報取得手段)
6 演算部(演算手段)
100 送電鉄塔(鉄塔)
101 基礎
102 主柱
102a 主柱材
103 いかり材
104 いかり材用ボルト