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特許7509016ワークの欠陥凹凸判別装置及び同方法並びにプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】ワークの欠陥凹凸判別装置及び同方法並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/89 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
G01N21/89 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020201895
(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公開番号】P2022089476
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】長井 慶郎
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-2125(JP,A)
【文献】特開平5-322543(JP,A)
【文献】特開2009-47517(JP,A)
【文献】国際公開第2017/119250(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを照明光で照明する照明装置と、
撮影手段と、
ワークまたは照明光または撮影手段のうちの少なくともいずれかを他のものに対して相対的に移動させる移動手段と、
を備え、
前記移動手段によりワークまたは照明光または撮影手段のうちの少なくともいずれかを他のものに対して相対的に移動させながら、前記照明光で照明されたワークを前記撮影手段により撮影し、さらに、
前記撮影により得られた、照明光の照射部位に対応する明部を有する画像ないし照明光の非照射部位に対応する暗部を有する画像を含む複数の画像に基づいて、前記明部にワークの表面欠陥として現れる暗点の位置と、前記暗部にワークの表面欠陥として現れる明点の位置と、前記照明光または撮影手段に対するワークの相対位置を示す指標と明点ないし暗点のいずれかないし両方の位置との関係を表す近似式を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出した近似式から、前記暗点と明点の相対位置関係を示す凹凸判別指数を計算し、その凹凸判別指数に基づいて前記表面欠陥の凹凸を判別する判別手段と、
を備えたことを特徴とするワークの欠陥凹凸判別装置。
【請求項2】
前記凹凸判別指数は、撮影前半または撮影後半のいずれか一方または両方において、暗点と明点が所定の位置関係にある回数を含む請求項1に記載のワークの欠陥凹凸判別装置。
【請求項3】
前記凹凸判別指数は、撮影前半または撮影後半のいずれか一方または両方において、暗点と明点が所定の位置関係にある際の、暗点または明点の確からしさを示す指標を含んでいる請求項1または2に記載のワークの欠陥凹凸判別装置。
【請求項4】
前記撮影手段ないし照明光に対するワークの相対的な移動方向に応じて前記凹凸判別指数の符号を変える請求項1~3のいずれかに記載のワークの欠陥凹凸判別装置。
【請求項5】
前記撮影手段の光軸に対する撮影手段の回転角に応じて、画像上の暗点と明点の座標または画像を回転させる請求項1~4のいずれかに記載のワークの欠陥凹凸判別装置。
【請求項6】
前記照明光ないし撮影手段に対するワークの相対位置を示す指標として、撮影フレーム番号、前記移動手段に備えられたロータリーエンコーダの回転数、測定時刻、照明光を移動させる場合の照明光の座標、撮影手段を移動させる場合の撮影手段の座標の少なくともいずれかを含む請求項1~5のいずれかに記載のワークの欠陥凹凸判別装置。
【請求項7】
移動手段により、ワークまたはワークを照明する照明光または撮影手段のうちの少なくともいずれかを他のものに対して相対的に移動させながら、前記照明光で照明されたワークを撮影手段により撮影する撮影ステップと、
前記撮影ステップにより得られた、照明光の照射部位に対応する明部を有する画像ないし照明光の非照射部位に対応する暗部を有する画像を含む複数の画像に基づいて、前記明部にワークの表面欠陥として現れる暗点の位置と、前記暗部にワークの表面欠陥として現れる明点の位置と、前記照明光または撮影手段に対するワークの相対位置を示す指標と明点ないし暗点のいずれかないし両方の位置との関係を表す近似式を算出する算出ステップと、
前記算出ステップにより算出した近似式から、前記暗点と明点の相対位置関係を示す凹凸判別指数を計算し、その凹凸判別指数に基づいて前記表面欠陥の凹凸を判別する判別ステップと、
を備えたことを特徴とするワークの欠陥凹凸判別方法。
【請求項8】
前記凹凸判別指数は、撮影前半または撮影後半のいずれか一方または両方において、暗点と明点が所定の位置関係にある回数を含む請求項7に記載のワークの欠陥凹凸判別方法。
【請求項9】
前記凹凸判別指数は、撮影前半または撮影後半のいずれか一方または両方において、暗点と明点が所定の位置関係にある際の、暗点または明点の確からしさを示す指標を含んでいる請求項7または8に記載のワークの欠陥凹凸判別方法。
【請求項10】
前記撮影手段ないし照明光に対するワークの相対的な移動方向に応じて前記凹凸判別指数の符号を変える請求項7~9のいずれかに記載のワークの欠陥凹凸判別方法。
【請求項11】
前記撮影手段の光軸に対する撮影手段の回転角に応じて、画像上の暗点と明点の座標または画像を回転させる請求項7~10のいずれかに記載のワークの欠陥凹凸判別方法。
【請求項12】
前記照明光ないし撮影手段に対するワークの相対位置を示す指標として、撮影フレーム番号、前記移動手段に備えられたロータリーエンコーダの回転数、測定時刻、照明光を移動させる場合の照明光の座標、撮影手段を移動させる場合の撮影手段の座標の少なくともいずれかを含む請求項7~11のいずれかに記載のワークの欠陥凹凸判別方法。
【請求項13】
移動手段により、ワークまたはワークを照明する照明光または撮影手段のうちの少なくともいずれかを他のものに対して相対的に移動させながら、前記照明光で照明されたワークを撮影手段により撮影することにより得られた、照明光の照射部位に対応する明部を有する画像ないし照明光の非照射部位に対応する暗部を有する画像を含む複数の画像に基づいて、前記明部にワークの表面欠陥として現れる暗点の位置と、前記暗部にワークの表面欠陥として現れる明点の位置と、前記照明光または撮影手段に対するワークの相対位置を示す指標と明点ないし暗点のいずれかないし両方の位置との関係を表す近似式を算出する算出ステップと、
前記算出ステップにより算出した近似式から、前記暗点と明点の相対位置関係を示す凹凸判別指数を計算し、その凹凸判別指数に基づいて前記表面欠陥の凹凸を判別する判別ステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項14】
前記凹凸判別指数は、撮影前半または撮影後半のいずれか一方または両方において、暗点と明点が所定の位置関係にある回数を含む請求項13に記載のプログラム。
【請求項15】
前記凹凸判別指数は、撮影前半または撮影後半のいずれか一方または両方において、暗点と明点が所定の位置関係にある際の、暗点または明点の確からしさを示す指標を含んでいる請求項13または14に記載のプログラム。
【請求項16】
前記撮影手段ないし照明光に対するワークの相対的な移動方向に応じて前記凹凸判別指数の符号を変える請求項13~15のいずれかに記載のプログラム。
【請求項17】
前記撮影手段の光軸に対する撮影手段の回転角に応じて、画像上の暗点と明点の座標または画像を回転させる請求項13~16のいずれかに記載のプログラム。
【請求項18】
前記照明光ないし撮影手段に対するワークの相対位置を示す指標として、撮影フレーム番号、前記移動手段に備えられたロータリーエンコーダの回転数、測定時刻、照明光を移動させる場合の照明光の座標、撮影手段を移動させる場合の撮影手段の座標の少なくともいずれかを含む請求項13~17のいずれかに記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体等のワークの塗装面等に生じている表面欠陥が凹欠陥か凸欠陥かを判別するワークの欠陥凹凸判別装置及び同方法並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車体の塗装面の表面欠陥を検出して、欠陥部分を補修することが従来より行われているが、表面欠陥が凹欠陥なのか凸欠陥なのかによって、欠陥補修の方法が異なる。このため、単に表面欠陥を検出するのみならず、その表面欠陥が凹欠陥か凸欠陥かを判別することが要求されている。
【0003】
このようなワークの表面欠陥が凹欠陥か凸欠陥かの判別方法として、特許文献1には、鋼材の表面欠陥を光学的に検出する表面欠陥検出方法であって、2つ以上の弁別可能な光源を利用して同一の検査対象部位に異なる方向から略同一の入射角度で鋼材の移動方向と直交する方向の線状照明光を連続照射して反射光による画像を取得し、取得した画像間で差分処理を行うことによって検査対象部位における表面欠陥を検出するとともに、取得した画像間で差分処理を行うことによって得られた画像の隣り合った明部及び暗部を抽出し、抽出された隣り合った明部及び暗部の位置関係と前記照明光の照射方向とから凹凸性の表面欠陥の有無を判定する方法が開示されている。
【0004】
また特許文献2には、平板に対して、並列する明暗の照明を照射し、ラインセンサーにて明暗の境界部を観察し、板を動かしながらラインセンサーで撮影した1次元の画像を順番に並べて2次元画像を合成し、凹欠陥部ないし凸欠陥部では明るいブロブと暗いブロブが隣接する画像を得て、その明暗の位置関係にて凹欠陥か凸欠陥かを判別する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6394514号公報
【文献】米国特許第7105848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、2つ以上の弁別可能な光源を使用する必要があることから、装置が複雑化するという課題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術では、ワークをラインセンサーで反射測定する場合、ワークが平面であっても測定部位によってうねりが生じたり、あるいは三次元の自由曲面であったりした場合には、欠陥そのものの測定ができないという課題がある。
【0008】
この発明はこのような技術的背景に鑑みてなされたものであって、ワークまたは照明または撮影手段の少なくともいずれかを相対的に移動させながら、1つの方向からの照明のみを使用し、しかも測定部位の形状に拘わらずワークの表面欠陥が凹欠陥か凸欠陥かを判別できるワークの欠陥凹凸判別装置及び同方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は以下の手段によって達成される。
(1)ワークを照明光で照明する照明装置と、
撮影手段と、
ワークまたは照明光または撮影手段のうちの少なくともいずれかを他のものに対して相対的に移動させる移動手段と、
を備え、
前記移動手段によりワークまたは照明光または撮影手段のうちの少なくともいずれかを他のものに対して相対的に移動させながら、前記照明光で照明されたワークを前記撮影手段により撮影し、さらに、
前記撮影により得られた、照明光の照射部位に対応する明部を有する画像ないし照明光の非照射部位に対応する暗部を有する画像を含む複数の画像に基づいて、前記明部にワークの表面欠陥として現れる暗点の位置と、前記暗部にワークの表面欠陥として現れる明点の位置と、前記照明光または撮影手段に対するワークの相対位置を示す指標と明点ないし暗点のいずれかないし両方の位置との関係を表す近似式を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出した近似式から、前記暗点と明点の相対位置関係を示す凹凸判別指数を計算し、その凹凸判別指数に基づいて前記表面欠陥の凹凸を判別する判別手段と、
を備えたことを特徴とするワークの欠陥凹凸判別装置。
(2)前記凹凸判別指数は、撮影前半または撮影後半のいずれか一方または両方において、暗点と明点が所定の位置関係にある回数を含む前項1に記載のワークの欠陥凹凸判別装置。
(3)前記凹凸判別指数は、撮影前半または撮影後半のいずれか一方または両方において、暗点と明点が所定の位置関係にある際の、暗点または明点の確からしさを示す指標を含んでいる前項1または2に記載のワークの欠陥凹凸判別装置。
(4)前記撮影手段ないし照明光に対するワークの相対的な移動方向に応じて前記凹凸判別指数の符号を変える前項1~3のいずれかに記載のワークの欠陥凹凸判別装置。
(5)前記撮影手段の光軸に対する撮影手段の回転角に応じて、画像上の暗点と明点の座標または画像を回転させる前項1~4のいずれかに記載のワークの欠陥凹凸判別装置。
(6)前記照明光ないし撮影手段に対するワークの相対位置を示す指標として、撮影フレーム番号、前記移動手段に備えられたロータリーエンコーダの回転数、測定時刻、照明光を移動させる場合の照明光の座標、撮影手段を移動させる場合の撮影手段の座標の少なくともいずれかを含む前項1~5のいずれかに記載のワークの欠陥凹凸判別装置。
(7)移動手段により、ワークまたはワークを照明する照明光または撮影手段のうちの少なくともいずれかを他のものに対して相対的に移動させながら、前記照明光で照明されたワークを撮影手段により撮影する撮影ステップと、
前記撮影ステップにより得られた、照明光の照射部位に対応する明部を有する画像と照明光の非照射部位に対応する暗部を有する画像を含む複数の画像に基づいて、前記明部にワークの表面欠陥として現れる暗点の位置と、前記暗部にワークの表面欠陥として現れる明点の位置と、前記照明光または撮影手段に対するワークの相対位置を示す指標と明点ないし暗点のいずれかないし両方の位置との関係を表す近似式を算出する算出ステップと、
前記算出ステップにより算出した近似式から、前記暗点と明点の相対位置関係を示す凹凸判別指数を計算し、その凹凸判別指数に基づいて前記表面欠陥の凹凸を判別する判別ステップと、
を備えたことを特徴とするワークの欠陥凹凸判別方法。
(8)前記凹凸判別指数は、撮影前半または撮影後半のいずれか一方または両方において、暗点と明点が所定の位置関係にある回数を含む前項7に記載のワークの欠陥凹凸判別方法。
(9)前記凹凸判別指数は、撮影前半または撮影後半のいずれか一方または両方において、暗点と明点が所定の位置関係にある際の、暗点または明点の確からしさを示す指標を含んでいる前項7または8に記載のワークの欠陥凹凸判別方法。
(10)前記撮影手段ないし照明光に対するワークの相対的な移動方向に応じて前記凹凸判別指数の符号を変える前項7~9のいずれかに記載のワークの欠陥凹凸判別方法。
(11)前記撮影手段の光軸に対する撮影手段の回転角に応じて、画像上の暗点と明点の座標または画像を回転させる前項7~10のいずれかに記載のワークの欠陥凹凸判別方法。
(12)前記照明光ないし撮影手段に対するワークの相対位置を示す指標として、撮影フレーム番号、前記移動手段に備えられたロータリーエンコーダの回転数、測定時刻、照明光を移動させる場合の照明光の座標、撮影手段を移動させる場合の撮影手段の座標の少なくともいずれかを含む前項7~11のいずれかに記載のワークの欠陥凹凸判別方法。
(13)移動手段により、ワークまたはワークを照明する照明光または撮影手段のうちの少なくともいずれかを他のものに対して相対的に移動させながら、前記照明光で照明されたワークを撮影手段により撮影することにより得られた、照明光の照射部位に対応する明部を有する画像ないし照明光の非照射部位に対応する暗部を有する画像を含む複数の画像に基づいて、前記明部にワークの表面欠陥として現れる暗点の位置と、前記暗部にワークの表面欠陥として現れる明点の位置と、前記照明光または撮影手段に対するワークの相対位置を示す指標と明点ないし暗点のいずれかないし両方の位置との関係を表す近似式を算出する算出ステップと、
前記算出ステップにより算出した近似式から、前記暗点と明点の相対位置関係を示す凹凸判別指数を計算し、その凹凸判別指数に基づいて前記表面欠陥の凹凸を判別する判別ステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
(14)前記凹凸判別指数は、撮影前半または撮影後半のいずれか一方または両方において、暗点と明点が所定の位置関係にある回数を含む前項13に記載のプログラム。
(15)前記凹凸判別指数は、撮影前半または撮影後半のいずれか一方または両方において、暗点と明点が所定の位置関係にある際の、暗点または明点の確からしさを示す指標を含んでいる前項13または14に記載のプログラム。
(16)前記撮影手段ないし照明光に対するワークの相対的な移動方向に応じて前記凹凸判別指数の符号を変える前項13~15のいずれかに記載のプログラム。
(17)前記撮影手段の光軸に対する撮影手段の回転角に応じて、画像上の暗点と明点の座標または画像を回転させる前項13~16のいずれかに記載のプログラム。
(18)前記照明光ないし撮影手段に対するワークの相対位置を示す指標として、撮影フレーム番号、前記移動手段に備えられたロータリーエンコーダの回転数、測定時刻、照明光を移動させる場合の照明光の座標、撮影手段を移動させる場合の撮影手段の座標の少なくともいずれかを含む前項13~17のいずれかに記載のプログラム。
【発明の効果】
【0010】
前項(1)(7)及び(13)に記載の発明によれば、移動手段により、ワークまたはワークを照明する照明光または撮影手段のうちの少なくともいずれかを他のものに対して相対的に移動させながら、照明光の照射部位に対応する明部を有する画像ないし照明光の非照射部位に対応する暗部を有する画像を含む複数の画像に基づいて、明部にワークの表面欠陥として現れる暗点の位置と、暗部にワークの表面欠陥として現れる明点の位置と、照明光または撮影手段に対するワークの相対位置を示す指標との関係を表す近似式が算出される。そして、算出された近似式から、暗点と明点の相対位置関係を示す凹凸判別指数が計算され、その凹凸判別指数に基づいて表面欠陥の凹凸が判別される。
【0011】
このように、ワークまたは照明光または撮影手段のうちの少なくともいずれかを他のものに対して相対的に移動させながら撮影を行うことができ、ワークを移動させながら撮影する場合にはワークの相対的な移動を停止して撮影する必要がないのに加えて、複数の方向からワークを照明するための複数の照明装置は不要で、1個の照明装置で良く、構成が簡素化される。しかも、ワークをラインセンサーで反射測定するものではないから、測定部位の表面形状に拘わらず、表面欠陥が凹欠陥か凸欠陥かの判別を行うことができる。
【0012】
前項(2)(8)及び(14)に記載の発明によれば、撮影前半または撮影後半のいずれか一方または両方において、暗点と明点が所定の位置関係にある回数を含む凹凸判別指数により、簡素で正確な判別を行うことができる。
【0013】
前項(3)(9)及び(15)に記載の発明によれば、撮影前半または撮影後半のいずれか一方または両方において、暗点と明点が所定の位置関係にある際の、暗点または明点の確からしさを示す指標を含んでいるから、より精度の高い判別を行うことができる。
【0014】
前項(4)(10)及び(16)に記載の発明によれば、撮影手段ないし照明光に対するワークの相対的な移動方向が変わっても、凹凸判別指数の符号を変えることで、正確な判別を行うことができる。
【0015】
前項(5)(11)及び(17)に記載の発明によれば、撮影手段が自身の光軸に対して回転していても、その回転角に応じて、画像上の暗点と明点の座標または画像を回転させるから、正確な判別を行うことができる。
【0016】
前項(6)(12)及び(18)に記載の発明によれば、照明光ないし撮影手段に対するワークの相対位置を示す指標として、撮影フレーム番号、移動手段に備えられたロータリーエンコーダの回転数、測定時刻、照明光を移動させる場合の照明光の座標、撮影手段を移動させる場合の撮影手段の座標の少なくともいずれかを含むから、画像の明部に現れる暗点の位置と、画像の暗部に現れる明点の位置と、照明光に対するワークの相対位置を示す指標との関係を表す近似式の算出が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明の一実施形態に係るワークの欠陥凹凸判別装置の構成例を示すブロック図である。
図2】撮影手段によって撮影された画像の一例を示す図である。
図3】(A)~(C)は、凸欠陥を有するワークが左から右に移動した場合の、撮影手段で撮影された画像(各図の左側の図)と、光学配置(各図の右側の図)を示す図である。
図4】(D)~(F)は、図3(A)~(C)の続きである。
図5】(A)~(C)は、凹欠陥を有するワークが左から右に移動した場合の、撮影手段で撮影された画像(各図の左側の図)と、光学配置(各図の右側の図)を示す図である。
図6】(D)~(F)は、図5(A)~(C)の続きである。
図7】凸欠陥について、各撮影フレーム番号と、画像の明部上で暗く映る暗点のX座標の関係を黒丸で表し、撮影フレーム番号と、暗部上で明るく映る明点のX座標の関係を白丸で表し、これらをプロットしたグラフである。
図8】(A)~(F)は、図3(A)~(C)及び図4(D)~(F)の各画像から、矩形枠で画像を切り抜いた状態を説明するための図である。
図9図8(A)~(F)で切り抜いた画像において、明部上に現れる暗点のX座標と、暗部上に現れる明点のX座標をそれぞれ求めて、撮影フレーム番号に対してそれぞれプロットしたグラフである。
図10】(A)~(F)は、図5(A)~(C)及び図6(D)~(F)の各画像から、矩形枠で画像を切り抜いた状態を説明するための図である。
図11図8(A)~(F)で切り抜いた画像において、明部上に現れる暗点のX座標と、暗部上に現れる明点のX座標をそれぞれ求めて、撮影フレーム番号に対してそれぞれプロットしたグラフである。
図12図9のグラフにフレーム番号を付した図である。
図13図9に対応するグラフであり、凸欠陥を有するワークが図1の右方向から左方向へ移動したときの、画像の明部上に現れる暗点のX座標と、暗部上に現れる明点のX座標をそれぞれ求めて、撮影フレーム番号に対してそれぞれプロットしたグラフである。
図14図11に対応するグラフであり、凹欠陥を有するワークが図1の右方向から左方向へ移動したときの、画像の明部上に現れる暗点のX座標と、暗部上に現れる明点のX座標をそれぞれ求めて、撮影フレーム番号に対してそれぞれプロットしたグラフである。
図15】凸欠陥を有するワークの位置を固定し照明光を移動させた場合に得られる、暗点及び明点の座標とフレーム番号との関係を示すグラフである。
図16】凹欠陥を有するワークの位置を固定し照明光を移動させた場合に得られる、暗点及び明点の座標とフレーム番号との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、この発明の一実施形態に係るワークの欠陥凹凸判別装置の構成例を示すブロック図である。
【0020】
このワークの欠陥凹凸判別装置は、照明装置1と、撮影手段としてのカメラ2と、演算部3と、表示部4等を備えている。
【0021】
照明装置1は、移動手段としてのベルトコンベア(図示せず)により、製造ライン上を図1の矢印A方向に移動するワーク100に対して、一つの縞状の照明光により照明を行うものである。ワーク100が一定距離移動する毎に、照明装置1からワークに対して照明され、ワーク100にて反射した光をカメラ2にて逐次撮影する。
【0022】
演算部3は、カメラ2で撮影された画像から、ワークの表面欠陥を検出すると共に、検出した表面欠陥が凹欠陥か凸欠陥かを判別するものである。演算部3は、表面欠陥の検出処理、凹欠陥か凸欠陥かの判別処理、その他の演算、制御を行うCPU3aと、CPU3aの動作プログラムや各種のデータを保持するROM3bと、CPU3aが動作プログラムに従って処理を実行する際の作業領域となるRAM3cと、ハードディスク装置等の記憶部(図示せず)等を備えている。演算部3は、専用の装置であっても良いし、汎用のパーソナルコンピュータによって構成されていても良い。
【0023】
表示部4は、演算部3により実行された表面欠陥が凹欠陥か凸欠陥かの判別結果等を表示する。
【0024】
この実施形態では、車体表面のようにワーク表面にクリア塗装が施されていたり、金属光沢をもつような、表面が鏡面反射するワーク100を考える。
【0025】
ワーク100の表面上に欠陥が存在しない場合、照明装置1からの照明光がワーク100の表面で鏡面反射した後、カメラ2にて撮影される。カメラ2からは、図2に示すような明帯部21の両側に暗帯部22、23が存在する縞模様の撮影画像20が得られる。撮影画像20における明帯部21は、照明装置1の縞状の光帯に対応し、換言すれば照明光の照射部位に対応する。暗帯部22、23は図1に示すように、照明装置1の両側の光帯が存在しない領域11、12に対応し、換言すれば照明光の非照射部位に対応する。
【0026】
ただし、明帯部21における暗帯部22、23との境界付近は、明帯部21の中央部よりも明るさが少し暗く映る。
【0027】
なお、この実施形態では発光領域が1箇所の照明装置1を使用しているが、例えば液晶ディスプレイ等を用いて縞状の複数の発光部と非発光部を交互に表示させた照明装置を使用しても良い。
【0028】
ワーク100の位置は、例えばワーク100を搭載しているベルトコンベアに装着したエンコーダーにて検出する。ワーク100が一定量移動するたびにエンコーダーからの信号よりトリガーを発生させて撮影を行うことで、ワーク100の表面の画像の位置が特定される。
【0029】
図1の例では、簡単のため平板のワーク100を示しているが、照明光による明帯部21と明帯部21に隣接する少なくとも一つの暗帯部22、23がカメラ2による撮影画像に含まれる範囲内の傾斜を持つワーク100であれば、例えば車体のような自由曲面でも構わない。
【0030】
次に、表面欠陥を有するワーク100が、図1の矢印Aのように左から右に移動した場合、カメラ2で撮影される画像20において表面欠陥がどのように現れるかを説明する。
【0031】
表面欠陥が存在する場合、欠陥表面で照明光の反射方向が変わるため、欠陥が存在しない場合に較べて、異なる位置の照明装置1からの光がカメラ2の撮影面に入射する。
【0032】
そのため、ワーク100の表面上に欠陥がある場合、欠陥部では欠陥周辺に比べて明るさが異なる画像が得られる。
<凸欠陥の場合>
図3(A)~(C)及び図4(D)~(F)に、凸欠陥110を有するワーク100が左から右に移動した場合の、カメラ2で撮影された画像20(各図の左側の図)と、そのときの光学配置(各図の右側の図)を示す。なお、図3(A)~(C)及び図4(D)~(F)の各撮影画像20において、便宜上、暗帯部22、23も明帯部21と同様に白色の状態で示しているが、実際には図2のように暗く現れる。図5以降においても同様である。
【0033】
図3(A)~(C)には、凸欠陥110のカメラ撮影面上の位置が、照明装置1の光帯の左エッジ部の映る位置付近に来た際の撮影画像20と光学配置が示されている。
【0034】
図3(A)~(C)の測定系では、凸欠陥110が存在しない場合と比較して、右側の照明位置1aから出た光が凸欠陥110の右側斜面に反射してカメラ2に入射する。一方、凸欠陥110が存在しない場合と比較して、左側の照明位置1bから出た光は凸欠陥110の左側斜面に反射した後、カメラ2に入射する。
【0035】
その結果、図3(A)~(C)の各左図に示すように、凸欠陥110の左側斜面は暗く暗点31として映り、右側斜面は明るく明点32として映る。なお、図3(A)~(C)及び図4以降の図において、暗点31を黒丸で、明点32を白丸でそれぞれ示している。
【0036】
図3(A)の位置に凸欠陥110がある場合には、凸欠陥110の左側斜面は、カメラ2の撮影面上では欠陥周辺の暗帯部22と同じ位の光量となるため、暗点31は暗帯部22に隠れて見えない。一方、凸欠陥110の右側斜面はカメラ2の撮影面上では欠陥周囲の暗帯部22と比べて明るいので、明点32は明るく光って見える。
【0037】
図3(B)の位置に凸欠陥110がある場合には、凸欠陥110の左側斜面は明帯部21が映っている位置にくるため、暗点31は欠陥周辺に比べて暗く映る。一方、凸欠陥110の右側斜面は照明中央部の一番明るい所から出た光が反射するのに対し、撮影面の欠陥周辺は光帯の左端部の映像が映っており、光帯中央部に比べて少し暗くなっている。そのため撮影面上では凸欠陥110の右側斜面は明点32として周辺に比べて明るく光って見える。
【0038】
図3(C)の位置に凸欠陥110がある場合、凸欠陥110の右側斜面は、カメラ2の撮影面上では欠陥周辺の明帯部21と同じくらいの光量となるため、明点32は明帯部21に隠れて見えない。一方、凸欠陥110の左側斜面は、カメラ2の撮影面上では周囲の光帯が映っている部分に比べて暗いため、暗点31は暗く映る。
【0039】
図4(D)~(F)では、凸欠陥110のカメラ撮影面上の位置が、照明装置1の光帯の右エッジ部の映る位置付近に来た際の撮影画像20と光学配置が示されている。
【0040】
図3(A)~(C)とは逆に、凸欠陥110の左側斜面が明るく映り、右側斜面が暗く映る。カメラ撮影面上の映り方も同様で、図4(D)では左側斜面に対応する明点32は周囲の明帯部21に隠れてしまい、右側斜面に対応する暗点31は周囲に比べて暗く映る。
【0041】
図4(E)では、凸欠陥110の左側斜面に対応する明点32は周囲に比べて明るく映り、右側斜面に対応する暗点31は暗く映る。
【0042】
図4(F)では、凸欠陥110の右側斜面に対応する暗点31は周囲の暗帯部23に隠れてしまい、左側斜面に対応する明点32は明るく映る。
<凹欠陥の場合>
図5(A)~(C)及び図6(D)~(F)に、凹欠陥120を有するワーク100が左から右に移動した場合の、カメラ2で撮影された画像(各図の左側の図)と、そのときの光学配置(各図の右側の図)を示す。
【0043】
図5(A)~(C)では、凹欠陥120のカメラ撮影面上の位置が、照明装置1の光帯の左エッジ部の映る位置付近に来た際の撮影画像20と光学配置が示されている。
【0044】
図5(A)~(C)の測定系では、凹欠陥120が存在しない場合と比較して、左側の照明位置1cから出た光が凹欠陥120の右側斜面に反射してカメラ2に入射する。一方、凹欠陥120が存在しない場合と比較して、右側の照明位置1dから出た光は凹欠陥120の左側斜面で反射した後、カメラ2に入射する。
【0045】
その結果、図5(A)~(C)の各左図に示すように、凹欠陥120の左側斜面は明るく明点32として映り、右側斜面は暗く暗点31として映る。
【0046】
図5(A)の位置に凹欠陥120がある場合には、凹欠陥120の右側斜面は、カメラ2の撮影面上では欠陥周辺の暗帯部22と同じ位の光量となるため、暗点31は暗帯部22に隠れて見えない。一方、凹欠陥120の左側斜面はカメラ2の撮影面上では欠陥周囲の暗帯部22と比べて明るいので、明点32は明るく光って見える。
【0047】
図5(B)の位置に凹欠陥120がある場合には、凹欠陥120の右側斜面は明帯部21が映っている位置にくるため、暗点31は欠陥周辺に比べて暗く映る。一方、凹欠陥120の左側斜面は照明中央部の一番明るい所から出た光が反射するのに対し、撮影面の欠陥周辺は光帯の左端部の映像が映っており、光帯中央部に比べて少し暗くなっている。そのため撮影面上では凹欠陥120の左側斜面は明点32として周辺に比べて明るく光って見える。
【0048】
図5(C)の位置に凹欠陥120がある場合、凹欠陥120の左側斜面は、カメラ2の撮影面上では欠陥周辺の明帯部21と同じくらいの光量となるため、明点32は明帯部21に隠れて見えない。一方、凹欠陥120の右側斜面は、カメラ2の撮影面上では周囲の光帯が映っている部分に比べて暗いため、暗点31は暗く映る。
【0049】
図6(D)~(F)では、凹欠陥120のカメラ撮影面上の位置が、照明装置1の光帯の右エッジ部の映る位置付近に来た際の撮影画像20と光学配置が示されている。
【0050】
図5(A)~(C)とは逆に、凹欠陥120の右側斜面が明るく映り、左側斜面が暗く映る。カメラ撮影面上の映り方も同様で、図6(D)では右側斜面に対応する明点32は周囲の明帯部21に隠れてしまい、左側斜面に対応する暗点31は周囲に比べて暗く映る。
【0051】
図6(E)では、凹欠陥120の右側斜面に対応する明点32は周囲に比べて明るく映り、左側斜面に対応する暗点31は暗く映る。
【0052】
図4(F)では、凸欠陥110の左側斜面に対応する暗点31は周囲の暗帯部23に隠れてしまい、右側斜面対応する明点32は明るく映る。
<凸欠陥か凹欠陥かの判別方法>
図3(B)、図4(E)または図5(B)、図6(E)の位置に欠陥110、120が映るタイミングで撮影ができれば、欠陥110、120の右側斜面による明点32または暗点31と左側斜面による暗点31または明点32が同時に測定でき、その相対位置関係にて凸欠陥か凹欠陥か判別することができる。
【0053】
しかし、実際に欠陥110、120がどの場所に存在するかは決まっておらず、一定の間隔で測定が行われた場合、暗点31と明点32の両方が同一の画像に映るタイミングで測定できることはまれである。
【0054】
ほとんどの画像では図3(A)(C)、図4(D)(F)や図5(A)(C)、図6(D)(F)のように、暗点31か明点32のいずれか一方しか映っていない。
【0055】
そこで本実施形態では、照明光に対するワーク100の相対位置を示す指標として、画像番号である撮影フレーム番号(以下、単にフレーム番号ともいう)を適用し、暗点31の位置とフレーム番号の関係を直線近似することにより、同一フレーム番号の画像20における暗点31と明点32の相対位置関係を求め、この相対位置関係を基に凸欠陥110か凹欠陥120かを判別する。
【0056】
凸欠陥110について、各フレーム番号と、画像20の明帯部21上で暗く映る暗点31のX座標の関係を黒丸で表し、フレーム番号と、暗帯部22、23上で明るく映る明点32のX座標の関係を白丸で表し、これらを同一グラフにプロットすると、図7の様に直線L1に沿った配置となる。直線L1は各暗点31から算出された近似直線である。なお、図7のグラフにおいて、横軸はフレーム番号、縦軸は欠陥のX座標である。
【0057】
なお図7では、凸欠陥110の右側斜面と左側斜面の間隔に比べて画像間の欠陥110の移動量が大きいので、差がわかりにくいグラフになる。
【0058】
画像毎に、凸欠陥110が撮影面上を何ピクセル移動するかについて、あらかじめおおよその値を求めておくことが可能である。
【0059】
そこで、図8(A)~(F)に示すように、図3(A)~(C)及び図4(D)~(F)の各画像20から、あらかじめ求めたおおよその移動量だけずらしながら矩形枠で切り抜いた画像40a~40fを用いる。
【0060】
切り抜き画像40a~40fにおいて、明帯部21上に現れる暗点31のX座標と、暗帯部22、23上に現れる明点32のX座標をそれぞれ求めて、撮影フレーム番号に対してそれぞれプロットしたグラフを図9に示す。暗点31のX座標を黒丸で、明点32のX座標を白丸で表し、これらを同一グラフにプロットすると、暗点31から算出された近似直線L2に沿った配置となる。図9のグラフにおいても、横軸はフレーム番号、縦軸は欠陥のX座標である。図9のグラフは図7のグラフに比べて、明点32と暗点31の相対位置関係が見やすくなるので、以降、本グラフにて説明する。
【0061】
凸欠陥110が暗帯部22、23に映っている場合には、暗点31は周囲に隠れて検出できないが、明帯部21に映っている暗点31の位置と、フレーム番号との関係を直線L2で近似することにより、暗帯部22、23における暗点31の位置が推定できる。
【0062】
明帯部21と左側の暗帯部22の境界部を含む撮影前半(測定前半)のように、凸欠陥110が画像20上の明帯部21の左エッジ近傍に存在する場合には、明点32のX座標の方が同一フレーム番号の画像20における暗点31のX座標より大きくなる。一方、明帯部21と右側の暗帯部23の境界部を含む撮影後半(測定後半)のように、凸欠陥110が画像20上の明帯部21の右エッジ近傍にある場合には、明点32のX座標の方が同一フレーム番号の画像20における暗点31のX座標より小さくなる。
【0063】
つまり、凸欠陥120についての明点32のX座標は、撮影前半では近似直線L2より求まる同一フレーム番号の暗点31のX座標より大きく、撮影後半では近似直線L2より求まる同一フレーム番号の画像20の暗点31のX座標より小さい。
【0064】
凸欠陥10の場合と同様に凹欠陥120についても、図10(A)~(F)に示すように、図5(A)~(C)及び図6(D)~(F)の各画像20から、あらかじめ求めたおおよその移動量だけずらしながら矩形枠で切り抜いた画像41a~41fを用いて説明する。
【0065】
切り抜き画像41a~41fにおいて、明帯部21上に映る暗点31のX座標と、暗帯部22、23上に映る明点32のX座標をそれぞれ求めて、撮影フレーム番号に対してそれぞれプロットしたグラフを図11に示す。直線L3は各暗点31を基に算出された近似直線であり、図11のグラフの横軸はフレーム番号、縦軸は欠陥のX座標である。
【0066】
凹欠陥120では、明点32のX座標は、撮影前半(測定前半)では近似直線L3で求まる同一フレーム番号の画像20における暗点31のX座標より小さく、撮影後半(測定後半)では近似直線L3で求まる同一フレーム番号の画像20における暗点31のX座標より大きい。
【0067】
暗点31及び明点32のフレームごとのX座標の変化量は、図8図10の切り抜き画像40a~40f、41a~41fにおける凸欠陥110または凹欠陥120の大まかな移動量を補正した残りの凸欠陥110または凹欠陥120のフレームごとの移動量を表している。
【0068】
暗点31及び明点32の残存移動量の影響を除去するため、暗点31のX座標に対して近似直線(図9のL2、図11のL3)を算出し、同一フレーム番号における明点32と暗点31との相対位置関係を調べる。
【0069】
暗帯部22、23に凸欠陥110または凹欠陥120が映っている場合、凸欠陥110または凹欠陥120の暗点31は周囲に隠れて検出できない。しかし明帯部21に現れる暗点31の座標を直線近似することにより、暗帯部22、23に凸欠陥110または凹欠陥120が映っている画像における暗点31の座標を求めることができる。
【0070】
明点32が検出される画像における暗点31の位置は,近似直線L2、L3上の同一フレーム番号の画像20におけるX座標を計算することによって求めることができる。
【0071】
その結果、同一フレーム番号の画像20で観測される暗点31と明点32との相対位置関係を求めることができ、凸欠陥110か凹欠陥12かを判別することができる。
<判別指標>
凸欠陥110か凹欠陥120かの具体的な判別指標(以下、凹凸判別指標ともいう)について説明する。
【0072】
欠陥位置に最初に照明装置1の光帯のエッジがかかる撮影フレーム番号(この例では図8(B)の切り抜き画像40bまたは図10(B)の切り抜き画像41bのフレーム番号)を画像から求めておく。ここでは、図8(B)の切り抜き画像40bまたは図10(B)の切り抜き画像41bのフレーム番号を、「NoEdgeStart」とする。同様に、最後に光帯のエッジがかかる撮影フレーム番号(この例では図8(E)の切り抜き画像40eまたは図10(E)の切り抜き画像41eのフレーム番号)を画像から求めておく。ここでは、図8(E)の切り抜き画像40eまたは図10(E)の切り抜き画像41eのフレーム番号を、「NoEdgeEnd」とする。
【0073】
図12に示すように、おおよそNoEdgeStart~NoEdgeEndのフレーム番号の画像20において明帯部21中に暗点31が現れる。また、おおよそNoStart~NoEdgeStartおよびNoEdgeEnd~NoEndのフレーム番号の画像20において暗帯部22、23中に明点32が現れる。なおフレーム番号「NoStart」は評価開始画像のフレーム番号、「NoEnd」は評価終了画像のフレーム番号を表す。また中央の画像のフレーム番号を「NoCenter」とすると、
NoCenter=(NoEdgeStart+NoEgdeEnd)/2・・・(1)
となる。
【0074】
凹凸判別指標の一例としては、測定前半(NoStart~NoCenter)において暗点31の近似直線L2、L3の上側にある明点32の数から下側にある明点32の数を引いたものと、測定後半(NoCenter~NoEnd)において近似直線の下側にある明点32の数から上側にある明点32の数を引いたものとの合計が挙げられる。
【0075】
i番目のフレーム番号の画像20における明点32のX座標をXwihte(i)、近似直線L2、L3で求まるi番目のフレーム番号の画像20における暗点31のX座標をXblack(i)とし、測定前半のi番目のフレーム番号の画像において、明点32と暗点31の位置関係を表す指数をn(i)を(2)式で表す。
【0076】
【数1】
【0077】
上記(2)式では、Xwihte(i)>Xblack(i)のときn(i)を+1、Xwihte(i)<Xblack(i)のときn(i)を-1とすることを示している。
【0078】
また、測定後半のi番目のフレームにおいて明点32と暗点31の位置関係を表す指数をn(i)を(3)式で表す。
【0079】
【数2】
【0080】
凹凸判別指数H0は(4)式にて表される。
【0081】
【数3】
【0082】
判別指標H0が正であれば凸欠陥110、負であれば凹欠陥120と判別することができる。
【0083】
このように、明帯部21の両側に暗帯部22、23を有する画像20を用い、明帯部21と一方の暗帯部22との境界部を含む測定前半、または明帯部21と他方の暗帯部23との境界部を含む測定後半のいずれか一方または両方において、暗点31と明点32が所定の位置関係にある回数を含む凹凸判別指数により、簡素で正確な判別を行うことができる。
【0084】
また、単に近似直線L2、L3の上または下に存在する明点32の数を計数するのではなく、明点32の確からしさを示す指標を重みとして積算したものを、判別指標としても良い。
【0085】
具体的には、確からしさを示す指標として、検出された明点32の面積S(i)を重みとして積算した(5)式の判別指標H1や、明点32と周辺との輝度差abs(ΔL(i)) を重みとして積算した(6)式の判別指標H2や、切り抜き画像40a~40f、41a~41fの中心から明点32の中心までの距離d(i) を重みとして積算した(7)式の判別指標H3を用いても良い。なお(7)式におけるDは画像中央から最も離れた画素までの距離である。あるいはこれらを積算した(8)式でも良い。
【0086】
このような確からしさを示す指標を組み込むことにより、一層精度の高い判別を行うことができる。
【0087】
【数4】
【0088】
上記実施形態の判別方法では、暗点31のX座標とフレーム番号の関係を直線近似した例を示したが、逆に、測定前半の明点32の位置とフレーム番号との関係を直線近似し、測定前半の暗点31位置と、近似直線より求まる同一フレーム番号の画像20における明点32の位置との相対位置関係から凹欠陥120か凸欠陥110かを判別してもよい。
【0089】
同様に、測定後半の明点32の位置とフレーム番号との関係を直線近似し、測定後半の暗点31の位置と、近似直線より求まる同一フレーム番号の画像20における明点32の位置との相対位置関係から、凹欠陥120か凸欠陥110かを判別してもよい。
【0090】
明点32の位置とフレーム番号との関係を直線近似する場合も、暗点31の位置とフレーム番号との関係を直線近似する場合と同様に、暗点31の確からしさを示す指標を重みとして積算しても良い。
【0091】
さらに他の判別方法として、測定前半の明点32の位置とフレーム番号との関係を直線近似し、測定前半の暗点31の位置とフレーム番号との関係を直線近似し、その2本の直線のどちらが上にあるかで凹欠陥120か凸欠陥110かを判別してもよい。
【0092】
同様に、測定後半の明点32の位置とフレーム番号との関係を直線近似し、測定後半の暗点31の位置とフレーム番号との関係を直線近似し、その2本の直線のどちらが上にあるかで凹欠陥120か凸欠陥110かを判別してもよい。
【0093】
なお、各グラフの横軸、つまり照明光に対するワーク100の位置を示す指標をフレーム番号としたが、ワーク100が載っているベルトコンベアの動きを検出するエンコーダーの回転数で求まるワーク100の位置を横軸としても良い。あるいは測定時刻を横軸としても良い。
【0094】
また、凸欠陥110を有するワーク100が、カメラ2に対して図1の矢印Aで示すように左方から右方へ移動する場合は、前述したように、図3(A)→(B)→(C)→図4(D)→(E)→(F)の順で画像が得られる。一方、ワーク100が逆方向即ち図1の右方から左方向に移動する場合、図4(F)→(E)→(D)→図3(C)→(B)→(A)の順で画像が得られる。
【0095】
撮影フレーム番号と明帯部21内の暗点31のX座標との関係、及びフレーム番号と暗帯部22、23内の明点32のX座標との関係は、ワーク100が順方向に移動する場合には図9のような関係になるが、ワーク100が逆方向に移動する場合には図13のようになる。即ち、同一フレーム番号の画像20における明点32と暗点31の相対位置関係が逆になる。直線L5は明帯部21内の暗点31の近似直線である。
【0096】
同様に、凹欠陥120を有するワーク100が順方向に移動する場合には、図5(A)→(B)→(C)→図6(D)→(E)→(F)の順で画像が得られる。一方、ワーク100が逆方向に移動する場合、図6(F)→(E)→(D)→図5(C)→(B)→(A)の順で画像が得られる。この場合、フレーム番号と明帯部21内の暗点31のX座標との関係、及びフレーム番号と暗帯部22、23内の明点32のX座標との関係は、ワーク100が順方向に移動する場合には図11のような関係になるが、ワーク100が逆方向に移動する場合には図14のようになる。凹欠陥120の場合も同様に、同一フレーム番号の画像における明点32と暗点31の相対位置関係が逆になる。直線L6は明帯部21内の暗点31の近似直線である。
【0097】
そこで、あらかじめカメラ2とワーク100の移動方向の関係を校正しておき、移動方向が順方向であるか逆方向であるかによって判別指標H0~H3の符号を反転させるのが良い。このような構成とすることにより、カメラ2に対するワーク100の移動方向が変わっても、凹凸判別指数の符号を変えることで、正確な判別を行うことができる。
【0098】
さらに、カメラ2が自身の光軸周りにθ回転して取り付けられている場合、画像が―θ回転する。その場合は明帯部21にある暗点31ないし暗帯部22、23にある明点32の座標 (X,Y)を求めておき、下記(9)式にてθ回転させた座標(X’,Y’)を求める。X座標として回転後の座標X’を適用し、凹欠陥120か凸欠陥110かの判別を行う。カメラ2の回転角θはあらかじめ校正時に求めておく。画像をθ回転してから明点32ないし暗点31の座標を求めても良い。
【0099】
【数5】
【0100】
このような構成により、カメラ2が自身の光軸に対して回転していても、その回転角に応じて、画像20上の暗点31と明点32の座標または画像を回転させるから、正確な判別を行うことができる。
【0101】
以上説明したように、この実施形態では、ワーク100をカメラ2とワーク100を照明する照明光に対して相対的に移動させながら撮影を行うことができ、ワーク100の相対的な移動を停止して撮影する必要がないのに加えて、複数の方向からワークを照明するための複数の照明装置は不要で、1個の照明装置1で良く、構成が簡素化される。しかも、ワーク100をラインセンサーで反射測定するものではないから、測定部位の表面形状に拘わらず、表面欠陥が凹欠陥か凸欠陥かの判別を行うことができる。
【0102】
以上の実施形態では、照明装置1とカメラ2の配置が固定で、ワーク100が相対的に移動する例にて、表面欠陥の凹凸を判別をする手法を説明してきた。
【0103】
しかし、本手法はカメラ2とワーク100が固定で、照明装置1の縞状の照明光が相対的に移動する場合でも適用可能である。この場合、照明装置1自体を移動させても良いし、照明装置1を液晶表示装置等で構成し、表示面上で縞状の照明パターンを移動させても良い。また、ワーク100と照明光の両方を速度差をもって移動させても良く、要はワーク100と照明光の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させれば良い。
【0104】
ワーク100の位置が固定で照明光が移動する場合、欠陥位置が固定であるため、暗点31及び明点32の座標とフレーム番号との関係は、凸欠陥110では図15のグラフのようになり、凹欠陥120では図16のグラフのようになる。明帯部21に現れる暗点31の座標とフレーム番号との関係を直線L7、L8で近似して、測定前半におよび後半における明点32と暗点31の相対位置関係を求め、表面欠陥の凹凸を判別することが可能である。
【0105】
この場合、図15及び図16のグラフの横軸はフレーム番号であっても良いし、縞状の照明光の位置(座標)であってもよい。
【0106】
あるいは、照明装置1とワーク100が固定で、カメラ2を移動させても良い。この場合、図15及び図16のグラフの横軸はフレーム番号であっても良いし、カメラ2の位置(座標)であってもよい。
【符号の説明】
【0107】
1 照明装置
2 カメラ
3 演算部
3a CPU
3b ROM
3c RAM
4 表示部
20 画像
21 明帯部
22、23 暗帯部
31 暗点
32 明点
40a~40f 切り抜き画像
41a~41f 切り抜き画像
100 ワーク
110 凸欠陥
120 凹欠陥
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16