(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】断熱装置
(51)【国際特許分類】
F16L 59/02 20060101AFI20240625BHJP
H01M 8/2475 20160101ALI20240625BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240625BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20240625BHJP
【FI】
F16L59/02
H01M8/2475
H01M8/04 Z
H01M8/12 101
(21)【出願番号】P 2020211828
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕一
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-183139(JP,A)
【文献】特開平7-69385(JP,A)
【文献】特開昭57-118198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/02
H01M 8/2475
H01M 8/04
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの断面において外周面に複数の辺部と前記辺部が交わる角部とを有し、所定の温度状態で動作させる部品と、
少なくとも前記断面において、前記部品の前記外周面に当接して覆うことにより、前記部品の外界と前記部品との熱移動を低減する断熱アセンブリと、
を備える断熱装置であって、
前記断熱アセンブリは、篏合突起によって相互に篏合するための篏合部を有する複数の断熱材からなり、
前記断熱アセンブリは、前記断熱材が前記篏合部で篏合することによって前記部品を熱的に封止し、
前記断熱材で前記断熱アセンブリが形成されるときに、前記篏合部は前記部品のそれぞれの前記辺部に位置する、
断熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の断熱装置であって、
前記篏合部は、相互に篏合する前記断熱材が前記辺部に対して平行及び/または垂直に当接を保ちながら相対的にスライドするインロー構造を有する、
断熱装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の断熱装置であって、
前記部品を覆うケースを備え、
前記断熱アセンブリは、前記部品と前記ケースの間に、前記ケースの内周面に当接して設けられる、
断熱装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の断熱装置であって、
前記篏合部が、前記部品が熱膨張したときに前記辺部に対して垂直な方向へのスライド量が異なる2つの前記断熱材によって形成されるときに、前記篏合部において、前記辺部に対して垂直な方向への前記スライド量が相対的に大きい前記断熱材が、前記辺部に対して垂直な方向への前記スライド量が相対的に小さい前記断熱材の外側に位置する、
断熱装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の断熱装置であって、
篏合する2つの前記断熱材は、相互に、前記篏合部を形成する前記篏合突起の前記辺部に沿った長さが等しい、
断熱装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の断熱装置であって、
前記篏合部における前記断熱アセンブリの厚さは、前記篏合部を形成しない部分における前記断熱材の厚さと等しい、
断熱装置。
【請求項7】
請求項6に記載の断熱装置であって、
篏合する2つの前記断熱材は、前記篏合部を形成する篏合突起の厚さが等しい、
断熱装置。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか1項に記載の断熱装置であって、
篏合する2つの前記断熱材の前記篏合突起は、前記辺部に対して傾斜した傾斜面を有するテーパ形状に形成され、
前記篏合部は、前記傾斜面を当接させて形成される、
断熱装置。
【請求項9】
請求項8に記載の断熱装置であって、
前記傾斜面は平面で形成され、
前記傾斜面の傾斜は、前記部品が熱膨張したときに前記断熱材が前記辺部に対して垂直な方向にスライドするスライド量と前記辺部に対して平行な方向にスライドするスライド量との比、によって定められる、
断熱装置。
【請求項10】
請求項8に記載の断熱装置であって、
前記傾斜面は、曲面で形成される、
断熱装置。
【請求項11】
請求項10に記載の断熱装置であって、
前記傾斜面の曲率半径は、前記部品が熱膨張したときの前記篏合部における前記部品の前記曲率半径に等しい、
断熱装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の断熱装置であって、
前記断熱材は、空気よりも熱伝導率が低い粒子断熱素材によって形成され、
篏合する2つの前記断熱材は、前記篏合部において繊維断熱材を挟持する、
断熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の温度状態で作動させる部品を断熱材で覆った断熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、筒状本体を篏合により複数連結し、かつ、筒状本体の端部に環状の接合体や蓋体を篏合することによって、内部の温度を一定に保つ断熱容器が記載されている。また、特許文献1の断熱容器は、筒状本体等の篏合部に、熱膨張によって伸縮する蛇腹構造を形成することにより、篏合部からの熱損失及び熱による歪みを低減することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の断熱容器では、筒状本体等の軸方向、すなわち1次元方向に熱膨張が生じたときでも、断熱性が維持されるように考慮されている。しかし、ある程度の容積を有する高温作動装置を内部に備える場合、少なくとも2次元の熱膨張を考慮しなければ、内蔵する高温作動装置、及び/または、高温作動装置を断熱するための断熱材等を破損してしまうおそれがある。例えば、特許文献1の断熱容器では、軸方向の端部には環状の接合体や蓋体が篏合され、外周の全部が固定されている。このため、筒状本体等の軸に垂直な方向にも熱膨張があるときには、断熱材である筒状本体や蓋体等、及び/または、これらの内容物が破損してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、2次元方向に熱膨張がある装置またはシステム等を断熱材で覆って、外界との熱移動を低減するときに、内蔵する装置等及び/またはこれを覆う断熱材を破損せず、かつ、断熱性を維持できる断熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、少なくとも1つの断面において外周面に複数の辺部と辺部が交わる角部とを有し、所定の温度状態で作動させる部品と、少なくとも前記断面において、部品の外周面に当接して覆うことにより、部品の外界と部品との熱移動を低減する断熱アセンブリと、を備える断熱装置である。この断熱装置では、断熱アセンブリは、篏合突起によって相互に篏合するための篏合部を有する複数の断熱材からなり、断熱アセンブリは、断熱材が篏合部で篏合することによって部品を熱的に封止する。そして、断熱材で断熱アセンブリが形成されるときに、篏合部は部品のそれぞれの辺部に位置する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、2次元方向に熱膨張がある装置またはシステム等を断熱材で覆って、外界との熱移動を低減するときに、内蔵する装置等及び/またはこれを覆う断熱材を破損せず、かつ、断熱性を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、燃料電池システムの構成に係る説明図である。
【
図2】
図2は、断熱装置の構成を示す断面図である。
【
図4】
図4は、高温作動部品が熱膨張したときの断熱アセンブリの様子を示す説明図である。
【
図5】
図5は、篏合部が高温作動部品の角部に形成されている比較例において、高温作動部品が熱膨張したときの様子を示す説明図である。
【
図6】
図6は、変形例の断熱アセンブリを示す断面図である。
【
図7】
図7は、高温作動部品が熱膨張したときの変形例の断熱アセンブリの様子を示す説明図である。
【
図8】
図8は、変形例の断熱アセンブリにおける断熱材の配置順を示す断面図である。
【
図9】
図9は、断熱材の篏合突起の長さを示す説明図である。
【
図10】
図10は、断熱材の篏合突起の厚さを示す説明図である。
【
図11】
図11は、断熱材の篏合突起の厚さと熱の流出量の関係を示すグラフである。
【
図12】
図12は、テーパ形状に形成した断熱材の篏合突起を示す断面図である。
【
図13】
図13は、篏合突起の傾斜面を曲面で形成した例を示す断面図である。
【
図14】
図14は、繊維断熱材を挟持させた篏合部の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、燃料電池システム100の構成に係る説明図である。燃料電池システム100は、車両等において発電装置として設置される。特に、本実施形態の燃料電池システム100は、車両の床下等に配置することができる。そして、本実施形態の燃料電池システム100は、燃料電池システム100の筐体である金属製のケースC1及びこれに収容される各要素により構成される。
【0011】
図1に示すように、燃料電池システム100のケースC1の内部は、高温領域HAと低温領域LAに分割されている。高温領域HAは、ケースC1内に設けられた断熱ケースC2に囲まれた空間である。断熱ケースC2は、金属製である。断熱ケースC2の内面には、後述するように複数の断熱材で形成される断熱アセンブリ27(
図2参照)が取り付けられてる。また、低温領域LAは、ケースC1において断熱ケースC2の外側の空間である。
【0012】
断熱装置10は、蒸発器11(Vap)、過加熱器12(SH)、改質器13(Reformer)、空気熱交換器14(AHEX)、燃料電池スタック15、及び、燃焼器16(Comb)を含む。
【0013】
蒸発器11は、図示しない燃料タンクからインジェクタ17によって流量を調節されつつ供給される原燃料を気化させる。過加熱器12は、蒸発器11で気化された燃料をさらに過熱する。
【0014】
改質器13は、過加熱器12で加熱された燃料を、燃料電池スタック15に供給するために適切な状態とすべく改質する。また、改質器13には、燃料電池スタック15のアノード極15a(An.)に繋がる燃料ガス通路18が接続されている。したがって、改質器13で生成された燃料ガスは、燃料ガス通路18を介して燃料電池スタック15に供給される。
【0015】
空気熱交換器14は、図示しない空気ブロア等の空気供給装置から供給される空気を燃焼器16で生成される燃焼ガスと熱交換させて加熱する装置である。また、空気熱交換器14には、燃料電池スタック15のカソード極15b(Ca.)に繋がる空気供給通路19が接続されている。空気熱交換器14で加熱された空気は、空気供給通路19を介して燃料電池スタック15に供給される。
【0016】
燃料電池スタック15は、複数の燃料電池または燃料電池単位セルを積層して構成される。また、発電源である個々の燃料電池または燃料電池単位セルは、固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)により構成される。なお、図示しないが、燃料電池スタック15の電力出力端子には、低温領域LA内またはケースC1の外側に配置される電装部品(コンバータ等)に繋がる配線が取り付けられている。
【0017】
また、燃料電池スタック15のアノード極15aの入口には、燃料ガス通路18に接続される。さらに、アノード極15aの出口は、発電反応後のアノードオフガスを流すためのアノードオフガス通路21が接続される。
【0018】
一方、燃料電池スタック15のカソード極15bの入口は、空気供給通路19に接続される。また、カソード極15bの出口は、発電反応後のカソードオフガスを流すためのカソードオフガス通路22が接続される。
【0019】
燃焼器16は、図示しない燃料タンクからインジェクタ23により流量を調整されつつ供給される原燃料、アノードオフガス通路21を介して供給されるアノードオフガス、及び、カソードオフガス通路22を介して供給されるカソードオフガスを混合して触媒燃焼させることにより、燃焼ガスを生成する。
【0020】
また、燃焼器16で生成された燃焼ガスは、図示しない燃焼ガス流量調節バルブ等により、蒸発器11、改質器13、及び、燃料電池スタック15の起動時における暖機要求に応じた流量に調節されて空気熱交換器14及び改質器13にそれぞれ供給される。
【0021】
そして、空気熱交換器14に供給される燃焼ガスは、空気との熱交換を経て第1排気配管24を介して燃料電池システム100の外部に排出される。一方、改質器13に供給される燃焼ガスは、当該改質器13の加熱に用いられた後に、第2排気配管25を介して燃料電池システム100の外部に放出される。
【0022】
第1排気配管24及び第2排気配管25は、断熱ケースC2及びケースC1を貫通してケースC1の外部に延びている。すなわち、第1排気配管24及び第2排気配管25は、ケースC1の内部と外部に跨って延在している。
【0023】
以下、断熱ケースC2内の各要素と、断熱ケースC2と、で形成される高温領域HAの部分の装置(またはシステム)を、断熱装置10という。また、断熱ケースC2に収容される燃料電池スタック15とその他の要素等(いわゆるBOP(Balance Of Plant))の各種部品は、所定の高温状態で動作させる部品である。このため、以下では、個々に区別が必要な場合を除き、断熱ケースC2に収容される各種部品等の全体を、高温作動部品30という。本実施形態において、所定の高温とは、燃料電池システム100を作動させるときに維持すべき温度をいう。
【0024】
図2は、断熱装置10の構成を示す断面図である。
図2では、断熱装置10の内部構造を、高温作動部品30で表すことにより、簡略化して断熱装置10の断面を示す。このため、
図2に示す断面は、燃料電池システム100及び断熱装置10の設置状態における断熱装置10の水平方向の断面(横断面)及び/または垂直方向の断面(縦断面)を表す。また、
図2に示す断面は、断熱装置10の任意の水平位置(長さまたは幅方向の任意位置)及び/または任意の垂直位置(高さ方向の任意位置)における断面を表す。以下、単に「断面」というときには、燃料電池システム100及び断熱装置10の設置状態における断熱装置10の縦断面または横断面の少なくとも1つの断面をいう。また、高温作動部品30の全体(各要素間の隙間を含む)及び断熱ケースC2の立体的形状は、ほぼ直方体であるとする。
【0025】
図2に示すように、断熱装置10の断面において、高温作動部品30は、その外周面に複数の辺部(断面において外周面を示すライン)と、辺部が交わる角部と、を有する。本実施形態では、高温作動部品30はほぼ直方体であるため、断熱装置10の断面において、外周面に4つの辺部31a~31dを有する。また、これらの各辺部31a~31dのうち、隣接する部分が角部である。このため、高温作動部品30は、4つの角部32a~32dを有する。これに対応して、断熱ケースC2も、同断面において、4つの辺部33a~33dと4つの角部34a~34dを有する。
【0026】
そして、断熱ケースC2と高温作動部品30との間には、断熱材の篏合体である断熱アセンブリ27が設けられている。断熱アセンブリ27は、断熱ケースC2の内周面に当接して設けられており、断熱ケースC2に高温作動部品30に収容するときに高温作動部品30を覆う。これにより、断熱アセンブリ27は、高温作動部品30を断熱する。高温作動部品30の断熱とは、一切の熱移動を厳密に遮断することだけをいうのではなく、熱移動を低減または抑制することをいう。すなわち、高温作動部品30の断熱とは、高温作動部品30の外界(すなわち低温領域LAにある空気等)と高温作動部品30(すなわち断熱装置10の内部)との熱移動を、断熱アセンブリ27等の断熱材を用いない場合よりも抑制または低減することを含む。
【0027】
また、本実施形態においては、高温作動部品30及び断熱ケースC2はほぼ直方体形状であるため、断熱アセンブリ27は、燃料電池システム100及び断熱装置10が設置された状態において、高温作動部品30の前後左右及び天地の6面をほぼ隙間なく覆う。高温作動部品30に対して「覆う」とは、高温作動部品30の実態である燃料電池スタック15等がある領域を囲むことをいう。燃料電池スタック15等がある領域とは、少なくとも輪郭となる面に燃料電池スタック15等のうち1つの要素の外周面を含む領域をいう。したがって、高温作動部品30の実態である燃料電池スタック15等の各要素間に隙間がある場合は、この要素間の隙間を含めて、断熱アセンブリ27に覆われる。
【0028】
さらに、断熱アセンブリ27は、少なくとも
図2に示す断熱装置10の断面において、高温作動部品30の外周面に当接して、高温作動部品30を覆う。これにより、当該断面において、断熱アセンブリ27は高温作動部品30を断熱する。但し、本実施形態では、断熱アセンブリ27は、
図2に示す断面以外の任意の断面においても、高温作動部品30の外周面に当接して、高温作動部品30を覆う。すなわち、本実施形態では、断熱アセンブリ27は、高温作動部品30の全ての外面に当接してほぼ隙間なく高温作動部品30を覆う。このため、第1排気配管24等の配管が外界と連通しているのを除けば、高温作動部品30は、断熱ケースC2及び断熱アセンブリ27によって、少なくとも熱的に、ほぼ密封された状態である。
【0029】
断熱アセンブリ27は、複数の断熱材からなる。すなわち、断熱アセンブリ27は、複数の断熱材に分割される。本実施形態では、
図2の断面に示す通り、断熱アセンブリ27は、少なくとも4つの断熱材35a~35dを含む。これらの断熱材35a~35dはいずれも、
図2の断面における断面視において概ねL字形状である。また、断熱材35a~35d等、断熱アセンブリ27を形成する断熱材は、例えば、ヒュームドシリカ等の空気よりも熱伝導率が低い粒子断熱材(ナノ粒子断熱材)である。
【0030】
断熱アセンブリ27を形成する断熱材は、篏合突起によって相互に篏合するための篏合部を有する。例えば、
図2に示す断面においては、断熱アセンブリ27は断熱材35a~35dからなるので、断熱材35a~35dは4つの篏合部36a~36dを有する。すなわち、断面視において、L字形状の断熱材35a~35dの両端部に篏合部36a~36dが形成される。そして、断熱アセンブリ27は、断熱材35a~35d等の複数の断熱材が、篏合部36a~36d等の篏合部で相互に篏合することによって、高温作動部品30を熱的に封止する。
【0031】
図3は、篏合部36aの構成を示す断面図である。
図3に示すように、例えば、篏合部36aは、断熱材35aと断熱材35bとの接続部分である。そして、断熱材35aは、篏合部36aにおいて、篏合部36aを構成しない部分よりも肉薄であり、直方体状の篏合突起41が断熱材35bに向けて突出する形状を有する。また、断熱材35bも同様に、篏合部36aにおいて、篏合部36aを構成しない部分よりも肉薄であり、直方体形状の篏合突起42が断熱材35aに向けて突出する形状を有する。これらの篏合突起41,42は「出代」とも称される。
【0032】
また、断熱材35aの篏合突起41は断熱ケースC2(または低温領域LAの空気である外界40)側に設けられ、断熱材35bの篏合突起42は高温作動部品30側に設けられる。このため、篏合突起41によって断熱材35aの高温作動部品30側に形成される凹部(篏合凹部)に断熱材35bが嵌る。また、篏合突起42によって断熱材35bの断熱ケースC2側に形成される凹部(篏合凹部)に断熱材35aの篏合突起41が嵌る。この結果、断熱材35aと断熱材35bは篏合部36aにおいて篏合する。また、篏合突起41,42の形状等から分かる通り、篏合部36aは、相互に篏合する断熱材35a,35bが、高温作動部品30の辺部31a及び断熱ケースC2の辺部33aに対して平行及び/または垂直に当接を保ちながら相対的にスライドして篏合することができる篏合形態を有する。
【0033】
具体的には、断熱材35aと断熱材35bが篏合するときに、篏合部36aでは、篏合突起41の高温作動部品30側の面と篏合突起42の断熱ケースC2側の面とが、高温作動部品30の辺部31a及び断熱ケースC2の辺部33aに対して平行に当接する。そして、断熱材35aと断熱材35bはこの面(以下、平行スライド面43という)に沿って相互にスライドすることができる。
【0034】
また、断熱材35aと断熱材35bが篏合するときに、篏合部36aでは、篏合突起41の先端面と断熱材35bに形成される凹部の底面とが、高温作動部品30の辺部31a及び断熱ケースC2の辺部33aに対して垂直に当接する。そして、断熱材35aと断熱材35bはこの面(以下、垂直スライド面44という)に沿って相互にスライドすることができる。同様に、篏合部36aでは、篏合突起42の線端面と断熱材35aに形成される凹部の底面とが、高温作動部品30の辺部31a及び断熱ケースC2の辺部33aに対して垂直に当接する。そして、断熱材35aと断熱材35bはこの面に沿って相互にスライドする。したがって、この当接面も垂直スライド面44である。
【0035】
上記の篏合部36aのような篏合形態は、インロー接手(Spigot Joint)、あるいは、単にインロー等と呼ばれる場合がある。以下、篏合部36aに限らず、当該篏合形態による篏合部をインロー部といい、当該篏合形態のための上記の構造をインロー構造という。
【0036】
なお、篏合突起41,42は、高温作動部品30及び断熱ケースC2の面方向(
図2の紙面垂直方向)に、高温作動部品30及び断熱ケースC2の実質的に面端まで延設されている。すなわち、篏合部36aは、高温作動部品30及び断熱ケースC2の実質的に面端まで延設されている。したがって、断熱材35aと断熱材35bに篏合部36aに依らない接合はなく、断熱材35aと断熱材35bは篏合部36aによってのみ当接する。また、篏合部36aは、篏合部36aが現れる断面であれば、高温作動部品30及び断熱ケースC2に対する任意の位置の断面において同じ構造である。
【0037】
本実施形態においては、篏合部36b~36d等、その他の篏合部についても上記と同様の構造を有する。すなわち、本実施形態では、特に言及しない限り、断熱アセンブリ27を形成する断熱材の篏合部は全てインロー部である(
図2参照)。
【0038】
そして、複数の断熱材で断熱アセンブリが形成されるときに、これらの断熱材の篏合部は、高温作動部品30の辺部及び断熱ケースC2の辺部のそれぞれに位置する。すなわち、篏合部36a等の篏合部は、断面視において、高温作動部品30の辺部及び断熱ケースC2の辺部には、断熱材の篏合部が少なくとも1つある。そして、断面視において、高温作動部品30の角部及び断熱ケースC2の角部には、篏合部は形成されない。具体的には、
図2に示す通り、篏合部36a~36dは、それぞれ高温作動部品30の辺部31a~31d及び断熱ケースC2の辺部33a~33dに位置する。一方、高温作動部品30の角部32a~32d及び断熱ケースC2の角部34a~34dには、いずれにも篏合部は設けられていない。
【0039】
以下、上記のように構成される断熱装置10の作用を説明する。
【0040】
図4は、高温作動部品30が熱膨張したときの断熱アセンブリ27の様子を示す説明図である。
図4に示すように、高温作動部品30が作動し、所定の高温状態となると、高温作動部品30の一部または全部が少なくとも2次元的に熱膨張する。このとき、断熱アセンブリ27を形成する各断熱材は、篏合により断熱アセンブリ27を形成され、かつ、各篏合部は、高温作動部品30の辺部にそれぞれ位置するので、各断熱材は高温作動部品30の熱膨張に合わせてスライドする。このため、高温作動部品30が2次元的に熱膨張しても、断熱アセンブリ27及び高温作動部品30が破損することはない。
【0041】
より具体的に言えば、断面視において、コ字形状(あるいはU字形状)の断熱材の両端部に篏合部を形成すると、高温作動部品30の2次元的な熱膨張によってそのコ字形状の断熱材及び/または高温作動部品30が破損するおそれがある。これに対し、断熱アセンブリ27では、断面視においてL字形状の断熱材の両端部に篏合部36a~36dを形成しているので、高温作動部品30の2次元的な熱膨張に合わせて自在にスライドできる。
【0042】
さらに、高温作動部品30の熱膨張によって断熱材35a~35dの篏合は緩むものの、篏合部36a~36dでは平行スライド面43及び/または垂直スライド面44の当接が維持される。その結果、高温作動部品30の断熱が維持される。
【0043】
例えば、篏合部36aでは、高温作動部品30の2次元的な熱膨張により、断熱材35aと断熱材35bは相対的に離れる方向に移動する。しかし、断熱材35aと断熱材35bは例えば平行スライド面43における当接が維持される。このため、篏合部36aにおいて、高温作動部品30は外界40の空気に露呈しない。このため、高温作動部品30の断熱が維持される。これは篏合部36b~36d及びその他の篏合部においても同様である。その結果、高温作動部品30がその作動によって熱膨張しても、高温作動部品30の断熱が維持される。
【0044】
図5は、断熱アセンブリ27を形成する断熱材の篏合部が高温作動部品30の角部に形成されている比較例において、高温作動部品30が熱膨張したときの様子を示す説明図である。比較例では、
図2と同じ断面において、高温作動部品30の角部32a~32dの位置に篏合部を形成する断熱材51a~51dによって断熱アセンブリ27が形成されるとする。このとき、
図5に示すように、高温作動部品30がその作動により2次元的に熱膨張すると、これらの断熱材51a~51dは、高温作動部品30の熱膨張に合わせて破損することなく移動する。しかし、高温作動部品30の角部に篏合部を形成する断熱材51a~51dでは各篏合部に隙間が生じる。その結果、高温作動部品30は、熱膨張したときに、断熱材51a~51dの篏合部によって外界40の空気に露呈される。その結果、高温作動部品30の角部に篏合部を形成する断熱材51a~51dで断熱アセンブリ27を形成すると、高温作動部品30が2次元的に熱膨張したときに高温作動部品30の断熱が維持できない。
【0045】
これと比較すると、本実施形態の断熱装置10は、篏合部によって篏合する断熱材で断熱アセンブリ27が形成されているので、内蔵する高温作動部品30がその作動により熱膨張したときでも、断熱材及び高温作動部品30を破損することがない。その上で、本実施形態の断熱装置10は、断熱アセンブリ27を形成する断熱材の篏合部が、高温作動部品30の辺部に位置する。このため、上記比較例のように、篏合部を高温作動部品30の角部に形成する場合と比較して、本実施形態の断熱装置10は、高温作動部品30が熱膨張によって2次元的に熱膨張したときでも、高温作動部品30の断熱を維持することができる。
【0046】
以上のように、本実施形態の断熱装置10は、少なくとも1つの断面において外周面に複数の辺部31a~31dと辺部31a~31dが交わる角部32a~32dとを有し、所定の温度状態で動作させる部品である高温作動部品30と、少なくともその断面において、当該部品の外周面に当接して覆うことにより、当該部品の外界と当該部品との熱移動を低減する断熱アセンブリ27と、を備える。そして、この断熱装置10の断熱アセンブリ27は、篏合突起(例えば篏合突起41,42)によって相互に篏合するための篏合部(例えば篏合部36a)を有する複数の断熱材35a~35dからなる。また、断熱アセンブリ27は、これらの断熱材35a~35dが篏合部(例えば篏合部36a)で篏合することによって上記の部品を熱的に封止する。そして、断熱材35a~35dで断熱アセンブリ27が形成されるときに、篏合部(例えば篏合部36a)は当該部品のそれぞれの辺部31a~31dに位置する。
【0047】
本実施形態の断熱装置10は、上記のように断熱材の篏合によって形成される断熱アセンブリ27を用いる。このため、本実施形態の断熱装置10は、断熱すべき装置またはシステム等(あるいはこれらの部分)が2次元方向に熱膨張するときでも、各断熱材はその熱膨張に合わせて相互の当接を維持したまま移動可能である。このため、本実施形態の断熱装置10は、内蔵する断熱すべき装置等が熱膨張したときでも、その装置等及び断熱材を破損させず、かつ、その装置等の断熱を維持できる。
【0048】
また、断熱装置10では、各篏合部は、相互に篏合する断熱材が、内蔵する部品の辺部に対して平行及び/または垂直に当接を保ちながら相対的にスライドするインロー構造を有する。インロー構造は、断熱装置10が内蔵する断熱すべき装置等が2次元的に熱膨張したときでも、篏合する断熱材が、その熱膨張に合わせて、当接を維持しながら移動しやすい構造である。したがって、断熱装置10は、断熱アセンブリ27を形成する断熱材の篏合部がインロー構造を有することにより、特に断熱を維持しやすい。また、篏合部を上記定義によるインロー構造で形成するのは、内蔵する装置等の熱膨張に方向性の偏りがなく等方的であるときに特に有効である。
【0049】
本実施形態の断熱装置10は、所定の温度状態で動作せる部品である高温作動部品30を覆うケースとして、断熱ケースC2を備える。そして、断熱アセンブリ27は、当該部品と断熱ケースC2の間に、断熱ケースC2の内周面に当接して設けられる。すなわち、断熱装置10では、断熱アセンブリ27の前述の構成により、断熱アセンブリ27等を配置するためのクリアランス等はほぼ不要であり、当該部品と断熱ケースC2に当接する断熱アセンブリ27とすることができる。このため、断熱材や断熱ケースC2を設けるためにクリアランスが必要な従前の断熱容器等と比較して、断熱装置10は小型に形成される。また、断熱アセンブリ27を断熱ケースC2の内周面に設けることによって、断熱装置10の製造(特に高温作動部品30に対する断熱アセンブリ27及び断熱ケースC2の組付け)も容易である。
【0050】
[変形例]
なお、上記実施形態においては、所定の断面(
図2参照)において、断熱アセンブリ27が4つの断熱材35a~35dによって形成される例を説明したがこれに限らない。例えば、同断面において、より多数の断熱材で断熱アセンブリ27を形成することができる。
【0051】
図6は、変形例の断熱アセンブリ60を示す断面図である。
図6に示すように、変形例の断熱アセンブリ60は、
図2と同じ断面において、16個の断熱材61a~61pによって形成される。すなわち、
図6に示す通り、断熱アセンブリ60は、断面視においてL字形状の断熱材61a,61e,61i,61mと、断面視においてT字形状の断熱材61c,61g,61k,61oと、を備える。また、断熱アセンブリ60は、L字形状の断熱材とT字形状の断熱材の間に、クランク形状の断熱材61b,61d,61f,61h,61j,61l,61n,61pを備える。断熱アセンブリ60が、高温作動部品30及び断熱ケースC2に当接し、高温作動部品30を覆うこと等については、上記実施形態の断熱アセンブリ27と同じである。
【0052】
この断熱アセンブリ60は、上記実施形態の断熱アセンブリ27に対して、断熱材の分割数を増やし、篏合部の数量を増やした形態である。例えば、高温作動部品30の辺部31aには、篏合部36aの代わりに、篏合部71a~71dが形成される。同様に、高温作動部品30の辺部31bには篏合部36bの代わりに篏合部72a~72dが形成され、高温作動部品30の辺部31cには篏合部36cの代わりに篏合部73a~73dが形成される。また、高温作動部品30の辺部31dには篏合部36dの代わりに篏合部74a~74dが形成される。なお、
図6に示す通り、これらの断熱材61a~61pの上記各篏合部は、いずれも上記実施形態と同様にインロー部である。
【0053】
上記のように篏合部を増やした断熱アセンブリ60は、高温作動部品30の熱膨張に方向性があるときに特に有意である。
図7は、高温作動部品30が熱膨張したときの変形例の断熱アセンブリ60の様子を示す説明図である。本変形例においては、
図7に示す通り、高温作動部品30は、辺部の中央付近における熱膨張が大きく、角部における熱膨張が小さい。例えば、高温作動部品30の辺部31aにおいては、その辺部中央75付近において辺部31aに垂直な方向(-Y方向)への熱膨張が最大となる。そして、辺部中央75付近から辺部31aに沿って高温作動部品30の両角部に近づくにつれて、辺部31aに垂直な方向への熱膨張が小さくなっている。また、熱膨張の形態は、高温作動部品30の他の辺部においても同様であるとする。
【0054】
このように高温作動部品30が熱膨張するとき、断熱アセンブリ60では、辺部中央75に当接するT字形状の断熱材61cは辺部31aに垂直な方向に移動する。一方、角部にあるL字形状の断熱材61a及び断熱材61eはほとんどその位置が変化しない。また、クランク形状の断熱材61b,61dは、これらの中間的な移動をする。
【0055】
例えば、クランク形状の断熱材61b,61dは、辺部31aに垂直な方向及び水平な方向に移動する。この結果、篏合部71aでは、クランク形状の断熱材61bがL字形状の断熱材61aに対して概ね辺部31aに垂直な方向に移動する。篏合部71dにおけるL字形状の断熱材61eとクランク形状の断熱材61dの相対的な移動についても同様である。すなわち、篏合部71a及び篏合部71dでは、断熱材61a,61b間及び断熱材61d,61e間の相対スライド方向は概ね辺部31aに垂直な方向となる。
【0056】
一方、篏合部71bにおいては、クランク形状の断熱材61bとT字形状の断熱材61cの辺部31aに垂直な方向へのスライド量は概ね等しい。このため、篏合部71bにおいては、T字形状の断熱材61cに対して、クランク形状の断熱材61bが辺部31aに平行な方向に相対的に移動する。クランク形状の断熱材61dの相対的な移動が逆向きであるが、篏合部71cにおけるT字形状の断熱材61cとクランク形状の断熱材61dとの相対的な移動についても同様である。すなわち、篏合部71b及び篏合部71cでは、断熱材61b,61c間及び断熱材61c,61d間の相対スライド方向は概ね辺部31aに平行な方向となる。
【0057】
これらの結果、断熱アセンブリ60は、より実際的な高温作動部品30の熱膨張形態に追従して変形することができる。そして、断熱アセンブリ60によれば、高温作動部品30の断熱を維持しつつ、前述の実施形態における断熱アセンブリ27よりもさらに確実に断熱材及び高温作動部品30の破損を防止できる。
【0058】
なお、上記変形例の断熱アセンブリ60では、例えば、高温作動部品30の辺部31aに対応する部分に、3つの断熱材61b~61dを設けているが、断熱材61b~61dを一体化して1つのT字形状の断熱材としてもよい。高温作動部品30の他の辺部に対応する部分についても同様である。また、断熱アセンブリ60を形成する断熱材の大きさ、形状、及び数量等は、高温作動部品30の実際的な熱膨張の態様等に応じて、高温作動部品30の各辺部に対応する部分ごとに任意に変更することができる。
【0059】
[篏合部における断熱材の配置]
上記実施形態の断熱アセンブリ27及び変形例の断熱アセンブリ60においては、篏合部における断熱材の配置順(高温作動部品30の辺部に垂直な方向への積層順序)を次のようにすることが好ましい。すなわち、篏合部が、高温作動部品30が熱膨張したときに高温作動部品30の辺部に対して垂直な方向へのスライド量が異なる2つの断熱材によって形成されるとする。このとき、この篏合部においては、高温作動部品30の辺部に対して垂直な方向へのスライド量が相対的に大きい断熱材が、同辺部に対して垂直な方向へのスライド量が相対的に小さい断熱材の外側に位置させる。
【0060】
図8は、変形例の断熱アセンブリ60における断熱材61a,61bの配置順を示す断面図である。例えば、変形例の断熱アセンブリ60の篏合部71aにおいては、前述のように、断熱材61a,61bの辺部31aに垂直な方向へのスライド量が異なる。すなわち、断熱材61aは辺部31aに対して垂直な方向(-Y方向)へスライド量が相対的に小さく、断熱材61bは辺部31aに対して垂直な方向へのスライド量が相対的に大きい。このため、
図8に示すように、断熱アセンブリ60の篏合部71aにおいては、断熱材61aの篏合突起76を内側(高温作動部品30側)に位置させ、断熱材61bの篏合突起77を外側(断熱ケースC2及び外界40の側)に位置させる。
【0061】
上記とは逆の配置順にすると、高温作動部品30が熱膨張したときに、辺部31aの垂直方向への相対的なスライド量の相違によって、篏合突起76,77の基端部等に応力が集中し、これらのいずれか篏合突起76,77のいずれかまたは両方が破損してしまうおそれがあるからである。したがって、上記のような配置順とすることで、篏合部における断熱材特に篏合突起の破損を特に確実に防止できる。
【0062】
なお、実施形態の断熱アセンブリ27では、篏合部は概ね高温作動部品30の辺部中央に位置する。このため、篏合部を形成する2つの断熱材は、対応する辺部に対する垂直方向へのスライド量がほぼ等しい。したがって、実施形態の断熱アセンブリ27では、各篏合部36a~36dにおける断熱材の配置順は任意である。したがって、例えば、篏合部36a(
図2,
図3参照)においては、断熱材35aの篏合突起41が外側に位置し、断熱材35bの篏合突起42が内側に位置しているが、これを逆順にしてもよい。但し、高温作動部品30の実際的な熱膨張形態等によって、高温作動部品30の辺部に対して垂直な方向へのスライド量に差異が生じるときには、断熱アセンブリ27においても上記配置順を考慮すべきである。
【0063】
[篏合突起の長さ]
上記実施形態の断熱アセンブリ27及び変形例の断熱アセンブリ60においては、篏合部における断熱材の篏合突起の長さを次のようにすることが好ましい。すなわち、篏合する2つの断熱材は、相互に、篏合部を形成する篏合突起の長さ(高温作動部品30の辺部に沿った長さ)を等しくすることが好ましい。
【0064】
図9は、断熱材の篏合突起の長さを示す説明図である。
図9では、一例として、変形例の断熱アセンブリ60の篏合部71aを示す。
図9に示すように、篏合部71aにおいては、断熱材61aの篏合突起76の長さL1と、断熱材61bの篏合突起77の長さL2は等しい。すなわち、L1=L2である。
【0065】
このように篏合突起の長さを等しくしておくと、篏合部を形成する断熱材が当接し、これらの間の隙間が最小化され、垂直スライド面44が形成される。このため、垂直スライド面44の部分で外界40と熱交換がなされることがなく、高温作動部品30の断熱を特に維持しやすい。ここでは変形例の断熱アセンブリ60における篏合部71aを例にしているが、実施形態の断熱アセンブリ27の各篏合部36a~36dについても同様である。
【0066】
また、
図9に示す篏合部71aのように、篏合する2つの断熱材61a,61bが、高温作動部品30の辺部31aに垂直な方向へのスライド量に差異があるときには、高温作動部品30の熱膨張によって、薄いながらも、篏合部71aの近傍に複数の空気層が形成される場合がある。例えば、熱膨張前に平行スライド面43であった部分、断熱材61aと断熱ケースC2の間、及び/または、断熱材61bと高温作動部品30の間、に高温作動部品30の熱膨張によって空気層が形成される場合がある。しかし、上記のように、篏合突起76,77の長さを等しくし、垂直スライド面44が形成されているときには、これらの空気層は連通しない。このため、篏合部71aでは高温作動部品30の断熱を維持しやすい。すなわち、高温作動部品30の辺部に対して垂直な方向へのスライド量に相違がある2つの断熱材で形成される篏合部において、これらの篏合突起を同じ長さにし、垂直スライド面44を形成しておくと、その篏合部において特に高温作動部品30の断熱を維持しやすくなる。
【0067】
[篏合突起の厚さ]
上記実施形態の断熱アセンブリ27及び変形例の断熱アセンブリ60においては、篏合部における断熱材の篏合突起の厚さを次のようにすることが好ましい。すなわち、篏合部における断熱アセンブリ27,60の厚さは、篏合部を形成しない部分における断熱材の厚さと等しいことが好ましい。
【0068】
図10は、断熱材の篏合突起の厚さを示す説明図である。
図10では、一例として、変形例の断熱アセンブリ60における篏合部71cを示す。
図10に示すように、篏合部71cでは、断熱材61cの篏合突起78の厚さδ1と、断熱材61dの篏合突起79の厚さδ2の合計δ1+δ2は、篏合部71cにおける断熱アセンブリ60の厚さである。そして、この篏合部71cにおける断熱アセンブリ60の厚さδ1+δ2は、篏合突起78,79が形成されていない部分の断熱材61c,61dの厚さT0と等しい。すなわち、T0=δ1+δ2である。
【0069】
このように、篏合部における断熱アセンブリ27,60の厚さ(δ1+δ2)を、篏合部を形成しない部分における断熱材の厚さ(T0)と等しくしておくと、篏合部71cに空気層が形成され難い。例えば、篏合部71cにおける断熱アセンブリ60の厚さは他の部分における断熱アセンブリ60の厚さと同じである。このため、断熱アセンブリ60は、高温作動部品30及び断熱ケースC2と密着しやすい。その結果、断熱材61c,61dと高温作動部品30の間、及び/または、断熱材61c、61dと断熱ケースC2の間、に空気層が形成され難い。したがって、上記のように篏合突起の厚さを設定すると、高温作動部品30の断熱が特に維持されやすい。
【0070】
断熱アセンブリ60の篏合部71cのように、篏合する2つの断熱材61c,61dが、高温作動部品30の辺部31aに平行な方向に相対的にスライドするときには、篏合部における断熱アセンブリ60の厚さを上記のように設定すると特によい。この場合、高温作動部品30が熱膨張したときでも高温作動部品30及び断熱ケースC2と断熱材との密着が維持されやすく、上記の空気層が形成され難い。その結果、篏合部における断熱アセンブリ60の厚さを上記のように設定すると、高温作動部品30の断熱が特に維持されやすいからである。
【0071】
なお、篏合部71cでは、断熱材61c,61dが、高温作動部品30の熱膨張によって辺部31aに平行な方向に相対的にスライドするので、垂直スライド面44であった部分に隙間(空気層)が生じる。この隙間のうち、高温作動部品30に当接する隙間80は相対的に高温の空気層であり、断熱ケースC2に当接する隙間81は相対的に低温の空気層である。しかし、篏合部71cでは上記厚さの設定により、平行スライド面43が形成されるので、これらの隙間80,81は連通しない。このため、断熱材61cの篏合突起78の厚さδ1と断熱材61dの篏合突起79の厚さδ2のバランスは、T0=δ1+δ2を満たす限りにおいて任意であるようにも思える。しかし、断熱材61cの篏合突起78の厚さδ1と、断熱材61dの篏合突起79の厚さδ2は、ほぼ等しい(δ1=δ2)ことが好ましい。
【0072】
図11は、断熱材61dの篏合突起79の厚さ(δ2/T0)と熱の流出量Qの関係を示すグラフである。
図11に示すように、断熱材61の篏合突起79の厚さδ2が断熱材61c,61dの厚さT0の約1/2であるときに、高温作動部品30からの熱の流出量Qは極小となる。
【0073】
したがって、上記のように、篏合する2つの断熱材は、篏合部を形成する篏合突起の厚さがほぼ等しいことが好ましい。高温作動部品30の断熱が維持されやすいからである。これは実施形態の断熱アセンブリ27の篏合部においても同じである。
【0074】
[平行スライド面の傾斜]
なお、上記実施形態の断熱アセンブリ27及び変形例の断熱アセンブリ60では、篏合部は、いわゆるインロー部であって、高温作動部品30の辺部に対して平行及び/または垂直に当接を保ちながら相対的にスライドする。しかし、実施形態の断熱アセンブリ27及び変形例の断熱アセンブリ60の各篏合部の篏合形態はこれに限らない。例えば、断熱アセンブリ27,60の平行スライド面43を、平面状の傾斜面84(
図12参照)にしてもよい。すなわち、断熱アセンブリ27,60において、篏合する2つの断熱材の篏合突起は、高温作動部品30の辺部に対して傾斜した傾斜面を有するテーパ形状に形成されてもよい。
【0075】
図12は、テーパ形状に形成した断熱材の篏合突起を示す断面図である。
図12に示すように、断熱アセンブリ27,60の各篏合部は、断熱材83Aと断熱材83Bで形成する篏合部82と同様に、篏合突起をテーパ形状に形成することができる。この場合、断熱アセンブリ27,60における平行スライド面43の代わりに、高温作動部品30の辺部に対して傾斜した傾斜面84(傾斜スライド面)が形成される。
【0076】
このように、平行スライド面43の代わりに、傾斜面84を形成する篏合形態はインローに準じる篏合形態である。したがって、平行スライド面43の代わりに、傾斜面84を形成しても、上記実施形態及び変形例等と同様の効果を得ることができる。すなわち、高温作動部品30が2次元的に熱膨張するときでも、高温作動部品30及び断熱材を破損することなく、かつ、高温作動部品30の断熱を維持することができる。
【0077】
また、傾斜面84を形成する篏合形態は、高温作動部品30の熱膨張によって、篏合部を形成する断熱材が高温作動部品30の辺部に対して垂直及び水平にスライドするときに、特に有効である。この条件を満たす篏合部に傾斜面84が形成されていると、平行スライド面43を形成するときよりも面による断熱材83A,83Bの当接が維持されやすい。すなわち、傾斜面84によれば、高温作動部品30の熱膨張によって、高温作動部品30の辺部に対して垂直及び水平にスライドするときでも、高温作動部品30の断熱が維持されやすい。
【0078】
なお、傾斜面84は平面で形成される。このとき、高温作動部品30の辺部に対する傾斜面84の傾斜は、高温作動部品30が熱膨張したときに断熱材83A,83Bが高温作動部品30の辺部に対して垂直な方向にスライドするスライド量と、高温作動部品30が熱膨張したときに断熱材83A,83Bが高温作動部品30の辺部に対して水平な方向にスライドするスライド量と、の比によって定められる。具体的には、断熱材83A,83Bの垂直方向への相対的なスライド量をΔY、水平方向の相対的なスライド量をΔXとするときに、傾斜面84の傾斜角θは、θ=tan-1(ΔY/ΔX)によって定める。このように傾斜面84の傾斜角θを定めることにより、篏合部82に高温作動部品30に連通する空気層が形成されることによる断熱の崩壊、並びに、高温作動部品30及び断熱材83A,83Bの篏合突起の破損、を防ぐことができる。
【0079】
また、傾斜面84は曲面で形成することができる。このように傾斜面84を曲面で形成するのは、高温作動部品30の熱膨張による湾曲が無視できないときに特に有効である。
図13は、篏合突起に形成する傾斜面を曲面で形成した例を示す断面図である。
図13に示すように、局面で形成された傾斜面88の曲率半径r2は、高温作動部品30が熱膨張したときの篏合部82における高温作動部品30の曲率半径r1とほぼ等しくなるように定めることが好ましい(r1=r2)。このように傾斜面88の曲率半径r2を設定すると、熱膨張によって高温作動部品30が湾曲するときでも、断熱材83A,83Bは、傾斜面88による当接を維持しつつ、その湾曲に合わせて滑らかにスライドできる。その結果、高温作動部品30及び断熱材83A,83Bが破損せず、かつ、高温作動部品30の断熱が維持されやすい。なお、
図13における符号C0は曲率中心である。
【0080】
[繊維断熱材の挟持]
上記実施形態の断熱アセンブリ27及び変形例の断熱アセンブリ60では、これらを形成する断熱材が互いに直接に接触している。しかし、断熱アセンブリ27,60を形成する断熱材は、上記実施形態及び変形例等において断熱アセンブリ27,60を形成する断熱材とは異なる素材からなる断熱材を介して、篏合部を形成してもよい。すなわち、断熱アセンブリ27,60を形成する断熱材が、空気よりも熱伝導率が低い粒子断熱素材によって形成されるときには、篏合する2つの断熱材は、篏合部において繊維断熱材を挟持することができる。
【0081】
また、上記実施形態の断熱アセンブリ27及び変形例の断熱アセンブリ60では、これらを形成する断熱材が、断熱ケースC2及び高温作動部品30にそれぞれ直接に当接している。しかし、断熱アセンブリ27,60を形成する断熱材は、上記と同様、繊維断熱材等を介して、断熱ケースC2及び/または高温作動部品30に当接してもよい。
【0082】
図14は、繊維断熱材を挟持させた篏合部36aの例を示す断面図である。
図14では、一例として、実施形態に係る断熱アセンブリ27の篏合部36aを示す。
図14に示すように、例えば、篏合部36aにおいては、断熱材35aと断熱材35bの間に繊維断熱材92を挟持させることができる。すなわち、平行スライド面43及び/または垂直スライド面44に繊維断熱材91が配置される。
【0083】
また、篏合部36aにおいては、断熱材35a,35bと断熱ケースC2との間に繊維断熱材92を挟持させることができる。図示を省略するが、断熱材35a,35bと高温作動部品30の間に繊維断熱材92を挟持させることができる。もちろん、断熱材35a,35bと断熱ケースC2の間、及び、断熱材35a,35bと高温作動部品30の間、の両方に繊維断熱材を配置することができる。
【0084】
平行スライド面43、垂直スライド面44、断熱材35a,35bと断熱ケースC2の間、及び/または、断熱材35a,35bと高温作動部品30の間は、いずれも高温作動部品30の熱膨張によって、隙間(空気層)が発生する可能性がある部分である。
【0085】
繊維断熱材91,92は、例えば綿、グラスウール、またはスポンジ材等、繊維状の素材を、空気を包含するように立体形成した断熱材である。繊維断熱材91,92は、空気の対流を抑制することによって断熱性を発揮する。但し、繊維断熱材91,92は、概ね空気よりも熱伝導率が高いものの、断熱材35a、35b等として使用する粒子断熱材と比較して伸縮が自在である。また、実施形態及び変形例において断熱アセンブリ27,60を形成する各断熱材を本断熱材とするときには、上記の繊維断熱材は副断熱材である。
【0086】
上記のように高温作動部品30の熱膨張によって篏合部等に発生する可能性がある隙間の部分に繊維断熱材91,92を配置すると、さらに高温作動部品30の断熱を維持しやすい。これは、繊維断熱材91,92が、発生する隙間における空気の対流を抑制するからである。また、繊維断熱材91,92には伸縮性を有するので、繊維断熱材91,92は篏合部36aを形成する妨げになり難く、かつ、高温作動部品30の熱膨張の程度に応じて平行スライド面43等に発生する隙間を埋めることができる。その結果、上記のように高温作動部品30の熱膨張によって発生する隙間の部分に繊維断熱材91,92を配置すると、高温作動部品30の温度が変化して、その熱膨張の程度が変化するときでも、高温作動部品30の断熱を維持しやすい。
【0087】
なお、所定程度の断熱効果を得るために、粒子断熱材と繊維断熱材を積層して1つの断熱材を形成するときには、低温側に繊維断熱材を配置し、高温側に粒子断熱材を配置する方が、これと逆の配置にするときよりも断熱材全体としての厚さを低減できる。このため、断熱材35a,35bと断熱ケースC2または高温作動部品30に繊維断熱材を配置するときには、断熱材35a,35bと断熱ケースC2との間に繊維断熱材を配置することが好ましい。この粒子断熱材及び繊維断熱材の配置よれば、断熱装置10がさらに小型化される。
【0088】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態及び変形例等で説明した構成は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。例えば、上記実施形態及び変形例においては、断熱装置10は、燃料電池システム100の一部である高温作動部品30を断熱しているが、断熱装置10は断熱すべき部品等を含む他の装置またはシステム等にも好適である。また、上記実施形態及び変形例等はその一部または全部を任意に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0089】
10 :断熱装置
11 :蒸発器
12 :過加熱器
13 :改質器
14 :空気熱交換器
15 :燃料電池スタック
16 :燃焼器
27 :断熱アセンブリ
30 :高温作動部品
31a~31d :辺部
32a~32d :角部
33a~33d :辺部
34 :平行スライド面
34a~34d :角部
35a~35d :断熱材
36a~36d :篏合部
40 :外界
41,42 :篏合突起
43 :平行スライド面
44 :垂直スライド面
51a~51d :断熱材
60 :断熱アセンブリ
61a~61p :断熱材
71a~71d :篏合部
72a~72d :篏合部
73a~73d :篏合部
74a~74d :篏合部
76~79 :篏合突起
80,81 :隙間
82 :篏合部
83A,83B :断熱材
84,88 :傾斜面
91,92 :繊維断熱材
100 :燃料電池システム
C2 :断熱ケース