(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】波面フロート発電装置
(51)【国際特許分類】
B63B 35/34 20060101AFI20240625BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20240625BHJP
F03B 13/14 20060101ALI20240625BHJP
F16C 32/04 20060101ALI20240625BHJP
H02K 7/18 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B63B35/34 Z
B63B35/00 T
F03B13/14
F16C32/04 A
H02K7/18 A
(21)【出願番号】P 2020213196
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森▲崎▼ 賢二
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3192161(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第110067809(CN,A)
【文献】特開平05-049191(JP,A)
【文献】国際公開第2019/077563(WO,A1)
【文献】実開昭49-068392(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 1/00-85/00
F03B 1/00-17/06
F16C 32/00-32/06
H02K 7/00- 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に閉塞された空間を備えるブイの筐体と、
前記筐体の内部で固定されたダイナモと、
前記ダイナモを駆動するシャフトと、
回転中心が前記シャフトに固定され
且つ前記シャフトの回転軸から外れた位置に重心を有し且つ
前記シャフトの回転軸の伸長方向に着磁された第1の永久磁石の円柱形の磁石円盤である回転板と、
前記シャフトの回転軸の伸長方向において前記回転板の両面から離間して前記回転板を挟み且つ前記シャフトの回転軸の伸長方向に着磁された第2の永久磁石である一対の磁石円盤であって、前記回転板の前記第1の永久磁石と同極同士が向かい合うように、前記筐体の内部で固定された前記一対の磁石円盤と、
前記シャフトの回転軸の垂直方向において前記回転板の円周外側面から離間して前記回転板を囲み且つ前記シャフトの回転軸の伸長方向に着磁された第2の永久磁石である磁石円筒であって、両端部の開口部において、前記回転板の前記第1の永久磁石と同極同士が向かい合うように、前記筐体の内部で固定された前記磁石円筒と、
を有し、
前記ダイナモは、前記回転
板の回転により前記シャフトを介して駆動されて発電する
ことを特徴とする波面フロート発電装置。
【請求項2】
前記シャフトの回転軸から外れた前記回転
板の一部の位置に周囲より重い錘体が設けられていることにより、前記重心が前記シャフトの回転軸から偏倚している
ことを特徴とする請求項1に記載の波面フロート発電装置。
【請求項3】
前記シャフトの回転軸から外れた前記回転
板の一部の位置に周囲より比重が軽い軽量体が設けられていることにより、前記重心が前記シャフトの回転軸から偏倚している
ことを特徴とする請求項1に記載の波面フロート発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境発電装置を搭載する水上に浮かぶブイ(浮標)に関し、特に、波の動きによってブイの傾きが変化することを利用する波面フロート発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導を用いた発電装置として、特許文献1に記載された筒状コイル内面上に磁石を転動または摺動可能に搭載した発電装置がある。当該発電装置は円筒に巻かれた筒状コイルの内面上に磁石を入れ、この筒状コイルの傾きによって内部の磁石がコイルの中を転動し発電するものである。特許文献1は、当該発電装置を樹木等に取り付けた場合、風力による樹木の揺動に対応して発電し、海上に当該発電装置のハウジングを浮かべた場合、波動によって発電すると、示唆している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の技術の場合、筒状コイルであるため、その芯方向の傾き(高低差)がある場合にしか発電することができないという問題点があった。
【0005】
本発明は、以上の従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、さざ波のようなわずかな高低差ででも十分な発電量が得られる波面フロート発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の波面フロート発電装置は、内部に閉塞された空間を備えるブイの筐体と、前記空間の中に配されたシャフトと、前記空間の中に配され且つ前記シャフトに固定され前記シャフトの回転軸から外れた位置に重心を有し且つ前記シャフトの回転軸を回転軸として回転可能な回転体と、前記筐体及び前記回転体に設けられ前記回転体を回転可能に支持する反発型磁気軸受と、前記回転体の回転により前記シャフトを介して駆動されて発電する前記筐体に固定されたダイナモと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の波面フロート発電装置によれば、重量分布に偏倚があることでさざ波のような波力の揺れ若しくはわずかな高低差ででも十分な発電量が得られる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施例である波面フロート発電装置を概念的に示す斜視図である。
【
図2】
図1の線xxに沿って部分的に切断して波面フロート発電装置の内部を説明する部分的断面図である。
【
図3】第1の実施例である波面フロート発電装置の動作を説明する線図である。
【
図4】第1の実施例である波面フロート発電装置の反転させた場合の動作を説明する線図である。
【
図5】本発明の第2の実施例の波面フロート発電装置を概念的に示す断面図である。
【
図6】第2の実施例の波面フロート発電装置における回転板を説明する斜視図である。
【
図7】第2の実施例の波面フロート発電装置における回転板の変形例を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明による実施例の波面フロート発電装置について説明する。なお、実施例において、実質的に同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【実施例1】
【0010】
(構成の説明)
図1は本発明の第1の実施例である海上に浮いているブイ(浮標)である波面フロート発電装置10を概念的に示す斜視図である。
図2は
図1の線xxに沿って部分的に切断して波面フロート発電装置10の内部を説明する部分的断面図である。
【0011】
波面フロート発電装置10は、浮体として閉塞された筐体(以下、ブイともいう)BUOYと、その密閉された内部空間SPに配された、発電機であるダイナモ11と、このダイナモを駆動するシャフトSFと、このシャフトを回転させる回転板12(回転体)と、を備えている。波面フロート発電装置10には、ダイナモ11に電気的に接続されて電力が供給される負荷回路を有する電子装置15も備えられている。電子装置15は、ダイナモ11が発電した電気を使用する電子機器であって、例えば、ダイナモ11からの電気を整流する機能と蓄電をする機能を有する。電子装置15は、電力が供給されれば、波面フロート発電装置10の中になくても外部に搭載してもよい。
【0012】
ブイBUOYは、内部に閉塞された空間SPを備える。ブイBUOYの筐体材料には、水又は空気の影響を遮断し、外部から内部に電磁波を透過させるべく、耐水性の合成樹脂やガラス等を使用することができる。ブイBUOYの外形は円柱状に限定されず、浮体FLやバラストをブイ本体の周りに外装しても良く、また、外見上の全体を、楕円、円形(球)、立方形/長方形などの形状としても良い。
【0013】
自身の駆動軸を回転させることで発電をするダイナモ11は、回転板12の回転により、駆動軸と同軸に一体となったシャフトSFを介して駆動されて発電する。ダイナモ11は、自身の駆動軸が回転した時にダイナモ11が一緒に回らないように、外周を合成樹脂等でブイBUOYに固定されている。
【0014】
回転板12は空間SPの中に配される円盤であり、円盤の中心がシャフトSFに固定されて構成されている。回転板12はシャフトSFの回転中心軸(単に回転軸ともいう)から外れた位置に重心を有する。重心が回転中心軸から偏倚した回転板12は、シャフトSFに垂直な面内でシャフトと共に回転可能となっている。回転板12は、シャフトSFと共に回転して、シャフトSFに取り付けたダイナモ11を駆動することが出来る。
【0015】
回転板12は、例えば、シャフトSFの回転軸方向に着磁された円柱形の磁石円盤(第1の永久磁石)である。回転板12には、例えば、フェライト磁石が用いられる。
【0016】
回転板12には、固定されたシャフトSFの回転軸から外れた外周に近い周囲の一部に他の回転板部分より重い錘体13が設けられていることにより、重心が前記シャフトの回転軸から錘体へ偏倚している。錘体13は、回転板の他の部分(フェライト)より比重の大きい例えばオーステナイト系ステンレス鋼、高マンガン鋼、高ニッケル合金等の非磁性体からなり、回転板12を部分的に重くする。錘体13は、回転板12の外形に変化が出ないように内部に設置する。
【0017】
反発型磁気軸受PMBは磁石組立体であって、互いに半径が略等しい磁石円盤14b、14cと磁石円筒14dがそれらの中心をシャフトSFの回転軸と同軸に配置されて、それらの間に閉塞された空間SPを画定するように、ブイBUOYに埋め込まれている。すなわち、反発型磁気軸受PMBは、ブイBUOYの傾きによって位置が移動しないように、外周を合成樹脂などでブイBUOYに固定されている。ブイBUOYの空間SPの中にて、回転板12と反発型磁気軸受PMBとは、シャフトSFの回転軸を中心に同心円上に回転対称となるように配置されている。
【0018】
磁石円盤14b、14cと磁石円筒14dは、シャフトSFの回転軸方向に着磁された磁石(第2の永久磁石)である。第2の永久磁石の磁石材料としては、例えば、フェライト磁石や、ネオジウム磁石が挙げられる。ダイナモ14側の磁石円盤14cの中央部にはシャフトSF用の開口が設けられている。回転板12は、シャフトSFの回転軸の方向において第2の永久磁石の一対の磁石円盤14b、14cに挟まれ、且つシャフトSFの回転軸の垂直方向において第2の永久磁石の磁石円筒14dに囲まれるように配置されている。
【0019】
反発型磁気軸受PMBは、回転板12の外面に設けられた第1の永久磁石12aとブイBUOYに固定されかつ第1の永久磁石12aに対向して配された第2の永久磁石14b、14cとを有し、第1の永久磁石12aと第2の永久磁石14b、14cの同極が向かい合うようになされている。すなわち、反発型磁気軸受PMB(第2の永久磁石)は、回転板12(第1の永久磁石)を取り囲み、回転板12の磁極と同極が向かい合うように設置し、反発力により回転板12を浮かせることで、回転板12を離間した状態で回転可能に支持するとともに、ダイナモ11の駆動軸に回転以外の負荷がかからないように構成されている。回転板12と各永久磁石の内面との間隙は、反発力が得られるように、数mm~cm程度で設定することができる。
【0020】
回転板12は、その半径における一部分に他の部分より重い偏倚した重量分布を有している。すなわち、回転板12は、その回転中心軸から偏倚した重心を備えているので、ブイBUOYのあらゆる傾きに応じて容易に回転できる。
【0021】
このように、回転板12の一部(錘体13)は他の部分より重くなっており、ブイBUOYの傾きによって、必ずブイBUOYの最も位置の低いところに回転板12の当該一部が回動できるようになっている。すなわち、ブイBUOYの内部では、波面フロート発電装置全体の重さに比べて回転板12が軽いので、ブイBUOYの傾きに応じて、時計周りでも反時計周りでも回転できる。なお、ダイナモ11の駆動軸に回転方向センサ(図示せず)を有し、該回転方向センサの出力信号に応じて出力電圧のレベルを制御するように構成されている。
【0022】
(動作の説明)
図3は、本実施例の波面フロート発電装置10の動作を説明する線図である。
図3(A)は波がほとんどなく静止状態に近い海上に置いた場合の波面フロート発電装置10の姿勢を、
図3(B)は海面の波の動きによって波面フロート発電装置10が傾く姿勢を、示す。
【0023】
波面フロート発電装置10を海上に置いた場合、海面の波の動きによって、波面フロート発電装置は絶対的な水平を維持することはなく、必ずどこかが高く、また多くの場合、その反対側が低くなる。そして、その高くなる場所、低くなる場所は波の動きに合わせて常に変動する。
【0024】
よって、
図3(A)の状態から波(図示せず)が変化するとブイBUOYの傾きが
図3(B)の状態へ変化する。
図3(B)に示すように、ブイBUOYが傾くとブイBUOYに固定されているダイナモ11と反発型磁気軸受PMBが傾く。反発型磁気軸受PMBが傾くと、反発力により回転板12も傾く。ダイナモ11と反発型磁気軸受PMBがブイBUOYに固定されているので、ブイBUOYが傾くことでダイナモ11の駆動軸(シャフトSF)と回転板12の位置関係は変わらず、回転板12は反発型磁気軸受PMBとの反発力で浮いているため、ダイナモ11の駆動軸に負荷がかかることはない。
【0025】
このとき、波面フロート発電装置10における回転板12の錘体13が最下点にない場合(
図3(A)参照)であったとすると、該最下点にない錘体13は
図3(B)に示す矢印のように最下点に向かって移動を始め、回転板12が回転することになる。このように、ブイBUOYの傾きが変化すると、錘体13がブイBUOYの最も低い方向へ移動する。錘体13は回転板12に取り付けてあるため、錘体13の移動により回転板12がシャフトSFと共に回転して、ダイナモ11が発電する。
【0026】
図4は、本実施例の波面フロート発電装置10が海面に対し反転した時の動作を説明する線図である。
図4(A)は波がほとんどなく静止状態に近い海上に置いた場合の反転した波面フロート発電装置10の姿勢を、
図4(B)は海面の波の動きによって反転した波面フロート発電装置10が傾く姿勢を、示す。
【0027】
波面フロート発電装置10の重さだけを考えた場合、反発型磁気軸受PMBの重量が他に比べて十分大きいため、ブイBUOYは
図4(A)のように反転した状態になる。ダイナモ11と反発型磁気軸受PMBをブイBUOYに固定しているので、ブイBUOYが反転してもダイナモ11の駆動軸と回転板12の位置関係は変わらず、回転板12は反発型磁気軸受PMBとの反発力で浮いているため、ダイナモ11の駆動軸に負荷がかかることはない。
【0028】
図4(B)に示すように海面の波により波面フロート発電装置10が傾いたとき、波面フロート発電装置10における回転板12の錘体13が最下点にない場合、該最下点にない錘体13は
図4(B)に示す矢印のように最下点に向かって移動を始め、回転板12が回転することになる。このように、ブイBUOYの傾きが変化すると、錘体13がブイBUOYの最も低い方向へ移動する。錘体13は回転板12に取り付けてあるため、錘体13の移動により回転板12がシャフトSFと共に回転して、ダイナモ11が発電する。
【0029】
(効果の説明)
以上のように第1の実施例によれば、反発型磁気軸受PMBにより回転板12がよく回るため、さざ波のようなわずかな高低差でも傾きの変化を利用してダイナモを回すことでき、海上に浮かべるだけでダイナモ11により十分な発電量が得られる。
【0030】
従来技術では波面フロート発電装置を傾ける角度によって発電できない方向が存在していたが、本実施例では傾く方向によらず発電することができる。従来技術では発電時に摩擦によるロスが発生していたが、本実施例では回転板が回転するロスをなくすことが出来る。
【実施例2】
【0031】
図5は、第2の実施例の波面フロート発電装置10を概念的に示す断面図である。本実施例は、第1の実施例のシャフトSFの回転軸から外れた一部の位置に周囲より重い錘体13が設けられた回転板12に代えて、シャフトSFの回転軸から外れた外周に近い位置の周囲の一部を残して、その一部以外の位置に、回転板より比重の軽い軽量体133が両外面の磁極面を平行に保ったまま設けられている偏倚重心回転板122を用いた以外、第1の実施例と同一である。
【0032】
よって、本実施例における回転板122を
図6の斜視図に示す。例えば、フェライト磁石からなる円形の回転板の開始材に、固定されたシャフトSFの回転軸から外れた外周に近い周囲の一部の位置に軸方向に繋ぐ回転板接続部122Cを残し、その周囲の回転板部分の両外面の磁極面を平行に保ったままくり抜き、そこに転板より比重の軽い軽量体133(例えば合成樹脂などの非磁性体)を充填して設けることにより、重心が前記シャフトの回転軸から回転板接続部122Cへ偏倚している回転板122が得られる。
【0033】
さらに、図示しないが、軽い軽量体133として空間を利用することもでき、すなわち、強度が保持できるのであれば両外面の磁極面を平行に保ったまま回転板接続部122C以外回転板12が一部欠けた回転板122としても、偏倚した重量分布を形成することもできる。
【0034】
本実施例によれば、第1の実施例の効果に加えて、装置の軽量化が達成される。
【0035】
また、変形例として
図7の斜視図によって、第2の実施例の波面フロート発電装置における回転板の一例を説明する。当該変形例の回転板122は、回転板接続部122Cの内部に他の回転板部分より重い錘体13が設けられていること以外、
図6に示す回転板と同一である。このように、第1の実施例を第2の実施例に組み合わせることで、シャフトSFの回転軸から回転板接続部122Cへ重心が更に片寄るので、ブイが傾いた時に回転板が回転する効率を上げることが出来る。
【符号の説明】
【0036】
10 波面フロート発電装置
11 ダイナモ
12 回転板
13 錘体
12a 第1の永久磁石
14b、14c、14d 第2の永久磁石
15 電子装置
BUOY ブイ
PMB 反発型磁気軸受
SF シャフト