(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】洗米炊飯装置
(51)【国際特許分類】
A47J 27/14 20060101AFI20240625BHJP
A47J 27/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
A47J27/14 G
A47J27/00 103P
A47J27/00 109C
(21)【出願番号】P 2020213203
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】川端 英臣
(72)【発明者】
【氏名】山本 和彦
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-000810(JP,A)
【文献】特開平03-191915(JP,A)
【文献】特開平08-164065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/14
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗米タンク(5)の下方に炊飯釜(7)を備え、炊飯釜(7)は、内釜容器(101)とその内釜容器(101)の本体開口を塞いで中心部が高い中高形状の炊飯蓋(102)を着脱可能に備え、この炊飯蓋(102)には、中心部に供給孔(102a)を形成し、この供給孔(102a)を供給孔開閉手段(S)により開閉すべく連動するシャッタ(103)を取付け、炊飯蓋(102)付近に温度センサ(110)を備え、
供給孔(102a)を通じて、米が洗米タンク(5)から炊飯釜(7)に供給され、
炊飯釜(7)は通常炊飯行程と、粥飯炊飯行程を選択可能とし、
通常炊飯行程における炊飯運転中はシャッタ(103)の閉状態を維持し、
粥飯炊飯行程時における炊飯運転中は、該温度センサ(110)の検出温度が噴きこぼれ前の温度に達すると供給孔開閉手段(S)を駆動して供給孔(102a)を開き、所定温度以下になると再び供給孔(102a)を閉じる構成とし
、
シャッタ(103)の開口幅は、洗米タンク(5)から米を炊飯釜(7)へ供給するときよりも、前記噴きこぼれ前の温度に達したときの方を小さくすることを特徴とする洗米炊飯装置。
【請求項2】
粥飯炊飯行程後半に入ったことを判定し又は推定すると、前記温度センサ(110)による供給孔開閉手段(S)の駆動制御を中止し、シャッタ(103)は供給孔(102a)閉じ位置を継続する構成とした請求項1に記載の洗米炊飯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、要求量の炊飯を行うようにした洗米炊飯装置に関し、特に、所要の水加減による軟飯や粥飯等の炊飯に適した炊飯釜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗米部と炊飯部を備えた洗米炊飯装置において、標準の炊飯に対して水加減水の多い粥飯炊飯を可能にした技術があるが(特許文献1)、粥飯炊飯は多量の水加減水を使用するので炊飯釜の蓋から吹きこぼれる炊飯液で炊飯釜や加熱用ガス台部分に付着して汚損する恐れがあるため、洗米タンクの下方に炊飯釜を備え、炊飯釜に炊飯蓋を装着した状態で炊飯蓋の一部を開閉可能とするものがある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-197009号公報
【文献】特開2020-810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2によると、お粥モード時に炊飯釜の端部を上方に持ち上げる構成であるから、あらかじめ端部を持ち上げ保持していなければならず、異物・虫等が混入しやすい。
【0005】
この発明は、粥飯炊飯時、適切なタイミングで蒸気を逃がすことにより、虫等の異物が釜内に混入し難くしようとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
【0007】
第1の本発明は、
洗米タンク(5)の下方に炊飯釜(7)を備え、炊飯釜(7)は、内釜容器(101)とその内釜容器(101)の本体開口を塞いで中心部が高い中高形状の炊飯蓋(102)を着脱可能に備え、この炊飯蓋(102)には、中心部に供給孔(102a)を形成し、この供給孔(102a)を供給孔開閉手段(S)により開閉すべく連動するシャッタ(103)を取付け、炊飯蓋(102)付近に温度センサ(110)を備え、
供給孔(102a)を通じて、米が洗米タンク(5)から炊飯釜(7)に供給され、
炊飯釜(7)は通常炊飯行程と、粥飯炊飯行程を選択可能とし、
通常炊飯行程における炊飯運転中はシャッタ(103)の閉状態を維持し、
粥飯炊飯行程時における炊飯運転中は、該温度センサ(110)の検出温度が噴きこぼれ前の温度に達すると供給孔開閉手段(S)を駆動して供給孔(102a)を開き、所定温度以下になると再び供給孔(102a)を閉じる構成とし、
シャッタ(103)の開口幅は、洗米タンク(5)から米を炊飯釜(7)へ供給するときよりも、前記噴きこぼれ前の温度に達したときの方を小さくすることを特徴とする洗米炊飯装置である。
第2の本発明は、
粥飯炊飯行程後半に入ったことを判定し又は推定すると、前記温度センサ(110)による供給孔開閉手段(S)の駆動制御を中止し、シャッタ(103)は供給孔(102a)閉じ位置を継続する構成とした第1の本発明の洗米炊飯装置である。
本発明に関連する第1の発明は、洗米タンク5の下方に炊飯釜7を備え、炊飯釜7は、内釜容器101とその内釜容器101の本体開口を塞いで中心部が高い中高形状の炊飯蓋102を着脱可能に備え、この炊飯蓋102には、中心部に供給孔102aを形成し、この供給孔102aを供給孔開閉手段Sにより開閉すべく連動するシャッタ103を取付け、炊飯蓋102付近に温度センサ110を備え、該温度センサ110の検出温度が噴きこぼれ前の温度に達すると供給孔開閉手段Sを駆動して供給孔102aを開き、所定温度以下になると再び供給孔102aを閉じる構成とする。
【0008】
本発明に関連する第2の発明は、請本発明に関連する第1の発明において、粥飯炊飯行程後半に入ったことを判定し又は推定すると、前記温度センサ110による供給孔開閉手段Sの駆動制御を中止し、シャッタ103は供給孔102a閉じ位置を継続する構成とした。
【発明の効果】
【0009】
第1の本発明によると、供給孔102aを米の供給と噴きこぼれ防止の両方に用いるので簡単な構造となる。また、噴きこぼれの防止の際、供給孔102a全体を開放することなく、供給孔102aの開口幅εを必要最小限に設定するようにすることで、熱の放出を最小限に抑制できる。また、噴きこぼれ前を温度センサ110にて検知し供給孔102aを開き、温度センサ110によって熱が逃げたことを検知すれば供給孔102aを閉じる動作を繰り返すこととなり、適切なタイミングで蒸気を逃がし噴きこぼれを防止する。また、常時開放でなく、高温時に開けるので虫等の異物が釜内に混入しにくい。
第2の本発明によると、第1の本発明の効果に加え、粥飯炊飯行程後半においては蒸気の出る量を抑制でき排米弁や排水箱など上部部品の汚れを軽減できる。また熱を炊飯釜7外に逃がす量を最小限にでき、電気代ガス代の削減に寄与する。
本発明に関連する第1の発明によると、噴きこぼれ前を温度センサ110にて検知し供給孔102aを開き、温度センサ110によって熱が逃げたことを検知すれば供給孔102aを閉じる動作を繰り返すこととなり、適切なタイミングで蒸気を逃がすため噴きこぼれを防止する。また、常時開放でなく、高温時に開けるので虫等の異物が釜内に混入しにくい。
【0010】
本発明に関連する第2の発明によると、本発明に関連する第1の発明の効果に加え、粥飯炊飯行程後半においては蒸気の出る量を抑制でき排米弁や排水箱など上部部品の汚れを軽減できる。また熱を炊飯釜7外に逃がす量を最小限にでき、電気代ガス代の削減に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図8】(a)作用状態を示す側面図、(b)作用状態を示す平面図である。
【
図10】投下アームの作用状態を示す正面図である。
【
図13】洗米タンク容量と水加減量との関係を示す説明図である。
【
図14】洗米炊飯機の全体の制御フローチャートである。
【
図16】(A)(B)(C)供給孔開閉手段の作動状態を示す平面図である。
【
図18】(a)通常炊飯モードの炊飯量-水加減水量の関係表一例、(b)粥飯炊飯モードの炊飯量-水加減水量の関係表一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について、以下図面に基づいて詳細に説明する。
コ型又は角筒材を縦横に枠組みする支持部材1は、下部にキャスタを備えた長方形状の台枠1aと、所定幅及び所定高さの左右支柱1b,1bと、左右支柱1b,1b間に支架した複数の横桟1c,1c…により構成されている。
【0013】
上記横桟1cには各機材を装着すべく平板状の仕切り部材3を設け、その上部に貯米タンク4を設け、この貯米タンク4の下方には洗米タンク5を設け、洗米タンク5の下方には、間隔をおいて炊飯装置6を配置する。この炊飯装置6は炊飯釜7、釜加熱用ガス台8と引出式の架台9等から構成されている。
図1における架台9引出側を前側、奥側を後側とする。
【0014】
貯米タンク4は、断面方形状の上部の主タンク4aと、下部の漏斗状ホッパ部4bとからなり、このホッパ部4bの下端部に計量ドラムケース10が取り付けられている。該計量ドラムケース10内には、円筒状で切欠き部11を形成したドラム部11aと、前後の側壁部12a,12bとからなる計量ドラム13を設け、該前後の側壁部12a,12bを貫通すべく横軸14によって回転自在にドラムケース10に支持している。またこの軸14を直接連動すべくドラムケース10の後面側にモータ15を装着し、貯米タンク4から切欠き部11を介して計量ドラム13に一定量ずつ流下した米が充填され、回転によって切欠き部11位置が下方に反転してドラムケース10に形成した排出口16に至ると計量ドラム13から流下排出される構成である。
【0015】
前記仕切り部材3には排出口16に対応する開口17を備え、上記計量ドラム13を所定回転数だけ回転させることで、所定量の米を貯米タンク4から洗米タンク5に繰り出すよう構成されている。又、その繰り出し回数をカウントする回転センサ(図示せず)の検出によって所定量を供給できる構成としている。
【0016】
上記ドラムケース10と漏斗状ホッパ4bとは、一体的に構成され、上部の主タンク4aを取り外した後、このホッパ4bとドラムケース10との一体物は、仕切り部材3から外すことができるよう構成される。即ち、後方側は仕切り部材3に形成したフック状部18にドラムケース10の係合凸状部19を係脱可能に係合部20を設け、前方側にはこれら仕切り部材3とドラムケース10との間に螺子で着脱固定自在の着脱係合ステー21を設け、螺子22を緩めてステー21を螺子部中心に回動することにより、ドラムケース10との係合を解く構成である。ドラムケース10はその下端縁が仕切り部材3の長方形状の開口に嵌合すべく形成されるが、上記の係合ステー21の係合を外してその側を上方にやや持ち上げて上記下端縁の仕切り部材3からの嵌合を解き、前方から手前方向斜めに引き抜くことによって後方側の下端縁の嵌合を解きつつ係合部20の係合から解放できる。
【0017】
前記貯米タンク2及び計量部は、外方をカバー部材23で覆う構成で、左右側壁及び後側壁は適宜前記仕切り部材3等に固定して設けられ、前側壁23aは例えば正面視右側部を支点として開閉可能な扉形態に構成される。従って、前記貯米タンク2やドラムケース10の点検着脱はこの前側壁23aを解放した状態で行える。なお、24は主タンク4aを上方から着脱自在に施蓋する方形の覆板である。
【0018】
25は、漏斗状ホッパ部4bの一側(図例では前側)に設けた排米用の排出シャッタで、起立姿勢で排米を遮断し、軸支部回りに回動することによって傾斜案内シュート状になり内部の米を排出できる構成としている。
【0019】
図7は計量ドラム13部の断面図を示し、漏斗状の下部ホッパ4bとドラムケース10との間に米を傾斜案内するガスケット26a,26bを斜設し、計量ドラム13外周とドラムケース10内周との間隔を米の浸入によってもこれを圧砕しない程度の隙間t(例えば約1mm)を有する構成としている。
【0020】
前記計量ドラム13はモータ15によって一定方向イに回転、停止を繰り返すが、計量ドラム13の停止位置は
図10の実線にて示す位置としている。即ち、漏斗状ホッパ4bの側壁に加振手段(図例では後記空気供給用のポンプ66としている)を回転後方側ガスケット26bの存在側近傍の傾斜壁に装着して内部の米流動の促進を図る構成とし、併せて計量ドラム13はその開口端縁が当該加振側ガスケット26bの回転後位にて停止し、他方の開口端縁は非加振側ガスケット26aの前位にて停止するようになして、上記加振手段の振動によって入り込もうとする米を計量ドラム13をもって遮蔽する一方、非加振側では自然に計量ドラム13内に米を送り込むことにより供給量の精度を安定できる。
【0021】
洗米タンク5は、
図3に示すように、天井部に上記ドラムケース10から供給される米を案内する受け筒部31を備え、中間部に円筒状の胴部と、下部にホッパ状部を持つ構成である、洗米タンク3のホッパ状部の下方にジャケット部32を接続し、ホッパ状部とジャケット部32との境界部に米粒を漏下させない程度の開口を持つ網状体からなるフィルタ33を設けている。
【0022】
洗米タンク5の中心部には鉛直方向の回転軸34を設け、この回転軸34には棒状体を逆L型に折り曲げ成形した複数の攪拌棒35,35…を、これらの上側端部を軸34に溶接等によって取り付ける。回転軸34は洗米モータ36によりベベルギヤ機構37を介して回転され、回転によってタンク内の米と水とを撹拌すべく構成する。
【0023】
上記回転軸34は中空軸であり、内側の軸38は外側の中空軸34の内部に上下摺動自在に遊嵌されていて、下方に延出するこの軸38の下端に着脱自在に円錐形状の排米弁39を設ける。該軸38の上端を排米弁駆動用モータ40で駆動するカム41、後記投下アーム等の連動機構により上下動させて、排米弁39の開閉制御がなされる構成である。排米弁39が開くと、洗米タンク5内の米は下方の炊飯装置6の内釜中に落下するよう構成する。
【0024】
洗米タンク5への水の供給は水道蛇口に連通する主配水管46、上側給水弁47及び2連の可撓性の上給水管48,48、洗米タンク5の天井部の上部給水口49,49を経由する上側給水ルートと、上記主配水管46から分岐して下側給水弁50、配水管51、下部給水口52からジャケット部32を経由する下側給水ルートの2系統で行われる。なお各給水ルートには流量センサを備えている。
【0025】
即ち、前記ドラムケース10近傍で仕切り部材3をベースにして、主配水管46に通じる2本の上給水管48,48を配設すると共に、仕切り部材3を貫通状に設ける配水管51には下給水管53を接続している。
【0026】
55は前記電動モータ15と連繋して排出口16を開閉動するシャッタで、モータ15の回転をリンク機構56,57を介してシャッタ支軸58部に連結しドラム開口部が排出口16に一致するときシャッタ55開状態となるよう連動構成している。このため、常時はシャッタ55は閉じ姿勢にあり、洗米タンク3における洗米途中での拡散水の飛散を防いで計量ドラム13内の水の浸入を防止している。
【0027】
なお、上記の上給水管48,48は平面視において、左右中央線上に位置すべく配置され、この位置は後記の洗米タンク5の平面視左右中央線上に当たるものである。また、この上給水管48,48の配置される位置よりも左側にドラムケース10が位置し、右側には後記の排米弁139用モータ40及び撹拌棒35,35…駆動用洗米モータ36を配置している。
【0028】
洗米タンク3の下部後方には排水箱60が設けられる。排水口61を有した排水箱60は、上端が洗米タンク3の上部側面に開口するオーバフロー管62の下端部と、一端部が前記ジャケット部132に連通するジャケット部132の他端部とが接続されている。ジャケット部132からの排水は排水弁64の開閉で行われ、水位弁65で排水しながら洗米タンク5内の水位を調整する。
【0029】
常時、排水箱60は排水弁64及び水位弁65で閉鎖されているが、洗米タンク5内の水を排水する場合には、ジャケット部32のフィルタ33から、排水弁64及び/または水位弁65、排水箱60及び排水口61を経て排水される。排水弁64及び水位弁65は適宜の開閉出力によって開閉する。また、洗米タンク3内上部には洗米タンク5内の水量を検出する電気接点付きフロートセンサ68を備えている。
【0030】
前記洗米タンク5への水の供給は、洗米タンク5の天井部の上部給水口48を経由する上部給水ルートと、下部給水口51からジャケット部32を経由する下部給水ルートの2系統で行われる構成とするが、下部給水ルートの下給水管52に並列して、ポンプ66に連通して空気を噴出する空気噴出管67を配置し、下部給水ルートの水と並列して空気を併せてジャケット部32内に噴出する構成としており、下部給水管52、空気噴出管67は、それぞれ
図8(b)において、ジャケット部32の中心より偏芯した位置に設けられ、空気と水が混合された旋回流が生じやすくしている。
【0031】
そして、洗米タンク5での洗米作業時には、洗米タンク5内の回転軸34に設けられている大小の攪拌棒35,35…の回転方向と、下部給水ルートからの水噴出方向及び空気噴出管67からの空気噴出方向を互いに逆方向となるように構成している。
【0032】
洗米作業時には、攪拌棒35,35…を、
図8(b)に示すように、反時計方向に回転させ、下部給水ルートからの水及び空気噴出管67の空気の噴出方向を時計方向に回転するように噴出させる。すると、洗米タンク5内の特に底部近傍において、米は攪拌棒35,35…による撹拌と共に、空気の噴出により気泡が生じて気泡洗米状態となって、高い洗米効果を得ることができる。
【0033】
次に、炊飯装置の操作について説明する。
【0034】
まず、図外コンピュータの制御部に、炊飯量、洗米時間(攪拌棒135の回転時間)、研米時間(攪拌棒135の回転時間)、洗米タンク乃至釜内での浸漬時間などの炊飯装置稼働に必要な条件を前記カバー部材23の正面側扉部に配設した操作パネル(操作表示装置)70により設定するよう構成する。
【0035】
図9には、上記操作パネル(操作表示装置)70のスイッチカバー71を閉じた状態(
図9(a))と開いた状態(
図9(b))を示している。この操作パネル70には、工程表示部72、予約スイッチ73、設定スイッチ群74、スタートスイッチ75、ヘルプスイッチ76等が配置され、下方には液晶表示画面77を備えている。上記工程表示部72には米の計量、洗米及び浸し(浸漬)からなる予備工程と、釜の準備、浸し(浸漬)、点火、炊飯、むらし、炊き上りからなる炊飯工程を夫々表記し、現在どの工程を実行中であるかを各工程表示部毎に設けたLED78,78…を点灯して識別できるようにし、正常な運転状態では緑色、異常時に赤色の2色に発光するようにして、運転状態を容易に認識できるようにしている。
【0036】
上記設定スイッチ群74は、上下左右に「UP(+)」「DOWN(-)」及び「送り」の各スイッチを配設してなり、主な設定変更、例えば予定釜数、炊き上がり時刻等の設定を行なえる構成である。
【0037】
また、操作パネル70の下部には横軸支点で上下に開閉する上記スイッチカバー71を有し、
図9(a)に示す当該カバー71を閉じた状態では、液晶表示画面77は通常運転表示画面Aを表示する。この実施例の形態では累計炊飯回数(炊飯釜数に相当する。以下累計釜数という)、連続して炊飯する回数(以下予定釜数という)、一回の炊飯で処理する容量、炊飯の仕方(モード)、炊飯予備工程と炊飯工程における合計浸漬時間、及び、蒸らし時間を表示している。
【0038】
また、
図9(b)はスイッチカバー71を開いた状態を示す。該カバー71にはフォトカプラと反射板とからなるカバー開閉検知手段79と係止部80を設け、該カバー71を開くと、カバー開閉検知手段79がOFFになり、液晶表示画面77は通常運転表示画面Aから即座に炊飯条件を設定できる画面を表示し、以下この画面を炊飯条件設定画面Bという。炊飯条件設定画面Bは、炊飯量、水加減、洗い方、浸し時間、蒸らし時間、炊飯の仕方(モード)、点火方法の中のいずれかの炊飯条件が設定できる画面であり、各炊飯条件に対応した位置にある設定スイッチ81,81…で、その炊飯条件を決めることができるようになっている。82は操作パネル70の下方に配置した電源スイッチである。
【0039】
上記制御部は、次の機能をも併せて備えるものである。即ち、白米を通常の水加減の元に炊飯する通常炊飯モードと水加減量を通常炊飯モードよりも多くし、特有の加熱プログラムに従って炊飯する粥飯炊飯モードとを備え、夫々特有の水加減に設定しうるものとなっている。なお、この通常炊飯モードと粥飯炊飯モードとは、炊飯量Sと予め制御部Cに設定された所定量Aとの対比によって自動設定される構成である。そして、粥飯炊飯モードの設定は、炊飯条件設定画面Bから
図17に示す拡張設定画面Cの「おかゆモード」の選択設定による。拡張設定画面Cへの移行は、設定スイッチ群74の複数スイッチ同時操作による。拡張設定画面Cには、「おかゆモード」のほか、「洗米気泡設定」「水加減履歴」等がある。
【0040】
なお、通常炊飯モードにおける炊飯量Sと水加減量との関係一例を
図18(a)に、粥飯炊飯モードにおける炊飯量Sと水加減量との関係一例を
図18(b)に示す。水加減水の変更は、
図19に示す炊飯条件設定画面Bの「水加減」の指定とともに、前記「UP(+)」「DOWN(-)」スイッチ74の押し操作で順次レンジ設定の変更を行いつつ対応して水加減水の量を変更設定できるようになっている。そして、通常炊飯モードにおける水加減のレンジ毎の変更水量は、炊飯量の多少によって異ならせて設定している(
図18、「1レンジの変化水量」)のに対し、粥飯炊飯モードにおけるレンジ毎の変更水量は炊飯量の多少に関わらず一定としている(
図18、「1レンジの変化水量」)。このように、多量の水量を要する粥飯炊飯モードではきめ細かい設定によらず、1レンジ毎一定量の変更とすることにより、設定操作を簡単に行える。
【0041】
図19の炊飯条件設定画面Bにおいて、「炊飯量」を指定して前記「UP(+)」「DOWN(-)」スイッチ74の押し操作で、例えば0.5kg単位で増加設定できる構成であるが、図例は、標準炊飯モードの炊飯量3.0kgを表示している。ところで、粥飯炊飯モードに設定しているときは、最大炊飯量が予め設定される構成である。例えば、前記「UP(+)」スイッチ74を順次押し操作すると、「0.5」→「1.0」→「1.5」→「2.0」→「0.5」…のように、「2.0」を超える設定ができないようにして不測の炊飯条件を回避できるよう構成している。なお、最大炊飯量について、炊飯釜7の炊飯量に対応させて、制御部への粥飯炊飯量の最大量を設定記憶するよう構成するとよい。さらに、炊飯釜7の種類を自動判別できる判別手段を設けて最大炊飯量を自動設定できる構成としてもよく、この構成は通常炊飯モードに展開しても便利である。
【0042】
例えば、所定量Aとの対比において、設定した炊飯量Sが多いときは(S≧A)、「通常炊飯モード」に設定される。また、この設定した炊飯量Sが少ないときは(S<A)、「粥飯炊飯モード」に設定される。
【0043】
上記の「通常炊飯モード」と「粥飯炊飯モード」との相違によって、水加減及び炊飯加熱プログラムが異なり、夫々制御部に記憶されたプログラムに従って制御運転される構成である。例えば、水加減処理については、
図11に示すように水加減処理に入ると、まず所定量A(2升」に設定している)と設定炊飯量Sとを比較し(S101)、2升以上のときは通常水加減モードに設定され(S102)、2升未満のときは粥飯水加減モードに設定される(S103)。具体的には洗米タンク5からのオーバフロー状態から水位弁65で水位調節するための水位弁65開時間Tを各モード用に設定したテーブル乃至は関係グラフに基づいて設定する。通常水加減モードでは、水位弁65の開時間TがTSにセットされ(S104)、粥飯水加減モードではTNに設定されるものとなる(S105)。このようなモード設定及び水位弁開時間の選定が行われると、排水弁・水位弁の双方が閉じ(S106)、給水が行われる(S107)(本実施例では下給水としているが、上給水であってもよく、上下両同時給水を選択できる構成でもよい)。
【0044】
やがてオーバフローセンサ68がオンするが(S108)、下給水を停止し(S109)水位弁65を開動作させる(S110)。そしてこの水位弁65の開に伴なって洗米タンク5から排水し、所定時間経過後これを閉じることによって所望の水位、即ち水加減を得る(S112~S115)。ここで、通常水加減モードのときは、前記の水位弁開時間としてTSを呼び出し(S115)、炊飯量の約1.2倍程度の炊飯水を確保すべくなしている。また、粥飯水加減モードでは水位弁開時間としてTNを呼び出す(TS<TN)(S114)。
【0045】
もって、これらの時間をタイマセットによって管理し、タイマが上記時間の経過を出力すると、タイマアップし水位弁65は閉じ(S116)、所定の水加減が終了する。
【0046】
次いで、炊飯工程にいたると、その処理手順について、
図12に示すように、通常炊飯モード設定と粥飯炊飯モード設定とが選択設定される。通常炊飯モードでは通常炊飯用の加熱プログラムに沿って炊飯処理され、粥飯炊飯モードでは後述の加熱プログラムに沿って炊飯処理される。
【0047】
なお、上記の所定量Aは、洗米タンク5の最大容量Qを勘案して設定する。炊飯量Sと必要な水加減量Wとは、比例関係にあり、例えばW=pS+q(p、qは定数)となる。従って、全量ではS+W=S+pS+q=(1+p)S+qである。最大容量Qを勘案するときは、Q<(1+p)S+qを満たす炊飯量Sの最大値を設定値Aとするとよい。
【0048】
また、通常炊飯用水加減の場合と粥飯炊飯用水加減の場合とで、前記定数pが相違するため、設定値Aも当然に相違する。つまり、通常炊飯用水加減量WSと粥飯用水加減量WNとは、WS<WNの関係にあり、通常炊飯用の定数p(=ps)に対し、粥飯炊飯用の定数p(=pn)が数倍と大きいため、設定量Aは粥飯炊飯用の値が選択される(
図13)。
【0049】
次に、
図10に基づき排米弁139の駆動構成の実施例について説明する。
【0050】
この排米弁39の駆動構成は、排米弁39を排米軸38から取り外して清掃した後、再び装着するとき、排米軸38が上下に摺動しないように固定し、装着し易くするものである。
【0051】
中空の回転軸34内には排米軸38が上下摺動自在に遊嵌されていて、排米軸38の下端に排米弁39を取り付けている。洗米タンク5上部の取付部材にはシーソー状に上下動する投下アーム92の中間部を軸支し、投下アーム92の一端を排米軸138の上端にピン93連結し、投下アーム92の他端部に設けたローラ94に排米弁駆動用モータ40で矢印方向に駆動される投下カム41を接動可能に連係し、排米弁39を上下動させて洗米タンク5下部開口を開閉する構成である。なお、投下アーム92の一端側の下方への回動を所定位置で停止させるストッパ95を設けている。
【0052】
図10実線に示す状態では、投下カム41の大径部が投下アーム92のローラー94に当接し、投下アーム92の左側ブームを持ち上げ、投下アーム92を介して排米軸38及び排米弁39を持ち上げ、排米弁39を閉鎖状態としている。次いで、投下カム41が更に反時計方向に回動すると、投下アーム92の左側部を押圧しながら回転し、その大径部がローラー94から離れると、投下アーム92の左側が排米弁39等の自重により下動し、排米軸38も下動し排米弁39は開状態となる(
図10仮想線)。
洗米運転の作用について説明する。 電源スイッチ82をオンにし、操作パネル70の各操作に従って炊飯条件の設定を行ない、各種の炊飯条件を設定の後、スタートスイッチ75をオンすると、
図14で示す炊飯フローのように運転開始される。
【0053】
即ち、まず電源スイッチをオン(ステップ1)後、炊飯条件の設定入力を行い(ステップ2)、スタートスイッチ75を押すと(ステップ3)、ステップ4で貯米タンク4の米を計量ドラムで計量し、洗米タンク5に設定量の米を供給し、ステップ5で洗米する。
【0054】
ステップ5の洗米工程は、水をたれ流しながら米を攪拌する糠抜き工程、一旦給水した後水切りし米を湿潤状態で攪拌する研米工程、所定水位で米を攪拌する荒ゆすぎ工程、水をタンクよりオーバーフローしながら攪拌する仕上げゆすぎ工程からなる。
【0055】
上記ステップ5の洗米工程の次は、ステップ6の水加減処理工程に進む。このステップ6では、
図11のフローに基づき前述の要領で「通常炊飯用水加減モード」または「粥飯炊飯用水加減モード」に設定され、かつ洗米タンク3内の米の量、米の質、気温、水温等に見合った水量をマイクロコンピュータが計算して、洗米タンク5に給水し、洗米タンク5の満水後に、水位弁65を算出された時間分、即ちTS又はTN「開」して水加減をする。
【0056】
通常炊飯における水加減は炊飯量の約1.2倍程度であるのに対し、粥飯炊飯における水加減は、炊飯量の約5倍程度の水量を要するから、格段に相違する。炊飯釜に収容しうる量には制限があり、業務用の炊飯機を用いて通常炊飯で5升の炊飯が可能であっても粥飯炊飯は2升以下である。所定量を超えるか否かによって、制御部にて自動的に「通常炊飯用水加減モード」か「粥飯炊飯用水加減モード」かが選択され、それに基づいて所定の水加減を得る構成であるから、作業者の側で通常炊飯又は粥飯炊飯であるかの選択設定操作を不要として操作の簡単化が図れる。
【0057】
ステップ7では、洗米タンク5内の洗米済の米とステップ3の水加減の計量された水が、排米弁39の開閉により炊飯釜7に投下される。
【0058】
ステップ8では、炊飯釜7内の米は規定時間にわたり水に浸漬される。規定時間経過後に、ステップ9で点火、ステップ10で炊飯、ステップ11で蒸らしを行い、ステップ12で炊き上り、所定の米飯ができあがる。
【0059】
尚、スタートスイッチ75をオンする前に、予約スイッチ操作によって予約画面を出力し、炊き上がり時刻等を予約設定することにより予定の時刻に炊きあげることができる。
【0060】
また上記実施例では、水加減を洗米タンクの満量状態から水位弁65の開放によって順次減じながら所定水量を確保する形態としたが、この形態に限らず例えば、流量センサを設けて給水量を管理する構成でもよい。
【0061】
つぎに、炊飯釜7について、粥飯炊飯に対応できる炊飯釜について説明する。
【0062】
図15において、炊飯釜7は、内釜101とその内釜101の本体開口を塞いで中心部が高い中高形状の炊飯蓋102を着脱可能に備え、この炊飯蓋102には、中心部に供給孔102aを形成し、この供給孔102aを塞ぐように供給孔開閉手段Sのスライドシャッタ103を開閉可能に取付ける。
【0063】
供給孔開閉手段Sについて、リバーシブルモータ104の正転駆動によって回転するモータ軸105にメタル106を噛合し、該メタル106にはシャッタ開閉アーム107を取付け、シャッタ開閉アーム107の先端部に形成するU型の係合部で炊飯蓋102の摘み102bを係合し、スライドレール108に沿って前記スライドシャッタ103を左右(図例では右側)に移動可能に構成する。モータ104の停止はメタル106が図外リミットスイッチに当接することによる。
【0064】
そして、洗米タンク5内の洗米された米と水加減された水は、上下移動軸38及び排米弁39の下降によってタンク排米口が開かれ該タンク排米口から落下するが、下方にのぞむ供給孔102aを通って内釜101に収容される(
図16中(B))。続いてリバーシブルモータ104は逆転し、モータ軸105逆転によりメタル106及びシャッタ開閉アーム107を反対方向に移動(図例では右側)し、スライドシャッタ103が供給孔102aを閉じる位置にあるリミットスイッチ(図示せず)にて停止される構成としている(
図16中(A))。
【0065】
通常炊飯中は前記リバーシブルモータ104は停止状態を維持するが、粥飯炊飯モードにおいては、炊飯途中に作動する構成としている。すなわち、炊飯蓋102付近に温度センサ110を備え、該温度センサ110の変化によって噴きこぼれ前の温度に達するとリバーシブルモータ104を正転駆動して供給孔102aを開くよう構成する。そして、所定温度以下になるとリバーシブルモータ104を逆転して再び供給孔102aを閉じる。このように構成すると、噴きこぼれ前を温度センサ108にて検知し供給孔102aを開き、温度センサ110によって熱が逃げたことを推定検知すれば供給孔102aを閉じる動作を繰り返す。炊飯機外に逃げる熱を最小限にすることができる。なお、リバーシブルモータ104の正転駆動を所定短時間に設定することで、供給孔102a全体を開放することなく、供給孔102aの開口幅εを必要最小限に設定するようにしてもよく、この場合には熱の放出を最小限に抑制できる(
図16中(C))。
【0066】
温度センサ110の検出結果に基づいてスライドシャッタ103を作動させて供給孔102aを開放したり復帰動して閉鎖することができ、適切なタイミングで蒸気を逃がすため噴きこぼれを防止する。供給孔102aは常時開放でなく高温時に開けるので虫等の異物が釜内に混入し難い。
【0067】
また、粥飯炊飯においては、炊飯行程後半に入ると加熱を弱くする構成としているが、この後半に入ったことを判定し又は推定すると、前記の温度センサ110によるスライドシャッタ103制御を中止するよう構成する。なお、所定時間経過すると、粥飯炊飯工程が後半に入ったと判定でき、この所定時間は炊飯量は水加減に応じて予めデータ集積したものを呼び出す構成としている。このように構成すると、蒸気の出る量を抑制でき排米弁38や排水箱60など上部部品の汚れを軽減できる。また熱を炊飯釜7外に逃がす量を最小限にでき、電気代ガス代の削減に寄与する。
【0068】
なお、本実施の形態では、設定以上の温度の検出により、噴きこぼれを検出しているが、例えば、設定以上の温度が設定時間継続していることで噴きこぼれを検出したり、お粥炊飯のモードを選択すると炊飯開始後から設定時間後にスライドシャッタ103を作動させてもよい。あるいは、設定以上の温度を検出すると、設定時間毎にスライドシャッタ103を開閉する構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0069】
5 洗米タンク
7 炊飯釜
101 内釜
102 炊飯蓋
102a 供給孔
103 スライドシャッタ(シャッタ)
110 温度センサ
S 供給孔開閉手段