(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】回路基板
(51)【国際特許分類】
H03H 7/01 20060101AFI20240625BHJP
H05K 1/16 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H03H7/01 A
H05K1/16 E
(21)【出願番号】P 2020520368
(86)(22)【出願日】2019-05-23
(86)【国際出願番号】 JP2019020449
(87)【国際公開番号】W WO2019225698
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2018099705
(32)【優先日】2018-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白嵜 友之
(72)【発明者】
【氏名】野村 浩功
(72)【発明者】
【氏名】狩野 典子
(72)【発明者】
【氏名】馬庭 進
(72)【発明者】
【氏名】小野原 淳
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/028596(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/116616(WO,A1)
【文献】特表2016-527743(JP,A)
【文献】特開2016-096262(JP,A)
【文献】特開2015-070169(JP,A)
【文献】国際公開第2017/014058(WO,A1)
【文献】特開2016-006830(JP,A)
【文献】特開2016-111244(JP,A)
【文献】特開2011-103358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 5/00- 7/13
H05K 1/14
H05K 1/16
H05K 1/36
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00-27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通穴が設けられたガラス板と、複数の回路素子とを有する回路基板であって、
前記貫通穴の内周と前記ガラス板の表面とに配置された導電性部材により形成される回路を有し、
前記ガラス板の少なくとも一方の面に、樹脂を絶縁材とするさらなる積層回路が配置され、前記ガラス板の表面上の回路と前記積層回路とは電気的接続をもっており、
前記回路素子の一つは、前記貫通穴の内周と前記ガラス板の表面とに沿ってコイル状に配置されたソレノイドコイル素子であり、
前記ソレノイドコイル素子は少なくとも2つのインダクタを含み、前記2つのインダクタにより形成される磁束の向きは平行であり、
前記回路素子の一つは、前記ガラス板の表面に配置された回路が構成する下電極又は前記積層回路が構成する下電極と、前記下電極上に形成された誘電体層と、前記誘電体層上に形成された上電極とを含むキャパシタ素子であり、
前記ソレノイドコイル素子と前記キャパシタ素子により、少なくとも1つのLC周波数フィルタを構成しており、
前記回路基板の一方の面には第1の端子が形成され、前記回路基板の他方の面には第2の端子が形成されており、
一方の前記ガラス板の表面上の回路もしくは積層回路は、前記第1の端子を介して、少なくとも1つの電子部品に電気的に接続可能であり、他方の前記ガラス板の表面上の回路もしくは積層回路は、前記第2の端子を介して、別回路基板に電気的に接続可能であり
、
前記回路基板の他方の面に、前記ガラス板の表面上の回路もしくは積層回路に対し電気的接続をもつ導電性の接続パッドと、前記回路に電気的接続をもたない放熱パッドとが形成されており、前記接続パッドが前記第2の端子であり、
前記放熱パッドが、前記回路基板の周縁に沿って外部に露出しつつ1列で配置され、その列の内側に隣接して、前記接続パッド、および前記回路に電気的接続をもたない複数の放熱パッドが、外部に露出しつつ1列で配置され、前記放熱パッドの間に前記接続パッドが配置される、
ことを特徴とする回路基板。
【請求項2】
前記LC周波数フィルタが、バンドパスフィルタ、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、ダイプレクサのうち少なくとも1つの機能を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記LC周波数フィルタが、移動体通信における2GHz以上の周波数帯の時分割二重化送受通信に使用される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の回路基板。
【請求項4】
前記LC周波数フィルタが、50MHz以上の通過帯域を有するバンドパスフィルタである、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の回路基板。
【請求項5】
総厚が0.5mm以下である、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の回路基板。
【請求項6】
前記接続パッド及び前記放熱パッドは、前記別回路基板の導電パターンに対し接続される、
ことを特徴とする請求項
1~5のいずれか一項に記載の回路基板。
【請求項7】
前記放熱パッドは接地されている、
ことを特徴とする請求項6に記載の回路基板。
【請求項8】
前記ガラス板の直上に応力緩和層が形成される、
ことを特徴とする請求項1~
7のいずれか一項に記載の回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンの出荷量は横ばいであるが、動画配信サービス拡大を背景として通信データ量は増大しており、この傾向は今後も続くと予想されている。通信量増大に対応する為に、High Band(2.3~6.0 GHz)、TDD(Time Division Duplex)、CA(Carrier Aggregation)、MIMO(Multi Input Multi Output)等の新たな高速セルラー通信技術普及が普及し、1台のスマートフォンが使用するRF(Radio Frequency)フィルタの数が増加している。
【0003】
セルラー通信の送受信二重化方式には、TDDとFDD(Frequency Division Duplex)とがある。TDDは一つの通信帯域を時分割で二重化し、FDDは隣接した1組の通信帯域(送信帯域をUL:Up Link, 受信帯域をDL:Down Linkと呼ぶ)を使用して二重化する。
【0004】
送受信で電波を対称に二重化するFDDに対し、TDDは非対称な二重化が可能なため、電波利用効率において原理的に優位である。また、2波長帯を使うFDDに対し、1波長帯で実現するTDDは、回路構成もよりシンプルになる。
【0005】
この様に、TDDは原理的優位性を有するものの、デジタルセルラー通信サービス開始当初は、端末・基地局同期精度が低く、送信と受信の間に長いブランク期間を設ける必要があり、電波利用効率でも優位となったFDDから普及が進んだ。この様な状況に対し、近年の基地局・端末同期技術進歩が、TDDのブランク期間を短縮し、TDDの普及を加速している。同期技術の進歩は、ブロードバンドによる高速通信にも繋がっている。サービス開始当初のFDD帯域幅は20MHz以下であったが、現在のTDD帯域幅は200MHzのブロードバンドで利用されている。
【0006】
現在のセルラー通信では460MHzから6GHzの周波数帯が通信帯域として割り当てられている。
電波の伝達特性(減衰や障害物回避など)はより低周波において優れる為、使用帯域は1GHz以下から普及が進んだ。しかし、通信量拡大に伴い、1GHz以下帯域の利用状況は早々過密化し、現在は2GHzまで過密化が進んでいる。
この様な状況を背景とし、今後は未使用帯域が残る2.3~6.0 GHz帯域のブロードバンドTDDの普及が進むと思われる。
【0007】
各国の各キャリアが使用する通信帯域は、3GPP (Third Generation Partnership Project)が仕様を策定し、各々の通信帯域にはbandナンバーが付与される。
【0008】
band 12の通信帯域は、FDD方式、UL 699~716MHz, DL729~746MHzと規定されており、幅17MHzの狭い帯域を13MHzの近接した間隔で利用する。通信帯域は、バンドパスフィルタ(以降、BPFと略す、又は周波数フィルタと呼ぶ場合がある)によって、ノイズとなる外来電波から隔離される。band 12の様な隣接した狭い帯域を隔離する周波数フィルタには、シャープなバンドパス特性もつAW(Acoustic Wave)フィルタが用いられる。
【0009】
AWフィルタには、SAW (Surface Acoustic Wave)フィルタと、BAW (Balk Acoustic Wave)フィルタがある。SAWフィルタは圧電体の上に櫛歯型対向電極を形成し、表面弾性波の共振を利用するフィルタである。BAWフィルタには、FBAR型 (film bulk acoustic resonator)とSMR型(solid mounted resonator)がある。FBARは圧電体フィルムの下にキャビティを設けバルク弾性波の共振を利用するフィルタである。SMRはキャビティの代わりに圧電膜の下に音響多層膜(ミラー層)を設けることで弾性波を反射させ共振を利用するフィルタである。FBARはフィルタ特性の急峻性と許容挿入電力においてSMRに優れ、現在のBAWの主流となっている。FBAR は前述したキャビティを高度なMEMS技術で形成するため、SAWより高価であるといわれている。
【0010】
BAWフィルタはSAWフィルタに比較し、許容挿入電力などの点で高周波特性に優れ、利用周波数において下記の棲み分けがある。
Low Band (~1.0GHz):SAWフィルタ
Middle Band (1.0~2.3GHz):SAWフィルタ又はBAWフィルタ
High Band (2.3GHz~):BAWフィルタ
【0011】
世界各国で使用するハイエンド・スマートフォンは、一機種で各国地域とキャリアに対応する為に、多くの通信帯域(10~20)を切替えて使用するRF(Radio Frequency)回路を有している。この為、ハイエンド・スマートフォンでは回路基板配線複雑化に起因した信号干渉を生じ易い。この問題を回避する為に、ハイエンド・スマートフォンでは、帯域や通信方式毎に、周波数フィルタ、増幅アンプ、高速スイッチを集積モジュール化し、回路の最適化を行っている。
【0012】
またスマートフォンでは、厚さ6mm程度の筐体に、回路基板と表示素子を重ねて実装する為、モジュールの厚みは0.6~0.9mm程度に納める必要がある。
【0013】
AWフィルタと同様に、ソレノイドコイルによるリアクタンスとキャパシタンスを組み合わせたLCフィルタも、周波数フィルタとして使用できる。しかしながら、AWフィルタに比較し閾値特性がブロードな為、隣接帯域を同時使用するFDDでの活用は困難だったが、連続した1帯域で運用するTDDでは、LCフィルタを周波数フィルタとして用いる事が可能である。
【0014】
また、LCフィルタは今後普及するHigh Band(3.5~6.0 GHz)TDD用の周波数フィルタにおいて要求される、許容挿入電力、広通信帯域(ブロードバンド)、温度ドリフトなどのAWフィルタに比較し優位性を有する。しかしながら、従来のLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)技術で製造するチップLCフィルタは、AWフィルタに比べサイズが大きく、特に厚みの問題から、ハイエンド・スマートフォンの薄型モジュールに内蔵することは困難だった。
【0015】
同様に今後普及が進む高速通信技術にCA(Carrier Aggregation)がある。CAは複数通信帯域の同時使用し高速通信を実現する技術である。
この為、CAの周波数フィルタは、同時使用する互いの通信波から其々の通信波を隔離しなければならない。即ち、抑制しなければならないノイズ強度は、従来の外来電波に比べ非常に大きい。この為、CA単位での集積モジュール化による回路最適化は重要になる。
【0016】
CAで同時使用する複数通信帯域の中には2.3~6.0 GHz 帯 TDDも含まれる。然るに、今後の高速通信技術に対応する為に、スマートフォンの薄型モジュール内に、いかにしてLCフィルタを実装するかという課題がある。これに対し、回路基板にコイルを内蔵することで、よりコンパクトな回路構成を実現する技術が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】特開2005-268447号公報
【文献】米国特許第9401353号
【文献】米国特許第9425761号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
特許文献1には、配線パターン層のうち、少なくとも2層以上にコイルの一部となるコイル用パターンが形成され、コイル用パターンに挟まれた電気絶縁性基材の所定位置に、コイル用パターンの各々の端部間を連通する貫通穴が設けられ、貫通穴内に導電性ペーストが充填されて各々の端部間が電気的に接続されているコイル内蔵多層回路基板が開示されている。
【0019】
ここで、上記電気絶縁性基材は、いわゆるガラスエポキシ基板等であり、貫通穴をドリル等の機械加工で形成しているため、貫通穴の内周にガラス繊維の端部が露出し、それにより内周面が凹凸状となっている。また、ガラスエポキシ基板の表面も本来的に凹凸を有する粗面である。したがって、上述したようにコイルパターンを形成できたとしても、その配線の幅や径が局所的に変化するので、コイルの電気的特性が悪く、またばらつくという問題がある。
【0020】
また、シリコン基板にコイルを内蔵する試みもある。例えば、特許文献2には、受動部品を内蔵したシリコンインターポーザが開示されているが、内蔵受動部品は、トレンチキャパシタ、ダイオード、電源タップである。シリコンは半導体であり導体配線の為絶縁膜形成が必要であり、LCフィルタ用途ではコスト、性能の両面で課題が生じる。
【0021】
また、特許文献3には、ガラス基板に貫通導体を設けて形成した3D構造のリアクタンスと、ガラス基板の表面に形成したキャパシタンスにより構成されるLC周波数フィルタが開示されている。しかしながら、特許文献3のLC周波数フィルタはインターポーザ機能を有しない。
【0022】
RF回路の集積モジュールは、インターポーザを構成する樹脂基板上に、周波数フィルタ、増幅アンプ、高速スイッチを搭載する。従来の通信規格の薄型移動体通信機器では、周波数フィルタに対し、中心周波数0.8~3.5GHz,通過帯域幅30~120MHzかつ、急峻な抑制が要求されていた為、Surface Acoustic Wave(SAW)、Balk Acoustic Wave(BAW)といった物理共振を利用するフィルタが用いられていた。一方、電気共振を利用するLCフィルタは、そのような急峻な抑制が困難であるため、従来は使用されていなかったという実情がある。
【0023】
これに対し、5G通信規格では、中心周波数3.7GHz:通過帯域幅600MHz, 中心周波数4.5GHz:通過帯域幅500MHzといったより広い帯域幅が要求されており、急峻な抑制に対する要求は緩和されている。加えて高周波化に伴う挿入損失(発熱)の増大は、5G通信規格の課題となっている。
【0024】
AWフィルタでは、広い通過帯域幅を実現する為に、素子を並列に接続する必要があり、部品点数が増大する。かつ物理共振を利用する為、高周波化に伴い挿入損失が深刻化する。一方、電気共振を利用するLCフィルタは1素子で広い通過帯域幅が実現可能であり、電気共振を利用する為、高周波化に伴う挿入損失もより小さい。
【0025】
しかしながら、一般的な小型LCフィルタである、Low Temperature Co-fired Ceramics(LTCC) 型のフィルタは薄型化が困難な為、薄型モジュール用インターポーザ基板に搭載する事が困難であるとされている。
【0026】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、例えば次世代の薄型移動体通信機器の大容量通信に対応でき、低コストでありながらコンパクトな回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上述した課題を解決するために、本発明の回路基板は、貫通穴が設けられたガラス板と、複数の回路素子とを有する回路基板であって、
前記貫通穴の内周と前記ガラス板の表面とに配置された導電性部材により形成される回路を有し、
前記ガラス板の少なくとも一方の面に、樹脂を絶縁材とするさらなる積層回路が配置され、前記ガラス板の表面上の回路と前記積層回路とは電気的接続をもっており、
前記回路素子の一つは、前記貫通穴の内周と前記ガラス板の表面とに沿ってコイル状に配置されたソレノイドコイル素子であり、
前記ソレノイドコイル素子は少なくとも2つのインダクタを含み、前記2つのインダクタにより形成される磁束の向きは平行であり、
前記回路素子の一つは、前記ガラス板の表面に配置された回路が構成する下電極又は前記積層回路が構成する下電極と、前記下電極上に形成された誘電体層と、前記誘電体層上に形成された上電極とを含むキャパシタ素子であり、
前記ソレノイドコイル素子と前記キャパシタ素子により、少なくとも1つのLC周波数フィルタを構成しており、
前記回路基板の一方の面には第1の端子が形成され、前記回路基板の他方の面には第2の端子が形成されており、
一方の前記ガラス板の表面上の回路もしくは積層回路は、前記第1の端子を介して、少なくとも1つの電子部品に電気的に接続可能であり、他方の前記ガラス板の表面上の回路もしくは積層回路は、前記第2の端子を介して、別回路基板に電気的に接続可能であり、
前記回路基板の他方の面に、前記ガラス板の表面上の回路もしくは積層回路に対し電気的接続をもつ導電性の接続パッドと、前記回路に電気的接続をもたない放熱パッドとが形成されており、前記接続パッドが前記第2の端子であり、
前記放熱パッドが、前記回路基板の周縁に沿って外部に露出しつつ1列で配置され、その列の内側に隣接して、前記接続パッド、および前記回路に電気的接続をもたない複数の放熱パッドが、外部に露出しつつ1列で配置され、前記放熱パッドの間に前記接続パッドが配置される、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、例えば次世代の薄型移動体通信機器の大容量通信に対応でき、低コストでありながらコンパクトな回路基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1A】
図1Aは、本発明による、回路素子を内蔵した回路基板のブロック図である。
【
図1B】
図1Bは、本発明による、回路素子を内蔵した回路基板のブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に含まれるキャパシタの断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に含まれるインダクタの斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、本発明の実施形態に含まれるバンドパスフィルタの回路図である。
【
図4B】
図4Bは、バンドパスフィルタの周波数特性の一例を示す図である。
【
図5A】
図5Aは、本発明の実施形態に含まれるバンドパスフィルタを持つ回路基板の断面図である。
【
図5B】
図5Bは、LC周波数フィルタを持つ回路基板の上面図である。
【
図6A】
図6Aは、本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を示す図である。
【
図6C】
図6Cは、本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を示す図である。
【
図6D】
図6Dは、本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を示す図である。
【
図7A】
図7Aは、本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を示す図である。
【
図7C】
図7Cは、本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を示す図である。
【
図8A】
図8Aは、本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を示す図である。
【
図8B】
図8Bは、本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を示す図である。
【
図8C】
図8Cは、本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を示す図である。
【
図9A】
図9Aは、本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を示す図である。
【
図9B】
図9Bは、本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を示す図である。
【
図10A】
図10Aは、本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を示す図である。
【
図10B】
図10Bは、本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を示す図である。
【
図10C】
図10Cは、本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を示す図である。
【
図11A】
図11Aは、本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を示す図である。
【
図11B】
図11Bは、本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を示す図である。
【
図12A】
図12Aは、本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を示す図である。
【
図12B】
図12Bは、本発明の実施形態にかかる回路基板の製造工程を示す図である。
【
図13】
図13は、回路基板に電子部品を実装し、マザーボードに搭載する工程を示す図である。
【
図14】
図14は、回路基板に電子部品を実装し、マザーボードに搭載する工程を示す図である。
【
図15】
図15は、回路基板に電子部品を実装し、マザーボードに搭載する工程を示す図である。
【
図16】
図16は、回路基板に電子部品を実装し、マザーボードに搭載する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<実施形態>
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、本明細書中、「上」とはガラス基板から遠ざかる方向をいい、「下」とはガラス基板に近づく方向をいう。また、「回路素子」とは、抵抗器、キャパシタ、インダクタ、などの受動素子であり、好ましくはLC回路の構成要素となる素子をいう。かかる回路素子は、複数帯域通信の内、少なくとも2GHz以上の帯域でTDDに使用するバンドパスフィルタを構成するLCフィルタの部品であると好ましい。このLCフィルタは、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、ダイプレクサ等の分波フィルタや、特定帯域のノイズを除去する、ノッチフィルタとして構成しても良い。
【0031】
「LCフィルタ」は、LC周波数フィルタともいい、インダクタ(L)とキャパシタ(C)を組み合わせて、特定の周波数帯域をカットしたり通過させたりする回路をいい、バンドパスフィルタ、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、ダイプレクサの機能を有するものをいう。特に、本実施の形態で用いるLC周波数フィルタは、移動体通信における2GHz以上の周波数帯の時分割二重化送受通信に使用されると好ましく、また50MHz以上の通過帯域を有するバンドパスフィルタであると好ましい。
【0032】
まず、本実施形態にかかる回路基板を用いた送受信回路全体の構造と機能について、
図1Aを参照して説明する。
図1Aに示す送受信回路は、次世代のスマートフォンに好適に用いることができる。次世代のスマートフォンとは、同時複数帯域通信を行い、高速通信を実現するCA方式に対応したセルラーRF回路を使用するスマートフォンであって、各々の通信帯域で周波数フィルタとして使用するバンドパスフィルタと、スイッチ、アンプを有し、必要に応じて、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、ダイプレクサ等の分波フィルタやなど、何れかのRF部品を集積する回路基板を有するものである。
【0033】
受信時において、アンテナ214が受信した電波から、トランシーバLSI202が制御するRF回路215が通信波を取り出す。ベースバンドプロッセッサ210は通信波からベースバンド信号取り出し、パケットを再構成する。アプリケーションプロセッサ211は、受け取ったパケットからユーザーが必要なサービスを構成する。これに対し送信は、逆の経路をたどる。
【0034】
CA方式におけるRF回路215の動作を、より詳細に説明する。
アンテナ214が受信した電波は、ダイプレクサ213により1000MHzを境に、より高周波な帯域とより低周波な帯域(Low Band)に分波される。より高周波な帯域は更に、ダイプレクサ212により2300MHzを境に、中周波帯域(Middle Band)と高周波帯域(High Band)に分波される。Low Band はband 8 FDD,Middle Bandはband 1 FDD とband 3 FDD,High Bandはband 41 TDDとband 42 TDDの通信波を含む。この様に、周波数フィルタによってband毎の通信波を取出す前に、分波フィルタを使って帯域を分離する事は、複数帯域を同時使用するCA方式において、帯域間の干渉抑制する為の有効な手段となる。
【0035】
分波フィルタでの分離なしに、同一回路上に異なる周波数フィルタが存在する場合(213と204、205と206)干渉抑制が必要な各々フィルタ毎に調整用LC要素を追加することも有効である。調整用LC要素は、分波フィルタで分離したフィルタ間においても必要に応じて有効に用いることができる。この様な干渉抑制用LC要素をモジュール回路基板に内蔵することも、高機能でありながらコンパクトな回路基板を実現する為に有効である。
FDDに用いる送受信用一組のバンドパスフィルタ205~206は、デュプレクサと呼ばれる。TDDでは一つのバンドパスフィルタ203, 204を、送受信時分割使用するためにスイッチ208を使用する。送信時はFDD,TDD共、周波数フィルタの通過前に、通信波をアンプ209で増幅する。
【0036】
CA単位モジュール1は、ダイプレクサ×2、バンドパスフィルタ×2、スイッチ×2、デュプレクサ×3、アンプ×5を含んでいる。本実施形態によってダイプレクサ×2、バンドパスフィルタ×2はLCフィルタとしてモジュール回路基板内に形成し、該LCフィルタのソレノイドコイル素子は、少なくともその構造の一部を回路基板内に有する事で薄型が可能となる。該LCフィルタ以外のRF部品はモジュール回路基板上に実装する事が可能であり、LCフィルタ上にそれらを実装する事でモジュール面積を縮小することが可能となる。これにより高機能でありながらコンパクトな回路基板を実現できる。
【0037】
図1AのRF回路215は一つのCA単位モジュール201を有しているが、スマートフォンが複数の通信キャリアに対応する場合、異なるCAごとに対応した複数のCA単位モジュールを搭載してもよい。
【0038】
本実施形態では、
図1Bに示す様に、帯域や通信方式毎に、周波数フィルタ、アンプ、スイッチをまとめてなる、従来型モジュール化とし、High Band TDDモジュールとして用いることも可能である。
図1Bでは、ハイパスフィルタ302とTDD用バンドパスフィルタ303,304をLCフィルタとしてモジュール回路基板内に構成する事ができる。
図1Bにおいて、共通する部品については同じ符号を付して、重複説明を省略する。
本実施形態にかかる回路素子は、TDDに使用するバンドパスフィルタを構成するLCフィルタの部品であると好ましい。また、本実施形態にかかる回路素子は、ダイプレクサ、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタなど分波フィルタ構成するLCフィルタの部品であると好ましい。さらに、本実施形態にかかる回路素子は、前記バンドパスフィルタ間の干渉抑制調整回路用のソレノイドコイル素子であると好ましい。
【0039】
次に、ガラス板をコア材として、その両面に配線層と絶縁樹脂層を交互に形成した基板を例にとって、LC回路を構成する回路素子としてのキャパシタとインダクタの例を、それぞれ説明する。
【0040】
キャパシタについては、二枚の導体板の間に誘電体を挟んだ構造とする。キャパシタの例としては、
図2に示すように、不図示のガラス基板直上に、又はガラス基板上に形成した絶縁樹脂層11の上に、下電極12を積層して導体パターンを形成し、かかる導体パターンの上に誘電体層13を積層し、さらにその上に上電極14となる導体を積層したものである。下電極12と上電極14は、一般的にシード層と導電層からなる多層構造を有する。
【0041】
インダクタについては、らせん状のコイルと同様の性能を、貫通穴を備えたガラス基板に内蔵することができる。
図3においては、2列に並んだ貫通穴を有する平行平板状のガラス板を透明化して図示している。
図3において、ガラス板の表裏面において隣接する貫通穴の開口部同士を接続するように配線21,22を形成し、またガラス板の表裏面を連通する貫通穴23の内壁に導体層を形成し、TGVとする。
【0042】
ここで、1列目n番目の導体層TGVを、TGV(1,n)とし、2列目n番目の導体層TGVを、TGV(2,n)とする。裏面側の配線22により導体層TGV(1,n)と導体層TGV(2,n)とを接続し、表面側の配線21により導体層TGV(1,n)と導体層TGV(2,n+1)とを接続すると、配線22と、導体層TGV(1,n)と、配線21と、導体層TGV(1,n+1)とで、ガラス板の内部と表面を導体が一周(一巻き)する、オープン回路を構成することができる。コイル状に形成されるこの回路に電流を流すことで、インダクタとして機能させることができる。インダクタの特性は、巻き数を変えることで調整することができる。
【0043】
次に、基板内部に形成されるLC回路によるバンドパスフィルタ(BPF)、すなわちLC周波数フィルタについて説明する。BPFの基本的な回路図は、
図4Aのようになる。そして、回路中のキャパシタの電気容量(以下キャパシタンス)とインダクタの誘導係数(以下インダクタンス)を適切に設定することによって、所望の帯域の周波数のみを通過させ、それ以外を遮断するバンドパス効果を発現させることができる。
【0044】
図4Bに、
図4Aのバンドパスフィルタの特性図を示す。
図4Bにおいて、横軸が周波数であり、縦軸が挿入損失を示している。
図4Bから明らかなように、かかるバンドパスフィルタでは、急峻な抑制は緩和されている。
【0045】
図4Aの回路図に示したキャパシタとインダクタを、回路基板内部に形成した状態を示す模式図を、
図5Aに示す。図中C1~C3がキャパシタ、L1~L3がインダクタを示す。キャパシタC1~C3は、ガラスコア31の上表面に導電性部材として下電極33が配置され、誘電体層35を挟んで、上電極34が配置されることにより形成されている。全体としてキャパシタC1~C3は、ガラスコア31の上表面上の絶縁樹脂層32に埋設されるようになっており、回路基板外部の電極と接続したい場合には、絶縁樹脂層32にビアホールを作り、その内部の導体を介して接続できる。なお図示していないが、下電極33は、ガラスコア31の一方の面に形成され、樹脂層で絶縁された積層回路の導電部であってよい。
【0046】
インダクタL1~L3は、ガラスコア31内の導体層TGVと、ガラスコア31の表裏面の配線(
図5A参照)をつないでソレノイドコイルを作ることができる。インダクタL1~L3本体は、ガラスコア31の内部と、その表裏面の絶縁樹脂層32に埋設されるようになっており、回路基板最外層の電極との導通は、キャパシタC1~C3と同様に、絶縁樹脂層32内のビアホールを介して行うことができる。
【0047】
キャパシタC1及びインダクタL1を用いて、第1のLC周波数フィルタが形成され、キャパシタC2及びインダクタL2を用いて、第1のLC周波数フィルタとは特性が異なる第2のLC周波数フィルタが形成され、キャパシタC3及びインダクタL3を用いて、第1のLC周波数フィルタ及び第2のLC周波数フィルタとは特性が異なる第3のLC周波数フィルタが形成される。これにより、1つの回路基板に異なる特性を持つ複数のLC周波数フィルタを内蔵することができ、例えば5G通信規格に対応した薄型移動体通信機器などに用いた場合において、複数の周波数帯域での通信を1つのモジュールとして最適化することが可能になる。
【0048】
5G通信規格では、複数帯域を同時に用いる高速データ通信技術Carrier Aggregation(CA)が普及する。この技術は例えば、900MHz, 2.5GHz, 3.7GHzの3つの帯域を同時使用して高速通信を行う技術である。従来の周波数フィルタの役割は、外来ノイズからの通信帯域の干渉抑制であったCAでは自らの通信帯域同士の干渉抑制必要となり、ノイズ抑制はより深刻な課題となる。この対策としてCA単位で集積モジュールを構成し回路の最適化と、外部ノイズの抑制が必要となる。本実施形態によれば、モジュール内でのLCフィルタ構成を実現するため、実装面積縮小の効果に加え、機能集積化を図ることができる。
【0049】
図5Bは、回路基板の一部の上面図であり、上面に形成された導電性パターンUPTに沿って、低容量のキャパシタ素子CEを複数個つなげて、1つのキャパシタCを形成している。また、導電性パターンUPTを、貫通穴内の導体層(導電性部材)TGVを介して、回路基板の下面に形成された導電性パターンLPT(点線で図示)に接続し、コイル状のインダクタLを形成している。ここでは、導電性パターンUPT,LPT及び導体層TGVが回路を構成する。
【0050】
(基板作成プロセス)
次に、
図6A~12Bを用いて、ガラス基板を用いた回路基板作成プロセスの一例を示す。
【0051】
まず回路設計を行うため、通過又は遮断する電波の周波数帯域に応じて、必要なキャパシタとインダクタンスを、シミュレーションソフトによって算出する。例えば3400MHz以上、3600MHz以下の帯域について、
図4Aに示すような回路構成において、所望の特性を実現するための素子の仕様を表1、表2に示す。ここで、インダクタL1とL3については、インダクタンスが非常に小さいため、コイルの形状にする必要がなく、一本の配線の自己インダクタンスで足りるため、表中では、その配線の寸法について示してある。
【0052】
【0053】
【0054】
2499MHz以上、2690MHz以下の帯域用のBPFについても、同様の手順によって、キャパシタ、インダクタンスを計算し、必要な回路の設計を行う(数値については省略)。
【0055】
以上の回路設計に基づいて、必要な回路基板を製作する。まず、
図6Aに示すように、低膨張のガラスコア42(厚さ300μm、CTE:3.5ppm/K)を準備し、次いで
図6Bに示すように、かかるガラスコア42に開口径80μm~100μmの貫通穴43を形成する。形成にあたっては、第一段階として、貫通穴43の形成を所望する位置にUVレーザー光をパルス照射し、照射されたガラスに脆弱部を作り、第二段階として、ガラス板全体に対してフッ酸水溶液によるエッチングを行う。これにより脆弱部が選択的にエッチングされ、高精度な貫通穴43が迅速に形成される。ガラスエポキシ基板を用いる場合と比較すると、より高精度な内径を持ち且つ凹凸のない内周面を有する貫通穴43を形成できることとなる。
【0056】
つぎに
図6Cに示すように、配線層の下およびガラスコア42の貫通穴43の内壁の密着層44として、ガラスコア42の表面全面にTi膜とCu膜を、この順序でスパッタリング法にて2層製膜して、ガラス表面の導電化を行う。膜の厚さは、Ti膜を50nm、Cu膜を300nmに設定する。
【0057】
ついで、
図6Dに示すように、貫通穴43内壁のスパッタ膜の薄い部分を補完するため、無電解ニッケルめっき45を施す。加工はガラスコア42の表裏全面と貫通穴43内に対して行い、めっき厚さは0.2μmに設定する。
図7Aに示すように、密着層44とニッケルめっき層45によりシード層45’が形成される。
【0058】
図示していないが、つぎにシード層45’を用いて、セミアディティブ法によって、インダクタの配線、キャパシタの下電極、外部接続用のパッドなどの導体パターン46を形成するために、ガラスコア42の両面に、例えば日立化成株式会社製ドライフィルムレジスト、商品名RY-3525(厚さ25μm)をラミネートする。レジスト層形成は、液状レジスト塗布でもよい。その後、フォトリソグラフィー法により、導体パターンすなわち配線パターンを形成するためのマスクを介してレジスト層に露光し、現像によってレジスト層に配線パターン(開口部)を形成する。
【0059】
次に、電解銅めっきによって上記開口部に銅を析出させ、導電性部材である導体パターン46を15μmの厚さで形成する。この段階において、ガラスコア42の貫通穴43内壁にも銅めっきが析出する。続いて、ドライフィルムレジストを剥離する。この段階において、
図7Aに示すように、ガラスコア42の表裏面はTi/Cu/Niからなるシード層45’で覆われた部分と、さらにその上にCuが積層された導体パターン46の部分が混在している。
図7Aの工程で、導体パターン46の所定の位置には、キャパシタの下電極が形成される。または、導体パターン46の一部を利用して、キャパシタの下電極とすることも可能である。
【0060】
続いて、
図7Bに示すように、まずガラスコア42のキャパシタを形成する側の面全体に、CVD製膜法にて、厚さ200nm乃至400nmでSiN膜を形成してキャパシタの誘電体層47を形成する。更に、
図7Cに示すように、キャパシタの上電極を形成する際のシード層48として、スパッタ製膜法にて、Ti膜とCu膜をおのおの50nm、300nmにて、この順序で誘電体層47の上全体に製膜する。
【0061】
続いて、
図8Aに示すように、キャパシタの上電極を形成すべく、フォトリソグラフィーにて、上電極を形成する部分のみをドライフィルムレジストから露出させた状態とする。ついで
図8Bに示すように、電解銅めっきにて、厚さ9~10μmにて上電極49を形成する。その後、
図8Cに示すように、ドライフィルムレジストを除去する。この時点では、キャパシタ以外にもSiN層などが積層されている。
【0062】
そこで、
図9Aに示すように、余分な密着層、めっきシード層などを除去すべく、まずフォトリソグラフィーにて、上記キャパシタの上電極49上のみをドライフィルムレジスト50で保護する。
【0063】
続いて、キャパシタの上電極49を製膜する際のスパッタ銅層のうち、余分な部分を除去するべく、ウエットエッチング法にて基板を処理し、余分な部分のTi層、SiN層を除去すべく、基板をドライエッチング法にて処理する。
【0064】
より具体的には、まず余分な部分で一番上にあるスパッタCu層をエッチング液にて除去する。つぎに、その下のスパッタTi層とCVD製膜したSiN層を、ドライエッチングにて除去する。そのあとで、キャパシタの上電極49を保護していたドライフィルムレジスト50を剥離除去する。
図9Bに示すように、この時点で、まだガラスコア42直上のシード層45’は残っている。
【0065】
つぎに、
図10Aに示すように、キャパシタの下電極およびその他の、ガラスコア42の表面に形成されている導電層のシード層を除去すべく、Ni,Cuの順に、ウエットエッチング工法にて処理する。その下方にあるスパッタCu層も同時に除去される。一方、配線、キャパシタ電極などを形成しているCu層は、多少はエッチング液に溶けるが、その厚さが比較的大きいため、完全に除去されてしまうことはない。そのあとで、スパッタTi層をエッチングにて除去する。ここまで終えると、配線、電極などのない部分には、ガラスコア42が露出することとなる。以上の結果として、ガラスコア42の表面にはキャパシタ101が形成され、またインダクタ102(
図11B参照)を形成する連続する配線HNの一部も形成されて、導体層TGVとつながる。そのどちらもない部分のガラスコア42の表面領域ARは、密着層、シード層が取り除かれ、外部に露出している。
【0066】
つぎに、
図10Bに示すように、ガラスコア42の両面に、例えば味の素ファインテクノ株式会社製の絶縁樹脂(商品名「ABF-GX-T31R」)を貼付して、絶縁樹脂層(樹脂ビルド層)51を形成する。加工は真空プレスラミネート装置にて、ガラスコア42の貫通穴43の内部にボイドなく絶縁樹脂を封入する。絶縁樹脂層51の厚さは35μm程度とし、キャパシタの上電極49まで確実に埋没するようにする。これにより、キャパシタを含む積層回路が、絶縁樹脂層51により覆われることとなる。
【0067】
さらにレーザー加工によって、導通をとりたい位置に絶縁樹脂層51を貫通させ、
図10Cに示すように、ガラスコアの配線層に達する孔(ビアホール)52を形成する。孔52の直径は60μm程度が好ましい。
【0068】
図示していないが、ガラスコア42の表裏面の絶縁樹脂層51を、アルカリ系の表面粗化液にて処理し、算術表面粗さRaが60nmになるように調整する。これは、次の工程にて、シード層の密着力を高めるためのものである。
【0069】
つぎに、
図11Aに示すように、ガラスコア42の表裏面の絶縁樹脂層51に無電解銅めっきを施し、導電シード層53を形成する。その厚さは0.6μmとすると好ましい。この処理によって、表裏面のみならず、先にレーザー加工にて形成したビアホール52の内壁にも導電シード層53が形成される。
【0070】
つづいて、図示していないが、基板両面にドライフィルムレジストを貼付し、フォトリソグラフィー法によって、配線54を設けたい部分に開口部を設ける。ついで、
図11Bに示すように、基板に電解めっきを施し、厚さ15μmにて配線54を形成する。また、この電解めっき処理において、絶縁樹脂層51内のビアホール52の内部も銅で満たされ、ガラスコア42表面の導体層との導通もとれる。
【0071】
その後、不要な導電シード層をエッチングで除去する。以上をもって、LC回路用の内蔵素子を含む基本的な回路基板41が完成する。回路基板41の総厚が0.5mm以下であると、薄型移動体通信機器などに好適に用いられる。なお、図中、ガラスコア42の下側のビルドアップ配線については、回路基板に内蔵されるキャパシタ、インダクタにとって、グランドとなる場合を想定して、あたかも銅層があるように示しているが、実際の回路基板では必ずしもそうである必要はなく、回路基板完成時に所定のキャパシタ、インダクタが接地されていればよい。
【0072】
このあと、必要に応じて、
図10B~
図11Bの工程を繰り返して、
図12A、12Bに示すように絶縁層61、及び配線54に導通する導体配線層62A,62Bを積層し、電子部品を実装してよい。また、ガラスコア42又は絶縁樹脂層51の表面に平面状(たとえば渦巻き状)のスパイラルコイル素子(コイル)を形成することもできる。また、電気的に中性なスルーホールをソレノイドコイル素子間に配置し、相互誘導による損失を低減することも可能であり、スルーホール内にキャパシタを設けることも可能である。
【0073】
また、ガラスコア42に銅の導体パターン46を積層した場合において、応力バランスの崩れからガラスコア42の反りや割れが生じることを防ぐべく、例えばガラスコア42の直上に、シリコンナイトライド層などを形成することができる。このシリコンナイトライド層は、銅の導体パターン46の残留応力をキャンセルする機能を持ち、この組み合わせにより応力調整したビルド配線層を構成する。ただし、シリコンナイトライド層は一例であり、これに限られることはない。
【0074】
さらに、
図13~16を参照して、本実施形態の回路基板をマザーボードに実装するとともに、回路基板41上に電子部品を実装する工程を説明する。
【0075】
まず、
図12Bの回路基板41の両面に、
図13に示すように、ソルダーレジスト63をスクリーン印刷法等によりパターン状に塗布する。このとき、上側の導体配線層(第1の端子)62Aに対して外部から連通可能な孔63aと、下側の導体配線層(第2の端子)62Bに対して外部から連通可能な孔63bとがソルダーレジスト63に形成されるようにする。なお、下側の導体配線層62Bの中には、回路基板41の配線54(すなわち回路)と電気的に絶縁されたものもある。
【0076】
次いで、
図14に示すように、回路基板41の上面側において、孔63aにはんだバンプ64を置き、更にはんだバンプ64の上に、導電部が接するようにして電子部品65を置く。電子部品65としては、スイッチ、アンプ、フィルタなどがあるが、それに限られない。
【0077】
その後、
図15に示すように、電子部品65を含む回路基板41の上面全体をモールド樹脂66により覆う。また、回路基板41の下面側において、孔63aにはんだバンプ64を置く。
【0078】
このように形成した回路基板41を、
図16に示すように、別回路基板であるマザーボード67上に載置して、不図示のリフロー炉に投入すると、孔63b中のはんだバンプ64が溶融し、導体配線層62Bの一部と、マザーボード67の導電パターン68とが導通する。また孔63a中のはんだバンプ64が溶融し、導体配線層62Aと電子部品65の導電部とが導通する。隣接する孔63aの間隔は、溶融時に流れ出たはんだが干渉しない距離とする。
【0079】
5G通信規格に対応した薄型移動体通信機器などにおいては、複数の周波数帯域での送受信を1つのモジュールで最適化させることが要求されるため、LC周波数フィルタを含む複数の電子部品をコンパクトに実装することが好ましい。本実施の形態によれば、回路基板41内にLC周波数フィルタを内蔵するとともに、一方の面に他の電子部品65を実装し、他方の面ではマザーボード67の導電パターン68と接続することができるので、このようなインターポーザ機能を備えることにより、コンパクトでありながら機能の集積化を図ることができる。
【0080】
ところで、導体配線層62Bの一部(接続パッドCPという)は、回路基板41内の回路と導通するが、導体配線層62Bの残り(放熱パッドHPという)は、回路基板41内の回路と導通しない、所謂ダミーの端子となる。5G通信規格に対応した薄型移動体通信機器などに対応した回路モジュールにおいては、発熱量が過大になることが予想される一方、ガラスコアは樹脂などに比べると熱伝導率が低いことから、その発熱対策を行うことが望ましい。
【0081】
そこで本実施の形態においては、
図17にて白円で示す接続パッドCP及び黒円で示す放熱パッドHPを、回路基板41の外周近傍に沿って2列に取り巻くように混在させて配列した上で、放熱パッドHPを介して回路基板41からの放熱を促すようにしている。放熱パッドHPの数は、接続パッドCPの数より多いと好ましい。
【0082】
かかる放熱パッドHPは、はんだバンプ64を介して、マザーボード67の回路や別部品69と電気的接続を持たない導電パターン68のみと導通させており、それにより放熱効果を高めつつも電気的には絶縁された(孤立した)状態になる。ただし放熱パッドHPの少なくとも1つを、アース線70を介して接地させてもよい(
図16)。
【符号の説明】
【0083】
11・・・絶縁樹脂層、12・・・キャパシタの下電極、13・・・キャパシタの誘電体層、14・・・導体(キャパシタの上電極)、21、22・・・配線、23・・・貫通穴、31・・・ガラスコア、32・・・絶縁樹脂層、33・・・下電極、34・・・上電極、35・・・誘電体層、41・・・回路基板、42・・・ガラスコア、43・・・貫通穴、44・・・密着層(Ni/Cuスパッタ層)、45・・・ニッケルメッキ(Ni)層、45’・・・シード層(Ni/Cu/Ni層)、46・・・導体パターン(ガラス直上銅配線:キャパシタ下電極を含む)、47・・・誘電体層、48・・・シード層(誘電体層上Ni/Cuスパッタ層)、49・・・キャパシタの上電極、50・・・キャパシタ保護用のドライフィルムレジスト層、51・・・絶縁樹脂層、52・・・絶縁樹脂層の孔(ビアホール)、101・・・キャパシタ、102・・・インダクタ、202・・・トランシーバLSI、203・・・バンドパスフィルタ、204・・・バンドパスフィルタ、205・・・バンドパスフィルタ
206・・・バンドパスフィルタ、207・・・バンドパスフィルタ、208・・・スイッチ、209・・・アンプ、210・・・ベースバンドプロッセッサ、211・・・アプリケーションプロセッサ、212・・・ダイプレクサ、213・・・ダイプレクサ、214・・・アンテナ、215・・・RF回路、302・・・ハイパスフィルタ、303・・・TDD用バンドパスフィルタ、304・・・TDD用バンドパスフィルタ