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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】磁気選別機構
(51)【国際特許分類】
   B03C 1/26 20060101AFI20240625BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B03C1/26
B03C1/00 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021004368
(22)【出願日】2021-01-14
(65)【公開番号】P2022109047
(43)【公開日】2022-07-27
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】弁理士法人MTS国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100144299
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 崇
(72)【発明者】
【氏名】大池 真人
(72)【発明者】
【氏名】木村 和信
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】実公昭45-008774(JP,Y2)
【文献】特開2002-248375(JP,A)
【文献】特開平10-128151(JP,A)
【文献】実開昭55-174957(JP,U)
【文献】特開2005-254184(JP,A)
【文献】特開2005-169275(JP,A)
【文献】特開2003-103194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 1/00- 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体が重力によって落下するように傾斜して配置される所定の幅と長さを有するシュートと、
前記シュートの底面部の一部の領域に外側から近接して配置されるマグネットと、
前記マグネットと前記マグネットが近接して配置される前記領域との間の距離を変更可能なマグネット移動機構と、
定の幅と高さを有する、粉粒体の落下速度を抑制する落下速度抑制板と、
を備えた磁気選別機構であって、
前記シュートは、前記所定の幅として第一の幅を有する部分を一定長さ有する幅狭部と、前記所定の幅として前記第一の幅よりも幅が広い第二の幅を有する部分を一定長さ有する幅広部と、前記幅狭部と前記幅広部との間を接続するため、前記所定の幅として前記第一の幅から前記第二の幅に変化する幅を有する幅変化部とを有し、
前記幅変化部は、前記シュートの底面部の一部の前記領域よりも上流側に位置し、
前記落下速度抑制板は、前記幅変化部に設けられるとともに、前記所定の板幅と高さを有する板面が前記シュートの延在方向と直交するように配置され、
前記シュートの底面部の一部の前記領域は非磁性体を含み、
前記落下速度抑制板の前記高さは、前記落下速度抑制板を前記シュートの延在方向から見て、前記シュートの底面部に沿う幅方向の端部から該幅方向の中央部に向かうにしたがって高さが高くなっていることを特徴とする磁気選別機構。
【請求項2】
前記シュートの底面部の一部の前記領域の非磁性体は、ステンレス鋼であることを特徴とする請求項1に記載の磁気選別機構。
【請求項3】
前記シュートの底面部は、平板で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気選別機構。
【請求項4】
前記シュートの底面部の一部の前記領域は、前記シュートの底面部において幅が最も大きな部位に位置していることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の磁気選別機構。
【請求項5】
前記シュートは角筒状であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の磁気選別機構。
【請求項6】
前記マグネット移動機構は、外部操作可能なハンドルと、前記ハンドルに取り付けられた軸部材とを備え、前記ハンドルの回転操作により前記軸部材に取り付けられた前記マグネットと前記シュートの底面部の一部の前記領域との間隔が変わるように構成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の磁気選別機構。
【請求項7】
前記マグネット移動機構は台車を備え、
前記マグネットは、前記マグネットが近接して配置される前記シュートの底面部の傾斜に合わせた状態で前記台車上に載置されていることを特徴とする請求項6に記載の磁気選別機構。
【請求項8】
前記マグネットは、永久磁石であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の磁気選別機構。
【請求項9】
前記落下速度抑制板の下端部と前記シュートの底面部との間には所定の間隔が設けられていることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の磁気選別機構。
【請求項10】
前記シュート経路のうち、前記マグネットが近接して配置される前記シュートの底面部の一部の前記領域と前記落下速度抑制板との間の経路に、前記シュート内を落下する前記粉粒体の層の厚さを調整する層厚さ調整ゲートが配置されており、
前記層厚さ調整ゲートは、前記シュートの底面部との間に間隔を設けて配置されたゲート板を有し、前記シュートの底面部と前記ゲート板の下端部との間の間隔は調整可能なことを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の磁気選別機構。
【請求項11】
前記シュートの底面部には、前記マグネットが近接して配置される底面部の一部の前記領域が他の底面部より低くなるような段差が設けられていることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の磁気選別機構。
【請求項12】
前記シュートの経路において前記マグネットが近接して配置される底面部の一部の前記領域よりも下流側の位置に、前記シュート内を落下する落下物の一部を回収可能な落下物回収板を配置可能なように構成されていることを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の磁気選別機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気選別機構に関し、詳細には、傾斜シュート内を搬送される粉粒体にボルト、ナット、釘等の鉄製小物や小さな鉄屑等(以下、鉄片類と記す。)が混在する場合に、それらを取り除くために用いる磁気選別機構に関する。
【0002】
なお、本発明が対象とする粉粒体は、シュート内を搬送され、かつ、鉄片類が混在する場合にそれらを取り除く必要のある粉粒体であり、具体的には例えば、木質バイオマスペレットや穀物類等である。
【背景技術】
【0003】
搬送物が搬送される搬送経路において、該搬送物から鉄類を取り除くために、磁気選別機が用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、廃棄物を搬送するコンベヤの上方にベルト型の磁気選別機を配置して、屑鉄類を選別する技術が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、被破砕木材を破砕する破砕ロータを有する破砕装置から排出された破砕木材を機外に排出する排出コンベアのコンベアベルトを掛け回した放出端側のプーリに、磁石を内蔵させ、コンベアベルト越しに磁力を作用させ、放出される破砕木材から磁性体を選別するドラム型の磁気選別機が記載されている。
【0006】
しかしながら、例えば木質バイオマスペレットから鉄片類を取り除く場合、木質バイオマスペレットを搬送するコンベヤの上方にベルト型の磁気選別機を配置しても、ペレットの山の内部にある鉄片類を磁力で吸着させることは困難である。
【0007】
一方、ドラム型の磁気選別機を用いて、例えば木質バイオマスペレットから鉄片類を取り除く場合、ペレットの山の上部に載っていて、ドラム内の磁石から遠い位置にある鉄片類であっても、搬送コンベヤから下方に落下する際にドラム内の磁石の磁力によってある程度吸着される。しかしながら、落下の途中に円筒状のドラム内の磁石の磁力を強く受ける時間は短く、吸着し切れないものが生じる。円筒状のドラム内の磁石の磁力を強く受ける時間を長くするためにはドラムの径を大きくする必要があるが、ドラムの径を大きくするためには、高さ方向のスペースを大きく確保することが必要となる。
【0008】
一方、動力を必要としない手動式の磁気選別機としては、棒型磁気選別機およびラビリンス型磁気選別機があるが、どちらも大きい搬送能力(例えば400t/h以上の搬送能力)には適応していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第6190071号公報
【文献】特開2006-175351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、シュート内を搬送される粉粒体から鉄片類を簡易な構成で効率的に取り除くことができるとともに、大きい搬送能力に適応しやすい磁気選別機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の磁気選別機構により、前記課題を解決したものである。
【0012】
即ち、本発明に係る磁気選別機構は、粉粒体が重力によって落下するよう傾斜して配置されるシュートと、前記シュートの底面部の一部の領域に外側から近接して配置されるマグネットと、前記マグネットと前記マグネットが近接して配置される前記領域との間の距離を変更可能なマグネット移動機構と、前記シュートの底面部の一部の前記領域よりも上流側に設けられ、前記シュートの延在方向と交差するように所定の幅と高さを有する、粉粒体の落下速度を抑制する落下速度抑制板と、を備えた磁気選別機構であって、前記シュートの底面部の一部の前記領域は非磁性体を含み、前記落下速度抑制板の前記高さは、前記シュートの幅方向の端部から該幅方向の中央部に向かうにしたがって高さが高くなっていることを特徴とする磁気選別機構である。
【0013】
ここで、本願において、マグネットとは、磁場を印加する手段のことであり、永久磁石や電磁石等のことである。
【0014】
また、本願において、「前記シュートの底面部」とは、前記シュートを、その延在方向(粉粒体が前記シュート内を落下する方向)と直交する平面で切断したとき、その断面の下部となる、板状の部材で構成された部位のことである。また、本願において、前記シュートの「外側」とは、前記シュートの内空間(粉粒体が重力によって落下する空間)に対して外部の側のことである。
【0015】
また、本願において、前記シュートについての上流および下流は、当該シュート内を搬送される粉粒体が流れる方向(落下する方向)で判断するものとし、当該シュートの上方側が上流側となり、当該シュートの下方側が下流側となる。
【0016】
また、前記落下速度抑制板の高さが「前記シュートの幅方向の端部から該幅方向の中央部に向かうにしたがって高さが高くなっている」とは、前記シュートの幅方向の端部側から該幅方向の中央部側に向かって所定の距離だけ移動すると、前記落下速度抑制板の高さが高くなっている状態のことであり、前記シュートの幅方向の端部側から該幅方向の中央部側に向かうにしたがって、前記落下速度抑制板の高さが一定の割合で高くなっている場合に限定されるわけではなく、円弧状や階段状等になっている場合も含む。
【0017】
前記シュートの底面部の一部の前記領域の非磁性体を、ステンレス鋼にしてもよい。
【0018】
前記シュートの底面部は、平板で構成されているようにしてもよい。
【0019】
前記シュートの底面部の一部の前記領域は、前記シュートの底面部において幅が最も大きな部位に位置していることが好ましい。
【0020】
前記シュートは角筒状であってもよい。
【0021】
前記マグネット移動機構は、外部操作可能なハンドルと、前記ハンドルに取り付けられた軸部材とを備え、前記ハンドルの回転操作により前記軸部材に取り付けられた前記マグネットと前記シュートの底面部の一部の前記領域との間隔が変わるように構成されていてもよい。
【0022】
前記マグネット移動機構は台車を備え、前記マグネットは、前記マグネットが近接して配置される前記シュートの底面部の傾斜に合わせた状態で前記台車上に載置されている、ように構成してもよい。
【0023】
前記マグネットは、永久磁石であってもよい。
【0024】
前記落下速度抑制板の下端部と前記シュートの底面部との間には所定の間隔が設けられていることが好ましい。
【0025】
前記シュート経路のうち、前記マグネットが近接して配置される前記シュートの底面部の一部の前記領域と前記落下速度抑制板との間の経路に、前記シュート内を落下する前記粉粒体の層の厚さを調整する層厚さ調整ゲートが配置されており、前記層厚さ調整ゲートは、前記シュートの底面部との間に間隔を設けて配置されたゲート板を有し、前記シュートの底面部と前記ゲート板の下端部との間の間隔は調整可能である、ように構成してもよい。
【0026】
前記シュートの底面部には、前記マグネットが近接して配置される底面部の一部の前記領域が他の底面部より低くなるような段差が設けられていることが好ましい。
【0027】
前記シュートの経路において前記マグネットが近接して配置される底面部の一部の前記領域よりも下流側の位置に、前記シュート内を落下する落下物の一部を回収可能な落下物回収板を配置可能なように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、シュート内を搬送される粉粒体から鉄片類を簡易な構成で効率的に取り除くことができるとともに、大きい搬送能力に適応しやすい磁気選別機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態に係る磁気選別機構10を示す正面図
図2図1においてマグネット12付近の部位を拡大して示す拡大正面図
図3】傾斜シュート80をその幅方向と直交する斜め下方向から見た下面図(図1のIII方向から見た下面図)
図4】傾斜シュート80の幅変化部80Yおよび幅広部80Zについての斜視図
図5図1のV-V線断面図
図6】落下速度抑制部16の各部材を示す分解図
図7】落下物回収板50を示す図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の実施形態に係る磁気選別機構10を示す正面図であり、図2は、図1においてマグネット12付近の部位を拡大して示す拡大正面図であり、図3は、傾斜シュート80をその幅方向と直交する斜め下方向から見た下面図(図1のIII方向から見た下面図)であり、図4は、傾斜シュート80の幅変化部80Yおよび幅広部80Zについての斜視図である。図5図1のV-V線断面図である。図6は落下速度抑制部16の各部材を示す分解図であり、図6(A)は落下速度抑制板16Aの正面図(下流側から見た正面図)であり、図6(B)は図6(A)のB方向から見た落下速度抑制板16Aの上面図であり、図6(C)はシュート連結形鋼16Bの正面図(下流側から見た正面図)であり、図6(D)は図6(C)のD方向から見たシュート連結形鋼16Bの上面図である。図7は落下物回収板50を示す図であり、図7(A)は落下物回収板50の正面図(傾斜シュート80に取り付けた状態を下流側から見た正面図)、図7(B)は図7(A)のB方向から見た落下物回収板50の側面図である。
【0032】
本実施形態に係る磁気選別機構10は、マグネット12と、マグネット移動機構14と、落下速度抑制部16と、層厚さ調整ゲート機構18と、を有してなり、これらの各部位は、傾斜シュート80に取り付けられているか、傾斜シュート80に近接して配置されており、磁気選別機構10は、傾斜シュート80内を重力によって落下する粉粒体から、鉄片類をマグネット12の磁力により効率的に取り除く。
【0033】
マグネット12は、平板状の永久磁石であり、傾斜シュート80の底面部の一部であって、外側からマグネットが近接して配置される領域である底板部80A(マグネット近接配置可能底板部80A1)の外面の傾きに合わせた傾きで、マグネット移動機構14の台車14Aの立設部材14A2に取り付けられており、マグネット近接配置可能底板部80A1の外面に沿ってマグネット近接配置可能底板部80A1に近接して配置可能であり、傾斜シュート80内を重力によって落下する粉粒体に鉄片類が混在している場合に、鉄片類を磁力でマグネット近接配置可能底板部80A1に吸着させて取り除く。
【0034】
図3および図4に示すように、傾斜シュート80は、一般幅部80X、幅変化部80Y、および幅広部80Zの部位を有してなっており、これらの3つの部位は幅が異なっている。一般幅部80Xは、傾斜シュート80の大半を占める部位であり、幅は例えば600mm程度であるが、幅広部80Zは一般幅部80Xよりも幅の広い部位であり、本実施形態に係る磁気選別機構10においては傾斜シュート80の幅が最も広くなっている部位であり、その幅は例えば1200mm程度である。幅変化部80Yは幅が変化している部位であり、一般幅部80Xと幅広部80Zとを接続する部位である。傾斜シュート80の各部位(一般幅部80X、幅変化部80Y、および幅広部80Z)は平板で構成されており、傾斜シュート80は角筒状に構成されている。
【0035】
マグネット12が近接するマグネット近接配置可能底板部80A1は、幅広部80Zに設けられており、また、マグネット12も幅広部80Zの幅に対応する長さを備えており、マグネット12の磁力が作用する部位の傾斜シュート80の幅は大きくなっており、落下してくる粉粒体の量が多くなっても、粉粒体の層の全体に磁力を強く作用させることを行いやすくなっている。このため、本実施形態に係る磁気選別機構10は、傾斜シュート80内を落下してくる粉粒体の量が多くなる場合、即ち、傾斜シュート80に大きい搬送能力が要求される場合に適応しやすくなっている。
【0036】
マグネット移動機構14は、台車14Aと、レール14Bと、ハンドル14Cと、水平棒状部材14Dと、を有してなり、マグネット12を移動させて、マグネット12とマグネット近接配置可能底板部80A1との間の間隔を変える役割を有する。傾斜シュート80内を重力によって落下する粉粒体から、鉄片類を取り除く際には、マグネット12とマグネット近接配置可能底板部80A1との間の間隔をゼロにして、マグネット12からの磁力を傾斜シュート80内に強く作用させて、マグネット近接配置可能底板部80A1に鉄片類を吸着させ、粉粒体が傾斜シュート80内の通過を終えた後、ハンドル14Cを回して台車14Aを後退させてマグネット12とマグネット近接配置可能底板部80A1との間の間隔を大きくして、マグネット12から傾斜シュート80内に作用する磁力を小さくして、マグネット近接配置可能底板部80A1に吸着していた鉄片類を下方に落下させて取り除く(下方に落下させた鉄片類を傾斜シュート80の外部へ取り除く機構については後に説明する。)。
【0037】
傾斜シュート80のマグネット近接配置可能底板部80A1は、非磁性のステンレス鋼で形成されており、マグネット12がマグネット近接配置可能底板部80A1に吸着しないようになっている。マグネット近接配置可能底板部80A1を構成する素材は、非磁性であって、かつ所定の機械的特性を備えた素材であれば、ステンレス鋼に限定されない。
【0038】
傾斜シュート80の部位のうち、マグネット近接配置可能底板部80A1以外の部位は非磁性体でなくてもよいが、耐食性に優れた素材を使用することが好ましく、マグネット近接配置可能底板部80A1と同様にステンレス鋼を使用することが好ましい。
【0039】
台車14Aの車輪14A1は、傾斜シュート80の底板部80Aに向かって水平方向に配置されたレール14B上に載っており、車輪14A1がレール14B上を移動することにより、台車14Aは傾斜シュート80との間の距離を変えることができるようになっており、その結果、マグネット12とマグネット近接配置可能底板部80A1との間の間隔を変えることができるようになっている。なお、台車14Aおよび台車14Aの各部位ならびに台車14Aに載置されたマグネット12の傾斜シュート80に対する前後の移動に関し、「前」は傾斜シュート80に向かう方向を意味し、「後」は傾斜シュート80から離れる方向を意味するものとする。
【0040】
台車14Aをレール14B上において傾斜シュート80に対して前後に移動させる際には、ハンドル14Cを手動で回して軸部材としての水平棒状部材14Dをその軸心回りに回動させる。ハンドル14Cは水平棒状部材14Dの一端に取り付けられている。マグネット移動機構14の水平棒状部材14Dの外面はネジが切られており、水平棒状部材14Dはマグネット12を搭載した台車14Aの立設部材14A2の雌ネジ部14A2aに螺合しており、ハンドル14Cを回して水平棒状部材14Dをその軸心回りに回動させると、その回動方向に応じて雌ネジ部14A2aは傾斜シュート80に対して前後に移動し、その結果、台車14Aおよび台車14Aに載置されたマグネット12は傾斜シュート80に対して前後に水平方向に移動することができるようになっている。
【0041】
傾斜シュート80の幅広部80Zの幅方向の一端部の外側に水平棒状部材14Dが設けられており(図1および図2参照)、幅方向の他端部の外側にも水平棒状部材14E(図4参照)が設けられている。一端にハンドル14Cが取り付けられている水平棒状部材14Dのハンドル14C近傍にはスプロケット14C1(図4参照)が取り付けられており、幅方向の他端部の外側の水平棒状部材14Eの端部にはスプロケット14C2(図4参照)が取り付けられている。スプロケット14C1とスプロケット14C2との間には駆動チェーン14C3が掛け渡されており、ハンドル14Cを回動させることによる駆動力は、スプロケット14C1および駆動チェーン14C3を介してスプロケット14C2に伝達され、傾斜シュート80の幅広部80Zの幅方向の他端部の外側の水平棒状部材14Eも、水平棒状部材14Dと同様に回動するようになっている。また、この水平棒状部材14Eの外面もネジが切られており、水平棒状部材14Eは水平棒状部材14Dと同様に台車14Aの立設部材14A2に螺合しており、ハンドル14Cの回動に応じて、水平棒状部材14Dと同様に台車14Aを前後に移動させる。
【0042】
落下速度抑制部16は、幅広部80Zの手前(上流側)の幅変化部80Yに設けられている部位であり、傾斜シュート80内を上流側から重力によって落下してきた粉粒体をいったん受け止めてその落下速度を抑制させるとともに、落下してきた粉粒体の層を幅広部80Zの幅まで均一に広げる役割を担っている部位である。
【0043】
落下速度抑制部16は、落下速度抑制板16Aと、シュート連結形鋼16Bと、を有してなる。
【0044】
シュート連結形鋼16Bは、下フランジ16B1と、ウェブ16B2と、上フランジ16B3と、を有してなり、溝形鋼に近い構造である。シュート連結形鋼16Bは、落下速度抑制部16を傾斜シュート80内の所定の位置に配置させるとともに、落下速度抑制板16Aを後方から補強する役割を担っている。シュート連結形鋼16Bの下フランジ16B1の両端部は傾斜シュート80の幅変化部80Yの側面の内面(傾斜シュート80の内空間側の面)に沿うように斜めに切断されていて、幅変化部80Yの側面の内面に溶接で取り付けられているが、その取り付けにおいては、ウェブ16B2が傾斜シュート80の延在方向(粉粒体が傾斜シュート80内を落下する方向)と直交するように、かつ、シュート連結形鋼16Bの下フランジ16B1と底板部80Aとの間に一定の間隔を設けるように取り付けられている。
【0045】
落下速度抑制板16Aは、傾斜シュート80の延在方向(粉粒体が傾斜シュート80内を落下する方向)と直交するように、かつ、傾斜シュート80の底板部80Aに沿って該底板部80Aの近傍に位置するように、シュート連結形鋼16Bのウェブ16B2に取り付けられており、傾斜シュート80の内空部内に位置が保持されている。落下速度抑制板16Aの幅方向の長さは、傾斜シュート80の側面間の幅と略同一であり、傾斜シュート80の側面の内面(傾斜シュート80の内空間側の面)と落下速度抑制板16Aの幅方向の端部との間に、隙間が生じないような長さになっている。シュート連結形鋼16Bのウェブ16B2の両端部付近には、図6(C)に示すように貫通孔16B2aが設けられているが、この貫通孔16B2aと対応する位置となるように落下速度抑制板16Aの両端部近傍に長孔16A2がそれぞれ設けられており、落下速度抑制板16Aの長孔16A2とシュート連結形鋼16Bのウェブ16B2の貫通孔16B2aとを貫通するようにボルト16Cを挿通させて、落下速度抑制板16Aをシュート連結形鋼16Bに取り付けている。
【0046】
落下速度抑制板16Aは、図6(A)に示すように、傾斜シュート80の幅方向の端部から該幅方向の中央部に向かうにしたがって高さが高くなっているが、その理由は次の通りである。マグネット12よりも上流側の幅変化部80Yでは、下流に行くにしたがって、その幅は一般幅部80Xの幅から幅広部80Zの幅にまで大きくなっているが、一般幅部80Xを落下してきた粉粒体の層の幅を幅広部80Zの幅まで広げなければ、マグネット近接配置可能底板部80A1において作用するマグネット12からの磁力を効果的に活用することができず、粉粒体からの鉄片類の回収率を十分に上げることができなくなってしまう。そこで、落下速度抑制板16Aの形状を図6(A)に示すような形状(傾斜シュート80の幅方向の端部から該幅方向の中央部に向かうにしたがって高さが高くなっている形状)にすることにより、傾斜シュート80内を落下する粉粒体が落下速度抑制板16Aを乗り越える際に、該粉粒体に、傾斜シュート80の幅方向の端部に向かわせるような力を作用させ、一般幅部80Xを落下してきた粉粒体の層の幅を幅広部80Zの幅まで広げることができるようにしている。
【0047】
また、落下速度抑制板16Aに設けられた貫通孔は長孔16A2であるので、落下速度抑制板16Aの下端と傾斜シュート80の底板部80Aとの間の間隔sを調整しつつ、落下速度抑制板16Aをシュート連結形鋼16Bに取り付けることができるようになっている。落下速度抑制板16Aの下端と傾斜シュート80の底板部80Aとの間に所定の間隔sを設けることで、傾斜シュート80を落下させる粉粒体の流れの最終盤において粉粒体の量が少なくなり、粉粒体が落下速度抑制板16Aを乗り越えることができなくなった段階でも、粉粒体は、落下速度抑制板16Aの下端と傾斜シュート80の底板部80Aとの間の間隔sを通って下方に落下していくことができるようになっており、粉粒体が落下速度抑制板16Aの前面に残ることがないようにしている。この間隔sの大きさは、傾斜シュート80内を落下させる粉粒体に応じて適宜に変更して設定し、通常、例えば20~40mm程度に設定する。
【0048】
また、落下速度抑制板16Aの下流側の面の上部には、図5および図6(A)、(B)に示すように、上部補強板16A1が落下速度抑制板16Aの幅方向に取り付けられており、落下速度抑制板16Aを補強している。
【0049】
なお、本実施形態では、落下速度抑制部16を、幅変化部80Yの中間付近(上流から下流に向かう方向の中間付近)に設けたが、その地点よりも傾斜シュート80の幅が広くなっている下流側に設けてもよい。また、落下速度抑制部16を、幅変化部80Yの中間付近よりも上流側に設けることも可能であるが、その場合には、粉粒体の層の幅を幅広部80Zの幅まで十分に広げることが難しくなることも考えられるので、その分、マグネット12からの磁力を活用することの効率が落ちる可能性がある。
【0050】
層厚さ調整ゲート機構18は、傾斜シュート80の経路において、落下速度抑制部16とマグネット近接配置可能底板部80A1との間に設けられた機構であり、傾斜シュート80内を落下する粉粒体が落下速度抑制板16Aを乗り越えて、粉粒体の層の幅が幅広部80Zの幅まで広がった後、さらに、粉粒体の層の厚さを所定以下の厚さになるように制御するとともに、粉粒体の落下速度をさらに減速させることで、マグネット近接配置可能底板部80A1において作用するマグネット12からの磁力をより効果的に活用することができるようにして、粉粒体からの鉄片類の回収率をより向上させる役割を担っている。
【0051】
層厚さ調整ゲート機構18は、層厚さ調整ゲート板18Aおよびハンドル18B等を有してなり、ハンドル18Bを回動させることにより、その回動方向に応じて、層厚さ調整ゲート板18Aが上下に移動するようになっていて(この機構は、マグネット移動機構14の移動機構と同様の機構である。)、層厚さ調整ゲート板18Aの下端と傾斜シュート80の底板部80Aとの間の間隔は調整可能になっている。層厚さ調整ゲート板18Aの下端と傾斜シュート80の底板部80Aとの間を通過した粉粒体の層の厚さは、層厚さ調整ゲート板18Aの下端と傾斜シュート80の底板部80Aとの間の間隔の大きさに制御される。層厚さ調整ゲート板18Aの下端と傾斜シュート80の底板部80Aとの間の間隔の大きさは、傾斜シュート80内を落下させる粉粒体に応じて適宜に変更して設定し、通常、例えば60~100mm程度に設定する。層厚さ調整ゲート板18Aが上下に動く範囲には、層厚さ調整ゲート板18Aの両端部(傾斜シュート80の幅方向の両端部)に沿うようにガイド板18A1が傾斜シュート80の幅広部80Zの両側面の内面にそれぞれ溶接で取り付けられており、層厚さ調整ゲート板18Aに加わる粉粒体の圧力によって、層厚さ調整ゲート板18Aが変形しないように、その圧力をガイド板18A1で受け止めるようにしている。ガイド板18A1の具体的な寸法は、例えば、傾斜シュート80の幅方向に9mm程度で、層厚さ調整ゲート板18Aの厚さ方向に15mm程度である。
【0052】
層厚さ調整ゲート板18Aの下端と傾斜シュート80の底板部80Aとの間の間隔を通過した粉粒体は、マグネット近接配置可能底板部80A1を通過し、その際に鉄片類はマグネット12の磁力によりマグネット近接配置可能底板部80A1に吸着されて回収されるが、マグネット近接配置可能底板部80A1とその直上に位置する底板部80Aとの間には、マグネット近接配置可能底板部80A1の方が低くなるような段差gが設けられている。このため、マグネット12の磁力によりマグネット近接配置可能底板部80A1に吸着された鉄片類に、その後に通過する粉粒体が強く衝突しないようにしており、マグネット近接配置可能底板部80A1に吸着された鉄片類がその後に通過する粉粒体の衝突により剥がれ落ちることを抑制している。この段差gの高さは、傾斜シュート80内を落下させる粉粒体に応じて適宜に変更してもよく、通常、例えば12~20mm程度に設定する。
【0053】
粉粒体が傾斜シュート80内の通過を終えた後、マグネット近接配置可能底板部80A1に吸着していた鉄片類を下方に落下させて取り除く方法について説明する。
【0054】
粉粒体が傾斜シュート80内の通過を終えた後、図7に示す落下物回収板50を、図1に示すように、傾斜シュート80の経路内に配置し、傾斜シュート80の搬送経路を塞ぐ。
【0055】
落下物回収板50は、図7に示すように上部板状体50Aと下部板状体50Bとを有してなり、上部板状体50Aと下部板状体50Bとは、図7(B)に示すように屈曲した状態で連結している。下部板状体50Bには2つの取り付け用L形鋼50B1が所定の隙間cを開けてボルト及びナット50B2によって取り付けられている。この所定の隙間cは、傾斜シュート80の底板部80Aの板厚よりもわずかに大きくなっている。落下物回収板50を傾斜シュート80内に設置する際には、蓋52(図1参照)を開けて、落下物回収開口部80A2(図1参照)を開口させて、落下物回収開口部80A2から落下物回収板50を傾斜シュート80内に入れて、2つの取り付け用L形鋼50B1の隙間cに底板部80Aを差し込むようにして、落下物回収板50を傾斜シュート80内に設置する(図1参照)。上部板状体50Aには、取り付け用L形鋼の取り付けられた側とは反対側に取っ手50A1が取り付けられており、落下物回収板50を傾斜シュート80内に設置する際および撤去する際に把持できるようにしている。
【0056】
図1に示すように、落下物回収板50を傾斜シュート80内に設置した後、ハンドル14Cを回して台車14Aを後退させてマグネット12とマグネット近接配置可能底板部80A1との間の間隔を大きくして、マグネット12から傾斜シュート80内に作用する磁力を小さくして、マグネット近接配置可能底板部80A1に吸着していた鉄片類を下方に落下させる。下方に落下した鉄片類は落下物回収板50に衝突して、落下物回収開口部80A2から傾斜シュート80の外に取り出される。
【0057】
下方に落下した鉄片類を、落下物回収開口部80A2から傾斜シュート80の外に取り出した後、落下物回収板50を傾斜シュート80から取り外して、落下物回収開口部80A2から落下物回収板50を傾斜シュート80の外に取り出し、落下物回収開口部80A2を蓋52で塞ぐ。
【0058】
以上説明したように、本実施形態に係る磁気選別機構10は、傾斜シュート80内を搬送される粉粒体に鉄片類が混在する場合に、これらを簡易な構成で効率的に取り除くことができるとともに、大きい搬送能力に適応しやすい。
【0059】
(補足)
本実施形態に係る磁気選別機構10においては、マグネット12として平板状の永久磁石を用いたが、マグネット12として使用可能な磁石は永久磁石に限定されるわけではなく、電磁石の使用も可能である。
【0060】
また、図1では、説明の都合上、落下物回収開口部80A2の蓋52を開けて、傾斜シュート80内に落下物回収板50を設置した状態を示しているが、この状態は、マグネット近接配置可能底板部80A1に吸着していた鉄片類を下方に落下させて取り除く際の状態であり、それ以外のとき(粉粒体が傾斜シュート80内を通過しているとき等)には、落下物回収板50は傾斜シュート80の外に取り出し、落下物回収開口部80A2を蓋52で塞いでおく。
【符号の説明】
【0061】
10…磁気選別機構
12…マグネット
14…マグネット移動機構
14A…台車
14A1…車輪
14A2…立設部材
14A2a…雌ネジ部
14B…レール
14C…ハンドル
14C1、14C2…スプロケット
14C3…駆動チェーン
14D、14E…水平棒状部材
16…落下速度抑制部
16A…落下速度抑制板
16A1…上部補強板
16A2…長孔
16B…シュート連結形鋼
16B1…下フランジ
16B2…ウェブ
16B2a…貫通孔
16B3…上フランジ
16C…ボルト
18…層厚さ調整ゲート機構
18A…層厚さ調整ゲート板
18A1…ガイド板
18B…ハンドル
50…落下物回収板
50A…上部板状体
50A1…取っ手
50B…下部板状体
50B1…取り付け用L形鋼
50B2…ボルト及びナット
52…蓋
80…傾斜シュート
80A…底板部
80A1…マグネット近接配置可能底板部
80A2…落下物回収開口部
80X…一般幅部
80Y…幅変化部
80Z…幅広部
c…隙間
g…段差
s…間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7