(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60L 7/14 20060101AFI20240625BHJP
B60Q 1/44 20060101ALI20240625BHJP
B60Q 1/00 20060101ALI20240625BHJP
B60Q 11/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B60L7/14
B60Q1/44 C
B60Q1/00 G
B60Q11/00 610C
(21)【出願番号】P 2021004395
(22)【出願日】2021-01-14
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森川 知明
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-123754(JP,A)
【文献】特開2017-175739(JP,A)
【文献】特開2008-114791(JP,A)
【文献】特開2013-133074(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0049945(US,A1)
【文献】特開2014-76715(JP,A)
【文献】特公昭47-29532(JP,B1)
【文献】特開2018-75884(JP,A)
【文献】特開2016-117437(JP,A)
【文献】特開2019-62586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 7/00-7/28
B60Q 1/00-1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回生トルクを出力可能なモータと、
アクセル操作量に応じて前記回生トルクによる制動力を決定し、車両に発生している制動力に基づいて制動灯の点灯または消灯を制御する制御部と、を備える車両の制御装置であって、
前記車両に発生している制動力を表示する表示部を備え、
前記制御部は、制動灯の点灯状態を判別可能に前記車両に発生している制動力を前記表示部に表示させる車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記車両に発生している制動力が第一閾値を上回った場合に前記制動灯を点灯させ、前記車両に発生している制動力が前記第一閾値より低い第二閾値を下回った場合に前記制動灯を消灯させ、前記表示部に表示される前記車両に発生している制動力の、前記第一閾値及び前記第二閾値に対応する位置に印を表示させる請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記アクセル操作量に応じて決定された前記回生トルクによる制動力を前記表示部に表示させる請求項1または請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記アクセル操作量が大きいほど前記回生トルクによる制動力を小さくする請求項3に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、車速が高くなるほど前記回生トルクによる制動力を小さくする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記車両の駆動軸のトルクと前記駆動軸の回転数から求められる制動パワーを前記表示部に表示させ、前記第一閾値及び前記第二閾値に対応する制動パワーの位置に印を表示させる請求項2に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両では、モータによる回生を利用して、ワンペダルドライブ等のように、アクセルペダルの踏み込み加減で回生制動力を操作することができるものがある。
【0003】
特許文献1には、電動機によって発生された回生トルクの増大によって制動力が大きく与えられる車両において、車両の走行状態と車両の操作状態とに基づいて算出された電動機の回生トルク値が基準回生トルク値よりも大きい値である場合にブレーキランプを点灯させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アクセルペダルの操作のみで制動力をコントロールしている場合、どの程度のペダル操作でブレーキランプが点灯するかを運転者は認識することができない。
【0006】
そのため、アクセルペダルの踏み戻し具合によっては、運転者の意図しないブレーキランプの点灯や明滅が発生して、後続車の運転者に違和感を与えるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、制動灯の点灯状態により後続車の運転者に違和感を与えることを抑えることができる車両の制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明は、回生トルクを出力可能なモータと、アクセル操作量に応じて前記回生トルクによる制動力を決定し、車両に発生している制動力に基づいて制動灯の点灯または消灯を制御する制御部と、を備える車両の制御装置であって、前記車両に発生している制動力を表示する表示部を備え、前記制御部は、制動灯の点灯状態を判別可能に前記車両に発生している制動力を前記表示部に表示させるものである。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明によれば、制動灯の点灯状態により後続車の運転者に違和感を与えることを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る車両の制御装置のブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る車両の制御装置の駆動モータ回生トルクマップの例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る車両の制御装置のメータの表示例を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例に係る車両の制御装置の制動灯点灯制御処理の手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例に係る車両の制御装置の制動灯点灯制御処理による減速時の制動灯点灯タイミングの例を示すタイムチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例に係る車両の制御装置の制動灯点灯制御処理による加速時の制動灯消灯タイミングの例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係る車両の制御装置は、回生トルクを出力可能なモータと、アクセル操作量に応じて回生トルクによる制動力を決定し、車両に発生している制動力に基づいて制動灯の点灯または消灯を制御する制御部と、を備える車両の制御装置であって、車両に発生している制動力を表示する表示部を備え、制御部は、制動灯の点灯状態を判別可能に車両に発生している制動力を表示部に表示させるよう構成されている。
【0012】
これにより、本発明の一実施の形態に係る車両の制御装置は、制動灯の点灯状態により後続車の運転者に違和感を与えることを抑えることができる。
【実施例】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係る車両の制御装置について詳細に説明する。
【0014】
図1において、本発明の一実施例に係る車両の制御装置を搭載した車両1は、モータとしての駆動モータ3と、制御部としてのECU(Electronic Control Unit)5とを含んで構成されている。
【0015】
駆動モータ3は、例えば、複数の永久磁石が埋め込まれたロータと、ステータコイルが巻きつけられたステータと、を備えた同期型モータで構成される。駆動モータ3は、ステータコイルに三相交流電圧が印加されることでステータに回転磁界が形成され、この回転磁界によりロータが回転して駆動力を生成する。
【0016】
また、駆動モータ3は、発電時における回転抵抗を車両1の制動に利用するように駆動される。これにより、駆動モータ3は、回生によって発電できる機能を有する。
【0017】
ECU5は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0018】
このコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをECU5として機能させるためのプログラムが格納されている。
【0019】
すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、このコンピュータユニットは、本実施例におけるECU5として機能する。
【0020】
ECU5の入力ポートには、アクセルペダルセンサ51、車速センサ52等の各種センサ類及びスイッチ類が接続されている。
【0021】
アクセルペダルセンサ51は、運転者によって操作される図示しないアクセルペダルの開度であるアクセル開度を検出する。車速センサ52は、車両1の速度を検出する。
【0022】
一方、ECU5の出力ポートには、前述の駆動モータ3に加え、表示部としてのメータ2、制動灯4を含む各種制御対象類が接続されている。
【0023】
メータ2は、車両1に発生している制動力情報を表示する。制動灯4は、後続車の運転者に車両1に制動力が加わっていることを表示する。
【0024】
ECU5は、アクセル操作量である運転者のアクセルペダルの操作量と、車速とに基づいて、駆動モータ3の回生による制動力を制御する。
【0025】
ECU5は、例えば、
図2に示すような、車速とアクセルペダル踏込み量から駆動モータ3の制動力である回生トルクが決まるマップにより、制動力を求める。
【0026】
ECU5は、車両1に発生している制動力をメータ2に表示させる。ECU5は、制動灯4の点灯状態を判別可能に、車両1に発生している制動力をメータ2に表示させる。
【0027】
ECU5は、車両1に発生している制動力が第一閾値を上回っている場合に制動灯4を点灯させる。ECU5は、車両1に発生している制動力が第一閾値より低い第二閾値を下回っている場合に制動灯4を消灯させる。
【0028】
ECU5は、例えば、
図3に示すように、メータ2の制動力表示部21に制動力をセグメント表示させる。ECU5は、制動力を針の動きで表示させるようにしてもよい。
【0029】
ECU5は、
図3に示すように、制動力表示部21に、第一閾値に対応する位置に第一閾値表示部211を表示させる。ECU5は、第二閾値に対応する位置に第二閾値表示部212を表示させる。
【0030】
ECU5は、アクセル操作量であるアクセルペダルの操作量に応じて決定された回生トルクによる制動力を制動力表示部21に表示させる。
【0031】
ECU5は、
図3に示すように、制動灯状態表示部22により制動灯4の点灯状態を表示させてもよい。制動灯状態表示部22は、車両1を後方から見たときの概観に制動灯4が設けられている位置に対応した位置に制動灯表示部221を配置し、制動灯4が点灯しているときは制動灯表示部221に点灯している状態を、例えば赤いライトを点灯させることで表示させる。
【0032】
ECU5は、車両1の図示しない駆動軸にかかる制動トルクと駆動軸の回転数から求められる制動パワーを制動力表示部21に表示するようにしてもよい。このとき、ECU5は、第一閾値に対応する制動パワーの位置に第一閾値表示部211を表示させ、第二閾値に対応する制動パワーの位置に第二閾値表示部212を表示させる。すなわち、駆動軸の回転数に応じて、第一閾値表示部211及び第二閾値表示部212の位置を変化させる。
【0033】
また、制動パワーの駆動軸トルクは、車速が高くなるほど減少するように設定されるが、制動パワー自体は、車速に応じて増加する程度に設定される。制動パワーは、駆動軸トルクと駆動軸の回転数の積で求めてもよいし、駆動モータ3のトルクと駆動モータ3の回転数で求めてもよい。
【0034】
以上のように構成された本実施例に係る車両の制御装置による制動灯点灯制御処理について、
図4を参照して説明する。なお、以下に説明する制動灯点灯制御処理は、ECU5が動作を開始すると開始され、予め設定された時間間隔で実行される。
【0035】
ステップS1において、ECU5は、アクセルペダルの操作量と車速とに基づいて現在の制動力を決定する。ステップS1の処理を実行した後、ECU5は、ステップS2の処理を実行する。
【0036】
ステップS2において、ECU5は、制動灯4が点灯状態であるか否かを判定する。制動灯4が点灯状態であると判定した場合には、ECU5は、ステップS5の処理を実行する。
【0037】
制動灯4が点灯状態でないと判定した場合には、ECU5は、ステップS3の処理を実行する。
【0038】
ステップS3において、ECU5は、駆動モータ3の制動力が第一閾値を上回っているか否かを判定する。
【0039】
駆動モータ3の制動力が第一閾値を上回っていると判定した場合には、ECU5は、ステップS4の処理を実行する。駆動モータ3の制動力が第一閾値を上回っていないと判定した場合には、ECU5は、ステップS6の処理を実行する。
【0040】
ステップS4において、ECU5は、制動灯4を点灯させる。ステップS4の処理を実行した後、ECU5は、制動灯点灯制御処理を終了する。
【0041】
ステップS5において、ECU5は、駆動モータ3の制動力が第二閾値を下回っているか否かを判定する。
【0042】
駆動モータ3の制動力が第二閾値を下回っていると判定した場合には、ECU5は、ステップS6の処理を実行する。駆動モータ3の制動力が第二閾値を下回っていないと判定した場合には、ECU5は、ステップS4の処理を実行する。
【0043】
ステップS6において、ECU5は、制動灯4を消灯させる。ステップS6の処理を実行した後、ECU5は、制動灯点灯制御処理を終了する。
【0044】
このような制動灯点灯制御処理による動作について
図5及び
図6を参照して説明する。
図5に示すように、時刻t1においてアクセル開度が下げられると、駆動モータ3から制動力として回生トルクが出力され、車速は下降量が徐々に大きくなって下がっていく。
【0045】
時刻t2において、回生トルクが第一閾値を上回ると制動灯4が点灯され、時刻t3においてアクセルペダルが解放されると回生トルクは一定となり、車速は一定の下降量で減少する。
【0046】
図6に示すように、時刻t11においてアクセルペダルが踏まれ始めると、駆動モータ3からの回生トルクが減らされ、車速の下降量が徐々に小さくなる。
【0047】
時刻t12において、回生トルクが第二閾値を下回ると制動灯4が消灯され、時刻t13において回生トルクはゼロになり、車速は一定車速となる。
【0048】
このように、本実施例では、ECU5は、制動灯4の点灯状態を判別可能に車両1に発生している制動力をメータ2に表示させる。
【0049】
これにより、メータ2に表示された制動力により、制動灯4が点灯しているのか、消灯しているのかを判別可能になり、運転者はアクセルペダルをどの程度操作すれば制動灯4が点灯または消灯するか視覚的に認識できるため、運転者の意図しない制動灯4の点灯や明滅を防止して、後続車の運転者に違和感を与えることを抑えることができる。
【0050】
また、ECU5は、車両1に発生している制動力が第一閾値を上回っている場合に制動灯4を点灯させ、車両1に発生している制動力が第一閾値より低い第二閾値を下回っている場合に制動灯4を消灯させる。そして、ECU5は、制動力表示部21に、第一閾値に対応する位置に第一閾値表示部211を表示させ、第二閾値に対応する位置に第二閾値表示部212を表示させる。
【0051】
閾値を2つ設けて点灯と消灯を切り替えることで、制動灯4の点灯及び消灯のハンチングを防止しつつ、運転者が視覚的に制動灯4の点灯または消灯を認識できるため、後続車の運転者に違和感を与えることを抑えることができる。
【0052】
また、ECU5は、アクセル操作量であるアクセルペダルの操作量に応じて決定された駆動モータ3の回生トルクによる制動力を制動力表示部21に表示させる。
【0053】
アクセル操作量に応じて決定される回生トルクによる制動力を表示し、表示された制動力に応じて制動灯4の点灯または消灯を判別可能にすることで、運転者はアクセルペダルをどの程度操作すれば制動灯4が点灯または消灯するか視覚的に認識できるため、運転者の意図しない制動灯4の点灯や明滅を防止して、後続車の運転者に違和感を与えることを抑えることができる。
【0054】
また、ECU5は、アクセルペダルが踏み込まれるほど、すなわちアクセル操作量が大きいほど回生トルクによる制動力を小さくする。
【0055】
また、ECU5は、車速が高くなるほど回生トルクによる制動力を小さくし、その制動力をメータ2に表示させる。
【0056】
車速に応じて制動力の表示を変えることで、運転者が正しい制動力を認識でき、運転者の意図しない制動灯4の点灯や明滅を防止して、後続車の運転者に違和感を与えることを抑えることができる。
【0057】
また、ECU5は、制動力表示部21に車両1の駆動軸にかかる制動トルクと駆動軸の回転数から求められる制動パワーを表示させ、第一閾値に対応する制動パワーの位置に第一閾値表示部211を表示させ、第二閾値に対応する制動パワーの位置に第二閾値表示部212を表示させる。
【0058】
制動パワーを表示する場合、同じ制動力で制動灯4の点灯及び消灯を制御しようとすると、駆動軸の回転数に応じて制動パワーも閾値も変化する。
【0059】
閾値を制動パワーに応じた位置に表示させることで、運転者に制動灯4の点灯または消灯を視覚的に認識させることができるため、運転者の意図しない制動灯4の点灯や明滅を防止して、後続車の運転者に違和感を与えることを抑えることができる。
【0060】
本実施例では、各種センサ情報に基づきECU5が各種の判定や算出を行なう例について説明したが、これに限らず、車両1が外部サーバ等の車外装置と通信可能な通信部を備え、該通信部から送信された各種センサの検出情報に基づき車外装置によって各種の判定や算出が行なわれ、その判定結果や算出結果を通信部で受信して、その受信した判定結果や算出結果を用いて各種制御を行なってもよい。
【0061】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0062】
1 車両
2 メータ(表示部)
3 駆動モータ(モータ)
4 制動灯
5 ECU(制御部)
21 制動力表示部
22 制動灯状態表示部
51 アクセルペダルセンサ
52 車速センサ
211 第一閾値表示部
212 第二閾値表示部
221 制動灯表示部