IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社明電舎の特許一覧

<>
  • 特許-相間絶縁紙及び回転電機 図1
  • 特許-相間絶縁紙及び回転電機 図2
  • 特許-相間絶縁紙及び回転電機 図3
  • 特許-相間絶縁紙及び回転電機 図4
  • 特許-相間絶縁紙及び回転電機 図5
  • 特許-相間絶縁紙及び回転電機 図6
  • 特許-相間絶縁紙及び回転電機 図7
  • 特許-相間絶縁紙及び回転電機 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】相間絶縁紙及び回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/34 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
H02K3/34 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021033895
(22)【出願日】2021-03-03
(65)【公開番号】P2022134636
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】倉澤 拓也
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-145900(JP,A)
【文献】特開2003-333785(JP,A)
【文献】特開2006-288041(JP,A)
【文献】実開昭60-192640(JP,U)
【文献】特開2019-122189(JP,A)
【文献】中国実用新案第203617811(CN,U)
【文献】特開2014-030337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機のステータコアの径方向に隣り合う異相のコイル間を絶縁する相間絶縁紙であって、
前記ステータコアのスロットに挿入される脚部と、
前記脚部に連結されるともに、前記ステータコアの端面から突出するように配置されて前記コイルのコイルエンド部を相間絶縁する本体部と、を備え、
前記本体部は、前記ステータコアの周方向一方側の端部寄りに位置する一端側面部及び他方側の端部寄りに位置する他端側面部と、前記一端側面部と前記他端側面部との間に位置し、前記一端側面部の一方面上に当接するように一部が前記一端側面部の方向に折りたたまれている中央面部と、を有し、
前記中央面部には、折りたたまれている前記中央面部の頂点である折り返し点と一部重複するように穴部が形成され
前記折り返し点は、前記ステータコアの内周側に突出している相間絶縁紙。
【請求項2】
前記本体部は、前記ステータコアの両端面からそれぞれ突出するように一対設けられ、
前記脚部は、一対の前記本体部を連結し、
前記穴部は、各々の前記本体部の前記中央面部にそれぞれ形成される
請求項1に記載の相間絶縁紙。
【請求項3】
ステータコアと、
前記ステータコアの径方向に隣り合って配置される複相のコイルと、
前記ステータコアの周方向に沿って複数配置され、異相のコイル間を絶縁する請求項1または請求項に記載の相間絶縁紙と、
を備える回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相間絶縁紙及び回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、三相交流のモータのステータには、ステータコアのティース部にU相、V相、W相のコイルが取り付けられる。分布巻きの場合、U相、V相、W相のコイルはステータコアの径方向に隣り合うように配置され、ステータコアの周方向において各相のコイルの位置が互いにずれる。また、隣り合う異相のコイルとの絶縁を確保するために、ステータの異相のコイルの間にはそれぞれ相間絶縁紙が配置される。さらに、ステータの異相の各コイルはワニスを滴下し含浸させる。
【0003】
この種の相間絶縁紙として、ステータコアに挿入された際にステータコアの両端面からそれぞれ突出し、各相のコイルエンド部の絶縁を行う一対の本体部と、ステータコアのスロットに挿入され、一対の本体部を連結する一対の脚部とを有する形状のものが知られている。
【0004】
特許文献1では、相間絶縁紙の本体部にステータコアの周方向一方側の端部寄りに位置する一端側の面と、他方側の端部寄りに位置する他端側の面と、この一端側の面と他端側面部との間に位置一端側の面の一方面上に向かって折り曲げ加工されている中央面とを有する相間絶縁紙が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-145900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種の相間絶縁紙で相間が絶縁された回転電機に対して、例えば、異相のコイルの内径側と外径側よりワニスを滴下した場合、内径側の相と外径側の相のコイルにはワニスは十分に含浸するが、中間の相のコイルにワニスが十分に含浸しない。ワニスの含浸が十分でないと、コイルエンドの固着能力が低下する恐れがある。固着能力が低下するとコイルエンドの振動抑制が十分にされず、絶縁性能が低下してしまい、回転電機の長期的な絶縁信頼性に悪影響を与えてしまう。
【0007】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであって、回転電機の相間絶縁を確保しつつ、コイルエンドへのワニス含浸性を向上させることが可能な相間絶縁紙を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、回転電機のステータコアの径方向に隣り合う異相のコイル間を絶縁する相間絶縁紙である。相間絶縁紙は、ステータコアのスロットに挿入される脚部と、脚部に連結されるともに、ステータコアの端面から突出するように配置されてコイルのコイルエンド部を相間絶縁する本体部と、を備え、本体部は、ステータコアの周方向一方側の端部寄りに位置する一端側面部及び他方側の端部寄りに位置する他端側面部と、一端側面部と他端側面部との間に位置し、一端側面部の一方面上に当接するように一部が一端側面部の方向に折りたたまれている中央面部と、を有し、中央面部には、折りたたまれている中央面部の頂点である折り返し点と一部重複するように穴部が形成され、折り返し点は、ステータコアの内周側に突出している。
【0010】
上記の相間絶縁紙において、本体部は、ステータコアの両端面からそれぞれ突出するように一対設けられていてもよく、脚部は、一対の本体部を連結してもよく、穴部は、各々の本体部の中央面部にそれぞれ形成されていてもよい。
【0011】
本発明の他の態様に係る回転電機は、ステータコアと、ステータコアの径方向に隣り合って配置される複相のコイルと、ステータコアの周方向に沿って複数配置され、異相のコイル間を絶縁する上記の相間絶縁紙と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様の相間絶縁紙によれば、回転電機の相間絶縁を確保しつつ、コイルエンドへのワニス含浸性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の回転電機をコイルエンド側からみた図である。
図2】ステータコアにU相のコイルと相間絶縁紙を取り付けた状態を示す図である。
図3】(a)は本実施形態の回転電機の異相のコイルの間に相間絶縁紙が取り付けられた状態を示す図であり、(b)は図4(a)のA-A’断面図である。
図4】本実施形態における相間絶縁紙の構成例を示す図である。
図5】比較例の相間絶縁紙の構成例を示す図である。
図6】U相のコイルと比較例の相間絶縁紙を取り付けたステータコアの部分拡大図である。
図7】ワニスを滴下し含浸させる状態を示す図である。
図8】U相のコイルと本実施形態における相間絶縁紙を取り付けたステータコアの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、図面において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、図面に示す各要素の形状、寸法などは模式的に示したもので、実際の形状、寸法などを示すものではない。
【0015】
図1は、本実施形態の回転電機1をコイルエンド側からみた図である。
本実施形態の回転電機1は、三相交流のインナーロータ型モータであって、ロータ3と、ステータ2を有する。図1において、回転電機1の回転軸Axの延長方向(軸方向)は紙面垂直方向である。
【0016】
ロータ3は、図示しない軸受により回転軸Axを中心として回転可能に軸支されている。ロータ3の外周には、エアギャップを隔ててステータ2が配置される。回転電機1においては、後述する各相のコイルの電流制御によりステータ2の磁界を順番に切り替えることで、ロータ3の磁界との吸引力または反発力により、ロータ3が回転軸Axを中心として回転する。
【0017】
ステータ2は、ステータコア21と、ステータコア21に分布巻きされたU相のコイル22u、V相のコイル22v、W相のコイル22wを有する。
【0018】
ステータコア21の内周には、径方向内側に突出する複数のティース部21aが周方向に沿って設けられ、ティース部21aの間にはそれぞれスロット21bが形成される(図2参照)。そして、ステータコア21の外周側から順に、U相のコイル22u、V相のコイル22v、W相のコイル22wがステータコア21のティース部21aにそれぞれ分布巻きされる。U相、V相、W相のコイル22u、22v、22wはステータコア21の径方向に隣り合うように配置され、ステータコア21の周方向において各相のコイルの位置が互いにずれている。
【0019】
また、隣り合う異相のコイルとの接触を防ぐために、U相のコイル22uとV相のコイル22vの間、V相のコイル22vとW相のコイル22wの間には、それぞれ相間絶縁紙10が配置されている。
【0020】
図2は、ステータコア21にU相のコイル22uと相間絶縁紙10を取り付けた状態を示す図である。図3(a)、(b)は、回転電機1の異相のコイルの間に相間絶縁紙が取り付けられた状態を示す模式図である。
ステータコア21にコイルを取り付ける際には、まず、ステータコア21の周方向において、複数のティース部21aを跨ぐようにしてU相のコイル22uがステータコア21のスロット21bに挿入される。U相のコイル22uは、ステータコア21の周方向に沿って並ぶように、複数(本実施形態では8つ)取り付けられる。
【0021】
ステータコア21にU相のコイル22uが挿入された後に、異相のコイル間を絶縁するために、U相のコイル22uの内周側には、ステータコア21の周方向に沿って複数枚の相間絶縁紙10が環状に配置される。本実施形態の相間絶縁紙10の配置の説明は図8を参照して後述する。
【0022】
また、U相のコイル22uの内周側に相間絶縁紙10を配置した後、ステータコア21にはV相のコイル22vがU相のコイル22uの内周側に取り付けられる。そして、V相のコイル22vの内周側にも、複数枚の相間絶縁紙10が環状に配置される。その後、ステータコア21にはW相のコイル22wがV相のコイル22vの内周側に取り付けられる。V相のコイル22vとW相のコイル22wの取り付けは、U相のコイル22uと同様であるので重複説明は省略する。以上のようにして、ステータコア21には、U相、V相、W相のコイル22u、22v、22wがそれぞれ取り付けられる。
【0023】
次に、比較例の相間絶縁紙の構成を参照しつつ、ステータコア21のコイルへのワニスの滴下について説明する。
図5は、比較例の相間絶縁紙40の構成例を示す図である。比較例の相間絶縁紙40は、一対の本体部41、41と、一対の脚部42、42を有する。
【0024】
一対の本体部41、41はそれぞれ矩形状であって、図中上下方向に離間して平行に配置されている。一対の本体部41、41は、相間絶縁紙40がステータコア21に挿入されたときにステータコア21の両端面からそれぞれ突出し、各相のコイルエンド部の絶縁を行う。
【0025】
また、一対の脚部42、42は、本体部41の図中左右端に配置され、図中上下方向に延長されて一対の本体部41、41を連結する。一対の脚部42、42は、相間絶縁紙40がステータコア21に挿入されたときにステータコア21のスロット21bにいずれも挿入される。
【0026】
図6は、U相のコイル22uと相間絶縁紙40を取り付けたステータコア21の部分拡大図である。
【0027】
ステータコア21に挿入された相間絶縁紙40は、周方向に沿って湾曲した本体部41がスロット21bに挿入された複数の脚部42で支えられている。相間絶縁紙40単体としては、本体部41が径方向外側に向けて凸となるのでステータコア21の径方向外側に本体部41が倒れ込みにくいが、ステータコア21の径方向内側には本体部41が倒れ込みやすい。しかも、隣り合う相間絶縁紙40はオーバーラップしてステータコア21のティース部21aに挿入されるが、隣り合う相間絶縁紙40のオーバーラップする部分が相互に干渉する。
【0028】
そのため、このような相間絶縁紙40の干渉により相間絶縁紙40の本体部41がステータコア21の径方向内側へ向けて倒れ込むように折れ曲がる事象(相間絶縁紙の倒れ込み)が生じうる。上記の相間絶縁紙40の倒れ込みが生じると、例えば巻線機でコイルを挿入するときに相間絶縁紙40の本体部41がコイルのインサータと干渉してコイルの挿入に支障をきたすので好ましくない。また、相間絶縁紙40が倒れ込んだままコイルが挿入されると、異相間のコイルの絶縁不良につながるおそれもある。
【0029】
図7は、本実施形態の回転電機1の異相のコイルの間に相間絶縁紙を取り付けた状態でステータコア21の内径側と外径側よりワニス30を滴下し含浸させる状態を示す図ある。
各相のコイルへのワニス30の滴下は、ワニス滴下装置(本体は図示せず。)により行う。ワニス滴下装置にはワニス滴下ノズル31が配設してある。このワニス滴下ノズル31から所定の量のワニス30を滴下して各相のコイルに対しワニス30を含浸させる。
【0030】
図5で示したような相間絶縁紙40を各相のコイルに配置した後に、ワニス30を図7で示したようにステータコア21の外周側と内周側より滴下し含浸させる場合を想定する。即ち、U相のコイル22u側と、W相のコイル22w側からワニス30を滴下して含浸させる場合、ステータコア21の外周側に位置するU相のコイル22uと内周側に位置するW相のコイル22wにはワニス30が十分に含浸する。しかし、V相のコイル22vには、V相のコイル22vとU相のコイル22uの間に配置される相間絶縁紙40及びV相のコイル22vとW相のコイル22wの間に配置される相間絶縁紙40によってワニス30がうまく含浸されない恐れがある。ワニス30がV相のコイル22vにうまく含浸しないと、コイルの固着能力が低下する。結果として、コイルエンドの振動抑制が十分にされず、絶縁性能が低下してしまう恐れがある。
【0031】
図4は、本実施形態における相間絶縁紙10の構成例を示す図である。
本実施形態の相間絶縁紙10は、隣り合う異相のコイルの両端側のコイルエンド間にそれぞれ配置される対をなす一対の本体部11、11と、一対の脚部13、13を有する。本体部11及び脚部13の配置や機能は、図5の比較例で示した本体部41及び脚部42と同様である。さらに本体部11には、ステータコア21の周方向一方側の端部寄りに位置する一端側面部11aと備える。さらに、他方側の端部寄りに位置する他端側面部11bを備える。さらに、本体部11は、一端側面部11aと他端側面部11bとの間に位置する中央面部11cを備えている。中央面部11cは、本体部11の一部が一端側面部11aの一方面上側となるような折りたたみ加工が施された面部であり、一端側面部11aの一方面上(図4中、紙面手前面上)に一方面を当接できるように蛇行して曲折している。
【0032】
本実施形態の相間絶縁紙10では、中央面部11cの折りたたんだ一面または一端側面部11аの少なくともいずれかと重なる位置に穴部12が形成される。穴部12は、一対の中央面部11c、11cにそれぞれ少なくとも1つ以上形成される。また、穴部12は円形状であって貫通穴として形成される。
【0033】
図4では、穴部12について、中央面部11cを曲折させた際の折り返し点(折りたたんだ際の山の頂点)11dと各々の穴部12の中心が一致するように、円形状の穴が2つ形成されている例を示している。しかしこれに限らず、本体部11の軸方向(図4中上下方向)または周方向(図4中左右方向)に長い長穴(ルーズホール)を中央面部11c、11cの一方または両方に形成するようしてもよい。さらに円形状の穴と当該長穴を中央面部11c、11cにそれぞれ形成してもよい。
【0034】
また、各々の穴部12の形成位置は、図4に示しているように、中央面部11cの折り返し点11dに一部重複するように形成してもよい。中央面部11は、折りたたみ加工が施されているため、折り返し点11d及びその周囲は相間絶縁紙10の各部の中でも軸方向(図4中上下方向)への剛性が高く、曲がりにくい。そのため、各々の穴部12を、折り返し点11dに一部重複するように形成すると剛性の減少は最小限で済む。
【0035】
また、本実施形態の相間絶縁紙10は中央面部11cの折り返し点11dがステータコア21の内周側に突出するように配置される。そのため、ワニス30をステータコア21の外周側より滴下した際に、折り返し点11dに一部でも重複している穴部12が形成されていると、ワニス30が内周側の各異相に流れ込みやすくなり、V相のコイル22vへのワニス30の含浸性が向上する。
【0036】
穴部12の配置として図4の例では、各々の本体部11の軸方向(図4中の上下方向)の寸法を三分割した線上に形成されている。しかしこれに限らず、任意の間隔で形成してもよい。
【0037】
図8は、U相のコイル22uと本実施形態における相間絶縁紙10を取り付けたステータコア21の部分拡大図である。
図8に示すように、本実施形態の相間絶縁紙10は、ステータコア21の周方向に沿って隣り合う一方(図8中、左方)の相間絶縁紙10の本体部11の他端側面部11bを他方(図8中、右方)の相間絶縁紙10の本体部11の一端側面部11a上に載せるように配置する。そして、一方(図8中、左方)の相間絶縁紙10の脚部13をティース部21a間に挿入する。
【0038】
その後、一方(図8中、左方)の相間絶縁紙10の本体部11の他端側面部11b上に他方(図8中、右方)の相間絶縁紙10の本体部11の中央面部11cを載せるように配置する。その際に、他方(図8中、右方)の相間絶縁紙10の本体部11の一端側面部11aに当接する中央面部11cと当該一端側面部11aとの間に、一方(図8中、左方)の相間絶縁紙10の本体部11の他端側面部11bを挟み込むによう挿入する。次に、相間絶縁紙10の脚部13、13を、ティース部21a間に順次挿入して、複数枚(本実施形態では八つ)の相間絶縁紙10をU相のコイル22uの内周側の全周にわたって上記と同様の方法で配置する。
【0039】
次に、ステータコア21にはV相のコイル22vがU相のコイル22uの内周側に取り付けられる。そして、V相のコイル22vの内周側にも、上記と同様の方法で複数枚の相間絶縁紙10を環状に配置する。
【0040】
本実施形態に係る回転電機1のステータコア21においては、一方(図8中、左方)の相間絶縁紙10の本体部11の他端側面部11bが、他方(図8中、右方)の相間絶縁紙10の本体部11の一端側面部11aに当接する中央面部11cと当該一端側面部11aとの間に入り込んで挟まれている。そのため、ステータコア21の径方向内側への相間絶縁紙10の倒れ込みが生じにくくなる。これにより、異相間のコイルの相間絶縁を確保し、絶縁不良を防止することができる。さらに、ステータコア21の外周側と内周側よりワニス30を滴下し含浸させる際に、異相のコイルの間に配置された複数の相間絶縁紙10における各々の穴部12によって、ワニス30が中間の相のコイルであるV相のコイル22vにも含浸されやすくなる。
【0041】
したがって、本実施形態によれば、相間絶縁紙10に形成される各々の穴部12によって、V相のコイル22vにもワニス30が含浸されやすくなり、V相のコイル22vも含む各コイルエンドに対してワニス30の含浸性が向上することでワニス30の充填量も増える。これにより、V相のコイル22vも含む各コイルエンドの固着性が向上する。さらに固着性が向上することにより、コイルエンドの振動低下も抑制できる。コイルエンドの振動低下により、コイルエンドの振動に起因するコイルエンドの絶縁低下も防ぐことができる。
【0042】
また、本実施形態においては、各々の穴部12を中央面部11cの折りたたんだ一面または一端側面部11аの少なくともいずれかと重なる位置に形成したとしても、各々の穴部12は、一方(図8中、左方)の相間絶縁紙10の一部と重なって配置される。即ち、一方(図8中、左方)の相間絶縁紙10と他方(図8中、右方)の相間絶縁紙10を上記のように配置した場合に、各々の穴部12と当接する箇所には相間絶縁紙10があるため、穴部12は各相間で貫通はしない。そのため、各相間での短絡防止も図れる。
【0043】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0044】
例えば、一方の中央面部11cと他方の中央面部11cで形成する穴部12、12の数を変更してもよく、一方の中央面部11cの穴部12の数と、他方の中央面部11cの穴部12の数とを異なる数にしてもよい。また、例えば、穴部12を円形状ではなく、矩形の形状で形成するようにしてもよい。さらに、各々の穴部12の形成位置は、上記したように中央面部11cの折りたたんだ一面または一端側面部11аの少なくともいずれかと重なる位置であれば、折り返し点11dと重複しない位置に形成するようにしてもよい。また、穴部12は、折り返し点11dに一部重複した位置と重複しない位置とのそれぞれの位置において中央面部11cに形成するようにしてもよい。
【0045】
また、相間絶縁紙10は、本体部11を脚部13で接続した形状としなくてもよい。例えば、相間絶縁紙を1つの本体部に脚部を設けた形状とし、ステータコア21の両端に上記形状の相間絶縁紙をそれぞれテープ等で取り付けるようにしてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では三相交流のモータの構成例を説明したが、本発明の相間絶縁紙10は複相の回転電機のステータにおけるコイルの絶縁に広く適用できる。例えば、本実施形態の相間絶縁紙10を、三相交流の発電機のステータにおけるコイルの絶縁に適用してもよい。また、回転電機は三相交流の場合に限定されず、例えば二相交流や五相交流などの構成であってもよい。
【0047】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0048】
1…回転電機、2…ステータ、3…ロータ、10…相間絶縁紙、11…本体部、11а…一端側面部、11b…他端側面部、11c…中央面部、11d…折り返し点、12…穴部、13…脚部、21…ステータコア、22u、22v、22w…コイル

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8