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  • 特許-樹脂製の滑り軸受け及び画像形成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】樹脂製の滑り軸受け及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/02 20060101AFI20240625BHJP
   F16C 33/20 20060101ALI20240625BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
F16C17/02 Z
F16C33/20 A
G03G21/16 147
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021045104
(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公開番号】P2022144202
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江原 宜伸
(72)【発明者】
【氏名】森 基
【審査官】鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03583778(US,A)
【文献】特開2000-240656(JP,A)
【文献】国際公開第2015/099004(WO,A1)
【文献】特開2017-227254(JP,A)
【文献】特開2019-124356(JP,A)
【文献】独国実用新案第202017100823(DE,U1)
【文献】米国特許出願公開第2017/82147(US,A1)
【文献】特開平3-33507(JP,A)
【文献】特開2012-31810(JP,A)
【文献】特開2010-71443(JP,A)
【文献】特開2013-194830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/02,33/20,
32/00-32/06
F16C 9/00- 9/06
G03G 13/00,15/00,
21/16-21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸を滑り軸受けする軸受け面を有し、
前記軸受け面から当該軸受け面以外の他の面まで連通する空洞を有する樹脂製の滑り軸受けであって、
前記空洞には、前記軸受け面を含む部分の樹脂成型時のヒケを抑止するための内部空間部と、前記内部空間部と前記軸受け面とを連通させる気道と、が含まれ、
前記内部空間部は、底部軸方向端面のみに開口した溝である樹脂製の滑り軸受け
【請求項2】
前記軸受け面の周方向に一周繋がっている請求項1に記載の樹脂製の滑り軸受け。
【請求項3】
前記他の面は、前記軸受け面に隣接する軸方向端面である請求項1又は請求項2に記載の樹脂製の滑り軸受け。
【請求項4】
前記軸受け面側開口部は、前記軸方向端面まで切り開かれている請求項3に記載の樹脂製の滑り軸受け。
【請求項5】
前記空洞は複数あり、前記軸受け面において周方向に分散配置されている請求項1から請求項4のうちいずれか一に記載の樹脂製の滑り軸受け。
【請求項6】
前記空洞の周方向に分散配置された数は、3以上である請求項5に記載の樹脂製の滑り軸受け。
【請求項7】
前記軸受け面は、樹脂材料のみで構成されている請求項1から請求項のうちいずれか一に記載の樹脂製の滑り軸受け。
【請求項8】
前記樹脂材料は、オレフィン系樹脂、又はポリアセタールやポリフェニレンスルファイド、ポリアミドである請求項に記載の樹脂製の滑り軸受け。
【請求項9】
前記軸受け面が周方向について、前記軸受け面側開口部により欠落する割合は、30%以下である請求項1から請求項のうちいずれか一に記載の樹脂製の滑り軸受け。
【請求項10】
前記軸受け面側開口部のエッジを構成する、空洞内側面と前記軸受け面とのなす角は、直角又は鈍角である請求項1から請求項のうちいずれか一に記載の樹脂製の滑り軸受け。
【請求項11】
前記空洞の軸受け面に対する深さが20μm以上である請求項1から請求項10のうちいずれか一に記載の樹脂製の滑り軸受け。
【請求項12】
静電潜像をトナーにより現像する電子写真式の画像形成部と、
請求項1から請求項11のうちいずれか一に記載の樹脂製の滑り軸受けと、を備え、
前記滑り軸受けがトナー配置空間と外部と貫く軸を保持するように当該トナー配置空間と外部との境界に設置され、かつ、前記滑り軸受けの軸方向端面のうち前記空洞と樹脂部を介して隔絶された軸方向端面が、トナー配置空間側に設置され、
前記軸受け面側開口において前記軸に接した前記空洞の内空間が、当該空洞の他の面側の開口を介して、当該空洞の外部空間に空気流通可能に連通した状態とされた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製の滑り軸受け及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸を回転可能に保持する軸受けとしては、ボールやローラーを用いた転がり軸受けなどが一般的に利用されているであるが、機構部への粉体侵入の恐れがある場所での使用や、コスト面、サイズなどからより簡易な形状を持つ滑り軸受けがしばしば用いられる。
また、素材としては金属製の物も多く使われてはいるが、周辺部材との組付け機能や、シール機能など別の機能を軸受けに持たせるためなどには、形状自由度の高い樹脂製の滑り軸受けがよく使われている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-191452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の樹脂製の滑り軸受では、適用する条件によっては摩擦熱により樹脂が変形し回転性能が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、樹脂製の滑り軸受けの冷却性能を向上し、ひいては回転性能を良好に維持することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するための本発明の一形態は、軸を滑り軸受けする軸受け面を有し、前記軸受け面から当該軸受け面以外の他の面まで連通する空洞を有する樹脂製の滑り軸受けであって、
前記空洞には、前記軸受け面を含む部分の樹脂成型時のヒケを抑止するための内部空間部と、前記内部空間部と前記軸受け面とを連通させる気道と、が含まれ、
前記内部空間部は、底部軸方向端面のみに開口した溝である樹脂製の滑り軸受け
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、軸受け面に連通する空洞により空気交換され冷却効果を得ることができ、当該冷却効果により軸受け面及びその近傍における樹脂の変質、変形を抑えることにより回転性能を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂製の滑り軸受けの上面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る樹脂製の滑り軸受けの底面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る樹脂製の滑り軸受けの中心軸を含む断面図(図1,2内A-Aに相当)である。
図4図3の滑り軸受けにシール部材を組み合わせた断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係り、樹脂製の滑り軸受け及び軸、ホルダーを示した中心軸を含む断面図である。但し、左半身は気道(空洞)が孔状である場合を、右半身は気道(空洞)が溝状である場合を示す。
図6】本発明の一実施形態に係り、樹脂製の滑り軸受け及び軸を示した底面図である。但し、左半身は気道(空洞)が孔状である場合を、右半身は気道(空洞)が溝状である場合を示す。
図7】本発明の滑り軸受けの空気交換による摺動熱の放熱を説明するための模式図である。
図8】本発明の他の一実施形態に係る樹脂製の滑り軸受けの切断斜視図である。
図9】実験例2を説明するための滑り軸受け及び軸の中心軸を含む断面図である。
図10】気道(空洞)を軸受け面側開口部で絞った絞りタイプとした滑り軸受けの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0010】
一つの実施形態の樹脂製の滑り軸受け1Aの上面図を図1に底面図を図2に示す。また、樹脂製の滑り軸受け1Aの中心軸Oを含む断面図を図3に示す。なお、フランジ4を有る側を下(底)、反対側を上として説明するが、滑り軸受けが使用される際の設置方向を示すものではない。
【0011】
図1から図3に示すように滑り軸受け1Aは、軸を滑り軸受けする軸受け面2を最内径部内周面に有する。ここに保持対象の軸が挿入され、滑り軸受け1Aにより軸受けされる。
【0012】
また滑り軸受け1Aは、軸受け面2から当該軸受け面2以外の他の面まで連通する空洞3Aを有する。滑り軸受け1Aは、軸受け面2以外の他の面として、下段軸方向端面41、上部内周面42、最上端軸方向端面43、外テーパー面44、外周面45、フランジ上面46、フランジ外周面47、底部軸方向端面48等を有する。
上部内周面42は、軸受け面2と同軸で軸受け面2より大径である。上部内周面42の内側空間5は、図4に示すようにシール部材6を設置する空間として構成されている。但し、シール部材6と組み合わせるか否かは任意である。シール部材6と組み合わせるか否かに拘わらず、内側空間5(上部内周面42)を設けなくてもよい(例えば図5の構造)。
【0013】
本実施形態では、空洞3Aは軸受け面2から底部軸方向端面48まで連通する。空洞3Aは、空洞3Aの軸受け面2に接続する軸受け面側開口部31から、底面側開口部32まで連続する。
空洞3Aには、軸受け面2を含む部分の樹脂成型時のヒケを抑止するための内部空間部(以下「肉盗み部」)33が含まれている。軸受け面2を含む部分の樹脂成型時とは、図1図3に示す滑り軸受け1Aの樹脂成型時を指す。図4のシール部材6のように別途成型される部材が複合する場合は、これに含まれない部分が生じる。
空洞3Aには、肉盗み部33と軸受け面2とを連通させる気道34が含まれる。気道34は、底部軸方向端面48まで切り開かれている。すなわち、軸受け面側開口部31は、底部軸方向端面48まで切り開かれている。
肉盗み部33は、底部軸方向端面48に開口する。
【0014】
例えば以上のような構造により、軸受け面2の軸方向及び周方向について、空洞3Aの軸受け面側開口部31と軸受け面2の一部21,22とが隣接している。
また滑り軸受け1Aは、軸受け面2の周方向に一周繋がっている。これにより、滑り軸受け1Aの剛性を高く保つことができ、軸受け面2が容易に変形せず、軸保持精度が良好である。
【0015】
また、空洞3Aは複数あり、軸受け面2において周方向に分散配置されている。これにより、冷却性能が均質に行き渡るとともに、軸保持性に偏りが無い。したがって、複数の空洞3Aを中心軸O周りに均等に分散配置することがよい。
【0016】
上記滑り軸受け1Aのように空洞3Aが連通する他の面は、軸受け面2に隣接する軸方向端面41,48とする。外周面45は、ベアリングホルダー10(図5)により閉塞されることがしばしばであるからである。
また上記滑り軸受け1Aのように、空洞3Aが連通する他の面は、軸受け面2に隣接する2つの軸方向端面41,48のうち一方(底部軸方向端面48)とする。これにより、空洞が軸方向に貫通せず、滑り軸受け1Aにシール性を持たせることができる。
【0017】
上記気道34に代え、図5の断面図及び図6の底面図の左半身(滑り軸受け1B)に示すように孔状の気道35を有した空洞3Bを適用することも可能である。ただし、空洞3Aの方が成型しやすい。空洞3Aの全体を成型する型は一体であっても型抜きすることができるが、空洞3Bの全体を成型する型は分割しないと型抜きすることができないからである。
【0018】
軸受け面2は、樹脂材料のみで構成されている。図5に示すように滑り軸受け1Aに軸9が挿入され、軸9が回転すると、軸9の外周面と軸受け面2とが滑って滑り軸受け1Aが軸9を回転可能に保持することとなる。このとき、軸9の外周面と軸受け面2とに摺動熱が生じる。
しかし、空洞3A(3B)が軸受け面2から底部軸方向端面48まで連通するので、底面側開口部32を開放しておくことによって(蓋をしないことによって)、軸受け面2付近の空気が交換され、空気を媒体とした摺動熱の放熱が促進される。図7の模式図に示すように軸9へのラジアル荷重が偏って摺動による発熱部位9aが局所に集中することがあるが、樹脂製の滑り軸受け1に空気交換用の空洞3を設けたことにより、空洞3を通して滑り軸受け1の内部の空気が交換され、空気を媒体とした摺動熱の放熱が促進される。
したがって、樹脂製の滑り軸受1の冷却性能が向上し、熱による変形等の不具合が抑えられるので、回転性能を良好に維持することができる。
以上のように軸受け面2は、樹脂材料のみで構成されているが、回転性能を良好に維持することができる。
空洞3の一部を肉盗み部33とすることにより、滑り軸受け1はコンパクトながら、樹脂成型時のヒケ抑止機能と、使用時の空冷機能を有することができる。
なお、図8に示すように上記の肉盗み部33に相当する部分が無い樹脂製の滑り軸受け1Cを実施することもできる。このような樹脂製の滑り軸受け1Cでも同様に冷却性能を得ることができる。
滑り軸受け1を構成する樹脂材料としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などのオレフィン系樹脂のほか、ポリアセタール(POM)やポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリアミド(PA)等を適用することができる。
【0019】
画像形成装置への適用例としては以下の通りである。
画像形成装置としては、静電潜像をトナーにより現像する電子写真式の画像形成部を有するものを適用する。そして、トナーの漏出を防止すべき部位に、以上説明したいずれかの滑り軸受け1(1A,1B,1C)を適用する。
図5に示すように滑り軸受け1がトナー配置空間TIと外部TOと貫く軸9を保持するように当該トナー配置空間TIと外部TOとの境界に設置され、かつ、滑り軸受け1(1A,1B)の軸方向端面41,48のうち空洞3(3A,3B)と樹脂部1mを介して隔絶された軸方向端面41が、トナー配置空間TI側に設置される。これにより、空洞3(3A,3B)がトナーにより埋まってしまい、空気交換不能に陥ってしまうことが避けられる。トナー配置空間TIは、トナーの搬送や攪拌を行う装置内の空間であり、例えば現像装置やトナー供給装置、トナー排出装置の内部空間に相当する。軸9はトナーの搬送や攪拌を行うためのスクリュー等の軸である。外部TOに設置されたモーターの動力が軸9に伝達される。
また、上述したように底面側開口部32を蓋などせず開放しておく。すなわち、軸受け面側開口部31において軸9に接した空洞3の内空間が、当該空洞3の他の面側の開口部32を介して、当該空洞3の外部空間TOに空気流通可能に連通した状態とされる。これにより、上述した空洞3を介した空気交換による冷却効果が得られる。
なお、トナーのシール性を高めるため、図4に示すようにシール部材6が付けられたものを適用するとよい。
また、トナーが滑り軸受け1に付着することによる回転性能の不具合等を避けるために、滑り軸受け1を構成する樹脂材料としては、トナー付着性の小さい材料が好ましい。例えば、オレフィン系樹脂(PP,PE)を適用することが好ましい。
【0020】
〈実験例1〉
ここで、冷却効果を確認するための実験例1を開示する。
表Iに示すように実験例1では、ポリプロピレン(PP)又はポリアセタール(POM)により7種のφ6mm用滑り軸受けを製作した。PP及びPOMともに、上述の気道(34,35)を設けない比較例(気道数0)も含み7種の滑り軸受けを製作した。本発明例としては、PPでは気道のタイプが孔状である滑り軸受け1Bにつき気道数1,3,8の3種と、気道のタイプが溝状である滑り軸受け1Aにつき気道数8の1種を、POMでは気道のタイプが溝状である滑り軸受け1Aにつき気道数8の1種を製作した。なお、気道数=空洞数である。気道数が複数の場合、空気交換用の空洞(3A,3B)を周方向に均等分散配置した。
さらに、図8に示すように気道のタイプが溝状であり上記の肉盗み部33に相当する部分が無い樹脂製の滑り軸受け1Cにつき、気道数8は共通で、軸受け面2に対する深さDPが20μm、10μmの2種を製作した。図8に示すように軸受け面2に対する深さDPは、軸受け面側開口部31から底36までの半径方向の寸法となる。
【0021】
φ6mmのポリカーボネート(PC)製の軸(9)を各滑り軸受けに挿入し、ラジアル荷重3Nを負荷した状態で、500rpmの回転を加えた際の軸受け変形量を評価した結果を表I中に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
軸受けの変形は、摺動熱と荷重により生じるもので、摺動熱が大きいほど変形量が増えていき、摺動熱が一定量を超えると表面が溶融するようになる。直接温度を測定することが難しいことから、実験例1では変形量を摺動熱の指標として比較した。
なお、樹脂としては汎用樹脂の中では摩耗性の強いといわれているPP/POMを選定、評価した。
表Iに示すように比較例の変形量に対して、本発明例では変形量を小さく抑えることができた。本実験により、PP/POMともに空気交換用の空洞(3A,3B)を設けたことよる冷却効果があることが分かった。
また、空気交換用の空洞(3A,3B)の数は、数を増やすことで冷却効果が上昇し、3以上で冷却効果が十分発揮されることが分かった。
気道のタイプについては、孔状(気道35)及び溝状(気道34)の違いに影響せず冷却効果があることが分かった。したがって、成型しやすい溝状の気道34を有する滑り軸受け1Aを選択しても、冷却効果にそん色ないことが分かった。
深さDPについては、空洞3の軸受け面2に対する深さDPが20μm以上であることで、冷却効果が十分発揮されることが分かった。深さDPを20μm程度とする場合、空洞3を溝状とし、肉盗み部33を無しとするか、肉盗み部33があってもこれと繋げずに肉盗み部33から独立した構成として実施することがよい。なお、深さDPが20μm程度の空洞3を有する構成は、図8に示したものより大分浅くなる。
【0024】
〈実験例2〉
ここで、回転性能を確認するための実験例2を開示する。
実験例2では、上記実験例1でも製作した溝状の気道34を有する滑り軸受け1Aを、開口長La(図9参照)、開口幅Wa(図6図10参照)、開口部エッジ形状を変えて7種を製作した。開口部エッジ形状としては、図6に示すように気道34を等断面でストレート形状としたストレートタイプと、図10に示すように軸受け面側開口部31で絞った絞りタイプとした。ストレートタイプは、軸受け面側開口部31のエッジを構成する、空洞3内側面と軸受け面2とのなす角は、直角であり、絞りタイプは鋭角である。
共通条件として気道数を8、材質をポリプロピレン(PP)、φ6mm用とし、滑り軸受け1Aの軸受け長さLを3mmとした。
上記実験例1と同様に、気道数=空洞数である。8つの空気交換用の空洞3Aを図2,6,10に示すように周方向に均等分散配置した。
【0025】
φ6mmのポリカーボネート(PC)製の軸(9)を各滑り軸受けに挿入し、ラジアル荷重3Nを負荷した状態で、500rpmの回転を加えた際の軸受け変形量を上記実験例1と同様に評価するとともに、軸ブレを検出した結果を表II中に示す。
【0026】
【表2】
【0027】
軸受け面2への開口長さLa、開口幅Wa、開口面積については、これらが大きくなることによって軸保持性の低下が予測される。
開口幅Waは、軸受け面2の全周の約40%で、軸ブレが若干際立つことが分かった。そのため、軸受け面2が周方向について、軸受け面側開口部31により欠落する割合は、30%以下である滑り軸受け1を実施することが好ましい。すなわち、軸受け面2への開口幅Waを軸受け面2の全周の30%以下にする設定することで、軸ブレを抑えつつ軸を摺動させて軸受けすることができる。
【0028】
また、空洞3による冷却効果は開口長や、開口面積(開口長×開口幅)に影響を受けないことがわかった。
一方で、軸受け面2への開口部のエッジを鋭角にした場合、軸受け面2の溶融が発生することが分かった。これは、軸受け面2への開口部の鋭角なエッジにより局所的に高い面圧が生じることで発生したと考えられる。よって、軸受け面側開口部31のエッジを構成する、空洞3内側面と軸受け面2とのなす角は、直角又は鈍角であることが好ましい。
【0029】
以上説明したように本実施形態の樹脂製の滑り軸受けによれば、軸受け面2に連通する空洞3(3A,3B)により空気交換され冷却効果を得ることができ、当該冷却効果により軸受け面2及びその近傍における樹脂の変質、変形を抑えることにより回転性能を良好に維持することができる。
また、コンパクトでシール性を有した滑り軸受けを安価に製造することができる。
【0030】
以上の実施形態は、発明を説明するための一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜に要素の変更、追加、削除を行ってもよい。
上記実施形態では、シール性を考慮したが、シール性が要求されない場合は、空洞3を滑り軸受け1の軸方向に貫通させたり、軸方向の両端部に独立した空洞3を設けたりなど、適宜に変更して実施してもよい。
また、以上の実施形態にあっては、連続した一つの空洞3(3A,3B)に対して軸受け面側開口部31及び他の面の開口部(32)が1つずつであるが、連続した一つの空洞3に対して軸受け面側開口部31及び/又は他の面の開口部(32)を複数にしてもよい。
また、以上の実施形態にあっては、軸受け面2の軸方向及び周方向について、空洞3Aの軸受け面側開口部31と軸受け面2の一部21,22とが隣接している構造とした。しかし、そのような隣接する一部21,22を設けなくてもよい。例えば、軸受け面側開口部31が軸方向に端から端まで連続するもの、軸受け面側開口部31が周方向の一周しているものなどを実施してもよい。
また、以上の記載は、使用時の滑り軸受けの冷却、放熱を促進するための他の手段を併用することを妨げるものではない。
【符号の説明】
【0031】
1(1A,1B,1C) 滑り軸受
2 軸受け面
3(3A,3B) 空洞
4 フランジ
6 シール部材
9 軸
31 軸受け面側開口部
32 底面側開口部
33 肉盗み部(ヒケを抑止するための内部空間部)
34 気道
35 気道
41,48 軸方向端面
La 開口長
O 中心軸
TI トナー配置空間
TO 外部
Wa 開口幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10