(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】ステータ及び回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 3/50 20060101AFI20240625BHJP
H02K 3/46 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H02K3/50 A
H02K3/46 B
(21)【出願番号】P 2021053834
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】青山 知弘
(72)【発明者】
【氏名】平松 律郎
(72)【発明者】
【氏名】坂槇 良介
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-312393(JP,A)
【文献】特開2014-158409(JP,A)
【文献】特開2016-019420(JP,A)
【文献】特開2016-167963(JP,A)
【文献】特開2012-244839(JP,A)
【文献】特開2010-112369(JP,A)
【文献】国際公開第2020/246441(WO,A1)
【文献】特開2015-122880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/50
H02K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコア(21)のティース部(21b)にインシュレータ(22)を介して巻線(23)が装着されてなるステータ本体(20)と、
前記巻線と接続されて前記ステータ本体に備えられる複数の前記巻線を所定の結線態様とするバスバーユニット(30)と
を有し、前記バスバーユニットが前記ステータ本体に軸方向に並設されているステータ(11)であって、
前記バスバーユニットが前記ステータ本体に
対して軸方向に一体に装着されるものであり、
前記バスバーユニットに設けた第1係止部(33)と、前記ステータ本体に設けた第2係止部(22b)との相互の係止によるスナップフィット装着がなされるものであり、
前記バスバーユニットと、前記ステータ本体と、前記バスバーユニット及び前記ステータ本体間に介在部材(44)を設ける場合その介在部材との少なくとも1つに、前記バスバーユニットと前記ステータ本体との相互間の装着がたの抑制方向
として前記バスバーユニットを前記ステータ本体から離間する方向に付勢力を付与する付勢部(35,36,46,25等)を設け、
前記付勢部の付勢力の生じる状態で前記バスバーユニットが前記ステータ本体に一体に装着されて構成されている、ステータ。
【請求項2】
前記バスバーユニットに前記付勢部を設ける場合において、
前記バスバーユニットは、導電金属板製のバスバー(32)と、前記バスバーを設置する絶縁樹脂製のバスバーホルダ(31)とを備え、
前記付勢部(35,36等)は、前記バスバーホルダに一体に構成され、付勢対象として前記ステータコア又は前記インシュレータに当接している、請求項
1に記載のステータ。
【請求項3】
前記バスバーユニット及び前記ステータ本体間に前記介在部材を設ける場合において、
前記介在部材は、金属板製であり、
前記付勢部(46等)は、金属板製の前記介在部材に一体に構成され、付勢対象として前記ステータコア又は前記インシュレータに当接している、請求項
1に記載のステータ。
【請求項4】
前記ステータ本体に前記付勢部を設ける場合において、
前記バスバーユニットは、導電金属板製のバスバーと、前記バスバーを設置する絶縁樹脂製のバスバーホルダとを備え、
前記付勢部(25)は、前記ステータ本体の前記インシュレータに一体に構成され、付勢対象として前記バスバーホルダに当接している、請求項
1に記載のステータ。
【請求項5】
前記付勢部は、前記ステータの周方向に複数設けられ、付勢対象に対して周方向等間隔に当接するように構成されている、請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項6】
前記付勢部は、前記ステータの周方向に延びる部位を有して構成されている、請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項7】
前記バスバーユニットは、前記巻線との接続を図る接続用端子(32a)を備え、
前記付勢部は、前記接続用端子と軸方向に重ならないように設けられている、請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項8】
前記バスバーユニットは、導電金属板製のバスバーと、前記バスバーを設置する絶縁樹脂製のバスバーホルダとを備え、前記バスバーホルダは、前記スナップフィット装着に用いる前記第1係止部を有し、
前記付勢部は、前記第1係止部に一体に構成されている、請求項
1に記載のステータ。
【請求項9】
ステータコア(21)のティース部(21b)にインシュレータ(22)を介して巻線(23)が装着されてなるステータ本体(20)と、
前記巻線と接続されて前記ステータ本体に備えられる複数の前記巻線を所定の結線態様とするバスバーユニット(30)と
を有し、前記バスバーユニットが前記ステータ本体に軸方向に並設されているステータ(11)であって、
前記バスバーユニットが前記ステータ本体に対して軸方向に一体に装着されるものであり、
前記バスバーユニットに設けた第1係止部(33)と、前記ステータ本体に設けた第2係止部(22b)との相互の係止によるスナップフィット装着がなされるものであり、
前記バスバーユニットと、前記ステータ本体と、前記バスバーユニット及び前記ステータ本体間に介在部材(44)を設ける場合その介在部材との少なくとも1つに、前記バスバーユニットと前記ステータ本体との相互間の装着がたの抑制方向に付勢力を付与する付勢部(35,36,46,25等)を設け、
前記付勢部の付勢力の生じる状態で前記バスバーユニットが前記ステータ本体に一体に装着されて構成されており、
前記バスバーユニットは、導電金属板製のバスバーと、前記バスバーを設置する絶縁樹脂製のバスバーホルダとを備え、前記バスバーホルダは、軸方向に延びる部位を有して前記ステータ本体との近接を規制する規制部(34)を有し、
前記付勢部は、前記規制部に一体に構成されている
、ステータ。
【請求項10】
前記付勢部は、自身を一体に設ける部位から前記ステータの周方向両側にそれぞれ延びるように構成されている、請求項9に記載のステータ。
【請求項11】
ステータコア(21)のティース部(21b)にインシュレータ(22)を介して巻線(23)が装着されてなるステータ本体(20)と、
前記巻線と接続されて前記ステータ本体に備えられる複数の前記巻線を所定の結線態様とするバスバーユニット(30)と
を有し、前記バスバーユニットが前記ステータ本体に軸方向に並設されているステータ(11)であって、
前記バスバーユニットが前記ステータ本体に対して軸方向に一体に装着されるものであり、
前記バスバーユニットに設けた第1係止部(33)と、前記ステータ本体に設けた第2係止部(22b)との相互の係止によるスナップフィット装着がなされるものであり、
前記バスバーユニットと、前記ステータ本体と、前記バスバーユニット及び前記ステータ本体間に介在部材(44)を設ける場合その介在部材との少なくとも1つに、前記バスバーユニットと前記ステータ本体との相互間の装着がたの抑制方向に付勢力を付与する付勢部(35,36,46,25等)を設け、
前記付勢部の付勢力の生じる状態で前記バスバーユニットが前記ステータ本体に一体に装着されて構成されており、
前記バスバーユニットは、導電金属板製のバスバーと、前記バスバーを設置する絶縁樹脂製のバスバーホルダとを備え、前記バスバーホルダは、前記スナップフィット装着に用いる前記第1係止部を有し、
前記付勢部は、前記第1係止部に一体に構成されており、
前記付勢部は、自身を一体に設ける部位から前記ステータの周方向両側にそれぞれ延びるように構成されている
、ステータ。
【請求項12】
ステータコア(21)のティース部(21b)にインシュレータ(22)を介して巻線(23)が装着されてなるステータ本体(20)と、
前記巻線と接続されて前記ステータ本体に備えられる複数の前記巻線を所定の結線態様とするバスバーユニット(30)と
を有し、前記バスバーユニットが前記ステータ本体に軸方向に並設されているステータ(11)であって、
前記バスバーユニットが前記ステータ本体に対して軸方向に一体に装着されるものであり、
前記バスバーユニットに設けた第1係止部(33)と、前記ステータ本体に設けた第2係止部(22b)との相互の係止によるスナップフィット装着がなされるものであり、
前記バスバーユニットと、前記ステータ本体と、前記バスバーユニット及び前記ステータ本体間に介在部材(44)を設ける場合その介在部材との少なくとも1つに、前記バスバーユニットと前記ステータ本体との相互間の装着がたの抑制方向に付勢力を付与する付勢部(35,36,46,25等)を設け、
前記付勢部の付勢力の生じる状態で前記バスバーユニットが前記ステータ本体に一体に装着されて構成されており、
前記バスバーユニットは、導電金属板製のバスバーと、前記バスバーを設置する絶縁樹脂製のバスバーホルダとを備え、前記バスバーホルダは、軸方向に延びる部位を有して前記ステータ本体との近接を規制する規制部と前記付勢部とを有し、
前記規制部及び前記付勢部の少なくとも一方は、前記ステータ本体と周方向に係止可能な係止部(34a,37c)を有して構成されている
、ステータ。
【請求項13】
ステータコア(21)のティース部(21b)にインシュレータ(22)を介して巻線(23)が装着されてなるステータ本体(20)と、
前記巻線と接続されて前記ステータ本体に備えられる複数の前記巻線を所定の結線態様とするバスバーユニット(30)と
を有し、前記バスバーユニットが前記ステータ本体に軸方向に並設されているステータ(11)であって、
前記バスバーユニットが前記ステータ本体に対して軸方向に一体に装着されるものであり、
前記バスバーユニットに設けた第1係止部(33)と、前記ステータ本体に設けた第2係止部(22b)との相互の係止によるスナップフィット装着がなされるものであり、
前記バスバーユニットと、前記ステータ本体と、前記バスバーユニット及び前記ステータ本体間に介在部材(44)を設ける場合その介在部材との少なくとも1つに、前記バスバーユニットと前記ステータ本体との相互間の装着がたの抑制方向に付勢力を付与する付勢部(35,36,46,25等)を設け、
前記付勢部の付勢力の生じる状態で前記バスバーユニットが前記ステータ本体に一体に装着されて構成されており、
前記バスバーユニットは、導電金属板製のバスバーと、前記バスバーを設置する絶縁樹脂製のバスバーホルダとを備え、前記バスバーホルダは、前記付勢部を有し、
前記付勢部は、前記ステータの周方向に延びる部位を有し、先端部が前記スナップフィット装着に用いる前記ステータ本体の前記第2係止部と係止するように構成されている
、ステータ。
【請求項14】
ステータコア(21)のティース部(21b)にインシュレータ(22)を介して巻線(23)が装着されてなるステータ本体(20)と、前記巻線と接続されて前記ステータ本体に備えられる複数の前記巻線を所定の結線態様とするバスバーユニット(30)とを有し、前記バスバーユニットが前記ステータ本体に軸方向に並設されているステータ(11)を備える回転電機(10)であって、
前記ステータの前記バスバーユニットが前記ステータ本体に
対して軸方向に一体に装着されるものであり、
前記バスバーユニットに設けた第1係止部(33)と、前記ステータ本体に設けた第2係止部(22b)との相互の係止によるスナップフィット装着がなされるものであり、
前記バスバーユニットと、前記ステータ本体と、前記バスバーユニット及び前記ステータ本体間に介在部材(44)を設ける場合その介在部材との少なくとも1つに、前記バスバーユニットと前記ステータ本体との相互間の装着がたの抑制方向
として前記バスバーユニットを前記ステータ本体から離間する方向に付勢力を付与する付勢部(35,36,46,25等)を設け、
前記付勢部の付勢力の生じる状態で前記バスバーユニットが前記ステータ本体に一体に装着されて構成されている、回転電機。
【請求項15】
ステータコア(21)のティース部(21b)にインシュレータ(22)を介して巻線(23)が装着されてなるステータ本体(20)と、前記巻線と接続されて前記ステータ本体に備えられる複数の前記巻線を所定の結線態様とするバスバーユニット(30)とを有し、前記バスバーユニットが前記ステータ本体に軸方向に並設されているステータ(11)を備える回転電機(10)であって、
前記ステータの前記バスバーユニットが前記ステータ本体に対して軸方向に一体に装着されるものであり、
前記バスバーユニットに設けた第1係止部(33)と、前記ステータ本体に設けた第2係止部(22b)との相互の係止によるスナップフィット装着がなされるものであり、
前記バスバーユニットと、前記ステータ本体と、前記バスバーユニット及び前記ステータ本体間に介在部材(44)を設ける場合その介在部材との少なくとも1つに、前記バスバーユニットと前記ステータ本体との相互間の装着がたの抑制方向に付勢力を付与する付勢部(35,36,46,25等)を設け、
前記付勢部の付勢力の生じる状態で前記バスバーユニットが前記ステータ本体に一体に装着されて構成されており、
前記バスバーユニットは、導電金属板製のバスバーと、前記バスバーを設置する絶縁樹脂製のバスバーホルダとを備え、前記バスバーホルダは、軸方向に延びる部位を有して前記ステータ本体との近接を規制する規制部(34)を有し、
前記付勢部は、前記規制部に一体に構成されている、回転電機。
【請求項16】
ステータコア(21)のティース部(21b)にインシュレータ(22)を介して巻線(23)が装着されてなるステータ本体(20)と、前記巻線と接続されて前記ステータ本体に備えられる複数の前記巻線を所定の結線態様とするバスバーユニット(30)とを有し、前記バスバーユニットが前記ステータ本体に軸方向に並設されているステータ(11)を備える回転電機(10)であって、
前記ステータの前記バスバーユニットが前記ステータ本体に対して軸方向に一体に装着されるものであり、
前記バスバーユニットに設けた第1係止部(33)と、前記ステータ本体に設けた第2係止部(22b)との相互の係止によるスナップフィット装着がなされるものであり、
前記バスバーユニットと、前記ステータ本体と、前記バスバーユニット及び前記ステータ本体間に介在部材(44)を設ける場合その介在部材との少なくとも1つに、前記バスバーユニットと前記ステータ本体との相互間の装着がたの抑制方向に付勢力を付与する付勢部(35,36,46,25等)を設け、
前記付勢部の付勢力の生じる状態で前記バスバーユニットが前記ステータ本体に一体に装着されて構成されており、
前記バスバーユニットは、導電金属板製のバスバーと、前記バスバーを設置する絶縁樹脂製のバスバーホルダとを備え、前記バスバーホルダは、前記スナップフィット装着に用いる前記第1係止部を有し、
前記付勢部は、前記第1係止部に一体に構成されており、
前記付勢部は、自身を一体に設ける部位から前記ステータの周方向両側にそれぞれ延びるように構成されている、回転電機。
【請求項17】
ステータコア(21)のティース部(21b)にインシュレータ(22)を介して巻線(23)が装着されてなるステータ本体(20)と、前記巻線と接続されて前記ステータ本体に備えられる複数の前記巻線を所定の結線態様とするバスバーユニット(30)とを有し、前記バスバーユニットが前記ステータ本体に軸方向に並設されているステータ(11)を備える回転電機(10)であって、
前記ステータの前記バスバーユニットが前記ステータ本体に対して軸方向に一体に装着されるものであり、
前記バスバーユニットに設けた第1係止部(33)と、前記ステータ本体に設けた第2係止部(22b)との相互の係止によるスナップフィット装着がなされるものであり、
前記バスバーユニットと、前記ステータ本体と、前記バスバーユニット及び前記ステータ本体間に介在部材(44)を設ける場合その介在部材との少なくとも1つに、前記バスバーユニットと前記ステータ本体との相互間の装着がたの抑制方向に付勢力を付与する付勢部(35,36,46,25等)を設け、
前記付勢部の付勢力の生じる状態で前記バスバーユニットが前記ステータ本体に一体に装着されて構成されており、
前記バスバーユニットは、導電金属板製のバスバーと、前記バスバーを設置する絶縁樹脂製のバスバーホルダとを備え、前記バスバーホルダは、軸方向に延びる部位を有して前記ステータ本体との近接を規制する規制部と前記付勢部とを有し、
前記規制部及び前記付勢部の少なくとも一方は、前記ステータ本体と周方向に係止可能な係止部(34a,37c)を有して構成されている、回転電機。
【請求項18】
ステータコア(21)のティース部(21b)にインシュレータ(22)を介して巻線(23)が装着されてなるステータ本体(20)と、前記巻線と接続されて前記ステータ本体に備えられる複数の前記巻線を所定の結線態様とするバスバーユニット(30)とを有し、前記バスバーユニットが前記ステータ本体に軸方向に並設されているステータ(11)を備える回転電機(10)であって、
前記ステータの前記バスバーユニットが前記ステータ本体に対して軸方向に一体に装着されるものであり、
前記バスバーユニットに設けた第1係止部(33)と、前記ステータ本体に設けた第2係止部(22b)との相互の係止によるスナップフィット装着がなされるものであり、
前記バスバーユニットと、前記ステータ本体と、前記バスバーユニット及び前記ステータ本体間に介在部材(44)を設ける場合その介在部材との少なくとも1つに、前記バスバーユニットと前記ステータ本体との相互間の装着がたの抑制方向に付勢力を付与する付勢部(35,36,46,25等)を設け、
前記付勢部の付勢力の生じる状態で前記バスバーユニットが前記ステータ本体に一体に装着されて構成されており、
前記バスバーユニットは、導電金属板製のバスバーと、前記バスバーを設置する絶縁樹脂製のバスバーホルダとを備え、前記バスバーホルダは、前記付勢部を有し、
前記付勢部は、前記ステータの周方向に延びる部位を有し、先端部が前記スナップフィット装着に用いる前記ステータ本体の前記第2係止部と係止するように構成されている、回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ及び回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機のステータにおいて、ステータコアのティース部にインシュレータを介して巻線が装着されてなるステータ本体に、バスバーユニットが一体に備えられるものがある。バスバーユニットは、ステータ本体の軸方向に並設され、ステータ本体に備えられる複数の巻線と接続される。
【0003】
バスバーユニットは、絶縁樹脂製のバスバーホルダに複数の導電金属板製のバスバーが装着又は埋設されて構成される。バスバーユニットは、バスバーの一部に設けられてバスバーホルダから突出する接続用端子と給電用端子とをそれぞれ備える。接続用端子は、巻線の端末部と接続される。巻線がバスバーユニットの接続用端子と接続されることで、ステータに備えられる複数の巻線はY又はΔ型の結線態様となる。給電用端子は、制御装置と接続される。制御装置は、バスバーユニットの給電端子を通じてステータの巻線に給電を行い、回転電機の回転駆動を制御する。
【0004】
ところで、回転電機の各種構成部材の寸法誤差や組付誤差等により、設計上例えば互いが当接配置されるバスバーユニットとステータ本体との間においても少なからず隙間が存在し得る。つまり、バスバーユニットにがたつきが生じ得る。バスバーユニットのがたつきは、異音の発生、巻線の端末部との接続部分における断線の発生等の懸念がある。バスバーユニットのがたつきは、回転電機を振動の多い環境下で使用する場合では特に懸念となる。
【0005】
これを受け、バスバーユニットのがたつきを抑制する技術の提案がなされている(例えば特許文献1参照)。バスバーユニットと回転電機のケースに固定される固定部材との間に付勢部材が介在する構成である。付勢部材の軸方向の付勢力は、バスバーユニットのがたつきを抑えるように機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記技術は、回転電機として組み立てた状態とすることで、付勢部材によるバスバーユニットのがたつき抑制の機能が発揮されるものである。つまり、バスバーユニットのがたつき抑制が確実になされたかが確認し難い構造をなしている。本発明の目的は、バスバーユニットのがたつき抑制の確実性を向上し得るステータ及び回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するステータは、ステータコア(21)のティース部(21b)にインシュレータ(22)を介して巻線(23)が装着されてなるステータ本体(20)と、前記巻線と接続されて前記ステータ本体に備えられる複数の前記巻線を所定の結線態様とするバスバーユニット(30)とを有し、前記バスバーユニットが前記ステータ本体に軸方向に並設されているステータ(11)であって、前記バスバーユニットが前記ステータ本体に一体に装着されるものであり、前記バスバーユニットと、前記ステータ本体と、前記バスバーユニット及び前記ステータ本体間に介在部材(44)を設ける場合その介在部材との少なくとも1つに、前記バスバーユニットと前記ステータ本体との相互間の装着がたの抑制方向に付勢力を付与する付勢部(35,36,46,25等)を設け、前記付勢部の付勢力の生じる状態で前記バスバーユニットが前記ステータ本体に一体に装着されて構成されている。
【0009】
上記課題を解決する回転電機は、ステータコア(21)のティース部(21b)にインシュレータ(22)を介して巻線(23)が装着されてなるステータ本体(20)と、前記巻線と接続されて前記ステータ本体に備えられる複数の前記巻線を所定の結線態様とするバスバーユニット(30)とを有し、前記バスバーユニットが前記ステータ本体に軸方向に並設されているステータ(11)を備える回転電機(10)であって、前記ステータの前記バスバーユニットが前記ステータ本体に一体に装着されるものであり、前記バスバーユニットと、前記ステータ本体と、前記バスバーユニット及び前記ステータ本体間に介在部材(44)を設ける場合その介在部材との少なくとも1つに、前記バスバーユニットと前記ステータ本体との相互間の装着がたの抑制方向に付勢力を付与する付勢部(35,36,46,25等)を設け、前記付勢部の付勢力の生じる状態で前記バスバーユニットが前記ステータ本体に一体に装着されて構成されている。
【0010】
上記ステータ及び回転電機によれば、バスバーユニットと、ステータ本体と、バスバーユニット及びステータ本体間に介在部材を設ける場合その介在部材との少なくとも1つに、バスバーユニットとステータ本体との相互間の装着がたの抑制方向に付勢力を付与する付勢部が設けられる。付勢部による付勢力の生じる状態でバスバーユニットはステータ本体に一体に装着され、ステータが構成されるものである。つまり、ステータは、バスバーユニットとステータ本体との相互間で生じ得る装着がたの抑制が自身単体で図れる構成である。そのため、バスバーユニットのがたつき抑制が確実になされているかの確認が容易で、バスバーユニットのがたつき抑制の確実性の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態におけるステータを備える回転電機を示す斜視図。
【
図3】一実施形態におけるステータの一部を分解した状態を示す斜視図。
【
図4】一実施形態におけるステータの一部を拡大した状態を示す断面図。
【
図5】一実施形態におけるステータの一部を拡大した状態を示す側面図。
【
図6】一実施形態におけるステータの一部を拡大した状態を示す断面図。
【
図20】変更例におけるステータの一部を分解した状態を示す斜視図。
【
図22】変更例におけるステータの一部を分解した状態を示す斜視図。
【
図26】変更例におけるステータの一部を分解した状態を示す斜視図。
【
図28】変更例におけるステータの一部を分解した状態を示す斜視図。
【
図29】変更例の説明に用いるバスバーユニットを示す平面図。
【
図30】変更例の説明に用いるバスバーユニットを示す平面図。
【
図31】変更例の説明に用いるバスバーユニットを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、ステータ及び回転電機の一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の回転電機10は、ステータ11と、ケース部材12とを備えている。ステータ11は、内側空間にロータ(図示略)を収容可能な円環状をなしている。ロータは、外周面に永久磁石等に基づく磁極部を有する周知の構成である。ステータ11は、円筒状のケース部材12の内側に収容されている。なお、ケース部材12は、回転電機10の外殻ケース、若しくは回転電機10の内部に設けられる中間ケース等である。
【0013】
図2及び
図3に示すように、ステータ11は、ステータ本体20と、バスバーユニット30とを備えている。ステータ本体20及びバスバーユニット30は、それぞれ円環状に構成されている。ステータ本体20は、ステータコア21と、インシュレータ22と、巻線23とを備えている。
【0014】
ステータコア21は、磁性金属製である。ステータコア21は、円環状に構成されている。ステータコア21は、円環部21aと、円環部21aの内周縁部から径方向内側に延びるティース部21bとを有している。ティース部21bは、ステータコア21の周方向等間隔に12個設けられている。各ティース部21bは、ステータコア21の周方向30°等間隔に設けられている。円環部21aの外周面には、12個の凹条部21cが設けられている。各凹条部21cは、各ティース部21bの周方向中央線上に位置している。各凹条部21cは、ステータコア21の円環部21aの外周面において周方向30°等間隔に設けられている。各凹条部21cは、軸方向に延びる断面矩形状の溝形状をなしている。各凹条部21cは、ステータコア21の径方向外側に開口し、またステータコア21の軸方向端面21d,21eの両方に開口している。
【0015】
インシュレータ22は、絶縁樹脂製である。インシュレータ22は、ステータコア21の径方向内側に向く各ティース部21bの先端面及びステータコア21の円環部21aを露出させる以外、各ティース部21bの周囲を覆うように設けられている。つまり、インシュレータ22は、各ティース部21bと各ティース部21bにそれぞれ巻回される各巻線23との間に介在し、各巻線23の絶縁性を確保する機能等を有している。
【0016】
また、インシュレータ22は、ステータコア21の円環部21a寄りで各ティース部21bの基端部に位置する部位、すなわち各巻線23よりも径方向外側に位置する部位にそれぞれ凸壁部22aを有している。凸壁部22aは、各ティース部21b毎、すなわち各巻線23毎に12個設けられている。各凸壁部22aは、各巻線23よりも軸方向に突出している。各凸壁部22aの外周面には、それぞれ係止凹部22bが設けられている。係止凹部22bは、第2係止部に相当する。各係止凹部22bは、インシュレータ22の周方向30°等間隔に設けられている。また、各係止凹部22bは、ステータコア21の各凹条部21cと同じ周方向位置に設けられている。各係止凹部22bは、径方向外側に開口する凹形状をなしている。各係止凹部22bは、各凸壁部22aの基端部側でステータコア21の軸方向端面21dと隣接して設けられている。
【0017】
また、各凸壁部22aの外周面には、各凸壁部22aの先端部側に案内溝22cが設けられている。各案内溝22cは、係止凹部22bに向かって軸方向に延びる溝形状をなしている。各案内溝22c内には、各係止凹部22bと軸方向に並んで斜面部22dが設けられている。斜面部22dは、係止凹部22bに近づくに連れて径方向外側に傾斜、換言すると係止凹部22bから遠ざかるに連れて径方向内側に傾斜する傾斜形状をなしている。
【0018】
巻線23は、個々のティース部21bにインシュレータ22を介してそれぞれ集中巻にて巻回されている。巻線23は、12個設けられている。また、巻線23は、自身の端末部(図示略)をステータコア21の軸方向一方、この場合バスバーユニット30の設置側に突出させている。つまり、ステータコア21の一方の軸方向端面21dから12個の巻線23の端末部が突出している。12個の巻線23は、それぞれ端末部を通じてバスバーユニット30と接続されることで、3相Y型又は3相Δ型の結線態様となる。
【0019】
バスバーユニット30は、ステータ本体20の軸方向一方に並設されている。バスバーユニット30は、バスバーホルダ31と、バスバー32とを備えている。
バスバーホルダ31は、絶縁樹脂製である。バスバーホルダ31は、円環状をなしている。バスバーホルダ31の内径は、ティース部21bの先端面の位置するステータ本体20の内径と同等に設定されている。バスバーホルダ31の外径は、ステータ本体20の外径よりも所定長さ小さく設定されている。
【0020】
バスバー32は、導電金属板製である。バスバー32は、大半の部分を図示略とするが、バスバーホルダ31に装着又は埋設されている。バスバー32は、バスバーホルダ31の形状を考慮した取り回し形状をなしている。バスバー32は、一部に接続用端子32aと給電用端子32bとを有している。
【0021】
接続用端子32aは、12個設けられている。各接続用端子32aは、バスバーホルダ31の外周面から突出し、周方向等間隔に配置されている。各接続用端子32aは、各巻線23の端末部とそれぞれ接続される。各巻線23がバスバーユニット30の各接続用端子32aと接続されることで、ステータ11の12個の巻線23は3相Y型又は3相Δ型の結線態様となる。換言すると、バスバー32は、巻線23が3相Y型又は3相Δ型の結線態様となるような構成をなしている。
【0022】
給電用端子32bは、3個設けられている。各給電用端子32bは、バスバーホルダ31の一方の軸方向端面31aの一部に集約されて、互いに軸方向に平行に延びている。各給電用端子32bは、制御装置50と接続される(
図2参照)。制御装置50は、バスバーユニット30の各給電用端子32bを通じてステータ11の各巻線23に3相給電を行い、回転電機10の回転駆動を制御する。
【0023】
また、上記したバスバーユニット30は、ステータ本体20に対してスナップフィットを介して装着する構造となっている。
すなわち、バスバーホルダ31の外周面には、バスバーユニット30のスナップフィット装着を行うための3個の係止片33が設けられている。係止片33は、第1係止部に相当する。各係止片33は、各接続用端子32aと軸方向に重ならない周方向120°等間隔に設けられている。各係止片33は、一旦径方向外側に延びそこから軸方向に延びる逆L字状をなしている。各係止片33は、各給電用端子32bが突出するバスバーホルダ31の軸方向端面31aとは反対側の軸方向端面31bよりも突出している。各係止片33の先端部には、径方向内側に凸の係止突起33aが設けられている。各係止片33は、先端側が径方向内外に撓むことが可能な可撓性を有している。
【0024】
そして、バスバーユニット30のステータ本体20に対する装着において、
図4に示すように、3個の係止片33の係止突起33aは、ステータ本体20のインシュレータ22に設けた周方向120°等間隔に位置する任意の3箇所の係止凹部22bにそれぞれ係止する。各係止片33は、自身の弾性力にて自身の係止突起33aの係止凹部22b内への挿入状態、つまり係止可能状態を維持する。各係止片33による係止態様は、ステータ本体20に対してバスバーユニット30を軸方向に沿って装着する方向とは反対方向、すなわちバスバーユニット30がステータ本体20から離間する方向に少なくとも係止可能な態様である。バスバーユニット30は、こうしたスナップフィット構造によるステータ本体20への装着がなされる。
【0025】
また、
図2及び
図3に示すように、バスバーホルダ31の外周面には、3個の規制片34が設けられている。規制片34は、規制部に相当する。各規制片34は、各接続用端子32aと軸方向に重ならない周方向120°等間隔で、かつ隣接する各係止片33間の周方向中間位置にそれぞれ設けられている。つまり、各規制片34と各係止片33とは、交互に周方向60°等間隔に設けられている。各規制片34は、一旦径方向外側に延びそこから軸方向に延びる逆L字状をなしている。各規制片34は、バスバーユニット30の径方向から見て各係止片33よりも幅広に形成する等して剛性高く構成されている。各規制片34の先端部は、軸方向に凸の挿入凸部34aを中央部に有している。挿入凸部34aは、係止部に相当する。また、各規制片34の先端部は、挿入凸部34aの両側に軸直交方向に延びる対向縁部34bを有している。
【0026】
そして、バスバーユニット30のステータ本体20に対する装着において、
図5に示すように、3個の規制片34の挿入凸部34aは、ステータ本体20のステータコア21に設けた周方向120°等間隔に位置する任意の3箇所の凹条部21cに軸方向から挿入される。各規制片34の挿入凸部34aがステータコア21の各凹条部21cに周方向に係止可能な状態となるため、バスバーユニット30はステータコア21に対する周方向への移動が規制される。また、バスバーユニット30がステータ本体20と近接する力が作用した場合、各規制片34の対向縁部34bがステータコア21の軸方向端面21dに当接し、それ以上の軸方向へのバスバーユニット30の移動が規制される。
【0027】
また、
図2及び
図3に示すように、各規制片34には、それぞれ周方向両側に付勢片35,36が設けられている。各付勢片35,36は、各規制片34の軸方向延設部分の一方の側縁の途中位置から周方向一方に、各規制片34の軸方向延設部分の他方の側縁の途中位置から周方向他方にそれぞれ延びている。各付勢片35,36は、各規制片34が径方向外側に延びた先の軸方向延設部分に設けられるため、各接続用端子32aよりも径方向外側で周方向に延び、各接続用端子32aと軸方向に重ならないように設けられている。各規制片34毎に設けられる各付勢片35,36の先端部は、それぞれ規制片34と隣接の係止片33との間の周方向中間位置にそれぞれ設けられている。つまり、各付勢片35,36は、規制片34から周方向両側に30°範囲延び、規制片34を中心とした周方向両側30°位置に各付勢片35,36の先端部が設けられている。また換言すると、各付勢片35,36の先端部が、各係止片33を中心とした周方向両側30°位置に設けられているとも言える。さらに、各付勢片35,36の先端部が、バスバーホルダ31の周方向60°等間隔に設けられているとも言える。
【0028】
各付勢片35,36は、各規制片34と連結する基端部から先端部に向けて、バスバーホルダ31から離間する方向に次第に傾斜している。各付勢片35,36は、先端側が軸方向に撓むことが可能な可撓性を有している。上記した各係止片33が各係止凹部22bと係止する状態において(
図4参照)、各付勢片35,36の先端当接部35a,36aがステータ本体20のステータコア21の軸方向端面21dに弾性的に当接する(
図5参照)。つまり、ステータコア21の軸方向端面21dに当接する各先端当接部35a,36aを支点として、各付勢片35,36の弾性力にてバスバーユニット30をステータ本体20から離間する方向に付勢する。この場合、バスバーユニット30がステータ本体20から離間する方向には各係止片33が各係止凹部22bと係止するため、互いの係止状態ががたつきなく維持されるようになっている。
【0029】
各付勢片35,36の先端当接部35a,36aには、それぞれ径方向に凸の係止突起35b,36bが設けられている。各係止突起35b,36bは、ステータ本体20のインシュレータ22の各係止凹部22bに挿入される。各係止突起35b,36bは各係止凹部22bと係止可能なため、振動が作用する場合等、先端部が自由端である各付勢片35,36が過大に振動することを防止可能である。各付勢片35,36の折損等を未然に防止可能である。また、ケース部材12とステータ11とが取り付けられる
図1に示す状態においては、各係止突起35b,36bが
図6に示すように各係止凹部22bから抜け出し不能となる。つまり、各付勢片35,36の先端部及び各付勢片35,36の先端部周りの寸法設定が、各係止突起35b,36bが各係止凹部22bから抜け出し不能となるような設定となっている。各付勢片35,36が万一折損して異物となることに起因する回転電機10の回転ロック、電気回路の短絡断線等の懸念事象が生じない構成となっている。さらに、各付勢片35,36の係止突起35b,36bがインシュレータ22の各係止凹部22bに周方向に係止可能な状態となるため、規制片34の挿入凸部34aと同様、バスバーユニット30のインシュレータ22に対する周方向への移動の規制が可能である。
【0030】
本実施形態の作用について説明する。
ステータ11を構成するステータ本体20とバスバーユニット30との組み付けにおいて、ステータ本体20のステータコア21の軸方向端面21dとバスバーユニット30の軸方向端面31bとが軸方向に対向するように配置される。そして、ステータ本体20に対してバスバーユニット30を軸方向に沿って近接するようにしてバスバーユニット30の装着が行われる。その装着過程において、各係止片33の係止突起33aがステータ本体20のインシュレータ22の各案内溝22c内を軸方向に進む。各係止片33の係止突起33aは、各案内溝22c内を進み各斜面部22dを乗り越えて、各係止凹部22b内に挿入される。各係止突起33aの各係止凹部22b内への挿入状態は、各係止片33の弾性力により維持される。こうして、各係止片33の係止突起33aと各係止凹部22bとが係止可能な状態となり、バスバーユニット30がステータ本体20に対してスナップフィットによる装着状態となる。
【0031】
このとき、各係止片33の係止突起33aが各係止凹部22b内に挿入状態となるバスバーユニット30のステータ本体20との相対位置においては、各付勢片35,36の弾性力にて自身の先端当接部35a,36aがステータコア21の軸方向端面21dに弾性的に当接する。つまり、バスバーユニット30は、ステータ本体20から離間する方向に各付勢片35,36から付勢力を受け、各係止片33の係止突起33aと各係止凹部22bとが互いに軸方向にがたつきなく係止状態となる。バスバーユニット30は、ステータ本体20に対して軸方向へのがたつきの抑制された装着となる。
【0032】
また、各規制片34の挿入凸部34aがステータコア21の各凹条部21cに挿入されて、各挿入凸部34aが各凹条部21cに周方向に係止可能な状態である。さらに、各付勢片35,36の係止突起35b,36bがインシュレータ22の各係止凹部22bに挿入されて、各係止突起35b,36bが各係止凹部22bに周方向に係止可能な状態である。これらにより、バスバーユニット30は、ステータ本体20に対する周方向への移動が規制される。なお、各付勢片35,36の付勢力により自身の先端当接部35a,36aとステータコア21の軸方向端面21dとの間にある程度の摩擦力が作用する。そのため、バスバーユニット30は、ステータ本体20に対して周方向へのがたつきをも抑制された装着が期待できる。
【0033】
このように本実施形態のステータ11は、回転電機10として組み立てる前のステータ11単体において、バスバーユニット30のスナップフィット装着により生じ得るがたつきの抑制が図れる構成となっている。そのため、バスバーユニット30のがたつき抑制が確実になされているかの確認がし易く、バスバーユニット30のがたつき抑制における確実性の向上が期待できるものとなっている。
【0034】
本実施形態の効果について説明する。
(1)バスバーユニット30は、自身を構成する樹脂製のバスバーホルダ31に、バスバーユニット30とステータ本体20との相互間の装着がたの抑制方向に付勢力を付与する付勢片35,36を備えている。付勢片35,36による付勢力の生じる状態でバスバーユニット30はステータ本体20に一体に装着され、ステータ11が構成されるものである。つまり、ステータ11は、バスバーユニット30とステータ本体20との相互間で生じ得る装着がたの抑制が自身単体で図れる構成である。そのため、バスバーユニット30のがたつき抑制が確実になされているかの確認が容易で、バスバーユニット30のがたつき抑制の確実性の向上を期待することができる。
【0035】
また、本実施形態のバスバーユニット30の装着態様は、ステータ本体20に対する軸方向の装着である。本実施形態の装着態様については、バスバーホルダ31に設けた係止片33とインシュレータ22に設けた係止凹部22bとの相互の係止によるスナップフィット装着である。つまり、スナップフィット装着を適切に機能させるためには、バスバーユニット30とステータ本体20との相互間に装着がたが生じ易い構造となるが、本実施形態では、付勢片35,36の付勢力にて装着がたが好適に抑制されている。
【0036】
(2)付勢片35,36は、ステータ11の周方向に複数設けられ、付勢対象であるステータコア21の軸方向端面21dに対して周方向等間隔に当接する構成である。そのため、バスバーユニット30のステータ本体20に対する姿勢の安定性を向上させることが可能である。
【0037】
(3)付勢片35,36は、ステータ11の周方向に延びる部位を有して構成されている。つまり、付勢片35,36の片長さを長く設定可能なため、安定かつ十分な付勢力を確保することが可能である。
【0038】
(4)付勢片35,36は、バスバーユニット30の接続用端子32aと軸方向に重ならないように設けられている。そのため、接続用端子32aと巻線23の端末部との接続に係る部分に付勢片35,36が干渉しないようにすることが可能となり、接続作業が容易に行える等の効果が期待できる。
【0039】
(5)付勢片35,36は、バスバーホルダ31に規制片34に一体に構成されている。つまり、バスバーホルダ31の外周面に直接的に設ける機能部位を少なくできるため、バスバーホルダ31の構成簡素化、大型化抑制等の効果が期待できる。しかも、付勢片35,36は、規制片34からステータ11の周方向両側にそれぞれ延びる構成である。片長さを長く設定できる付勢片35,36が数多く設けられるため、より一層安定かつ十分な付勢力を確保することが可能である。
【0040】
(6)規制片34は、対向縁部34bがステータコア21の軸方向端面21dに当接することで、それ以上のバスバーユニット30のステータ本体20に対する近接を規制することが可能である。また、規制片34は、ステータコア21の凹条部21cに挿入される挿入凸部34aを有し、ステータ本体20と周方向に係止可能である。そのため、ステータ本体20に対するバスバーユニット30の周方向への移動を規制することが可能である。
【0041】
(7)付勢片35,36は、自身の先端部に設けた係止突起35b,36bがスナップフィット装着に用いるインシュレータ22の係止凹部22bに係止可能に挿入される構成である。そのため、先端部が自由端である付勢片35,36が過大に振動することを防止でき、折損等を未然に防止できる。また、ケース部材12とステータ11との取付状態では係止突起35b,36bの係止凹部22bとの係止のため、付勢片35,36が万一折損したとしても異物として飛散することを未然に防止できる(
図6参照)。また、スナップフィット装着を行う係止片33で使用する係止凹部22bを、付勢片35,36の係止でも共用で使用することができる。
【0042】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・バスバーユニット30のスナップフィット装着により生じ得るがたつきの抑制態様について、例えば下記のように適宜変更してもよい。下記の各種態様でも上記実施形態と同様の効果を得ることが期待できる。
【0043】
図2に示した上記実施形態では、規制片34に一対の付勢片35,36が一体に設けられていたが、
図7に示す態様では、規制片34と付勢片37とが別々にバスバーホルダ31に設けられる。規制片34は係止片33から周方向一方の30°位置に変更され、その規制片34から周方向一方の30°位置に付勢片37が設けられている。付勢片37は、接続用端子32aと軸方向に重ならないように周方向一方に30°範囲延び、先端当接部37aがステータコア21の軸方向端面21dに弾性的に当接する。付勢片37の先端当接部37aの当接位置は、ステータコア21の周方向120°等間隔である。なおこの態様では、上記した付勢片35,36の先端部に設けた係止突起35b,36bに相当する部位は省略されている。また、規制片34の先端部は挿入凸部34aが省略され、対向縁部34bのみ有している。
【0044】
図8に示す態様では、
図7に示す態様と異なる点として、付勢片38の先端当接部38aの当接位置が変更されている。付勢片38の先端当接部38aは、インシュレータ22の凸壁部22aの上端面22a1に弾性的に当接する。付勢片38の先端当接部38aの当接位置は、インシュレータ22の周方向120°等間隔である。なおこの態様では、付勢片38が接続用端子32aと軸方向に重ならないように、付勢片38の周方向長さが若干短く構成されている。
【0045】
図9に示す態様では、
図7に示す態様と異なる点として、バスバーユニット30のスナップフィットの装着態様が異なる。
図7に示す態様では、バスバーホルダ31に係止片33が設けられ、係止片33の先端部の係止突起33aがインシュレータ22の係止凹部22bと係止するものであった。
図9に示す態様では、バスバーホルダ31に軸方向に貫通孔を有する係止環部39が設けられ、インシュレータ22の軸方向に延びる係止片24が凸壁部22aと並んで設けられている。係止片24が係止環部39に軸方向に挿通され、係止片24の先端部の係止突起24aが係止環部39と係止する態様である。
図2に示した上記実施形態と逆の係止態様のスナップフィット構造を用いている。係止片24及び係止環部39は、それぞれインシュレータ22及びバスバーホルダ31の周方向120°等間隔に設けられている。
【0046】
図10に示す態様では、バスバーホルダ31に係止環部39、インシュレータ22に係止片24が設けられる
図9に示す態様と同様のスナップフィット構造が用いられている。このスナップフィット構造のものにおいても
図8に示す態様と同様の付勢片38が用いられ、先端当接部38aがインシュレータ22の凸壁部22aの上端面22a1に弾性的に当接するものである。
【0047】
図11に示す態様では、
図2に示した上記実施形態と異なる点として、規制片34の周方向他方の付勢片36は省略され、周方向一方の付勢片35のみが設けられているものである。付勢片35の先端当接部35aの当接位置は、ステータコア21の周方向120°等間隔である。
【0048】
図12に示す態様では、
図8に示す態様の付勢片38と同様の付勢片40が規制片34に一体に設けられ、先端当接部40aがインシュレータ22の凸壁部22aの上端面22a1に弾性的に当接するものである。なおこの態様では、付勢片40が接続用端子32aと軸方向に重ならないように、付勢片40の周方向長さが若干短く構成されている。
【0049】
図13に示す態様では、バスバーホルダ31に係止環部39、インシュレータ22に係止片24が設けられる
図9に示す態様と同様のスナップフィット構造が用いられている。このスナップフィット構造のものにおいても
図12に示す態様と同様の付勢片40が用いられ、先端当接部40aがインシュレータ22の凸壁部22aの上端面22a1に弾性的に当接するものである。
【0050】
図14に示す態様では、規制片34の途中に軸方向に弾性的に伸縮可能な付勢部34cが設けられている。付勢部34cは、隣接の接続用端子32aの範囲内で構成されている。規制片34は、一体に設けた付勢部34cの付勢力により、挿入凸部34aの両側の当接部34dがステータコア21の軸方向端面21dに弾性的に当接するものである。
【0051】
図2に示した上記実施形態では、規制片34に一対の付勢片35,36が一体に設けられていたが、
図15に示す態様では、規制片34から省略した付勢片35,36と同様の付勢片41,42が係止片33に一体に設けられているものである。付勢片41,42は、係止片33が径方向外側に延びた先の軸方向延設部分に設けられるため、接続用端子32aと軸方向に重ならないように設けられている。付勢片41,42は、先端当接部41a,42aがステータコア21の軸方向端面21dに弾性的に当接する。付勢片41,42の先端当接部41a,42aの当接位置は、ステータコア21の周方向60°等間隔である。先端当接部41a,42aに設けた係止突起41b,42bは、インシュレータ22の係止凹部22bに挿入される。
【0052】
図16に示す態様では、
図15に示す態様と異なる点として、係止片33の周方向一方の付勢片41は省略され、周方向他方の付勢片42のみが設けられているものである。付勢片42の先端当接部42aの当接位置は、ステータコア21の周方向120°等間隔である。
【0053】
図17に示す態様では、
図8に示す態様の付勢片38と同様の付勢片43が係止片33に一体に設けられ、先端当接部43aがインシュレータ22の凸壁部22aの上端面22a1に弾性的に当接するものである。
【0054】
図18に示す態様では、
図7に示す態様の付勢片37が用いられ、先端当接部37aに係止突起37bと挿入凸部37cとが設けられている。係止突起37bは、
図2に示した上記実施形態の係止突起35bと同様、インシュレータ22の係止凹部22bに挿入される。挿入凸部37cは、上記実施形態の挿入凸部34aと同様、ステータコア21の凹条部21cに挿入される。
【0055】
図2に示した上記実施形態では、バスバーユニット30を付勢する付勢片35,36がバスバーホルダ31に一体に設けられていたが、
図19及び
図20に示す態様では、付勢機能を有する付勢プレート44がバスバーホルダ31とは別に用いられる。付勢プレート44は、例えば鉄系又は銅系金属板製であり、円環部45と付勢片46とを有している。円環部45は、軸方視でバスバーホルダ31と重なる範囲内の円環状をなしている。円環部45の外周縁には、3個の付勢片46が周方向120°等間隔に設けられている。付勢片46は、一旦径方向外側に延びそこから周方向に例えば30°範囲程度延びている。付勢片46は、接続用端子32aよりも径方向外側で周方向に延びている。付勢片46は、円環部45と連結する基端部から先端部に向けて、円環部45から離間する方向に次第に傾斜している。
【0056】
そして、付勢プレート44は、バスバーユニット30とステータ本体20との間に介在部材として介在される。付勢プレート44は、円環部45がバスバーホルダ31の軸方向端面31bに当接するようにして配置される。付勢プレート44は、円環部45がバスバーホルダ31に単に当接する態様でも、バスバーホルダ31に組み付ける態様であってもよい。またこの場合、付勢プレート44は、自身の付勢片46が接続用端子32aと軸方向に重ならないように配置される。バスバーユニット30の係止片33によるスナップフィット装着がなされると、付勢片46は、先端当接部46aがステータコア21の軸方向端面21dに弾性的に当接する。付勢片46の先端当接部46aの当接位置は、ステータコア21の周方向120°等間隔である。
【0057】
図21及び
図22に示す態様では、
図19及び
図20に示す態様と異なる点として、付勢プレート44の付勢片47の先端当接部47aの当接位置が変更されている。付勢片47の先端当接部47aは、インシュレータ22の凸壁部22aの上端面22a1に弾性的に当接する。付勢片47の先端当接部47aの当接位置は、インシュレータ22の周方向120°等間隔である。なおこの場合も、付勢プレート44は、自身の付勢片47が接続用端子32aと軸方向に重ならないように配置される。
【0058】
図23に示す態様では、バスバーホルダ31に係止環部39、インシュレータ22に係止片24が設けられる
図9に示す態様と同様のスナップフィット構造が用いられている。このスナップフィット構造のものにおいても
図19及び
図20に示す態様と同様の付勢プレート44が用いられ、付勢片46の先端当接部46aがステータコア21の軸方向端面21dに弾性的に当接するものである。
【0059】
図24に示す態様では、
図9に示す態様と同様のスナップフィット構造が用いられている。このスナップフィット構造のものにおいても
図21及び
図22に示す態様と同様の付勢プレート44が用いられ、付勢片47の先端当接部47aがインシュレータ22の凸壁部22aの上端面22a1に弾性的に当接するものである。
【0060】
図25及び
図26に示す態様では、
図19及び
図20に示す態様と異なる点として、付勢プレート44の付勢片48が軸方向に弾性的に伸縮可能に構成されている。付勢片48は、径方向内外に蛇行形状をなして弾性力を持たせている。付勢プレート44は、自身の付勢片48が接続用端子32aと軸方向に重ならないように配置される。付勢片48の先端当接部48aは、ステータコア21の軸方向端面21dに弾性的に当接する。付勢片48の先端当接部48aの当接位置は、ステータコア21の周方向120°等間隔である。また、付勢片48の蛇行部分の一部はインシュレータ22の案内溝22c内に収容され、先端当接部48aの一部は係止凹部22b内に収容されている。
【0061】
図2に示した上記実施形態では、バスバーユニット30を付勢する付勢片35,36がバスバーホルダ31に一体に設けられていたが、
図27及び
図28に示す態様では、インシュレータ22に付勢片25が設けられている。付勢片25は、インシュレータ22の例えば凸壁部22aに設けられている。付勢片25は、基端部から先端部に向けて軸方向に対して傾斜し、軸方向に可撓性を有している。そして、バスバーユニット30は、インシュレータ22の付勢片25の先端当接部25aがバスバーホルダ31の例えば規制片34の径方向延設部分の裏面に当接するように配置される。バスバーユニット30は、付勢片25が接続用端子32aと軸方向に重ならないように配置される。付勢片25の先端当接部25aは、バスバーホルダ31の規制片34の径方向延設部分の裏面に弾性的に当接する。付勢片25の先端当接部25aの当接位置は、バスバーホルダ31の周方向120°等間隔である。
【0062】
図29に示す態様すなわち上記実施形態では、付勢片35,36の先端当接部35a,36aが合計6箇所設けられ、バスバーユニット30の周方向60°等間隔にステータコア21に弾性的に当接する構成である。また、
図30に示す態様すなわち
図11に示す態様では、付勢片35の先端当接部35aが合計3箇所設けられ、バスバーユニット30の周方向120°等間隔にステータコア21に弾性的に当接する構成である。また、
図31に示す態様では、付勢片35,36の先端当接部35a,36aが合計2箇所設けられ、バスバーユニット30の周方向180°等間隔にステータコア21に弾性的に当接する構成である。このように周方向6箇所、3箇所、2箇所のように、周方向等間隔で当接する態様が好ましい。これ以外に周方向4箇所、5箇所、8箇所、9箇所等の周方向等間隔で当接する態様としてもよい。
【0063】
・バスバーユニット30に付勢力を付与する付勢部をバスバーホルダ31、ステータ本体20のインシュレータ22、付勢プレート44のそれぞれ1つに設けたが、2以上の部材に設けてもよい。
【0064】
・上記実施形態は、バスバーユニット30のスナップフィット装着により生じ得るがたつき抑制に適用するものであったが、スナップフィット装着以外の装着態様により生じ得るバスバーユニットのがたつき抑制に適用してもよい。
【0065】
・上記の他、ステータ11及び回転電機10の構成を適宜変更してもよい。例えば、ステータコア21のティース部21b及び巻線23の個数、すなわちステータ11の磁極数を12極以外、適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0066】
10 回転電機、11 ステータ、20 ステータ本体、21 ステータコア、21b ティース部、22 インシュレータ、23 巻線、25 付勢片(付勢部)、30 バスバーユニット、35,36 付勢片(付勢部)、44 付勢プレート44(介在部材)、46 付勢片(付勢部)