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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】虚像表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/232 20240101AFI20240625BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20240625BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B60K35/232
G02B27/01
G08G1/16 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021055567
(22)【出願日】2021-03-29
(65)【公開番号】P2022152702
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】山口 昌之
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 洋一
(72)【発明者】
【氏名】大山 貢司
【審査官】鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-056844(JP,A)
【文献】特開2016-222061(JP,A)
【文献】特開2017-122895(JP,A)
【文献】特開2012-226067(JP,A)
【文献】特開2020-019369(JP,A)
【文献】特開2017-215816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00-37/20
G02B 27/01
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(A)の乗員によって視認可能な虚像(Vi)を表示する虚像表示装置であって、
前記虚像として結像される虚像光を反射する凹面鏡の姿勢変化により、前記虚像が表示される画角(VA)の位置を、第1位置(VP1)、および前記第1位置の上方となる第2位置(VP2)を含む複数の位置間で切り替える切替機構(63)と、
前記切替機構による前記画角の位置の切り替えに応じて、前記第1位置、および前記第2位置のそれぞれに紐づく前記虚像を表示させる表示制御部(73)と、を備え、
前記第1位置における前記虚像は、前記車両の前景に重畳されない非重畳コンテンツ(CTn)であり、前記第2位置における前記虚像は、前記前景に重畳される重畳コンテンツ(CTs)であり、
前記表示制御部は、
前記切替機構が前記第1位置から前記第2位置へと前記画角を移動させる間は、前記非重畳コンテンツを非表示とし、前記重畳コンテンツの表示を禁止し、
前記画角の前記第2位置への移動が完了すると、前記非重畳コンテンツの非表示状態を維持して、前記重畳コンテンツを表示する虚像表示装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記画角が前記第2位置へ移動された後は、前記車両の走行シーンに応じて、前記画角が移動される間であっても、前記非重畳コンテンツの非表示状態を維持して、前記重畳コンテンツの表示を許可する請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記車両の速度、あるいは前記車両の走行位置に応じて、前記切替機構に対して、前記画角の移動の切替えタイミングを決定する請求項1または請求項2に記載の虚像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書による開示は、車両の乗員によって視認可能な虚像を表示する虚像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
虚像表示装置として、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1の虚像表示装置では、プロジェクタによって、スクリーンに画像が形成される。スクリーンの画像は、ミラーで反射され、フレネルレンズによって拡大され、車両のフロントウインドウに投射される。そして、フロントウインドウに投射された画像は、虚像として車両の前景に重畳されるようにして、乗員によって視認されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-78726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、虚像表示装置においては、通常、所定の情報を前景に対して非重畳表示とする場合には、虚像を視認者の手前側に表示すると共に、前景に対して重畳表示とする場合は、虚像を視認者の遠方側に表示することから、総じて大画面の表示が必要となる。
【0005】
特許文献1では、例えば、フレネルレンズによる画像の拡大を図るようにしているが、光学系での拡大手法には自ずと限界があり、装置自体(ミラー、フレネルレンズ、および構成部材を収容する筐体等)の大型化が必要となる。
【0006】
本開示の目的は、上記問題に鑑み、装置の大型化を伴うことなく、重畳表示にあたって、表示される虚像自体が大画面であるように視認させることのできる虚像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0008】
本開示では、車両(A)の乗員によって視認可能な虚像(Vi)を表示する虚像表示装置であって、
虚像として結像される虚像光を反射する凹面鏡の姿勢変化により、虚像が表示される画角(VA)の位置を、第1位置(VP1)、および第1位置の上方となる第2位置(VP2)を含む複数の位置間で切り替える切替機構(63)と、
切替機構による画角の位置の切り替えに応じて、第1位置、および第2位置のそれぞれに紐づく虚像を表示させる表示制御部(73)と、を備え、
第1位置における虚像は、車両の前景に重畳されない非重畳コンテンツ(CTn)であり、第2位置における虚像は、前景に重畳される重畳コンテンツ(CTs)であり、
表示制御部は、
切替機構が第1位置から第2位置へと画角を移動させる間は、非重畳コンテンツを非表示とし、重畳コンテンツの表示を禁止し、
画角の第2位置への移動が完了すると、非重畳コンテンツの非表示状態を維持して、重畳コンテンツを表示することを特徴としている。
【0009】
この開示によれば、装置全体を大型化することなく、切替機構によって、第1位置における虚像と、第2位置における虚像とを表示することができる。そして、第1位置と第2位置との間で画角が移動される間は、重畳コンテンツの表示が禁止されるので、視認者にとっては、虚像が移動されていることは認識されない。よって、表示される虚像は、あたかも第1位置における非重畳コンテンツと、第2位置における重畳コンテンツとを含む領域に形成された大画面であるように視認される。
【0010】
尚、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の第1実施形態によるHUDの虚像表示機能を説明するための図である。
図2】表示システムの電気的な構成を示すブロック図である。
図3】ルックアップテーブルの一例を示す図である。
図4】第1実施形態における表示制御部にて実施される表示制御処理の詳細を示すフローチャートである。
図5】車間維持制御における非重畳コンテンツを示す説明図である。
図6】車間維持制御における画角の移動を示す説明図である(非表示)。
図7】車間維持制御における重畳コンテンツを示す説明図である。
図8】車間維持制御において、再び非重畳コンテンツ表示に戻った状態を示す説明図である。
図9】車間距離に応じて変化される重畳コンテンツを示す説明図である。
図10】第2実施形態における表示制御部にて実施される表示制御処理の詳細を示すフローチャートである。
図11】ターンバイターンにおける非重畳コンテンツを示す説明図である。
図12】非重畳コンテンツにおけるアイコンを示す説明図である。
図13】ターンバイターンにおける画角の移動を示す説明図である(非表示)。
図14】ターンバイターンにおける遠方に対応する重畳コンテンツを示す説明図である。
図15】ターンバイターンにおける近方に対応する重畳コンテンツを示す説明図である。
図16】第3実施形態における車間維持制御時のアイコンを示す説明図である。
図17】第4実施形態における表示システムの電気的な構成を示すブロック図である。
図18】その他の実施形態における重畳コンテンツを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。そして、複数の実施形態および変形例に記述された構成同士の明示されていない組み合わせも、以下の説明によって開示されているものとする。
【0013】
(第1実施形態)
本開示の第1実施形態による虚像表示装置を図1図9に示す。虚像表示装置の機能は、図1および図2に示すヘッドアップディスプレイ(以下、HUD)100に実装されている。HUD100は、メータ表示装置30等と共に、表示システム110を構成している。表示システム110は、車両Aにおいて用いられ、HUD100による虚像表示と、メータ表示装置30による画面表示等とを連携させて、車両Aに関連する種々の情報をドライバに提示する。
【0014】
HUD100およびメータ表示装置30は、車両Aに搭載された車載ネットワークの通信バスに通信可能に接続されている。車載ネットワークの通信バスには、カメラECU(Electronic Control Unit)21、ナビゲーションECU22、および運転支援ECU23等の他の車載ECUが更に接続されている。通信バスにノードとして接続されたこれらの構成は、相互に通信可能である。
【0015】
カメラECU21は、プロセッサ、RAM、およびストレージ等を有する処理装置であり、車両Aに搭載された一つ、または複数の車載カメラと電気的に接続されている。カメラECU21には、車載カメラによって撮像された車両周囲の映像データが入力される。カメラECU21は、車両Aの前方を撮影する車載カメラ(以下、フロントカメラ)の映像を解析し、前走車Af(図6参照)までの距離、自車左右の区画線の相対位置、および自車前方の道路標識等を検出する。カメラECU21は、前走車Afおよび区画線等の検出情報を運転支援ECU23に提供する。カメラECU21は、標識認識(Traffic Sign Recognition)機能によって認識した道路標識の認識情報を、HUD100およびメータ表示装置30に提供する。標識認識を用いたドライバへの支援表示は、ロードサインアシスト(Road Sign Assist RSA)である。
【0016】
ナビゲーションECU22は、プロセッサ、RAM、およびストレージ等を有する処理装置であり、乗員によって設定された目的地までのルート案内を実施する。ナビゲーションECU22は、ルート案内の実施中に、直進、右左折、分岐、および合流等を案内する案内エリアに接近すると、当該案内エリアについての経路情報を、HUD100およびメータ表示装置30に提供する。例えば、右左折の際のドライバへの支援表示は、ターンバイターン(Turn By Turn TBT)である。
【0017】
運転支援ECU23は、プロセッサ、RAM、およびストレージ等を有する処理装置であり、車両Aのドライバの運転を支援する複数の支援機能を実現する。一例として、運転支援ECU23は、ACC(Adaptive Cruise Control)、およびLDW(Lane Departure Warning)等の運転支援機能を有している。
【0018】
運転支援ECU23は、ACC機能により、目標車速で車両Aを定速走行させるか、またはカメラECU21から取得する前走車Afの検出情報に基づき、前走車Afとの車間距離を維持しつつ、車両Aを前走車Afに追従走行させる。運転支援ECU23は、ACC機能が動作している場合、ACC機能の制御状態を示すステータス情報を、HUD100およびメータ表示装置30へ提供する。
【0019】
運転支援ECU23は、LDW機能により、カメラECU21から取得する区間線の検出情報に基づき、区画線からはみ出すような自車車線からの自車の逸脱を判定する。運転支援ECU23は、自車車線からの自車の逸脱を判定した場合、車線逸脱情報をHUD100およびメータ表示装置30へ提供し、ドライバへの車線逸脱警告を実施する。
【0020】
次に、メータ表示装置30、およびHUD100の構成の詳細を順に説明する。
【0021】
メータ表示装置30は、車両Aに搭載される複数の表示デバイスのうちの一つであり、表示画面への画像の表示によってドライバに情報を提示する。メータ表示装置30は、コンビネーションメータに相当する構成であり、表示画面を運転席へ向けた姿勢で、インスツルメントパネル9に収容されている。一例として、メータ表示装置30は、車両Aの車室内にて、運転席に着座したドライバから視認容易な正面位置に設置されている。メータ表示装置30は、メータディスプレイ31、およびメータECU32を備えている。
【0022】
メータディスプレイ31は、例えば、液晶ディスプレイ、または有機ELディスプレイ等である。メータディスプレイ31は、メータECU32から取得する映像データに基づき、スピードメータ画像、タコメータ画像、ナビ地図画像、および運転支援画像等を、表示画面に表示する。
【0023】
メータECU32は、表示システム110において、HCU(Human Machine Interface Control Unit)として機能し、車両Aのユーザインターフェース機能を統括する電子制御装置である。メータECU32は、メータディスプレイ31、HUD100、およびセンターディスプレイ等の表示デバイスによる表示を統合的に制御する。メータECU32は、通信バスに出力される種々の情報に基づき、メータディスプレイ31に提供する映像データを生成する。
【0024】
メータECU32は、処理部、RAM、ストレージ、入出力インターフェース、およびこれらを接続するバス等を備えたコンピュータを主体として含む構成である。メータECU32は、後述するヘッドアップECU70と連携し、虚像表示のための演算処理を実行する。具体的に、メータECU32は、虚像Viの表示に用いられる画像データを生成し、生成した画像データを、HUD100に逐次出力する。具体的に、メータECU32は、ACCステータス、車線逸脱警告(LDW)、標識認識支援表示(RSA)、およびターンバイターン表示(TBT)等の虚像表示に用いられる画像データを生成し、HUD100に提供する。
【0025】
HUD100は、車両Aに搭載される複数の表示デバイスのうちの一つであり、ドライバ前方の空間中に結像させる虚像Viにより、ドライバに情報を提示する。HUD100は、インスツルメントパネル9の内部に設けられた収容空間に収容されている。HUD100は、虚像Viとして結像される光(以下、虚像光Lvi)を、ウィンドシールドWSの投影範囲PAへ向けて投影する。ウィンドシールドWSに投影された虚像光Lviは、投影範囲PAにおいて運転席側へ反射され、ドライバによって知覚される。ドライバは、投影範囲PAを通して見える前景に、虚像Viが重畳された表示を視認する。
【0026】
HUD100は、PGU(Picture Generation Unit)61、拡大光学系62、アクチュエータ63、およびヘッドアップECU70を備えている。
【0027】
PGU61は、LCD(Liquid Crystal Display)パネル、およびバックライトを有している。PGU61は、LCDパネルの表示面を拡大光学系62へ向けた姿勢にて、HUD100の筐体に固定されている。PGU61は、映像データの各フレーム画像をLCDパネルの表示面に表示し、当該表示面をバックライトによって透過照明することで、虚像Viとして結像される虚像光Lviを拡大光学系62へ向けて射出する。
【0028】
拡大光学系62は、合成樹脂、またはガラス等からなる基材の表面にアルミニウム等の金属を蒸着させた凹面鏡を、少なくとも一つ含む構成である。拡大光学系62は、PGU61から射出された光を反射によって広げつつ、上方の投影範囲PAに投影する。
【0029】
アクチュエータ63は、ウィンドシールドWSのうちで投影範囲PAとなる領域を機械的に移動させる機構である。投影範囲PAは、虚像光Lviが投影される範囲であり、ドライバからの見た目上で虚像Viが表示される範囲である。アクチュエータ63は、拡大光学系62の凹面鏡に規定された回転軸まわりに凹面鏡を回動させ、拡大光学系62からウィンドシールドWSへ向かう虚像光Lviの射出方向を変化させる。アクチュエータ63は、凹面鏡の姿勢変化により、虚像光Lviの投影範囲PA、ひいてはドライバによって視認される画角VAの位置を、少なくとも上下方向US(図1参照)に移動させる。アクチュエータ63は、本開示の切替機構に対応する。
【0030】
詳記すると、虚像Viを結像可能な空間中の仮想範囲を結像面ISとすると、画角VAは、運転者のアイポイントEPと結像面ISの外縁とを結ぶ仮想線に基づき規定される視野角である。画角VAは、アイポイントEPから見て、運転者が虚像Viを視認できる角度範囲となる。HUD100では、垂直方向における垂直画角(例えば2°程度)よりも、水平方向における水平画角(例えば6°程度)の方が大きくされている。画角VAが上下方向USに移動することによれば、画角VA内となる前方範囲が変化する。一例として、アクチュエータ63が画角VAを最も下方(例えば俯角3°程度)に位置させた場合、10数m~20数mの前方範囲が、画角VA内の範囲となる。対して、アクチュエータ63が画角VAを最も上方(例えば俯角1°程度)に位置させた場合、30m~80m程度の前方範囲が、画角VA内の範囲となる。
【0031】
ここで、前後方向ZG、および左右方向Yoは、水平面上に静止させた車両Aを基準として規定される。具体的に、前後方向ZGは、車両Aの長手方向(進行方向)に沿って規定される。また左右方向Yoは、車両Aの幅方向に沿って規定される。更に、上下方向USは、前後方向ZG、および左右方向Yoを規定した水平面の鉛直方向に沿って規定される。尚、記載の簡略化のため、各方向を示す符号の記載は、適宜省略する。
【0032】
ヘッドアップECU70は、PGU61およびアクチュエータ63を統合制御するHUD100の制御回路である。ヘッドアップECU70は、処理部、RAM、ストレージ、入出力インターフェース、およびこれらを接続するバス等を備えたコンピュータを主体として含む構成である。ヘッドアップECU70には、PGU61(LCDパネル、バックライト)、およびアクチュエータ63を駆動するための駆動回路が更に設けられている。
【0033】
ヘッドアップECU70は、画角VAの位置に関連付けて、虚像Viとして表示するコンテンツを変更する。具体的に、ヘッドアップECU70は、アクチュエータ63の駆動制御により、虚像Viが表示される画角VAの位置を、通常位置VP1、および重畳位置VP2を含む複数の位置間で切り替える。ヘッドアップECU70は、アクチュエータ63による画角VAの位置の切り替えに応じて、通常位置VP1および重畳位置VP2のそれぞれに紐づく虚像Viを表示させる。通常位置VP1は、本開示の第1位置に対応し、重畳位置VP2は、本開示の第2位置に対応する。
【0034】
通常位置VP1は、主に非重畳コンテンツCTnを虚像Viとして表示する画角位置である。非重畳コンテンツCTnは、前景に重畳表示される表示物のうちで、後述する重畳コンテンツCTsを除いた表示物で(非AR表示物)ある。非重畳コンテンツCTnは、重畳コンテンツCTsとは異なり、重畳対象を特定されないで、投影範囲PA(画角VA)内の特定位置に表示される。故に、非重畳コンテンツCTnは、ウィンドシールドWS等の車両構成に相対固定されているようにドライバに視認される。通常位置VP1に非重畳コンテンツCTnによって車速等の車両情報を表示させた状態が、HUD100による虚像表示の基準状態となる(図5等参照)。
【0035】
重畳位置VP2は、主に重畳コンテンツCTsを虚像Viとして表示する画角位置である。重畳位置VP2は、通常位置VP1よりも上方に規定される。重畳コンテンツCTsは、拡張現実(Augmented Reality,AR)表示に用いられるAR表示物である。重畳コンテンツCTsの表示位置は、例えば路面の特定位置、前方車両、歩行者、および道路標識等、前景中に存在する特定の重畳対象に関連付けられている。重畳コンテンツCTsは、画角VA内にある特定の重畳対象に重畳表示され、当該重畳対象に相対固定されているように、重畳対象を追って、ドライバの見た目上で移動可能である。重畳コンテンツCTsの形状は、重畳対象の相対位置および形状に合わせて、所定の周期で更新され続ける。重畳コンテンツCTsは、非重畳コンテンツCTnよりも水平に近い姿勢で表示され、例えばドライバから見た奥行き方向に延伸した表示形状とされる。一例として、ドライバに通知すべき特定のイベントが発生した場合に、HUD100は、通常位置VP1から重畳位置VP2に画角VAを移動させ、重畳コンテンツCTsを表示する。
【0036】
以上のように、画角位置およびコンテンツを連携させた虚像表示制御を実現するため、ヘッドアップECU70は、ストレージに記憶されたプログラム(虚像表示プログラム)を処理部によって実行し、複数の機能部を備える。具体的に、ヘッドアップECU70は、情報取得部71、データ収容部72、および表示制御部73等の機能部を備える。
【0037】
情報取得部71は、通信バスおよびメータECU32と接続されている。情報取得部71は、カメラECU21による道路標識の認識情報、ナビゲーションECU22による経路情報、並びに運転支援ECU23によるステータス情報および車線逸脱情報等を、通信バスから取得する。情報取得部71には、メータECU32によって生成される虚像表示のための画像データが逐次入力される。情報取得部71は、ARスイッチ68と電気的に接続されている。ARスイッチ68は、ドライバによって操作され、重畳コンテンツCTsを用いたAR表示のオンおよびオフを切り替えるスイッチである。情報取得部71は、ARスイッチ68におけるオンおよびオフの状態を検知する。
【0038】
データ収容部72は、表示制御部73によって参照される複数のデータを収容する記憶領域である。データ収容部72は、RAM内に確保された記憶領域であってもよく、ストレージ内の一部の記憶領域であってもよい。データ収容部72には、ルックアップテーブル81、ミラー位置データ82、83およびグラフィックデータ84、85が表示制御部73によって参照可能に準備にされている。
【0039】
ルックアップテーブル81(図2中のLook up Table参照)は、画角位置とコンテンツとを紐付ける情報である(図3参照)。ミラー位置データ82(図2中のMirror Position Data A参照)は、画角VAを通常位置VP1に設定する場合の凹面鏡の角度位置を規定する情報である。ミラー位置データ83(図2中のMirror Position Data B参照)は、画角VAを重畳位置VP2に設定する場合の凹面鏡の角度位置を規定する情報である。各ミラー位置データ82、83は、ドライバのアイポイントEPの位置に合うように、ドライバによる調整が可能な値であってよい。グラフィックデータ84(図2中のGraphic Data A参照)は、画角VAが通常位置VP1にある場合に使用される画像データである。グラフィックデータ85(図2中のGraphic Data B参照)は、画角VAが重畳位置VP2にある場合に使用される画像データである。
【0040】
尚、図3中の「〇」および「◎」において、「◎」は、グラフィックデータ84、あるいはグラフィックデータ85を表示するにあたって、グラフィックデータ85を優先することを意味している。また、図3中の「-」は、非表示とすることを意味している。
【0041】
表示制御部73は、PGU61およびアクチュエータ63を統合制御する制御部であり、PGU61へ向けて出力する映像データおよび制御信号と、アクチュエータ63へ向けて出力する駆動信号とを生成する。表示制御部73は、情報取得部71にて把握されるARスイッチ68のオンおよびオフ状態に基づき、重畳位置VP2に画角VAを移動させる作動の有効および無効を切り替える。表示制御部73は、ARスイッチ68がオフ状態である場合、画角VAを通常位置VP1に固定し、非重畳コンテンツCTnを表示すると共に、重畳コンテンツCTsの表示を中断する。
【0042】
表示制御部73は、情報取得部71にて取得される情報と、ルックアップテーブル81の内容とに基づき、画角VAの位置を決定すると共に、決定した画角位置に基づき、虚像表示させるコンテンツを選択する。表示制御部73は、コンテンツの選択結果に基づき、映像データの生成に使用する画像の素材データを、各グラフィックデータ84、85から抽出する。表示制御部73は、各グラフィックデータ84、85から生成した画像データと、メータECU32より提供される画像データとを適宜組み合わせ、映像データの各フレーム画像を生成する。表示制御部73は、連続した多数のフレーム画像よりなる映像データを、PGU61に逐次出力する。
【0043】
メータECU32は、HUD100でのアクチュエータ63による画角VAの位置の切り替えに連携させて、メータディスプレイ31の表示画面の表示を変更する。メータECU32は、画角VAの移動後に表示させる重畳コンテンツCTsに関連する詳細情報を表示画面に表示させている。詳細情報は、重畳コンテンツCTsと同種の情報であって、重畳コンテンツCTsよりも詳細な内容を、ドライバに提示する。
【0044】
尚、ドライバは、事前に通常位置VP1、および重畳位置VP2に表示させるコンテンツを選択可能となっている。また、ドライバは、ARスイッチ68によって、通常位置VP1、および重畳位置VP2での表示(AR表示)をするか否かを選択可能となっている。また、ドライバは、運転中にも、通常位置VP1、および重畳位置VP2で表示するか否かを選択可能となっている。
【0045】
次に、通常位置VP1から重畳位置VP2へ画角VAを移動させて、非重畳コンテンツCTn、および重畳コンテンツCTsを表示する際の制御内容について、図4図9に基づき、以下説明する。図4図9では、ACCステータス(定速走行あるいは追従走行)の変更通知を行う場合を事例として説明する。
【0046】
尚、運転支援ECU23にてACC機能が作動されていない場合、基本の表示形態として、通常位置VP1(ウィンドシールドWSの下側)に、虚像Viとして非重畳コンテンツCTnが表示される(図5)。非重畳コンテンツCTnは、例えば、走行中の車速CTn1(60km/h)を示すものとなっている。そして、ドライバによって、ACC機能(目標車速、および目標車間距離)の設定が行われると、非重畳コンテンツCTnには、ACC機能が設定されたことを示すアイコンCTn2が追加表示される(図5)。
【0047】
図4に示す制御フローチャートにおいて、表示制御部73は、S101にて、ARスイッチ68のオンオフを示す信号を検出し、S102に進む。S102では、表示制御部73は、S101にて検出した信号に基づき、AR機能がオン状態にあるか否かを判定する。S102にて、AR機能がオフ状態にあると判定した場合、S111に進む。一方、S102にて、AR機能がオン状態にあると判定した場合、S103に進む。
【0048】
S103では、表示制御部73は、情報取得部71にて取得される種々の情報に基づき、ルックアップテーブル81を参照することで、画角VAの位置と、虚像表示するコンテンツ(ここでは、ACCにかかるコンテンツ)とを決定し、S104に進む。S104では、表示制御部73は、S103での決定に基づき、画角VAの位置を切り替える切替作動の要否を判定する。S104にて、切替作動が不要であり、現在の画角位置を維持すると判定した場合、S111に進む。一方、S104にて、切替動作が必要と判定した場合、S105に進む。
【0049】
S105にて、表示制御部73は、非重畳コンテンツCTnを一旦、非表示とすると共に、S106にて、図6に示すように、非表示の状態で、画角VAの位置を重畳位置VP2に移動させる。この場合の重畳位置VP2の上端位置(画角VAの上端位置)は、前走車Afの後端位置である(図7)。
【0050】
S107では、表示制御部73は、重畳位置VP2を判定する。つまり、S107にて、重畳位置VP2への移動が完了したと判定した場合、S108に進む。尚、重畳位置VP2への移動が完了していない場合は、表示制御部73は、S106、S107を繰り返す。
【0051】
S108では、表示制御部73は、図7に示すように、重畳コンテンツCTsを表示させる。ACCにおける重畳コンテンツCTsは、例えば、車両A(自車)と前走車Afとの車間距離を示す画像となっており、両サイドに形成される車線CTs1と、車間距離を示す横バーCTs2とから形成されている。重畳コンテンツCTsにおいては、横バーCTs2の本数が多いほど、車間距離が相対的に長いことを示すようになっている(図9)。
【0052】
そして、S109で、表示制御部73は、重畳コンテンツCTsを表示させた後の経過時間が所定時間経過したかを判定し、否定判定するとS108に戻り、肯定判定するとS110に移行して、重畳コンテンツCTsを非表示とする。つまり、重畳コンテンツCTsは、ドライバに対して、所定時間だけ表示されるものとなっている。S110の後は、S111に移行する。
【0053】
S111では、表示制御部73は、画角VAの位置を通常位置VP1に移動させると共に、S112で、図8に示すように、通常位置VP1において、非重畳コンテンツCTn(車速表示)を表示させる(基本の表示形態に戻す)。
【0054】
以上のように、本実施形態によれば、装置全体を大型化することなく、アクチュエータ63(切替機構)によって、通常位置VP1(第1位置)における虚像Viと、重畳位置VP2(第2位置)における虚像Viとを表示することができる。そして、通常位置VP1と重畳位置VP2との間で画角VAが移動される間は、重畳コンテンツCTsの表示が禁止されるので、ドライバ(視認者)にとっては、虚像Viが移動されていることは認識されない。よって、表示される虚像Viは、あたかも通常位置VP1における非重畳コンテンツCTnと、重畳位置VP2における重畳コンテンツCTsとを含む領域に形成された大画面であるように視認される。
【0055】
(第2実施形態)
第2実施形態を図10図15に示す。第2実施形態は、上記第1実施形態に対して、ターンバイターン表示(経路案内表示)を行う場合を事例として説明する。図10に示す制御フローチャートは、上記第1実施形態で説明した図4に対して、S109を廃止し、S108A、S108Bを追加したものとなっている。
【0056】
非重畳コンテンツCTnは、図11に示すように、上記第1実施形態と同一であり、例えば、走行中の車速CTn1(60km/h)を示すものとなっている。そして、図12に示すように、ドライバの設定によって、ナビゲーションECU22による目的への経路案内が実施されている場合に、非重畳コンテンツCTnには、経路案内機能が設定されたことを示すアイコンCTn3が追加表示される。
【0057】
図10に示す制御フローチャートのS101~S108において、表示制御部73は、S104で、例えば、車両Aが交差点に接近して、右左折(ここでは右折)に伴う画角VAの位置の切替作動が必要か否かを判定する(ルックアップテーブル81、図3のTBT)。表示制御部73は、S104で、画角VAの位置の切替作動が必要であると判定すると、図13に示すように、S105で、非重畳コンテンツCTnを一旦、非常時とすると共に、S106で、画角VAの位置を重畳位置VP2(上側に)移動させる。
【0058】
そして、画角VAの重畳位置VP2への移動が完了すると(S107)、表示制御部73は、図14に示すように、S108で、ターンバイターンにおける重畳コンテンツCTsを表示させる。ターンバイターンにおける重畳コンテンツCTsは、例えば、接近する交差点において曲がるべき方向を示す案内方向CTs3となっている。案内方向CTs3は、例えば、複数(ここでは3つ)の平面的な三角形の図形が、左右方向Yoに並ぶデザインとなっており、各三角形の頂角が、曲がるべき方向に向いたものとなっている。重畳コンテンツCTsは、順次、接近する交差点の手前側に位置するように重畳配置される。
【0059】
そして、S108Aで、表示制御部73は、走行シーンに応じて、即ち、このターンバイターンでは、重畳コンテンツCTsを移動させながら表示する。つまり、車両Aの走行に伴って、実際の交差点は、相対的に車両Aに接近してくるため(実際は、車両Aが交差点に接近する)、常に、重畳コンテンツCTsが、接近する交差点の手前位置となるように、最初の表示位置に対して、順次、下側に移動させながら表示する。これに伴って、図15に示すように、案内方向CTs3は、順次、大きくなるように表示されていく。
【0060】
次に、S108Bで、表示制御部73は、重畳対象が終わったか、即ち、交差点を右折して通過完了したかを判定し、肯定判定すると、S110に移行し、重畳コンテンツCTsを非常時とする。尚、S108Bで否定判定をすると、S108A、S108Bを繰り返す。そして、表示制御部73は、S111で、画角VAを通常位置VP1に戻し、S112で、非重畳コンテンツCTnを表示する(図11に戻る)。
【0061】
以上のように、本実施形態では、表示制御部73は、画角VAが移動される間であっても、車両Aの走行シーンに応じて、即ち、本ターンバイターン(経路案内)では、重畳コンテンツCTsの表示を許可するようにしている。つまり、経路案内中に、交差点で曲がる動作が完了するまでは、重畳コンテンツCTsの案内方向CTs3が順に上側から下側に向けて移動するようにして表示されるので、ドライバは、案内方向CTs3を適切に視認することができ、案内される経路に沿った(間違いのない)走行が可能となる。
【0062】
尚、表示制御部73は、例えば、ターンバイターンにおいて、車両Aの速度、あるいは車両Aの走行位置に応じて、アクチュエータ63(切替機構)に対して、画角VAの移動の切替えタイミングを決定するとよい。
【0063】
また、表示制御部73は、例えば、ターンバイターンにおいて、アクチュエータ63が通常位置VP1から重畳位置VP2へと画角VAを移動させるときは、重畳コンテンツCTsの表示を禁止すると共に、アクチュエータ63が重畳位置VP2から通常位置VP1へと画角VAを移動させるときは、重畳コンテンツCTsの表示を継続させるとよい。
【0064】
例えば、交差点の300m手前で非重畳コンテンツCTn(通常位置VP1)を非表示とし、画角VAを重畳位置VP2へ移動させる。その後、100m手前から20m手前にかけて、重畳コンテンツCTsの表示を継続しつつ、徐々に表示領域を下側へ移動させるとよい。このようにすることで、車両Aの速度が速い場合には、ドライバの視線はそもそも遠方にあることから、交差点まで300m地点では、ドライバに認識しやすい遠方を視認させることができる。そして、交差点に近づくにつれて、重畳コンテンツCTsの表示領域を徐々に下側に移動させることで、ドライバに適した地点(遠方ではなく、近方)に視認させることができる。
【0065】
(第3実施形態)
第3実施形態を図16に示す。第3実施形態は、通常位置VP1(下側位置)における画角VAと、重畳位置VP2(上側位置)における画角VAとが重なり合う重なり領域VP3が形成されるようになっている。そして、表示制御部73は、画角VAの移動中において、重なり領域に非重畳コンテンツCTnの少なくとも一部の表示を継続する。非重畳コンテンツCTnの少なくとも一部の表示は、例えば、上記第1実施形態におけるACCステータスにおけるアイコンCTn2とすることができる。アイコンCTn2は、重なり領域VP3の、例えば、左端に表示される。
【0066】
これにより、画角VAが移動される間に、基本的な、重畳コンテンツCTsが非表示とされるが、アイコンCTn2は、ドライバから見て常に同じ位置に表示され、認識される。よって、重畳コンテンツCTsが非表示状態で移動していることが、視認者に認識されない(バレない)ようにすることができ、虚像Vi表示にあたって、大画面が用いられていると、錯覚させることができる。
【0067】
(第4実施形態)
第4実施形態を図17に示す。第4実施形態は、第1実施形態の変形例である。第4実施形態の表示システム210は、メータ表示装置30、およびHUD200等によって構成されている。第4実施形態では、メータ表示装置30から、虚像表示に用いる画像データをHUD200に出力する機能が省略されている。虚像表示に用いられる画像データは、ヘッドアップECU70によって全て生成される。
【0068】
HUD200は、投影ユニット260、ミラーアクチュエータ263、およびユニットアクチュエータ264を備えている。投影ユニット260は、PGU61および拡大光学系62を一体的に含む構成である。投影ユニット260は、虚像光Lvi(図1参照)の射出方向を上下に移動可能な状態で、HUD200の筐体に支持されている。
【0069】
ミラーアクチュエータ263およびユニットアクチュエータ264は、第1実施形態のアクチュエータ63(図2参照)に相当する構成であり、ウィンドシールドWSのうちで投影範囲PA(図1参照)となる領域を機械的に移動させる機構である。ミラーアクチュエータ263は、投影ユニット260に組み込まれた機構であり、拡大光学系62の凹面鏡に規定された回転軸まわりに凹面鏡を回動させる。ユニットアクチュエータ264は、投影ユニット260に規定された回転軸まわりに、投影ユニット260の全体をHUD200の筐体に対し回動させる。ミラーアクチュエータ263およびユニットアクチュエータ264は、互いに連携し、拡大光学系62からウィンドシールドWSへ向かう虚像光Lviの射出方向を変化させる。
【0070】
これにより、上記第1~第3実施形態と同様に、虚像Viの位置を変更することができる。特に、ミラーアクチュエータ263およびユニットアクチュエータ264を用いることにより、虚像Viの移動範囲を大きくすることができ、ドライバに対して、更に大画面を用いた印象を与えることができる。
【0071】
(その他の実施形態)
以上、本開示による複数の実施形態について説明したが、本開示は、上記各実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態および組み合わせに適用することができる。
【0072】
上記各実施形態では、ACCステータスの変更通知、あるいはターンバイターン表示における例を説明したが、これに限らず、車線逸脱警告(LDW)、あるいは標識認識支援表示(RSA)等にも適用可能である。車線逸脱警告では、重畳コンテンツCTsとして、車両Aが車線において逸脱しそうな側から、車線の中央側に移動するように警告するものとすることができる。また、標識認識支援表示では、重畳コンテンツCTsとして、フロントカメラにて認識した標識(例えば、速度制限標識)を表示するものとすることができる。
【0073】
また、通常位置VP1と、重畳位置VP2とで虚像Viの表示位置を変えるにあたって、それぞれの位置に適した虚像Viのひずみ補正が存在する。よって、ひずみ補正のテーブルとして、それぞれの位置に対応したひずみ補正値を持たせるとよい。
【0074】
また、第2実施形態のターンバイターンにおける重畳コンテンツCTsとして、複数(3つ)の平面的な三角形の図形を用いたが、図18に示すように、両サイドの三角形を立体表示としてもよい。これにより、表示領域が移動したとしても、拡張現実空間において平面的な表示ではなく、立体感を伴う表示が可能となって、違和感を、感じにくくすることができる。
【0075】
また、HUD100のPGU61には、LCDパネルおよびバックライトに替えて、EL(Electro Luminescence)パネルが設けられていてもよい。また、ELパネルに替えて、プラズマディスプレイパネル、ブラウン管およびLED等の表示器を用いたPGU61が採用されてもよい。更に、LCDパネルおよびバックライトに替えて、レーザプロジェクタまたはDLP(Digital Light Processing,登録商標)とスクリーンとが設けられていてもよい。こうした構成を採用したPGU61では、スクリーンに描画された表示像が、拡大光学系62によってウィンドシールドWSに投影され、虚像Viとして結像される。加えて、拡大光学系62に採用される光学要素は、凹面鏡に限定されず、種々のミラー、レンズおよびホログラフィック光学素子等、適宜変更されてよい。
【0076】
また、上記各実施形態のヘッドアップECU70およびメータECU32に設けられる処理部は、RAMと結合された演算処理のためのハードウェアである。処理部は、CPU(Central Processing Unit)およびGPU(Graphics Processing Unit)等の演算コアを少なくとも一つ含む構成である。処理部は、例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)および他の専用機能を備えたIPコア等を更に含む構成であってよい。一方、RAMは、映像生成のためのビデオRAMを含む構成であってよい。処理部は、RAMへのアクセスにより、本開示の虚像表示方法を実現するための種々の処理を実行する。ストレージは、不揮発性の記憶媒体を含む構成である。各ECU32、70のストレージには、処理部によって実行される種々のプログラム(表示制御プログラム等)が格納されている。
【0077】
また、上記各実施形態にて、ヘッドアップECU70およびメータECU32によって提供されていた各機能は、ソフトウェアおよびそれを実行するハードウェア、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの複合的な組合せによっても提供可能である。更に、こうした機能がハードウェアとしての電子回路によって提供される場合、各機能は、多数の論理回路を含むデジタル回路、またはアナログ回路によっても提供可能である。
【0078】
また、上記の虚像表示方法を実現可能なプログラム等を記憶する記憶媒体の形態も、適宜変更されてよい。例えば記憶媒体は、回路基板上に設けられた構成に限定されず、メモリカード等の形態で提供され、スロット部に挿入されて、HCUの制御回路に電気的に接続される構成であってよい。更に、記憶媒体は、HCUへのプログラムのコピー基となる光学ディスクおよびハードディスクドライブ等であってもよい。
【0079】
また、本開示に記載の制御部およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つないしは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置およびその手法は、専用ハードウェア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置およびその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0080】
63 アクチュエータ(切替機構)
73 表示制御部
A 車両
Vi 虚像
VA 画角
VP1 通常位置(第1位置)
VP2 重畳位置(第2位置)
VP3 重なり領域
CTn 非重畳コンテンツ
CTs 重畳コンテンツ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18