(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】パネル部材の取付構造
(51)【国際特許分類】
F16B 7/04 20060101AFI20240625BHJP
B62D 27/00 20060101ALI20240625BHJP
F16B 1/02 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
F16B7/04 302A
B62D27/00
F16B1/02 R
(21)【出願番号】P 2021073231
(22)【出願日】2021-04-23
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 愼吾
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-180527(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0442540(KR,Y1)
【文献】実開昭63-147916(JP,U)
【文献】実開昭56-037710(JP,U)
【文献】特開2013-119883(JP,A)
【文献】実開昭58-150605(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 7/00- 7/22
F16B 1/02
B62D 17/00- 25/08
B62D 25/14- 29/04
B60J 5/00
F16B 5/00- 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の骨格部材にパネル部材を取り付ける取付構造であって、
前記骨格部材と前記パネル部材とのうちの一方の部材に固定される第1取付部と、互いに向かい合う一対の壁面を有する保持部とを有する第1部材と、
前記骨格部材と前記パネル部材とのうちの他方の部材に固定可能な第2取付部と、前記保持部により前記一対の壁面の間に保持される被保持部とを有する第2部材と、
を備え、
前記被保持部は、前記保持部に対する相対位置を、前記壁面に平行な第1軸と、前記壁面に平行で前記第1軸に垂直な第2軸とにおいて変更可能であり、
前記保持部と前記被保持部とのうちの一方には、ガイドリブと凸部とが設けられ、
前記保持部と前記被保持部とのうちの他方には、前記ガイドリブが嵌合することにより前記ガイドリブの移動をガイドする複数のガイド溝と、前記凸部が嵌合することにより前記凸部が位置決めされる複数の凹部とが設けられ、
前記ガイドリブおよび前記凸部は、前記保持部により前記被保持部が保持されている保持状態において前記第1軸と前記第2軸とに垂直な第3軸に沿って突き出すように配置され、
前記複数のガイド溝は、前記保持状態において前記第2軸に沿って複数列で並ぶように配置され、
前記複数の凹部は、前記保持状態において前記第1軸に沿って複数列で並ぶように配置され
、
前記第2部材は、前記保持状態において前記第1軸に平行に配置される第1面に、前記第2取付部と、前記他方の部材に固定可能な第3取付部とを有し、
前記凸部が位置決めされたときの前記第1軸に沿った前記凸部の位置は、前記第2取付部と前記第3取付部との間であり、
前記凸部が位置決めされたときの前記第2取付部と前記凸部との前記第1軸に沿った距離は、前記凸部が位置決めされたときの前記第3取付部と前記凸部との前記第1軸に沿った距離とは異なる、取付構造。
【請求項2】
請求項
1に記載の取付構造であって、
前記第2取付部および前記第3取付部は、前記保持状態において前記第3軸に沿った前記一対の壁面の中心に配置される、取付構造。
【請求項3】
車両の骨格部材にパネル部材を取り付ける取付構造であって、
前記骨格部材と前記パネル部材とのうちの一方の部材に固定される第1取付部と、互いに向かい合う一対の壁面を有する保持部とを有する第1部材と、
前記骨格部材と前記パネル部材とのうちの他方の部材に固定可能な第2取付部と、前記保持部により前記一対の壁面の間に保持される被保持部とを有する第2部材と、
を備え、
前記被保持部は、前記保持部に対する相対位置を、前記壁面に平行な第1軸と、前記壁面に平行で前記第1軸に垂直な第2軸とにおいて変更可能であり、
前記保持部と前記被保持部とのうちの一方には、ガイドリブと凸部とが設けられ、
前記保持部と前記被保持部とのうちの他方には、前記ガイドリブが嵌合することにより前記ガイドリブの移動をガイドする複数のガイド溝と、前記凸部が嵌合することにより前記凸部が位置決めされる複数の凹部とが設けられ、
前記ガイドリブおよび前記凸部は、前記保持部により前記被保持部が保持されている保持状態において前記第1軸と前記第2軸とに垂直な第3軸に沿って突き出すように配置され、
前記複数のガイド溝は、前記保持状態において前記第2軸に沿って複数列で並ぶように配置され、
前記複数の凹部は、前記保持状態において前記第1軸に沿って複数列で並ぶように配置され、
前記第2部材は、前記保持状態において前記第1軸に平行に配置される第1面に前記第2取付部を有し、前記第1面とは反対側の面であり、前記保持状態において前記第1軸に平行に配置される第2面に、前記他方の部材に固定可能な第4取付部を有し、
前記凸部が位置決めされたときの前記第2軸に沿った前記ガイドリブの位置は、前記第2取付部と前記第4取付部との間であり、
前記凸部が位置決めされたときの前記第2取付部と前記ガイドリブとの前記第2軸に沿った距離は、前記凸部が位置決めされたときの前記第4取付部と前記ガイドリブとの前記第2軸に沿った距離とは異なる、取付構造。
【請求項4】
請求項
3に記載の取付構造であって、
前記第2取付部および前記第4取付部は、前記保持状態において前記第3軸に沿った前記一対の壁面の中心に配置される、取付構造。
【請求項5】
車両の骨格部材にパネル部材を取り付ける取付構造であって、
前記骨格部材と前記パネル部材とのうちの一方の部材に固定される第1取付部と、互いに向かい合う一対の壁面を有する保持部とを有する第1部材と、
前記骨格部材と前記パネル部材とのうちの他方の部材に固定可能な第2取付部と、前記保持部により前記一対の壁面の間に保持される被保持部とを有する第2部材と、
を備え、
前記被保持部は、前記保持部に対する相対位置を、前記壁面に平行な第1軸と、前記壁面に平行で前記第1軸に垂直な第2軸とにおいて変更可能であり、
前記保持部と前記被保持部とのうちの一方には、ガイドリブと凸部とが設けられ、
前記保持部と前記被保持部とのうちの他方には、前記ガイドリブが嵌合することにより前記ガイドリブの移動をガイドする複数のガイド溝と、前記凸部が嵌合することにより前記凸部が位置決めされる複数の凹部とが設けられ、
前記ガイドリブおよび前記凸部は、前記保持部により前記被保持部が保持されている保持状態において前記第1軸と前記第2軸とに垂直な第3軸に沿って突き出すように配置され、
前記複数のガイド溝は、前記保持状態において前記第2軸に沿って複数列で並ぶように配置され、
前記複数の凹部は、前記保持状態において前記第1軸に沿って複数列で並ぶように配置され、
前記第2部材は、エラストマで形成され、
前記第2取付部は、貫通孔を有し、
前記貫通孔には、筒状のカラーが挿入され、
前記カラーは、前記第2取付部に固定された前記他方の部材に向けて前記貫通孔から突き出している、取付構造。
【請求項6】
車両の骨格部材にパネル部材を取り付ける取付構造であって、
前記骨格部材と前記パネル部材とのうちの一方の部材に固定される第1取付部と、互いに向かい合う一対の壁面を有する保持部とを有する第1部材と、
前記骨格部材と前記パネル部材とのうちの他方の部材に固定可能な第2取付部と、前記保持部により前記一対の壁面の間に保持される被保持部とを有する第2部材と、
を備え、
前記被保持部は、前記保持部に対する相対位置を、前記壁面に平行な第1軸と、前記壁面に平行で前記第1軸に垂直な第2軸とにおいて変更可能であり、
前記保持部と前記被保持部とのうちの一方には、ガイドリブと凸部とが設けられ、
前記保持部と前記被保持部とのうちの他方には、前記ガイドリブが嵌合することにより前記ガイドリブの移動をガイドする複数のガイド溝と、前記凸部が嵌合することにより前記凸部が位置決めされる複数の凹部とが設けられ、
前記ガイドリブおよび前記凸部は、前記保持部により前記被保持部が保持されている保持状態において前記第1軸と前記第2軸とに垂直な第3軸に沿って突き出すように配置され、
前記複数のガイド溝は、前記保持状態において前記第2軸に沿って複数列で並ぶように配置され、
前記複数の凹部は、前記保持状態において前記第1軸に沿って複数列で並ぶように配置され、
前記第2部材は、エラストマで形成され、
前記第2取付部は、貫通孔を有し、
前記第2部材には、前記第2取付部に固定された前記他方の部材に接触するシールリブが前記貫通孔を囲むように設けられている、取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パネル部材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の骨格部材にパネル部材を取り付けるための取付部材が開示されている。この取付部材は、骨格部材に固定される骨格固定部とパネル部材を固定するパネル固定部との間を接続するエラストマ製の弾性変形部を有しており、骨格部材とパネル部材との線膨張率の差によって生じる骨格部材とパネル部材との相対変位を弾性変形部の変形によって吸収することでパネル部材の歪みや割れを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献では、車両の部位ごとに取付部材が設計されているので、取付部材を設計する手間がかかる。そのため、取付部材を設計する手間を減らすために、取付部材の形状を共通化することが好ましい。しかしながら、取付部材の形状を共通化すると、骨格部材の形状やパネル部材の形状の設計自由度が制限されやすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、車両の骨格部材にパネル部材を取り付ける取付構造が提供される。この取付構造は、前記骨格部材と前記パネル部材とのうちの一方の部材に固定される第1取付部と、互いに向かい合う一対の壁面を有する保持部とを有する第1部材と、前記骨格部材と前記パネル部材とのうちの他方の部材に固定可能な第2取付部と、前記保持部により前記一対の壁面の間に保持される被保持部とを有する第2部材と、を備える。前記被保持部は、前記保持部に対する相対位置を、前記壁面に平行な第1軸と、前記壁面に平行で前記第1軸に垂直な第2軸とにおいて変更可能であり、前記保持部と前記被保持部とのうちの一方には、ガイドリブと凸部とが設けられ、前記保持部と前記被保持部とのうちの他方には、前記ガイドリブが嵌合することにより前記ガイドリブの移動をガイドする複数のガイド溝と、前記凸部が嵌合することにより前記凸部が位置決めされる複数の凹部とが設けられ、前記ガイドリブおよび前記凸部は、前記保持部により前記被保持部が保持されている保持状態において前記第1軸と前記第2軸とに垂直な第3軸に沿って突き出すように配置され、前記複数のガイド溝は、前記保持状態において前記第2軸に沿って複数列で並ぶように配置され、前記複数の凹部は、前記保持状態において前記第1軸に沿って複数列で並ぶように配置される。
この形態の取付構造によれば、凸部が嵌合する凹部を異ならせることによって第1軸に沿った第1取付部に対する第2取付部の相対位置を調節することができ、ガイドリブが嵌合するガイド溝を異ならせることによって、第2軸に沿った第1取付部に対する第2取付部の相対位置を調節することができる。そのため、骨格部材の形状やパネル部材の形状の設計自由度が制限されることを抑制できる。
(2)上記形態の取付構造において、前記第2部材は、前記保持状態において前記第1軸に平行に配置される第1面に、前記第2取付部と、前記他方の部材に固定可能な第3取付部とを有し、前記凸部が位置決めされたときの前記第1軸に沿った前記凸部の位置は、前記第2取付部と前記第3取付部との間であり、前記凸部が位置決めされたときの前記第2取付部と前記凸部との前記第1軸に沿った距離は、前記凸部が位置決めされたときの前記第3取付部と前記凸部との前記第1軸に沿った距離とは異なってもよい。
この形態の取付構造によれば、第1軸に沿った第2部材の向きを反転させて凸部を位置決めしたときの第1軸に沿った第3取付部の位置と、第1軸に沿った第2部材の向きを反転させずに凸部を位置決めしたときの第1軸に沿った第2取付部の位置とを異ならせることができる。そのため、第1軸に沿った第2部材の向きを反転させて、第2取付部に代えて第3取付部を上記他の部材の固定に用いることによって、骨格部材の形状やパネル部材の形状の設計自由度が制限されることをさらに効果的に抑制できる。
(3)上記形態の取付構造において、前記第2取付部および前記第3取付部は、前記保持状態において前記第3軸に沿った前記一対の壁面の中心に配置されてもよい。
この形態の取付構造によれば、第1軸に沿った第2部材の向きを反転させて凸部を位置決めしたときの第3軸に沿った第3取付部の位置と、第1軸に沿った第2部材の向きを反転させずに凸部を位置決めしたときの第3軸に沿った第2取付部の位置とが変化することを抑制できる。
(4)上記形態の取付構造において、前記第2部材は、前記保持状態において前記第1軸に平行に配置される第1面に前記第2取付部を有し、前記第1面とは反対側の面であり、前記保持状態において前記第1軸に平行に配置される第2面に、前記他方の部材に固定可能な第4取付部を有し、前記凸部が位置決めされたときの前記第2軸に沿った前記ガイドリブの位置は、前記第2取付部と前記第4取付部との間であり、前記凸部が位置決めされたときの前記第2取付部と前記ガイドリブとの前記第2軸に沿った距離は、前記凸部が位置決めされたときの前記第4取付部と前記ガイドリブとの前記第2軸に沿った距離とは異なってもよい。
この形態の取付構造によれば、第2軸に沿った第2部材の向きを反転させて凸部を位置決めしたときの第2軸に沿った第4取付部の位置と、第2軸に沿った第2部材の向きを反転させずに凸部を位置決めしたときの第2軸に沿った第2取付部の位置とを異ならせることができる。そのため、第2軸に沿った第2部材の向きを反転させて、第2取付部に代えて第4取付部を上記他の部材の固定に用いることによって、骨格部材の形状やパネル部材の形状の設計自由度が制限されることをさらに効果的に抑制できる。
(5)上記形態の取付構造において、前記第2取付部および前記第4取付部は、前記保持状態において前記第3軸に沿った前記一対の壁面の中心に配置されてもよい。
この形態の取付構造によれば、第2軸に沿った第2部材の向きを反転させて凸部を位置決めしたときの第3軸に沿った第4取付部の位置と、第2軸に沿った第2部材の向きを反転させずに凸部を位置決めしたときの第3軸に沿った第2取付部の位置とが変化することを抑制できる。
(6)上記形態の取付構造において、前記第1部材と前記第2部材とのうちの少なくとも一方は、エラストマで形成されてもよい。
この形態の取付構造によれば、凸部が嵌合する凹部を異ならせやすくできる。
(7)上記形態の取付構造において、前記第2部材は、エラストマで形成され、前記第2取付部は、貫通孔を有し、前記貫通孔には、筒状のカラーが挿入され、前記カラーは、前記第2取付部に固定された前記他方の部材に向けて前記貫通孔から突き出してもよい。
この形態の取付構造によれば、第2取付部に上記他方の部材を固定するときに、カラーのうちの貫通孔から突き出した部分を、上記他方の部材の位置決めに用いることができる。
(8)上記形態の取付構造において、前記第2部材は、エラストマで形成され、前記第2取付部は、貫通孔を有し、前記第2部材には、前記第2取付部に固定された前記他方の部材に接触するシールリブが前記貫通孔を囲むように設けられてもよい。
この形態の取付構造によれば、第2取付部に上記他方の部材が固定されているときに、シールリブが上記他方の部材に接触するので、第2取付部に固定された上記他方の部材と第2部材との間のシール性を高めることができる。
本開示は、取付構造以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、固定具等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の取付構造の概略構成を示す断面図。
【
図5】パネル取付用穴の前後方向の位置が調節される様子を示す第1の上面図。
【
図6】パネル取付用穴の前後方向の位置が調節される様子を示す第2の上面図。
【
図7】パネル取付用穴の上下方向の位置が調節される様子を示す第1の背面図。
【
図8】パネル取付用穴の上下方向の位置が調節される様子を示す第2の背面図。
【
図9】第2実施形態の取付構造の構成を示す断面図。
【
図10】第3実施形態の取付構造の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における取付構造10の概略構成を示す断面図である。
図2は、固定具11の構成を示す上面図である。
図3は、固定具11の構成を示す斜視図である。
図4は、固定具11の構成を示す分解斜視図である。
図1から
図4には、互いに直交する3つの座標軸であるX,Y,Z軸を表す矢印が示されている。X軸は固定具11の前後方向を表しており、Y軸は固定具11の左右方向を表しており、Z軸は固定具11の上下方向を表している。X,Y,Z軸を表す矢印は、
図5以降においても、矢印の指し示す方向が
図1から
図4と対応するように適宜、図示してある。なお、X軸のことを第1軸と呼ぶことがあり、Z軸のことを第2軸と呼ぶことがあり、Y軸のことを第3軸と呼ぶことがある。
【0009】
図1に示すように、第1実施形態における取付構造10は、自動車の骨格部材20にパネル部材30を固定するための構造である。取付構造10は、固定具11を備えている。パネル部材30は、固定具11を介して骨格部材20に固定されている。なお、取付構造10は、自動車ではなく、例えば、自動二輪車や鉄道車両等の自動車以外の車両の骨格部材にパネル部材を固定するための構造であってもよい。
【0010】
本実施形態では、骨格部材20は、自動車のボディシェルを構成する部材のうち、フェンダーパネルやルーフパネルやサイドアウターパネル等の外装パネルを除いた部材である。より具体的には、骨格部材20は、サイドメンバーや、クロスメンバーや、ピラーや、ホイールハウスや、フロアパネル等である。骨格部材20は、サイドメンバー等に結合されたブラケットであってもよい。本実施形態では、骨格部材20は、鋼やアルミニウム合金等の金属材料で形成されている。なお、骨格部材20は、樹脂材料や、炭素繊維強化プラスチック等の複合材料で形成されてもよい。
【0011】
本実施形態では、パネル部材30は、自動車の外装パネルである。より具体的には、パネル部材30は、フェンダーパネルや、フロントバンパーや、アンダーカバー等である。パネル部材30は、ポリプロピレン(PP)やABS樹脂等の樹脂材料で形成されている。なお、パネル部材30は、鋼やアルミニウム合金等の金属材料で形成されてもよいし、炭素繊維強化プラスチック等の複合材料で形成されてもよい。
【0012】
固定具11は、第1部材100と、第1部材100に保持された第2部材200とを備えている。骨格部材20には、スクリュークリップ12によって第1部材100が固定されており、第1部材100に保持された第2部材200には、カラー13とリベット14とによってパネル部材30が固定されている。
【0013】
第1部材100は、第1取付面部110と、第2部材200を保持する保持部120とを有している。
図2に示すように、本実施形態では、第1取付面部110は、第1部材100の前端部に設けられている。第1取付面部110は、矩形板状に構成されている。第1取付面部110の中央には、第1取付部101が設けられている。本実施形態では、第1取付部101は、第1取付面部110を貫通する貫通孔として構成されている。以下の説明では、第1取付部101のことを第1取付穴101と呼ぶ。第1取付穴101の開口形状は、円形である。
図1に示すように、本実施形態では、骨格部材20に設けられた第1貫通孔21と第1取付穴101とに挿入されたスクリュークリップ12によって、第1取付面部110が骨格部材20に固定されている。なお、他の実施形態では、第1取付部101は、貫通孔ではなく、貫通していないネジ穴や、ネジ溝が設けられた突起として構成されてもよい。
【0014】
保持部120は、第1取付面部110に接続されている。
図3に示すように、保持部120は、底面部121と、第1左側壁部122と、第1右側壁部123と、前壁部124とを有している。底面部121は、前後方向に平行な長手方向を有する矩形板状に構成されている。本実施形態では、保持部120のうちの底面部121の前端部が第1取付面部110に接続されている。底面部121と第1取付面部110とは、連続した1枚の平板のように構成されている。
【0015】
第1左側壁部122は、底面部121の左端部から上方に向かって突き出している。第1左側壁部122は、前後方向に平行な長手方向を有する矩形板状に構成されている。第1左側壁部122の上端部は、右側に向かって屈曲している。第1左側壁部122は、3つのガイド溝130を有している。3つのガイド溝130は、第1左側壁部122のうちの右側の壁面に、前後方向に平行に設けられている。各ガイド溝130は、第1左側壁部122の前端部から第1左側壁部122の後端面まで連続して設けられている。本実施形態では、各ガイド溝130の上下方向の幅は互いに同じであり、各ガイド溝130の左右方向の深さは互いに同じである。上下に隣り合うガイド溝130の中心同士の間隔は、全て同じである。本実施形態では、上下に隣り合うガイド溝130の中心同士の間隔は、4ミリメートルである。なお、ガイド溝130の数は、3つに限られず、2つでもよいし、4つ以上でもよい。
【0016】
図4に示すように、第1左側壁部122は、上端部に6つの凹部140を有している。6つの凹部140は、第1左側壁部122のうちの右側の壁面に、前後6列で並ぶように設けられている。本実施形態では、各凹部140の上下方向の幅は互いに同じであり、各凹部140の左右方向の深さは互いに同じであり、各凹部140の前後方向の長さは互いに同じである。なお、凹部140の数は、6つではなく、2つから5つ、あるいは、7つ以上でもよい。
【0017】
前から1列目の凹部140は、第1左側壁部122の中央部近傍に設けられている。前から6列目の凹部140は、第1左側壁部122の後端部近傍に設けられている。前後に隣り合う凹部140の中心同士の間隔は全て同じである。本実施形態では、前後に隣り合う凹部140の中心同士の間隔は、4ミリメートルである。
【0018】
第1右側壁部123は、第1右側壁部123は、底面部121の右端部から上方に向かって突き出している。第1右側壁部123は、第1左側壁部122に向かい合うように設けられている。本実施形態では、第1右側壁部123は、第1左側壁部122と左右対称に設けられている。つまり、第1左側壁部122の右側の壁面と第1右側壁部123の左側の壁面とは、互いに向かい合う一対の壁面として構成されており、第1右側壁部123のうちの左側の壁面には、3つのガイド溝130と、6つの凹部140が設けられている。
【0019】
前壁部124は、底面部121の前端部から上方に向かって突き出している。前壁部124は、第1左側壁部122の前端部と第1右側壁部123の前端部とに接続されている。前壁部124は、左右方向に平行な長手方向を有する矩形板状に構成されている。前壁部124の高さは、第1左側壁部122の高さ、および、第1右側壁部123の高さと同じである。
【0020】
図1に示すように、本実施形態では、底面部121は、鉤状部150を有している。鉤状部150は、底面部121から下方に向かって突き出している。鉤状部150は、骨格部材20の第2貫通孔22に挿入される。鉤状部150は、第2貫通孔22の縁に接触することによって、骨格部材20に対する第1部材100の回転を抑制する。なお、第1部材100に鉤状部150が設けられずに、骨格部材20に対する第1部材100の回転が抑制されるように、第1部材100の2以上の箇所が骨格部材20に固定されてもよい。
【0021】
図4に示すように、第2部材200は、第2取付面部211と、第3取付面部212と、被保持部220とを有している。被保持部220は、第2左側壁部222と、第2右側壁部223とを有している。本実施形態では、第2部材200は、前後方向に沿った中心軸を有する四角柱状に構成されている。第2部材200は、中空断面を有している。第2取付面部211によって第2部材200の上面部分が構成されており、第3取付面部212によって第2部材200の底面部分が構成されており、第2左側壁部222によって第2部材200の左側面部分が構成されており、第2右側壁部223によって第2部材200の右側面部分が構成されている。
【0022】
図1に示すように、第2取付面部211の前側部分には、第2取付部201が設けられており、第2取付面部211の後側部分には、第3取付部202が設けられている。第3取付面部212の前側部分には、第4取付部203が設けられており、第3取付面部212の後側部分には、第5取付部204が設けられている。本実施形態では、第2取付部201および第3取付部202は、第2取付面部211を貫通する貫通孔として構成されている。第4取付部203および第5取付部204は、第3取付面部212を貫通する貫通孔として構成されている。以下の説明では、第2取付部201のことを第2取付穴201と呼び、第3取付部202のことを第3取付穴202と呼び、第4取付部203のことを第4取付穴203と呼び、第5取付部204のことを第5取付穴204と呼ぶ。なお、他の実施形態では、各取付部201~204は、貫通孔ではなく、貫通していないネジ穴や、ネジ溝が設けられた突起として構成されてもよい。
【0023】
本実施形態では、第2取付穴201の開口形状、第3取付穴202の開口形状、第4取付穴203の開口形状、および、第5取付穴204の開口形状は、円形である。第2取付穴201の直径、第3取付穴202の直径、第4取付穴203の直径、および、第5取付穴204の直径は、互いに同じである。前後方向における第4取付穴203の中心位置は、前後方向における第2取付穴201の中心位置と同じであり、前後方向における第5取付穴204の中心位置は、前後方向における第3取付穴202の中心位置と同じである。左右方向における第2取付穴201の中心位置および第3取付穴202の中心位置は、左右方向における第2取付面部211の中心位置と同じである。左右方向における第4取付穴203の中心位置および第5取付穴204の中心位置は、左右方向における第3取付面部212の中心位置と同じである。左右方向における各取付穴201~204の中心位置は、互いに同じである。
【0024】
第2取付穴201には、円筒状のカラー13が圧入によって装着されている。第2取付面部211の下側の面にカラー13の下端部に設けられたフランジ面が接触し、カラー13の上端部が第2取付穴201から上方に向かって突き出すように、第2取付穴201にカラー13が装着されている。カラー13に挿入されたリベット14によって、パネル部材30が第2取付面部211に固定される。
【0025】
本実施形態では、第2部材200の中空部分には、隔壁部213が設けられている。隔壁部213は、第2取付面部211のうちの第2取付穴201と第3取付穴202との間の部分、第3取付面部212のうちの第4取付穴203と第5取付穴204との間の部分、第2左側壁部222、および、第2右側壁部223に接続されている。隔壁部213を設けることによって、第2部材200の剛性を高めることができる。
【0026】
図3に示すように、被保持部220は、保持部120によって保持される。本実施形態では、被保持部220は、保持部120の第1左側壁部122と第1右側壁部123との間に保持される。被保持部220のうちの第2左側壁部222は、第1左側壁部122に保持され、被保持部220のうちの第2右側壁部223は、第1右側壁部123に保持される。なお、被保持部220が保持部120によって保持されている状態のことを保持状態と呼ぶことがある。
【0027】
図4に示すように、第2左側壁部222は、左側に向かって突き出した3つのガイドリブ230を有している。3つのガイドリブ230は、前後方向に平行に設けられている。
本実施形態では、各ガイドリブ230は、第2左側壁部222の前端部から第2左側壁部222の後端面まで連続して設けられている。各ガイドリブ230の上下方向の幅は、各ガイド溝130の上下方向の幅と同じであり、各ガイドリブ230の左右方向の高さは、各ガイド溝130の左右方向の深さよりも高い。上下に隣り合うガイドリブ230の中心同士の間隔は、上下に隣り合うガイド溝130の中心同士の間隔と同じである。
【0028】
第2左側壁部222は、左側に向かって突き出した4つの凸部240を有している。各凸部240は、第2左側壁部222の前端部と後端部との間に、上下方向に沿って並ぶように設けられている。つまり、4つの凸部240の前後方向の位置は、互いに同じである。本実施形態では、4つの凸部240の前後方向の長さは、互いに同じである。4つの凸部240の左右方向の高さは、互いに同じである。上下に隣り合う凸部240同士の間は、ガイドリブ230によって隔てられている。左右方向において、各凸部240の高さは、ガイドリブ230の高さよりも低い。
【0029】
第2右側壁部223は、第2左側壁部222と左右対称に設けられている。つまり、第2右側壁部223には、右側に向かって突き出した3つのガイドリブ230と、右側に向かって突き出した4つの凸部240とが設けられている。
【0030】
図3に示すように、本実施形態では、第2左側壁部222に設けられたガイドリブ230が第1左側壁部122に設けられたガイド溝130に嵌合することによって、第2左側壁部222が第1左側壁部122に保持される。第2右側壁部223に設けられたガイドリブ230が第1右側壁部123に設けられたガイド溝130に嵌合することによって、第2右側壁部223が第1右側壁部123に保持される。
【0031】
第2部材200は、被保持部220を保持部120に保持されている状態で、ガイド溝130にガイドされながら前後方向にスライド移動することができる。凹部140に凸部240が嵌合することによって、第2部材200が第1部材100の保持部120に位置決めされて、第2部材200の前後方向のスライド移動が規制される。つまり、凹部140に凸部240が嵌合することによって、第2部材200は、第1部材100に固定される。
【0032】
本実施形態では、第1部材100は、例えば、ポリアセタール(POM)やポリプロピレン(PP)等の樹脂材料で形成されている。なお、第1部材100は、樹脂材料ではなく、鋼やアルミニウム合金等の金属材料で形成されてもよいし、炭素繊維強化プラスチック等の複合材料で形成されてもよい。
【0033】
本実施形態では、第2部材200は、エラストマで形成されている。第2部材200をエラストマで形成することによって、凸部240を弾性変形させやすくできる。なお、第2部材200は、エラストマではなく、例えば、ポリアセタール(POM)やポリプロピレン(PP)等の樹脂材料で形成されてもよいし、鋼やアルミニウム合金等の金属材料で形成されてもよいし、炭素繊維強化プラスチック等の複合材料で形成されてもよい。
【0034】
図5は、パネル取付用穴AHの前後方向の位置が調節される様子を示す第1の上面図である。
図6は、パネル取付用穴AHの前後方向の位置が調節される様子を示す第2の上面図である。
図7は、パネル取付用穴AHの上下方向の位置が調節される様子を示す第1の背面図である。
図8は、パネル取付用穴AHの上下方向の位置が調節される様子を示す第2の背面図である。第2取付穴201と第3取付穴202と第4取付穴203と第5取付穴204とのうち、パネル部材30が取り付けられる穴のことをパネル取付用穴AHと呼ぶ。第2取付面部211の上面と第3取付面部212の底面とのうち、パネル部材30が取り付けられる面のことをパネル取付面APと呼ぶ。第2取付面部211の上面のことを第1面と呼ぶことがあり、第3取付面部212の底面のことを第2面と呼ぶことがある。第3取付穴202に対して第2取付穴201が後方に配置されており、かつ、第3取付面部212に対して第2取付面部211が上方に配置されており、かつ、上段のガイドリブ230、中段のガイドリブ230、および、下段のガイドリブ230がガイド溝130に嵌合しており、かつ、前から1列目の凹部140に凸部240が嵌合しているときのパネル取付用穴AHの中心位置のことを基準中心位置CHと呼び、このときのパネル取付面APの位置のことを基準取付面CPと呼ぶ。
【0035】
図5に示すように、第1部材100の保持部120に固定された第2部材200に対して所定の大きさの前後方向の力を加えることによって、凹部140に対する凸部240の嵌合を解除、換言すれば、保持部120に対する第2部材200の固定を解除できる。凹部140に対する凸部240の嵌合が解除された状態では、第2部材200は、保持部120のガイド溝130に沿って前後にスライド移動できる。第2部材200がガイド溝130に沿ってスライド移動するとき、凹部140に嵌合していた凸部240が保持部120の内壁面に押されているので、第2部材200は、左右に縮むように弾性変形している。このとき、他の凸部240は保持部120の内壁面に接しているか、あるいは、他の凸部240と保持部120の内壁面との間にはわずかに隙間が生じている。第2部材200のスライド移動によって、前後6列で設けられた凹部140のいずれかに凸部240が向かい合うと、第2部材200の形状が元に戻って凸部240が凹部140に嵌合する。スライド移動前に凸部240が嵌合していた凹部140とは前後方向の位置が異なる凹部140に凸部240を嵌合させることによって、第2部材200の固定位置を変更できる。本実施形態では、前後方向に4ミリメートルピッチで6列の凹部140が設けられているので、第2部材200の前後方向の固定位置を4ミリメートルピッチで6段階に調節できる。第2部材200の前後方向の固定位置を調節することによって、パネル取付用穴AHである第2取付穴201の前後方向の位置を4ミリメートルピッチで6段階に調節できる。
図5に示した例では、前から6列目の凹部140に凸部240が嵌合しているので、パネル取付用穴AHの中心と基準中心位置CHとの距離d1は、20ミリメートルである。
【0036】
本実施形態では、第1右側壁部123の上端面、第2取付面部211の上面、および、第3取付面部212の底面には、パネル取付用穴AHの中心と基準中心位置CHとの距離を表示するための目盛線と数字とが凹凸によって表されている。当該目盛線や数字は、凹凸ではなく、印刷によって表されてもよい。当該目盛線と数字とを用いて、パネル取付用穴AHの中心と基準中心位置CHとの距離を確認することができる。例えば、
図5に示した例では、第1右側壁部123の上端面に表された目盛線のうち、第2部材200の前端面に隣接する目盛線には、「20」の数字が付されており、当該目盛線の近傍の第2取付面部211の上面には、「0」の数字が表されている。これらの数字を読み取って合算することにより、パネル取付用穴AHの中心と基準中心位置CHとの距離が20ミリメートルであることを確認できる。
【0037】
図6に示すように、第2部材200を後方にスライド移動させることによって保持部120から第2部材200を一旦取り外した後、第2部材200の向きを前後反転させた状態で、保持部120に第2部材200を再び固定することができる。第2部材200の向きを前後反転させた状態では、第2取付穴201に代えて、第3取付穴202をパネル取付用穴AHとすることができる。本実施形態では、
図1に示した凸部240の中心と第3取付穴202の中心との前後方向の距離L2は、凸部240の中心と第2取付穴201の中心との前後方向の距離L1に対して2ミリメートル長い。そのため、前後反転前に第2部材200の凸部240が嵌合していた凹部140に、前後反転後の第2部材200の凸部240を嵌合させることによって、パネル取付用穴AHの位置を後方に2ミリメートル移動させることができる。さらに、前後反転された状態の第2部材200の前後方向の固定位置を調節することによって、パネル取付用穴AHである第3取付穴202の前後方向の位置を4ミリメートルピッチで6段階に調節できる。つまり、本実施形態では、第2部材200の前後方向の固定位置の変更と第2部材200の前後反転とによって、パネル取付用穴AHの前後方向の位置を、2ミリメートルピッチで12段階に調節できる。
図6に示した例では、前から6列目の凹部140に前後反転された状態の第2部材200の凸部240が嵌合しているので、パネル取付用穴AHの中心と基準中心位置CHとの距離d2は、22ミリメートルである。
【0038】
図7に示すように、保持部120から第2部材200を一旦取り外した後、ガイドリブ230が嵌合するガイド溝130を異ならせて、保持部120に第2部材200を再び固定することができる。例えば、
図7に示すように、下段のガイドリブ230を上段のガイド溝130に嵌合させ、上段のガイドリブ230および中段のガイドリブ230をガイド溝130に嵌合させずに保持部120の上方に露出させることができる。本実施形態では、上下方向に4ミリメートルピッチで3列のガイド溝130が設けられているので、第2部材200の上下方向の固定位置を4ミリメートルピッチで3段階に調節できる。第2部材200の上下方向の固定位置を調節することによって、パネル取付面APである第2取付面部211の上面の上下方向の位置を4ミリメートルピッチで3段階に調節できる。
図7に示した例では、下段のガイドリブ230が上段のガイド溝130に嵌合しているので、パネル取付面APと基準取付面CPとの距離d3は、8ミリメートルである。
【0039】
本実施形態では、第1右側壁部123の後端面、第2部材200の前端面、および、第2部材200の後端面には、パネル取付面APと基準取付面CPとの距離を表示するための三角矢印と数字とが凹凸によって表されている。当該三角矢印や数字は、凹凸ではなく、印刷によって表されてもよい。当該三角矢印と数字とを用いて、パネル取付面APと基準取付面CPとの距離を確認することができる。例えば、
図7に示した例では、第1右側壁部123の後端面に表された三角矢印は、第2部材200の後端面に表された数字のうち、「8」の数字を指し示している。三角矢印の指し示す数字を読み取ることによって、パネル取付面APと基準取付面CPとの距離が8ミリメートルであることを確認できる。
【0040】
図8に示すように、保持部120から第2部材200を一旦取り外した後、第2部材200の向きを上下反転させた状態で、保持部120に第2部材200を再び固定することができる。第2部材200の向きを上下反転させた状態では、第2取付面部211の上面に代えて、上方に向けられた第3取付面部212の底面をパネル取付面APとすることができる。本実施形態では、第3取付面部212の底面と下段のガイドリブ230との上下方向の距離L4は、第2取付面部211の上面と上段のガイドリブ230との上下方向の距離L3よりも2ミリメートル長い。そのため、上下反転前に第2部材200のガイドリブ230が嵌合していたガイド溝130に、上下反転後の第2部材200のガイドリブ230を嵌合させることによって、パネル取付面APの位置を上方に2ミリメートル移動させることができる。さらに、上下反転された状態の第2部材200の上下方向の固定位置を調節することによって、パネル取付面APである第3取付面部212の底面の上下方向の位置を4ミリメートルピッチで3段階に調節できる。つまり、本実施形態では、第2部材200の上下方向の固定位置の変更と第2部材200の上下反転とによって、パネル取付用穴AHの前後方向の位置を、2ミリメートルピッチで6段階に調節できる。
図8に示した例では、第2部材200が上下反転されて下段に配置されたガイドリブ230が上段のガイド溝130に嵌合しているので、パネル取付面APと基準取付面CPとの距離d4は、10ミリメートルである。
【0041】
以上で説明した本実施形態における取付構造10によれば、前後6列で設けられた凹部140のうち、凸部240が嵌合する凹部140を前後に異ならせることによって、パネル部材30が固定されるパネル取付用穴AHの前後方向の位置を6段階で調節でき、上下3列で設けられたガイド溝130のうち、ガイドリブ230が嵌合するガイド溝130を上下に異ならせることによってパネル取付用穴AHの上下方向の位置を3段階で調節できる。さらに、本実施形態では、第2部材200の向きを前後反転させることによって、パネル取付用穴AHの前後方向の位置を12段階で調節可能にできる。第2部材200の向きを上下反転させることによって、パネル取付用穴AHの上下方向の位置を6段階で調節可能にできる。そのため、骨格部材20にパネル部材30を固定するための固定具11の形状を共通化しても、骨格部材20の形状やパネル部材30の形状の設計自由度が制限されることを抑制できる。
【0042】
また、本実施形態では、第2部材200の各取付穴201~204は、被保持部220が保持部120に保持されているときに、左右方向における第1左側壁部122の右側の壁面と第1右側壁部123の左側の壁面との中心に配置されるように設けられている。そのため、第2部材200の向きを前後反転させたときや、第2部材200の向きを上下反転させたときに、左右方向におけるパネル取付用穴AHの位置が変化することを抑制できる。
【0043】
また、本実施形態では、固定具11の第2部材200がエラストマで形成されているので、凸部240が嵌合する凹部140を異ならせやすくできる。さらに、本実施形態では、金属材料で形成された骨格部材20の線膨張係数と樹脂材料で形成されたパネル部材30の線膨張係数との差によってパネル部材30に作用する熱応力を第2部材200の弾性変形によって低減できるので、パネル部材30に歪みや割れが生じることを抑制できる。
【0044】
また、本実施形態では、パネル取付用穴AHである第2部材200の第2取付穴201には、第2取付穴201から上方に向かって突き出したカラー13が装着されている。そのため、パネル部材30をリベット14によってパネル取付面APに固定するときに、パネル部材30に設けられた貫通孔31の内壁面をカラー13の上端部に接触させることによって、第2部材200に対してパネル部材30を位置決めできる。さらに、本実施形態では、エラストマで形成された第2部材200に金属製のカラー13が装着されることによって、パネル部材30をリベット14で第2部材200に固定するときの第2部材200の変形を抑制できる。そのため、パネル部材30をリベット14で第2部材200に固定しやすくできる。
【0045】
また、本実施形態では、パネル部材30が第2部材200に固定されることによって、第2部材200に設けられた各取付穴201~204のうちのパネル取付用穴AHとして用いられる穴の周りに設けられたシールリブ250がパネル部材30に密着するので、パネル部材30とパネル取付面APとの間のシール性を高めることができる。そのため、パネル部材30の貫通孔31から侵入した雨水等が、パネル部材30とパネル取付面APとの間を通って車室内に侵入することを抑制できる。
【0046】
B.第2実施形態:
図9は、第2実施形態における取付構造10bの構成を示す断面図である。第2実施形態の取付構造10bでは、固定具11bを介して骨格部材20bにパネル部材30bが取り付けられていることが第1実施形態とは異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、第1実施形態と同じである。
【0047】
骨格部材20bは、自動車のボディシェルを構成する部材である。パネル部材30bは、例えば、ポリプロピレン(PP)や、ポリエチレンテレフタラート(PET)等の樹脂材料によって形成された内装トリムである。固定具11bの第2部材200bは、エラストマではなく、ポリアセタール(POM)で形成されている。第2部材200bには、シールリブ250が設けられていない。第2部材200bには、第2取付穴201とパネル部材30に設けられた貫通孔31とに挿入された樹脂製のクリップ15によって、パネル部材30bが固定されている。なお、本実施形態では、第2取付穴201には、
図1に示したカラー13が装着されていない。
【0048】
以上で説明した本実施形態における取付構造10bによれば、第1実施形態と同様に、固定具11bのパネル取付用穴AHの位置を前後方向に12段階に調節でき、さらに、上下方向に6段階に調節できる。そのため、骨格部材20bの形状や内装トリム等のパネル部材30bの形状の設計自由度が制限されることを抑制できる。
【0049】
C.第3実施形態:
図10は、第3実施形態における取付構造10cの構成を示す断面図である。第3実施形態の取付構造10cでは、第2実施形態と同じ固定具11bを介して骨格部材20cにパネル部材30cが取り付けられていることが第1実施形態とは異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、第1実施形態と同じである。
【0050】
骨格部材20cは、自動車のボディシェルを構成する部材である。パネル部材30cは、例えば、ポリカーボネート(PC)等の有機ガラスで形成されたルーフウィンドウである。パネル部材30cは、パネル部材30cは、ルーフウィンドウに限られず、フロントウィンドウや、リアウィンドウ、サイドウィンドウでもよい。固定具11bの第2部材200bには、樹脂製のクリップ16が第2取付穴201に装着されている。クリップ16の先端部には、接着剤によってパネル部材30cが接着されている。
【0051】
以上で説明した本実施形態における取付構造10cによれば、第1実施形態と同様に、固定具11bのパネル取付用穴AHの位置を前後方向に12段階に調節でき、さらに、上下方向に6段階に調節できる。そのため、骨格部材20cの形状やルーフウィンドウ等のパネル部材30cの形状の設計自由度が制限されることを抑制できる。特に、本実施形態では、骨格部材20cから固定具11bを取り外すことによって、ルーフウィンドウ等のパネル部材30cを骨格部材20cから取り外すことができるので、修理等のためにルーフウィンドウ等のパネル部材30cを交換する作業を容易化できる。
【0052】
D.他の実施形態:
(D1)上述した各実施形態の取付構造10~10cにおいて、固定具11,11bは、第2部材200,200bの向きを前後反転させることによって、パネル取付用穴AHの前後方向の位置を異ならせることができるように構成されている。これに対して、固定具11,11bは、第2部材200,200bの向きを前後反転させる前と後とで、パネル取付用穴AHの前後方向の位置が同じになるように構成されてもよい。例えば、
図2に示した凸部240の中心と第3取付穴202の中心との前後方向の距離L2が、凸部240の中心と第2取付穴201の中心との前後方向の距離L1と同じでもよい。
【0053】
(D2)上述した各実施形態の取付構造10~10cにおいて、固定具11,11bは、第2部材200,200bの向きを前後反転させる前と後とで、パネル取付用穴AHの左右方向の位置が変更されないように構成されている。これに対して、固定具11,11bは、第2部材200,200bの向きを前後反転させる前と後とで、パネル取付用穴AHの左右方向の位置が変更されるように構成されてもよい。
【0054】
(D3)上述した各実施形態の取付構造10~10cにおいて、固定具11,11bは、第2部材200,200bの向きを上下反転させることによって、パネル取付面APの上下方向の位置を異ならせることができるように構成されている。これに対して、固定具11,11bは、第2部材200,200bの向きを上下反転させる前と後とで、パネル取付面APの上下方向の位置が同じになるように構成されてもよい。例えば、
図4に示した第3取付面部212の底面と下段のガイドリブ230との上下方向の距離L4が、第2取付面部211の上面と上段のガイドリブ230との上下方向の距離L3と同じでもよい。
【0055】
(D4)上述した各実施形態の取付構造10~10cにおいて、固定具11,11bは、第2部材200,200bの向きを上下反転させる前と後とで、パネル取付用穴AHの左右方向の位置が変更されないように構成されている。これに対して、固定具11,11bは、第2部材200,200bの向きを上下反転させる前と後とで、パネル取付用穴AHの左右方向の位置が変更されるように構成されてもよい。
【0056】
(D5)上述した各実施形態の取付構造10~10cにおいて、固定具11,11bの第2部材200,200bは、第2取付穴201と第3取付穴202と第4取付穴203と第5取付穴204とを有している。これに対して、第2部材200,200bは、第2取付穴201と第3取付穴202と第4取付穴203と第5取付穴204とのうちの少なくとも1つを有しなくてもよい。例えば、第2部材200,200bは、第2取付穴201を有しなくてもよい。
【0057】
(D6)上述した各実施形態の取付構造10~10cにおいて、第2部材200の位置決めのための凸部240は第2部材200,200bに設けられ、凹部140は第1部材100に設けられている。これに対して、第2部材200の位置決めのための凸部240が第1部材100に設けられ、第1部材100の凸部240が嵌合する凹部140が第2部材200,200bに設けられてもよい。
【0058】
(D7)上述した各実施形態の取付構造10~10cにおいて、固定具11,11bには、凸部240と凹部140とが左右対称に設けられている。これに対して、固定具11,11bには、凸部240と凹部140とが左右非対称に設けられてもよい。例えば、第1部材100の第1左側壁部122に凸部240が設けられ、第1左側壁部122に設けられた凸部240を位置決めするための凹部140が第2部材200,200bの第2左側壁部222に設けられ、第2部材200,200bの第2右側壁部223に凸部240が設けられ、第1部材100の第1右側壁部123に凹部140が設けられてもよい。
【0059】
(D8)上述した各実施形態の取付構造10~10cにおいて、第1部材100にはガイド溝130が設けられており、第2部材200,200bには、ガイド溝130に嵌合するガイドリブ230が設けられており、ガイド溝130にガイドリブ230が嵌合することによって、第1部材100に対する第2部材200,200bのスライド移動がガイドされる。これに対して、第2部材200,200bにガイド溝130が設けられ、第2部材200,200bに設けられたガイド溝130に嵌合するガイドリブ230が第1部材100に設けられてもよい。第2部材200,200bに設けられたガイド溝130に第1部材100に設けられたガイドリブ230が嵌合することによって、第1部材100に対する第2部材200,200bのスライド移動がガイドされてもよい。
【0060】
(D9)上述した各実施形態の取付構造10~10cにおいて、第2部材200の第2左側壁部222および第2右側壁部223には、それぞれ、ガイドリブ230によって隔てられた4つの凸部240が設けられている。これに対して、第2左側壁部222および第2右側壁部223には、それぞれ、ガイドリブ230に隔てられずに、凸部240が連続的に設けられてもよい。例えば、第2左側壁部222に設けられたガイドリブ230が凸部240を挟むように前後に分割されて設けられ、第2左側壁部222の上端部から下端部まで凸部240が連続的に設けられ、第2右側壁部223に設けられたガイドリブ230が凸部240を挟むように前後に分割されて設けられ、第2右側壁部223の上端部から下端部まで凸部240が連続的に設けられてもよい。
【0061】
(D10)上述した各実施形態の取付構造10~10cでは、第1部材100の第1取付穴101と骨格部材20~20cの第1貫通孔21とにスクリュークリップ12が挿入され、骨格部材20~20cの第2貫通孔22の縁に第1部材100の鉤状部150が接触することにより、第1部材100が骨格部材20~20cに固定されている。これに対して、例えば、
図1や
図9や
図10における右側に第1部材100の位置が変更されて、第1部材100の第1取付穴101と骨格部材20~20cの第2貫通孔22とにスクリュークリップ12が挿入され、骨格部材20~20cの端部に第1部材100の鉤状部150が接触することにより、第1部材100が骨格部材20~20cに固定されてもよい。この場合、第2部材200,200bのパネル取付用穴AHの位置を異ならせることができる。
【0062】
(D11)上述した各実施形態の取付構造10~10cでは、第1部材100が固定される骨格部材20~20cの面と、第2部材200,200bに固定されるパネル部材30~30cの面とが平行に配置されており、第1部材100の第1取付面部110の底面と第2部材200のパネル取付面APとが平行になるように設けられている。これに対して、第1部材100が固定される骨格部材20~20cの面と、第2部材200,200bに固定されるパネル部材30~30cの面とが垂直に配置され、第1部材100の第1取付面部110の底面と第2部材200のパネル取付面APとが垂直になるように設けられてもよい。例えば、第1取付面部110が底面部121の前端部から下方に向けて設けられ、第1取付面部110と前壁部124とが骨格部材20~20cに接触するように第1部材100が配置されてもよい。
【0063】
(D12)上述した各実施形態の取付構造10~10cでは、第1部材100が骨格部材20~20cに固定されており、第2部材200~200bにはパネル部材30~30cが固定されている。これに対して、第2部材200~200bが骨格部材20~20cに固定され、第1部材100にパネル部材30~30cが固定されてもよい。
【0064】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0065】
10…取付構造、11…固定具、12…スクリュークリップ、13…カラー、14…リベット、15…クリップ、16…クリップ、20…骨格部材、30…パネル部材、100…第1部材、101…第1取付穴、110…第1取付面部、120…保持部、121…底面部、122…第1左側壁部、123…第1右側壁部、124…前壁部、130…ガイド溝、140…凹部、150…鉤状部、200…第2部材、201…第2取付穴、202…第3取付穴、203…第4取付穴、204…第5取付穴、211…第2取付面部、212…第3取付面部、213…隔壁部、220…被保持部、222…第2左側壁部、223…第2右側壁部、230…ガイドリブ、240…凸部、250…シールリブ、AH…パネル取付用穴、AP…パネル取付面、CH…基準中心位置、CP…基準取付面