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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】電気光学装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/80 20060101AFI20240625BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20240625BHJP
   G09G 3/3233 20160101ALI20240625BHJP
   G09G 3/3275 20160101ALI20240625BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240625BHJP
   H05B 45/60 20220101ALI20240625BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20240625BHJP
   H10K 59/00 20230101ALI20240625BHJP
【FI】
H03M1/80
G09G3/20 611F
G09G3/20 611H
G09G3/20 612D
G09G3/20 623F
G09G3/20 624B
G09G3/20 631V
G09G3/20 642A
G09G3/3233
G09G3/3275
H05B33/14 A
H05B45/60
H10K50/00
H10K59/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021074948
(22)【出願日】2021-04-27
(65)【公開番号】P2022169108
(43)【公開日】2022-11-09
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪田 岳彦
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-341125(JP,A)
【文献】特開2001-156641(JP,A)
【文献】特開2002-359559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M1/66-1/88
G09G3/20-3/38
H05B45/60
H10K50/10
H10K59/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1容量素子と、第2容量素子と、接続容量と、第1スイッチと、中継線と、を含むDA変換回路と、
電気光学素子と、
前記DA変換回路と前記電気光学素子とを電気的に接続するデータ線と、を備え、
前記第1スイッチは、前記接続容量の一端と前記接続容量の他端との間に設けられ、
前記中継線は、前記第1容量素子の第1端、前記第2容量素子の第1端、および、前記接続容量の一端に電気的に接続され、
第1期間では、
前記第1スイッチがオンまたはオフの一方の状態で、
前記第1容量素子の第2端に、第1ビットに対応した電圧が印加され、
前記第2容量素子の第2端に、第2ビットに対応した電圧が印加され、
前記第1期間に続く第2期間では、
前記第1スイッチがオンまたはオフの他方の状態で、
前記第1容量素子の第2端に、前記第1ビットおよび第3ビットに対応した電圧が印加され、
前記第2容量素子の第2端に、前記第2ビットおよび第4ビットに対応した電圧が印加される、
電気光学装置。
【請求項2】
前記第1ビットの重みが前記第3ビットの重みよりも大きく、
前記第2ビットの重みが前記第4ビットの重みよりも大きく、
前記第1スイッチは、前記第1期間でオン状態であり、前記第2期間でオフ状態である、
請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記第1期間よりも前の初期化期間では、
前記第1容量素子の第1端および前記第2容量素子の第1端に所定電圧が印加され、
前記第1容量素子の第2端および前記第2容量素子の第2端に第1電圧が印加され、
前記第1期間では、
前記第1容量素子の第2端に、前記第1ビットに基づいて前記第1電圧または第2電圧が印加され、
前記第2容量素子の第2端に、前記第2ビットに基づいて前記第1電圧または前記第2電圧が印加され、
前記第2期間では、
前記第1容量素子の第2端に、前記第1ビットおよび前記第3ビットに基づいて、前記第1電圧、前記第2電圧または第3電圧のいずれかが印加され、
前記第2容量素子の第2端に、前記第2ビットおよび前記第4ビットに基づいて、前記第1電圧、前記第2電圧または前記第3電圧のいずれかが印加される、
請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記中継線と前記所定電圧の給電線との間に設けられ、前記初期化期間でオン状態になる第2スイッチを含む、
請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記第2容量素子の容量サイズは、前記第1容量素子の容量サイズの2倍である、
請求項1乃至4のいずれかに記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記第1期間では、
前記第1ビットに基づいて前記第1電圧または前記第2電圧を選択し、
前記第2期間では、
前記第1ビットおよび前記第3ビットに基づいて、前記第1電圧、前記第2電圧または前記第3電圧を選択して、前記第1容量素子の第2端に印加する電圧選択回路を含む、
請求項3または4に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記電圧選択回路は、
前記第1期間で供給された第1ビットを記憶するメモリ回路を有し、
前記第2期間では、
前記メモリ回路に記憶された第1ビット、および、当該第2期間で供給された第3ビットに基づいて、前記第1電圧、前記第2電圧または前記第3電圧を選択する、
請求項6に記載の電気光学装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の電気光学装置を有する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
表示素子として例えばOLEDを用いた電気光学装置が知られている。OLEDは、Organic Light Emitting Diodeの略である。電気光学装置では、画素回路が、表示画像の画素に対応して設けられる。当該画素回路には、表示素子および当該表示素子に電流を供給するトランジスターが含まれる。表示素子はトランジスターによって供給された電流に応じた輝度で発光する。
【0003】
上記画素回路においてトランジスターのゲートノードには、輝度に応じた電圧がデータ線を介して印加される。より具体的には、輝度を指定するデータがDA変換回路によってアナログの電圧に変換され、当該変換された電圧がデータ線に印加される。このようなDA変換回路としては、例えば各ビットに対応してスイッチおよび容量素子の組を設けて、各ビットに応じて容量素子の充放電をスイッチにより制御する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-341125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術によれば、各ビットに対応して容量素子が必要になるので、構成の簡略化や省スペース化を図ることが困難である、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るDA変換回路は、第1容量素子と、第2容量素子と、接続容量と、第1スイッチと、中継線と、を含み、前記第1スイッチは、前記接続容量の一端および当該接続容量の他端の間に設けられ、前記接続容量の他端が出力端であり、第1期間では、前記第1スイッチがオンまたはオフの一方の状態で、前記第1容量素子の一端に、第1ビットに対応した電圧が印加され、前記第2容量素子の一端に、第2ビットに対応した電圧が印加され、前記第1期間の後の第2期間では、前記第1スイッチがオンまたはオフの他方の状態で、前記第1容量素子の一端に、前記第1ビットおよび第3ビットに対応した電圧が印加され、前記第2容量素子の一端に、前記第2ビットおよび第4ビットに対応した電圧が印加され、前記中継線は、第1容量素子の他端、第2容量素子の他端、および、前記接続容量の一端に電気的に接続され、前記第1期間よりも前における前記出力端の電位を基準としたアナログ信号が、前記第2期間で当該出力端から出力される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係るDA変換回路の回路図である。
図2】実施形態に係るDA変換回路の回路図である。
図3】実施形態に係るDA変換回路の回路図である。
図4】DA変換回路を適用した電気光学装置を示す斜視図である。
図5】電気光学装置の電気的な構成を示すブロック図である。
図6】電気光学装置における画素回路の回路図である。
図7】電気光学装置におけるDA変換回路の回路図である。
図8】電気光学装置におけるDA変換回路の等価回路を示す図である。
図9】DA変換回路における電圧選択回路の回路図である。
図10】電圧選択回路の動作を示す図表である。
図11】電気光学装置の動作を示すタイミングチャートである。
図12】電気光学装置の動作を示すタイミングチャートである。
図13】電気光学装置の動作を説明するための図である。
図14】電気光学装置の動作を説明するための図である。
図15】電気光学装置の動作を説明するための図である。
図16】電気光学装置の動作を説明するための図である。
図17】電気光学装置の動作を説明するための図である。
図18】電気光学装置を用いたヘッドマウントディスプレイを示す斜視図である。
図19】ヘッドマウントディスプレイの光学構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
なお、各図において、各部の寸法および縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0009】
[DA変換回路]
図1は、実施形態に係るDA変換回路500の回路図である。この例においてDA変換回路500は、ビットD0~D3の4ビットをアナログの電圧に変換する。なお、ビットD0~D3では、最下位のビットがD0とされ、当該ビットD0から順にD1、D2の重みが増して、最上位のビットがD3とされる。
【0010】
DA変換回路500は、容量素子Ca、Cb、Cser、スイッチRswおよびCstswを含む。容量素子Caの容量サイズを「1」とした場合に、容量素子Cbの容量サイズは「2」であり、容量素子Cserの容量サイズは「1」である。
【0011】
容量素子Caの一端には信号Cainが供給され、容量素子Cbの一端には信号Cbinが供給される。容量素子Caの他端および容量素子Cbの他端は、容量素子Cserの一端に接続される。なお、容量素子Caの他端および容量素子Cbの他端と、容量素子Cserの一端とに電気的に接続される配線が中継線14bとされる。
本説明において「電気的に接続された」とは、2以上の要素間の直接的または間接的な接続または結合を意味し、例えば半導体基板において2以上の要素間が直接的ではなくても、異なる配線層およびコンタクトホールを介して接続されることも含む。
【0012】
スイッチRswは、電圧Vrstが印加された給電線と中継線14bとの間に設けられる。また、スイッチCstswの一端は容量素子Cserの一端に接続され、スイッチCstswの他端は容量素子Cserの他端に接続される。すなわち、スイッチCstswのオン状態により容量素子Cserの両端が短絡し、スイッチCstswのオフ状態により、容量素子Cserの両端が解放される。
スイッチまたはトランジスターのオン状態とは、スイッチの両端、または、トランジスターにおけるソースノード・ドレインノードの間が電気的に閉じて低インピーダンス状態になることをいう。また、スイッチまたはトランジスターのオフ状態とは、スイッチの両端、または、ソースノード・ドレインノードの間が電気的に開いて高インピーダンス状態になることをいう。
容量素子Cserの他端が、DA変換回路500の出力端Outである。
【0013】
DA変換回路500としての動作は、初期化期間、第1期間および第2期間に分けられる。初期化期間は、アナログの電圧に変換するに際してDA変換回路500の各部を初期化するための期間である。第1期間は、データの4ビットのうち、上位のビットD2およびD3をアナログの電圧に変換するための期間であり、第2期間は、下位のビットD0およびD1をアナログの電圧に変換するための期間である。
【0014】
初期化期間では、図1に示されるようにスイッチRswおよびCstswがオン状態になる。また、初期化期間では、信号CainおよびCbinが電圧VLである。したがって、初期化期間では、出力端Outは電圧Vrstになり、容量素子CaおよびCbに電圧(Vrst-VL)が充電され、容量素子Cserに蓄積された電荷がゼロにリセットされる。
【0015】
なお、後述する電気光学装置で説明するように、初期化は必ずしもスイッチRswのオン状態により実行される必要はない。例えば、容量素子Caの一端および容量素子Cbの一端に電圧VLを印加した状態で、スイッチCstswをオン状態にさせるとともに、出力端Outに外部から所定電圧を印加する構成としてもよい。
要は、次の第1期間よりも前に、容量素子Caの一端および容量素子Cbの一端と、中継線14bとが異なる電圧に保たれ、出力端Outが当該電圧または異なる電圧に保たれていればよい。
【0016】
第1期間では、図2に示されるように、スイッチRswがオフ状態にされ、スイッチCstswがオン状態を維持する。
また、第1期間において信号Cainの電圧は、ビットD2が“0”であれば電圧VLを維持し、ビットD2が“1”であれば電圧VMに変化する。
なお、電圧VL、VMについては、
VL<VM
という関係にある。なお、説明の便宜上、
ΔV=VM-VL
とする。
【0017】
また、第1期間において信号Cbinの電圧は、ビットD3が“0”であれば電圧VLを維持し、ビットD3が“1”であれば電圧VMに変化する。
第1期間ではスイッチCstswがオン状態であるので、容量素子Caの他端および容量素子Cbの他端である中継線14bは、出力端Outと直結した状態になる。
ビットD2が“0”であれば容量素子Caの一端は電圧VLに維持されるので、容量素子Caでは放電が発生しない。このため、容量素子Caは、出力端Outの電圧上昇には寄与しない。ビットD2が“1”であれば容量素子Caの一端は電圧VLから電圧VMに電圧ΔVだけ上昇するので、容量素子Caでは放電が発生し、出力端Outの電圧を上昇させる。
ビットD3が“0”であれば容量素子Cbの一端は電圧VLに維持されるので、容量素子Cbでは放電が発生しない。このため、容量素子Cbは、出力端Outの電圧上昇には寄与しない。ビットD3が“1”であれば容量素子Cbの一端は電圧VLから電圧VMに電圧ΔVだけ上昇するので、容量素子Cbでは放電が発生し、出力端Outの電圧を上昇させる。
【0018】
例えばビットD2が“1”であり、ビットD3が“0”である場合、容量素子Caで放電が発生し、容量素子Cbでは放電が発生しない。この場合において、容量素子Caの放電のみによる出力端Outの電圧上昇分を仮に「4」とする。
逆に、ビットD2が“0”であり、ビットD3が“1”である場合、容量素子Caでは放電が発生せず、容量素子Cbでのみ放電が発生する。容量素子Ca、Cbの容量サイズ比は、1:2であるから、容量素子Cbのみに放電が発生した場合における出力端Outの電圧上昇分は、容量素子Caのみに放電が発生した場合と比較して、倍の「8」になる。
【0019】
なお、第1期間においてビットD2が“0”であり、ビットD3が“0”であれば、容量素子CaおよびCbの双方で放電が発生しないので、出力端Outの電圧上昇分は「0」になる。また、第1期間においてビットD2が“1”であり、ビットD3が“1”であれば、容量素子CaおよびCbの双方で放電が発生するので、出力端Outの電圧上昇分は、「4」および「8」を合算した「12」になる。
このように、第1期間では、上位のビットD2およびD3に応じて、出力端Outが「0」、「4」、「8」または「12」のいずれかで電圧上昇することになる。
【0020】
次に、第2期間では、図3に示されるようにスイッチRswがオフ状態を維持し、スイッチCstswがオフ状態に切り替わる。
また、第2期間において信号Cainは、ビットD0が“0”である場合に、第1期間でビットD2が“0”であったならば、電圧VLを維持し、ビットD0が“0”である場合に、第1期間でビットD2が“1”であったならば、電圧VMを維持する。また、信号Cainは、ビットD0が“1”である場合に、第1期間でビットD2が“0”であったならば、電圧VLから電圧VMに切り替わり、ビットD0が“1”である場合に、第1期間でビットD2が“1”であったならば、電圧VMから電圧VHに切り替わる。
すなわち、第2期間において信号Cainの電圧は、ビットD0が“0”であれば、第1期間で設定された信号Cainの電圧から変化せず、ビットD0が“1”であれば、第1期間で設定された信号Cainの電圧から電圧ΔVだけ変化する。
なお、電圧VHについては、
VL<VM<VH、
という関係であって、
VH-VM=VM-VL(=ΔV)
という関係にある。
【0021】
第2期間において信号Cbinは、ビットD1が“0”である場合に、第1期間でビットD3が“0”であったならば、電圧VLを維持し、第2期間においてビットD1が“0”である場合に、第1期間でビットD3が“1”であったならば、電圧VMを維持する。また、第2期間において信号Cbinは、ビットD1が“1”である場合に、第1期間でビットD3が“0”であったならば、電圧VLから電圧VMに切り替わり、第2期間においてビットD1が“1”である場合に、第1期間でビットD3が“1”であれば、電圧VMから電圧VHに切り替わる。
すなわち、信号Cbinの電圧は、第2期間においてビットD1が“0”であれば、第1期間で設定された信号Cbinの電圧から変化せず、第2期間においてビットD0が“1”であれば、第1期間で設定された信号Cbinの電圧から電圧ΔVだけ変化する。
【0022】
第2期間では、第1期間と比較してスイッチCstswがオフ状態であるので、中継線14bは、出力端Outとは容量素子Cserを介した状態になる。このため、中継線14bの電圧変化は、容量素子Ca、CbおよびCserにより定まる比で圧縮されて、出力端Outの電圧を変化される。
なお、この比を圧縮比と呼ぶ。圧縮比は、この例でいえば、
Cser/(Cser+Ca+Cb)
であり、具体的には1/4(=1/(1+1+2))である。
【0023】
第2期間においてビットD0が“0”であれば、信号Cainの電圧が維持されるので、容量素子Caでは放電が発生せず、出力端Outの電圧上昇には寄与しない。
ビットD0が“1”であれば容量素子Caの一端は電圧ΔVだけ上昇するので、容量素子Caでは放電が発生し、出力端Outの電圧を上昇させる。ただし、第2期間では圧縮比の1/4で圧縮されて、出力端Outの電圧を上昇させる。
このため、第2期間において、容量素子Caの放電のみによる出力端Outの電圧上昇分は「1」になる。また、第2期間において、容量素子Cbの放電のみによる出力端Outの電圧上昇分は「2」になる。
【0024】
なお、第2期間においてビットD0が“0”であり、ビットD1が“0”であれば、容量素子CaおよびCbの双方で放電が発生しないので、出力端Outの電圧上昇分は「0」になる。また、第2期間においてビットD0が“1”であり、ビットD1が“1”であれば、容量素子CaおよびCbの双方で放電が発生するので、出力端Outの電圧上昇分は、「1」および「2」を合算した「3」になる。
このように、第2期間では、出力端Outが、第1期間における電圧から、下位のビットD0およびD1に応じて、「0」、「1」、「2」または「3」のいずれかで電圧上昇することになる。
【0025】
DA変換回路500によれば、出力端Outを、まず第1期間において、電圧Vrstから上位のビットD2およびD3の2ビットに応じて「0」、「4」、「8」または「12」のいずれかで電圧を上昇させた状態にし、次の第2期間において、第1期間の電圧状態から、下位のビットD0およびD1の2ビットに応じて「0」、「1」、「2」または「3」のいずれかの分だけ電圧を上昇させる。
したがって、DA変換回路500によれば、第1期間および第2期間を通してみると、出力端Outを、電圧Vrstから、ビットD0~D3の4ビットに応じて「0」~「15」の16段階のいずれかに変化する。
【0026】
出力端Outにおける電位であって、「0」~「15」における各段階での電位差は、ΔVおよび容量素子C0、C1の容量サイズで設定可能である。また、容量素子C0、C1およびCserの容量サイズの比については、出力端Outから出力される電圧特性、具体的には、「0」~「15」の16段階における電圧の線形性が保たれるのであれば、ある程度の誤差が許容される。
【0027】
この例では、出力端Outを、第1期間でスイッチCstswをオン状態にさせて、上位のビットD2よびD3に応じた電圧とし、第2期間でスイッチCstswをオフ状態にさせて、下位のビットD0およびD1に応じた電圧とした。これとは逆に、出力端Outを、第1期間でスイッチCstswをオフ状態にさせて、下位のビットD0およびD1に応じた電圧とし、第2期間でスイッチCstswをオン状態にさせて、上位のビットD2よびD3に応じた電圧としてもよい。
【0028】
第1期間でスイッチCstswをオフ状態にさせる場合には、容量素子Caの一端を、ビットD0が“0”であれば電圧VLとし、ビットD0が“1”であれば電圧VMとし、容量素子Cbの一端を、ビットD1が“0”であれば電圧VLとし、ビットD1が“1”であれば電圧VMとすればよい。
第2期間でスイッチCstswをオン状態にさせる場合には、容量素子Caの一端を、ビットD2が“0”であって、第1期間でビットD0が“0”であったならば電圧VLとし、ビットD2が“0”であって、第1期間でビットD0が“1”であったならば電圧VMとすればよい。また、第2期間で容量素子Caの一端を、ビットD2が“1”であって、第1期間でビットD0が“0”であったならば電圧VMとし、ビットD2が“1”であって、第1期間でビットD0が“1”であったならば電圧VHとすればよい。
第2期間でスイッチCstswをオン状態させる場合には、容量素子Cbの一端を、ビットD3が“0”であって、第1期間でビットD1が“0”であったならば電圧VLとし、ビットD3が“0”であって、第1期間でビットD1が“1”であったならば電圧VMとすればよい。また、第2期間で容量素子Cbの一端を、ビットD3が“1”であって、第1期間でビットD1が“0”であったならば電圧VMとし、ビットD3が“1”であって、第1期間でビットD1が“1”であったならば電圧VHとすればよい。
【0029】
すなわち、出力端Outを、重みの大きなビットD2およびD3に応じた電圧にする場合には、圧縮が機能しないようにスイッチCstswをオン状態にし、重みの小さなビットD0およびD1に応じた電圧にする場合には、圧縮が機能するようにスイッチCstswをオフ状態にすればよい。
【0030】
なお、容量素子Caが第1容量素子の一例であり、容量素子Cbが第2容量素子の一例であり、容量素子Cserが接続容量の一例である。容量素子Caの一端が第1容量素子の第2端の一例であり、容量素子Caの他端が第1容量素子の第1端の一例である。容量素子Cbの一端が第2容量素子の第2端の一例であり、容量素子Cbの他端が第2容量素子の第1端の一例である。
また、スイッチCstswが第1スイッチの一例であり、スイッチRswが第2スイッチの一例である。ビットD2が第1ビットの一例であり、ビットD3が第2ビットの一例であり、ビットD0が第3ビットの一例であり、ビットD1が第4ビットの一例である。
【0031】
DA変換回路500において、ビットD0~D3の変換に要する容量素子は、Ca、CbおよびCserで済む。詳細には、DA変換回路500において、必要となる容量素子は、容量素子Cserを除けば、ビット数の半分の容量素子Ca、Cbで済む。すなわち、本実施形態では、ビット数よりも少ない容量素子によって、当該ビットをアナログの電圧に変化することが可能である。
より具体的には、後述するように例えば10ビットの変換例でいえば、上記特許文献1に記載の技術では、各ビットに応じた10個の容量素子と1個の接合容量との計11個の容量素子が必要になる。これに対し本実施形態に係るDA変換回路500によれば、ビット数の半分の5個の容量素子と1個の容量素子で済むので、必要となる容量素子の個数がほぼ半減する。
【0032】
次に、実施形態に係るDA変換回路500を適用した電気光学装置について説明する。なお、図1に示されるDA変換回路500は、説明のために4ビットの変換例であったが、電気光学装置に適応したDA変換回路500は、10ビットの変換例である。
【0033】
図4は、10ビットのDA変換回路500を適用した電気光学装置10を示す斜視図である。電気光学装置10は、例えばヘッドマウントディスプレイなどにおいて画像を表示するマイクロ・ディスプレイ・パネルである。電気光学装置10は、複数の画素回路や当該画素回路を駆動する駆動回路などが半導体基板に形成される。半導体基板としては、典型的にはシリコン基板であるが、他の半導体基板であってもよい。
【0034】
電気光学装置10は、表示領域100で開口する枠状のケース192に収納される。電気光学装置10には、FPC基板194の一端に接続される。なお、FPCとは、Flexible Printed Circuitsの略称である。FPC基板194の他端には、図示省略されたホスト装置を接続するための複数の端子196が設けられる。複数の端子196がホスト装置に接続されると、電気光学装置10には、当該ホスト装置から、FPC基板194を介して、映像データや同期信号などが供給される。
【0035】
図5は、電気光学装置10の電気的な構成を示すブロック図である。図に示されるように、電気光学装置10は、電源回路15、制御回路30、データ信号出力回路50、初期化回路60、表示領域100および走査線駆動回路120に大別される。
表示領域100では、m行の走査線12が図においてX方向に沿って設けられ、n列のデータ線14が、図においてY方向に沿って、かつ、各走査線12と互いに電気的に絶縁を保つように設けられる。なお、m、nは、2以上の整数である。
【0036】
表示領域100には、画素回路110が、m行の走査線12と、n列のデータ線14との交差に対応して設けられる。すなわち、画素回路110は、図において縦m行×横n列でマトリクス状に配列する。マトリクス配列のうち、行(ロウ)を区別するために、図において上から順に1、2、3、…、(m-1)、m行目と呼ぶ場合がある。同様にマトリクスの列(カラム)を区別するために、図において左から順に1、2、3、…、(n-1)、n列目と呼ぶ場合がある。
なお、走査線12を一般化して説明するために、1以上m以下の整数iを用いる。同様に、データ線14を一般化して説明するために、1以上n以下の整数jを用いる。
【0037】
制御回路30は、ホスト装置から供給される映像データVidや同期信号Syncに基づいて各部を制御する。映像データVidは、表示すべき画像における画素の階調レベルを例えば3原色毎に8ビットで指定する。
同期信号Syncには、映像データVidの垂直走査開始を指示する垂直同期信号や、水平走査開始を指示する水平同期信号、および、映像データの1画素分のタイミングを示すドットクロック信号が含まれる。
【0038】
電気光学装置10では、表示すべき画像の画素と、表示領域100における画素回路110とは一対一に対応する。一方で、階調レベルで示される明るさの特性と、当該画素に対応する画素回路110の輝度、詳細には、画素回路110に含まれるOLEDの輝度の特性とは、一致しない。
このため、制御回路30は、映像データVidで指定される階調レベルを、当該階調レベルに対応した輝度でOLEDを発光させるために、映像データVidの8ビットを、例えば10ビットにアップコンバージョンして、OLEDの輝度を指定する映像データVdataとして出力する。
【0039】
このようなアップコンバージョンには、入力の映像データVidの8ビットと、出力の映像データVdataの10ビットとの対応関係を予め記憶したルックアップテーブルが用いられる。
また、制御回路30は、各部を制御するために各種の制御信号を生成するが、詳細については後述する。
【0040】
走査線駆動回路120は、制御回路30による制御にしたがって、m行n列で配列する画素回路110を1行毎に駆動するための回路であり、各種の信号を出力する。例えば、走査線駆動回路120は、1、2、3、…、(m-1)、m行目の走査線12に、順に走査信号/Gwr(1)、/Gwr(2)、…、/Gwr(m-1)、/Gwr(m)を供給する。一般的には、i行目の走査線12に供給される走査信号が/Gwr(i)と表記される。
なお、走査線駆動回路120は、走査信号/Gwr(1)~/Gwr(m)の他にも各種の制御信号を出力するが、詳細については後述する。
【0041】
データ信号出力回路50は、走査線駆動回路120によって選択された行に位置する画素回路110に向けて、輝度に応じた電圧のデータ信号を出力する回路である。
詳細には、データ信号出力回路50は、選択回路群52、第1ラッチ回路群54、第2ラッチ回路群56、および、n個のDA変換回路500を含む。選択回路群52は、n列の各々に対応した選択回路520を含み、第1ラッチ回路群54は、n列の各々に対応した第1ラッチ回路L1を含み、第2ラッチ回路群56は、n列の各々に対応した第2ラッチ回路L2を含む。
【0042】
すなわち、各例に対応して、選択回路520、第1ラッチ回路L1、第2ラッチ回路L2およびDA変換回路500の組が設けられる。
ここで、j列目の選択回路520は、制御回路30から出力される映像データVdataのうち、j列目の映像データの選択をj列目の第1ラッチ回路L1に指示し、j列目の第1ラッチ回路L1は、当該指示にしたがって映像データVdataをラッチする。
j列目の第2ラッチ回路L2は、j列目の第1ラッチ回路L1によりラッチされた映像データVdataの10ビットを、制御回路30による制御にしたがって2つの期間に分けて時分割にて出力する。
なお、詳細について後述するが、j列目の第2ラッチ回路L2は、j列目の第1ラッチ回路L1によりラッチされた映像データVdataの10ビットのうち、第1書込期間に上位の5ビットを出力し、第2書込期間に下位の5ビットを出力する。
【0043】
初期化回路60は、データ線14に一対一に対応したトランジスター66の集合体である。j列目に対応するトランジスター66の一端は電圧Viniの給電線に接続され、トランジスター66の他端は当該j列目のデータ線14に接続される。また、各列におけるトランジスター62のゲートノードには、制御回路30による制御信号/Giniが共通に供給される。
【0044】
1、2、…、(n-1)、n列目におけるデータ線14の電圧は、順にVd(1)、Vd(2)、…、Vd(n-1)、Vd(n)と表記される。一般的には、j列目におけるデータ線14の電圧はVd(j)と表記される。
【0045】
電源回路15は、電気光学装置10で用いられる各種の電圧を生成する。各種の電圧としては、走査線駆動回路120およびデータ信号出力回路50における電源電圧や、電圧Vel、Vini、Vorst、Vrst、VL、VM、VHなどが挙げられる。
【0046】
図6は、画素回路110を示す回路図である。m行n列で配列する画素回路110は電気的にみれば互いに同一である。このため、画素回路110については、i行j列に位置する画素回路110で代表させて説明する。
【0047】
図に示されるように、画素回路110は、OLED130と、p型のトランジスター121~125と、容量素子140とを含む。トランジスター121~125は、例えばMOS型である。なお、MOSとは、Metal-Oxide-Semiconductor field-effect transistorの略称である。
また、i行目の画素回路110には、走査信号/Gwr(i)のほか、制御信号/Gel(i)、/Gcmp(i)、/Gorst(i)が、走査線駆動回路120から供給される。
【0048】
制御信号/Gel(i)とは、1、2、…、(m-1)、m行目に対応して順に供給される制御信号/Gel(1)、/Gel(2)、…、/Gel(m-1)、/Gel(m)を一般化して表記したものである。同様に、制御信号/Gcmp(i)は、1、2、…、(m-1)、m行目に対応して順に供給される制御信号/Gcmp(1)、/Gcmp(2)、…、/Gcmp(m-1)、/Gcmp(m)を一般化して表記したものである。制御信号/Gorst(i)についても同様であり、1、2、…、(m-1)、m行目に対応して順に供給される制御信号/Gorst(1)、/Gorst(2)、…、/Gorst(m-1)、/Gorst(m)を一般化して表記したものである。
【0049】
OLED130は、画素電極131と共通電極133とで発光機能層132を挟持した発光素子である。画素電極131はアノードとして機能し、共通電極133はカソードとして機能する。なお、共通電極133は光透過性を有する。
OLED130において、アノードからカソードに向かって電流が流れると、アノードから注入された正孔とカソードから注入された電子とが発光機能層132で再結合して励起子が生成され、白色光が発生する。
【0050】
カラー表示の場合、発生した白色光が、例えば図示省略された反射膜とハーフミラーとで構成された光共振器にて共振し、R(赤)、G(緑)、B(青)のいずれかの色に対応して設定された共振波長で出射する。光共振器から光の出射側には当該色に対応したカラーフィルターが設けられる。したがって、OLED130からの出射光は、光共振器およびカラーフィルターによる着色を経て、観察者に視認される。
なお、光共振器は図示省略されている。また、電気光学装置10が単に明暗のみの単色画像を表示する場合には、上記カラーフィルターが省略される。
【0051】
i行j列における画素回路110のトランジスター121にあっては、ゲートノードgがトランジスター122のドレインノードに接続され、ソースノードsが電圧Velの給電線116に接続され、ドレインノードdがトランジスター123のソースノードおよびトランジスター124のソースノードに接続される。容量素子140にあっては、一端がトランジスター121のゲートノードgに接続され、他端が給電線116に接続される。このため、容量素子140は、トランジスター121におけるゲートノードgおよびソースノードsの間の電圧を保持する。
なお、容量素子140の他端は、給電線116以外であっても、電圧がほぼ一定に保たれた他の給電線に接続されてもよい。
【0052】
容量素子140として、例えば、トランジスターの半導体層とゲート電極層とでトランジスターのゲート絶縁層を挟持することによって形成される、いわゆるMOS容量が用いられる。なお、容量素子140としては、トランジスター121のゲートノードgの寄生容量を用いてもよいし、半導体基板において互いに異なる導電層で絶縁層を挟持することによって形成される、いわゆるメタル容量を用いてもよい。
【0053】
i行j列における画素回路110のトランジスター122にあっては、ゲートノードがi行目の走査線12に接続され、ソースノードが当該j列目のデータ線14に接続される。i行j列における画素回路110のトランジスター123にあっては、ゲートノードに制御信号/Gcmp(i)が供給され、ドレインノードが当該j列目のデータ線14に接続される。i行j列における画素回路110のトランジスター124にあっては、ゲートノードに制御信号/Gel(i)が供給され、ドレインノードがOLED130のアノードである画素電極131およびトランジスター125のドレインノードに接続される。
i行j列における画素回路110のトランジスター125にあっては、ゲートノードに制御信号/Gorst(i)が供給され、ソースノードが電圧Vorstの給電線に接続される。
【0054】
なお、電圧Vorstは、例えば電圧ゼロの基準である電位Gnd、または、電位Gndに近い低位の電圧である。具体的には、電圧Vorstは、OLED130における画素電極131に印加された場合に、当該OLED130に電流が流れない程度の電圧である。また、OLED130のカソードとして機能する共通電極133には、電圧Vctが印加される。
【0055】
図7は、j列目に対応するDA変換回路500を示す回路図である。
j列目のDA変換回路500には、映像データVdataがj列目の第2ラッチ回路L2から供給され、制御信号Enb0~Enb4、制御信号/Cst、/Rst、/Upbが制御回路30から供給されるとともに、電圧Vrst、VL、VM、VHが電源回路15から給電される。
なお、図7では電圧VMが異なる2本の給電線により給電されるが、便宜的なものである。後述する図9においても同様である。
【0056】
映像データVdataの10ビットでは、最下位のビットがD0とされ、当該ビットD0から順にD1、D2、…、の重みが増して、最上位のビットがD9とされる。
DA変換回路500としての動作としては、上述したように初期化期間、第1期間および第2期間に分けられるが、第1期間については、電気光学装置10の動作として第1書込期間として説明し、第2期間については、電気光学装置10の動作として第2書込期間として説明する。
【0057】
初期化期間は、映像データVdataをアナログに変換するに際してDA変換回路500の初期化を実行するための期間である。第1書込期間は、映像データVdataの10ビットのうち、上位のビットD5~D9をアナログの電圧に変換するための期間であり、第2書込期間は、ビットD5~D9をアナログの電圧に変換するための期間である。
【0058】
第2ラッチ回路L2から、第1書込期間では上位のビットD5~D9が供給され、第2書込期間では下位のビットD0~D4が供給される。すなわち、DA変換回路500に、映像データVdataの10ビットのうち、上位のビットD5~D9と、下位のビットD0~D4とが時分割に供給される。
このような時分割の供給において、ビットD0、D5は、同じ配線を経由する。図において、D0/D5という表記は、第1期間においてビットD5が供給され、第2期間においてビットD0が供給されるので、ビットD0またはD5という意味である。D1/D6、D2/D7、D3/D8、D4/D9という表記についても、D0/D5の表記と同様である。
【0059】
制御信号/Upbは、各列のDA変換回路500に対し、初期化期間および第1書込期間であることを通知する信号である。
制御信号Enb0~Enb4は、順にビットD0/D5、D1/D6、D2/D7、D3/D8、D4/D9の取り込みタイミングを指定する信号である。
【0060】
DA変換回路500は、容量素子C0~C4、Cser、スイッチRsw、Cstswおよび電圧選択回路510~514を含む。容量素子C0~C4と電圧選択回路510~514とは、ビットに対して次のように対をなす。詳細には、ビットD0/D5に対応して電圧選択回路510と容量素子C0とが対をなし、ビットD1/D6に対応して電圧選択回路511と容量素子C1とが対をなし、以下同様にして、ビットD4/D9に対応して電圧選択回路514と容量素子C4とが対をなす。
なお、容量素子C0~C4における容量サイズの比は、容量素子C0の容量サイズを「1」とした場合に、順に1:2:4:8:16である。容量素子Cserの容量サイズは、先の例と同じ「1」である。
【0061】
電圧選択回路510は、制御信号/Upbで指定される期間において、ビットD0またはD5に対応して電圧VL、VM、VHのいずれかを選択し、当該選択した電圧を容量素子C0の一端に印加する。
他の電圧選択回路511~514についても、入力信号のビットD1/D6、D2/D7、D3/D8、D4/D9と、制御信号Enb1~Enb4とがこの順で異なる以外、電圧選択回路510と同様な構成である。
【0062】
容量素子C0~C4の他端は、容量素子Cserの一端に共通接続され、容量素子Cserの他端はj列目のデータ線14に接続される。なお、先の例でも説明したように、容量素子C0~C4の他端と容量素子Cserの一端とが中継線14bによって電気的に接続される。
【0063】
スイッチRswは、電圧Vrstが印加された給電線と中継線14bとの間で、制御信号/Rstにしたがってオン状態またはオフ状態になる。詳細には、スイッチRswは、制御信号/RstがLレベルであればオン状態になり、制御信号/RstがHレベルであればオフ状態になる。
スイッチRswは、制御信号/Rstの否定信号を出力するNOT回路Lg1と、トランスミッションゲートTg1とで構成されるのが好ましい。当該トランスミッションゲートTg1は、NOT回路Lg1から出力される否定信号がゲートノードに供給されるn型のトランジスターと、制御信号/Rstがゲートノードに供給されるp型のトランジスターと、を組み合わせたアナログスイッチである。
スイッチCstswは、容量素子Cserの両端、すなわち中継線14bおよびデータ線14の間で、制御信号/Cstにしたがってオン状態またはオフ状態になる。詳細には、スイッチCstswは、制御信号/CstがLレベルであればオン状態になり、制御信号/CstがHレベルであればオフ状態になる。スイッチCstswは、制御信号/Cstの否定信号を出力するNOT回路Lg2と、トランスミッションゲートTg2と、で構成されるのが好ましい。
また、電気光学装置10において、DA変換回路500の出力端Outはデータ線14である。
【0064】
電圧選択回路510~514について、容量素子C0に対応する電圧選択回路510を例にとって説明する。
電圧選択回路510は、AND回路DsとレベルシフタLsとセレクタSelとを含む。
このうち、AND回路Dsは、j列目の第2ラッチ回路L2から出力される映像データのうち、ビットD0/D5と、制御信号Enb0との論理積信号を出力する。AND回路Dsは、実際には、ビットD0/D5と制御信号Enb0との否定論理積信号を出力するNAND回路Lg3と、否定論理積信号の否定信号を出力するNOT回路Lg4と、により構成される。
【0065】
レベルシフタLsは、AND回路Dsにより出力される論理積信号を、高論理振幅に変換し、信号Sel_inとして出力端Outから出力する。
【0066】
セレクタSelは、レベルシフタLsから出力される信号Sel_inおよび制御回路30から出力される制御信号/Upbに基づいて、電圧VL、VM、VHのいずれかを選択し、当該選択した電圧を容量素子C0の一端に印加する。セレクタSelにおける電圧VL、VM、VHの選択について説明すると、次の通りである。
詳細には、第1に、セレクタSelは、初期化期間では、電圧VLを選択する。
第2に、セレクタSelは、第1書込期間においてビットD5が“0”であれば電圧VLを選択し、ビットD5が“1”であれば電圧VMを選択する。
第3に、セレクタSelは、第2書込期間においてビットD0が“0”である場合に、先の第1書込期間におけるビットD5が“0”であったならば、電圧VLを維持し、第2書込期間においてビットD0が“0”である場合に、先の第1書込期間におけるビットD5が“1”であったならば、電圧VMを維持する。また、セレクタSelは、第2書込期間においてビットD0が“1”である場合に、先の第1書込期間におけるビットD5が“0”であったならば、電圧VLから電圧VMに切り替え、第2書込期間においてビットD0が“1”である場合に、先の第1書込期間におけるビットD5が“1”であったならば、電圧VMから電圧VHに切り替える。
なお、ここでは電圧選択回路510におけるセレクタSelについて説明したが、他の電圧選択回路511~514におけるセレクタSelについても、電圧選択回路510におけるセレクタSelと同様な構成である。
【0067】
図8は、j列目のDA変換回路500における等価回路を示す図である。電圧選択回路510は、ビットD0/D5と制御信号Enb0との論理積信号の論理レベルにしたがって電圧VL、VMまたはVHのいずれかを選択する単極三投スイッチとして表記される。
なお、電圧選択回路510には、実際にはビットD0/D5と制御信号Enb0とが供給されるが、電圧VL、VM、VHのいずれかの選択に際しては、初期化期間(および補償期間)を除けば、ビットD0/D5を考慮すればよいので、図においては、単にD0/D5に簡略化されて表記される。
【0068】
また、図7および図8においては、j列目のDA変換回路500について説明したが、他の列に対応するDA変換回路500についても同様な構成である。図7および図8は、あくまでも電気的な構成を示すのみであり、実際の要素における位置や配列を示してはいない。
【0069】
次に、電圧選択回路510におけるセレクタSelの具体例について説明する。
図9は、セレクタSelの一例を示す回路図である。セレクタSelには、レベルシフタLsから出力される信号Sel_inと、制御回路30から出力される制御信号/Upbとが入力される。
【0070】
セレクタSelは、p型のトランジスターPtr1~Ptr6、n型のトランジスターNtr1~Ntr5、論理回路Lg11~Lg17、および、メモリ回路Memを含む。
なお、トランジスターPtr1~Ptr6、Ntr1~Ntr5は、いずれも、ソースノードおよびドレインノードの間において、ゲートノードに供給された制御信号にしたがってオン状態またはオフ状態になるスイッチとして機能する。
また、論理回路Lg11、Lg12およびLg16は、入力端に供給された信号の論理レベルを反転して出力端から出力するNOT回路である。論理回路Lg13は、2つの入力端に供給された信号の否定論理積信号を出力端から出力するNAND回路である。論理回路Lg14およびLg15は、2つの入力端に供給された信号の論理和信号を出力端から出力するOR回路である。論理回路Lg17は、2つの入力端に供給された信号の否定論理和信号を出力端から出力するNOR回路である。
【0071】
制御信号/Upbは、論理回路Lg11の入力端およびメモリ回路Memの制御端のほか、次のトランジスターのゲートノードに供給される。詳細には、制御信号/Upbは、トランジスターPtr1、Ptr2、Ptr5、Ntr1、Ntr3およびNtr4の各ゲートノードに供給される。
【0072】
信号Sel_inは、トランジスターPtr1の一端およびトランジスターNtr1の一端に供給される。トランジスターPtr1の他端は、メモリ回路Memの入力端に接続される。
セレクタSelは、第2書込期間においてビットD0に応じた電圧を選択するに際し、先の第1書込期間におけるビットD5を反映させる必要がある。メモリ回路Memは、第1書込期間におけるビットD5を記憶するための回路である。
メモリ回路Memは、制御端に供給される制御信号/UpbがLレベルの場合に、入力端に供給された信号を取り込んで、当該取り込んだ信号における論理レベルの反転信号を出力端から、信号Mem_outとして出力する。
制御信号/Upbは、初期化期間および第1書込期間にLレベルになる。このため、制御信号/Upbが初期化期間にLレベルになることによってメモリ回路Memの記憶内容がリセットされる。また、第1書込期間にLレベルになることによって、メモリ回路MemがビットD5を取り込む構成となっている。
なお、制御信号/UpbがHレベルになっても、メモリ回路Memは、取り込んだ信号を保持して、当該取り込んだ信号における論理レベルの反転信号を引き続き出力端から信号Mem_outとして出力する。
【0073】
メモリ回路Memの出力端は、論理回路Lg12の入力端および論理回路Lg14における一方の入力端に接続される。論理回路Lg12の出力端は、論理回路Lg13における一方の入力端、論理回路Lg15における一方の入力端、および、論理回路Lg17における一方の入力端に接続される。
【0074】
論理回路Lg11の出力端は、トランジスターNtr2のゲートノードに接続される。また、トランジスターNtr1の他端は、トランジスターNtr2の一端、論理回路Lg13における他方の入力端、論理回路Lg14における他方の入力端、論理回路Lg16の入力端、および、論理回路Lg17における他方の入力端に接続される。なお、トランジスターNtr2の他端は、セレクタSelの電源電圧のうち、低位の電圧VssHの給電線に接続される。
【0075】
論理回路Lg13の出力端は、トランジスターNtr3の一端に接続される。トランジスターPtr2の一端は、セレクタSelの電源電圧のうち、高位の電圧VddHの給電線に接続され、当該トランジスターPtr2の他端は、トランジスターNtr3の他端、および、トランジスターPtr3のゲートノードに接続される。トランジスターPtr3の一端は、電圧VHの給電線に接続される。なお便宜的に、トランジスターPtr3のゲートノードをノードN_aとする。
【0076】
論理回路Lg14の出力端は、トランジスターPtr4のゲートノードに接続される。トランジスターPtr4の一端は、電圧VMの給電線に接続される。なお便宜的に、トランジスターPtr4のゲートノードをノードN_bとする。
【0077】
論理回路Lg16の出力端は、論理回路Lg15における他方の入力端に接続される。論理回路Lg15の出力端は、トランジスターNtr4の一端に接続される。また、トランジスターPtr5の一端は、電圧VHの給電線に接続される。トランジスターPtr5の他端およびトランジスターNtr4の他端は、トランジスターPtr6のゲートノードに接続される。トランジスターPtr6の一端は、電圧VMの給電線に接続される。なお便宜的に、トランジスターPtr6のゲートノードをノードN_cとする。
【0078】
論理回路Lg17の出力端は、トランジスターNtr5のゲートノードに接続される。トランジスターNtr5の一端は、電圧VLの給電線に接続される。なお便宜的に、トランジスターNtr5のゲートノードをノードN_dとする。
【0079】
トランジスターPtr3の他端、トランジスターPtr4の他端、トランジスターPtr6の他端、および、トランジスターNtr5の他端は、容量素子C0の一端に共通接続される。なお便宜的に、容量素子C0の一端に出力される信号、すなわち、セレクタSelの出力信号をSel_outとする。
【0080】
図10は、このような構成におけるセレクタSelの動作をまとめた図表である。
図において、初期化期間では、信号Sel_inがLレベルになり、制御信号/UpbがLレベルになる。
なお、初期化期間では、後述するように制御信号Enb0がLレベルであるので、第2ラッチ回路L2から出力されるビットD0/D5にかかわらず、AND回路Dsの出力信号、すなわち信号Sel_inはLレベルになる。
初期化期間において、ノードN_a、N_b、N_c、N_dが、順にH、H、H、Hレベルになるので、トランジスターPtr3、Ptr4およびPtr6がオフ状態になり、トランジスターNtr5がオン状態になる。したがって、初期化期間では、図表の通り、信号Sel_outが電圧VLになる。
【0081】
詳述すると、図9において、第1に、制御信号/UpbがLレベルであれば、トランジスターPtr2がオン状態になるので、ノードN_aがHレベルになる。
第2に、制御信号/UpbがLレベルであれば、トランジスターPtr1がオン状態になるので、信号Sel_inがLレベルになる。このため、当該Lレベルがメモリ回路Memに取り込まれて、メモリ回路Memから出力される信号Mem_outはHレベルになって、論理回路Lg14における一方の入力端に供給される。このため、論理回路Lg14における他方の入力端にかかわらず、当該論理回路Lg14の論理和信号によりノードN_bがHレベルになる。
第3に、制御信号/UpbがLレベルであれば、トランジスターPtr5がオン状態になるので、ノードN_cは、電圧VHになる。なお、この電圧VHは、容量素子C0に一端に印加する3種類の電圧の1つであるが、論理レベルのHレベルとしても兼用される。
第4に、論理回路Lg12の出力端がLレベルになるので、論理回路Lg17における一方の入力端がLレベルになる。また、トランジスターNtr2がオン状態になることにより、当該トランジスターNtr2の一端および論理回路Lg17における他方の入力端がLレベルになる。したがって、論理回路Lg17による否定論理和信号、すなわちノードN_dがHレベルになる。
【0082】
なお、後述する補償期間では、信号/UpbがHレベルになるが、制御信号Enb0がLレベルであるので、信号Sel_inはLレベルである。このため、補償期間では、トランジスターPtr1がオフ状態になり、トランジスターNtr1がオン状態になる点において、初期化期間と異なる。ただし、メモリ回路Memでは、初期化期間において取り込んだLレベルが保持されるので、信号Mem_outがHレベルであり、論理回路Lg12の出力信号がLレベルである。このため、論理回路Lg13における両入力端がLレベルに維持されるので、当該論理回路Lg13の出力端がHレベルになり、当該Hレベルが、オン状態のトランジスターNtr1を介してノードN_aに到達する。したがって、補償期間では、結果的に、ノードN_a、N_b、N_c、N_dが、順にH、H、H、Hレベルになり、初期化期間と変わらないことになる。
【0083】
図10の図表において、第1書込期間でビットD5が“0”であれば、信号Sel_inがLレベルになる。第1書込期間では、制御信号/UpbがLレベルであり、初期化期間と変わりはない。したがって、第1書込期間においてビットD5が“0”であれば、図表の通り、信号Sel_outが電圧VLになる。
【0084】
第1書込期間でビットD5が“1”であれば、制御信号Enb0との論理積によって信号Sel_inがHレベルになる。第1書込期間では、制御信号/UpbがLレベルになる。このため、ノードN_a、N_b、N_c、N_dが、順にH、L、H、Lレベルになるので、トランジスターPtr3、Ptr6およびNtr5がオフ状態になり、トランジスターPtr4がオン状態になる。したがって、第1書込期間においてビットD5が“1”であれば、図表の通り、信号Sel_outが電圧VMになる。
【0085】
詳述すると、図9において、第1に、制御信号/UpbがLレベルであれば、トランジスターPtr2がオン状態になるので、ノードN_aがHレベルになる。
第2に、制御信号/UpbがLレベルであれば、トランジスターPtr1がオン状態になるので、信号Sel_inのHレベルがメモリ回路Memに取り込まれる。このため、信号Mem_outがLレベルになって、論理回路Lg14における一方の入力端に供給される。また、制御信号/UpbがLレベルであれば、論理回路Lg11の出力信号がHレベルになるので、トランジスターNtr2がオン状態になり、論理回路Lg14における他方の入力端がLレベルになる。したがって、論理回路Lg14の論理和信号、すなわちノードN_bがLレベルになる。
第3に、制御信号/UpbがLレベルであれば、トランジスターPtr5がオン状態になるので、ノードN_cは、Hレベルになる。
第4に、信号Mem_outがLレベルになることにより、論理回路Lg12の出力端がHレベルになり、論理回路Lg17における一方の入力端がHレベルになる。したがって、論理回路Lg17における他方の入力端にかかわらず、当該論理回路Lg17による否定論理信号、すなわちノードN_dがLレベルになる。
【0086】
第2書込期間でビットD0が“0”であれば、信号Sel_inがLレベルになる。また、第2書込期間では、制御信号/UpbがHレベルに切り替わる。
図10の図表において、第2書込期間でビットD0が“0”である場合に、第1書込期間でビットD5が“0”であったならば、ノードN_a、N_b、N_c、N_dが、順にH、H、H、Hレベルになるので、図表の通り、信号Sel_outが電圧VLに維持される。
【0087】
詳述すると、図9において、第1に、制御信号/UpbがHレベルであれば、メモリ回路Memでは、第1書込期間で入力端に取り込んだLレベルが保持されるので、信号Mem_outがHレベルになる。このため、論理回路Lg12の出力端がLレベルになって、論理回路Lg13における一方の入力端に供給される。また、制御信号/UpbがHレベルであれば、トランジスターNtr1がオン状態になり、信号Sel_inのLレベルが論理回路Lg13における他方の入力端に供給される。このため、論理回路Lg13による否定論理積信号がHレベルになる。制御信号/UpbがHレベルであれば、トランジスターNtr3がオン状態になるので、ノードN_aは、論理回路Lg13による否定論理積信号のHレベルになる。
第2に、信号Mem_outのHレベルは、論理回路Lg14における一方の入力端に供給される。このため、論理回路Lg14における他方の入力端にかかわらず、当該論理回路Lg14による論理和信号、すなわちノードN_bは、Hレベルになる。
第3に、信号Sel_inのLレベルが論理回路Lg16における入力端に供給される。このため、論理回路Lg16の出力端がHレベルになって、論理回路Lg15における他方の入力端に供給される。このため、論理回路Lg15における他方の入力端にかかわらず、当該論理回路Lg15による論理和信号はHレベルになる。制御信号/UpbがHレベルであれば、トランジスターNtr4がオン状態になるので、ノードN_cは、論理回路Lg15による論理和信号のHレベルになる。
第4に、論理回路Lg12の出力端におけるLレベルが論理回路Lg17における一方の入力端に供給される。また、信号Sel_inのLレベルが論理回路Lg17における他方の入力端に供給される。このため、論理回路Lg17による否定論理和信号が出力されるノードN_dはHレベルになる。
【0088】
図10の図表において、第2書込期間でビットD0が“0”である場合に、第1書込期間でビットD5が“1”であったならば、ノードN_a、N_b、N_c、N_dが、順にH、L、H、Lレベルになるので、図表の通り、信号Sel_outが電圧VMに維持される。
【0089】
詳述すると、図9において、第1に、制御信号/UpbがHレベルであれば、トランジスターNtr1がオン状態になり、信号Sel_inのLレベルが論理回路Lg13における他方の入力端に供給される。このため、論理回路Lg13における一方の入力端にかかわらず、当該論理回路Lg13による否定論理積信号がHレベルになる。制御信号/UpbがHレベルであれば、トランジスターNtr3がオン状態になるので、ノードN_aは、論理回路Lg13による否定論理積信号のHレベルになる。
第2に、制御信号/UpbがHレベルであれば、メモリ回路Memでは、第1書込期間で入力端に取り込んだHレベルが保持されるので、信号Mem_outがLレベルである。信号Mem_outがLレベルは、論理回路Lg14における一方の入力端に供給される。また、信号Sel_inのLレベルが論理回路Lg14における他方の入力端に供給される。このため、論理回路Lg14による論理和信号、すなわちノードN_bはLレベルになる。
第3に、信号Mem_outのLレベルは、論理回路Lg12によってHレベルに反転されて、論理回路Lg15における一方の入力端に供給される。このため、論理回路Lg15の他方の出力端にかかわらず、当該論理回路Lg15による論理和信号はHレベルになる。制御信号/UpbがHレベルであれば、トランジスターNtr4がオン状態になるので、ノードN_cは、論理回路Lg15から出力されたHレベルになる。
第4に、論理回路Lg12から出力されるHレベルが論理回路Lg17における一方の入力端に供給される。このため、論理回路Lg17の他方の出力端にかかわらず、当該論理回路Lg17による否定論理和信号、すなわちノードN_dはLレベルになる。
【0090】
第2書込期間でビットD0が“1”であれば、信号Sel_inがHレベルになる。また、第2書込期間では、上述したように制御信号/UpbがHレベルである。
図10の図表において、第2書込期間でビットD0が“1”である場合に、第1書込期間でビットD5が“0”であったならば、ノードN_a、N_b、N_c、N_dが、順にH、H、L、Lレベルになるので、図表の通り、信号Sel_outが電圧VLから電圧VMに変化する。
【0091】
詳述すると、図9において、第1に、メモリ回路Memでは、第1書込期間で入力端に取り込んだLレベルが保持されるので、出力端がHレベルになる。このため、論理回路Lg12の出力端がLレベルになって、論理回路Lg13における一方の入力端に供給される。このため、論理回路Lg13における他方の入力端にかかわらず、当該論理回路Lg13の出力端はHレベルになる。制御信号/UpbがHレベルであれば、トランジスターNtr3がオン状態であるので、ノードN_aは、論理回路Lg13の出力端におけるHレベルになる。
第2に、メモリ回路Memにおける出力端のHレベルは、論理回路Lg14における一方の入力端に供給される。また、信号Sel_inのHレベルは、論理回路Lg14における他方の入力端に供給される。このため、ノードN_bは、論理回路Lg14の出力端におけるHレベルになる。
第3に、論理回路Lg12の出力端におけるLレベルが、論理回路Lg15における一方の入力端に供給される。また、信号Sel_inのHレベルは、論理回路Lg16の入力端に供給されるので、論理回路Lg15における他方の入力端には、論理回路Lg16による反転信号であるLレベルが供給される。このため、論理回路Lg16の出力端はLレベルになる。制御信号/UpbのHレベルにより、トランジスターNtr4がオン状態になるので、ノードN_cは、論理回路Lg15の出力端におけるLレベルになる。
第4に、信号Sel_inのHレベルが論理回路Lg17における他方の入力端に供給される。このため、論理回路Lg17における一方の入力端にかかわらず、当該論理回路Lg17による否定論理和信号が出力されるノードN_dはLレベルになる。
【0092】
図10の図表において、第2書込期間でビットD0が“1”である場合に、第1書込期間でビットD5が“1”であったならば、ノードN_a、N_b、N_c、N_dが、順にL、H、H、Lレベルになるので、図表の通り、信号Sel_outが電圧VMから電圧VHに変化する。
【0093】
詳述すると、図9において、第1に、メモリ回路Memでは、第1書込期間で入力端に取り込んだHレベルが保持されるので、出力端がLレベルになる。このため、論理回路Lg12の出力端がHレベルになって、論理回路Lg13における一方の入力端に供給される。また、制御信号/UpbがHレベルであれば、トランジスターNtr1がオン状態になり、信号Sel_inのHレベルが論理回路Lg13における他方の入力端に供給される。このため、論理回路Lg13による否定論理積信号はLレベルになる。制御信号/UpbがHレベルであれば、トランジスターNtr3がオン状態になるので、ノードN_aは、論理回路Lg13の出力端におけるLレベルになる。
第2に、信号Sel_inのHレベルが論理回路Lg14における他方の入力端に供給されるので、当該論理回路Lg14の出力端は、論理回路Lg14における一方の入力端にかかわらず、当該論理回路Lg14による論理和信号、すなわちノードN_bは、Hレベルになる。
第3に、論理回路Lg12における出力端のHレベルが、論理回路Lg15における一方の入力端に供給されるので、論理回路Lg15における他方の入力端にかかわらず、当該論理回路Lg15による論理和信号はHレベルになる。制御信号/UpbがHレベルであれば、トランジスターNtr4がオン状態になるので、ノードN_cはHレベルになる。
第4に、論理回路Lg12における出力端のHレベルが、論理回路Lg17における一方の入力端に供給され、制御信号/UpbのHレベルが、論理回路Lg17における他方の入力端に供給される。このため、論理回路Lg17による否定論理和信号、すなわちノードN_dは、Lレベルになる。
【0094】
ここでは、ビットD0/D5に対応するセレクタSelについて説明したが、ビットD1/D6、D2/D7、D3/D8およびD4/D9に対応するセレクタSelについても同様な構成である。
【0095】
図11および図12は、電気光学装置10の動作を説明するためのタイミングチャートである。
電気光学装置10では、m行の走査線12がフレーム(V)の期間に1、2、3、…、m行目という順番で1行ずつ走査される。詳細には、図に示されるように、走査信号/Gwr(1)、/Gwr(2)、…、/Gwr(m-1)、/Gwr(m)が、走査線駆動回路120によって水平走査期間(H)毎に、順次排他的にLレベルになる。
なお、本実施形態では、走査信号/Gwr(1)~/Gwr(m)のうち、隣り合う走査信号においてLレベルになる期間が時間的に隔絶される。具体的には、走査信号/Gwr(i-1)がLレベルからHレベルに変化した後、次の走査信号/Gwr(i)が期間を置いてLレベルになる。この期間は水平帰線期間に相当する。
【0096】
本説明において1フレーム(V)の期間とは、映像データVidで指定される画像の1コマを表示するのに要する期間をいう。1フレーム(V)の期間の長さは、垂直同期期間と同じであれば、例えば同期信号Syncに含まれる垂直同期信号の周波数が60Hzであれば、当該垂直同期信号の1周期分に相当する16.7ミリ秒である。また、水平走査期間(H)とは、走査信号/Gwr(1)~/Gwr(m)が順にLレベルとなるの時間の間隔であるが、図では便宜的に、水平走査期間(H)の開始タイミングを水平帰線期間のほぼ中心としている。
【0097】
本実施形態において、1つの水平走査期間(H)は、主に初期化期間(a)、補償期間(b)、書込期間(c)の3つの期間に分けられる。このうち、書込期間(c)は、上述した第1書込期間(c-1)および第2書込期間(c-2)に分けられる。また、画素回路110の動作としては、上記期間とは別に、さらに発光期間(d)が加わる。
【0098】
各水平走査期間(H)のうち、初期化期間(a)では、制御信号/GiniがLレベルであり、制御信号/RstがLレベルであり、制御信号/CstがHレベルであり、制御信号/UpbがLレベルであり、制御信号EnbがLレベルである。
なお、制御信号Enbは、制御信号Enb0~Enb4を総称した信号である。制御信号Enb0~Enb4は、後述するように第1書込期間(c-1)および第2書込期間(c-2)において位相が順次シフトするが、それらの期間以外は同波形であるので、このように制御信号Enbで総称される。
【0099】
補償期間(b)では、制御信号/GiniがHレベルであり、制御信号/RstがHレベルであり、制御信号/CstがLレベルであり、制御信号/UpbがHレベルであり、制御信号EnbがLレベルである。
書込期間(c)では、制御信号/GiniがHレベルであり、制御信号/RstがLレベルである。書込期間(c)のうち、第1書込期間(c-1)では、制御信号/CstがLレベルであり、制御信号/UpbがLレベルである。
書込期間(c)のうち、第2書込期間(c-2)では、制御信号/CstがHレベルであり、制御信号/UpbがHレベルである。
また、第1書込期間(c-1)において、制御信号Enb0がHレベルとなった後に、制御信号Enb1~Enb4が時間ΔTずつ順次遅延してHレベルになる。また、制御信号Enb0がHレベルからLレベルに変化すると、制御信号Enb1~Enb4が時間ΔTずつ順次遅延してLレベルになる。第2書込期間(c-2)においても、第1書込期間(c-1)と同様に、制御信号Enb0におけるHレベルのパルスに対して、制御信号Enb1~Enb4におけるHレベルのパルスが時間ΔTずつ順次遅延する。
【0100】
水平走査期間(H)における動作についてi行目を例にとって説明する。また、画素回路110については、i行j列の画素回路110を例にとって説明する。
i行目の水平走査期間(H)において、走査信号/Gwr(i)がLレベルになる前に、i行目の初期化期間(a)が開始する。初期化期間(a)は、(i-1)行目の水平走査期間(H)において各部に残存する電圧または電荷をリセットするための期間である。
【0101】
図13は、i行目の初期化期間(a)において、i行j列の画素回路110と、j列目のデータ線14に対応するDA変換回路500との動作を説明するための図である。
初期化期間(a)では、制御信号/GiniがLレベルになることによってトランジスター66がオン状態になるので、データ線14および容量素子Cserの他端が電圧Viniに初期化される。
初期化期間(a)では、制御信号/RstがLレベルになることによってスイッチRswがオン状態になるので、容量素子C0~C4の他端および容量素子Cserの一端には電圧Vrstが中継線14bを介して印加される。
また、初期化期間(a)において、DA変換回路500のセレクタSelでは、上述したように電圧VLが選択される。このため、容量素子C0~C4の一端には、電圧VLが印加される。
【0102】
このように、初期化期間(a)では、容量素子C0~C4の一端には電圧VLが印加され、容量素子Cserの一端および容量素子C0~C4の他端には電圧Vrstが印加され、容量素子Cserの他端には、電圧Viniが印加される。
したがって、初期化期間(a)では、データ線14の初期化とともに、容量素子C0~C4およびCserに蓄積された電荷が初期化される。
なお、この例では、図1に示される例とは異なり、スイッチCstswがオフ状態であるが、代わりにトランジスター66がオン状態になり、容量素子Cserに蓄積された電荷が初期化される。
【0103】
また、i行目の初期化期間(a)では、制御信号/Gel(i)がHレベルとなり、制御信号/Gorst(i)がLレベルになる。このため、i行目の画素回路110ではトランジスター124がオフ状態になり、トランジスター125がオン状態になるので、OLED130のアノードである画素電極131に電圧Vorstが印加される。このため、当該OLED130は消灯するとともに、画素電極131が電圧Vorstにリセットされる。
なお、画素電極131をリセットするのは、OLED130には容量が寄生するので、直前の発光期間に印加された電圧の影響を排除するためである。
【0104】
初期化期間(a)の終了後、補償期間(b)になる。補償期間(b)は、i行目に位置するn列の画素回路110において、各トランジスター121のゲートノードgを、当該トランジスター121の閾値に相当する電圧に収束させるための期間である。
【0105】
図14は、i行目の補償期間(b)において、i行j列の画素回路110と、j列目のデータ線14に対応するDA変換回路500との動作を説明するための図である。
補償期間(b)では、制御信号/GiniがHレベルになることによってトランジスター66がオフ状態になり、制御信号/CstがLレベルになることによってスイッチRswがオン状態になる。また、補償期間(b)においてセレクタSelでは、上述したように電圧VLが選択される。このため、容量素子C0~C4の一端は、電圧VLに維持される。
【0106】
一方、i行目の補償期間(b)では、走査信号/Gwr(i)がLレベルになり、当該Lレベルの状態で制御信号/Gcmp(i)がLレベルになる。このため、i行目の画素回路110では、トランジスター122がオン状態でトランジスター123がオン状態になる。したがって、トランジスター121は、ダイオード接続状態になるので、当該トランジスター121におけるゲートノードおよびソースノード間は、当該トランジスター121の閾値電圧に収束する。
i行目の補償期間(b)では、画素回路110におけるトランジスター122および123がオン状態であり、スイッチCstswがオン状態であるので、容量素子C0~C4の他端についても、データ線14を介してトランジスター121の閾値電圧に相当する電圧に収束する。スイッチCstswがオン状態であるので、容量素子Cserの両端が短絡状態になり、当該容量素子Cserに蓄積された電荷がゼロにリセットされる。
【0107】
なお、容量素子C0~C4の他端は、最終的には、補償期間(b)で閾値電圧に相当する電圧になるので、初期化期間(a)においてスイッチRswのオン状態による電圧Vrstの印加が一見すると、無駄な動作であるかのようにみえる。
しかしながら、容量素子C0~C4の他端を初期化期間(a)で電圧Vrstに印加しないと、直前の書込状態よる電圧が残存し、補償期間(b)において容量素子C0~C4の他端における電圧が不揃いの状態で、閾値電圧に相当する電圧への収束が開始する。このため、補償期間(b)において、列によっては、閾値電圧に相当する電圧に十分に収束しない、または、水平走査期間毎に収束する電圧が異なる状況が発生し得る。
そこで、電気光学装置10では、初期化期間(a)においてスイッチRswのオン状態によって容量素子C0~C4の他端に電圧Vrstを印加し、容量素子C0~C4の他端における電圧を列毎に揃えた状態としている。この状態で補償期間(b)が開始するので、上記状況の発生が回避される。
【0108】
補償期間(b)において、容量素子C0~C4の一端では、電圧VLの印加が維持され、容量素子C0~C4の他端が、データ線14の電圧、詳細にはトランジスター121の閾値電圧に相当する電圧に収束する。
したがって、補償期間(b)では、容量素子C0~C4には、両端間における差電圧と容量サイズとの積に応じた電荷が蓄積される。なお、容量素子C0~C4の容量サイズ比は、上述したように順に1:2:4:8:16である。
また、i行目の補償期間(b)において、i行目の画素回路110ではトランジスター124のオフ状態およびトランジスター125のオン状態が初期化期間(a)から継続する。
【0109】
補償期間(b)の終了後、書込期間(c)になる。書込期間(c)は、i行目に位置するn列の画素回路110において、各トランジスター121のゲートノードgに、輝度に応じた電圧を印加するための期間である。
書込期間(c)のうち、第1書込期間(c-1)は、トランジスター121のゲートノードgにおける電圧を、閾値電圧に相当する電圧から、映像データVdataのうち、上位のビットD5~D9に応じた電圧分だけ変化させるための期間である。書込期間(c)のうち、第2書込期間(c-1)は、トランジスター121のゲートノードgにおける電圧を、第1書込期間(c-1)におけるビットD5~D9に応じた電圧から、下位のビットD0~D4に応じた電圧分だけ変化させるための期間である。
書込期間(c)の動作のうち、第1書込期間(c-1)の動作について説明する。
【0110】
図15は、i行目の第1書込期間(c-1)において、i行j列の画素回路110と、j列目のデータ線14に対応するDA変換回路500との動作を説明するための図である。
第1書込期間(c-1)では、制御信号/CstがLレベルであるので、スイッチCstswのオン状態が継続する。また、第1書込期間(c-1)では、j列目の第2ラッチ回路L2が映像データVdataのうち、上位のビットD5~D9を出力する一方で制御信号Enb0~Enb4が順次Hレベルになる。
【0111】
j列目の第2ラッチ回路L2から出力される映像データのうち、ビットD5が電圧選択回路510のレベルシフタLsに入力される期間は、AND回路Dsによって制御信号Enb0がHレベルである期間に制限される。同様に、ビットD6~D9が順に電圧選択回路511~514におけるレベルシフタLsに入力される期間は、AND回路Dsによって順に制御信号Enb1~Enb4がHレベルである期間に制限される。
電圧選択回路510~514のうち、レベルシフタLsに入力されたビットが“0”である電圧選択回路は、電圧VLを維持し、ビットが“1”である電圧選択回路は、電圧VMを選択する。
【0112】
第1書込期間(c-1)において、容量素子C0~C4のうち、レベルシフタLsに入力された“0”のビットに対応する容量素子の一端は、補償期間(b)から電圧変化しないので、当該容量素子は、データ線14の電圧上昇には寄与しない。
これに対し、容量素子C0~C4のうち、レベルシフタLsに入力された“1”のビットに対応する容量素子の一端は、第1書込期間(c-1)において電圧VLから電圧VMに電圧ΔVだけ上昇する。このため、容量素子C0~C4のうち“1”のビットに対応する容量素子では放電が発生し、データ線14を、補償期間(b)における閾値電圧に相当する電圧から、当該容量サイズの比、すなわちビットD5~D9の重みに応じた分、上昇させる。
このようにして、第1書込期間(c-1)において、j列目のDA変換回路500は、j列目のデータ線14の電圧を、補償期間(b)における閾値相当電圧から、映像データVdataのうち、上位のビットD5~D9に応じた電圧分だけ、上昇させる。
【0113】
第1書込期間(c-1)において、i行j列の画素回路110では、トランジスター122がオン状態になり、トランジスター123がオフ状態になるので、トランジスター121のゲートノードgには、j列目のDA変換回路500から出力された電圧Vd(j)が、j列目のデータ線14を介して印加される。
図において、ゲートノードgの電圧と、トランジスター121におけるソースノードの電圧Velとの差の電圧がVgsと表記され、容量素子140に保持される。
【0114】
なお、i行目の第1書込期間(c-1)において、i行目の画素回路110ではトランジスター124のオフ状態およびトランジスター125のオン状態が継続する。
また、図15は、ビットD5~D9が順に“1”、“0”、“1”、“0”、“1”である場合に、容量素子C1、C3の一端が電圧VLに維持され、容量素子C0、C2、C4の一端が電圧VMに変化した例を示す。
次に、書込期間(c)の動作のうち、第2書込期間(c-2)の動作について説明する。
【0115】
図16は、i行目の第2書込期間(c-2)において、i行j列の画素回路110と、j列目のデータ線14に対応するDA変換回路500との動作を説明するための図である。
第2書込期間(c-2)では、制御信号/CstがHレベルになることによってスイッチCstswがオフ状態になる。また、第2書込期間(c-2)では、j列目の第2ラッチ回路L2が映像データVdataのうち、下位のビットD0~D4を出力し、制御信号Enb0~Enb4が順次Hレベルになる。
【0116】
j列目の第2ラッチ回路L2から出力される映像データのビットD0~D4が順に電圧選択回路510のレベルシフタLsに入力される期間は、AND回路Dsによって制御信号Enb0~Enb4がHレベルである期間に制限される。
【0117】
第2書込期間(c-2)において、電圧選択回路510~514のうち、レベルシフタLsに入力された下位のビットが“0”である電圧選択回路は、第1書込期間(c-1)において対応する上位ビットが“0”であったならば、電圧VLの選択を維持し、第1書込期間(c-1)において対応する上位ビットが“1”であったならば、電圧VMを維持する。
なお、下位のビットに対応する上位のビットとは、下位のビットD0であれば上位のビットD5であり、同様に、下位のビットD1~D4であれば、順に上位のビットD6~D9である。このように、第2書込期間(c-2)において、下位のビットが“0”に対応する容量素子の一端では、第1書込期間(c-1)における電圧から変化しない。
【0118】
第2書込期間(c-2)において、電圧選択回路510~514のうち、レベルシフタLsに入力された下位のビットが“1”である電圧選択回路は、第1書込期間(c-1)において対応する上位ビットが“0”であれば、電圧VLから電圧VMに変化し、第1書込期間(c-1)において対応する上位ビットが“1”であれば、電圧VMから電圧VHに変化する。
すなわち、第2書込期間(c-2)において、下位のビットが“1”に対応する容量素子の一端では、第1書込期間(c-1)における電圧から電圧ΔVだけ上昇する。
【0119】
第2書込期間(c-2)において、容量素子C0~C4のうち、レベルシフタLsに入力された“0”のビットに対応する容量素子の一端は、第1書込期間(c-1)から電圧変化しないので、当該容量素子はデータ線14の電圧上昇には寄与しない。
これに対し、容量素子C0~C4のうち、レベルシフタLsに入力された“1”のビットに対応する容量素子の一端は、第1書込期間(c-1)における電圧から電圧ΔVだけ上昇する。このため、容量素子C0~C4のうち“1”のビットに対応する容量素子では放電が発生して、容量素子C0~C4の他端における電圧を上昇させる。
ただし、第2書込期間(c-2)では、第1書込期間(c-1)とは異なり、スイッチCstswがオフで状態である点に留意する必要がある。
【0120】
すなわち、第1書込期間(c-1)では、スイッチCstswのオン状態によって容量素子C0~C4の他端がデータ線14に直結した状態であり、容量素子C0~C4の一端における電圧ΔVの各変化が、容量サイズの比に応じて、データ線14の電圧を変化させる。
これに対して、第2書込期間(c-2)では、スイッチCstswのオフ状態によって容量素子C0~C4の他端がデータ線14とは容量素子Cserを介した状態であるので、容量素子C0~C4の一端における電圧ΔVの各変化は、容量素子と容量素子C0~C4およびCserで定まる圧縮比で圧縮されて、データ線14の電圧を上昇させる。
なお、この構成における圧縮比は、1/32(=1/(1+1++2+4+8+16))である。
【0121】
このようにして、第2書込期間(c-1)において、j列目のDA変換回路500は、j列目のデータ線14の電圧を、第1書込期間(c-1)における上位のビットD5~D9に応じた電圧から、下位のビットD0~D4に応じた電圧分だけ、上昇させる。
したがって、第2書込期間(c-1)の終期では、i行j列の画素回路110におけるトランジスター121のゲートノードgには、閾値電圧に相当する電圧から、映像データVdataのビットD0~D9に応じた電圧分だけ変化した電圧、すなわちi行j列のOLEDの輝度を指定する電圧が印加される。
【0122】
なお、i行目の第1書込期間(c-2)において、i行目の画素回路110ではトランジスター124のオフ状態およびトランジスター125のオン状態が継続する。
また、図16は、ビットD0~D4が順に“1”、“0”、“0”、“1”、“1”である場合の例である。詳細には、容量素子C0、C4の一端が電圧VMから電圧VHに変化し、容量素子C1の一端が電圧VLに維持され、容量素子C2の一端が電圧VMに維持され、容量素子C3の一端が電圧VLから電圧VMに変化した例を示す。
【0123】
なお、図12における(1)、(2)および(3)は、補償期間(c)、第1書込期間(c-1)および第2書込期間(c-2)においてmj列目のデータ線14における電圧Vd(j)の変化を示す図である。いずれも、補償期間(b)では、電圧Viniから閾値相当電圧に収束する点、第1書込期間(c-1)では、閾値電圧に相当する電圧から、上位のビットD5~D9に応じて電圧に段階的に上昇する点、および、第2書込期間(c-2)では、第1書込期間(c-1)における電圧から、下位のビットD0~D4に応じて電圧に、段階的に上昇する点が示されている。
このうち、(1)は、ビットD0~D9がすべて“1”である場合の電圧変化を示す。(2)は、上位のビットD5~D9が“1”であり、下位のビットD0~D4が“0”である場合の電圧変化を示す。(3)は、上位のビットD5~D9が“0”であり、下位のビットD0~D4が“1”である場合の電圧変化を示す。
電圧が段階的に上昇する理由は、制御信号Enb0~Enb4がこの順にHレベルになって、ビットD0/D5、D1/D6、D2/D7、D3/D8、D4/D9に応じて上昇するためである。また、段階的な上昇において時間的に遅いほど、上昇幅が大きい理由は、ビットD0/D5、D1/D6、D2/D7、D3/D8、D4/D9の重みが順に増しているためである。
【0124】
書込期間(c)の終了後、発光期間(d)になる。発光期間(d)は、書込期間(c)において保持された電圧Vgsに応じた電流をOLED130に流して発光させるための期間である。
【0125】
図17は、i行目の発光期間(d)において、i行j列の画素回路110の動作を説明するための図である。
i行目の発光期間(d)の前に、制御信号/Gcmp(i)がHレベルになる。また、i行目の発光期間(d)に至ると、制御信号/Gel(i)がLレベルに反転するので、トランジスター124がオン状態になる。このため、OLED130には、容量素子140によって保持された電圧Vgsに応じた電流Idsがトランジスター121によって流れる。このため、当該OLED130が、当該電流Idsに応じた輝度で発光する。
【0126】
なお、図17は、i行目の走査線12の選択終了後、制御信号/Gel(i)がLレベルとなり発光期間(d)が連続した例であるが、制御信号/Gel(i)がLレベルになる期間を間欠的にしてもよいし、輝度調整に応じて調整してもよい。また、発光期間(d)における制御信号/Gel(i)のレベルについては、補償期間(b)におけるLレベルより上昇させてもよい。すなわち、発光期間(d)における制御信号/Gel(i)のレベルについては、HレベルとLレベルとの中間的なレベルを用いてもよい。
【0127】
また、i行目の発光期間(d)においては、j列目に対応するDA変換回路500が、i行目以外の他の行について水平走査期間(H)の動作をしている場合があるので、図17ではDA変換回路500が省略されている。
【0128】
図13乃至図17においては、i行目の水平走査期間(H)において、j列目に対応するDA変換回路500およびi行j列の画素回路110について着目したが、j列目以外の他の列に対応するDA変換回路500および画素回路110について同様な動作が実行される。
また、図13乃至図17においては、i行目の水平走査期間(H)について着目し、当該水平走査期間(H)の動作について説明したが、同様な動作は、1、2、3、…、m行目の水平走査期間(H)について順次実行される。
【0129】
画素回路110において、書込期間(c)および発光期間(d)における電圧Vgsは、補償期間(b)における閾値電圧から、当該画素回路110の階調レベルに応じて変化させた電圧である。同様な動作が他の画素回路110でも実行されるので、本実施形態では、m行n列のすべての画素回路110にわたってトランジスター121の閾値が補償された状態で、OLED130に階調レベルに応じた電流が流れる。したがって、本実施形態では、輝度のばらつきが小さくなる結果、高品位な表示が可能になる。
【0130】
10ビットのデータをアナログに変換するためには、上記特許文献1に記載の技術によれば、各ビットに応じた10個の容量素子と1個の接合容量との計11個の容量素子が必要になる。これに対し、図7に示されるDA変換回路500によれば、ビット数の半分の5個の容量素子(C0~C4)と、1個の容量素子(Cser)で済むので、必要となる容量素子の個数がほぼ半減する。このため、例えば半導体基板にDA変換回路500を集積化する場合には、構成の簡略化や省スペース化を図ることが可能になる。
【0131】
電気光学装置10において、第1書込期間(c-1)および第2書込期間(c-2)において制御信号Enb0~Enb4でHレベルになる期間が時間ΔTずつ順次遅延している。その理由は、制御信号Enb0~Enb4を一斉にHレベルにすると、容量素子C0~C4の一端において電圧の切り替わりが同時に発生することになり、電圧切り替えに伴うスパイク変動が大きくなって、各部に伝播し、特にデータ線14に伝播して、DA変換精度を低下させるためである。そこで、本実施形態では、電圧の切り替わりが同時に発生しないように、制御信号Enb0~Enb4の位相を順次ずらしているのである。
本実施形態によれば、電圧切り替えに伴うスパイクによる電圧変動の影響が小さくなるので、DA変換精度の低下が抑えられることになる。
なお、制御信号Enb0~Enb4がHレベルになる順番は、この例である必要はない。
【0132】
[応用例・変形例]
なお、上述した電気光学装置10は、表示素子の一例としてOLED130を例示して説明したが、他の表示素子を用いてもよい。例えば表示素子としてLEDを用いてもよい。
また、DA変換回路500として、図1の例では4ビットの変換例を示し、図7の例では10ビットの変換例を示したが、ビット数はこれらの例に限られない。
【0133】
電気光学装置10では、画素回路110におけるトランジスター121の閾値電圧を補償する構成としたが、閾値電圧を補償しない構成、具体的にはトランジスター123が省略された構成にしてもよい。
トランジスター66、121~125のチャネル型は、実施形態等に限定されない。また、これらのトランジスター66、121~125は、適宜トランスミッションゲートに置き換えてもよい。その逆にトランスミッションゲートTg1、Tg2については、一方のチャネル型のトランジスターに置き換えてもよい。
【0134】
[電子機器]
次に、図4に示した電気光学装置10を適用した電子機器について説明する。電気光学装置10は、画素が小サイズで高精細な表示な用途に向いている。そこで、電子機器として、ヘッドマウントディスプレイを例に挙げて説明する。
【0135】
図18は、ヘッドマウントディスプレイの外観を示す図であり、図19は、その光学的な構成を示す図である。
まず、図19に示されるように、ヘッドマウントディスプレイ300は、外観的には、一般的な眼鏡と同様にテンプル310や、ブリッジ320、レンズ301L、301Rを有する。また、ヘッドマウントディスプレイ300は、図19に示されるように、ブリッジ320近傍であってレンズ301L、301Rの奥側(図において下側)には、左眼用の電気光学装置10Lと右眼用の電気光学装置10Rとが設けられる。
電気光学装置10Lの画像表示面は、図19において左になるように配置している。これによって電気光学装置10Lによる表示画像は、光学レンズ302Lを介して図において9時の方向に出射する。ハーフミラー303Lは、電気光学装置10Lによる表示画像を6時の方向に反射させる一方で、12時の方向から入射した光を透過させる。電気光学装置10Rの画像表示面は、電気光学装置10Lとは反対の右になるように配置している。これによって電気光学装置10Rによる表示画像は、光学レンズ302Rを介して図において3時の方向に出射する。ハーフミラー303Rは、電気光学装置10Rによる表示画像を6時方向に反射させる一方で、12時の方向から入射した光を透過させる。
【0136】
この構成において、ヘッドマウントディスプレイ300の装着者は、電気光学装置10L、10Rによる表示画像を、外の様子と重ね合わせたシースルー状態で観察することができる。
また、このヘッドマウントディスプレイ300において、視差を伴う両眼画像のうち、左眼用画像を電気光学装置10Lが表示し、右眼用画像を電気光学装置10Rが表示すると、装着者に、表示された画像があたかも奥行きや立体感を持つかのように知覚させることができる。
【0137】
なお、電気光学装置10を含む電子機器については、ヘッドマウントディスプレイ300のほかにも、ビデオカメラやレンズ交換式のデジタルカメラなどにおける電子式ビューファインダーにも適用可能である。
【0138】
[付記]
本開示の一態様(態様1)に係るDA変換回路は、第1容量素子と、第2容量素子と、接続容量と、第1スイッチと、中継線と、を含み、前記第1スイッチは、前記接続容量の一端と前記接続容量の他端との間に設けられ、前記中継線は、前記第1容量素子の第1端、前記第2容量素子の第1端、および、前記接続容量の一端に電気的に接続され、第1期間では、前記第1スイッチがオンまたはオフの一方の状態で、前記第1容量素子の第2端に、第1ビットに対応した電圧が印加され、前記第2容量素子の第2端に、第2ビットに対応した電圧が印加され、前記第1期間の後の第2期間では、前記第1スイッチがオンまたはオフの他方の状態で、前記第1容量素子の第2端に、前記第1ビットおよび第3ビットに対応した電圧が印加され、前記第2容量素子の第2端に、前記第2ビットおよび第4ビットに対応した電圧が印加される。
この態様1によれば、ビット数よりも少ない容量素子によって、当該ビットからなるデータをアナログの電圧に変化することができる。このため、DA変換回路における構成の簡略化および省スペース化を図ることが可能になる。
【0139】
態様1の具体的な態様(態様2)に係るDA変換回路は、前記第1ビットの重みが前記第3ビットの重みよりも大きく、前記第2ビットの重みが前記第4ビットの重みよりも大きく、前記第1スイッチは、前記第1期間でオン状態になり、前記第2期間でオフ状態になる。
この態様2によれば、重みの大きな第1ビットに応じて第1容量素子の第2端が電圧変化したとき、または、重みの大きな第2ビットに応じて第2容量素子の第2端が電圧変化したとき、当該電圧変化は、第1スイッチのオン状態により、圧縮されずに出力端に伝わる。重みの小さい第3ビットに応じて第1容量素子の第2端が電圧変化したとき、または、重みの小さな第4ビットに応じて第2容量素子の第2端が電圧変化したとき、当該電圧変化は、第1スイッチのオフ状態により、圧縮されて出力端(接続容量の他端)に伝わる。したがって、この態様によれば、出力端をビットの重みに応じて効率良く変化させることができる。
【0140】
態様2の具体的な態様(態様3)に係るDA変換回路は、前記第1期間よりも前の初期化期間では、前記第1容量素子の第1端および前記第2容量素子の第1端に所定電圧が印加され、前記第1容量素子の第2端および前記第2容量素子の第2端に第1電圧が印加され、前記第1期間では、前記第1容量素子の第2端に、前記第1ビットに基づいて前記第1電圧または第2電圧が印加され、前記第2容量素子の第2端に、前記第2ビットに基づいて前記第1電圧または前記第2電圧が印加され、前記第2期間では、前記第1容量素子の第2端に、前記第1ビットおよび前記第3ビットに基づいて、前記第1電圧、前記第2電圧または第3電圧のいずれかが印加され、前記第2容量素子の第2端に、前記第2ビットおよび前記第4ビットに基づいて、前記第1電圧、前記第2電圧または前記第3電圧のいずれかが印加される。
この態様3によれば、第1容量素子の第2端および第2容量素子の第2端に印加される電圧を第1電圧、第2電圧または第3電圧とすることができる。
【0141】
態様3の具体的な態様(態様4)に係るDA変換回路は、前記中継線と前記所定電圧の給電線との間に設けられ、前記初期化期間でオン状態になる第2スイッチを含む。
この態様4によれば、初期化期間における第2スイッチのオン状態により、第1容量素子および第2容量素子における電荷の蓄積状態が初期化される。
【0142】
態様1乃至態様4のいずれかの具体的な態様(態様5)に係るDA変換回路は、前記第2容量素子の容量サイズは、前記第1容量素子の容量サイズの2倍である。この態様5によれば、出力端から出力される電圧特性に線形性を持たせることが可能になる。
【0143】
態様3乃至態様5のいずれかの具体的な態様(態様6)に係るDA変換回路は、前記第1期間では、前記第1ビットに基づいて前記第1電圧または前記第2電圧を選択し、前記第2期間では、前記第1ビットおよび前記第3ビットに基づいて、前記第1電圧、前記第2電圧または前記第3電圧を選択して、当該選択した電圧を前記第1容量素子の第2端に印加する電圧選択回路を含む。
この態様6によれば、電圧選択回路により選択された電圧が、第1容量端子の第2端に印加される。なお、同様な電圧選択回路によって選択された電圧が、第2容量端子の第2端に印加される構成としてもよい。
【0144】
態様6の具体的な態様(態様7)に係るDA変換回路では、前記電圧選択回路が、前記第1期間で供給された第1ビットを記憶するメモリ回路を有し、前記第2期間では、前記メモリ回路に記憶された第1ビット、および、当該第2期間で供給された第3ビットに基づいて、前記第1電圧、前記第2電圧または前記第3電圧を選択する。
この態様7によれば、第2期間では、メモリ回路に記憶された第1ビット、および、当該第2期間で供給された第3ビットに基づいて、第1電圧、第2電圧または第3電圧のいずれかが選択される。このため、第1期間で第1ビットを、第2期間で第3ビットを、時分割で供給する構成が採用できるので、ビットの供給配線数を減らすことができる。
【0145】
態様8に係る電気光学装置は、態様1乃至態様7のいずれかのDA変換回路によってデータ信号に変換され、当該データ信号の電圧に基づいた光学状態になる電気光学素子を含む。この態様8によれば、電気光学装置に含まれるDA変換回路の構成の簡略化および省スペース化を図ることが可能になる。
態様9に係る電子機器は、態様8に係る電気光学装置を有する。この態様7によれば、電子機器の構成の簡略化および省スペース化を図ることが可能になる。
【符号の説明】
【0146】
10…電気光学装置、12…走査線、14…データ線、14b…中継線、100…表示領域、110…画素回路、121~125…トランジスター、130…OLED、140…容量素子、300…ヘッドマウントディスプレイ、500…DA変換回路、Ca…容量素子(第1容量素子)、Cb…容量素子(第2容量素子)、C0~C4…容量素子、Cser…容量素子(接続容量)、Cstsw…スイッチ(第1スイッチ)、Rsw…スイッチ(第2スイッチ)、510~514…電圧選択回路、Mem…メモリ回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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図17
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図19