(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】切断加工装置
(51)【国際特許分類】
B21F 11/00 20060101AFI20240625BHJP
H02K 15/04 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B21F11/00 B
H02K15/04 Z
B21F11/00 G
(21)【出願番号】P 2021100860
(22)【出願日】2021-06-17
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 龍生
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/111569(WO,A1)
【文献】特開平5-318219(JP,A)
【文献】特開平11-90570(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106583601(CN,A)
【文献】特開平6-45172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21F 11/00
H02K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台(10)と、
前記基台に対し往復動可能なユニット台(14)と、
前記ユニット台に対し同方向に往復動可能なスイング台(41)と、
前記基台に設けられ、前記ユニット台を駆動する第1駆動モータ(27)と、
前記ユニット台に設けられ、前記スイング台を駆動する第2駆動モータ(47)と、
前記ユニット台に設けられる第1固定刃(21)と、
前記ユニット台に回動可能に設けられる第1揺動レバー(25)と、
前記第1揺動レバーの一端に設けられ、前記第1固定刃とで挟み切り可能な第1揺動刃(22、23)と、
前記1揺動レバーの他端に設けられる第1カムフォロワ(17)と、
前記スイング台に設けられ、前記第1カムフォロワに係合する第1カム(16)と、を備える線材の切断加工装置。
【請求項2】
前記第1揺動刃は、前記第1固定刃の両側の近隣位置で挟み切り可能に一対備える、請求項1に記載の線材の切断加工装置。
【請求項3】
前記ユニット台に設けられる第2固定刃(31)と、
前記ユニット台に回動可能に設けられる第2揺動レバー(35)と、
前記第2揺動レバーの一端に設けられ、前記第2固定刃とで挟み切り可能な第2揺動刃(32、33)と、
前記第2揺動レバーの他端に設けられる第2カムフォロワ(37)と、
前記スイング台に設けられ、前記第2カムフォロワに係合する第2カム(36)と、を備える請求項1又は2に記載の線材の切断加工装置。
【請求項4】
前記第2揺動刃は、前記第2固定刃の両側の近隣位置で挟み切り可能に一対備える、請求項3に記載の線材の切断加工装置。
【請求項5】
前記線材の切断加工装置は、成形品(1)から延びる線材(4、5、6、7)の先端部を切断する切断加工装置である請求項1から4のいずれか一項に記載の線材の切断加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材の切断加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機のステータを製造するとき、巻線を形成する際に複数の線材同士を溶接する前、導体となる平角線を所定の長さに切断加工していた。
【0003】
この切断加工方法としては、特許文献1に示すように、平角線を所定の長さに切断する工程と、前記平角線の切断面の端縁のうち、前記切断方向の一方側あるいは他方側のうちの一方の端縁側にのみ面取りする面取り工程と、前記面取りを、加圧部材によって前記一方の端縁側を他方の端縁の側へ加圧して前記平角線を塑性変形させる工程と、を含む加工方法が知られている。
【0004】
この従来の加工方法によれば、平角線の面取り実施側と逆側に切断時のダレがある場合、その後の面取り工程における加圧によって平角線を塑性変形させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
回転電機のステータを製造する際、相間コンダクタを接合するとき、渡り線を含む一体成形品をステータコアに組付けてピン固定する構造が採用されるものでは、ステータコアの積圧は製品間で不均一であるため、ステータコアの積圧に合わせて一体成形品の渡り線を切断する必要がある。
【0007】
このステータコアにピン止めにより組み付ける前の一体成形品の渡り線を切断加工するにあたっては、特別な切断加工装置は知られていない。
ステータコアに組み付ける前の一体成形品について、当該成形品から突き出す渡り線を所定の長さに高精度に高効率に切断加工する必要がある。
【0008】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、隣り合う複数の線材を高精度に高速に切断加工する切断加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の線材の切断加工装置は、基台(10)と、前記基台に対し往復動可能なユニット台(14)と、前記ユニット台に対し同方向に往復動可能なスイング台(41)と、前記基台に設けられ、前記ユニット台を駆動する第1駆動モータ(27)と、前記ユニット台に設けられ、前記スイング台を駆動する第2駆動モータ(47)と、前記ユニット台に設けられる第1固定刃(21)と、前記ユニット台に回動可能に設けられる第1揺動レバー(25)と、前記第1揺動レバーの一端に設けられ、前記第1固定刃とで挟み切り可能な第1揺動刃(22)と、前記第1揺動レバーの他端に設けられる第1カムフォロワ(17)と、前記スイング台に設けられ、前記第1カムフォロワに係合する第1カム(16)と、を備える構成を採用する。
【0010】
本発明の切断加工装置によれば、線材を高精度に高速に切断加工することができるという効果がある。
【0011】
本発明の切断加工装置によれば、第1揺動刃を一対備えるものであれば、第1固定刃と一対の第1揺動刃に、隣り合う複数の線材を組み込むことで、小空間で高精度に高速に線材の先端部を切断加工することができる。
【0012】
切断対象となる線材をもつ成形品が環状のものであれば、環状の円環中心を旋回中心とし、成形品の有効半径に応じて第1駆動モータを駆動し、切断対象の位置に適合するように第1固定刃の位置を調整する。
【0013】
次いで、第2駆動モータの正転及び逆転駆動により、第1揺動刃を回動し、第1固定刃との挟み込み動作により、成形品のもつ複数の線材を高精度かつ高速に切断加工することができる。
【0014】
本発明の切断加工装置は、自動運転する設備に組み込むことで、さらに、複雑な形状の成形品のもつ線材を高精度に高効率に切断することができるという効果がある。
【0015】
本発明の切断加工装置によると、小空間に複雑に突き出す複数の線材をもつワークを高速に切断することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態による切断加工装置の斜視図。
【
図2】本発明の第1実施形態によるワークを用いたステータコアの斜視図。
【
図3】本発明の第1実施形態によるワークとその用途を示す図で、(A)はワークの正面図、(B)はワーク組付前のステータコアを示す正面図。
【
図4】本発明の第1実施形態による装置の部分模式図。
【
図7】本発明の第1実施形態による切断加工装置とワークの関係を示す模式的部分平面図。
【
図9】本発明の第1実施形態による切断加工装置とワークの関係を示す模式的部分斜視図。
【
図10】本発明の第1実施形態による動作の工程を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態による線材の切断加工装置を図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0018】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について
図1から
図10に基づいて説明する。
【0019】
<構成>
図1、
図4、
図5及び
図6に示すように、切断加工装置は、横断面形状コ字状の基台10の両脚の上にレール11、12が設けられている。レール11、12の上にユニット台14が矢印54、56方向に往復動可能に設けられている。
【0020】
基台10の一方の端に第1駆動モータに相当する第1サーボモータ27が設けられている。第1サーボモータ27の回転軸に第1ボールねじ28が取り付けられている。ユニット台14は、この第1ボールねじ28の回転により矢印54、56の方向に往復動可能になっている。第1ボールねじ28の停止時、その位置にユニット台14が基台10に対し仮固定される。
【0021】
図7から
図9に示すように、ユニット台14の上には、切断対象となるワーク(一体成形品)に相当するバスリング1のリング本体2の内周側の位置に内切断ユニット20が、同じく外周側の位置には外切断ユニット30が固定されている。
【0022】
内切断ユニット20は、
図7に示すように、ユニット本体26の上端に固定されるプレート50の側面に固定刃21を有する。ユニット本体26の支点19を中心に回動可能な揺動レバー25が設けられている。
【0023】
形状がL字状の揺動レバー25の一方の端部に一対の揺動刃22、23が固定刃21を挟むように設けられている。第1揺動刃22、23は、第1固定刃21の両側の近隣位置で後述する内渡り線4、5の先端部を挟み切り可能である。揺動レバー25の他方の端部は第1カムフォロワ17が形成されている。この第1カムフォロワ17は、後述するスイングユニット40のスイング台41に固定される第1カム16のカム面161に沿って係合可能に連結している。
【0024】
外切断ユニット30は、内切断ユニット20に向かい合うように、同様に設けられる。ユニット本体の上端に固定されるプレート51の側面に、内切断ユニット20の固定刃21に対向するように固定刃31を有する。ユニット本体の支点39を中心に回動可能な揺動レバー35が設けられている。
【0025】
形状がL字状の揺動レバー35の一方の端部に一対の揺動刃32、33が固定刃31を挟むように設けられている。第2揺動刃32、33は、第2固定刃31の両側の近隣位置で後述する内渡り線6、7の先端部を挟み切り可能である。揺動レバー35の他方の端部は第2カムフォロワ37が形成されている。この第2カムフォロワ37は、スイングユニット40のスイング台41に固定される第2カム36のカム面361に沿って係合可能に連結している。
【0026】
本実施形態において、切断対象となる複数の線材を有するワークに相当する一体成形品は、円環状のバスリング1である。
内切断ユニット20の揺動刃22、23は、バスリング1の円弧形状に合わせてバスリング1に干渉しないようにテーパ面221、231が形成されている。
【0027】
外切断ユニット30の揺動刃32、33は、直線状に形成されている。
【0028】
ユニット台14の上には、第2ボールねじ48を経由して可動部に相当するスイングユニット40のスイング台41を矢印55、57方向に往復動する第2サーボモータ47が固定されている。
【0029】
またスイングユニット40は、ユニット台14の上の内切断ユニット20と外切断ユニット30の配置方向に平行にスイング台41を移動可能になるように、第2ボールねじ48を第2サーボモータ47に連結している。
【0030】
第2サーボモータ47の駆動により第2ボールねじ48が正転または逆転すると、スイング台41が
図7に示す矢印55、57方向にユニット台14上で往復動可能になっている。
【0031】
ここに、本実施形態の切断対象となるワークに相当するバスリングの渡り線(切断対象)について説明する。
【0032】
図3(A)にバスリング1を示す。バスリング1は、電気的に接続されるバスバーに対応するように、複数の内渡り線と複数の外渡り線が形成される。
【0033】
バスリング1の有する内周側の内渡り線4、5、外周側の外渡り線6、7が切断対象となる実施形態について説明する。
【0034】
内切断ユニット20の支点19と外切断ユニット30の支点39とを結ぶ線上にバスリングの旋回中心59の位置を特定し、
図3(A)に示すバスリング1を逆さにした状態で、内切断ユニット20と外切断ユニット30の間に切断箇所を位置させる。
【0035】
切断された加工後のバスリング1は、
図3(B)に示すステータコアの上端部にピン固定される。これにより
図2に示すステータコアとなる。
【0036】
図9に示すように、ユニット本体26の固定刃21はプレート50に固定されている。揺動刃22、23は、プレート50の下側でユニット本体26に対し支点19を中心に回動可能になっている。揺動刃22と固定刃21との間に内渡り線4が、揺動刃23と固定刃21との間に内渡り線5が、挿入可能な位置関係にある。
【0037】
また外切断ユニット30は、バスリング1を旋回中心59の周りに
図8で反時計方向に僅かに回動することで、揺動刃32と固定刃31の間に外渡り線6が、同じく揺動刃33と固定刃31との間に外渡り線7が、挿入可能な位置関係にある。
【0038】
内切断ユニット20の揺動レバー25は、他端がスイングユニット40に取り付けられる。揺動レバー25の他端に形成される第1カムフォロワ17は、スイング台41に固定される第1カムに相当する内カム16のカム面161の輪郭に沿って連動する。
【0039】
外切断ユニット30の揺動レバー35についても、同様に、他端がスイングユニット40に取り付けられる。揺動レバー35の他端に形成される第2カムフォロワ37は、スイング台41に固定される第2カムに相当する外カム36のカム面361の輪郭に沿って連動する。
【0040】
<作動>
次に本実施形態の切断加工装置の作動について、
図7、
図8及び
図9に基づいて説明する。
【0041】
まず、本切断加工装置の切断対象となる
図7及び
図8に示すワークとしてのバスリング1は、
図3(A)に示すバスリング1を逆さ状態にすると、内渡り線4、5および外渡り線6、7が重力方向に突き出す状態になる。この状態のバスリング1を、図示しないワーク搬送装置によって
図7に示す位置に仮固定する。
【0042】
次に、内渡り線4、5、外渡り線6、7の順に切断する動作について説明する。
【0043】
図7及び
図8に示す状態を、ワークとしてのバスリング1と、内切断ユニット20及び外切断ユニット30との位置関係の初期状態とする。
【0044】
<内周側の内渡り線の切断>
図10(A)に示すように、この初期状態(原位置)からバスリング1の内周側の内渡り線4、5の切断を開始する。
【0045】
まず、
図10(A)に示す内周側の状態を原位置とする。次に第1サーボモータ27の駆動によりユニット台14を矢印56方向に
図10(B)に示す位置まで移動する。
【0046】
次いで、ユニット台14を仮固定し、第2サーボモータ47の駆動によりスイング台41を矢印55方向に移動すると、第1カムに相当する内カム16のカム面161に沿って回動するカムフォロワ17をもつ揺動レバー25が支点19の旋回中心として反時計方向に揺動し、
図10(C)に示すように揺動刃22、23が反時計方向に回動し、カット1の位置に移行する。これにより、内渡り線5が切断される。
【0047】
次いで、
図10(D)に示すように、第2サーボモータ47の駆動によりスイング台41を矢印57方向に移動すると、内カム16のカム面161に沿って回動するカムフォロワ17をもつ揺動レバー25が支点19の旋回中心として揺動し、
図10(D)に示すように揺動刃22、23が時計方向に回動し、カット2の位置に移行する。これにより、内渡り線4が切断される。
【0048】
次いで、第2サーボモータ47の駆動によりスイング台41を矢印55方向に移動すると、揺動刃22、23が反時計方向に回動し、
図10(B)の元に位置に戻り、内周側の内渡り線4、5の切断加工を完了する。
【0049】
<外周側の外渡り線の切断>
次に、バスリングの外周側の外渡り線6、7の切断に移行する。
【0050】
図示しないワーク搬送装置の駆動により旋回中心59を中心としてバスリング1を回動方向に位置制御し、
図10に示す外周側の原位置(A)に示す位置に移行する。
【0051】
上記同様に、この初期状態(原位置)からバスリング1の外周側の外渡り線6、7の切断を開始する。
【0052】
次に第1サーボモータ27の駆動によりユニット台14を矢印54方向に
図10(B)に示す位置まで移動する。
【0053】
次いで、ユニット台14を仮固定し、第2サーボモータ47の駆動によりスイング台41を矢印55方向に移動すると、第2カムに相当する外カム36のカム面361に沿って回動する第2カムフォロワ37をもつ第2揺動レバー35が支点39を旋回中心として時計方向に揺動し、
図10(C)に示すように第2揺動レバー32、33が時計方向に回動し、カット1の位置に移行する。これにより、外渡り線6が切断される。
【0054】
次いで、
図10(D)に示すように、第2サーボモータ47の駆動によりスイング台41を矢印57方向に移動すると、外カム36のカム面361に沿って回動する第2カムフォロワ37をもつ第2揺動レバー35が支点39の旋回中心として揺動し、
図10(D)に示すように揺動刃32、33が時計方向に回動し、カット2の位置に移行する。これにより、外渡り線7が切断される。
【0055】
次いで、第2サーボモータ47の駆動によりスイング台41を矢印55方向に移動すると、揺動刃32、33が反時計方向に回動し、
図10(B)の元に位置に戻り、外周側の外渡り線6、7の切断加工を完了する。
【0056】
<本実施形態の作用効果>
したがって、
図3に示すように、内渡り線4、5の先端部と外渡り線6、7の先端部について、複数の渡り線を同水準位置で切断箇所aを切断することができる。これにより、コア高さhが不均一長さにあっても、
図3(B)に示すステータコア8に
図3(A)に示すバスリング1を矢印60方向にピン接合したとき、コンダクタ高さ(X+h)を一定になるようにすることができる。
【0057】
上述した切断加工装置によれば、スイング式2枚刃のカッタによりカット移動時間を低減することができる。また、内周側と外周側とで切断ユニットの構成を簡略にできる。さらに駆動装置第2サーボモータ47の共通化により構成を簡素にできる。またさらに外径の異なるバスリングについてユニット台14の直線移動の変更だけで容易に切断加工することができる。
揺動レバーのアーム比を調整することで、第2サーボモータを小出力モータで太線の切断をすることができるという効果がある。
複雑な形状のバスリング1の内周側と外周側とで渡り線を短時間で高効率に切断することができる。
【0058】
図7に示す実施形態の切断対象となるバスリングは、内周側の内渡り線と外周側の外渡り線とが多数箇所あるが、本実施形態によれば、バスリングを旋回中心59を中心として回動し、順次、本装置の動作と整合することで、これらを高効率に高精度に切断することができる。
【0059】
<比較例との対比>
以下に、線材の切断加工装置として、一般に知られる比較例1及び比較例2と対比して説明する。
【0060】
比較例1
ロボットによるエアニッパ方式の切断加工装置があるが、この装置によると、次の特徴がある。
・ロボットによる1ケ切断は、一個のワークに複数の切断を要する箇所が複数個ある場合、切断加工に時間が掛かり、量産ライン時には複数工程での切断となり、設備が大型になる。
・複数同時切断の場合には、それぞれのエアニッパに位置調整機構が必要となり、設備が大型になる。
・筒形のワーク上面周縁から上方向に突き出す渡り線の切断は、外径が異なる筒形のワーク毎にエアニッパの位置調整機構が必要になり、設備が大型化する。
・外径が異なる複数のワークについて一種のニッパで対応するにはニッパの位置変更を行わなければならず、調整に工数が増える。
・渡り線が密集している場合は、ニッパ爪の入る空間が制限される、等の問題がある。
・本実施形態で示したワーク(バスリング)に相当する一体成形品の上面から突き出す線材の切断は、径違い製品への対応も複数のニッパの位置変更を行わなければならず、調整に時間が掛かる。
・渡り線が密集しており、ニッパ爪の入るスペースがない。
【0061】
比較例2
プレス式せん断加工方式の切断加工装置があるが、この装置によると、次の特徴がある。
・切断対象となる複数の線材間の隙間が少なく、パンチ・ダイの強度不足となる。
・多数の線材を同時切断する場合は、切断力が大きくなり大出力の動力源が必要となる(1箇所3,500N×12=42,000N)。
・線材を1本ずつ切断する場合、動力源は小さくできるが、順次駆動するカム機構などが必要となり設備構造が複雑となる。
・外径の異なるワーク、上方に複雑に渡り線が延びる形態のワークでは、一つの切断加工装置で対応することが困難であった。
【0062】
上記比較例1及び比較例2に対し、本実施形態では、切断ユニットの所定の箇所にワークを配置すれば、第1サーボモータ及び第2サーボモータを駆動すると、隣り合う複数の線材を小空間であっても高精度に高速に切断加工することができる。
【0063】
(他の実施形態)
本実施形態では、バスリングから延びる内渡り線と外渡り線の先端を切断する例について説明したが、被加工品はこの例に限られない。被加工品は、成形品から延びる線材の先端を切断する例について説明した。
【0064】
本発明の切断加工装置は、固定刃と揺動刃の間に被加工品を挿入できるのであれば、どのような被加工品にも適用することができる。
【0065】
本発明の切断加工装置の切断対象となる切断箇所の個数は制限されない。切断対象はリングの内周箇所、外周箇所も制限されないし、内周箇所の個数も外周箇所の個数も制限されない。
【0066】
本発明の切断加工装置による切断対象となるワークに相当するバスリングの有効半径は限定されない。バスリングの旋回中心から内渡り線又は外渡り線までの有効半径は限定されない。
【0067】
本発明の切断加工装置にバスリングを搬送する搬送装置は、切断加工装置の内切断ユニットと外切断ユニットの間の設定した位置にバスリングの切断すべき箇所を整合させる。バスリングの形状、大きさに整合するように搬送装置によるワークの位置決めを行う。
【0068】
以上、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 バスリング(成形品)、
4、5 内渡り線(線材)、
6、7 外渡り線(線材)、
10 基台、
14 ユニット台、
16 内カム(第1カム)、
17 カムフォロワ(第1カムフォロワ)、
21 固定刃(第1固定刃)、
22、23 揺動刃(第1揺動刃)、
25 揺動レバー(第1揺動レバー)、
27 第1サーボモータ(第1駆動モータ)、
31 固定刃(第2固定刃)、
32、33 揺動刃(第2揺動刃)、
35 揺動レバー(第2揺動レバー)、
36 外カム(第2カム)、
37 第2カムフォロワ、
41 スイング台、
47 第2サーボモータ(第2駆動モータ)。