(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20240625BHJP
H01M 50/463 20210101ALI20240625BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20240625BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M50/463 Z
H01M50/105
H01M10/04 Z
(21)【出願番号】P 2021130652
(22)【出願日】2021-08-10
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】和泉 潤
(72)【発明者】
【氏名】大野 雅人
【審査官】山本 佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-125941(JP,A)
【文献】特開2007-250449(JP,A)
【文献】特開2007-257859(JP,A)
【文献】特開2010-199282(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0115020(US,A1)
【文献】中国実用新案第210224209(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04 - 10/0587
H01M 50/40 - 50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極層、セパレータ層および負極層を有する発電単位を備える電池であって、
厚さ方向に沿った平面視において、前記正極層および前記負極層の一方の面積は、他方の面積より大きく、
前記発電単位は、前記正極層および前記負極層が対向しない非対向領域を有し、
前記非対向領域には、孔または切り欠きである第1貫通部が配置され、
前記電池は、一対の前記発電単位を少なくとも含む積層電極体を備え、
前記一対の前記発電単位は、前記第1貫通部に対応する第2貫通部を有する第1集電体を介して、前記厚さ方向に沿って積層され、
前記一対の前記発電単位において、対向する2つの前記セパレータ層は、前記第1貫通部および前記第2貫通部に位置する第1固定部により、固定されて
おり、
前記第1固定部は、前記対向する2つの前記セパレータ層とは異なる部材を含む、電池。
【請求項2】
前記第1固定部は、電解液が通過する空隙を有する、
請求項1に記載の電池。
【請求項3】
正極層、セパレータ層および負極層を有する発電単位を備える電池であって、
厚さ方向に沿った平面視において、前記正極層および前記負極層の一方の面積は、他方の面積より大きく、
前記発電単位は、前記正極層および前記負極層が対向しない非対向領域を有し、
前記非対向領域には、孔または切り欠きである第1貫通部が配置され、
前記電池は、一対の前記発電単位を少なくとも含む積層電極体を備え、
前記一対の前記発電単位は、前記第1貫通部に対応する第2貫通部を有する第1集電体を介して、前記厚さ方向に沿って積層され、
前記一対の前記発電単位において、対向する2つの前記セパレータ層は、前記第1貫通部および前記第2貫通部に位置する第1固定部により、固定されて
おり、
前記第1固定部は、電解液が通過する空隙を有する、電池。
【請求項4】
前記第1固定部は、電解液が通過する空隙を有しない、
請求項1に記載の電池。
【請求項5】
前記一対の前記発電単位は、並列接続されている、請求項1から
請求項4までのいずれかの請求項に記載の電池。
【請求項6】
前記積層電極体は、前記並列接続された前記一対の前記発電単位である発電構造体を有し、
一対の前記発電構造体は、第2集電体を介して、前記厚さ方向に沿って積層され、
前記一対の前記発電構造体において、対向する2つの前記セパレータ層は、第2固定部により、固定されている、
請求項5に記載の電池。
【請求項7】
前記一対の前記発電単位は、直列接続されている、請求項1から
請求項4までのいずれかの請求項に記載の電池。
【請求項8】
正極層、セパレータ層および負極層を有する発電単位を備える電池であって、
厚さ方向に沿った平面視において、前記正極層および前記負極層の一方の面積は、他方の面積より大きく、
前記発電単位は、前記正極層および前記負極層が対向しない非対向領域を有し、
前記非対向領域には、孔または切り欠きである第1貫通部が配置され、
前記電池は、一対の前記発電単位を少なくとも含む積層電極体を備え、
前記一対の前記発電単位は、前記第1貫通部に対応する第2貫通部を有する第1集電体を介して、前記厚さ方向に沿って積層され、
前記一対の前記発電単位において、対向する2つの前記セパレータ層は、前記第1貫通部および前記第2貫通部に位置する第1固定部により、固定されて
おり、
前記電池は、前記積層電極体を封止する、ラミネート型の外装体を備え、
前記積層電極体は、前記外装体側の表面に、外側セパレータ層を有し、
前記外側セパレータ層と、前記発電単位における前記セパレータ層とは、第3固定部により、固定されている、電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
正極層、セパレータ層および負極層を有する発電単位を、厚さ方向に沿って複数積層した電池が知られている。例えば、特許文献1には、第1電極板を準備する第1準備工程と、第2電極板を準備する第2準備工程と、第1電極板と第2電極板との間に絶縁体を介在させながら、第1電極活物質層と第2電極活物質層とが対向するように第1電極板および第2電極板を積層方向に積層して、電極積層体を形成する積層工程と、を備えた積層型電池の製造方法が開示されている。特許文献1では、第1電極板と第2電極板との位置ずれを抑制するために、第1電極板に、第1溶着材料層を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているように、第1溶着材料層を設けることで、電極体の位置ずれを抑制できる反面、電池のエネルギー密度(体積当たりのエネルギー密度)が低下する場合がある。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、エネルギー密度の低下を抑制しつつ、電極体の位置ずれを抑制可能な電池を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示においては、正極層、セパレータ層および負極層を有する発電単位を備える電池であって、厚さ方向に沿った平面視において、上記正極層および上記負極層の一方の面積は、他方の面積より大きく、上記発電単位は、上記正極層および上記負極層が対向しない非対向領域を有し、上記非対向領域には、孔または切り欠きである第1貫通部が配置され、上記電池は、一対の上記発電単位を少なくとも含む積層電極体を備え、上記一対の上記発電単位は、上記第1貫通部に対応する第2貫通部を有する第1集電体を介して、上記厚さ方向に沿って積層され、上記一対の上記発電単位において、対向する2つの上記セパレータ層は、上記第1貫通部および上記第2貫通部に位置する第1固定部により、固定されている、電池を提供する。
【0007】
本開示によれば、非対向領域に配置された第1貫通部に位置する第1固定部により、対向する2つのセパレータ層が固定されていることから、エネルギー密度の低下を抑制しつつ、電極体の位置ずれを抑制できる。
【0008】
上記開示において、上記第1固定部は、上記対向する2つの前記セパレータ層とは異なる部材を含んでいてもよい。
【0009】
上記開示において、上記第1固定部は、上記対向する2つの前記セパレータ層の少なくとも一方の一部を含んでいてもよい。
【0010】
上記開示において、上記第1固定部は、電解液が通過する空隙を有していてもよい。
【0011】
上記開示において、上記第1固定部は、電解液が通過する空隙を有しなくてもよい。
【0012】
上記開示において、上記一対の上記発電単位は、並列接続されていてもよい。
【0013】
上記開示において、上記積層電極体は、上記並列接続された上記一対の上記発電単位である発電構造体を有し、一対の上記発電構造体は、第2集電体を介して、上記厚さ方向に沿って積層され、上記一対の上記発電構造体において、対向する2つの上記セパレータ層は、第2固定部により、固定されていてもよい。
【0014】
上記開示において、上記一対の上記発電単位は、直列接続されていてもよい。
【0015】
上記開示において、上記電池は、上記積層電極体を封止する、ラミネート型の外装体を備え、上記積層電極体は、上記外装体側の表面に、外側セパレータ層を有し、上記外側セパレータ層と、上記発電単位における上記セパレータ層とは、第3固定部により、固定されていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本開示における電池は、エネルギー密度の低下を抑制しつつ、電極体の位置ずれを抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示における発電単位を例示する概略平面図および概略断面図である。
【
図2】本開示における、一対の発電単位を例示する概略断面図である。
【
図3】本開示における、一対の発電単位を例示する概略断面図である。
【
図4】本開示における発電単位を例示する概略断面図である。
【
図5】本開示における発電単位を例示する概略平面図である。
【
図6】本開示における、一対の発電単位を例示する概略断面図である。
【
図7】本開示における積層電極体を例示する概略断面図である。
【
図8】本開示における積層電極体を例示する概略断面図である。
【
図9】本開示における電池を例示する概略断面図である。
【
図10】本開示における積層電極体の製造方法を例示する概略断面図である。
【
図11】本開示における積層電極体の製造方法を例示する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示における電池について、図面を用いて詳細に説明する。以下に示す各図は、模式的に示したものであり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。また、各図において、部材の断面を示すハッチングを適宜省略している。
【0019】
図1(a)は、本開示における発電単位を例示する概略平面図であり、
図1(b)は
図1(a)のA-A断面図である。なお、
図1(a)では、便宜上、セパレータ層の記載を省略している。
図1(b)に示すように、発電単位10は、正極層1、セパレータ層3および負極層2を、厚さ方向D
Tに沿って、この順に有する。また、負極層2の面積は、正極層1の面積より大きい。負極層2の面積を正極層1の面積より相対的に大きくすることで、デンドライトの析出が抑制される。また、
図1(b)に示すように、正極層1および負極層2が対向する領域を対向領域Pとし、正極層1および負極層2が対向しない領域を非対向領域Qとする。
図1(a)、(b)に示すように、非対向領域Qには、孔である第1貫通部7が配置されている。
【0020】
また、
図1(c)は、本開示における発電単位を例示する概略平面図であり、
図1(d)は
図1(c)のA-A断面図である。なお、
図1(c)では、便宜上、セパレータ層の記載を省略している。
図1(c)、(d)に示すように、非対向領域Qに、切り欠きである第1貫通部7が配置されていてもよい。
【0021】
本開示における電池は、一対の発電単位を少なくとも備える。
図2は、本開示における、一対の発電単位を例示する概略断面図である。
図2に示すように、一対の発電単位(発電単位10Aおよび発電単位10B)は、第1集電体Xを介して、厚さ方向D
Tに沿って積層されている。
図2において、発電単位10Aにおける負極層2と、発電単位10Bにおける負極層2とは、第1集電体Xである負極集電体5を介して、電気的に接続されている。すなわち、発電単位10Aおよび発電単位10Bは並列接続されている。また、第1集電体Xは、発電単位10Aにおける第1貫通部7a、および、発電単位10Bにおける第1貫通部7bに対応する位置に、第2貫通部8を有する。発電単位10Aにおけるセパレータ層3と、発電単位10Bにおけるセパレータ層3とは、第1貫通部7a、第2貫通部8および第1貫通部7bを介して対向している。第1貫通部7a、第2貫通部8および第1貫通部7bには、第1固定部11が配置されており、対向する2つのセパレータ層3は第1固定部11により固定されている。
【0022】
図3は、本開示における、一対の発電単位を例示する概略断面図である。
図3に示すように、一対の発電単位(発電単位10Aおよび発電単位10B)は、第1集電体Xを介して、厚さ方向D
Tに沿って積層されている。
図3において、発電単位10Aにおける負極層2と、発電単位10Bにおける正極層1とは、第1集電体Xである双極集電体6を介して、電気的に接続されている。すなわち、発電単位10Aおよび発電単位10Bは直列接続されている。また、第1集電体Xは、発電単位10Aにおける第1貫通部7に対応する位置に、第2貫通部8を有する。発電単位10Aにおけるセパレータ層3と、発電単位10Bにおけるセパレータ層3とは、第1貫通部7および第2貫通部8を介して対向している。第1貫通部7および第2貫通部8には、第1固定部11が配置されており、対向する2つのセパレータ層3は第1固定部11により固定されている。
【0023】
本開示によれば、非対向領域に配置された第1貫通部に位置する第1固定部により、対向する2つのセパレータ層が固定されていることから、エネルギー密度の低下を抑制しつつ、電極体の位置ずれを抑制できる。上述したように、溶着材料層を設けることで、電極体の位置ずれを抑制できる反面、電池のエネルギー密度(体積当たりのエネルギー密度)が低下する場合がある。これに対して、本開示においては、非対向領域に配置された第1貫通部に、第1固定部を設ける。そのため、電池のエネルギー密度が低下することを抑制できる。さらに、第1固定部を用いて、対向する2つのセパレータ層を固定することから、電極体の位置ずれが生じることを抑制できる。
【0024】
1.発電単位
本開示における発電単位は、正極層、セパレータ層および負極層を有する。また、正極層および負極層の一方の面積は、他方の面積より大きい。すなわち、正極層の面積は、負極層の面積より大きくてもよく、負極層の面積より小さくてもよい。デンドライトの析出を抑制する観点では、負極層の面積が、正極層の面積より大きいことが好ましい。また、正極層および負極層において、大きい層の面積をS1とし、小さい層の面積をS2とする。S2に対するS1の割合(S1/S2)は、例えば1.03以上であり、1.05以上であってもよい。一方、S1/S2の上限は特に限定されないが、S1/S2の値が大きいと、電池のエネルギー密度が低下する場合がある。なお、正極層または負極層の面積とは、正極層または負極層の外縁から特定される図形の面積をいう。
【0025】
正極層、セパレータ層および負極層の平面視形状は、特に限定されないが、それぞれ、例えば、正方形、長方形等の矩形;真円、楕円等の円形が挙げられる。
【0026】
発電単位は、正極層および負極層が対向しない非対向領域を有する。上述したように、正極層および負極層は面積が異なることから、厚さ方向に沿って平面視した場合に、正極層および負極層が対向(重複)しない非対向領域が生じる。非対向領域には、孔または切り欠きである第1貫通部が配置される。例えば
図4(a)、(c)に示すように、第1貫通部7の幅をWとした場合、Wは、例えば0.5mm以上、3mm以下であり、1mm以上、2mm以下であってもよい。また、第1貫通部が孔である場合、その平面視形状は、特に限定されないが、例えば、正方形、長方形等の矩形;真円、楕円等の円形が挙げられる。
【0027】
図4(a)に示すように、第1貫通部7が孔である場合、第1貫通部7は、内側(負極層2の重心に近い側)に位置する端部T
1と、外側(負極層2の重心から遠い側)に位置する端部T
2と、を有する。
図4(a)に示すように、第1貫通部7における端部T
1は、厚さ方向に沿った平面視において、正極層1の端部T
3より外側に存在していていもよい。一方、
図4(b)に示すように、第1貫通部7における端部T
1は、厚さ方向に沿った平面視において、正極層1の端部T
3と重複していてもよい。また、特に図示しないが、第1貫通部における端部は、厚さ方向に沿った平面視において、正極層の端部より内側に存在していてもよい。本開示における端部T
3は、相対的に面積が小さい電極層の端部である。
図4(a)、(b)では、正極層1の面積が負極層2の面積より小さいため、端部T
3は、正極層1の端部に該当する。一方、正極層の面積が負極層の面積より大きい場合、端部T
3は、負極層の端部に該当する。
【0028】
また、
図4(c)に示すように、第1貫通部7が切り欠きである場合、第1貫通部7は、端部T
1を有し、
図4(a)、(b)における端部T
2を有しない。第1貫通部7が切り欠きである場合、非対向領域の面積が小さい場合であっても、第1貫通部7を配置しやすいという利点がある。また、
図4(c)における端部T
1は、厚さ方向に沿った平面視において、正極層1の端部T
3より外側に存在しているが、端部T
1は、厚さ方向に沿った平面視において、正極層1の端部T
3と重複していてもよく、正極層1の端部T
3より内側に存在していてもよい。
【0029】
また、
図1(a)~(d)に示すように、発電単位10は、第1貫通部7を複数有していてもよい。
図1(a)~(d)では、一対の第1貫通部7が、対向領域Pを介して、対向するように配置されている。一方、
図5は、本開示における発電単位を例示する概略平面であり、便宜上、セパレータ層の記載を省略している。
図5(a)に示すように、発電単位10は、第1貫通部7を1つのみ有していてもよい。この場合、第1貫通部7は孔であることが好ましい。切り欠きに比べて、等方的に位置ずれを抑制できるからである。一方、第1貫通部が切り欠きである場合、
図1(c)に示すように、一対の第1貫通部7が、対向領域Pを介して、対向するように配置されていることが好ましい。対向するように配置することで、位置ずれに対する等方性を向上させることができる。また、
図5(b)に示すように、第1貫通部7は、負極層2(相対的に面積が大きい層)の角に配置されていてもよく、
図5(c)に示すように、第1貫通部7は、負極層2(相対的に面積が大きい層)の角および辺に配置されていてもよい。
【0030】
本開示における発電単位は、正極層、セパレータ層および負極層を有する。正極層は、少なくとも正極活物質を含有する。正極活物質としては、例えば、酸化物活物質が挙げられる。酸化物活物質としては、例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2等の岩塩層状型活物質、LiMn2O4等のスピネル型活物質、LiFePO4等のオリビン型活物質が挙げられる。正極活物質の形状は、例えば粒子状である。負極層は、少なくとも負極活物質を含有する。負極活物質としては、例えば、Li、Si等の金属活物質、グラファイト等のカーボン活物質、Li4Ti5O12等の酸化物活物質が挙げられる。負極活物質の形状は、例えば、粒子状、箔状である。
【0031】
セパレータ層は、通常、電解液が通過する空隙を有する。セパレータ層の材料としては、例えば、樹脂、ガラス、セラミックスが挙げられる。上記樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂;セルロース類;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂が挙げられる。セパレータ層としては、例えば、上記樹脂を含有する多孔膜、セラミックの多孔膜、上記樹脂を含有する不織布、ガラス繊維不織布が挙げられる。電解液は、通常、支持塩および溶媒を含有する。支持塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4等の無機塩;LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2等の有機塩が挙げられる。溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)等の環状カーボネート;ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の鎖状カーボネートが挙げられる。
【0032】
2.積層電極体
本開示における積層電極体は、一対の発電単位を少なくとも含む。
図2に示すように、一対の発電単位(発電単位10Aおよび発電単位10B)は、第1集電体Xを介して、厚さ方向D
Tに沿って積層されている。また、第1集電体Xは、発電単位10Aにおける第1貫通部7a、および、発電単位10Bにおける第1貫通部7bに対応する位置に、第2貫通部8を有する。第2貫通部8は、厚さ方向D
Tに沿った平面視において、第1貫通部7aと少なくとも一部で重複している。同様に、第2貫通部8は、厚さ方向D
Tに沿った平面視において、第1貫通部7bと少なくとも一部で重複している。このように、第1貫通部および第2貫通部は、通常、厚さ方向に沿った平面視において、少なくとも一部が重複している。
【0033】
また、発電単位10Aにおけるセパレータ層3と、発電単位10Bにおけるセパレータ層3とは、第1貫通部7a、第2貫通部8および第1貫通部7bを介して対向している。第1貫通部7a、第2貫通部8および第1貫通部7bには、第1固定部11が配置されており、対向する2つのセパレータ層3は第1固定部11により固定されている。
【0034】
第1固定部の材料としては、例えば、樹脂が挙げられる。上記樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂が挙げられる。上記樹脂の具体例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂;セルロース類;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂が挙げられる。特に、本開示においては、セパレータ層および第1固定部がオレフィン系樹脂を含有することが好ましい。第1固定部によってセパレータ層が強固に固定されるからである。
【0035】
第1固定部は、対向する2つのセパレータ層とは異なる部材を含んでいてもよい。例えば
図2では、第1固定部11が、対向する2つのセパレータ層3とは異なる部材から構成されている。一方、第1固定部は、対向する2つのセパレータ層の少なくとも一方の一部を含んでいてもよい。例えば
図6(a)では、対向する2つのセパレータ層3の一方が突起部3aを有し、その突起部3aが、負極層2における第1貫通部、および、負極集電体5における第2貫通部に挿入されている。すなわち、第1固定部11がセパレータ層3の突起部3aから構成されている。一方、
図6(b)では、対向する2つのセパレータ層3の両方が突起部3aを有し、それらの突起部3aが、それぞれ、負極層2における第1貫通部、および、負極集電体5における第2貫通部に挿入されている。この場合も、
図6(a)と同様に、第1固定部11がセパレータ層3の突起部3aから構成されている。また、特に図示しないが、対向する2つのセパレータ層が突起部を有さない場合であっても(例えば、
図2に示すように、対向する2つのセパレータ層3が、平坦形状を有する場合であっても)、対向する2つのセパレータ層が厚さ方向に歪んだ状態で直接接合することで、互いに固定されていてもよい。この場合も、第1固定部が、対向する2つのセパレータ層の少なくとも一方の一部を含む態様であるといえる。
【0036】
第1固定部は、電解液が通過する空隙を有していてもよい。積層電極体は、複数の発電単位が積層された構造を有するため、電解液は、経時的に積層電極体の底部に溜まりやすい。これに対して、第1固定部が空隙を有することで、毛細管現象により、底部に溜まった電解液を、積層電極体全体に拡散させることができる。一方、第1固定部は、電解液が通過する空隙を有しなくてもよい。例えば、電極体の位置ずれを効果的に抑制する場合、空隙を有しない第1固定部を用いて、対向するセパレータ層を強固に固定することが好ましい。
【0037】
図7に示すように、積層電極体15は、並列接続された一対の発電単位である発電構造体を複数有していてもよい。具体的に、
図7における積層電極体15は、並列接続された一対の発電単位(発電単位Aおよび発電単位B)である発電構造体10αと、並列接続された一対の発電単位(発電単位Cおよび発電単位D)である発電構造体10βと、を有する。
【0038】
さらに、一対の発電構造体(発電構造体10αおよび発電構造体10β)は、第2集電体Yを介して、厚さ方向D
Tに沿って積層されている。
図7において、発電構造体10αの発電単位10Bにおける正極層1と、発電構造体10βの発電単位10Cにおける正極層1とは、第2集電体Yである正極集電体4を介して、電気的に接続されている。また、一対の発電構造体(発電構造体10αおよび発電構造体10β)において、発電構造体10αの発電単位10Bにおけるセパレータ層3と、発電構造体10βの発電単位10Cにおけるセパレータ層3とは、対向している。対向する2つのセパレータ層3は、第2固定部12により固定されている。その結果、積層電極体15における全てのセパレータ層3は、第1固定部11および第2固定部12により、互いに固定されている。第2固定部12の詳細については、上述した第1固定部11と同様である。第2固定部12は、第1固定部11とは異なり、通常、第1貫通部および第2貫通部には位置しない。第2固定部12と、第1固定部11とは、厚さ方向に沿った平面視において、少なくとも一部が重複するように配置されていてもよい。
【0039】
図8に示すように、積層電極体15は、直列接続された複数の発電単位を有していてもよい。具体的に、
図8における積層電極体15では、発電単位A、発電単位B、発電単位Cおよび発電単位Dが厚さ方向D
Tに沿って積層されており、発電単位A~Dは直列接続されている。隣り合う発電単位において、対向する2つのセパレータ層3は、第1固定部11により固定されている。その結果、積層電極体15における全てのセパレータ層3は、第1固定部11により、互いに固定されている。
【0040】
図9に示すように、電池100は、積層電極体15を封止する、ラミネート型の外装体20を備えていてもよい。
図9において、積層電極体15、外装体側20の表面に、外側セパレータ層31を有する。外側セパレータ層31と、発電単位10におけるセパレータ層3とは、第3固定部13により、固定されていてもよい。第3固定部13を設けることで、電極体の位置ずれを効果的に抑制できる。第3固定部13の詳細については、上述した第1固定部11と同様である。第3固定部13は、
図9に示すように、第1貫通部および第2貫通部に位置しなくてもよく、
図8に示すように、第1貫通部(発電単位Dにおける貫通部)、および、電極集電体(負極集電体5)の貫通部に位置していてもよい。
【0041】
また、
図9に示すように、第3固定部13と、第1固定部11とは、厚さ方向に沿った平面視において、少なくとも一部が重複するように配置されていてもよい。また、外装体20と、外側セパレータ層31とは、厚さ方向に沿った平面視において、少なくとも第3固定部13と重複する位置において、互いに融着していてもよい。また、外装体20と、外側セパレータ層31とは、外側セパレータ層31の全面において、互いに融着していてもよい。
【0042】
本開示における積層電極体の形成方法は、特に限定されない。
図10は、本開示における積層電極体の製造方法を例示する概略断面図である。具体的には、
図2に示すように、並列接続された一対の発電単位(発電単位Aおよび発電単位B)を有する積層電極体の製造方法を例示する概略断面図である。
【0043】
まず、
図10(a)に示すように、負極集電体5の両面に負極層2が形成された負極を準備する。次に、
図10(b)に示すように、負極に対して、パンチ加工またはレーザー加工を行い、第1貫通部7a、第2貫通部8および第1貫通部7bを形成する。次に、
図10(c)に示すように、第1貫通部7a、第2貫通部8および第1貫通部7bに第1固定部11を配置する。次に、
図10(d)に示すように、2つの負極層2の表面上に、それぞれ、セパレータ層3を配置する。この際、厚さ方向に沿った平面視において、第1固定部11を覆うように、2つのセパレータ層3を配置する。次に、2つのセパレータ層3の表面上に、それぞれ、正極(正極層1および正極集電体4)を配置する。ここで、
図10(d)において、2つのセパレータ層3を配置した後の任意のタイミングで、2つのセパレータ層3と第1固定部11とを接合する。これにより、積層電極体15が得られる。2つのセパレータ層3および第1固定部11を接合する方法としては、例えば、ヒートシールが挙げられる。
【0044】
また、
図11は、本開示における積層電極体の製造方法を例示する概略断面図である。具体的には、
図3に示すように、直列接続された一対の発電単位(発電単位Aおよび発電単位B)を有する積層電極体の製造方法を例示する概略断面図である。
【0045】
まず、
図11(a)に示すように、双極集電体6と、双極集電体6の一方の表面側に形成された正極層1と、双極集電体6の他方の表面側に形成された負極層2とを有する双極電極を準備する。次に、
図11(b)に示すように、双極電極に対して、パンチ加工またはレーザー加工を行い、第1貫通部7および第2貫通部8を形成する。次に、
図11(c)に示すように、第1貫通部7および第2貫通部8に第1固定部11を配置する。次に、
図11(d)に示すように、正極層1および負極層2の表面上に、それぞれ、セパレータ層3を配置する。この際、厚さ方向に沿った平面視において、第1固定部11を覆うように、2つのセパレータ層3を配置する。次に、負極層2側のセパレータ層3の表面上に、正極(正極層1および正極集電体4)を配置し、正極層1側のセパレータ層3の表面上に、負極(負極層2および負極集電体5)を配置する。ここで、
図11(d)において、2つのセパレータ層3を配置した後の任意のタイミングで、2つのセパレータ層3と第1固定部11とを接合する。これにより、積層電極体15が得られる。
【0046】
3.電池
本開示における電池の種類は、特に限定されないが、典型的には、リチウムイオン二次電池である。さらに、本開示における電池の用途は、特に限定されないが、例えば、ハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド自動車または電気自動車の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、本開示における電池は、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【0047】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0048】
1 … 正極層
2 … 負極層
3 … セパレータ層
4 … 正極集電体
5 … 負極集電体
6 … 双極集電体
7 … 第1貫通部
8 … 第2貫通部
10 … 発電単位
11 … 第1固定部
12 … 第2固定部
13 … 第3固定部
15 … 積層電極体
20 … 外装体
100 … 電池