(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】光学的測距装置
(51)【国際特許分類】
G01S 17/931 20200101AFI20240625BHJP
G01S 7/484 20060101ALI20240625BHJP
G01S 7/481 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
G01S17/931
G01S7/484
G01S7/481 Z
(21)【出願番号】P 2021166131
(22)【出願日】2021-10-08
【審査請求日】2023-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2020192593
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植野 晶文
(72)【発明者】
【氏名】林内 政人
(72)【発明者】
【氏名】水野 文明
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-033655(JP,A)
【文献】特開平11-237211(JP,A)
【文献】特開平10-250509(JP,A)
【文献】特開2005-082124(JP,A)
【文献】特開2016-024316(JP,A)
【文献】特開2014-109686(JP,A)
【文献】特開2011-133560(JP,A)
【文献】特開2021-096070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-17/95
G01C 3/06- 3/08
G01B11/00-11/30
G02B26/10-26/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的測距装置(10、11、12)であって、
発光部(21)と、
前記発光部が発光した照射光(IL)を反射するミラー(26)と、
前記ミラーを往復動作することで、予め定められた走査範囲内を前記照射光により走査させるスキャナ(28)と、
前記照射光が前記走査範囲に存在する物標に反射して返ってくる反射光を検出する受光部(30)と、
前記ミラーの往動動作の期間において、前記発光部による前記照射光の発光から前記受光部が前記物標からの反射光(RL)を検出するまでの時間を用いて、前記物標までの距離を算出する距離算出部(40)と、
前記発光部の発光と前記スキャナの動作とを制御する制御部であって、前記ミラーの往動動作の測距期間を維持したまま前記スキャナの1サイクルの時間を調整することで、前記スキャナの動作を予め定められたタイミング信号に同期させる制御部(50、51、57)と、
を備える、光学的測距装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学的測距装置であって、
前記光学的測距装置の外部からの信号に応じて前記タイミング信号を生成するタイミング信号生成部(60)を備える光学的測距装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光学的測距装置であって、
前記制御部は、
前記ミラーを復動させる時間の調整量が閾値以上の場合には、次のサイクルの前記ミラーを復動させる時間において、前記ミラーを復動させる時間の調整量を一括して増加させ、
前記ミラーを復動させる時間の調整量が前記閾値未満の場合には、次のサイクルの前記ミラーを復動させる時間において、前記閾値より小さい最小調整時間だけ、前記ミラーを復動させる時間を増加させまたは減少させる、
光学的測距装置。
【請求項4】
請求項1に記載の光学的測距装置であって、
前記制御部(57)は、前記タイミング信号を前記光学的測距装置の外部に設けられた外部制御部(71)であって、タイミング信号生成部(76)を有する外部制御部から取得する光学的測距装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光学的測距装置であって、
前記制御部は、前記外部制御部から、
一括調整の指示を受け取った場合には、次のサイクルの前記ミラーを復動させる時間において、前記ミラーを復動させる時間の調整量を一括して増加させ、
分割調整の指示を受け取った場合には、次のサイクルの前記ミラーを復動させる時間において、最小調整時間だけ、前記ミラーを復動させる時間を増加させまたは減少させる、
光学的測距装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光学的測距装置であって、
前記制御部は、前記ミラーを復動させる時間を調整することで前記スキャナの1サイクルの時間を調整する、光学的測距装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の光学的測距装置であって、
前記スキャナは、前記制御部からの角度指令値にしたがって前記ミラーの角度を変える、光学的測距装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の光学的測距装置であって、
時間経過によりカウントアップし、前記スキャナを1サイクル動作させるごとにリセットするカウンタ(56)を有し、
前記タイミング信号はパルス信号(P2)であり、
前記制御部は、前記タイミング信号を受信したときの前記カウンタのカウント値を用いて前記ミラーを復動させる時間を調整する、光学的測距装置。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の光学的測距装置であって、
前記タイミング信号は、前記ミラーを復動させる時間を調整するための調整時間情報(d)を含む、光学的測距装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の光学的測距装置であって、
前記制御部は、1サイクルの時間と、前記ミラーを復動から往動に切り替える第1タイミングと前記ミラーを往動から復動に切り替える第2タイミングとを含む複数のタイミングと、前記複数のタイミングにおける角度指令値と、を用い、1サイクルの中の任意のタイミングにおける角度指令値を、線形補間を用いて算出し、1サイクルの時間に前記ミラーを復動させる時間の調整量を加算または減算し、前記第2タイミングを変更する、
光学的測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は,光学的測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には,光学的測距装置であるLiDARデバイスを搭載する複数の車両が開示されている。LiDARデバイスは、LiDARデバイスの軸を中心にLiDARデバイスを回転させて、光の投射方向を調整するアクチュエータと、外部システムからタイミング情報を受信する通信インターフェースと、受信したタイミング情報にしたがってアクチュエータに光の投射方向を調整させるコントローラを備えており、各車両の光が互いに干渉しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2019/0011544号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のLiDARデバイスのタイミング調整は、他車のLiDARデバイスとのタイミング調整であり、自車の他のデバイスとのタイミング調整については、考慮されていなかった。また、特許文献1に記載のLiDARデバイスでは、測距中にタイミング調整を行った場合には、測距結果に影響を受ける場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば,光学的測距装置が提供される。この光学的測距装置(10)は、発光部(21)と、前記発光部が発光した照射光(IL)を反射するミラー(26)と、前記ミラーを往復動作することで、予め定められた走査範囲内を前記照射光により走査させるスキャナ(28)と、前記照射光が前記走査範囲に存在する物標に反射して返ってくる反射光を検出する受光部(30)と、前記ミラーの往動動作の期間において、前記発光部による前記照射光の発光から前記受光部が前記物標からの反射光(RL)を検出するまでの時間を用いて、前記物標までの距離を算出する距離算出部(40)と、前記発光部の発光と前記スキャナの動作とを制御する制御部(50)であって、前記ミラーの往動動作の期間を維持したまま前記スキャナの1サイクルの時間を調整することで、前記スキャナの動作を前記タイミング信号に同期させる制御部(50、51)と、を備える。この形態によれば、制御部は、ミラーの往動動作の測距期間を維持したままスキャナの1サイクルの時間を調整することでスキャナの動作をタイミング信号に同期させるので、この同期処理が、物標までの距離測定に影響を与えないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図3】発光装置から発光されたパルスレーザ光が受光部に到達するまでを示す説明図である。
【
図4】光学的測距装置のブロック構成を示す説明図である。
【
図5】光学的測距装置における時刻とミラーの角度の関係を示すグラフである。
【
図6】第2実施形態の光学的測距装置のブロック構成を示す説明図である。
【
図7】光学的測距装置における時刻とミラーの角度とカウント値の関係を示すグラフである。
【
図8】第3実施形態における制御部が実行するタイミング調整の制御のフローチャートである。
【
図9】調整時間が閾値以上の場合のタイミングチャートである。
【
図10】調整時間が閾値未満の場合のタイミングチャートである。
【
図11】第4実施形態の光学的測距装置における時刻と角度指令値の関係を示すタイミングチャートである。
【
図12】第5実施形態の光学的測距装置のブロック構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
・第1実施形態:
図1に示すように、道路200を走行する車両100は、光学的測距装置10と、ミリ波レーダ90とを備えており、光学的測距装置10から車両100の前方の走査範囲MRに照射光ILを照射する。走査範囲MRに物標があると、物標からの反射光RLを受光する。光学的測距装置10は、照射光ILの発光から反射光RLの受光までの時間Tから、物標までの距離Lを算出する。cを光速とすると、距離Lは、ct/2により算出される。
図1に示す例では、道路200のセンターライン201を挟んだ対向車線に車両101が走行し、道路200に交差する道路205にセンターライン206を挟んだ両側に車両102、103が停車している。走査範囲MRには、車両101、102が存在し、光学的測距装置10は、車両101、102からの反射光RLを受光する。車両100のミリ波レーダ90は、光学的測距装置10と同様に、ミリ波を用いて車両100の前方を走査し、その走査範囲の物標を検知する。このとき、ミリ波レーダ90の走査タイミングと、光学的測距装置10の照射光ILの走査タイミングとを一致させると、より高精度に車両101、102の方向、車両101、102までの距離を算出できる。
【0008】
図2に示すように、光学的測距装置10は、発光装置20と、受光部30と、距離算出部40と、を備える。発光装置20は、照射光ILを射出し、測定範囲MRを走査方向SDに走査する。照射光ILは、走査方向SDに直交する方向が長手方向となる矩形形状に形成されている。受光部30は、照射光ILの照射に応じた測定範囲MRを含む範囲からの反射光RLを受光レンズ31を介して受光し、反射光RLの受光状態に応じた信号を出力する。距離算出部40は、受光部30から出力された信号を用いて、測定範囲MR内に存在する物標までの距離を測定する。
【0009】
図3を用いて、発光装置20から発光されたパルスレーザ光が受光部30に到達するまでを説明する。発光装置20は、発光部21と、コリメートレンズ22と、ミラー26と、スキャナ28とを備える。発光部21から発光されたパルスレーザ光は、コリメートレンズ22により細長い矩形形状を有する照射光ILになる。コリメートレンズ22の代わりにスリットを用いて細長い矩形形状を有する照射光ILを形成してもよい。矩形形状を有する照射光ILは、ミラー26で反射し、光学的測距装置10の外部に照射される。このとき、スキャナ28は、ミラー26を往復動作させることで、照射光ILを測定範囲MR内においてSD方向に走査させる。走査範囲MRに物標が存在している場合には、照射光ILは物標の表面で乱反射し、その一部は、光学的測距装置10に返ってくる。物標から光学的測距装置10に戻った反射光RLは、受光レンズ31により集約されて、受光部30に当たり、検出される。パルスレーザ光が発光装置20から発光されてから、反射光RLが受光部30に検出されるまでの時間Tから物標までの距離Lが算出される。
【0010】
図4は、光学的測距装置10のブロック構成を示す説明図である。光学的測距装置10は、発光部21と、スキャナ28と、受光部30と、距離算出部40と、制御部50と、タイミング信号生成部60と、を備える。光学的測距装置10の外部には、データ処理部72と、全球測位衛星システム受信機74(GNSS)と、を備える。発光部21と、スキャナ28と、受光部30と、距離算出部40については、説明済みなので、制御部50と、タイミング信号生成部60と、データ処理部72と、全球測位衛星システム受信機74と、について説明する。
【0011】
全球測位衛星システム受信機74は、複数の衛星から電波を受信し、全球測位衛星システム受信機74の現在の位置及び時刻tを算出する。全地測位衛星システムとしては、アメリカ合衆国のGPS、日本国の準天頂衛星QZSS、ロシア連邦のGLONASS、欧州連合のGalileoが適用可能である。
【0012】
タイミング信号生成部60は、全球測位衛星システム受信機74から、時刻tを信号として受信し、予め定められた周期ごとにタイミング信号tsを生成する。タイミング信号生成部60は、後述する制御部50から各サイクルの時刻t0に送信される同期信号ts1を受信する。各サイクルは、往動と復動の2つの動作を含み、時刻t0とは、復動から往動に切り替わるタイミングである。タイミング信号生成部60は、タイミング信号tsと同期信号ts1が一致するように、同期信号ts1をずらす調整時間dを生成し、後述する調整時間算出部52に送る。
【0013】
制御部50は、調整時間算出部52と、角度指令値算出部53と、を備える。調整時間算出部52は、タイミング信号生成部60から調整時間情報として調整時間dを取得し、復動動作の基準長さDに調整時間dを加えて新たな復動動作の長さD+dを生成する。復動動作の基準長さDは、調整時間算出部52は、予め調整時間算出部52に格納されている。タイミング信号生成部60が調整時間dをどのように得るかについては、後述する。角度指令値算出部53は、時刻tに応じたミラー26の角度指令a(t)をスキャナ28に指令する。
【0014】
データ処理部72は、距離算出部40から出力される測距データと、ミリ波レーダ90の測距データを用いて、処理を実行し、物標までの方位や距離をより正確に算出する。
【0015】
図5は、光学的測距装置10における時刻tとミラー26の角度θ(t)の関係を示すグラフである。制御部50は、
図5に示す時刻tがt0からt1までの往動動作において、ミラー26の角度θ(t)がθsからθeに増加していくように、時刻tに応じたミラー26の角度指令a(t)を角度指令値算出部53に生成させ、スキャナ28へ角度指令a(t)を送信させる。角度指令値算出部53は、スキャナ28からミラーの角度θ(t)を取得し、PID制御等により、角度指令a(t)をフィードバック制御してもよい。光学的測距装置10は、この時刻t0からt1までの往動動作において、物標までの距離を測定する。また、時刻t1からt2までの復動動作において、ミラー26の角度θ(t)がθeからθsに減少していくように、時刻tに応じたミラー26の角度指令a(t)を角度指令値算出部53に生成させ、スキャナ28へ角度指令a(t)を送信させる。時刻t1からt2までの復動動作の基準長さは、上述したように、Dである。角度指令値算出部53は、角度指令a(t)を同様にフィードバック制御してもよい。なお、光学的測距装置10は、この時刻t1からt2までの復動動作においては、物標までの距離を測定しない。ただし、光学的測距装置10は、この時刻t1からt2までの復動動作において、物標までの距離を測定してもよい。なお、時刻t0からt2(次のサイクルのt0)までの1サイクルの時間は、100ms程度である。
【0016】
調整時間算出部52が同期タイミング生成部から調整時間dを受信すると、新たな復動動作の時間D+dを算出し、角度指令値算出部53に送る。角度指令値算出部53は、次サイクルの復動動作の期間である時刻t3からt5までの長さを時間D+dとし、時刻t3でミラー26の角度がθe、時刻t5でミラー26の角度がθsに減少するように、新たなミラー26の角度指令a(t)を算出し、スキャナ28に指令する。これにより、さらに次のサイクル以降において、同期信号ts1とタイミング信号tsとを一致させることができる。
【0017】
以上、第1実施形態によれば、物標との距離を測定する期間であるミラー26の往動時間を変えずに、物標との距離を測定しない期間であるミラー26の復動時間Dを調整することで、1サイクルの時間を調整し、スキャナ28の動作をタイミング信号tsに同期させる。その結果、制御部50が実行するタイミング調整処理は、測距結果に影響を与えない。
【0018】
第1実施形態では、往動から復動に切り替える期間、あるいは、復動から往動に切り替える期間は、ゼロであり、物標との距離を測定しない期間であるミラー26の復動時間Dを調整することで、1サイクルの時間を調整しているが、往動から復動に切り替える期間、あるいは、復動から往動に切り替える期間の長さを調整時間dとすることで、1サイクルの時間を調整してもよい。
【0019】
・第2実施形態:
図6は、第2実施形態の光学的測距装置11のブロック構成を示す説明図である。光学的測距装置11は、制御部51がカウンタ56を備える点で、第1実施形態の光学的測距装置10と相違する。また、光学的測距装置11の調整時間算出部54と角度指令値算出部55は、第1実施形態の光学的測距装置10の調整時間算出部52と角度指令値算出部53と動作が少し異なっている。第2実施形態では、光学的測距装置11の外部に、タイミング信号生成部60の代わりに、パルス信号生成部61を備える。第1実施形態では、光学的測距装置10の制御部50は、外部より調整時間dを取得し、スキャナ28の動作タイミングを調整しているが、第2実施形態では、光学的測距装置11の制御部51は、外部よりパルス信号P2を受信し、光学的測距装置11の内部でスキャナ28の動作タイミングをパルス信号P2に同期させるようにしている。以下、相違点について説明する。
【0020】
パルス信号生成部61は、全球測位衛星システム受信機74から、時刻tを受信し、予め定められた周期ごとにパルス信号P2を生成する。なお、パルス信号生成部61の代わりに、第1実施形態のタイミング信号生成部60を用い、タイミング信号tsをパルス信号P2として用いてもよい。
【0021】
カウンタ56は、制御部51内のタイマ(図示せず)にしたがって一定の時間ごとにカウントアップするカウンタであり、カウント値C(t)を調整時間算出部54と角度指令値算出部55に送る。本実施形態では、カウンタ56のカウント1あたりの時間は、t1/C1である。カウンタ56は、角度指令値算出部55からリセット信号Rstを受信すると、カウント値C(t)をゼロにリセットする。調整時間算出部54は、カウンタ56からカウント値C(t)を受信し、パルス信号生成部61からパルス信号P2を受信し、パルス信号P2を受信したときのカウント値C(t)をカウント値C3とし、カウント値C2とカウント値C3の和C2+C3を角度指令値算出部55に送る。ここで、カウント値C2は、復動時間を調整しない場合において、ミラー26の角度θがθsに戻ったときのカウンタ56のカウント値C(t)である。
【0022】
角度指令値算出部55は、カウント値C(t)を受信すると、カウント値C(t)に応じた角度指令a(C(t))をスキャナ28に送る。具体的には、カウント値C(t)が0からC1までの往動動作では、角度指令値算出部55は、カウント値C(t)が1増加するごとに、角度指令a(t)を(θe-θs)/C1だけ増加させ、カウント値がC1から(C2+C3)までの復動動作では、カウント値C(t)が1増加するごとに、角度指令a(t)を(θe-θs)/(C2+C3)だけ減少させる。角度指令値算出部55は、スキャナ28からミラーの角度θ(C(t))を取得し、PID制御等により、角度指令a(C(t))をフィードバック制御してもよい。角度指令値算出部55は、カウント値C(t)がC2+C3に達すると、リセット信号Rstをカウンタ56に送る。
【0023】
図7は、光学的測距装置11における時刻tとミラー26の角度θ(t)とカウント値C(t)の関係を示すグラフである。時刻t0において、カウンタ56のカウント値C(t)は、0である。その後、カウンタ56のカウント値C(t)は、制御部51内のタイマに従い、一定時間ごとにカウントアップしていき、時刻t1でカウンタ56のカウント値C(t)は、C1となる。このカウント値C(t)が0からC1の期間、すなわち、往動動作において、角度指令値算出部55は、カウント値C(t)が1増加するごとに、角度指令a(t)を(θe-θs)/c1だけ増加させ、ミラー角度θ(t)をθsからθeに増加させる。
【0024】
時刻t0とt1の間の時刻taにおいて、
図6のパルス信号生成部61は、パルスP2を発生し、調整時間算出部54に送るとする。なお、この時刻t0からtaまでの長さが、第1実施形態の調整時間dに対応する。調整時間算出部54は、カウンタ56からカウント値C(t)を受信しており、パルスP2を受信したときのカウント値C3を取得する。調整時間算出部54は、C2+C3を算出し、角度指令値算出部55に送信する。
【0025】
時刻t1になると、カウント値C(t1)はC1となり、ミラー角度θ(C1)は、θeとなる。時刻t1以降は、角度指令値算出部55は、カウント値C(t)が1増加するごとに、角度指令a(C(t1))を(θe-θs)/(C2+C3)だけ減少させていく。カウント値C3が0の場合、時刻t2でカウント値はC2となり、角度指令a(C(t2))がθsとなるが、カウント値C3が0でない場合、時刻t2では、角度指令a(C(t2))は、θeとθsの間の値である。時刻t3になると、カウント値C(t3)はC2+C3となり、ミラー角度θ(C2+C3)は、θsとなる。カウント値C(t3)がC2+C3となると、角度指令値算出部55は、リセット信号Rstをカウンタ56に送信する。カウンタ56は、リセット信号Rstを受信すると、カウント値C(t)を0にリセットする。なお、時刻tbになると、パルス信号生成部61は、パルスP2を発生する。ここで、時刻tbと時刻t3は同じタイミングであるので、調整時間算出部54がパルスP2を受信したときのカウント値C(tb)は0となる。したがって、新たなカウント値C3は、0となる。
【0026】
時刻t3(次サイクルのt0)では、調整時間算出部54は、C2+C3を制御部51に送信するが、調整時間算出部54がパルスP2を受信したときのカウンタ56のカウント値C(t)0であるので、C3が0となり、調整時間算出部54から角度指令値算出部55に送信されるC2+C3は、C2と同じ値となる。次サイクルのカウント値C(t)が0からC1までの往動動作では、制御部51は、カウンタ56からカウント値C(t)を受信し、カウント値C(t)が1増加するごとに、角度指令a(t)を(θe-θs)/c1だけ増加させ、ミラー角度θ(t)をθsからθeに増加させる。
【0027】
時刻t4になると、カウント値C(t4)はC1となり、ミラー角度θ(t4)は、θeとなる。カウント値がC1からC2までの復動動作では、角度指令値算出部55は、カウント値C(t)が1増加するごとに、角度指令a(t)を(θe-θs)/C2だけ減少させていく。
【0028】
時刻t5になると、カウント値C(t5)はC2+C3(但しC3は0)となり、ミラー角度θ(t5)は、θsとなる。角度指令値算出部55は、カウント値C(t5)がC2+C3(但しC3は0)になると、リセット信号Rstをカウンタ56に送信する。カウンタ56は、リセット信号Rstを受信すると、カウント値C(t)を0にリセットする。なお、時刻tcになると、パルス信号生成部61は、パルスP2を発生する。ここで、時刻tcと時刻t5は同じタイミングとなるので、調整時間算出部54がパルスP2を受信したときのカウント値C(tc)は0となる。すなわち、ミラー26、スキャナ28の動作は、パルス信号P2に同期する。
【0029】
以上、第2実施形態によれば、光学的測距装置11は、時間経過によりカウントアップし、スキャナ28を1サイクル動作させるごとにリセットされるカウンタ56を有し、制御部51は、タイミング信号P2を受信したときのカウンタ56のカウント値C3を用いてミラー26を復動させる時間を調整する。この構成によれば、調整する時間を制御部51の内部で生成し、ミラー26、スキャナ28の動作タイミングを調整できる。
【0030】
・第3実施形態:
図8は、第3実施形態における制御部50が実行するタイミング調整の制御のフローチャートである。第3実施形態は、第1実施形態とほぼ同じ構成であるが、制御部50は、調整時間dが閾値dth以上の場合には、復動時間をD+dとし、調整時間dが閾値dth未満の場合には、復動時間をD+Δd(Δdは、閾値dthよりも小さい値)とする点が相違する。
【0031】
ステップS100では、制御部50の調整時間算出部52は、復動時間Dに基準復動時間Dstdを代入する。これにより、最初のステップでは、復動時間Dは、基準復動時間Dstdに等しくなる。
【0032】
ステップS110では、制御部50の調整時間算出部52は、調整時間dをタイミング信号生成部60から取得する。ステップS120では、調整時間算出部52は、調整時間dの絶対値がΔd/2未満か否かを判断する。ここで、Δdは、予め定められた最小調整時間であり、後述するステップにおいて復動時間を調整するときの調整量である。ステップS120において、調整時間dの絶対値がΔd/2未満の場合は、制御部50は、調整処理をステップS180に移行し、調整時間dの絶対値がΔd/2以上の場合には、処理をステップS130に移行する。
【0033】
ステップS130では、調整時間算出部52は、調整時間dが閾値dth以上か否かを判断する。制御部50は、調整時間dが閾値dth以上の場合には、処理をステップS140に移行し、調整時間dが閾値dth未満の場合には、処理をステップS150に移行する。
【0034】
ステップS140では、調整時間算出部52は、次サイクルの復動時間をD+dとする。ステップS150では、調整時間算出部52は、調整時間dが0より大きいか、否かを判断し、調整時間dが0より大きい場合には、処理をステップS160に移行し、調整時間dが0より大きくない場合には、処理をステップS170に移行する。調整時間算出部52は、ステップS160では、次サイクルの復動時間をD+Δdとし、ステップS170では、次サイクルの復動時間をD-Δdとする。
【0035】
図9は、調整時間dが閾値dth以上の場合のタイミングチャートである。2サイクル目では、調整時間算出部52は、復動時間をD+dとすることで、一気にタイミングを調整し、3サイクル目では、復動時間がDとなっており、タイミング調整は不要となっている。
【0036】
図10は、調整時間dが閾値dth未満の場合のタイミングチャートである。2サイクル目では、調整時間算出部52は、復動時間をD+Δdとすることで、タイミングを少し調整し、3サイクル目では、調整時間算出部52は、復動時間をD-Δdとすることで、タイミングを少し調整するように、少しずつタイミングを調整する。復動時間を減少方向に調整する場合には、往動時間に行われる測距動作に影響を与える可能性があるため、調整時間算出部52は、測距動作に影響を与えない範囲(-Δd)で分割してタイミング調整をする。
【0037】
第3実施形態によれば、調整時間dの大きさにより、一気にタイミング調整する、あるいは、少しずつタイミング調整するかを切り替える。例えば、光学的測距装置10を搭載する車両100のパワースイッチ(図示せず)がオンされた場合などの起動直後では、生じ得るタイミング信号tsと同期信号ts1とが大きく乖離する場合があり、この場合には、調整時間dが閾値dth以上となる。調整時間算出部52は、このような調整時間dが閾値dth以上の場合には、復動時間をD+dとすることで、全調整量を一括して調整する。一方、その他の調整時間dが閾値dth未満の場合には、調整時間算出部52は、復動時間をD+ΔdまたはD-Δdとすることで、測距動作に影響を与えない範囲(-Δd)で分割してタイミング調整できる。
【0038】
・第4実施形態:
図11は、第4実施形態の時刻と角度指令値の関係を示すタイミングチャートである。第4実施形態では、角度指令値算出部53は、数点の時刻t、例えば、時刻t0、t1,t2、t3とその時刻t0、t1,t2、t3における角度指令値a(t0)、a(t1)、a(t2)、a(t3)を関連付けて内部の記憶部(図示せず)に格納している。第1タイミングである時刻t0から第2タイミングである時刻t1の間の任意の時刻tiでは、角度指令値算出部53は、時刻t0、t1における角度指令値a(t0)、a(t1)を用い、線形補間により角度指令値a(ti)を算出する。具体的には、時刻tiにおける角度指令値a(ti)は、以下の式(1)により算出される。
a(ti)=(ti-t0)・(a(t1)-a(t0)/(t1-t0)
=(ti-t0)・(a1-a0)/(t1-t0) …(1)
【0039】
時刻t1からt2の間の時刻tj、時刻t2からt3の間の時刻tkでは角度指令値a(tj)、a(tk)は、それぞれ以下の式(2)(3)により算出される。
a(tj)=a1+(tj-t1)・(a(t2)-a(t1)/(t2-t1)
=a1+(tj-t1)・(a2-a1)/(t2-t1)…(2)
a(tk)=a2+(tk-t2)・(a(t2)-a(t1)/(t3-t2)
=a2+(tk-t2)・(a0-a2/(t3-t2)…(3)
【0040】
以上、第4実施形態によれば、角度指令値算出部53は、時刻t0、t1,t2、t3以外の角度指令値a(t)を格納する必要が無い。また、復動動作の期間では、タイミング調整により1サイクルが終了する時刻t3が変わっても、時刻tにおける角度指令値を、線形補間により算出できる。例えば、第4実施形態によれば、第2サイクルの復動動作においては、調整時間dが0の場合、時刻t6が第2タイミングとなるが、調整時間が0でない場合、調整時間算出部52は、1サイクルの時間であるフレーム時間に調整量dを加算または減算し、第2タイミングである時刻t6を時刻t7に変更し、時刻t5から時刻t7の間の角度指令値a(t)を線形補間により算出できる。
【0041】
上記第1実施形態では、制御部50の内部に調整時間算出部52が設けられている構成であるが、調整時間算出部52は、制御部50の外部に設けられていてもよい。
【0042】
・第5実施形態:
図12は、第5実施形態の光学的測距装置12のブロック構成を示す説明図である。車両101は、光学的測距装置12と、外部制御部71と、を備える。外部制御部71は、データ処理部72と、全球測位衛星システム受信機74(GNSS)と、タイミング信号生成部76とを備える。タイミング信号生成部76は、第1実施形態の光学的測距装置10のタイミング信号生成部60と同様の機能を有するが、外部制御部71に設けられている点で、第1実施形態と構成が相違している。第5実施形態の光学的測距装置12では、同期信号ts1は、距離算出部40、データ処理部72を経由して、外部制御部71のタイミング信号生成部76に伝えられる。なお、同期信号ts1は、光学的測距装置12の制御部57から外部制御部71のタイミング信号生成部76に直接伝えられてもよい。また、光学的測距装置12では、調整時間算出部52が、制御部57の外部に設けられていている点で第1実施形態の光学的測距装置10と相違する。但し、調整時間算出部52は、第1実施形態の光学的測距装置10と同様に、制御部57の内部に設けられていてもよい。
【0043】
タイミング信号生成部76が生成するタイミング情報には光学的測距装置12の制御部57が調整の目標値とする情報の他に、通信を行った時点の時間情報を含んでも良い。また、距離算出部40は、測距データに各測距点の時間情報を含み、データ処理部72はその時間情報からタイミング情報を計算してもよい。
【0044】
第5実施形態の光学的測距装置12では、外部制御部71が、車両の走行環境や他のセンサの動作状況、測距データに各測距点の時間情報を用いて、光学的測距装置12のタイミング調整に必要なずらし時間算出して送信し、光学的測距装置12がそのずらし時間情報を受け取ってスキャナ28を制御することにより同期を行い、タイミング調整処理を実行できる。
【0045】
第5実施形態は、第2実施形態から第4実施形態のいずれかと組み合わせてもよい。例えば、第5実施形態において、第3実施形態のように、制御部57は、調整時間dが閾値dth以上の場合、復動時間をD+dとすることで、一気にタイミングを調整し、調整時間dが閾値dth未満の場合には、調整時間算出部52は、復動時間をD+ΔdまたはD-Δdとすることで、測距動作に影響を与えない範囲(-Δd)で分割してタイミング調整してもよい。また、第5実施形態においては、外部制御部71が、調整時間dから、タイミング調整を一括調整で行うか、分割調整で行うかを決定して指示し、制御部57がその決定の結果を受信して、タイミング調整を一括調整または分割調整のいずれかで行うようにしてもよい。
【0046】
上記各実施形態では、距離算出部40は、発光部21による照射光ILの発光から受光部30が物標からの反射光RLを検出するまでの時間を用いて、物標までの距離を算出しているが、照射光ILの位相と、反射光RLの位相との位相差を用いて物標までの距離を算出してもよい。
【0047】
上記各実施形態では、往動動作の期間を維持しているが、往動動作の測距期間を維持できれば、往動動作の期間は、維持できなくてもよい。測距期間が維持できれば、測距に影響しないからである。
【0048】
本開示は,上述の実施形態に限られるものではなく,その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば,発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は,上述の課題の一部又は全部を解決するために,あるいは,上述の効果の一部又は全部を達成するために,適宜,差し替えや,組み合わせを行うことが可能である。また,その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ,適宜,削除することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
10…光学的測距装置、11…光学的測距装置、20…発光装置、21…発光部、22…コリメートレンズ、26…ミラー、28…スキャナ、30…受光部、31…受光レンズ、40…距離算出部、50…制御部、51…制御部、52…調整時間算出部、53…角度指令値算出部、54…調整時間算出部、55…角度指令値算出部、56…カウンタ、57…制御部、60…タイミング信号生成部、61…パルス信号生成部、71…外部制御部、72…データ処理部、74…全球測位衛星システム受信機、90…ミリ波レーダ、100、101、102、103…車両、200、205…道路、201、206…センターライン道路