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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】電動車両のトランスアクスル
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20240625BHJP
【FI】
F16H57/04 G
F16H57/04 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021168884
(22)【出願日】2021-10-14
(65)【公開番号】P2023059017
(43)【公開日】2023-04-26
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】岡本 昭太郎
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-051245(JP,A)
【文献】特開2019-140786(JP,A)
【文献】特開2007-159314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータを制御するように構成された電子部品を収容するインバータ室と、
前記モータを冷却する冷媒であるオイルを貯留するように構成されたオイル室と、
前記電子部品を冷却する冷却液体が流れる冷却液室と、を備え、
前記インバータ室を区画する壁の一部が、前記冷却液室を区画する壁の一部を兼ねており、且つ前記オイル室を区画する壁の一部である側壁が、前記冷却液室を区画する壁の一部を兼ねており
前記冷却液室は、
前記インバータ室と前記オイル室との間に延びる第1液室と、前記オイル室に隣接する第2液室と、を含み、
前記第1液室には、同第1液室内を、第1流路と、前記第1流路との接続箇所から前記第1流路に対して折り返すように延びる第2流路と、に隔てる仕切り壁を備えており、
前記第1流路及び前記第2流路の双方が、前記インバータ室と前記冷却液室とを隔てる前記壁を挟んで前記インバータ室と隣接しており、
前記第2液室には、同第2液室内を、第3流路と、前記第3流路との接続箇所から前記第3流路に対して折り返すように延びる第4流路と、に隔てる仕切り壁を備えており、
前記第3流路及び前記第4流路の双方が、前記オイル室と前記冷却液室とを隔てる前記壁を挟んで前記オイル室と隣接している、
電動車両のトランスアクスル。
【請求項2】
前記オイルを吸い上げるように構成されたオイルポンプと、前記オイルポンプで吸い上げた前記オイルを前記モータに掛けるように構成されたオイルシャワーと、を備えている、
請求項1に記載の電動車両のトランスアクスル。
【請求項3】
前記モータに直接的又は間接的に接続されたギアを備え、
前記ギアは少なくとも部分的に前記オイルに浸かっている、
請求項1又は2に記載の電動車両のトランスアクスル。
【請求項4】
前記モータに直接的又は間接的に接続されたギアを備え、
前記ギアは、前記オイルによって潤滑され、
前記オイル室は、前記ギアの回転によって飛散した前記オイルを貯留するように構成されているオイルキャッチタンクである、
請求項1又は2に記載の電動車両のトランスアクスル。
【請求項5】
前記冷却液室は、前記インバータ室及び前記オイル室を構成するトランスアクスルケースと、前記トランスアクスルケースに結合されて前記冷却液室を区画する壁の一部を構成するカバーとから構成され、
前記カバーは、前記冷却液体のための入口及び出口を有する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の電動車両のトランスアクスル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電動車両のトランスアクスルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電動車両のトランスアクスルを開示している。このトランスアクスルは、油冷式の冷却システムと水冷式の冷却システムとを備えている。
上記のトランスアクスルでは、油冷式の冷却システムは、モータを冷却する。油ベースの冷却液体が、モータ、及びオイルクーラ(熱交換器)を循環する。モータを冷却して温度が上昇した冷却液体がオイルクーラへ送られて冷却される。さらに、オイルクーラで冷却され、温度が低下した冷却液体がモータに送られて、モータが冷却される。
【0003】
水冷式の冷却システムは、電力変換装置ケース内の電力変換装置を冷却する。電力変換装置ケース内の電力変換装置は、電力変換装置専用ラジエータ(熱交換器)を用いて冷却される。詳細には、水ベースの冷却液体が電力変換装置ケースと電力変換装置専用ラジエータとを循環して電力変換装置が冷却される。電力変換装置を冷却して温度が上昇した冷却液体が、電力変換装置専用ラジエータへ送られ、冷却される。さらに、電力変換装置専用ラジエータで冷却されて温度が低下した冷却液体が、電力変換装置ケースへ戻され、電力変換装置ケースの内部の電力変換装置が冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-114087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のトランスアクスルでは、油冷式の冷却システムと水冷式の冷却システムとが互いに別個の系統になっている。すなわち、各冷却システムは、車両の走行風を冷却液体の熱を大気に放散する熱交換器と、該熱交換器及び冷却対象を連結する流入管及び流出管とを備えている。このため、上記のトランスアクスルの冷却構造では部品点数が多く、製造コストが大きい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
本開示の一態様によれば、モータと、前記モータを制御するように構成された電子部品を収容するインバータ室と、前記モータを冷却する冷媒であるオイルを貯留するように構成されたオイル室と、前記電子部品を冷却する冷却液体が流れる冷却液室と、を備え、前記インバータ室を区画する壁の一部が、前記冷却液室を区画する壁の一部を兼ねており、且つ前記オイル室を区画する壁の一部が、前記冷却液室を区画する壁の一部を兼ねている電動車両のトランスアクスルが提供される。
【0007】
冷媒であるオイルは、電子部品を冷却する冷却液体が流れる冷却液室を構成する壁を介して冷却される。このため、冷却対象を冷却することによって温度が上昇したオイルの熱を大気に放散するオイル専用熱交換器が不要となる。さらに、オイルが冷却する冷却対象と、オイル専用熱交換器とを連結する流入管及び流出管が不要となる。したがって、上記構成によれば製造コストを低減できる。
【0008】
上記電動車両のトランスアクスルにおいて、前記冷却液室は、前記インバータ室と前記オイル室との間に延びる第1液室を含み、前記第1液室には、同第1液室内を、第1流路と、前記第1流路との接続箇所から前記第1流路に対して折り返すように延びる第2流路と、に隔てる仕切り壁を備えており、前記第1流路及び前記第2流路の双方が、前記インバータ室と前記冷却液室とを隔てる前記壁を挟んで前記インバータ室と隣接していてもよい。
【0009】
上記構成によれば、仕切り壁によって流路を形成し、冷却液室内の冷却液体の流れを制御できる。そのため、冷却液体が電子部品を効果的に冷却できる。
上記電動車両のトランスアクスルにおいて、前記冷却液室は、前記オイル室に隣接する第2液室を含み、前記第2液室には、同第2液室内を、第3流路と、前記第3流路との接続箇所から前記第3流路に対して折り返すように延びる第4流路と、に隔てる仕切り壁を備えており、前記第3流路及び前記第4流路の双方が、前記オイル室と前記冷却液室とを隔てる前記壁を挟んで前記オイル室と隣接していてもよい。
【0010】
上記構成によれば、仕切り壁によって流路を形成し、冷却液室内の冷却液体の流れを制御できる。そのため、冷却液体がオイルを効果的に冷却できる。
上記電動車両のトランスアクスルは、前記オイルを吸い上げるように構成されたオイルポンプと、前記オイルポンプで吸い上げた前記オイルを前記モータに掛けるように構成されたオイルシャワーと、を備えていてもよい。
【0011】
上記構成によれば、電子部品を冷却する冷却液体によって冷却されるオイルを用いてモータを冷却することができる。
上記電動車両のトランスアクスルは、前記モータに直接的又は間接的に接続されたギアを備え、前記ギアは少なくとも部分的に前記オイルに浸かっていてもよい。
【0012】
上記構成によれば、電子部品を冷却する冷却液体によって冷却されるオイルを用いてギアを冷却又は潤滑することができる。
上記電動車両のトランスアクスルは、前記モータに直接的又は間接的に接続されたギアを備え、前記ギアは、前記オイルによって潤滑され、前記オイル室は、前記ギアの回転によって飛散した前記オイルを貯留するように構成されているオイルキャッチタンクであってもよい。
【0013】
上記構成によれば、電子部品を冷却する冷却液体によって、オイルキャッチタンクに貯留するオイルを冷却することができる。
上記電動車両のトランスアクスルにおいて、前記冷却液室は、前記インバータ室及び前記オイル室を構成するトランスアクスルケースと、前記トランスアクスルケースに結合されて前記冷却液室を区画する壁の一部を構成するカバーとから構成され、前記カバーは、前記冷却液体のための入口及び出口を有していてもよい。
【0014】
冷却液体のための入口及び出口は、インバータ室及びオイル室を構成するトランスアクスルケースではなくカバーに設けられている。このため、冷却液体のための入口及び出口を容易に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る電動車両のトランスアクスルの概略図である。
図2図1のトランスアクスルにおける、ギア室、オイルキャッチタンク、インバータ室、及び冷却液室を示すトランスアクスルケースの断面図である。
図3図1のトランスアクスルにおける、モータ室、オイルキャッチタンク、インバータ室、及び冷却液室を示すトランスアクスルケースの断面図である。
図4図1のトランスアクスルにおける冷却液室を説明するための分解斜視図であり、電子部品、第1発電電動機、及び第2発電電動機を省略して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、一実施形態に係る電動車両のトランスアクスルについて、図面を参照して説明する。
<電動車両のトランスアクスル20の構成>
まず、図1を参照して、電動車両のトランスアクスル20の概略を説明する。電動車両において、トランスアクスル20は、エンジン10と左右の駆動輪11との間に設置されている。エンジン10及びトランスアクスル20において発生した動力が、駆動輪11に伝達可能である。トランスアクスル20は、トランスアクスルケース21を有している。トランスアクスルケース21は、エンジン10に連結された状態で電動車両に搭載されている。
【0017】
トランスアクスルケース21内には、第1発電電動機MG1と第2発電電動機MG2とが収容されている。第1発電電動機MG1、及び第2発電電動機MG2は、電力供給に応じて動力を発生するモータとしての機能、及び外部から動力を受けて発電する発電機としての機能を兼ね備えている。さらに、トランスアクスルケース21内には、ワンウェイクラッチ22、ダンパ装置23、遊星ギア機構24、カウンタ軸25、及びディファレンシャル26が収容されている。
【0018】
遊星ギア機構24は、同軸を有して回転可能な3つの回転要素、すなわちサンギアS、プラネタリキャリアPC、及びリングギアRを有している。サンギアSは外歯ギアであり、リングギアRはサンギアSの外側に配置された内歯ギアである。プラネタリキャリアPCには、サンギアS及びリングギアRに噛み合わされたプラネタリギアPが軸支されている。これら回転要素のうちのサンギアSは、第1発電電動機MG1の回転軸27に連結されている。プラネタリキャリアPCは、ダンパ装置23及びワンウェイクラッチ22を介してエンジン10のクランク軸12に連結されている。一方、リングギアRは、円筒状の複合ギア軸28の内周に形成されている。複合ギア軸28の外周には、外歯ギアであるカウンタドライブギア29が形成されている。
【0019】
カウンタドライブギア29は、カウンタ軸25に設けられたカウンタドリブンギア30に噛み合わされている。また、カウンタドリブンギア30には、第2発電電動機MG2の回転軸31に設けられたリダクションギア32も噛み合わされている。
【0020】
カウンタ軸25には、カウンタドリブンギア30と一体となって回転するデフドライブギア33が設けられている。デフドライブギア33は、左右の駆動輪11の差動回転を許容するための差動機構であるディファレンシャル26のデフギア34に噛み合わされている。トランスアクスル20は、ディファレンシャル26及び2つの駆動軸36を介して左右の駆動輪11に連結されている。
【0021】
図2図4に示すように、トランスアクスル20は、インバータ室42、オイルキャッチタンク44、冷却液室46、ギア室48、及びモータ室52を備えている。これらの詳細については後述する。トランスアクスルケース21内には、オイルが封入されている。図1に示すように、電動車両には、熱交換器35が搭載されている。熱交換器35は、トランスアクスル20内の冷却液室46を流れる冷却液体と熱交換を行う。本実施形態では、冷却液室46を流れる冷却液体は、冷却水である。冷却水は、例えばLLC(ロングライフクーラント)である。
【0022】
<トランスアクスルケース21内の冷却水>
図2図4に示すように、カバー50が、トランスアクスルケース21の外側の端部に位置する開口を閉じている。図2に示すように、トランスアクスルケース21の内部に隔壁21aが設けられている。隔壁21aによって、ギア室48とモータ室52とが隔てられている。
【0023】
トランスアクスル20は、第1発電電動機MG1及び第2発電電動機MG2を制御するように構成された電子部品40を収容するインバータ室42を備えている。電子部品40は、例えば、DCDCコンバータを含む。インバータ室42は、トランスアクスルケース21における上部に設けられている。インバータ室42は、カバー50よりも上側にある。インバータ室42は、底壁42aと、底壁42aから立設された周壁42bとを備えている。インバータ室42は、第2発電電動機MG2に隣接している。
【0024】
トランスアクスル20は、電子部品40を冷却する冷却水が流れる冷却液室46を備えている。冷却液室46は、インバータ室42の直下に位置する第1液室46aを含む。インバータ室42の底壁42aが、第1液室46aを部分的に区画している。第1液室46aは、インバータ室42の直下からカバー50に向かって延びている。次いで、第2液室46bが、第1液室46aの端から下に向かって延びている。カバー50が、トランスアクスルケース21の外側の端部に位置する開口を閉じることによって、第2液室46bが、形成される。このように、冷却液室46は、第1液室46a及び第2液室46bを含んでおり、略L字状である。
【0025】
トランスアクスル20は、冷媒であるオイルを貯留するように構成されたオイルキャッチタンク44を備えている。図4に示すように、オイルキャッチタンク44は、オイルを排出するための孔44aを有している。トランスアクスル20が稼働していないときには、オイルキャッチタンク44は、オイルが空となる。オイルキャッチタンク44は第1液室46aの直下に位置している。第2液室46bがオイルキャッチタンク44とカバー50との間に位置している。オイルキャッチタンク44は、略箱形状である。詳細には、オイルキャッチタンク44は、側壁44b、側壁44c、底壁44f、上壁44gを有している。オイルキャッチタンク44は、側壁44bと側壁44cとを接続し、また、図4に示すようにモータ室52側の側壁に孔44aが設けられている。また、オイルキャッチタンク44は、この孔44aが設けられた側壁と対向し、側壁44bと側壁44cとを接続しているギア室48側の側壁をさらに有している。
【0026】
オイルキャッチタンク44の上壁44gは、第1液室46aを部分的に区画している。オイルキャッチタンク44の側壁44bは、第2液室46bを部分的に区画している。オイルキャッチタンク44の側壁44cは、オイルキャッチタンク44の側壁44bと対向している。オイルキャッチタンク44の底壁44fは、上壁44gと対向しているとともに、側壁44bと側壁44cとを接続している。
【0027】
図4に示すように、インバータ室42を区画する壁の一部である底壁42aが、冷却液室46を区画する壁の一部を兼ねている。このため、冷却液室46を流れる冷却水は、インバータ室42に収容されている電子部品40を、底壁42aを介して冷却する。
【0028】
図4に示すように、オイルキャッチタンク44を区画する壁の一部である側壁44bが、冷却液室46を区画する壁の一部を兼ねている。このため、冷却液室46内を流れる冷却水は、オイルキャッチタンク44内にあるオイルを、側壁44bを介して冷却する。
【0029】
次に、冷却液室46について詳述する。
図4に示すように、冷却液室46は、トランスアクスルケース21と、トランスアクスルケース21に結合されて冷却液室46を区画する壁の一部を構成するカバー50とから構成される。カバー50は、冷却液体のための入口50a及び出口50bを有する。図2及び図3に示すように、入口50aは、管によって、ウォータポンプ37に接続されている。ウォータポンプ37は、管によって熱交換器35に接続されている。出口50bは、管によって熱交換器35に接続されている。ウォータポンプ37は、電動である。ウォータポンプ37を駆動することによって、冷却水が、ウォータポンプ37、冷却液室46、及び熱交換器35を順に循環する。
【0030】
冷却液室46は、略L字状であり、第1液室46aと、第1液室46aの端から延びる第2液室46bとを含む。第1液室46aは、インバータ室42とオイルキャッチタンク44との間に延びる。第2液室46bは、オイルキャッチタンク44に隣接する。
【0031】
図4に示すように、入口50aと出口50bとは、隣接している。入口50aは、カバー50における、ギア室48に近接する上角に設けられている。出口50bは、入口50aの下側に設けられている。冷却水が入口50aを通じて冷却液室46に流入した直後に流れる箇所と、冷却水が出口50bを通じて冷却液室46から流出する直前に流れる箇所とは、仕切り壁60によって隔てられている。
【0032】
第1液室46aには、同第1液室46a内を、第1流路66と、第1流路66との接続箇所から第1流路66に対して折り返すように延びる第2流路68と、に隔てる仕切り壁62が設けられている。第1流路66とは、入口50aから、電子部品40の直下まで延びている流路を指している。第2流路68とは、第1流路66における電子部品40の直下の部位からカバー50まで延びる流路を指している。第1流路66及び第2流路68を合わせた流路は、トランスアクスルケース21の上側から見てU字状になっている。第1流路66及び第2流路68の双方が、インバータ室42と冷却液室46とを隔てる壁である底壁42aを挟んでインバータ室42と隣接している。
【0033】
第2液室46bには、同第2液室46b内を、第3流路70と、第3流路70との接続箇所から第3流路70に対して折り返すように延びる第4流路72と、に隔てる仕切り壁64が設けられている。第2液室46bに設けられている仕切り壁64は、側壁44bからカバー50まで延びている。仕切り壁64は、仕切り壁60及び仕切り壁62に接続している。第3流路70とは、第2流路68に接続された流路であって、カバー50に沿って延びる流路であり、オイルキャッチタンク44の底壁44fと同じ高さの位置まで延びている。第4流路72とは、第3流路70に接続された流路であり、オイルキャッチタンク44の底壁44fと同じ高さの位置から出口50bまで延びる流路である。第3流路70及び第4流路72の双方が、オイルキャッチタンク44と冷却液室46とを隔てる壁である側壁44bを挟んでオイルキャッチタンク44と隣接している。
【0034】
このように、冷却液室46は、仕切り壁62、64によってループ状に形成された流路の途中に、流路の開始地点と終了地点とを隔てる仕切り壁60を備えている。
冷却水は、カバー50に設けられた入口50aを通じて冷却液室46に流入する。冷却水は、冷却液室46に流入した後、第1流路66、第2流路68、第3流路70、第4流路72の順に流れる。その後、冷却水は、カバー50に設けられた出口50bを通じて冷却液室46から流出する。
【0035】
<トランスアクスルケース21内のオイル>
トランスアクスルケース21内のオイルは、ギア室48、オイルキャッチタンク44、及びモータ室52を、この順で循環する。オイルは、トランスアクスルケース21内を循環し、トランスアクスルケース21の外には出ない。
【0036】
図2に示すギア室48は、遊星ギア機構24、カウンタドライブギア29、カウンタドリブンギア30、リダクションギア32、デフドライブギア33、及びデフギア34を収容している。図2に一点鎖線で示すように、オイルの液面L1は、デフギア34の下端よりも高い。デフギア34は、上述したように、デフドライブギア33、カウンタドリブンギア30、カウンタドライブギア29、及び遊星ギア機構24を介して第1発電電動機MG1に接続されている。すなわち、デフギア34は、第1発電電動機MG1に間接的に接続されたギアであり、少なくとも部分的にオイルに浸かっている。このため、デフギア34が駆動されることによって、ギア室48内をオイルが飛散する。したがって、遊星ギア機構24、カウンタドライブギア29、カウンタドリブンギア30、リダクションギア32、デフドライブギア33、及びデフギア34は、デフギア34が、飛散させたオイルによって潤滑又は冷却される。また、ギア室48内の図示しないベアリングも潤滑又は冷却される。
【0037】
図2に示すように、ギア室48における側壁44cの上部は、上壁44gまで届いておらず、オイルキャッチタンク44の上部は、開口している。よって、デフギア34が駆動されることによって飛散したオイルの一部は、ギア室48に対して開口するオイルキャッチタンク44によって捕捉される。すなわち、オイルキャッチタンク44は、デフギア34の回転によって飛散したオイルを貯留するように構成されている。
【0038】
図2に示すように、オイルキャッチタンク44は、冷却水が流れる冷却液室46に隣接している。
図4に示すように、オイルキャッチタンク44は、下部においてモータ室52に対して開口する孔44aを有する。詳細には、側壁44bと側壁44cとを接続し、モータ室52に近接している側壁の下部において、モータ室52に対して開口する孔44aが設けられている。オイルキャッチタンク44内において冷却されたオイルは、孔44aを通じてモータ室52に流れ込む。
【0039】
図3は、モータ室52におけるオイルの液面L2を一点鎖線により示す。トランスアクスル20は、オイルを吸い上げるように構成されたオイルポンプ54を備えている。モータ室52に流れ込んだオイルの一部は、オイルポンプ54によって吸い上げられ、図示しない経路を通じてMG1用オイルシャワー56とMG2用オイルシャワー58とに導かれる。そして、MG1用オイルシャワー56は、オイルポンプ54で吸い上げられたオイルを第1発電電動機MG1に掛ける。MG2用オイルシャワー58は、オイルポンプ54で吸い上げられたオイルを第2発電電動機MG2に掛ける。これにより、第1発電電動機MG1と第2発電電動機MG2とがオイルによって冷却される。
【0040】
上述したように、隔壁21aによって、ギア室48とモータ室52とが隔てられている。隔壁21aは、開口48aを有する。モータ室52とギア室48とが、開口48aによって連通している。このため、第1発電電動機MG1と第2発電電動機MG2とを冷却したオイルは、開口48aを通じてギア室48に流れ込む。また、モータ室52に流れ込んだオイルの一部は、第1発電電動機MG1と第2発電電動機MG2とを冷却することなく、開口48aを通じてギア室48に流れ込む。
【0041】
<本実施形態の作用>
図4を参照して上述したように、オイルキャッチタンク44を区画する壁の一部である側壁44bが、冷却液室46を区画する壁の一部を兼ねている。このため、オイルがオイルキャッチタンク44内にあるとき、オイルは、冷却液室46内を流れる冷却水により冷却される側壁44bによって、冷却される。冷却されたオイルは、孔44aを通じてモータ室52内に流れ込む。こうして冷却されたオイルが、第1発電電動機MG1と第2発電電動機MG2とを冷却して温まったオイルと混ざり合うことにより、オイルの温度の過剰な上昇が抑制される。
【0042】
<本実施形態の効果>
(1)冷媒であるオイルは、電子部品40を冷却する冷却液体が流れる冷却液室46を構成する壁である側壁44bを介して冷却される。このため、冷却対象を冷却することによって温度が上昇したオイルの熱を大気に放散するオイル専用熱交換器が不要となる。さらに、オイルが冷却する冷却対象と、オイル専用熱交換器とを連結する流入管及び流出管が不要となる。したがって、上記構成によれば製造コストを低減できる。
【0043】
(2)トランスアクスルケース21内に冷却液室46を設けている。このため、トランスアクスルケース21の外部にオイル専用熱交換器を設ける場合と比較して、冷却システムの体格を小さくできる。また、トランスアクスルケース21の外部に設けられたオイル専用熱交換器とトランスアクスルケース21とを流入管及び流出管で接続している場合と比較して、冷却システムの剛性が高くなる。その結果、エンジン10とトランスアクスル20との間で発生するパワープラント共振を抑制し、車内音を抑えることができる。
【0044】
(3)仕切り壁62によって流路を形成し、冷却液室46内の冷却液体の流れを制御できる。そのため、冷却液体が電子部品40を効果的に冷却できる。
(4)仕切り壁64によって流路を形成し、冷却液室46内の冷却液体の流れを制御できる。そのため、冷却液体がオイルを効果的に冷却できる。
【0045】
(5)電子部品40を冷却する冷却液体によって冷却されるオイルを用いて第1発電電動機MG1と第2発電電動機MG2を冷却することができる。
(6)電子部品40を冷却する冷却液体によって冷却されるオイルを用いて、デフギア34を含むギア、そしてベアリングを冷却又は潤滑することができる。
【0046】
(7)電子部品40を冷却する冷却液体によって、オイルキャッチタンク44に貯留するオイルを冷却することができる。
(8)冷却液体のための入口50a及び出口50bは、インバータ室42及びオイルキャッチタンク44を構成するトランスアクスルケース21ではなくカバー50に設けられている。このため、冷却液体のための入口50a及び出口50bを容易に形成できる。
【0047】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0048】
・冷却液室46の形状は適宜変更可能である。例えば、冷却液室46を略直方体形状とし、直方体の1つの面が、インバータ室42を区画する壁の一部と、オイルキャッチタンク44を区画する壁の一部とを構成することも可能である。
【0049】
・仕切り壁60、62、64は省略されてもよい。
・上記実施形態のトランスアクスル20は、デフギア34が駆動されることによって飛散したオイルの一部を捕捉するオイルキャッチタンク44を備える。しかしながら、これは例示に過ぎない。トランスアクスル20は、冷媒であるオイルを貯留するように構成されたオイル室を備えていればよい。
【0050】
・トランスアクスル20の構成は適宜変更可能である。上記実施形態では、トランスアクスル20は、第1発電電動機MG1と第2発電電動機MG2とを備えている。これに代えて、トランスアクスル20が1つのみのモータを備えていてもよい。
【0051】
・上記実施形態では、トランスアクスルケース21は、単一の構成部品である。しかしながら、これは例示に過ぎない。例えば、トランスアクスルケース21のうちインバータ室42を構成する構成部品と、トランスアクスルケース21のうちモータ室52を構成する構成部品とは、別部品であってもよい。
【0052】
・上記実施形態では、デフギア34等を潤滑するオイルは、第1発電電動機MG1及び第2発電電動機MG2を冷却するために使用される。しかしながら、これは例示に過ぎない。デフギア34等を潤滑するオイルと、第1発電電動機MG1及び第2発電電動機MG2を冷却するオイルは別であってもよい。
【0053】
・上記実施形態では、トランスアクスル20は、エンジン10を備える電動車両に搭載されている。すなわち、トランスアクスル20は、HEV(Hybrid Electric Vehicle)に搭載されている。しかしながら、これは例示に過ぎない。トランスアクスル20は、PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)に適用されてもよい。また、トランスアクスル20は、BEV(Battery Electric Vehicle)、すなわちエンジン10を備えていないピュアEV(Electric Vehicle)に適用されてもよい。上記実施形態では、デフギア34が駆動されることによって飛散したオイルの一部は、ギア室48に対して開口するオイルキャッチタンク44によって捕捉される。そして冷却液室46と隣接したオイルキャッチタンク44においてオイルが冷却される。トランスアクスル20がBEVに適用される場合、オイルキャッチタンク44に替えてオイル室を設け、オイルポンプ54がオイル室にオイルを導いてもよい。オイル室に流れ込んだオイルは、オイル室に隣接する冷却液室46を流れる冷却液体によって冷却され得る。また、トランスアクスル20は、FCEV(Fuel Cell Electric Vehicle)等に適用されてもよい。
【0054】
・上記実施形態では、冷却液室46を流れる冷却液体は、冷却水である。しかしながら、これは例示に過ぎない。冷却液室46を流れる冷却液体はオイルであってもよい。
・電子部品40は、例えば、パワーカードを含んでいてもよい。パワーカードとは、パワーコントロールユニットを構成する主要部品であり、積層冷却器に挟み込まれた状態にある。パワーカードは、パワー半導体素子と、パワー半導体素子の両面にはんだ付けされた放熱板とを有している。パワー半導体素子が動作する際に発生する熱を効率的に放熱可能である。これにより、大電力化と小型化を両立させている。
【0055】
・上記実施形態では、冷却液体のための入口50a及び出口50bは、カバー50に設けられている。しかしながら、これは例示に過ぎない。冷却液体のための入口50a及び出口50bは、トランスアクスルケース21に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0056】
20…トランスアクスル
21…トランスアクスルケース
40…電子部品
42…インバータ室
44…オイルキャッチタンク
46…冷却液室
46a…第1液室
46b…第2液室
50…カバー
50a…入口
50b…出口
54…オイルポンプ
60、62、64…仕切り壁
図1
図2
図3
図4