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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】ラミネート電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/148 20210101AFI20240625BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20240625BHJP
   H01M 50/548 20210101ALI20240625BHJP
   H01M 50/545 20210101ALI20240625BHJP
   H01M 50/557 20210101ALI20240625BHJP
【FI】
H01M50/148
H01M50/105
H01M50/548 301
H01M50/545
H01M50/557
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021169416
(22)【出願日】2021-10-15
(65)【公開番号】P2023059421
(43)【公開日】2023-04-27
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】前田 孝昌
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-228319(JP,A)
【文献】特開2019-153514(JP,A)
【文献】特開2012-119291(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0242522(US,A1)
【文献】特開2000-100396(JP,A)
【文献】特表2013-534711(JP,A)
【文献】特開2015-095433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-50/198
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラミネートシートを含む外装体の内側に、全体として6面体である電池要素が封止されたラミネート電池であって、
前記外装体は、
前記電池要素の前記6面体のうち4つの面を覆い、端部同士の接合部を少なくとも1つ有して筒状をなすラミネートシートと、
前記電池要素の前記6面体のうち他の2面に対向し、前記ラミネートシートの前記筒状の開口部を塞ぐように配置される側面部材と、を有し、
前記側面部材は全体として6面体であり、かつ、前記ラミネートシートの前記接合部に位置する部位に突起を有する、
ラミネート電池。
【請求項2】
前記側面部材が電気的に前記電池要素に接続されており、前記側面部材が外部端子として機能する、請求項1に記載のラミネート電池。
【請求項3】
前記接合部が前記電池要素の表裏面のいずれか一方側に寄せられた位置に設けられている、請求項1又は2に記載のラミネート電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ラミネートシートを含む外装体の内側に電池要素が配置及び封止されてなるラミネート電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、1つ以上の平面状のラミネートシート、及び、外周全体が底面に対して立ち上がって凹形状を形成している2つの凹形状のラミネートシートを有するラミネート外装体を備えたラミネート電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-174555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
構造効率(外装体の容積に対する電池要素が占める割合)を高めるために、外装体の側面形状を特許文献1のような六角形から四角形(電池要素の側面に近い形状及び大きさ)にした場合、ラミネートシートの端面同士及び側面部材の接合部に略三角形の隙間ができてしまい、構造信頼性(リークや経時的な劣化に起因する問題の発生の起こり難さ)が低下する。
【0005】
そこで本開示では上記問題を鑑み、接合部に隙間ができることを抑制して構造信頼性の低下を抑えることができるラミネート電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、ラミネートシートを含む外装体の内側に、全体として6面体である電池要素が封止されたラミネート電池であって、外装体は、電池要素の6面体のうち4つの面を覆い、端部同士の接合部を少なくとも1つ有して筒状をなすラミネートシートと、電池要素の6面体のうち他の2面に対向し、ラミネートシートの筒状の開口部を塞ぐように配置される側面部材と、を有し、側面部材は全体として6面体であり、かつ、ラミネートシートの接合部に位置する部位に突起を有する、ラミネート電池を開示する。
【0007】
側面部材は電気的に電池要素に接続されており、側面部材が外部端子として機能するように構成してもよい。
【0008】
接合部は電池要素の表裏面のいずれか一方側に寄せられた位置に設けられているように構成してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示のラミネート電池によれば、側面部材がラミネートシート端部同士の接合部に位置する部位に突起を有することで、当該接合部に隙間ができることを抑制し、構造信頼性の低下を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1はラミネート電池10の外観斜視図である。
図2図2はラミネート電池10の分解斜視図である。
図3図3はラミネート電池10の側面図である。
図4図4は接合部13aの周辺に注目した側面図である。
図5図5は接合部13aの周辺に注目した分解斜視図である。
図6図6はラミネート電池20を説明する図である。
図7図7はラミネート電池30の外観斜視図である。
図8図8はラミネート電池30の分解斜視図である。
図9図9はラミネート電池40の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.第1形態
図1図5には第1形態にかかるラミネート電池10の構造を説明するための図を表した。図1はラミネート電池10の外観斜視図、図2はラミネート電池10の分解斜視図、図3はラミネート電池10の側面図(図1の矢印IIIの方向から見た図。)、図4図3のうちラミネートシートの接合部13a(図3の上端部)を拡大して表した図、図5図2にVで囲んだ部分の拡大図である。
これら図からわかるように本形態のラミネート電池10は、電池要素11及び電池要素11を内包して封止している外装体12を有して構成されている。
【0012】
1.1.電池要素
電池要素11は公知のものを適用することができるが、例えば全固体電池や液系電池を挙げることができる。全固体電池であれば、正極集電体、正極活物質層、固体電解質層、負極活物質層、及び負極集電体をこの順に有する積層体が複数重ねられた形態を具備して構成されている。一方、液系電池であれば、正極集電体、正極活物質層、セパレーター、負極活物質層、及び負極集電体が電解液に含浸されている態様である。
【0013】
正極集電体及び負極集電体としては、例えば各種金属を適用することができ、例えば、銀、銅、金、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、若しくはチタン等、又はこれらの合金を挙げることができる。電池要素がリチウムイオン電池である場合には、化学的安定性の観点から、正極集電体の材質はアルミニウムが好ましく、負極集電体の材質は銅が好ましい。
【0014】
正極活物質層、固体電解質層、及び負極活物質層は、電池要素が電池としての機能を有する構成であれば特に限定されない。例えば電池要素がリチウムイオン電池である場合には、正極活物質層は正極活物質としてのコバルト酸リチウムを有していてよく、固体電解質層は硫化物固体電解質としてのLiS-Pを有していてよく、負極活物質層は負極活物質としてのグラファイトを有していてよい。
【0015】
また電池要素11は、全体として直方体(6面体)の形状である。最も広い2つの面が表裏面(11c)として形成され(図2では一方の面のみが表れている。)、当該表裏面の間を渡され、電池要素11の厚さ部分を形成する4つの側面を有している。
ここで「全体として直方体(6面体)」であるとは、要素が厳密な意味での直方体でなく、必要な部材による当該部材が側面や表裏面から突出して凹凸を有してもよく、全体として直方体(6面体)と見なせる形態であることを意味する。
【0016】
本形態で電池要素11は、直方体である6面体の4つの側面のうち、後述する側面部材14に対向する面11a及び面11b(面11bは図2では死角となり見えない。)に不図示の集電タブが設けられている。面11aと面11bとは互いに反対側となる面である。
集電タブは公知のように正極集電タブ及び負極集電タブがあり、本形態では面11aに正極集電タブ、面11bに負極集電タブが設けられている。集電タブは、電池要素と電気的に接続されており、正極集電タブは正極側、負極集電タブは負極側について外部と電池要素とを電気的に接続する機能を有する部材である。正極集電タブ及び負極集電タブを構成する材料は導電性があればよいが、各種金属が好ましく、例えば、銀、銅、金、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、若しくはチタン等、又はこれらの合金を挙げることができる。
【0017】
これにより、本形態では後述するように集電タブが外装体12の側面部材14に電気的に接続し、側面部材14が封止手段としてのみでなく外部との接続端子として機能することもできる。
【0018】
1.2.外装体
外装体12は、袋状であり、その内側に電池要素11を内包するとともに封止する部材である。本形態で外装体12は、ラミネートシート13及び側面部材14を有して構成されている。
【0019】
1.2a.ラミネートシート
本形態でラミネートシート13は、全体として6面体である電池要素11の外周部のうち、表裏面11c及び面11a、面11b以外の2つの側面を一周するように囲み、端部同士が接合部13aで接合されている筒状とされた部材である。
【0020】
ここで、ラミネートシートとは、金属層とシーラント材層とを有するシートである。ラミネートシートに用いられる金属等としては、例えばアルミニウム、ステンレス鋼が挙げられ、シーラント材層に用いられる材料としては、例えば熱可塑性樹脂であるポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、又はポリ塩化ビニル等を挙げることができる。
【0021】
ラミネートシートの接合の方法は特に限定されることはなく、公知の方法を用いることができる。具体的には、ラミネートシートのシーラント材層同士を溶着する方法(例えば熱板溶着、超音波溶着法、振動溶着法、又はレーザー溶着法等)や接着剤による接着を挙げることができる。
【0022】
本形態のラミネートシート13は、電池要素11の外周部のうち表裏面11c及び2つの側面を一周するように囲み、当該囲んだ部位において電池要素11の外周に沿った形状とされている。従って、ラミネートシート13で囲まなかった側からラミネートシート13を見ると、図1図3からわかるようにラミネートシート13は電池要素11の外周に沿って電池要素11を縁取った四角形の枠状となる。
【0023】
また、本形態でラミネートシート13は、上記のように電池要素11の外周を一周するように囲み、端部同士が接合部13aで接合されている。そして、図1図5よりわかるように、本形態の接合部13aは、ラミネートシート13の面のうち、電池要素11側となる面同士を向かい合わせて接合している。
【0024】
また接合部13aの位置は、電池要素11の表裏面11c側のいずれかに寄せられていることが好ましい。接合部13aには、図3図5に符号13bで示したように、その根本側に凹状の隙間13bが生じる。本形態では接合部13aの位置を電池要素11の表裏面11c側のいずれかに寄せる位置に設けることで、当該隙間13bを小さく抑えることができる。
【0025】
1.2b.側面部材
本形態で側面部材14は全体として直方体のブロック状の部材であり、2つ設けられている。側面部材14は全体として直方体である6面のうち最も広い表裏面14aが、電池要素11のうちラミネートシート13により囲まれなかった残りの2つの側面である側面11a、側面11bと概ね同じ形状及び大きさとされている。そして、当該表裏面14aのうち一方の面が、側面11a、側面11bのそれぞれに対向するように配置されている。
また、側面部材14は、一周して筒状となったラミネートシート13の開口部13c(図2図5参照)に挿入されて、その側面14bがラミネートシート13の内周面に接合される。接合方法は特に限定されることはないが例えば接着剤を用いる方法を挙げることができる。
【0026】
ここで、本形態の側面部材14は、その側面14bの一部に突起14cを備えている。この突起14cは、側面部材14がラミネートシート13に組み合わされたときに、ラミネートシート13の接合部13aの隙間13bが配置される位置に設けられ、隙間13bに入り込んでこれを埋めることができる形状とされている。
【0027】
また、本形態で側面部材14は、外装体13の1つの構成として上記のようにラミネートシート13と組み合わされて電池要素11を内包して封止する機能を有するとともに、外部と電池要素11とを電気的に接続する端子としても機能する。従って、本形態で側面部材14は少なくとも一部に導電性を有する部材(例えば銅又は銅合金)を有するとともに当該導電性を有する部材は電池要素11の側面11a、側面11bに設けられた導電タブに電気的に接続されている。
【0028】
1.3.効果など
本開示のラミネート電池によれば、側面部材がラミネートシートの接合部に位置する部位に突起を有するため、接合部に生じた隙間を埋め、外装体として隙間が生じることを抑制し、構造信頼性を高めることができる。
また、本開示では特許文献1のように側面視で六角形の外装体に比べて、電池要素の形状に沿った外装体となり、外装体内に無駄な空間が生じることを抑制し構造効率を高めることが可能となる。これは、外装体における接合部の全長を短くすることができることも意味し、かかる観点からも構造信頼性を高めることができる。
また、本形態では、外装体を構成する部材である側面部材が外部との接続端子を兼ねているため、ラミネート電池の構造を簡素化することができる。
【0029】
2.第2形態
図6には第2形態にかかるラミネート電池20の構造を説明する図を示した。この図は図4と同じ視点による図である。
ラミネート電池20では、外装体22において、ラミネートシート23及び側面部材24が適用されている。ラミネート電池20は接合部23aが接合部13aとは異なる形状であり、これに応じて側面部材24の突起24cが突起14cと形状が異なるが、その考え方はラミネート電池10と同様である。
【0030】
ラミネートシート23の接合部23aは、一方側の端部は内側面(電池要素側となる面)、及び、他方側の端部は外側面(外部に露出する側の面)、が重ね合わされて両者が接合されている。これにより接合部23aの内側(電池要素側)に略三角形の隙間23bが生じる。
なお、本形態における接合部23aも電池要素の表裏面側のいずれかに寄せられている。これにより生じる隙間23bの大きさを小さく抑えることができる。
【0031】
側面部材24のうち、隙間23bに位置する部位には、該隙間23bを埋めることができる大きさ及び形状の突起24cが設けられている。
【0032】
このようなラミネート電池20も、ラミネート電池10と同様の効果を奏するものとなる。
【0033】
3.第3形態
図7図8には第3形態のラミネート電池30の構造を説明する図を示した。図7はラミネート電池30の外観斜視図、図8はラミネート電池30の分解斜視図である。
ラミネート電池30では、ラミネート電池10に備えられた電池要素11の代わりに、電池要素31が備えられ、他の要素については以下の説明以外はラミネート電池10と同様に考えることができる。
【0034】
本形態で電池要素31は、集電タブ31a、集電タブ31bが外装体12の接合部13aの方向に延びるとともに、接合部13aを貫通して外部に露出することにより外部に接続可能な端子を形成している。従ってこの形態では外装体12の側面部材14は外装体12の封止機能のみを有すればよいため、必ずしも導電性の材料が含まれている必要はなく、全体を樹脂、例えば熱可塑性樹脂であるポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、又はポリ塩化ビニル等により構成することもできる。
【0035】
このようなラミネート電池30も、側面部材14が外部端子を兼用しない点以外においてはラミネート電池10と同様の効果を奏するものとなる。
【0036】
4.第4形態
図9には第4形態のラミネート電池40の構造を説明する図を示した。この図は図3と同じ視点による図である。
【0037】
ラミネート電池40では、ラミネートシート43が、シート43a、シート43bが繋ぎ合わされることにより構成されている。このように、複数のシートによりラミネートシートが構成されてもよい。この場合、複数の接合部13aを有することになるが、各接合部、及び、これに対する側面部材14の突起14cは、ラミネート電池10と同様に考えることができる。
【0038】
このようなラミネート電池40では、接合部が増えるものの、電池要素を2つのシートで挟み込むことで電池要素を覆うことができる。
他の点については、ラミネート電池40によってもラミネート電池10と同様の効果を奏するものとなる。
【符号の説明】
【0039】
10 ラミネート電池
11 電池要素
12 外装体
13 ラミネートシート
13a 接合部
13b 隙間
14 側面部材
14c 突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9