IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱瓦斯化学株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】無色透明樹脂フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240625BHJP
   B29C 41/24 20060101ALI20240625BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240625BHJP
   B29K 73/00 20060101ALN20240625BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
B29C41/24
C08G73/10
B29K73:00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021509128
(86)(22)【出願日】2020-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2020011760
(87)【国際公開番号】W WO2020196103
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2019057241
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末永 修也
(72)【発明者】
【氏名】松丸 晃久
(72)【発明者】
【氏名】村山 智寿
(72)【発明者】
【氏名】岡田 佳奈
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 重之
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-064642(JP,A)
【文献】国際公開第2003/074587(WO,A1)
【文献】特開平06-087958(JP,A)
【文献】特開2017-187562(JP,A)
【文献】特表2010-513021(JP,A)
【文献】特開2007-293001(JP,A)
【文献】特表2007-534010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
B29C 41/24
C08G 73/10
B29K 73:00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂の有機溶媒溶液を支持体上に流延して乾燥させる工程を含む溶液流延法により樹脂フィルムを製造する方法であって、前記有機溶媒が、沸点80℃以下の有機溶媒(S1)及び沸点130℃以上の有機溶媒(S2)をそれぞれ1種以上含有し、
前記の樹脂の有機溶媒溶液を支持体上に流延して乾燥させる工程が、
(i)示差熱・熱重量同時測定によって求められる120~300℃にかけての重量減少率が1%を超えて10%以下となるように前記溶媒の一部を除去する工程、及び
(ii)前記溶媒の一部を除去する工程(i)の後、樹脂のガラス転移温度をTg(℃)としたときに、(Tg-50)℃~(Tg+100)℃の範囲内で熱処理をする工程
を含む、無色透明樹脂フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記樹脂の有機溶媒溶液から厚み20~50μmのフィルムを形成したとき、フィルムの全光線透過率が85%以上、且つイエローインデックス(YI)が5以下、ヘーズが2%以下、面内リタデーション(Re)が20nm以下、厚み方向リタデーション(Rth)が50nm以下である、請求項1に記載の無色透明樹脂フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂の有機溶媒溶液が、ポリアミド酸の有機溶媒溶液又はポリイミドの有機溶媒溶液である、請求項1又は2に記載の無色透明樹脂フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記樹脂フィルムの樹脂が、下記式[I]で示される繰り返し単位を有するポリイミドである、請求項1~3のいずれか1つに記載の無色透明樹脂フィルムの製造方法。
【化1】

(式中、Rは炭素数4~39の4価の脂環基であり、Φは合計の炭素数が2~39の2価の脂肪族基、脂環基、芳香族基又はこれらの組合せからなる基であって、結合基として-O-、-SO2-、-CO-、-CH2-、-C(CH32-、-OSi(CH32-、-C24O-及び-S-からなる群から選ばれる少なくとも1つを有していてもよい。)
【請求項5】
前記樹脂の有機溶媒溶液に含まれる前記有機溶媒(S1)と前記有機溶媒(S2)との質量比[(S1)/(S2)]が90/10~99/1である、請求項1~4のいずれか1つに記載の無色透明樹脂フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記有機溶媒(S1)が、ジクロロメタン及び1,3-ジオキソランからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか1つに記載の無色透明樹脂フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記有機溶媒(S2)が、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、γ-ブチロラクトン及びジメチルスルホキシドからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~6のいずれか1つに記載の無色透明樹脂フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記樹脂の有機溶媒溶液が、有機溶媒100gに対し、5~80gの範囲内で溶解された樹脂を含有する、請求項1~7のいずれか1つに記載の無色透明樹脂フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無色透明樹脂フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、優れた機械的特性及び耐熱性を有することから、電気部品又は電子部品等の分野において様々な利用が検討されている。例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の画像表示装置に用いられるガラス基板を、デバイスの軽量化やフレキシブル化を目的として、プラスチック基板へ代替することが望まれており、当該プラスチック材料として適するポリイミド樹脂の研究も進められている。
【0003】
汎用ポリイミドフィルムは、ベルトもしくはドラム上にポリアミック酸を含有する有機溶媒溶液を流延して、ポリアミック酸を加熱等のイミド化反応させて溶液流延製膜するのが一般的である。
【0004】
汎用ポリイミドは、高い耐熱性をもつことが知られている。汎用ポリイミドは芳香族テトラカルボン酸無水物と芳香族ジアミンとから得られ、分子の剛直性、共鳴安定化、強い化学結合により優れた耐熱性、耐薬品性、機械物性、電気特性を有するため、成形材料、複合材料、電気部品又は電子部品等の分野において幅広く用いられている。
【0005】
しかしながら、上記芳香族原料から合成されるポリイミド類は、分子内あるいは、分子間の電子移動錯体形成に由来する吸収により、フィルム成形後において、黄色乃至褐色に着色しているため、フラットパネルディスプレイや携帯電話機器等の基板材料、光ファイバー、光導波路、光センサー、光学用接着剤等の光学用途には適さなかった。
【0006】
そのため、ポリイミドの高耐熱性の特徴を活かしつつ、透明性を改善するため繰り返し単位中にパーフルオロアルキル基が導入されたフッ素化ポリイミドや、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸無水物等の脂環式原料を用いた脂環式ポリイミドが開発されてきた。
【0007】
特許文献1には、ポリイミド系高分子と、γ-ブチロラクトン及びN,N-ジメチルアセトアミドを含有する液から剥離性と外観に優れるポリイミド系フィルムの製造方法が開示されている。
【0008】
特許文献2では、可溶性ポリイミド樹脂を主成分とし、ジクロロメタンを溶媒とする液にアルコール系溶剤を含有することでうろこ状のムラを低減した光学フィルムの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2017-25204号公報
【文献】特開2017-187617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の方法では、γ-ブチロラクトンやN,N-ジメチルアセトアミドのような高沸点の有機溶媒を用いた場合、溶媒を除去するために乾燥工程での温度を高くする必要があり、着色により透明性が低下するという問題があった。
また、特許文献2の方法では、ジクロロメタンのような低沸点溶媒の場合、溶媒が直ぐに揮発してしまうため、流延法により配向したポリイミドが固定され光学異方性が発生するという問題があった。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、高温乾燥での着色がなく、良好な光学等方性を実現可能な無色透明樹脂フィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、溶液流延法でフィルムを製造する際に、樹脂の有機溶媒溶液中の有機溶媒に低沸点溶媒を主成分としかつ高沸点溶媒を含有することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち本発明は、樹脂の有機溶媒溶液を支持体上に流延して乾燥させる工程を含む溶液流延法により樹脂フィルムを製造する方法であって、前記有機溶媒が、沸点80℃以下の有機溶媒(S1)及び沸点130℃以上の有機溶媒(S2)をそれぞれ1種以上含有する、無色透明樹脂フィルムの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法によれば、透明性及び光学等方性に優れた無色透明樹脂フィルムを製造することができる。本発明の方法で得られた無色透明樹脂フィルムは、全光線透過率、イエローインデックス(YI)値、ヘーズ等の光学特性が良好で、且つ光学等方性を示すリタデーションが低い。そのため、本発明の方法で得られた無色透明樹脂フィルムは、液晶表示素子、有機EL表示素子の透明基板やタッチパネルの透明導電フィルムの基材として使用した場合に良好な性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の無色透明樹脂フィルムの製造方法は、樹脂の有機溶媒溶液を支持体上に流延して乾燥させる工程を含む溶液流延法により樹脂フィルムを製造する方法であって、前記有機溶媒が、沸点80℃以下の有機溶媒(S1)及び沸点130℃以上の有機溶媒(S2)をそれぞれ1種以上含有する、無色透明樹脂フィルムの製造方法である。
本発明における「無色透明」とは、厚み20~50μmのフィルムを形成したとき、フィルムの全光線透過率が好ましくは85%以上、且つイエローインデックス(YI)が好ましくは5以下、ヘーズが好ましくは2%以下であることを意味する。
【0016】
本実施形態に用いることができる樹脂としては、樹脂の有機溶媒溶液を支持体上に流延して乾燥させる工程を含む溶液流延法により樹脂フィルムを製造できるものであれば特に限定されないが、樹脂フィルムの樹脂がポリイミドであることが好ましい。樹脂の有機溶媒溶液は、ポリアミド酸の有機溶媒溶液又はポリイミドの有機溶媒溶液が好ましい。以下、樹脂フィルムの樹脂がポリイミドである場合を代表例として本実施形態を詳細に説明する。
【0017】
本実施形態に用いることができる樹脂フィルムの樹脂としては、透明性や光学等方性の点から、例えば下記式[I]で示される繰り返し単位を含むポリイミドがより好ましい。
【化1】

(式中、Rは炭素数4~39の4価の脂環基であり、Φは合計の炭素数が2~39の2価の脂肪族基、脂環基、芳香族基又はこれらの組合せからなる基であって、結合基として-O-、-SO2-、-CO-、-CH2-、-C(CH32-、-OSi(CH32-、-C24O-及び-S-からなる群から選ばれる少なくとも1つを有していてもよい。)
【0018】
ポリイミドにおける式[I]の繰り返し単位の含有量は、ポリイミドの全繰り返し単位100モル%に対して、好ましくは10~100モル%、より好ましくは50~100モル%、更に好ましくは70~100モル%、更に好ましくは90~100モル%である。また、ポリイミド1分子中の式[I]の繰り返し単位の個数は、好ましくは10~2000、より好ましくは20~200である。
【0019】
ポリイミドは、4価の脂環式テトラカルボン酸と2価のジアミンとを構成成分とし、脂環式テトラカルボン酸又はその誘導体とジアミン又はその誘導体とを反応させることにより得られる。脂環式テトラカルボン酸又はその誘導体としては、脂環式テトラカルボン酸、脂環式テトラカルボン酸エステル類、脂環式テトラカルボン酸二無水物等が挙げられるが、好ましくは脂環式テトラカルボン酸二無水物である。ジアミン及びその誘導体としては、ジアミン、ジイソシアネート、ジアミノジシラン類等が挙げられるが、好ましくはジアミンである。
【0020】
ポリイミドの合成に用いられる脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物等が例示されるが、特に好ましいのは1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物である。一般に、脂肪族ジアミンを構成成分とするポリイミドは、中間生成物であるポリアミド酸とジアミンとが強固な錯体を形成するために高分子化しにくいので、錯体の溶解性が比較的高い溶媒(例えばクレゾール)を用いる等の工夫が必要になる。しかし、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンとを構成成分とするポリイミドでは、ポリアミド酸とジアミンとの錯体は比較的弱い結合で結ばれているので、高分子量化が容易で、フレキシブルなフィルムが得られ易い。なお、前記テトラカルボン酸成分は異性体を含む。
【0021】
上記したテトラカルボン酸成分には、ポリイミドの溶媒可溶性、フィルムのフレキシビリティ、透明性を損なわない範囲で、脂環式テトラカルボン酸以外のテトラカルボン酸又はその誘導体、特に二無水物を併用することができる。
【0022】
脂環式テトラカルボン酸以外のテトラカルボン酸としては、芳香族テトラカルボン酸及び直鎖又は分岐の脂肪族テトラカルボン酸が挙げられる。芳香族テトラカルボン酸の具体例としては、ピロメリット酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、4,4-(p-フェニレンジオキシ)ジフタル酸、4,4-(m-フェニレンジオキシ)ジフタル酸、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン及びこれらテトラカルボン酸の誘導体、特に二無水物から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。直鎖又は分岐の脂肪族テトラカルボン酸の具体例としては、エチレンテトラカルボン酸等が挙げられる。
【0023】
式[I]のイミド環の窒素及びΦを構成するジアミン系成分としては、ジアミン、ジイソシアネート、ジアミノジシラン類等が挙げられるが、ジアミンが好ましい。ジアミン系成分中のジアミン含量は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上(100モル%を含む)である。
【0024】
ポリイミドの合成に用いられるジアミンは、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン又はこれらの混合物のいずれでもよい。なお、本発明において“芳香族ジアミン”とは、アミノ基が芳香族環に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に脂肪族基、脂環基、その他の置換基を含んでいてもよい。“脂肪族ジアミン”とは、アミノ基が脂肪族基又は脂環基に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に芳香族基、その他の置換基を含んでいてもよい。
【0025】
ポリイミドの合成に用いられる芳香族ジアミンとしては、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、ベンジジン、o-トリジン、m-トリジン、ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、オクタフルオロベンジジン、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジフルオロ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,6-ジアミノナフタレン、1,5-ジアミノナフタレン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(2-メチル-4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(2,6-ジメチル-4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-(2-メチル-4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-(2,6-ジメチル-4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(2-メチル-4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(2,6-ジメチル-4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(2-メチル-4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(2,6-ジメチル-4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)エーテル、ビス(4-(2-メチル-4-アミノフェノキシ)フェニル)エーテル、ビス(4-(2,6-ジメチル-4-アミノフェノキシ)フェニル)エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-メチル-4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2,6-ジメチル-4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(2-メチル-4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(2,6-ジメチル-4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(2-メチル-4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(2,6-ジメチル-4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(2-メチル-4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(2,6-ジメチル-4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、α,α’-ビス(4-アミノフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(2-メチル-4-アミノフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(2,6-ジメチル-4-アミノフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(3-アミノフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(4-アミノフェニル)-1,3-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(2-メチル-4-アミノフェニル)-1,3-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(2,6-ジメチル-4-アミノフェニル)-1,3-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(3-アミノフェニル)-1,3-ジイソプロピルベンゼン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(2-メチル-4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(2,6-ジメチル-4-アミノフェニル)フルオレン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(2-メチル-4-アミノフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(2,6-ジメチル-4-アミノフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(2-メチル-4-アミノフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(2,6-ジメチル-4-アミノフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)4-メチル-シクロヘキサン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)ノルボルナン、1,1-ビス(2-メチル-4-アミノフェニル)ノルボルナン、1,1-ビス(2,6-ジメチル-4-アミノフェニル)ノルボルナン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)アダマンタン、1,1-ビス(2-メチル-4-アミノフェニル)アダマンタン、1,1-ビス(2,6-ジメチル-4-アミノフェニル)アダマンタン等が挙げられる。
【0026】
さらに、ポリイミドの合成に用いられる脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、ポリプロピレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,4-ビス(2-アミノ-イソプロピル)ベンゼン、1,3-ビス(2-アミノ-イソプロピル)ベンゼン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、シロキサンジアミン類等が挙げられる。
【0027】
ポリイミドは、通常、有機溶媒溶液(ワニス)として製造する。本発明の方法では、有機溶媒として、沸点80℃以下の有機溶媒(S1)及び沸点130℃以上の有機溶媒(S2)をそれぞれ1種以上含有する有機溶媒を用いる。本発明では、比較的低い沸点を有する有機溶媒(S1)及び比較的高い沸点を有する有機溶媒(S2)を併用することで、乾燥工程において、有機溶媒(S1)を効率的に揮発させてフィルムの黄変を抑制するとともに、有機溶媒(S2)を敢えてフィルム中に残存させることで光学等方性に優れたフィルムを得ることができる。
【0028】
有機溶媒(S1)の沸点は、80℃以下であり、好ましくは75℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは65℃以下、更に好ましくは60℃以下である。有機溶媒(S1)の沸点の下限値は特に限定されないが、作業効率の観点から好ましくは30℃以上である。80℃以下の比較的低い沸点を有する有機溶媒(S1)を用いることで、120~150℃程度の比較的低い乾燥温度で有機溶媒(S1)を揮発させて樹脂フィルムを得ることができる。
【0029】
有機溶媒(S1)としては、特に限定されないが、例えば、ジクロロメタン(DCM、沸点39.6℃)、1,3-ジオキソラン(沸点75℃)、テトラヒドロフラン(THF、沸点66℃)、アセトン(沸点56℃)、クロロホルム(沸点61℃)、酢酸エチル(沸点77℃)等が使用可能であり、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、有機溶媒(S1)としては、ポリイミドワニスの性能の観点から、ジクロロメタン及び1,3-ジオキソランからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0030】
有機溶媒(S2)の沸点は、130℃以上であり、好ましくは140℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは160℃以上である。有機溶媒(S2)の沸点の上限値は特に限定されないが、例えば300℃以下であってもよく、250℃以下であってもよい。130℃以上の比較的高い沸点を有する有機溶媒(S2)を用いることで、120~150℃程度の乾燥温度で樹脂の有機溶媒溶液を乾燥させた際に、リタデーションが低く光学等方性に優れた樹脂フィルムを得ることができる。その理由は未だ明らかではないが、120~150℃程度の比較的低い乾燥温度で樹脂の有機溶媒溶液を乾燥させることで、樹脂フィルム中に使用上問題ない程度の有機溶媒(S2)が残存し、それにより高分子鎖の配向が緩和されて低いリタデーションを実現すると推定される。
【0031】
有機溶媒(S2)としては、特に限定されないが、例えば、シクロペンタノン(沸点131℃)、シクロヘキサノン(沸点156℃)、N-メチル-2-ピロリドン(沸点202℃)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc、沸点165℃)、N,N-ジメチルホルムアミド(沸点153℃)、γ-ブチロラクトン(GBL、沸点204℃)、ジメチルスルホキシド(沸点189℃)、ジメチルイソ酪酸アミド(沸点179℃)等が使用可能であり、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、有機溶媒(S2)としては、ポリイミドワニスの性能の観点から、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、γ-ブチロラクトン及びジメチルスルホキシドからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0032】
ポリイミドの有機溶媒溶液に含まれる有機溶媒(S1)と有機溶媒(S2)との質量比[(S1)/(S2)]は、比較的低い乾燥温度で樹脂の有機溶媒溶液を乾燥し、フィルムの黄変を抑制する観点から、90/10~99/1が好ましく、93/7~97/3がより好ましい。
【0033】
ポリイミドの有機溶媒溶液の製造方法としては、下記の(1)~(3)の方法が挙げられるが、これらの方法に限定されない。
【0034】
(1) ジアミン系成分の有機溶媒溶液にテトラカルボン酸成分を添加し、または、テトラカルボン酸成分の有機溶媒溶液にジアミン系成分を添加し、好ましくは80℃以下、特に室温付近ないしそれ以下の温度で0.5~3時間保つ。得られた反応中間体のポリアミド酸溶液にトルエンあるいはキシレン等の共沸脱水溶媒を添加して、生成水を共沸により系外へ除きつつ脱水反応を行い、ポリイミドの有機溶媒溶液を得る。
【0035】
(2) 上記(1)と同様にして得た反応中間体のポリアミド酸溶液に無水酢酸等の脱水剤を加えてイミド化した後、メタノール等のポリイミドに対する溶解能が乏しい溶媒を添加して、ポリイミドを沈殿させる。ろ過、洗浄及び乾燥により固体として分離した後、有機溶媒に溶解してポリイミドの有機溶媒溶液を得る。
【0036】
(3) 上記(1)において、クレゾール等の高沸点溶媒を用いてポリアミド酸溶液を調製し、そのまま150~220℃に3~12時間保ってポリイミド化させた後、メタノール等のポリイミドに対する溶解能が乏しい溶媒を添加して、ポリイミドを沈殿させる。ろ過、洗浄及び乾燥により固体として分離した後、有機溶媒に溶解してポリイミドの有機溶媒溶液を得る。
【0037】
また、ポリイミドを溶液重合で製造する場合、触媒として3級アミン化合物を用いることが好ましい。これらとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン(TEA)、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N-メチルピロリジン、N-エチルピロリジン、N-メチルピペリジン、N-エチルピペリジン、イミダゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン等が挙げられる。これらの3級アミン化合物のうち、特にTEAが好ましい。
【0038】
また、本発明で使用するポリイミドの有機溶媒溶液の濃度は、ポリイミド成分が4~45質量%であるのが好ましく、10~40質量%がより好ましい。具体的には、樹脂の有機溶媒溶液は、有機溶媒100gに対し、好ましくは5~80g、より好ましくは10~70gの範囲内で溶解された樹脂を含有する。当該範囲内であれば、得られるポリイミドフィルムの表面平滑性が良好である。
【0039】
本発明で使用するポリイミドの重量平均分子量は、得られるポリイミドの屈曲性、機械強度の観点から、10,000以上であることが好ましく、50,000以上であることがより好ましい。なお、ポリイミドの重量平均分子量は、公知の方法で測定することができ、例えばゲルろ過クロマトグラフィー等により測定することができる。また、展開溶媒にN,N-ジメチルホルムアミドを用いて光散乱検出器で絶対分子量を測定する方法も挙げられる。
【0040】
ポリイミドの有機溶媒溶液には、フッ素系、ポリシロキサン系等の界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤を添加することにより、表面平滑性の良好なフィルムを得やすくなる。
【0041】
ポリイミドの有機溶媒溶液には、フェノール系、硫黄系、リン酸系、亜リン酸系等の酸化防止剤を添加してもよい。
【0042】
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、本発明のポリイミドを含む溶液、又は本発明のポリイミドを含む溶液と記述の種々の添加剤とを含む溶液を、ガラス板、金属板、プラスチック等の平滑な支持体上に塗布、又はフィルム状に成形した後、該溶液中に含まれる有機溶媒等の溶媒成分を除去する方法等が挙げられる。
【0043】
無色透明ポリイミドフィルムの製造方法として、ポリイミドの有機溶媒溶液を支持体上に流延して乾燥させる溶液流延法でフィルムにする方法が挙げられる。具体的には、ポリイミドの有機溶媒溶液を支持体上に流延した後、好ましくは80℃以上250℃以下の気体を支持体上の流延物に吹き付ける形式の製膜機を用いて有機溶媒を揮発させ、自己支持性フィルムとして支持体から剥離して得る。気体を吹き付ける前に一次乾燥を行うことが好ましい。一次乾燥の条件は特に限定されないが、例えば80~120℃の温度で10~30分間保持することが好ましい。
【0044】
吹き付ける気体としては、空気又は窒素が挙げられ、コストの観点からは空気が好ましく、フィルムの着色防止の観点からは窒素が好ましい。吹き付ける気体の温度は、80℃以上250℃以下がより好ましく、100℃以上220℃以下が更に好ましい。吹き付ける気体の温度が80℃より低い場合、有機溶媒が十分に揮発せずフィルムを支持体から剥離する際に支持体への貼りつき等が発生する場合がある。また、気体の温度が250℃より高い場合、溶媒が急に揮発するためにフィルムに発泡が生じ、また、溶媒が分解してフィルムが着色する場合がある。気体を吹き付ける時間は、吹き付ける気体の温度によって異なるが、好ましくは15~30分、より好ましくは15~25分である。また、流延物に吹き付ける気体の温度が異なる複数の区域を設けることもできる。
【0045】
また、本発明の無色透明ポリイミドフィルムの製造方法において、樹脂の有機溶媒溶液を支持体上に流延して乾燥させる工程は、(i)示差熱・熱重量同時測定によって求められる120~300℃にかけての重量減少率が1%を超えて10%以下になるように前記溶媒の一部を除去する工程、及び(ii)前記溶媒の一部を除去する工程(i)の後、樹脂のガラス転移温度をTg(℃)としたときに、(Tg-50)~(Tg+100)℃の範囲内で熱処理をする工程を含むことが好ましい。
前記工程(i)における前記重量減少率は、好ましくは1%を超えて10%以下、より好ましくは1%以上5%以下、更に好ましくは1%以上3%以下である。当該範囲内であれば、乾燥に時間がかかりすぎることはなく、透明性及び光学等方性に優れた無色透明樹脂フィルムを製造することができる。
前記工程(ii)における熱処理温度は、好ましくは(Tg-50)℃以上(Tg+100)℃以下、より好ましくは(Tg-30)℃以上(Tg+80)℃以下、更に好ましくは(Tg-10)℃以上(Tg+60)℃以下である。当該範囲内であれば、透明性及び光学等方性に優れた無色透明樹脂フィルムを製造することができる。
【0046】
ポリイミドフィルムは、透明性及び屈曲性を損なわない範囲で、更に他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、可塑剤、酸化防止剤、離型剤、安定剤、ブルーイング剤等の着色剤、難燃剤、滑剤、増粘剤、及びレベリング剤等が挙げられる。
【0047】
本製造方法で得られるポリイミドフィルムの厚さは、用途に応じて適宜調整されるが、通常10~500μmであり、15~200μmであることが好ましく、20~100μmであることがより好ましい。
【0048】
このポリイミドフィルムは、厚み20~50μmにおいて、JIS K7361-1に準拠した全光線透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
また、このポリイミドフィルムは、厚み20~50μmにおいて、JIS K7361-1に準拠したヘーズが2%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。
また、このポリイミドフィルムは、厚み20~50μmにおいて、JIS K7361-1に準拠したイエローインデックス(YI)が5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。
【0049】
このポリイミドフィルムは、厚み方向のリタデーション(Rth)が50nm以下であることが好ましく、40nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることが更に好ましい。
このポリイミドフィルムは、面内のリタデーション(Re)が20nm以下であることが好ましく、15nm以下であることがより好ましい。
【0050】
本製造方法で得られるポリイミドフィルムは、その他の成分として添加剤等を含むことができる。例えば、二酸化チタン等を含むことによって、白色光の反射率が向上する。また、ナノフィラー等を含むことによって、樹脂組成物成形体の見かけのガラス転移温度が上昇し耐熱性が高まり、更に引張弾性率が大きくなり機械的強度が増大する。
【0051】
本発明の方法で得られる無色透明樹脂フィルムは、タッチセンサー、カラーフィルター、フレキシブルディスプレイ、半導体部品、光学部材等の各種部材用のフィルムとして好適に用いられる。また、本発明の方法で得られる無色透明樹脂フィルムは、液晶表示素子、有機EL表示素子の透明基板やタッチパネルの透明導電フィルムの基材として有用である。
【実施例
【0052】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
下記実施例で得たフィルムの物性の測定方法を以下に示す。
【0053】
(1)フィルム厚さ
フィルム厚さは、株式会社ミツトヨ製のマイクロメーターを用いて測定した。
【0054】
(2)全光線透過率、ヘーズ、イエローインデックス(YI)
測定はJIS K7361-1準拠し、日本電色工業株式会社製の色彩・濁度同時測定器「COH400」を用いて行った。
【0055】
(3)面内リタデーション(Re)
面内リタデーション(Re)は、日本分光株式会社製のエリプソメーター「M-220」を用いて測定した。測定波長590nmにおける、面内位相差の値を測定した。
【0056】
(4)厚み方向リタデーション(Rth)
厚み位相差(Rth)は、日本分光株式会社製のエリプソメーター「M-220」を用いて測定した。測定波長590nmにおける、厚み位相差の値を測定した。なおRthは、ポリイミドフィルムの面内の屈折率のうち最大のものをnx、最小のものをnyとし、厚み方向の屈折率をnzとし、フィルムの厚みをdとしたとき、下記式によって表されるものである。
Rth=[{(nx+ny)/2}-nz]×d
【0057】
(5)フィルム中の有機溶媒含有量
株式会社日立ハイテクサイエンス製の示差熱・熱重量同時測定装置「TG/DTA6200」を用い、窒素気流下、昇温速度10℃/minの条件で測定を行い、120℃から300℃まで昇温し引き続き300℃で30分間保持し、この間に減少した質量をフィルム中の有機溶媒含有量とした。
【0058】
(6)ガラス転移温度(Tg)
株式会社日立ハイテクサイエンス製の熱機械的分析装置「TMA/SS6100」を用いて、引張モードで試料サイズ2mm×20mm、荷重0.1N、昇温速度10℃/minの条件で、残留応力を取り除くのに十分な温度まで昇温して残留応力を取り除き、その後室温まで冷却した。その後、前記残留応力を取り除くための処理と同じ条件で試験片伸びの測定の測定を行い、伸びの変曲点が見られたところをガラス転移温度として求めた。
【0059】
<実施例1>
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた2Lの5ツ口ガラス製丸底フラスコ中で、α,α’-ビス(4-アミノフェニル)-1,3-ジイソプロピルベンゼン(三井化学ファイン株式会社製)239.772g(0.696モル)、4,4-ジアミノジフェニルエーテル(和歌山精化工業株式会社製)34.842g(0.174モル)、γ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)376.453g、及び触媒としてトリエチルアミン(関東化学株式会社製)44.018g、トリエチレンジアミン(東京化成工業株式会社製)0.488gを、反応系内温度70℃窒素雰囲気下、200rpmで撹拌して溶液を得た。これに1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(三菱ガス化学株式会社製)195.028g(0.870モル)及びγ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)94.113gをそれぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を200℃まで上げた。留去される成分を捕集し、撹拌数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を200℃で5時間維持した。N,N-ジメチルアセトアミド847.067gを添加後、100℃付近で約1時間撹拌して均一な溶液とし、固形分濃度25質量%の均一なポリイミドワニス(a)を得た。
【0060】
続いて、得られたポリイミドワニスをメチルアルコール中に滴下し、ポリイミド粉末を沈殿させ固体を桐山ロートで吸引濾過し、更にメチルアルコールで洗浄して200℃30分間乾燥処理で溶媒を除去し、ポリイミド粉末を得た。
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた300mLの5ツ口ガラス製丸底フラスコ中で、得られたポリイミド粉末15gとジクロロメタン(DCM)80.75gとN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)4.25gを一括で加えた後、室温で1時間撹拌して均一な溶液とし、固形分濃度15質量%の均一なポリイミドワニス(b)を得た。
【0061】
続いて、得られたポリイミドワニス(b)をPET基板上に塗布し、室温で5分間保持後、50℃で空気雰囲気下5分間保持し、最後に空気雰囲気下30分間、150℃の熱風を吹き付けて乾燥することで、厚み35μmのフィルムを得た。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0062】
<実施例2>
実施例1で得られたポリイミドフィルムを、空気雰囲気下20分間、250℃の熱風を吹き付けて更に乾燥することで、厚み35μmのフィルムを得た。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0063】
<比較例1>
実施例1で得たポリイミドワニス(a)をメチルアルコール中に滴下し、ポリイミド粉末を沈殿させ固体を桐山ロートで吸引濾過し、更にメチルアルコールで洗浄して200℃30分乾燥処理で溶媒を除去し、ポリイミド粉末を得た。
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた300mLの5ツ口ガラス製丸底フラスコ中で、得られたポリイミド粉末15gとジクロロメタン(DCM)85gを一括で加えた後、室温で1時間撹拌して均一な溶液とし、固形分濃度15質量%の均一なポリイミドワニスを得た。
【0064】
続いて、得られたポリイミドワニスをPET基板上に塗布し、室温で5分間保持後、50℃で空気雰囲気下5分間保持し、最後に空気雰囲気下20分間、150℃の熱風を吹き付けて乾燥することで、厚み35μmのフィルムを得た。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0065】
<比較例2>
比較例1で得られたポリイミドフィルムを、空気雰囲気下20分間、250℃の熱風を吹き付けて更に乾燥することで、厚み35μmのフィルムを得た。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1に示すように、実施例1及び2で得られたポリイミドフィルムは、全光線透過率、ヘーズ、YI等の光学特性が良好であって、且つRthが低く光学等方性に優れたフィルムが得られる。これに対し、比較例1及び2で得られたポリイミドフィルムは、Rthが大きく光学等方性が劣る。