IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ヘッドアップディスプレイ 図1
  • 特許-ヘッドアップディスプレイ 図2
  • 特許-ヘッドアップディスプレイ 図3
  • 特許-ヘッドアップディスプレイ 図4
  • 特許-ヘッドアップディスプレイ 図5
  • 特許-ヘッドアップディスプレイ 図6
  • 特許-ヘッドアップディスプレイ 図7
  • 特許-ヘッドアップディスプレイ 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20240625BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20240625BHJP
   G09G 5/10 20060101ALI20240625BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20240625BHJP
【FI】
G02B27/01
G09G5/00 510G
G09G5/00 550C
G09G5/10 B
G09G5/00 550B
B60K35/23
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021548761
(86)(22)【出願日】2020-09-08
(86)【国際出願番号】 JP2020033871
(87)【国際公開番号】W WO2021059952
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2019172698
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 千秋
(72)【発明者】
【氏名】春山 裕輝
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/002344(WO,A1)
【文献】特開2018-045143(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0141905(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0169612(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0231719(US,A1)
【文献】特開2012-047893(JP,A)
【文献】特開2010-072254(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0079987(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元平面上に配列された複数の光源と、
前記光源によって透過照明されて表示情報を表す表示光を出射する表示器と、
前記複数の光源の各々に対し多様な照明強度で照明させる制御部と、を備え、
前記表示光の虚像を視認させるヘッドアップディスプレイであって、
前記複数の光源の各々は、前記虚像の視認可能領域となるアイボックスを格子状に分割したいずれかの格子領域に対応し、
前記制御部は、前記虚像を視認する視認者の視点に関する視点情報が入力され、前記視点情報に基づく前記視認者の両眼の各々の視点が入る前記格子領域に対応する前記光源である基準光源を点灯させ、
前記制御部は、前記視認者の両眼の視点のいずれか一方の視点のみが前記格子領域内にいるとき、前記一方の視点が入る前記格子領域に対応する前記基準光源を点灯させ
前記制御部は、前記視認者の両眼の視点のすべてが前記格子領域内から領域外に移動したとき、前記視認者の両眼の視点のいずれかが最後に入っていた前記格子領域に対応する前記基準光源の点灯を継続する
ヘッドアップディスプレイ。
【請求項2】
前記制御部は、前記視認者の両眼の視点のすべてが前記格子領域内から領域外に移動してからの経過時間に伴って、前記点灯継続中の前記基準光源の輝度を徐々に減光する、
請求項のヘッドアップディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、虚像を表示するヘッドアップディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のヘッドアップディスプレイとして特許文献1に開示されたものがある。このヘッドアップディスプレイは、アイボックスへの光照射効率を向上させ視点移動に伴う虚像表示の輝度変化量を抑制するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-82722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、視認者の視点の変化に合わせて適切に照明するという観点で改善の余地がある。
【0005】
本開示は、視認者の視点に合わせた表示品位の高い虚像表示を行うヘッドアップディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のヘッドアップディスプレイは、
二次元平面上に配列された複数の光源と、
前記光源によって透過照明されて表示情報を表す表示光を出射する表示器と、
前記複数の光源の各々に対し多様な照明強度で照明させる制御部と、を備え、
前記表示光の虚像を視認させるヘッドアップディスプレイであって、
前記複数の光源の各々は、前記虚像の視認可能領域となるアイボックスを格子状に分割したいずれかの格子領域に対応し、
前記制御部は、前記虚像を視認する視認者の視点に関する視点情報が入力され、前記視点情報に基づく前記視認者の両眼の各々の視点が入る前記格子領域に対応する前記光源である基準光源を点灯させ、
前記制御部は、前記視認者の両眼の視点のいずれか一方の視点のみが前記格子領域内にいるとき、前記一方の視点が入る前記格子領域に対応する前記基準光源を点灯させ
前記制御部は、前記視認者の両眼の視点のすべてが前記格子領域内から領域外に移動したとき、前記視認者の両眼の視点のいずれかが最後に入っていた前記格子領域に対応する前記基準光源の点灯を継続する
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、視認者の視点に合わせた表示品位の高い虚像表示を行うヘッドアップディスプレイを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ヘッドアップディスプレイの構成概略図
図2】視認者の右目に入射する光路を示す図
図3】視認者の左目に入射する光路を示す図
図4】光源とアイボックスの各格子領域との対応関係を示す図
図5】基準光源とその近傍光源の照明強度を示す図
図6】照明制御手順を示す図
図7】両眼がアイボックス内にある場合の照明強度を示す図
図8】片眼がアイボックス内にある場合の照明強度を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示のヘッドアップディスプレイHUDを添付図面(図1図8)に基づいて以下に説明する。以下の説明において、方向Tは上方向を示し、方向Bは下方向を示し、方向Rは右方向を示し、方向Lは左方向を示し、方向Fは車両前方を示し、方向Rrは車両後方を示す。
【0010】
図1を参照する。ヘッドアップディスプレイHUDは、車両のインストルメントパネルに搭載され、表示光DLを車両のウインドシールドWSに出射する。表示光DLは、例えば、車両の走行速度や各種車両警告、経路案内情報などの車両情報を表すものである。車両の搭乗者(視認者)Vrは、アイボックスEBからウインドシールドWSを見ると、表示光DLの虚像ViをウインドシールドWSの前方に見ることができる。
【0011】
ヘッドアップディスプレイHUDは、表示器1と、反射鏡2と、図示しない制御回路基板(制御部)を有する。
【0012】
表示器1は、制御回路基板に制御されて、車両情報を表す画像を表示し、この画像を表す表示光DLを出射する。
【0013】
反射鏡2は、ヘッドアップディスプレイHUDの筐体内で表示光DLを折り返し、ウインドシールドWSに向けて反射する反射鏡である。
反射鏡2は、例えば、回転軸AXを中心に回動可能な凹面鏡である。反射鏡2は、制御回路基板に制御されてアイボックスEBを上下方向(TB方向)に移動することができる。
【0014】
制御回路基板は、表示器1及び反射鏡2を制御する制御回路を有する。制御回路基板は、図示しない外部の視点検出装置から車両の搭乗者(視認者)Vrの右眼の視点VrR及び左眼の視点VrLの位置情報に関する視点情報が入力される。制御回路基板は、この視点情報に基づいて、各視点VrR、VrLがアイボックスEB内のどの位置にあるのか、または、アイボックスEB外にあるのかを判断する。
【0015】
図2図4を参照する。表示器1は、光源11、フィールドレンズ12、液晶パネル13を有する。フィールドレンズ12は、第1フィールドレンズ12aと第2フィールドレンズ12bから構成され、光源11の基準光源11Aから出射される照明光が液晶パネル13の全面を透過照明するように設計された前段光学部材(バックライト光学部材)である。また、フィールドレンズ12は、液晶パネル13から出射される表示光DLが後段光学部材(反射鏡2及びウインドシールドWSから構成されるHUD光学部材)を経てアイボックスEB内の任意の位置にある視認者Vrの目に届くように設計されている。
【0016】
光源11は、二次元平面上に配列された縦4灯×横7灯の28灯のLED光源で構成されている。各光源11(0,0)~11(6,4)は、アイボックスEBを縦4×横7の格子状に分割した各格子領域eb(0,0)~eb(6,4)に対応する。具体的に例示すると、光源11(0,0)を点灯すると、液晶パネル13から出射される表示光DLの虚像Viは、アイボックスEBの格子領域eb(0,0)から視認できる。
【0017】
図5を参照する。制御回路基板は、アイボックスEB内の各格子領域eb(0,0)~eb(6,4)内において各視点VrR、VrLが位置する格子領域に対応する基準光源11Aを点灯することで、視認者Vrの視点に合わせた虚像Viを表示する。基準光源11Aを点灯させるにあたっては、視認者Vrの微細な視点移動を考慮して、基準光源11Aの近傍の光源も点灯させることが表示品位を向上させる観点で好ましい。具体的に例示すると、基準光源11Aの輝度(点灯強度)をaとし、基準光源11Aの左右の光源の輝度をbとし、基準光源11Aの上下の光源の輝度をcとし、基準光源11Aの斜めの光源の輝度をdとしたとき、а:b:c:d=1:0.8:0.6:0.4とすることが好ましい。このように、制御回路基板は、検出した視点が位置する格子領域に対応する基準光源11A、または基準光源11A及び近傍光源のみを点灯させる。図5の例では図5の例では基準光源11の近傍として8近傍の光源を点灯させたが、これに限らず、上下左右の4近傍の光源としてもよい。点灯光源を少なくするほど省電力となり、光源が発する熱を抑制できる。
【0018】
視認者Vrの視点に合わせた光源11の点灯制御手順について図6を参照して説明する。
【0019】
制御回路基板は、車両のイグニッションスイッチがオンされてヘッドアップディスプレイHUDが起動すると、ステップS1の手続を開始する。
【0020】
(ステップS1)
制御回路基板は、外部の視点検出装置から入力された視点情報に基づいて、視認者Vrの両眼の視点VrR、VrLがアイボックスEB内にあるかどうかを判定する。制御回路基板は、両眼の視点VrR、VrLがアイボックスEB内にあると判定した場合、ステップS2の手続を開始する。そうでない場合、制御回路基板は、ステップS3の手続を開始する。
【0021】
(ステップS2)
制御回路基板は、左眼の視点VrLと右眼の視点VrRが位置するアイボックスEBの格子領域に対応する基準光源11A及びその近傍光源を点灯させる。具体的に例示すると、右眼の視点VrRが格子領域eb(2,2)に位置し、左眼の視点VrLが格子領域eb(4,2)に位置していると判断した場合、図7に示すように、光源11(2,2)及び光源11(4,2)を基準光源11Aとし、基準光源11A及びその8近傍の光源を所定の点灯強度で点灯させる。点灯後、ステップS1の手続を開始する。
【0022】
(ステップS3)
制御回路基板は、両眼の視点VrR、VrLのいずれか片眼の視点のみがアイボックスEB内にあるかどうかを判定する。両眼の視点VrR、VrLのいずれか片眼の視点のみがアイボックスEB内にあると判定した場合、ステップS4の手続を開始する。そうでない場合、制御回路基板は、ステップS5の手続を開始する。
【0023】
(ステップS4)
制御回路基板は、両眼の視点VrR、VrLのうちアイボックスEB内にあると判断した視点が位置する格子領域に対応する基準光源11A及びその近傍光源を点灯させる。具体的に例示すると、右眼の視点VrRが格子領域eb(6,2)に位置していると判断した場合、図8に示すように、光源11(6,2)を基準光源11Aとし、基準光源11A及びその8近傍の光源を所定の点灯強度で点灯させる。点灯後、ステップS1の手続を開始する。
【0024】
(ステップS5)
制御回路基板は、両眼の視点VrR、VrLのいずれかがアイボックスEBの周辺にあるかどうかを判断する。周辺とは、例えば、アイボックスEB外縁から20cmの範囲である。制御回路基板は、両眼の視点VrR、VrLのいずれかがアイボックスEBの周辺にあると判断した場合、ステップS6の手続を開始する。そうでない場合、制御回路基板は、ステップS7の手続を開始する。
【0025】
(ステップS6)
制御回路基板は、両眼の視点VrR、VrLのうちアイボックスEB内に最後に位置していた視点を最後の視点としたとき、最後の視点が位置していた格子領域に対応する基準光源11A及びその近傍光源を点灯させる。具体的に例示すると、最後の視点が格子領域eb(6,2)に位置していた場合、図8に示すように、光源11(6,2)を基準光源11Aとし、基準光源11A及びその8近傍の光源を所定の点灯強度で点灯させる。つまり、最後の視点に基づく光源11の点灯が維持される。制御回路基板は、その後、ステップS1の手続を開始する。
【0026】
(ステップS7)
制御回路基板は、最後の視点に基づく光源11の点灯強度を一段階減光する。この一段階減光は、点灯強度を90%にするものである。制御回路基板は、所定時間(例えば、1秒)後に、ステップS1の手続を開始する。つまり、制御回路基板は、両眼の視点VrR、VrLのいずれの視点もアイボックスEB内あるいはその周辺にないと判断すると、最後の視点に基づく光源11の点灯強度を段階的に減光していき、いずれは消灯する。
【0027】
以上、本開示のヘッドアップディスプレイHUDの構成について説明した。
【0028】
ヘッドアップディスプレイHUDは、虚像Viを視認する視認者Vrの視点VrR,VrLに関する視点情報が入力され、視点情報に基づく視認者Vrの両眼の各々の視点VrR,VrLが入る格子領域eb対応する光源である基準光源11Aを点灯させる。
このように構成することで、視認者Vrの視点に合わせた適切な光源11の点灯数となるため、光源11を全部点灯する場合に比べて省電力となり、光源が発する熱を抑制できる。
【0029】
また、ヘッドアップディスプレイHUDは、視認者Vrの両眼の視点VrR,VrLのいずれか一方の視点のみが格子領域eb内にいるとき、一方の視点が入る格子領域ebに対応する基準光源11Aを点灯させる。
このように構成することで、視認者Vrの視点がアイボックスEBの内外の境界にある場合においても適切に虚像Viを視認させることができる。
【0030】
また、ヘッドアップディスプレイHUDは、視認者Vrの両眼の視点VrR,VrLのすべてが格子領域eb内から領域外に移動したとき、視認者Vrの両眼の視点VrR,VrLのいずれかが最後に入っていた格子領域ebに対応する基準光源11Aの点灯を継続する。
このように構成することで、視認者Vrの視点がアイボックスEB内外の境界にある場合においても適切に虚像Viを視認させることができる。
【0031】
また、ヘッドアップディスプレイHUDは、視認者Vrの両眼の視点VrR,VrLのすべてが格子領域eb内から領域外に移動してからの経過時間に伴って、点灯継続中の基準光源11Aの輝度を徐々に減光する。
このように構成することで、省電力となり、光源が発する熱を抑制できる。
【0032】
本開示のヘッドアップディスプレイHUDは、以下の変更をしてもよい。
【0033】
上記実施形態において、制御回路基板は、光源11の各々に対し多様な点灯強度を設定するようにした。光源11の各々に対し多様な点灯強度とは、光源11すべてが一様な点灯強度でないことを表す。言い換えれば、光源11の各々に対し個別に異なる点灯強度を設定するようにした。また、光源11の各々に対し多様な点灯強度を設定するにあたり、アイボックスEBの1つの格子領域に対し複数の光源11を対応させる場合、光源11を複数の群に分け、各群ごとに点灯強度を設定するようにしてもよい。
【0034】
制御回路基板は、ステップS5において両眼の視点VrR、VrLのいずれの視点もアイボックスEBの周辺にないと判断し、ステップS7で最後の視点に基づく光源11の点灯強度を徐々に減光していく。制御回路基板は、この減光状態から再び両眼の視点VrR、VrLのいずれかがアイボックスEB内あるいはその周辺に入った場合に、目的の点灯強度に近づくように徐々に昇光してもよい。このように構成することで、減光状態から急に点灯強度が上昇したときに視認者Vrを幻惑する虞を低減できる。
【0035】
視点情報は、視認者Vrの両眼の視点VrR,VrLに限られない。例えば、制御回路基板は、視認者Vrの眉間の位置を外部の視点検出装置から得て、この眉間の位置から視認者Vrの両眼の視点VrR,VrLを推定してもよい。
【0036】
また、視点検出装置をヘッドアップディスプレイHUDに内蔵してもよい。
【符号の説明】
【0037】
HUD ヘッドアップディスプレイ
1 表示器
11 光源
11A 基準光源
12 フィールドレンズ
13 液晶パネル
2 反射鏡
DL 表示光
Vi 虚像
WS ウインドシールド
EB アイボックス
eb 格子領域
Vr 視認者
VrR 右眼の視点
VrL 左眼の視点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8