(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】プリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/22 20060101AFI20240625BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20240625BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240625BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20240625BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H05K3/22 Z
B32B7/06
B32B27/30 A
H05K3/00 Z
H05K3/00 C
H05K3/46 B
(21)【出願番号】P 2022042625
(22)【出願日】2022-03-17
【審査請求日】2023-07-18
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】依田 正応
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第114173469(CN,A)
【文献】特開2022-047123(JP,A)
【文献】特開2018-084626(JP,A)
【文献】特開2015-230901(JP,A)
【文献】特開2020-029494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/22
B32B 7/06
B32B 27/30
H05K 3/00
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)離型層を備える支持体と、支持体の離型層上に形成された樹脂組成物層と、を備える樹脂シートを、樹脂組成物層が内層基板と接合するように、該内層基板に積層する工程、
(II)窒素雰囲気下で樹脂組成物層を熱硬化する工程、及び
(III)
1m/分以上の剥離速度で支持体を剥離する工程、
をこの順で含む、プリント配線板の製造方法であって;
離型層が、(メタ)アクリル樹脂を含み;
樹脂組成物層が、イミダゾール系化合物を含む樹脂組成物を含み;
樹脂組成物層の熱硬化が、樹脂組成物層を、温度T1にて保持する加熱処理に付すことと、温度T1より高い温度T2にて保持する加熱処理に付すことと、をこの順に含む、プリント配線板の製造方法。
【請求項2】
樹脂組成物が、熱硬化性樹脂を含む、請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、カルボジイミド樹脂、酸無水物樹脂、アミン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネートエステル樹脂及びチオール樹脂からなる群より選択される1以上を含む、請求項2に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
温度T2が、150℃以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
温度T1と温度T2との差T2-T1が、20℃以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
温度T1が、50℃以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項7】
工程(II)が、樹脂組成物層を、0.5℃/分以上30℃/分以下の昇温速度で温度T2まで昇温することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項8】
離型層中の(メタ)アクリル樹脂の量が、離型層100質量%に対して、30質量%以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は、各種電子機器に広く使用されている。プリント配線板には、電子機器の小型化、高機能化のために、回路配線の微細化、高密度化が求められている。ここで、プリント配線板の製造方法としては、内層基板に絶縁層と導体層を交互に積み重ねるビルドアップ方式による製造方法が知られている。絶縁層は、例えば、内層基板の上に、樹脂組成物を含む樹脂組成物層を形成し、その樹脂組成物層を熱硬化させることにより形成される(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-167427号公報
【文献】特開2013-75948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プリント配線板の絶縁層の形成方法の一つに、樹脂シートを用いる方法がある。この方法では、支持体及び樹脂組成物層を備える樹脂シートを用意し、内層基板と樹脂組成物層とを積層し、更に樹脂組成物層を熱硬化して、絶縁層を得る。この方法においては、樹脂組成物層と支持体とが接触した状態で樹脂組成物層の熱硬化を行い、その熱硬化後に支持体を剥離することがある。例えば、レーザー光の照射によるビアホールの形成時に絶縁層が損傷することを抑制するために、樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成し、更にその絶縁層にビアホールを形成した後で、支持体を剥離することがある。
【0005】
また、樹脂組成物層の熱硬化は、窒素雰囲気下において行われることがある。例えば、樹脂組成物層の熱硬化を空気雰囲気下で行うと、樹脂組成物層に含まれる成分が酸化によって劣化することがありうる。これに対し、窒素雰囲気下で樹脂組成物層の熱硬化を行う場合、前記の酸化による劣化を抑制できるので、誘電特性及び機械的特性に優れた絶縁層を形成できる。
【0006】
ところが、支持体を剥離せずに窒素雰囲気下で樹脂組成物層を熱硬化した場合、樹脂組成物層を硬化して得られる絶縁層と支持体との間で剥離不良が生じる場合があった。本発明者が検討した結果、樹脂組成物層にイミダゾール系化合物が含まれ、且つ、支持体が(メタ)アクリル樹脂を含む離型層を備える場合に、前記の剥離不良を生じることが判明した。
【0007】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、絶縁層と支持体との間の剥離不良を抑制しながらプリント配線板を製造できる、プリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記の課題を解決するため鋭意検討した。その結果、本発明者は、樹脂組成物層の熱硬化が、硬化温度を変えて樹脂組成物層を段階的に硬化させることを含む場合に、前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
【0009】
[1] (I)離型層を備える支持体と、支持体の離型層上に形成された樹脂組成物層と、を備える樹脂シートを、樹脂組成物層が内層基板と接合するように、該内層基板に積層する工程、
(II)窒素雰囲気下で樹脂組成物層を熱硬化する工程、及び
(III)支持体を剥離する工程、
をこの順で含む、プリント配線板の製造方法であって;
離型層が、(メタ)アクリル樹脂を含み;
樹脂組成物層が、イミダゾール系化合物を含む樹脂組成物を含み;
樹脂組成物層の熱硬化が、樹脂組成物層を、温度T1にて保持する加熱処理に付すことと、温度T1より高い温度T2にて保持する加熱処理に付すことと、をこの順に含む、プリント配線板の製造方法。
[2] 樹脂組成物が、熱硬化性樹脂を含む、[1]に記載のプリント配線板の製造方法。
[3] 熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、カルボジイミド樹脂、酸無水物樹脂、アミン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネートエステル樹脂及びチオール樹脂からなる群より選択される1以上を含む、[2]に記載のプリント配線板の製造方法。
[4] 温度T2が、150℃以上である、[1]~[3]のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法。
[5] 温度T1と温度T2との差T2-T1が、20℃以上である、[1]~[4]のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法。
[6] 温度T1が、50℃以上である、[1]~[5]のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法。
[7] 工程(II)が、樹脂組成物層を、0.5℃/分以上30℃/分以下の昇温速度で温度T2まで昇温することを含む、[1]~[6]のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、絶縁層と支持体との間の剥離不良を抑制しながらプリント配線板を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して説明する。ただし、本発明は、下記に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施されうる。
【0012】
以下の説明において、「長尺」とは、別に断らない限り、幅に対して、10倍以上の長さを有するフィルム又はシートの形状をいう。前記の長さは、幅に対して、好ましくは20倍以上であり、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さでありうる。長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下でありうる。
【0013】
[プリント配線板の製造方法の概要]
本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、離型層を備える支持体と、この支持体の離型層上に形成された樹脂組成物層と、を備える樹脂シートを用いて、プリント配線板を製造する。具体的には、本実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、
(I)樹脂シートを、樹脂組成物層が内層基板と接合するように、内層基板に積層する工程、
(II)窒素雰囲気下で樹脂組成物層を熱硬化する工程、及び
(III)支持体を剥離する工程、
を、この順で含む。この方法では、樹脂組成物層を硬化することによって絶縁層が形成されるので、当該絶縁層を備えるプリント配線板を製造できる。
【0014】
支持体が備える離型層は、(メタ)アクリル樹脂を含む。また、樹脂組成層は、イミダゾール系化合物を含む樹脂組成物を含む。そして、工程(II)における樹脂組成物層の熱硬化は、樹脂組成物層を、温度T1にて保持する加熱処理に付すことと、その後、温度T1より高い温度T2にて保持する加熱処理に付すことと、を含む。
【0015】
従来、(メタ)アクリル樹脂を含む離型層と、イミダゾール系化合物を含む樹脂組成物とを組み合わせ、更に窒素雰囲気下において熱処理を行った場合には、絶縁層と支持体との間で剥離不良が生じていた。具体的には、支持体を剥がそうとした場合に、絶縁層と支持体との間に固着が発生し、絶縁層又は支持体が破損することがありえた。これに対し、本実施形態のように工程(II)における熱硬化の条件を制御した場合には、絶縁層と支持体との剥離不良を抑制できる。
【0016】
前記のように剥離不良を抑制できる仕組みを、本発明者は、下記のように推察する。ただし、本発明の技術的範囲は、下記に説明する仕組みに限定されるものではない。
【0017】
仮に空気中で樹脂組成物層の熱硬化を行う場合、空気に含まれる酸素及び二酸化炭素によってイミダゾール系化合物の触媒活性は抑制される。しかし、窒素雰囲気において熱硬化を行う場合には、イミダゾール系化合物の触媒活性は抑制されない。よって、従来は、イミダゾール系化合物の触媒活性により、離型層に含まれる(メタ)アクリル樹脂と、樹脂組成物中に含まれる1以上の成分との間で反応が生じ、その結果、離型層と樹脂組成物層とが固着することがありえた。本発明者の検討によれば、離型層中の(メタ)アクリル樹脂は、樹脂組成物に含まれうる熱硬化性樹脂と反応し、中でもエポキシ樹脂、フェノール樹脂及び活性エステル樹脂と大きく反応を生じていると推察される。この固着が、従来の剥離不良の原因の一つであったと本発明者は推察する。
【0018】
これに対し、本実施形態に係るプリント配線板の製造方法では、温度T1で保持することと、その温度T1より高い温度T2で保持することとを含む段階的な昇温を行って、樹脂組成物層を段階的に硬化させる。このような段階的な硬化では、樹脂組成物層中に含まれる成分同士の間での反応が、離型層に含まれる(メタ)アクリル樹脂と樹脂組成物中に含まれる成分との間の反応よりも、優先して進行する。例えば、温度T1において樹脂組成物層中に含まれる成分同士の間での反応が進行した結果、樹脂組成物層中の反応性の成分が少なくなる。したがって、温度T2において、離型層に含まれる(メタ)アクリル樹脂と樹脂組成物層に含まれる成分との間の反応の進行の程度が小さくなる。よって、離型層と樹脂組成物層との固着を抑制できるので、剥離不良を抑制できる。
【0019】
[樹脂シート]
本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法で用いる樹脂シートは、離型層を備える支持体と、支持体の離型層上に設けられた樹脂組成物層と、を備える。
【0020】
-支持体-
支持体は、通常、支持基材を備え、この支持基材上に離型層を備える。支持基材としては、例えば、熱可塑性樹脂フィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、熱可塑性樹脂フィルム、金属箔が好ましい。
【0021】
支持基材として熱可塑性樹脂フィルムを使用する場合、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0022】
支持基材として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0023】
支持基材は、離型層側の面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理等の表面処理を施してあってもよい。
【0024】
支持基材の厚さは、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。
【0025】
離型層は、(メタ)アクリル樹脂を含む。本明細書において「(メタ)アクリル樹脂」は、(メタ)アクリル化合物及びその重合体を包含する。また、「(メタ)アクリル化合物」は、アクリロイル基を含有するアクリル化合物、メタクリロイル基を含有するメタクリロイル化合物、及びそれらの組み合わせを包含する。
【0026】
一般に、離型層は、離型剤を用いて形成される。離型剤は、通常、離型性を付与することができる化合物としての離型性化合物を含み、更に必要に応じて離型性化合物以外の任意の樹脂を含みうる。よって、離型剤を用いて形成された離型層は、一例においては、離型性化合物を含み、更に必要に応じて任意の樹脂を含みうる。また、離型剤を用いて形成された離型層は、別の一例においては、離型剤が含む成分の一部又は全部が重合反応及び架橋反応等の反応によって結合し、当該離型剤が硬化することによって形成されうる。よって、この例においては、離型層は、離型剤に含まれる離型性化合物及び任意の樹脂、並びにそれらの反応生成物(例えば、重合体)を含みうる。(メタ)アクリル樹脂は、離型性化合物として含まれていてもよく、任意の樹脂として含まれていてもよく、それらの反応生成生物として含まれていてもよい。
【0027】
離型性化合物は、離型層の表面自由エネルギーを低下させたり、離型層の静摩擦係数を低下させたりする機能を発揮できる化合物を表す。よって、離型性化合物としての(メタ)アクリル樹脂は、前記の機能を発揮できる(メタ)アクリル樹脂でありうる。
【0028】
離型性化合物としての(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、長鎖アルキル基を含有する(メタ)アクリル樹脂、フッ素原子を含有する(メタ)アクリル樹脂、などが挙げられる。
【0029】
長鎖アルキル基とは、炭素原子数が通常12以上、好ましくは16以上のアルキル基を表す。このように長い炭素鎖を分子中に含有する(メタ)アクリル樹脂は、高い疎水性を有するので、高い離型性を発揮できる。長鎖アルキル基の炭素原子数の上限は、例えば、25以下でありうる。長鎖アルキル基を含有する(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、テトラデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート等の長鎖アクリルアクリレート;テトラデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート等の長鎖アクリルメタクリレート;並びに、これらの重合体;などが挙げられる。
【0030】
フッ素原子を含有する(メタ)アクリル樹脂としては、トリフルオロエチルアクリレート等のフルオロアルキルアクリレート;ペンタフルオロフェニルアクリレート等のフルオロアリールアクリレート;トリフルオロエチルメタクリレート等のフルオロアルキルメタクリレート;ペンタフルオロフェニルメタクリレート等のフルオロアリールメタクリレート;並びに、これらの重合体;などが挙げられる。
【0031】
任意の樹脂としての(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアクリル化合物;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等のメタクリル化合物;並びに、これらの重合体;などが挙げられる。
【0032】
(メタ)アクリル樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
離型層中の(メタ)アクリル樹脂の量は、離型層100質量%に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、通常100質量%以下である。従来は、このように(メタ)アクリル樹脂を含む離型層を採用した場合に、絶縁層と支持体との間の剥離不良という課題が生じていた。本実施形態で説明する製造方法によれば、この課題としての剥離不良を抑制できる。
【0034】
また、前記の離型層の製造に用いる離型剤中の(メタ)アクリル樹脂の量は、離型剤の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、通常100質量%以下である。従来は、このように(メタ)アクリル樹脂を含む離型剤を用いて形成された離型層を採用した場合に、絶縁層と支持体との間の剥離不良という課題が生じていた。本実施形態で説明する製造方法によれば、この課題としての剥離不良を抑制できる。
【0035】
離型層は、前記の(メタ)アクリル樹脂に組み合わせて、(メタ)アクリル樹脂以外の任意の成分を更に含んでいてもよい。また、当該離型層を形成するための離型剤は、前記の(メタ)アクリル樹脂に組み合わせて、(メタ)アクリル樹脂以外の任意の成分を更に含んでいてもよい。(メタ)アクリル樹脂以外の任意の成分としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂以外の離型性化合物が挙げられる。(メタ)アクリル樹脂以外の離型性化合物としては、例えば、長鎖アルキル基含有樹脂、オレフィン樹脂、フッ素化合物、ワックス系化合物などが挙げられる。
【0036】
長鎖アルキル基含有化合物としては、例えば、長鎖アルキル基を含有する(メタ)アクリル樹脂以外の化合物が挙げられる。長鎖アルキル基含有化合物の具体例としては、アシオ産業社製の長鎖アルキル化合物である「アシオレジン」(登録商標)シリーズ、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製の長鎖アルキル化合物である「ピーロイル」(登録商標)シリーズ、中京油脂社製の長鎖アルキル化合物の水性分散体である「レゼム」シリーズ、などが挙げられる。
【0037】
オレフィン樹脂としては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセンなどが挙げられる。
【0038】
フッ素化合物としては、例えば、分子中にフッ素原子を含有する(メタ)アクリル樹脂以外の化合物が挙げられる。フッ素化合物の具体例としては、パーフルオロアルキル基含有化合物、フッ素原子を含有するオレフィン化合物の重合体、フルオロベンゼン等の芳香族フッ素化合物、などが挙げられる。
【0039】
ワックス系化合物としては、例えば、天然ワックス、合成ワックス、及びそれらを組み合わせたワックスが挙げられる。天然ワックスには、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス及び石油ワックスが包含される。植物系ワックスとしては、例えば、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油が挙げられる。動物系ワックスとしては、例えば、みつろう、ラノリン、鯨ロウが挙げられる。鉱物系ワックスとしては、例えば、モンタンワックス、オゾケライト、セレシンが挙げられる。石油ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムが挙げられる。合成ワックスとしては、例えば、合成炭化水素、変性ワックス、水素化ワックス、脂肪酸、酸アミド、アミン、イミド、エステル、ケトンが挙げられる。合成炭化水素としては、例えば、フィッシャー・トロプシュワックス(別名サゾワールワックス)、ポリエチレンワックスが挙げられる。また、合成炭化水素には、ポリプロピレン、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのブロック結合体、及び、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのグラフト結合体、からなる群より選ばれるポリマーのうち、低分子量(具体的には粘度平均分子量500以上20000以下)のものが含まれうる。変性ワックスとしては、例えば、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体が挙げられる。ここでの誘導体とは、精製、酸化、エステル化、ケン化のいずれかの処理、またはそれらの組み合わせによって得られる化合物を表す。水素化ワックスとしては、例えば、硬化ひまし油、および硬化ひまし油誘導体が挙げられる。
【0040】
(メタ)アクリル樹脂以外の任意の離型性化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
離型剤中の離型性化合物(離型性化合物としての(メタ)アクリル樹脂、及び、(メタ)アクリル樹脂以外の離型性化合物の合計)の量は、離型剤の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。
【0042】
また、離型層中の離型性化合物(離型性化合物としての(メタ)アクリル樹脂、及び、(メタ)アクリル樹脂以外の離型性化合物の合計)の量は、離型層100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。
【0043】
任意の成分の別の例としては、(メタ)アクリル樹脂以外の任意の樹脂が挙げられる。(メタ)アクリル樹脂以外の任意の樹脂としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。(メタ)アクリル樹脂以外の任意の樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
離型剤中の任意の樹脂(任意の樹脂としての(メタ)アクリル樹脂、及び、(メタ)アクリル樹脂以外の任意の樹脂の合計)の量は、離型剤の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、特に好ましくは40質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。
【0045】
また、離型層中の任意の樹脂(任意の樹脂としての(メタ)アクリル樹脂、及び、(メタ)アクリル樹脂以外の任意の樹脂の合計)の量は、離型層100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、特に好ましくは40質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。
【0046】
任意の成分の更に別の例としては、易滑剤、無機粒子、有機粒子、界面活性剤、酸化防止剤、熱開始剤などの添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。添加剤の量は、特に制限されないが、例えば、離型性化合物及び任意の樹脂の合計100質量%に対して、0.01質量%以上10質量%以下でありうる。
【0047】
離型層の厚みは、好ましくは50nm以上、より好ましくは70nm以上であり、好ましくは400nm以下、より好ましくは200nm以下、特に好ましくは130nm以下である。
【0048】
支持体は、例えば、支持基材の面に離型剤を塗布することを含む方法によって製造できる。離型剤は、上述した(メタ)アクリル樹脂及び任意の成分といった不揮発成分に組み合わせて、更に溶媒を含んでいてもよい。離型剤が溶媒を含む場合、支持体の製造方法は、離型剤を塗布した後に乾燥することを含むことが好ましい。
【0049】
溶媒としては、溶媒の急激な蒸発を抑制して均一な離型層を形成する観点から、水系溶媒が好ましい。水系溶媒としては、例えば、水;水と、アルコール溶媒、ケトン溶媒、グリコール溶媒等の、水に可溶な有機溶媒との混合溶媒;が挙げられる。溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。溶媒を使用する場合、塗布性を良好にして均一な離型層を形成する観点から、離型剤の不揮発成分濃度は、好ましくは40質量%以下である。
【0050】
離型剤の塗布方法としては、例えば、ワイヤーバーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ブレードコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法などが挙げられる。
【0051】
離型剤の乾燥温度は、特に制限はない。一例においては、80℃以上130℃以下の温度範囲で乾燥を行ってもよい。また、別の一例においては、160℃以上240℃以下の温度範囲で乾燥を行ってもよい。
【0052】
支持基材の面に離型剤を塗布し、必要に応じて乾燥を行うことにより、離型剤の不揮発成分を含む層を形成できる。この層を離型層として用いてもよい。また、離型剤の不揮発成分を含む前記の層に硬化処理を施して、離型層を得てもよい。硬化処理としては、例えば、加熱処理、紫外線照射処理などが挙げられる。通常は、前記の硬化処理によって離型剤に含まれる一部又は全部の成分の重合反応及び架橋反応等の反応が進行して、離型剤を硬化させることができるので、離型剤の硬化物からなる離型層を得ることができる。
【0053】
また、支持体の製造方法は、必要に応じて、延伸処理等の任意の処理を含んでいてもよい。
【0054】
-樹脂組成物層-
支持体は、支持体の離型層上に形成された樹脂組成物層を備える。通常、樹脂組成物層は、支持体の離型層に接しており、離型層と樹脂組成物層との間には他の層は設けられていない。この樹脂組成物層は、樹脂組成物を含み、好ましくは樹脂組成物のみを含む。
【0055】
樹脂組成物は、(A)イミダゾール系化合物を含む。(A)イミダゾール系化合物は、通常、樹脂組成物において硬化触媒として機能する。具体的には、樹脂組成物は、通常、(B)熱硬化性樹脂を含み、(A)イミダゾール系化合物は、(B)熱硬化性樹脂の硬化反応を促進する触媒として機能しうる。
【0056】
(A)イミダゾール系化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物;及び、前記イミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体;が挙げられる。
【0057】
(A)イミダゾール系化合物としては、市販品を用いてもよい。(A)イミダゾール系化合物の市販品としては、例えば、四国化成工業社製の「1B2PZ」、「2E4MZ」、「2MZA-PW」、「2MZ-OK」、「2MA-OK」、「2MA-OK-PW」、「2PHZ」、「2PHZ-PW」、「Cl1Z」、「Cl1Z-CN」、「Cl1Z-CNS」、「C11Z-A」;三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。(A)イミダゾール系化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組わせて用いてもよい。
【0058】
樹脂組成物中の(A)イミダゾール系化合物の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、特に好ましくは0.03質量%以上であり、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下である。
【0059】
樹脂組成物中の(A)イミダゾール系化合物の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。樹脂組成物の樹脂成分とは、樹脂組成物の不揮発成分のうち、後述する(C)無機充填材を除いた成分を表す。
【0060】
樹脂組成物は、通常、(B)熱硬化性樹脂を含む。(B)熱硬化性樹脂としては、熱を加えられた場合に反応を生じて結合を形成し、樹脂組成物を硬化させることができる樹脂を用いうる。(B)熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、カルボジイミド樹脂、酸無水物樹脂、アミン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂及びチオール樹脂が挙げられる。(B)熱可塑性樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0061】
エポキシ樹脂は、エポキシ基を有する樹脂でありうる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、イソシアヌラート型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
エポキシ樹脂は、耐熱性に優れる絶縁層を得る観点から、芳香族構造を含有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。芳香族構造とは、一般に芳香族と定義される化学構造であり、多環芳香族及び芳香族複素環をも含む。芳香族構造を含有するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビシキレノール型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するグリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、芳香族構造を有する線状脂肪族エポキシ樹脂、芳香族構造を有するブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、芳香族構造を有する脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、芳香族構造を有するスピロ環含有エポキシ樹脂、芳香族構造を有するシクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するトリメチロール型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するテトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0063】
樹脂組成物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂全体の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0064】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物は、エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよい。
【0065】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0066】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0067】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「828EL」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」、「604」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「ED-523T」(グリシロール型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-3950L」、「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-4088S」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」、日本曹達社製の「JP-100」、「JP-200」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)、三菱ケミカル社製の「YX8000」(水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0069】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0070】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「HP-7200L」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3000FH」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」、「ESN4100V」(ナフタレン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトール型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN375」(ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YX4000HK」、「YL7890」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX7700」(フェノールアラルキル型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「WHR991S」(フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの質量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、好ましくは20:1~1:20、より好ましくは10:1~1:10、特に好ましくは7:1~1:7である。
【0072】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5,000g/eq.、より好ましくは60g/eq.~3,000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2,000g/eq.、特に好ましくは110g/eq.~1,000g/eq.である。エポキシ当量は、エポキシ基1当量あたりの樹脂の質量を表す。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0073】
エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0074】
樹脂組成物中のエポキシ樹脂の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。
【0075】
樹脂組成物中のエポキシ樹脂の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、特に好ましくは50質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、特に好ましくは80質量%以下である。
【0076】
フェノール樹脂は、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香環に結合した水酸基を1分子中に1個以上、好ましくは2個以上有する樹脂でありうる。耐熱性及び耐水性の観点からは、ノボラック構造を有するフェノール樹脂が好ましい。また、密着性の観点からは、含窒素フェノール樹脂が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール樹脂がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び密着性を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂が好ましい。
【0077】
フェノール樹脂の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-375」、「SN-395」、DIC社製の「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-3018」、「LA-3018-50P」、「LA-1356」、「TD2090」、「TD-2090-60M」等が挙げられる。フェノール樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
樹脂組成物中のフェノール樹脂の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。
【0079】
樹脂組成物中のフェノール樹脂の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、特に好ましくは3質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。
【0080】
活性エステル樹脂は、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する樹脂でありうる。活性エステル基は、芳香環に直接結合したエステル結合でありうる。活性エステル樹脂としては、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高い活性エステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。当該活性エステル樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル樹脂が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル樹脂がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0081】
具体的には、活性エステル樹脂としては、ジシクロペンタジエン型活性エステル樹脂、ナフタレン構造を含むナフタレン型活性エステル樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル樹脂が好ましく、中でもジシクロペンタジエン型活性エステル樹脂、及びナフタレン型活性エステル樹脂から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。ジシクロペンタジエン型活性エステル樹脂としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル樹脂が好ましい。
【0082】
活性エステル樹脂の市販品としては、例えば、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル樹脂として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「EXB-8000L」、「EXB-8000L-65M」、「EXB-8000L-65TM」、「HPC-8000L-65TM」、「HPC-8000」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H」、「HPC-8000H-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂として「HP-B-8151-62T」、「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150-60T」、「EXB-8150-62T」、「EXB-9416-70BK」、「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」、「EXB-8」(DIC社製);りん含有活性エステル樹脂として、「EXB9401」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル樹脂として「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);スチリル基及びナフタレン構造を含む活性エステル樹脂として「PC1300-02-65MA」(エア・ウォーター社製)等が挙げられる。活性エステル樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
樹脂組成物中の活性エステル樹脂の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。
【0084】
樹脂組成物中の活性エステル樹脂の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、特に好ましくは3質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。
【0085】
カルボジイミド樹脂は、1分子中に1個以上、好ましくは2個以上のカルボジイミド構造を有する樹脂でありうる。カルボジイミド樹脂としては、例えば、ビスカルボジイミド、ポリカルボジイミド等が挙げられる。ビスカルボジイミドの具体例としては、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサンビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)等の脂肪族ビスカルボジイミド;フェニレン-ビス(キシリルカルボジイミド)等の芳香族ビスカルボジイミドが挙げられる。ポリカルボジイミドの具体例としては、ポリヘキサメチレンカルボジイミド、ポリトリメチルヘキサメチレンカルボジイミド、ポリシクロヘキシレンカルボジイミド、ポリ(メチレンビスシクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(イソホロンカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミド;ポリ(フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(トリレンカルボジイミド)、ポリ(メチルジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(キシリレンカルボジイミド)、ポリ(テトラメチルキシリレンカルボジイミド)、ポリ(メチレンジフェニレンカルボジイミド)、ポリ[メチレンビス(メチルフェニレン)カルボジイミド]等の芳香族ポリカルボジイミドが挙げられる。カルボジイミド樹脂の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル社製の「カルボジライトV-02B」、「カルボジライトV-03」、「カルボジライトV-04K」、「カルボジライトV-07」及び「カルボジライトV-09」;ラインケミー社製の「スタバクゾールP」、「スタバクゾールP400」、「ハイカジル510」等が挙げられる。カルボジイミド樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
酸無水物樹脂は、1分子中に1個以上の酸無水物基を有する樹脂でありえ、1分子中に2個以上の酸無水物基を有する樹脂が好ましい。酸無水物樹脂の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物樹脂の市販品としては、例えば、新日本理化社製の「HNA-100」、「MH-700」、「MTA-15」、「DDSA」、「OSA」;三菱ケミカル社製の「YH-306」、「YH-307」;日立化成社製の「HN-2200」、「HN-5500」;クレイバレイ社製「EF-30」、「EF-40」「EF-60」、「EF-80」等が挙げられる。酸無水物樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
アミン樹脂は、1分子中に1個以上、好ましくは2個以上のアミノ基を有する樹脂でありうる。アミン樹脂としては、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、芳香族アミン類が好ましい。アミン樹脂は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン樹脂の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン樹脂の市販品としては、例えば、セイカ社製「SEIKACURE-S」;日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」;三菱ケミカル社製の「エピキュアW」;住友精化社製「DTDA」等が挙げられる。アミン樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
ベンゾオキサジン樹脂の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OP100D」、「ODA-BOZ」;昭和高分子社製の「HFB2006M」;四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」などが挙げられる。ベンゾオキサジン樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
シアネート樹脂は、1分子中に1個以上、好ましくは2個以上のシアネート基を有する樹脂でありうる。シアネートエステル樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート))、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル樹脂の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。シアネートエスエル樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
チオール樹脂としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。チオール樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
好ましい実施形態において、(B)熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含む。より好ましい実施形態において、(B)熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂と、当該エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させることができる樹脂とを組み合わせて含む。エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させることができる樹脂を、以下「エポキシ硬化剤」ということがある。エポキシ硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、カルボジイミド樹脂、酸無水物樹脂、アミン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネートエステル樹脂及びチオール樹脂が挙げられる。エポキシ硬化剤の中でも、フェノール樹脂及び活性エステル樹脂が好ましい。エポキシ硬化剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
エポキシ硬化剤の活性基当量は、好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~500g/eq.、特に好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。活性基当量は、活性基1当量あたりのエポキシ硬化剤の質量を表す。
【0093】
エポキシ樹脂とエポキシ硬化剤とを組み合わせて用いる場合、エポキシ樹脂のエポキシ基数とエポキシ硬化剤の活性基数との比(「エポキシ硬化剤の活性基数」/「エポキシ樹脂のエポキシ基数」)は、特定の範囲のあることが好ましい。前記の比(「エポキシ硬化剤の活性基数」/「エポキシ樹脂のエポキシ基数」)は、具体的には、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.3以上であり、好ましくは5.0以下、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは1.5以下である。「エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で割り算した値を全て合計した値を表す。また、「エポキシ硬化剤の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在するエポキシ硬化剤の不揮発成分の質量をエポキシ硬化剤の活性基当量で割り算した値を全て合計した値を表す。
【0094】
樹脂組成物中の(B)熱硬化性樹脂の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。
【0095】
樹脂組成物中の(B)熱硬化性樹脂の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上であり、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99質量%以下である。
【0096】
樹脂組成物中の(A)イミダゾール系化合物と(B)熱硬化性樹脂との質量比((B)熱硬化性樹脂/(A)イミダゾール系化合物)は、好ましくは100以上、より好ましくは200以上、更に好ましくは300以上、特に好ましくは400以上であり、好ましくは1000以下、より好ましくは900以下、更に好ましくは800以下、特に好ましくは700以下である。
【0097】
樹脂組成物は、更に(C)無機充填材を含んでいてもよい。(C)無機充填材は、通常、粒子の状態で樹脂組成物に含まれる。
【0098】
(C)無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。(C)無機充填材の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカ、アルミナが好適であり、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては球形シリカが好ましい。(C)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0099】
(C)無機充填材の市販品としては、例えば、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」、「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」、「SC2050-SXF」;デンカ社製の「UFP-30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;などが挙げられる。
【0100】
(C)無機充填材の平均粒径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは0.2μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは2μm以下、特に好ましくは1μm以下である。
【0101】
(C)無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出しうる。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0102】
(C)無機充填材の比表面積は、好ましくは0.1m2/g以上、より好ましくは0.5m2/g以上、さらに好ましくは1m2/g以上、特に好ましくは3m2/g以上であり、好ましくは100m2/g以下、より好ましくは70m2/g以下、さらに好ましくは50m2/g以下、特に好ましくは40m2/g以下である。無機充填材の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで測定できる。
【0103】
(C)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0104】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0105】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、特定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量%は、0.2質量%~5質量%の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量%~3質量%の表面処理剤で表面処理されていることがより好ましく、0.3質量%~2質量%の表面処理剤で表面処理されていることがさらに好ましい。
【0106】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上がさらに好ましい。一方、樹脂組成物の溶融粘度の上昇を防止する観点から、1.0mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下がさらに好ましい。
【0107】
(C)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0108】
樹脂組成物中の(C)無機充填材の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、特に好ましくは60質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、特に好ましくは80質量%以下である。
【0109】
樹脂組成物は、更に(D)熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。この(D)熱可塑性樹脂には、(A)イミダゾール系化合物、(B)熱硬化性樹脂又は(C)無機充填材に該当するものは含めない。
【0110】
(D)熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。(D)熱可塑性樹脂は、1種類単独で用いてもよく、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0111】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」、「YL7482」及び「YL7891BH30」;等が挙げられる。
【0112】
ポリイミド樹脂の具体例としては、信越化学工業社製「SLK-6100」、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」等が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006-37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0113】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」;積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ;等が挙げられる。
【0114】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合樹脂;ポリプロピレン、エチレン-プロピレンブロック共重合体等のポリオレフィン系重合体等が挙げられる。
【0115】
ポリブタジエン樹脂としては、例えば、水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂、ヒドロキシ基含有ポリブタジエン樹脂、フェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂、カルボキシ基含有ポリブタジエン樹脂、酸無水物基含有ポリブタジエン樹脂、エポキシ基含有ポリブタジエン樹脂、イソシアネート基含有ポリブタジエン樹脂、ウレタン基含有ポリブタジエン樹脂、ポリフェニレンエーテル-ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。
【0116】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0117】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0118】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0119】
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、SABIC製「NORYL SA90」等が挙げられる。ポリエーテルイミド樹脂の具体例としては、GE社製の「ウルテム」等が挙げられる。
【0120】
ポリカーボネート樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂の具体例としては、三菱瓦斯化学社製の「FPC0220」、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「スミプロイK」等が挙げられる。
【0121】
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0122】
(D)熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5,000より大きく、より好ましくは8,000以上、さらに好ましくは10,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは70,000以下、さらに好ましくは60,000以下、特に好ましくは50,000以下である。
【0123】
樹脂組成物中の(D)熱可塑性樹脂の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
【0124】
樹脂組成物中の(D)熱可塑性樹脂の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0125】
樹脂組成物は、更に(E)難燃剤を含んでいてもよい。(E)難燃剤には、上述した(A)イミダゾール系化合物、(B)熱硬化性樹脂、(C)無機充填材又は(D)熱可塑性樹脂に該当するものは含めない。(E)難燃剤としては、例えば、ホスファゼン化合物、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0126】
難燃剤としては、例えば、大塚化学社製の「SPH-100」、「SPS-100」、「SPB-100」、「SPE-100」(ホスファゼン類);伏見製薬所社製の「FP-100」、「FP-110」、「FP-300」、「FP-400」(ホスファゼン類);三光社製の「HCA-NQ」、「HCA-HQ」、「HCA-HQ-HST」(ホスフィン酸エステル(フェノール性水酸基含有));大八化学工業社製の「PX-200」、「PX-201」、「PX-202」、「CR-733S」、「CR-741」、「CR-747」(リン酸エステル)等が挙げられる。
【0127】
樹脂組成物中の(E)難燃剤の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上である。上限は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0128】
樹脂組成物は、更に(F)任意の添加剤を含んでいてもよい。(F)任意の添加剤としては、例えば、イミダゾール系化合物以外の硬化触媒;ラジカル重合性化合物;有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤;第三級アミン類等の光重合開始助剤;ピラリゾン類、アントラセン類、クマリン類、キサントン類、チオキサントン類等の光増感剤;が挙げられる。(F)任意の添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0129】
樹脂組成物は、上述した(A)イミダゾール系化合物、(B)熱硬化性樹脂、(C)無機充填材、(D)熱可塑性樹脂、(E)難燃剤及び(F)任意の添加剤といった不揮発成分に組み合わせて、更に任意の揮発性成分として(G)溶剤を含んでいてもよい。(G)溶剤としては、通常、有機溶剤を用いる。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、アニソール等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。(G)溶剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0130】
(G)溶剤の量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の全成分を100質量%とした場合、例えば、60質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下等でありえ、0質量%であってもよい。
【0131】
樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板の薄型化の観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、より好ましくは50μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、5μm以上、10μm以上等でありうる。
【0132】
-樹脂シートの製造方法-
樹脂シートの製造方法は、特に制限されない。樹脂シートは、例えば、樹脂組成物を支持体の離型層上に塗布することを含む方法によって、製造できる。液状(ワニス状)の樹脂組成物を用いる場合、当該樹脂組成物をそのまま支持体の離型層上に塗布してもよい。また、溶剤と樹脂組成物の不揮発成分とを混合して液状(ワニス状)の樹脂組成物を調製し、これを離型層上に塗布してもよい。溶剤としては、樹脂組成物の成分として説明した(G)溶剤と同様のものが挙げられる。また、塗布は、ダイコーター等の塗布装置を用いて行ってもよい。
【0133】
樹脂シートの製造方法は、必要に応じて、塗布された樹脂組成物を乾燥することを含んでいてもよい。乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の乾燥方法により実施してよい。乾燥条件は、特に限定されないが、樹脂組成物層中の溶剤の含有量が通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂組成物中の溶剤の沸点によっても異なりうるが、例えば30質量%~60質量%の溶剤を含む樹脂組成物を用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0134】
樹脂シートの製造方法は、更に任意の工程を含んでいてもよい。例えば、樹脂シートの製造方法は、樹脂組成物層と、支持体に準じた保護フィルムとを貼り合わせることを含んでいてもよい。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを貼り合わせた場合、樹脂組成物層の表面へのゴミの付着及びキズを抑制することができる。通常、保護フィルムは、工程(I)で樹脂シートと内層基板とを積層する前に除去される。
【0135】
[工程(I):樹脂シートと内層基板との積層]
本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、樹脂シートを、樹脂組成物層が内層基板と接合するように、内層基板に積層する工程(I)を含む。工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も、前記の「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用してもよい。
【0136】
内層基板と樹脂シートとの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール等)が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0137】
内層基板と樹脂シートとの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施される。
【0138】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0139】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0140】
[工程(II):樹脂組成物層の熱硬化]
本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、工程(I)の後に、窒素雰囲気下で樹脂組成物層を熱硬化する工程(II)を含む。樹脂組成物層を熱硬化することにより、絶縁層を形成することができる。形成された絶縁層は、樹脂組成物の硬化物を含み、好ましくは樹脂組成物の硬化物のみを含む。
【0141】
工程(II)における樹脂組成物層の熱硬化は、窒素雰囲気において行われる。窒素雰囲気は、窒素ガスが充填されているので、当該窒素雰囲気における酸素濃度は低い。窒素雰囲気における酸素濃度の範囲は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下であり、理想的には0質量%である。
【0142】
工程(II)が行われる窒素雰囲気の圧力条件は、常圧であってもよく、減圧されていてもよい。一例において、窒素雰囲気の具体的な圧力条件の範囲は、好ましくは0.075mmHg(0.1hPa)以上、より好ましくは1mmHg(1.3hPa)以上であり、好ましくは3751mmHg(5000hPa)以下、より好ましくは1875mmHg(2500hPa)以下である。
【0143】
工程(II)における樹脂組成物層の熱硬化は、
(II-2)樹脂組成物層を、温度T1にて保持する加熱処理に付すことと、
(II-4)樹脂組成物層を、温度T1より高い温度T2にて保持する加熱処理に付すことと、
をこの順に含む。以下、温度T1にて保持する加熱処理の工程を「プレキュア工程(II-2)」と呼ぶことがある。また、温度T2にて保持する加熱処理の工程を「ポストキュア工程(II-4)」と呼ぶことがある。
【0144】
通常は、プレキュア工程(II-2)の前には、樹脂組成物層は温度T1よりも低い昇温開始温度T0にある。昇温開始温度T0は、例えば、室温などでありうる。よって、工程(II)は、プレキュア工程(II-2)の前に、樹脂組成物層を昇温開始温度T0から温度T1まで昇温させる工程(II-1)を含みうる。この工程(II-1)における昇温速度の範囲は、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.5℃/分以上、より好ましくは1℃/分以上、更に好ましくは1.5℃/分以上、更に好ましくは2℃/分以上、特に好ましくは2.5℃/分以上であり、好ましくは30℃/分以下、より好ましくは25℃/分以下、更に好ましくは20℃/分以下、更に好ましくは15℃/分以下、特に好ましくは10℃/分以下である。工程(II-1)における昇温速度は、一定でもよく、変化させてもよい。
【0145】
プレキュア工程(II-2)では、樹脂組成物層を、温度T1にて保持する加熱処理に付す。このプレキュア工程(II-2)における加熱温度T1は、常温よりも高く、且つ、温度T2よりも低い温度範囲で設定される。加熱温度T1の具体的な範囲は、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上、特に好ましくは80℃以上であり、好ましくは150℃未満、より好ましくは140℃以下、更に好ましくは130℃以下である。プレキュア工程(II-2)において、樹脂組成物層を温度T1に保持するとは、樹脂組成物層の温度を一定の温度に維持することだけでなく、本発明の効果を著しく損なわない範囲で樹脂組成物層の温度が変動することも包含される。例えば、プレキュア工程(II-2)において樹脂組成物層の温度は、±10℃の範囲、±8℃の範囲、又は±5℃の範囲で変動してもよい。ただし、このように樹脂組成物層の温度が変動する場合であっても、プレキュア工程(II-2)において樹脂組成物層の温度は、上記の好ましい範囲内、例えば50℃以上150℃未満の範囲内にあることが好ましい。中でも、プレキュア工程(II-2)において、樹脂組成物層の温度は変動せず一定であることが特に好ましい。
【0146】
プレキュア工程(II-2)において樹脂組成物層を加熱温度T1に保持する時間の範囲は、樹脂組成物の組成及び加熱温度T1の値によるが、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは10分以上、より好ましくは15分以上、特に好ましくは20分以上であり、好ましくは150分以下、より好ましくは120分以下、特に好ましくは120分以下である。
【0147】
通常は、ポストキュア工程(II-4)の前には、樹脂組成物層は温度T2よりも低い温度にある。よって、工程(II)は、プレキュア工程(II-2)の後、ポストキュア工程(II-4)の前に、樹脂組成物層を温度T2まで昇温させる工程(II-3)を含みうる。この工程(II-3)における昇温速度の範囲は、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.5℃/分以上、より好ましくは1℃/分以上、更に好ましくは1.5℃/分以上、更に好ましくは2℃/分以上、特に好ましくは2.5℃/分以上であり、好ましくは30℃/分以下、より好ましくは25℃/分以下、更に好ましくは20℃/分以下、更に好ましくは15℃/分以下、特に好ましくは10℃/分以下である。工程(II-3)における昇温速度は、一定でもよく、変化させてもよい。
【0148】
ポストキュア工程(II-4)では、樹脂組成物層を、温度T2にて保持する加熱処理に付す。ポストキュア工程(II-4)における加熱温度T2は、温度T1よりも高い温度に設定される。加熱温度T2の具体的な範囲は、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは150℃以上、より好ましくは155℃以上、更に好ましくは160℃以上、特に好ましくは170℃以上であり、好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下、更に好ましくは220℃以下、更に好ましくは210℃以下、特に好ましくは200℃以下である。ポストキュア工程(II-4)において、樹脂組成物層を温度T2に保持するとは、樹脂組成物層の温度を一定の温度に維持することだけでなく、本発明の効果を著しく損なわない範囲で樹脂組成物層の温度が変動することも包含される。例えば、ポストキュア工程(II-4)において樹脂組成物層の温度は、±10℃の範囲、±8℃の範囲、又は±5℃の範囲で変動してもよい。ただし、このように樹脂組成物層の温度が変動する場合であっても、ポストキュア工程(II-4)において樹脂組成物層の温度は、上記の好ましい範囲内、例えば150℃以上250℃以下の範囲内にあることが好ましい。中でも、ポストキュア工程(II-4)において、樹脂組成物層の温度は変動せず一定であることが特に好ましい。
【0149】
プレキュア工程(II-2)における加熱温度T1と、ポストキュア工程(II-4)における加熱温度T2との差T2-T1は、本発明の効果を顕著に得る観点から、特定の範囲にあることが好ましい。具体的には、前記の差T2-T1は、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上、特に好ましくは40℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは130℃以下、特に好ましくは120℃以下である。プレキュア工程(II-2)及び/又はポストキュア工程(II-4)において樹脂組成物層の温度が変動する場合、プレキュア工程(II-2)における樹脂組成物の温度の中央値と、ポストキュア工程(II-4)における樹脂組成物の温度の中央値との差が、前記の範囲にあることが好ましい。
【0150】
ポストキュア工程(II-4)において樹脂組成物層を加熱温度T2に保持する時間の範囲は、樹脂組成物の組成及び加熱温度T2の値によるが、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは10分以上、より好ましくは15分以上、特に好ましくは20分以上であり、好ましくは150分以下、より好ましくは120分以下である。
【0151】
プレキュア工程(II-2)における温度T1での加熱処理の後、樹脂組成物層を一旦冷まして、ポストキュア工程(II-4)における加熱温度T2での加熱処理に付してもよい。あるいはまた、プレキュア工程(II-2)における温度T1での加熱処理の後、樹脂組成物層を冷ますことなく、プレキュア工程(II-4)における温度T2での加熱処理に付してもよい。
【0152】
プレキュア工程(II-2)における加熱処理と、ポストキュア工程(II-4)における加熱処理とは、同一の加熱処理装置を用いて実施してもよい。また、プレキュア工程(II-2)における加熱処理を第1の加熱処理装置を用いて実施し、ポストキュア工程(II-4)における加熱処理を第1の加熱処理装置とは異なる第2の加熱処理装置を用いて実施してもよい。加熱処理装置は、樹脂組成物層を熱硬化させることができる限り特に限定されない。加熱処理装置としては、例えば、オーブン、ホットプレス等を用いうる。例えば、温度T1に調節されたオーブンを用いてプレキュア工程(II-2)における加熱処理を実施した後、内層基板及び樹脂シートを温度T2に調節されたオーブンに移して、ポストキュア工程(II-4)における加熱処理を実施してよい。あるいは、温度プログラムが可能な加熱処理装置を用いて、プレキュア工程(II-2)における加熱処理を実施した後、温度T1から温度T2へと昇温し、ポストキュア工程(II-4)における加熱処理を実施してよい。
【0153】
工程(II)は、上述した工程(II-1)から工程(II-4)に組み合わせて、更に任意の工程を含んでいいてもよい。例えば、工程(II)は、樹脂組成物層を前記の温度T1及びT2以外の加熱温度に保持する加熱処理に付す工程を含んでいてもよい。すなわち、工程(II)は、2ステップの加熱処理に限られず、3ステップ以上の加熱処理を含んでもよい。
【0154】
[工程(III):支持体の剥離]
本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、工程(II)の後に、支持体を剥離する工程(III)を含む。本実施形態によれば、支持体と、硬化した樹脂組成物層としての絶縁層とが固着することを抑制できる。よって、剥離不良を抑制できるので、支持体の円滑な剥離が可能である。
【0155】
通常は、支持体を絶縁層に対して相対的に引っ張ることにより、支持体を剥がして剥離する。例えば、支持体を固定した状態で絶縁層及び内層基板を搬送して、支持体を剥がしてもよい。また、例えば、絶縁層及び内層基板を固定した状態で支持体を引っ張って、支持体を剥がしてもよい。さらに、例えば、支持体を引っ張りながら絶縁層及び内層基板を搬送して、支持体を剥がしてもよい。
【0156】
通常は、絶縁層の表面に対して特定の角度をなす剥離方向に支持体が相対的に引っ張られて、支持体の剥離が達成される。絶縁層の表面に対して剥離方向がなす角度の範囲は、特段の制限は無い。支持体の剥離を円滑に進行させる観点では、前記の角度の範囲は、好ましくは0°以上であり、好ましくは70°以下、より好ましくは60°以下、更に好ましくは50°以下、更に好ましくは40°以下、更に好ましくは30°以下、更に好ましくは20°以下、特に好ましくは10°以下である。
【0157】
支持体の剥離を行う温度条件は、特に制限されない。プリント配線板の製造に要するエネルギーを低減する観点から、通常、支持体の剥離は常温又はそれに近い温度で行われる。したがって、通常は、前記の工程(II)の後で内層基板、絶縁層及び支持体は冷却されてから、支持体の剥離が行われる。支持体の剥離を行う具体的な温度範囲は、好ましくは10℃以上40℃の範囲である。また、温度T2から冷却する工程における降温速度は、特に制限はないが、好ましくは0.5℃/分以上、より好ましくは1℃/分以上、更に好ましくは1.5℃/分以上、更に好ましくは2℃/分以上、特に好ましくは2.5℃/分以上であり、好ましくは30℃/分以下、より好ましくは25℃/分以下、更に好ましくは20℃/分以下、更に好ましくは15℃/分以下、特に好ましくは10℃/分以下である。
【0158】
本実施形態に係るプリント配線板の製造方法では、絶縁層と支持体との間の剥離不良が抑制されているので、支持体の剥離速度を速くすることが可能である。プリント配線板の生産速度の向上に寄与する観点から、剥離速度は速いことが好ましい。具体的な剥離速度の範囲は、好ましくは1m/分以上、より好ましくは2m/分以上、更に好ましくは3m/分以上、更に好ましくは4m/分以上、特に好ましくは5m/分以上である。上限は特に制限はなく、例えば、20m/分以下、10m/分以下などでありうる。
【0159】
[工程(IV):穴あけ]
本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、更に任意の工程を含んでいてもよい。例えば、本実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、絶縁層に穴あけする工程(IV)を含んでいてもよい。この工程(IV)は、工程(III)の前に行ってもよく、工程(III)の後に行ってもよい。
【0160】
工程(IV)は、絶縁層にビアホール、スルーホールのホールを形成することを含む。ホールの形成は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマを使用して実施してよい。ホールの寸法及び形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0161】
[工程(V):粗化処理]
本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、絶縁層を粗化処理する工程(V)を含んでいてもよい。この工程(V)は、通常は工程(III)の後に行うが、工程(III)の前に行ってもよい。また、工程(V)は、工程(IV)の後に行うことが好ましい。例えば、工程(IV)で絶縁層にホールを形成し、粗化処理する工程(V)を行った後で、支持体を剥離する工程(III)を行ってもよい。工程(IV)におけるホールの形成の後で工程(V)を行う場合、ホールに残留しうる樹脂残渣(スミア)を除去することが可能である。
【0162】
粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して使用される公知の手順、条件を採用してもよい。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理してもよい。
【0163】
粗化処理に用いる膨潤液としては、例えば、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液である。該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
【0164】
粗化処理に用いる酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は、5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0165】
粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、例えば、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0166】
一例において、粗化処理後の絶縁層の表面の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されるものではなく、例えば、1nm以上、2nm以上等でありうる。また、粗化処理後の絶縁層表面の二乗平均平方根粗さ(Rq)は、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されるものではなく、例えば、1nm以上、2nm以上等でありうる。絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)及び二乗平均平方根粗さ(Rq)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0167】
[工程(VI):導体層の形成]
本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、導体層を形成する工程(VI)を含んでいてもよい。この工程(VI)では、通常、絶縁層上に導体層を形成する。よって、工程(VI)は、通常、工程(III)の後に行われる。好ましい実施形態においては、工程(IV)、工程(V)及び工程(VI)は、この順に行われる。
【0168】
導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であってもよく、合金層であってもよい。合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0169】
導体層は、単層構造であってもよく、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0170】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0171】
導体層は、例えば、メッキにより形成してよい。具体例を挙げると、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にメッキして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法が好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0172】
まず、絶縁層の表面に、無電解メッキによりメッキシード層を形成する。次いで、形成されたメッキシード層上に、所望の配線パターンに対応してメッキシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出したメッキシード層上に、電解メッキにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なメッキシード層をエッチング等の除去方法により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0173】
必要に応じて、工程(I)~工程(VI)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層プリント配線板を製造してもよい。
【0174】
[その他の工程]
本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、上述した工程に組み合わせて、更に任意の工程を含んでいてもよい。
【0175】
例えば、長手方向に連続的に搬送される長尺の樹脂シートを用いる場合がある。この場合、通常は、樹脂シートのロールから前記樹脂シートを引き出し、引き出された樹脂シートが内層基板上に供給される。この場合、プリント配線板の製造方法は、その長尺の樹脂シートを適切な寸法にカットする工程を含んでいてもよい。樹脂シートのカットは、工程(I)の前に行ってもよく、工程(I)の後に行ってもよい。
【0176】
例えば、樹脂組成物層を保護する保護フィルムを備える樹脂シートを用いる場合がある。保護フィルムは、通常、樹脂組成物層の支持体とは反対側に設けられる。この場合、プリント配線板の製造方法は、その保護フィルムを除去する工程を含んでいてもよい。通常、保護フィルムの除去は、工程(I)の前に行われる。
【0177】
[プリント配線板の用途]
本発明の一実施形態に係る製造方法で製造されたプリント配線板は、広範な用途に使用でき、例えば、半導体装置に適用することができる。この半導体装置は、前記のプリント配線板を備える。半導体装置の具体例としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。ただし、プリント配線板は、前記以外の用途に適用してもよい。
【実施例】
【0178】
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものでは無い。以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示の無い限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。また、以下に説明する操作は、別途明示の無い限り、常温常圧(25℃、1atm)大気中の環境で行った。
【0179】
<製造例1:アクリル樹脂を含む離型層を備える支持体1の製造>
(アクリル樹脂(A1)の製造)
攪拌機、温度計及びコンデンサーを備えた温度調整可能な反応器中に、トルエン500質量部、ステアリルメタクリレート(アルキル鎖の炭素数18)80質量部、メタクリル酸15質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート5質量部、及びアゾビスイソブチロニトリル1部を、滴下器を用いて反応温度85℃にて4時間で滴下して、重合反応を行った。その後、同温度で2時間熟成して反応を完了させて、アクリル樹脂(A)を得た。このアクリル樹脂(A)を、イソプロピルアルコール5質量%及びn-ブチルセロソルブ5質量%を含む水に溶解させ、離型性化合物としてのアクリル樹脂(A1)を含む樹脂溶液を得た。
【0180】
(アクリル樹脂(B1)の調製)
ステンレス反応容器に、メタクリル酸メチル(a)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(b)、芳香族ウレタンアクリレートオリゴマー(ダイセル・オルネクス社製「EBECRYL 220」、アクリロイル基の数が6)(c)を、(a)/(b)/(c)=94/1/5の質量比で仕込んだ。さらに、前記の反応容器に、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを、(a)+(b)+(c)の合計100質量部に対して2質量部を加えて撹拌し、混合液(1)を調製した。
【0181】
次に、攪拌機、環流冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた反応装置を用意した。上記混合液(1)を60質量部、イソプロピルアルコール200質量部、及び、重合開始剤として過硫酸カリウム5質量部を反応装置に加え、60℃に加熱して、混合液(2)を調製した。混合液(2)は、60℃の加熱状態のまま20分間保持させた。
【0182】
次に、混合液(1)40質量部、イソプロピルアルコール50質量部、及び過硫酸カリウム5質量部からなる混合液(3)を調製した。滴下ロートを用いて混合液(3)を2時間かけて混合液(2)へ滴下し、混合液(4)を調製した。
【0183】
その後、混合液(4)は、60℃に加熱した状態のまま2時間保持した。得られた混合液(4)を50℃以下に冷却した後、攪拌機及び減圧設備を備えた容器に移した。この容器に、25%アンモニア水60質量部、および純水900質量部を加え、60℃に加熱しながら減圧下にてイソプロピルアルコールおよび未反応モノマーを回収し、純水に分散された任意の樹脂としてのアクリル樹脂(B1)を含む組成物を得た。
【0184】
(離型剤(1)の調製)
アクリル樹脂(A1)を含む樹脂溶液とアクリル樹脂(B1)を含む組成物とを、アクリル樹脂(A1)及びアクリル樹脂(B1)の質量比(固形分質量比)で(A1)/(B1)=20/80となるように混合して、中間組成物を得た。さらに、この中間組成物にフッ素系界面活性剤(互応化学工業社製「プラスコート(登録商標) RY-2」)を、前記の中間組成物全体100質量部に対して0.1質量部になるように添加して、液状のアクリル樹脂組成物としての離型剤(1)を得た。
【0185】
(支持体1の製造)
支持基材として、PETフィルム(東レ社製「T60」(厚さ38μm))を用意した。この支持基材の片面に、グラビアコーターを用いて離型剤(1)を塗布し、乾燥して、厚み0.1μmの離型層を形成した。以上の操作により、支持基材とアクリル樹脂を含む離型層とを備える支持体1を得た。
【0186】
<製造例2:アクリル樹脂を含まない離型層を備える支持体2の製造>
(ポリオレフィン樹脂(C1)の調製)
プロピレン-エチレン共重合体(プロピレン/エチレン=99/1(質量比))280gを、4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶融させた。その後、系内温度を170℃に保って攪拌下、ラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド5.5gを、1時間かけて加えた。その後、1時間反応させた。反応終了後、得られた反応生成物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂を、さらにアセトンで数回洗浄し、未反応のモノマーを除去した。その後、樹脂を減圧乾燥機中で減圧乾燥して、ポリオレフィン樹脂(C1)を得た。
【0187】
(ポリオレフィン樹脂(C1)の水性分散体の調製)
ヒーター付きの、密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用意した。この攪拌機のガラス容器に、60gのポリオレフィン樹脂(C1)と、45.0gのエチレングリコール-n-ブチルエーテル(沸点171℃)と、188.1gの蒸留水とを仕込み、撹拌翼の回転速度300rpmとして撹拌した。10分後に加熱し、系内温度を140℃に保って、さらに60分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま撹拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した。ガラス容器の内容物を、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、ポリオレフィン樹脂(C1)の水性分散体(不揮発成分濃度25質量%)を得た。
【0188】
(離型剤(2)の調製)
ポリオレフィン樹脂(C1)の水性分散体を不揮発成分換算で100質量部と、ポリビニルアルコール水溶液(日本酢ビ・ポバール社製「JT-05」、ケン化率94.5%、重合度500、不揮発成分濃度8質量%)を不揮発成分換算で300質量部とを混合し、さらに水を加えて最終不揮発成分濃度を6.0質量%に調整して、液状のポリオレフィン樹脂組成物としての離型剤(2)を得た。
【0189】
(支持体2の製造)
支持基材として、PETフィルム(東レ社製「T60」(厚さ38μm))を用意した。この支持基材の片面に、グラビアコーターを用いて、離型剤(2)を塗布し、乾燥して、厚み0.1μmの離型層を形成した。以上の操作により、支持基材とアクリル樹脂を含まない離型層とを備える支持体2を得た。
【0190】
<製造例3:樹脂ワニスA1の製造>
ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ZX1059」、エポキシ当量約169g/eq.、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品)6部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX4000HK」、エポキシ当量約185g/eq.)9部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量288g/eq.)21部、および、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、不揮発成分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)10部を、ソルベントナフサ20部およびシクロヘキサノン5部の混合溶剤に、撹拌しながら加熱溶解させて、混合物を得た。室温にまで冷却した後、この混合物へ、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤(水酸基当量151g/eq.、DIC社製「LA-3018-50P」、不揮発成分50%の2-メトキシプロパノール溶液)6部、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」、重量平均分子量が約2700、活性基当量約223g/eq.の不揮発成分65質量%のトルエン溶液)20部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成社製「1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール」、不揮発成分5質量%のMEK溶液)2部、難燃剤(三光社製「HCA-HQ」、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド、平均粒径2μm)2部、および、無機充填材170部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した。その後、この混合物を、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP050」)で濾過して、樹脂ワニスA1を調製した。無機充填材としては、アミノシラン系カップリング剤(信越化学社製「KBM573」)で表面処理した球状シリカ(アドマテックス社製「SOC2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m2/g)を用いた。
【0191】
<製造例4:樹脂ワニスA2の製造>
ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量約290g/eq.、日本化薬社製「NC3000H」)30部、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量162g/eq.、DIC社製「HP-4700」)5部、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180g/eq.、三菱ケミカル社製「jER828EL」)15部、およびフェノキシ樹脂(重量平均分子量35000、三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、不揮発成分30質量%のメチルエチルケトン(MEK)溶液)2部を、MEK8部およびシクロヘキサノン8部の混合溶剤に、撹拌しながら加熱溶解させて、混合物を得た。この混合物へ、トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤(フェノール性水酸基当量約124g/eq.、DIC社製「LA-7054」、不揮発成分60質量%のMEK溶液)32部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成社製「1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール」、不揮発成分5質量%のMEK溶液)2部、無機充填材160部、ポリビニルブチラール樹脂溶液(重量平均分子量27000、ガラス転移温度105℃、積水化学工業社製「KS-1」、不揮発成分15質量%のエタノールとトルエンの質量比が1:1の混合溶液)2部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスA2を調製した。無機充填材としては、アミノシラン系カップリング剤(信越化学社製「KBM573」)で表面処理した球状シリカ(アドマテックス社製「SOC2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m2/g)を用いた。
【0192】
<製造例5:樹脂ワニスB1の製造>
イミダゾール系硬化促進剤(四国化成社製「1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール」、不揮発成分5質量%のMEK溶液)2部を、リン系硬化促進剤(北興化学工業社製「テトラブチルホスホニウムデカン酸塩」、不揮発成分5質量%のMEK溶液)2部に変更したこと以外は、製造例3と同じ方法により、樹脂ワニスB1を調製した。
【0193】
[実施例1]
(樹脂シートの製造)
樹脂ワニスA1を、製造例1で得た支持体1の離型層側の面に、ダイコーターを用いて均一に塗布し、80℃~120℃(平均100℃)で6分間乾燥させて、支持基材、離型層及び樹脂組成物層をこの順に備える樹脂シートを得た。樹脂シートの樹脂組成物層の厚さは40μmであった。
【0194】
(樹脂シートの内層回路基板へのラミネート)
ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.8mm、パナソニック電工社製「R1515A」)の両面を、エッチング剤(メック社製「CZ8100」)に浸漬して、銅表面の粗化処理を行って、内層回路基板を得た。この内層回路基板の両面に、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニチゴー・モートン社製2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂シートをラミネートした。このラミネートは、樹脂シートの樹脂組成物層が内層回路基板と接合するように行った。また、このラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPa、30秒間のプレス条件で圧着することにより行った。前記のラミネートにより、支持体、樹脂組成物層、内層回路基板、樹脂組成物層及び支持体をこの順で備える試料積層体を得た。
【0195】
(樹脂組成物層の硬化)
樹脂組成物層と内層回路基板とのラミネートの後で、支持体を付けたまま、試料積層体を窒素オーブンに投入した。投入後、ドアを閉め、オーブン内の酸素濃度が0.5%になるまで窒素を循環させた。オーブン内の酸素濃度が0.5%になったのを確認後、次の硬化条件で樹脂組成物層の熱硬化を行った。具体的には、本実施例1の硬化条件では、オーブン内を30℃から10℃/minで130℃まで昇温させたのち、130℃で30分間かけて熱硬化を進行させ、さらに10℃/minで170℃まで昇温させたのち、170℃で30分間かけて熱硬化を更に進行させた。その後、5℃/minで30℃まで降温させて、窒素オーブンから試料積層体を取り出した。樹脂組成物層が熱硬化して絶縁層が形成されたので、支持体、絶縁層、内層回路基板、絶縁層及び支持体をこの順で備える評価サンプルを得た。内層回路上の絶縁層の厚さは、40μmであった。
【0196】
(支持体の剥離)
評価サンプルを室温(約25℃)まで冷却し、その後、支持体を剥離した。剥離性は良好で、支持体及び絶縁層が破損することなく支持体の剥離が達成された。剥離の結果、絶縁層を備えるプリント配線板と、前記絶縁層から剥がされた支持体とが得られた。
【0197】
[実施例2]
樹脂ワニスA1を樹脂ワニスA2に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂シート、評価サンプル及びプリント配線板を製造した。支持体を剥離する工程において、剥離性は良好で、支持体及び絶縁層が破損することなく支持体の剥離が達成された。
【0198】
[比較例1]
樹脂組成物層を熱硬化させる工程での硬化条件を下記の通り変更したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂シート及び評価サンプルを製造した。本比較例1の硬化条件では、オーブン内の酸素濃度が0.5%になったのを確認後、オーブン内を30℃から10℃/minで200℃まで昇温させたのち、200℃で90分間かけて熱硬化を進行させた。その後、5℃/minで30℃まで降温させ、窒素オーブンから試料積層体を取り出して、評価サンプルを得た。
【0199】
評価サンプルを室温(約25℃)まで冷却し、その後、支持体の剥離を試みた。しかし、絶縁層と支持体とが固着し、剥離が困難であった。また、無理に剥離したところ、支持体が破壊された。
【0200】
[比較例2]
樹脂ワニスA1を樹脂ワニスA2に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、樹脂シート及び評価サンプルを製造した。評価サンプルを室温(約25℃)まで冷却し、その後、支持体の剥離を試みた。しかし、絶縁層と支持体とが固着し、剥離が困難であった。また、無理に剥離したところ、支持体が破壊された。
【0201】
[参考例1]
樹脂ワニスA1を樹脂ワニスBに変更したこと以外は、比較例1と同様にして、樹脂シート及び評価サンプルを製造した。評価サンプルを室温(約25℃)まで冷却し、その後、支持体を剥離した。剥離性は良好で、支持体及び絶縁層が破損することなく支持体の剥離が達成された。剥離の結果、絶縁層を備えるプリント配線板と、前記絶縁層から剥がされた支持体とが得られた。
【0202】
[参考例2]
支持体1を支持体2に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、樹脂シート及び評価サンプルを製造した。評価サンプルを室温(約25℃)まで冷却し、その後、支持体を剥離した。剥離性は良好で、支持体及び絶縁層が破損することなく支持体の剥離が達成された。剥離の結果、絶縁層を備えるプリント配線板と、前記絶縁層から剥がされた支持体とが得られた。
【0203】
[参考例3]
支持体1をシリコーン離型層を備えるPETフィルム(東洋紡社製「E7004」、厚さ38μm)に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、樹脂シート及び評価サンプルを製造した。評価サンプルを室温(約25℃)まで冷却し、その後、支持体を剥離した。剥離性は良好で、支持体及び絶縁層が破損することなく支持体の剥離が達成された。剥離の結果、絶縁層を備えるプリント配線板と、前記絶縁層から剥がされた支持体とが得られた。
【0204】
[参考例4]
窒素オーブンへの試料積層体の投入後、窒素を循環させることなく、空気雰囲気において樹脂組成物層の熱硬化を行ったこと以外は、比較例1と同様にして、樹脂シート及び評価サンプルを製造した。評価サンプルを室温(約25℃)まで冷却し、その後、支持体を剥離した。剥離性は良好で、支持体及び絶縁層が破損することなく支持体の剥離が達成された。剥離の結果、絶縁層を備えるプリント配線板と、前記絶縁層から剥がされた支持体とが得られた。
【0205】
[結果]
前記の実施例、比較例及び参考例の結果を、下記の表に示す。下記の表の「判定」の項における略称の意味は、下記の通りである。
「OK」:支持体及び絶縁層が破損することなく、支持体を剥離できた。
「NG」:支持体又は絶縁層が破壊される剥離不良が発生した。
【0206】
【0207】
[検討]
比較例1及び2の結果から、従来、支持体と樹脂組成物層との間で剥離不良が生じていたことが分かる。また、参考例1~4の結果から、前記の剥離不良が、離型剤が(メタ)アクリル樹脂を含むこと、樹脂組成物層がイミダゾール系化合物を含む樹脂組成物を含むこと、及び、熱硬化を窒素雰囲気で行うこと、の全てを満たす場合に生じていた特異的な課題であることが分かる。実施例1及び2から、前記の特異的な課題が、本発明の製造方法によって解決できることが確認された。