(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
F01M 13/00 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
F01M13/00 M
F01M13/00 J
F01M13/00 L
(21)【出願番号】P 2022062476
(22)【出願日】2022-04-04
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】坂上 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】谷口 真一
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-102021(JP,A)
【文献】特開2008-111422(JP,A)
【文献】特開2017-081447(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0022175(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102019132079(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 13/00
F02D 45/00
B60W 10/00-20/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を備える車両に適用される車両制御装置であって、
前記内燃機関は、吸気通路、排気通路、過給器及びブローバイガス処理装置を備え、
前記過給器は、前記排気通路に設けられているタービンと、前記吸気通路に設けられているコンプレッサと、を有し、
前記ブローバイガス処理装置は、ブローバイガスを前記吸気通路に供給する供給通路として、前記吸気通路における前記コンプレッサよりも下流の部分に接続されている第1通路及び前記吸気通路における前記コンプレッサよりも上流の部分に接続されている第2通路を有するとともに、前記第1通路に配置されているPCVバルブを有し、
前記第1通路のうち、当該第1通路と前記吸気通路との接続部分と当該PCVバルブとの間の部分を通路下流部分としたとき、前記PCVバルブは、前記通路下流部分の圧力が規定圧以上になると閉弁し、
前記車両制御装置は、実行装置を備え、
前記吸気通路を流れる吸入空気を前記過給器に加圧させる前記内燃機関の運転を過給運転とし、当該吸入空気を前記過給器に加圧させない前記内燃機関の運転を非過給運転としたとき、
前記実行装置は、
前記PCVバルブが閉弁しているか否かを判定する閉弁判定処理と、
走行風によって前記供給通路が過冷却されているか否かを、前記車両の走行速度に基づいて判定する過冷却判定処理と、
前記車両の外気温が判定温度以下であること、前記閉弁判定処理で前記PCVバルブが閉弁していると判定したこと、及び前記過冷却判定処理で前記供給通路が過冷却されていると判定したことの何れもが成立している場合に、前記内燃機関の運転を前記非過給運転にすることによって前記通路下流部分の圧力を前記規定圧未満にする運転状態変更処理と、を実行する
車両制御装置。
【請求項2】
前記実行装置は、前記過冷却判定処理において、前記走行速度が判定速度以上である場合に前記供給通路が過冷却されていると判定する
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記実行装置は、前記過冷却判定処理において、前記走行速度と前記内燃機関の機関回転数とを基に、前記供給通路が過冷却されているか否かを判定する
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記車両は変速装置を備えるものであり、
前記運転状態変更処理は、前記変速装置の変速比を変更する処理を含む
請求項1~請求項3のうち何れか一項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記実行装置は、
前記外気温が前記判定温度以下であること、前記閉弁判定処理によって前記PCVバルブが閉弁していると判定したこと、及び前記過冷却判定処理によって前記供給通路が過冷却されていると判定したことの何れもが成立した場合、
前記運転状態変更処理と、前記変速比を、前記運転状態変更処理の開始前の変速比に戻す復帰処理と、を交互に繰り返す
請求項4に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記実行装置は、
前記外気温が前記判定温度以下であること、前記閉弁判定処理によって前記PCVバルブが閉弁していると判定したこと、及び前記過冷却判定処理によって前記供給通路が過冷却されていると判定したことの何れもが成立した場合、
所定のディレイ時間が経過してから前記運転状態変更処理を開始する
請求項4に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記実行装置は、
前記外気温が前記判定温度以下であること、前記閉弁判定処理によって前記PCVバルブが閉弁していると判定したこと、及び前記過冷却判定処理によって前記供給通路が過冷却されていると判定したことの何れもが成立した場合において、
前記運転状態変更処理を実行していない期間内に前記内燃機関の運転状態が変わって前記PCVバルブが開弁した場合には、前記運転状態変更処理の実行によって前記PCVバルブが開弁したものとする
請求項5に記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記実行装置は、
前記外気温が前記判定温度以下であること、前記閉弁判定処理によって前記PCVバルブが閉弁していると判定したこと、及び前記過冷却判定処理によって前記供給通路が過冷却されていると判定したことの何れもが成立している状態の累積時間を計測する処理と、
前記運転状態変更処理を開始した場合に前記累積時間をリセットする処理と、を実行し、
前記ディレイ時間よりも長い時間に設定されている判定累積時間を前記累積時間が越えると、前記運転状態変更処理を開始する
請求項6に記載の車両制御装置。
【請求項9】
前記実行装置は、前記外気温が前記判定温度以下であること、前記閉弁判定処理によって前記PCVバルブが閉弁していると判定したこと、及び前記過冷却判定処理によって前記供給通路が過冷却されていると判定したことのうち、少なくとも1つが非成立になった場合、前記累積時間のリセット、又は前記累積時間を減少させる
請求項8に記載の車両制御装置。
【請求項10】
前記車両は、動力源としてモータジェネレータをさらに備えるハイブリッド車両であり、
前記運転状態変更処理は、前記モータジェネレータの出力トルクを増大させる処理を含む
請求項1~請求項3のうち何れか一項に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関を備える車両に適用される車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内燃機関と、内燃機関の掃気対象部位へのガスの流れを生成すべく作動するアクチュエータとを備えた車両に適用される制御装置が開示されている。この制御装置は、機関運転を停止させた後において特定温度条件及び特定湿度条件のうちの少なくとも一方が成立した場合には、上記掃気対象部位にガスが流れるようにアクチュエータを作動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内燃機関として、過給器及びブローバイガス処理装置を備えたものがある。ブローバイガス処理装置は、ブローバイガスを吸気通路に供給する供給通路を有している。車両が走行している場合には、走行風によって供給通路が冷却される。走行風による供給通路の冷却量は、車両の外気温が低いほど多くなる。そのため、車両が極低温の環境下で走行し続けていると、走行風によって供給通路が過冷却され続けることとなり、当該供給通路で水分が凍結するおそれがある。すなわち、車両の走行中に、凍結した水分によって供給通路が閉塞されるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための車両制御装置は、内燃機関を備える車両に適用される装置である。当該車両制御装置において、前記内燃機関は、吸気通路、排気通路、過給器及びブローバイガス処理装置を備えている。前記過給器は、前記排気通路に設けられているタービンと、前記吸気通路に設けられているコンプレッサと、を有している。前記ブローバイガス処理装置は、ブローバイガスを前記吸気通路に供給する供給通路として、前記吸気通路における前記コンプレッサよりも下流の部分に接続されている第1通路及び前記吸気通路における前記コンプレッサよりも上流の部分に接続されている第2通路を有するとともに、前記第1通路に配置されているPCVバルブを有している。前記第1通路のうち、当該第1通路と前記吸気通路との接続部分と当該PCVバルブとの間の部分を通路下流部分としたとき、前記PCVバルブは、前記通路下流部分の圧力が規定圧以上になると閉弁する。前記車両制御装置は、実行装置を備えている。前記吸気通路を流れる吸入空気を前記過給器に加圧させる前記内燃機関の運転を過給運転とし、当該吸入空気を前記過給器に加圧させない前記内燃機関の運転を非過給運転とする。このとき、前記実行装置は、前記PCVバルブが閉弁しているか否かを判定する閉弁判定処理と、走行風によって前記供給通路が過冷却されているか否かを、前記車両の走行速度に基づいて判定する過冷却判定処理と、前記車両の外気温が判定温度以下であること、前記閉弁判定処理で前記PCVバルブが閉弁していると判定したこと、及び前記過冷却判定処理で前記供給通路が過冷却されていると判定したことの何れもが成立している場合に、前記内燃機関の運転を前記非過給運転にすることによって前記通路下流部分の圧力を前記規定圧未満にする運転状態変更処理と、を実行する。
【0006】
内燃機関の運転を非過給運転とすることにより、運転が過給運転である場合と比較し、第1通路の通路下流部分の圧力を低くできる。すなわち、内燃機関の運転を非過給運転とすることにより、通路下流部分の圧力を規定圧未満にできる。通路下流部分の圧力が規定圧未満であると、PCVバルブが開弁するため、ブローバイガスが第1通路から吸気通路に供給される。一方、内燃機関の運転が過給運転である場合、通路下流部分の圧力が規定圧以上となる。すると、PCVバルブが閉弁される。これにより、第1通路を介した供給通路へのブローバイガスの供給が停止されるため、ブローバイガスが第2通路から吸気通路に供給される。
【0007】
上記の内燃機関では、PCVバルブが閉弁している状況下で、ブローバイガス処理装置の供給通路が過剰に冷却され続けると、当該供給通路で水分が冷却するおそれがある。第1通路及び第2通路のうち、第2通路は、第1通路と比較して、内燃機関の気筒から離れた位置に設けられているため、第1通路よりも第2通路のほうが走行風の影響を受けやすい。そのため、第2通路が過冷却されている場合には、走行風による第2通路の冷却量が第2通路にブローバイガスを流すことによる第2通路の受熱量よりも多くなりやすい。このように冷却量が受熱量よりも多い状態が継続すると、ブローバイガスに含まれる水分が第2通路で凍結するおそれがある。よって、第2通路で水分が凍結しないようにするためには、ブローバイガスが第2通路を流れないようにすることが好ましい。一方、第1通路は、第2通路と比較して走行風の影響を受けにくい。そのため、第1通路にブローバイガスを流すことによる第1通路の受熱量を、走行風による第1通路の冷却量よりも多くできる。よって、第1通路で水分が凍結しないようにするためには、ブローバイガスを流すことが好ましい。
【0008】
そこで、上記車両制御装置では、車両の外気温が判定温度以下であること、PCVバルブが閉弁していると判定されたこと、及び供給通路が過冷却されていると判定されたことの何れもが成立している場合に、運転状態変更処理が実行される。運転状態変更処理では、内燃機関の運転を非過給運転とすることによって第1通路の通路下流部分の圧力が規定圧未満とされる。その結果、PCVバルブが開弁する。これにより、第1通路をブローバイガスが流れるようになる一方で、第2通路をブローバイガスが流れないようになる。これにより、第1通路を流れるブローバイガスによって第1通路が暖められるため、第1通路で水分が凍結することを抑制できる。一方、第2通路にはブローバイガスが流れないため、ブローバイガスに含まれる水分が第2通路で凍結することを抑制できる。
【0009】
したがって、上記車両制御装置は、車両の走行中にブローバイガス処理装置の供給通路で水分が凍結することを抑制できる。
上記車両制御装置の一例において、前記実行装置は、前記過冷却判定処理において、前記走行速度が判定速度以上である場合に前記供給通路が過冷却されていると判定する。
【0010】
車両の走行速度が高いほど、走行風による供給通路の冷却量が多くなりやすい。そこで、上記車両制御装置では、走行速度が判定速度以上である場合に供給通路が過冷却されていると判定するようにしている。走行速度が判定速度以上である場合では、運転状態変更処理を実行することによって供給通路で水分が凍結することを抑制できる。
【0011】
上記車両制御装置の一例において、前記実行装置は、前記過冷却判定処理において、前記走行速度と前記内燃機関の機関回転数とを基に、前記供給通路が過冷却されているか否かを判定する。
【0012】
機関回転数によっては走行速度が判定速度未満であっても供給通路で水分が凍結する可能性がある。そこで、上記車両制御装置では、走行速度と機関回転数とを基に、供給通路が過冷却されているか否かが判定される。そして、走行速度と機関回転数とに基づいて供給通路が過冷却されていると判定された場合に、運転状態変更処理が実行される。現状の走行速度と機関回転数とを維持し続けていると、供給通路で水分が凍結する可能性があるような場合には、運転状態変更処理を実行してPCVバルブを開弁させることにより、供給通路で水分が凍結することを抑制できる。
【0013】
上記車両制御装置の一例が適用される車両が変速装置を備えるものであるとき、前記運転状態変更処理は、前記変速装置の変速比を変更する処理を含むことが好ましい。
変速装置の変速比を変えても車両の走行速度を維持するためには、内燃機関の負荷率及び機関回転数が変更される。このように負荷率及び機関回転数を変更すると、過給器の駆動態様が変わるため、吸気通路のうち、コンプレッサよりも下流の部分の圧力が変わる。つまり、第1通路の通路下流部分の圧力が変わる。
【0014】
そこで、上記車両制御装置では、運転状態変更処理が実行されると、通路下流部分の圧力が規定圧未満となるように変速装置の変速比が変更される。そのため、運転状態変更処理の実行によってPCVバルブを開弁できる。したがって、走行速度が変化することを抑制しつつ、供給通路で水分が凍結することを抑制できる。
【0015】
上記車両制御装置の一例において、前記実行装置は、前記外気温が前記判定温度以下であること、前記閉弁判定処理によって前記PCVバルブが閉弁していると判定したこと、及び前記過冷却判定処理によって前記供給通路が過冷却されていると判定したことの何れもが成立した場合、前記運転状態変更処理と、前記変速比を、前記運転状態変更処理の開始前の変速比に戻す復帰処理と、を交互に繰り返す。
【0016】
運転状態変更処理が実行されると、変速装置の変速比は、運転状態変更処理を実行しない場合に選択する変速比よりも低速側の変速比になる。そのため、運転状態変更処理が実行され続けていると、変速装置の変速比が高速側の変速比とならないことに対して車両の運転者が不快に感じるおそれがある。一方、上記の3つの条件が成立している場合であっても、PCVバルブを開弁させないと供給通路で水分が直ぐに凍結するわけではない。
【0017】
そこで、上記車両制御装置では、運転状態変更処理と復帰処理とが交互に繰り返される。そのため、上記の3つの条件が成立している場合でも、変速装置の変速比が高速側の変速比になる期間を設けることができる。したがって、変速装置の変速比を高速側の変速比にさせつつも、供給通路で水分が凍結することを抑制できる。
【0018】
上記車両制御装置の一例において、前記実行装置は、前記外気温が前記判定温度以下であること、前記閉弁判定処理によって前記PCVバルブが閉弁していると判定したこと、及び前記過冷却判定処理によって前記供給通路が過冷却されていると判定したことの何れもが成立した場合、所定のディレイ時間が経過してから前記運転状態変更処理を開始する。
【0019】
上記車両制御装置では、上記の3つの条件の何れもが成立した状態になってからディレイ時間が経過するまでの間では、変速装置の変速比が高速側の変速比である状態を継続できる。その一方で、ディレイ時間が経過して運転状態変更処理が実行されると、変速装置の変速比は、運転状態変更処理の開始前の変速比よりも低速側の変速比に変更される。これにより、内燃機関の運転を非過給運転にすることによって第1通路の通路下流部分の圧力を規定圧未満にできる。すなわち、PCVバルブを開弁できる。これにより、変速装置の変速比を高速側の変速比にする期間を設けつつも、供給通路で水分が凍結することを抑制できる。
【0020】
上記車両制御装置の一例において、前記実行装置は、前記外気温が前記判定温度以下であること、前記閉弁判定処理によって前記PCVバルブが閉弁していると判定したこと、及び前記過冷却判定処理によって前記供給通路が過冷却されていると判定したことの何れもが成立した場合において、前記運転状態変更処理を実行していない期間内に前記内燃機関の運転状態が変わって前記PCVバルブが開弁した場合には、前記運転状態変更処理の実行によって前記PCVバルブが開弁したものとする。
【0021】
上記車両制御装置では、上記の3つの条件が何れも成立している状況下であっても、運転状態変更処理が実行されていない期間がある。こうした運転状態変更処理の非実行期間内に、内燃機関の運転状態が変わってPCVバルブが開弁した場合には、運転状態変更処理の実行によってPCVバルブが開弁したものとする。これにより、上記の3つの条件が何れも成立した場合には運転状態変更処理と復帰処理とを交互に繰り返す車両制御装置においては、復帰処理を比較的早期に開始できる。すなわち、供給通路で水分が凍結することを抑制しつつも、変速装置の変速比を高速側の変速比にできる機会を増やすことができる。
【0022】
上記車両制御装置の一例において、前記実行装置は、前記外気温が前記判定温度以下であること、前記閉弁判定処理によって前記PCVバルブが閉弁していると判定したこと、及び前記過冷却判定処理によって前記供給通路が過冷却されていると判定したことの何れもが成立している状態の累積時間を計測する処理と、前記運転状態変更処理を開始した場合に前記累積時間をリセットする処理と、を実行し、前記ディレイ時間よりも長い時間に設定されている判定累積時間を前記累積時間が越えると、前記運転状態変更処理を開始する。
【0023】
運転者による車両の使い方によっては、上記の累積時間がある程度の時間に達しても、運転状態変更処理を実行できないことがある。そこで、上記車両制御装置では、累積時間が判定累積時間を越えた場合には、上記3つの条件の何れもが成立している状態の継続時間がディレイ時間に達していなくても運転状態変更処理が開始される。これにより、運転状態変更処理が実行されないために供給通路で水分が凍結してしまうことを抑制できる。
【0024】
ただし、運転状態変更処理を実行した後においては、当該運転状態変更処理が終了してからある程度の時間が経過するまではPCVバルブが閉弁したままであっても供給通路で水分が凍結することはない。そのため、上記車両制御装置では、運転状態変更処理が開始されると、累積時間がリセットされる。
【0025】
上記車両制御装置の一例において、前記実行装置は、前記外気温が前記判定温度以下であること、前記閉弁判定処理によって前記PCVバルブが閉弁していると判定したこと、及び前記過冷却判定処理によって前記供給通路が過冷却されていると判定したことのうち、少なくとも1つが非成立になった場合、前記累積時間のリセット、又は前記累積時間を減少させる。
【0026】
上記3つの条件のうち少なくとも1つの条件が非成立である場合には、供給通路で水分が凍結することはないと見なせる。そこで、上記車両制御装置では、上記3つの条件のうち少なくとも1つの条件が非成立になると、累積時間がリセットされる、又は累積時間が減少される。これにより、供給通路で水分が凍結することを抑制しつつ、運転状態変更処理の実行頻度が増大することを抑制できる。
【0027】
上記車両制御装置の一例が適用される車両は、動力源としてモータジェネレータをさらに備えるハイブリッド車両であるとき、前記運転状態変更処理は、前記モータジェネレータの出力トルクを増大させる処理を含むことが好ましい。
【0028】
上記車両制御装置では、運転状態変更処理によって第1通路の通路下流部分の圧力が規定圧未満となるように内燃機関の運転を非過給運転にすると、内燃機関の出力トルクが減少される一方で、モータジェネレータの出力トルクが増大される。つまり、車両の動力源から出力されるトルクの総和は、運転状態変更処理の実行の有無によって変化しない。したがって、車両の走行速度の低下を抑制しつつ、供給通路で水分が凍結することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、第1実施形態の車両制御装置を備える車両の概略を示す構成図である。
【
図2】
図2は、同車両が備えるブローバイガス処理装置でPCVバルブが開弁している場合の作用図である。
【
図3】
図3は、同ブローバイガス処理装置でPCVバルブが閉弁している場合の作用図である。
【
図4】
図4は、内燃機関の機関負荷率と機関回転数とを示すグラフである。
【
図5】
図5は、車両の走行速度と機関回転数とを基に、供給通路が過冷却されているか否かを判定する際に用いられるマップを示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の車両制御装置で実行される処理ルーチンを示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1実施形態の車両制御装置で実行される処理ルーチンを示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、第2実施形態の車両制御装置で実行される処理ルーチンを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第3実施形態の車両制御装置を備える車両の概略を示す構成図である。
【
図10】
図10は、第3実施形態の車両制御装置で実行される処理ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1実施形態)
以下、車両制御装置の第1実施形態を
図1~
図7に従って説明する。
図1は、車両制御装置としての制御装置70が適用される車両10を図示している。車両10は、内燃機関20と、変速装置12と、駆動輪14とを備えている。
【0031】
変速装置12は、内燃機関20から駆動輪14へのトルク伝達経路の途中に配置されている。本実施形態では、変速装置12は有段式の変速装置である。そのため、変速装置12が選択する変速段が変更されると、変速装置12の変速比が変わる。すなわち、変速装置12が選択する変速段が低速側の変速段に変更されると、変速装置12の変速比が低速側に変化する。
【0032】
<内燃機関>
内燃機関20は、シリンダブロック21と、クランクケース22と、オイルパン23と、シリンダヘッド24と、ヘッドカバー25とを備えている。
【0033】
クランクケース22は、シリンダブロック21の下部に取り付けられている。クランクケース22内には、内燃機関20の出力軸であるクランク軸26が収容されている。オイルパン23は、クランクケース22の下部に取り付けられている。オイルパン23内には、内燃機関20内を循環するオイルが貯留される。
【0034】
シリンダヘッド24は、シリンダブロック21の上部に取り付けられている。シリンダブロック21とシリンダヘッド24とにより、複数の気筒27が区画されている。
図1では、気筒27が1つのみ図示されている。シリンダヘッド24の上部にヘッドカバー25が取り付けられている。
【0035】
内燃機関20は、気筒27の数と同数のピストン28及びコネクティングロッド29を備えている。ピストン28は、対応する気筒27内に収容されているとともに、対応するコネクティングロッド29を介してクランク軸26に連結されている。複数のピストン28が気筒27内で往復動することにより、クランク軸26が回転する。
【0036】
内燃機関20は、シリンダヘッド24に接続されている吸気通路31を備えている。吸気通路31は、複数の気筒27内に導入する吸入空気が流れる通路である。吸気通路31には、
図1に矢印で示すように吸気通路31を流れる吸入空気の量である吸入空気量を調整する電動式のスロットルバルブ32が設けられている。そして、複数の気筒27内では、気筒27内に導入された燃料と吸入空気とを含む混合気が燃焼される。このように混合気が燃焼すると、複数の気筒27内で排気が生成される。
【0037】
内燃機関20は、シリンダヘッド24に接続されている排気通路35を備えている。排気通路35には複数の気筒27から排気が排出される。そして、当該排気が
図1に矢印で示すように排気通路35を流れる。
【0038】
内燃機関20は、排気駆動式の過給器40を備えている。過給器40は、排気通路35に設けられているタービン41と、吸気通路31に設けられているコンプレッサ42とを有している。コンプレッサ42は、吸気通路31におけるスロットルバルブ32よりも上流に配置されている。そして、排気通路35を流れる排気の流勢によってタービン41が駆動すると、タービン41と同期してコンプレッサ42が駆動する。このようにコンプレッサ42が駆動することにより、吸気通路31を流れる吸入空気が加圧されて複数の気筒27内に導入される。このようにコンプレッサ42が駆動していると、吸気通路31のうち、スロットルバルブ32よりも下流の部分の圧力が正圧となる。一方、コンプレッサ42が停止している場合、吸気通路31のうち、スロットルバルブ32よりも下流の部分の圧力が負圧となる。
【0039】
本実施形態では、過給器40によって吸入空気を加圧させる内燃機関20の運転を「過給運転」という。一方、過給器40によって吸入空気を加圧させない内燃機関20の運転を「非過給運転」という。
【0040】
内燃機関20は、ブローバイガス処理装置50を備えている。ブローバイガス処理装置50は、蓄積室51と連通路52とを有している。蓄積室51は、シリンダヘッド24とヘッドカバー25とによって区画されている。蓄積室51は、内燃機関20で発生したブローバイガスを蓄積する。連通路52は、クランクケース22内と蓄積室51とを連通する通路である。連通路52は、シリンダブロック21とシリンダヘッド24とに跨がって形成されている。そのため、複数の気筒27内からクランクケース22内に漏出したブローバイガスは、連通路52を介して蓄積室51に流入する。
【0041】
ブローバイガス処理装置50は、蓄積室51に蓄積されているブローバイガスを吸気通路31に供給する供給通路と、PCVバルブ53とを有している。供給通路は、蓄積室51と吸気通路31とを繋ぐとともに、ブローバイガスを吸気通路31に供給する通路である。ブローバイガス処理装置50は、供給通路として、第1通路54と第2通路55とを有している。第1通路54は、吸気通路31のうち、コンプレッサ42よりも下流の部分に接続されている。詳しくは、第1通路54は、吸気通路31のうち、スロットルバルブ32よりも下流の部分に接続されている。第2通路55は、吸気通路31のうち、コンプレッサ42よりも上流の部分に接続されている。
【0042】
PCVバルブ53は、第1通路54に設けられている。第1通路54と吸気通路31との接続部分を「下流接続部分」とし、第1通路54のうち、下流接続部分とPCVバルブ53との間の部分を「通路下流部分54a」とする。このとき、PCVバルブ53は、通路下流部分54aの圧力が規定圧未満である場合には開弁する一方、通路下流部分54aの圧力が規定圧以上である場合には閉弁する。内燃機関20の運転が非過給運転である場合、吸気通路31のうち、スロットルバルブ32よりも下流の部分には負圧が発生する。当該部分に通路下流部分54aが接続されているため、通路下流部分54aにも負圧が発生する。これにより、通路下流部分54aの圧力が規定圧未満になるため、PCVバルブ53が開弁する。内燃機関20の運転が非過給運転から過給運転に移行する過程では、吸気通路31のうち、スロットルバルブ32よりも下流の部分の圧力が徐々に高くなる。すると、通路下流部分54aの圧力も徐々に高くなる。そして、通路下流部分54aの圧力が規定圧以上になると、PCVバルブ53が閉弁される。その後に内燃機関20の運転が過給運転になると、吸気通路31のうち、スロットルバルブ32よりも下流の部分の圧力が正圧になるため、通路下流部分54aの圧力が規定圧以上である状態が継続する。つまり、内燃機関20の運転が過給運転である場合、PCVバルブ53が閉弁される。
【0043】
図2には、PCVバルブ53が開弁している場合のブローバイガスの流れが図示されている。
図2において、破線がブローバイガスの流れを示し、実線が吸入空気の流れが示している。PCVバルブ53が開弁している場合、蓄積室51のブローバイガスは、第1通路54を介して吸気通路31に供給される。一方、第2通路55には吸気通路31から吸入空気の一部が流入する。そのため、PCVバルブ53が開弁している場合、第2通路55をブローバイガスが流れない。
【0044】
図3には、PCVバルブ53が閉弁している場合のブローバイガスの流れが図示されている。
図3において、破線がブローバイガスの流れを示し、実線が吸入空気の流れを示している。PCVバルブ53が閉弁している場合、第1通路54を介した気体の流通は停止される。そのため、蓄積室51のブローバイガスは、第2通路55を介して吸気通路31に供給される。
【0045】
図1に示すように、内燃機関20は、クランク角センサ61とエアフローメータ62とを備えている。クランク角センサ61は、クランク軸26の回転角を検出する。そして、クランク角センサ61は、クランク軸26の回転速度に応じた検出信号を制御装置70に出力する。エアフローメータ62は、吸気通路31を流れる吸入空気の量である吸入空気量を検出し、その検出結果に応じた検出信号を制御装置70に出力する。
【0046】
<制御装置>
制御装置70は、クランク角センサ61及びエアフローメータ62を含む複数のセンサの検出値に基づいて、内燃機関20の各種アクチュエータ、すなわちスロットルバルブ32及び燃料噴射弁を制御する。クランク角センサ61及びエアフローメータ62以外のセンサは、車速センサ64と外気温センサ65とを有している。車速センサ64は車両10の走行速度を検出する。外気温センサ65は車両10の外気温を検出する。なお、以降の記載において、クランク角センサ61の検出信号に基づいたクランク軸26の回転速度を「機関回転数Ne」とする。また、エアフローメータ62の検出値を「吸入空気量Ga」とする。車速センサ64の検出値を「走行速度SP」とし、外気温センサ65の検出値を「外気温TMP」とする。
【0047】
図1に示すように、制御装置70はCPU71とメモリ72とを有している。メモリ72には、CPU71によって実行される各種の制御プログラムを実行する。本実施形態では、CPU71が「実行装置」に対応する。
【0048】
車両10が走行している場合、内燃機関20の構成部品は走行風によって冷却される。
図2及び
図3に白抜きの矢印で示すように、ブローバイガス処理装置50の供給通路、すなわち第1通路54及び第2通路55は、走行風によって冷却される。例えば氷点下の環境下で車両10が走行している場合、走行風による供給通路の冷却量が非常に多くなる。そして、供給通路が過冷却されると、供給通路で水分が凍結するおそれがある。
【0049】
ちなみに、本実施形態では、第2通路55における吸気通路31との接続部分からシリンダブロック21までの距離は、第1通路54における吸気通路31との接続部分からシリンダブロック21までの距離よりも長い。そのため、第2通路55は、第1通路54よりも走行風の影響を受けやすい。
【0050】
本実施形態では、CPU71は、供給通路である第1通路54及び第2通路55の少なくとも一方で水分が凍結する可能性があると判定した場合、運転状態変更処理を実行する。運転状態変更処理は、通路下流部分54aの圧力が規定圧未満となるように変速装置12及び内燃機関20の運転を制御してPCVバルブ53を開弁させる処理である。
【0051】
図4を参照し、本実施形態の運転状態変更処理について説明する。
図4において、実線は、内燃機関20の出力トルクの等トルク線である。また、
図4における破線よりも機関負荷率KLの高い領域では内燃機関20の運転が過給運転となり、破線よりも機関負荷率KLの低い領域では内燃機関20の運転が非過給運転となる。
【0052】
運転状態変更処理において、CPU71は、以下の条件(C1)及び(C2)を満たすように内燃機関20の運転及び変速装置12の変速比を制御する。なお、機関負荷率KLは、吸入空気量Ga及び機関回転数Neに基づいた値である。吸入空気量Gaが多いほど機関負荷率KLが高くなる。
(C1)変速装置12が選択する変速段を、運転状態変更処理を実行しない場合に変速装置12が選択する変速段よりも低速側の変速段にすること。
(C2)第1通路54の通路下流部分54aの圧力が規定圧未満になるまで機関負荷率KLを低下させつつも、内燃機関20の出力トルクを維持すること。
【0053】
CPU71がこうした運転状態変更処理を実行することによって通路下流部分54aの圧力が規定圧未満になると、PCVバルブ53が開弁する。
<供給通路で水分が凍結する可能性があるか否かを判定する処理>
図6を参照し、供給通路で水分が凍結する可能性があるか否かを判定する処理ルーチンについて説明する。この処理ルーチンは、制御プログラムをCPU71が繰り返し実行することにより、所定の制御サイクル毎に繰り返し実行される。
【0054】
本処理ルーチンにおいてステップS11では、CPU71は、車両10の外気温TMPが判定温度TMPth以下であるか否かを判定する。例えば、氷点下の環境で車両10が走行しているか否かの判断基準として、判定温度TMPthが設定されている。外気温TMPが判定温度TMPthよりも高い場合は、供給通路で水分が凍結しないと見なす。外気温TMPが判定温度TMPth以下である場合、車両10の走行中に供給通路で水分が凍結する可能性があると見なす。外気温TMPが判定温度TMPthよりも高い場合(S11:NO)、CPU71は処理をステップS19に移行する。一方、外気温TMPが判定温度TMPth以下である場合(S11:YES)、CPU71は処理をステップS13に移行する。
【0055】
ステップS13において、CPU71は、PCVバルブ53が閉弁しているか否かを判定する。上述したように第1通路54の通路下流部分54aは、吸気通路31におけるスロットルバルブ32よりも下流の部分に接続されている。そのため、当該部分の圧力と通路下流部分54aの圧力とは互いに等しいと見なせる。そこで、CPU71は、スロットルバルブ32の開度であるスロットル開度及び吸入空気量Gaなどを基に、吸気通路31におけるスロットルバルブ32よりも下流の部分の圧力を推定する。そして、CPU71は、当該圧力の推定値が規定圧以上である場合にはPCVバルブ53が閉弁していると判定する一方、当該圧力の推定値が規定圧未満である場合にはPCVバルブ53が閉弁していないと判定する。すなわち、ステップS13が、PCVバルブ53が閉弁しているか否かを判定する「閉弁判定処理」に対応する。PCVバルブ53が閉弁していないと判定した場合(S13:NO)、CPU71は処理をステップS14に移行する。一方、PCVバルブ53が閉弁していると判定した場合(S13:YES)、CPU71は処理をステップS15に移行する。
【0056】
ステップS14において、CPU71は、運転状態変更処理を実行しているか否かを判定する。すなわち、CPU71は、PCVバルブ53が閉弁していない理由が運転状態変更処理を実行しているためであるのか否かを判定する。運転状態変更処理を実行している場合(S14:YES)、CPU71は本処理ルーチンを一旦終了する。一方、運転状態変更処理を実行していない場合(S14:NO)、CPU71は処理をステップS19に移行する。
【0057】
ステップS15において、CPU71は、以下の2つの条件(A1)及び(A2)のうち、少なくとも一方が成立しているか否かを判定する。
(A1)車両10の走行速度SPが判定速度SPth以上であること。
(A2)内燃機関20から第2通路55に伝わる熱量である受熱量が、走行風による第2通路55の冷却量よりも少ないこと。
【0058】
走行速度SPが高いほど、走行風が強くなるため、走行風による供給通路の冷却量が多くなる。そして、各種の実験及びシミュレーションを行った結果、本件の発明者は、走行速度SPが判定速度SPth以上である場合、供給通路のうちの第1通路54が過冷却になるという知見を得た。さらに、当該発明者は、外気温TMPが判定温度TMPth以下であり、且つPCVバルブ53が閉弁している状況下で走行速度SPが判定温度TMPth以上である状態が継続すると、第1通路54で水分が凍結するおそれがあるという知見も得た。
【0059】
また、走行速度SPが判定温度TMPth以上であるか否かに拘わらず、上記条件(A2)が成立している場合、本件の発明者は、第2通路55が過冷却になるという知見を得た。さらに、当該発明者は、外気温TMPが判定温度TMPth以下であり、且つPCVバルブ53が閉弁している状況下で条件(A2)が成立している状態が継続すると、第2通路55で水分が凍結するおそれがあるという知見も得た。
【0060】
図5には、機関回転数Neと走行速度SPとの関係を基に、条件(A2)が成立しているか否かを判断するためのマップMP1が図示されている。このマップMP1において、線L(1)は、変速装置12が第1変速段を選択している場合における機関回転数Neと走行速度SPとの関係を示す。線L(2)は、変速装置12が第2変速段を選択している場合における機関回転数Neと走行速度SPとの関係を示す。線L(3)は、変速装置12が第3変速段を選択している場合における機関回転数Neと走行速度SPとの関係を示す。線L(N-1)は、変速装置12が第N-1変速段を選択している場合における機関回転数Neと走行速度SPとの関係を示す。線L(N)は、変速装置12が第N変速段を選択している場合における機関回転数Neと走行速度SPとの関係を示す。なお、「N」は4以上の整数である。第N変速段が選択されている場合の変速装置12の変速比は、変速装置12で設定できる最も高速側の変速比である。第N-1変速段が選択されている場合の変速装置12の変速比は、変速装置12で設定できる2番目に高速側の変速比である。一方、第1変速段が選択されている場合の変速装置12の変速比は、変速装置12で設定できる最も低速側の変速比である。そして、
図5において破線で示す領域を「過冷却領域Rp」とする。このとき、本件の発明者は、各種の実験やシミュレーションを行った結果、機関回転数Neと走行速度SPとを示す点が過冷却領域Rpに位置する場合に条件(A2)が成立するという知見を得た。
【0061】
そこで、本実施形態では、CPU71は、条件(A1)が成立している場合には第1通路54が過冷却されていると判定する。また、CPU71は、条件(A2)が成立している場合には第2通路55が過冷却されていると判定する。したがって、ステップS15の処理が、走行風によって供給通路が過冷却されているか否かを、走行速度SPに基づいて判定する「過冷却判定処理」に対応する。
【0062】
図6に戻り、ステップS15において、条件(A1)及び(A2)のうち少なくとも一方が成立している場合(YES)、CPU71は処理をステップS17に移行する。一方、条件(A1)及び(A2)の何れもが成立していない場合(S15:NO)、CPU71は処理をステップS19に移行する。
【0063】
ステップS17において、CPU71は、第1実行フラグFLG1及び第2実行フラグFLG2の双方にオンをセットする。第1実行フラグFLG1にオンがセットされている場合は、供給通路で水分が凍結する可能性があると見なす。一方、第1実行フラグFLG1にオフがセットされている場合は、供給通路で水分が凍結しないと見なす。第1実行フラグFLG1がオンにセットされてから運転状態変更処理が未だ実行されていない場合、第2実行フラグFLG2にはオンがセットされる。一方、第1実行フラグFLG1がオンにセットされてから1回でも運転状態変更処理が実行されると、第2実行フラグFLG2にオフがセットされる。その後、CPU71は本処理ルーチンを一旦終了する。
【0064】
ステップS19において、CPU71は、第1実行フラグFLG1にオフをセットする。その後、CPU71は本処理ルーチンを一旦終了する。
<供給通路で水分が凍結することを抑制する処理>
図7を参照し、供給通路で水分が凍結することを抑制する際に実行される処理ルーチンについて説明する。この処理ルーチンは、制御プログラムをCPU71が繰り返し実行することにより、所定の制御サイクル毎に繰り返し実行される。
【0065】
本処理ルーチンにおいてステップS31では、CPU71は、第1実行フラグFLG1にオンがセットされているか否かを判定する。第1実行フラグFLG1にオンがセットされている場合(S31:YES)、CPU71は処理をステップS33に移行する。一方、第1実行フラグFLG1にオフがセットされている場合(S31:NO)、CPU71は本処理ルーチンを一旦終了する。
【0066】
ステップS33において、CPU71は、第2実行フラグFLG2にオンがセットされているか否かを判定する。第2実行フラグFLG2にオンがセットされている場合(S33:YES)、CPU71は処理をステップS35に移行する。
【0067】
ステップS35において、CPU71は、以下の2つの条件(B1)及び(B2)のうち、少なくとも一方が成立しているか否かを判定する。
(B1)第1実行フラグFLG1にオンがセットされた時点から所定のディレイ時間TMdが経過したこと。
(B2)第1実行フラグFLG1にオンがセットされている状態の累積時間TMtが判定累積時間TMtThを越えたこと。
【0068】
例えば、ディレイ時間TMdとして、1分よりも長い時間が設定されている。第1実行フラグFLG1にオンがセットされても、供給通路で直ぐに水分が凍結するわけではない。言い換えると、供給通路で水分が凍結しない期間であれば、運転状態変更処理を実行しなくてもよい。そこで、供給通路で水分が凍結し始めるか否かの判断基準として、ディレイ時間TMdが設定されている。
【0069】
第1実行フラグFLG1にオンが間欠的にセットされる場合、第1実行フラグFLG1にオンがセットされている状態の継続時間がディレイ時間TMdに達していなくても供給通路で水分が凍結する可能性がある。そこで、上記の累積時間TMtが判定累積時間TMtThを越えた場合、供給通路で水分が凍結し始める可能性があると見なす。判定累積時間TMtThとして、ディレイ時間TMdよりも長い時間が設定されている。なお、累積時間TMtは、運転状態変更処理が開始されると0(零)にリセットされる。
【0070】
ステップS35において、条件(B1)及び(B2)のうち、少なくとも一方が成立している場合(YES)、CPU71は処理をステップS39に移行する。一方、条件(B1)及び(B2)の何れもが成立していない場合(S35:NO)、CPU71は処理をステップS37に移行する。
【0071】
ステップS37において、CPU71は、運転状態変更処理を実行していないにも拘わらず、内燃機関20の運転が過給運転から非過給運転に移行したか否かを判定する。例えば、運転者のアクセル操作などによって変速装置12がダウンシフトされると、運転状態変更処理が実行されていなくても、内燃機関20の運転が過給運転から非過給運転に移行することがある。内燃機関20の運転が非過給運転になると、第1通路54の通路下流部分54aの圧力が規定圧未満となってPCVバルブ53が開弁することがある。そのため、内燃機関20の運転が非過給運転に移行した場合(S37:YES)、CPU71は処理をステップS39に移行する。一方、内燃機関20の運転が非過給運転に移行していない場合(S37:NO)、CPU71は本処理ルーチンを一旦終了する。
【0072】
ステップS39において、CPU71は第2実行フラグFLG2にオフをセットする。そして、CPU71は処理をステップS41に移行する。
ステップS41において、CPU71は運転状態変更処理を実行する。その後、CPU71は本処理ルーチンを一旦終了する。
【0073】
その一方で、ステップS33において第2実行フラグFLG2にオフがセットされている場合(NO)、CPU71は処理をステップS43に移行する。
ステップS43において、CPU71は運転状態変更処理を実行中であるか否かを判定する。運転状態変更処理を実行中である場合(S43:YES)、CPU71は処理をステップS45に移行する。ステップS45において、CPU71は、運転状態変更処理の継続時間が第1経過時間TM1を経過したか否かを判定する。運転状態変更処理を第1経過時間TM1だけ実行すると、それ以降ではPCVバルブ53が閉弁してもしばらくの間、供給通路で水分が凍結することはないと推測できる。そこで、運転状態変更処理の継続時間が第1経過時間TM1を経過していない場合(S45:NO)、CPU71は処理をステップS41に移行する。すなわち、CPU71は運転状態変更処理の実行を継続する。
【0074】
一方、運転状態変更処理の継続時間が第1経過時間TM1を経過した場合(S45:YES)、CPU71は処理をステップS47に移行する。ステップS47において、CPU71は復帰処理を実行する。具体的には、復帰処理において、CPU71は、変速装置12で選択されている変速段を運転状態変更処理の実行前の変速段に戻させる。さらに、CPU71は、変速装置12で選択している変速段を変更しても、内燃機関20の出力トルクが維持されるように内燃機関20の運転を制御する。すなわち、復帰処理は、内燃機関20の運転を過給運転に戻すこと、及びPCVバルブ53が閉弁することの何れをも許可する処理である。その後、CPU71は本処理ルーチンを一旦終了する。
【0075】
その一方で、ステップS43において運転状態変更処理を実行中ではない場合(NO)、復帰処理を実行中であるため、CPU71は処理をステップS49に移行する。次のステップS49において、CPU71は、復帰処理の継続時間が第2経過時間TM2を経過したか否かを判定する。復帰処理の継続時間が第2経過時間TM2を越えると、供給通路で水分が凍結する可能性が再び生じる。そのため、復帰処理の継続時間が第2経過時間TM2を経過していない場合(S49:NO)、CPU71は処理をステップS47に移行する。すなわち、CPU71は復帰処理の実行を継続する。一方、復帰処理の継続時間が第2経過時間TM2を経過した場合(S49:YES)、CPU71は処理をステップS41に移行する。すなわち、CPU71は運転状態変更処理を開始する。
【0076】
<本実施形態の作用及び効果>
外気温TMPが判定温度TMPth以下となるような極低温の環境下で車両10が走行する場合の作用について説明する。
【0077】
内燃機関20の運転が過給運転である場合、PCVバルブ53が閉弁する。そのため、ブローバイガス処理装置50では、蓄積室51のブローバイガスは、第1通路54ではなく第2通路55から吸気通路31に供給される。
【0078】
ここで、走行速度SPが高いほど、走行風による供給通路の冷却量が高くなる。すなわち、走行速度SPが判定速度SPth以上であると、走行風による第1通路54の冷却量が多くなり、第1通路54が過冷却される。比較的高温のブローバイガスが第1通路54を流れていない状態で第1通路54が過冷却されている場合、内燃機関20から第1通路54が受ける受熱量よりも、走行風による第1通路54の冷却量のほうが多くなる。そのため、ブローバイガスが第1通路54を流れていない状態で第1通路54が過冷却され続けると、第1通路54に存在する水分が凍結するおそれがある。
【0079】
第2通路55をブローバイガスが流れている場合、当該ブローバイガスが走行風によって冷やされる。第2通路55における吸気通路31との接続部分から気筒27までの最短距離は、第1通路54における吸気通路31との接続部分までの最短距離よりも長い。そのため、第2通路55が過冷却されている場合、ブローバイガスを第2通路55が流れることによって内燃機関20から第2通路55が受ける受熱量が、走行風による第2通路55の冷却量よりも多くならない。よって、第2通路55が過冷却されている状態で第2通路55をブローバイガスが流れていると、ブローバイガスに含まれる水分が第2通路55で凍結するおそれがある。
【0080】
外気温TMPが判定温度TMPth以下であること、PCVバルブ53が閉弁されていると判定されること、及び供給通路が過冷却されていると判定されることの何れもが成立していることを、「水分凍結条件」が成立しているという。本実施形態では、水分凍結条件が成立している場合に、運転状態変更処理が実行される。運転状態変更処理が実行されると、内燃機関20の出力トルクが維持されること、及び内燃機関20の運転が非過給運転になることの何れもが成立するように、変速装置12では、運転状態変更処理が実行される前よりも低速側の変速段が選択される。すなわち、変速装置12の変速比が低速側に変更される。
【0081】
こうした運転状態変更処理によって第1通路54の通路下流部分54aの圧力が規定圧未満になると、PCVバルブ53が開弁される。これにより、蓄積室51のブローバイガスが第1通路54を介して吸気通路31に供給されるようになる。すると、第1通路54を比較的高温のブローバイガスが流れるようになるため、第1通路54内が暖められる。すなわち、内燃機関20から第1通路54が受ける受熱量が走行風による第1通路54の冷却量よりも多くなる。そのため、第1通路54で水分が凍結することを抑制できる。
【0082】
一方、PCVバルブ53が開弁されて第1通路54をブローバイガスが流れるようになると、第2通路55にはブローバイガスが流れないようになる。すると、外気温TMPに近い温度の空気が吸気通路31から第2通路55に流入するようになる。当該空気が第2通路55を流れる過程で、当該空気が走行風によって大幅に冷やされることはない。その結果、第2通路55で水分が凍結しない。すなわち、本実施形態では、車両10の走行中に、第1通路54及び第2通路55で水分が凍結することを抑制できる。
【0083】
なお、本実施形態では以下に示す効果をさらに得ることができる。
(1-1)走行速度SPが判定速度SPth以上である場合には、第1通路54が過冷却されていると判定される。そして、第1通路54が過冷却されていると判定されている場合では、運転状態変更処理を実行してPCVバルブ53を開弁させることによって第1通路54で水分が凍結することを抑制できる。
【0084】
(1-2)本実施形態では、走行速度SPと機関回転数Neとを基に、第2通路55が過冷却されているか否かが判定される。そして、走行速度SPと機関回転数Neとに基づいて第2通路55が過冷却されていると判定された場合に、運転状態変更処理が実行される。これにより、第2通路55で水分が凍結することを抑制できる。
【0085】
(1-3)運転状態変更処理が実行されると、通路下流部分54aの圧力が規定圧未満となるように変速装置12によって選択される変速段が変更される。そのため、運転状態変更処理の実行によってPCVバルブ53を開弁できる。さらに、運転状態変更処理が実行されても、内燃機関20の出力トルクが維持される。したがって、走行速度SPが変化することを抑制しつつ、第1通路54及び第2通路55で水分が凍結することを抑制できる。
【0086】
(1-4)運転状態変更処理が実行されていると、高速側の変速段を変速装置12が選択しないことになる。高速側の変速段を変速装置12が選択しないことに対して車両10の運転者が不快に感じるおそれがある。また、上記水分凍結条件が成立するようになっても第1通路54及び第2通路55で水分が直ぐに凍結するわけではない。すなわち、運転状態変更処理を実行した後では、PCVバルブ53が閉弁される状態がある程度継続しても第1通路54及び第2通路55で水分が凍結しない。
【0087】
そこで、本実施形態では、運転状態変更処理と復帰処理とが交互に実行されるようにした。そのため、水分凍結条件が成立している場合でも、変速装置12が高速側の変速段を選択できる期間を設けることができる。したがって、高速側の変速段を変速装置12に選択させつつも、第1通路54及び第2通路55で水分が凍結することを抑制できる。
【0088】
(1-5)本実施形態では、上記水分凍結条件が成立してもディレイ時間TMdが経過するまでの間では、高速側の変速段を変速装置12が選択している状態を継続できる。その一方で、ディレイ時間TMdが経過すると、運転状態変更処理が実行されるため、PCVバルブ53が開弁される。これにより、高速側の変速段を変速装置12に選択させる期間を設けつつも、第1通路54及び第2通路55で水分が凍結することを抑制できる。
【0089】
(1-6)上記水分凍結条件が成立しても運転状態変更処理が実行されていない期間がある。こうした運転状態変更処理の非実行期間内に、内燃機関20の運転状態が変わってPCVバルブ53が開弁することがある。そこで、本実施形態では、運転状態変更処理の非実行期間内に内燃機関20の運転状態が変わってPCVバルブ53が開弁した場合には、運転状態変更処理の実行によってPCVバルブ53が開弁したと見なすようにしている。これにより、復帰処理を比較的早期に開始できる。すなわち、変速装置12が高速側の変速段を選択することを禁止する状態を早期に解除できる。したがって、第1通路54及び第2通路55で水分が凍結することを抑制しつつも、高速側の変速段を変速装置12が選択できる機会を増やすことができる。
【0090】
(1-7)運転者による車両10の使い方によっては、上記の累積時間TMtがある程度の時間に達しても、運転状態変更処理を実行できないことがある。このように累積時間TMtがある程度の時間に達すると、ディレイ時間TMdに達していなくても第1通路54及び第2通路55で水分が凍結し始めるおそれがある。そこで、本実施形態では、累積時間TMtが判定累積時間TMtThを越えた場合には、上記水分凍結条件が成立している状態の継続時間がディレイ時間TMdに達していなくても運転状態変更処理が開始される。これにより、運転状態変更処理が実行されないために第1通路54及び第2通路55のうちの少なくとも一方で水分が凍結することを抑制できる。
【0091】
(第2実施形態)
車両制御装置の第2実施形態を
図8に従って説明する。なお、第2実施形態では、車両制御装置の処理内容の一部などが第1実施形態と異なっている。以下の説明においては、第1実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1実施形態と同一の部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0092】
<供給通路で水分が凍結する可能性があるか否かを判定する処理>
図8を参照し、供給通路で水分が凍結する可能性があるか否かを判定する処理ルーチンについて説明する。この処理ルーチンは、制御プログラムをCPU71が繰り返し実行することにより、所定の制御サイクル毎に繰り返し実行される。
【0093】
本処理ルーチンにおいてステップS11では、CPU71は、車両10の外気温TMPが判定温度TMPth以下であるか否かを判定する。外気温TMPが判定温度TMPthよりも高い場合(S11:NO)、CPU71は処理をステップS19に移行する。一方、外気温TMPが判定温度TMPth以下である場合(S11:YES)、CPU71は処理をステップS13に移行する。
【0094】
ステップS13において、CPU71は、PCVバルブ53が閉弁しているか否かを判定する。PCVバルブ53が閉弁していないと判定した場合(S13:NO)、CPU71は処理をステップS14に移行する。一方、PCVバルブ53が閉弁していると判定した場合(S13:YES)、CPU71は処理をステップS15に移行する。
【0095】
ステップS14において、CPU71は、運転状態変更処理を実行しているか否かを判定する。運転状態変更処理を実行している場合(S14:YES)、CPU71は本処理ルーチンを一旦終了する。一方、運転状態変更処理を実行していない場合(S14:NO)、CPU71は処理をステップS19に移行する。
【0096】
ステップS15において、CPU71は、上記の2つの条件(A1)及び(A2)のうち、少なくとも一方が成立しているか否かを判定する。条件(A1)及び(A2)のうち少なくとも一方が成立している場合(S15:YES)、CPU71は処理をステップS17に移行する。一方、条件(A1)及び(A2)の何れもが成立していない場合(S15:NO)、CPU71は処理をステップS19に移行する。
【0097】
ステップS17において、CPU71は、第1実行フラグFLG1及び第2実行フラグFLG2の双方にオンをセットする。その後、CPU71は本処理ルーチンを一旦終了する。
【0098】
ステップS19において、CPU71は、第1実行フラグFLG1にオフをセットする。次のステップS21において、CPU71は、上記の累積時間TMtを減少する減少処理を実行する。例えば、CPU71は、累積時間TMtから所定の補正時間ΔTMを引いた値と、0(零)とのうち、大きい方を新たな累積時間TMtとして導出する。その後、CPU71は本処理ルーチンを一旦終了する。
【0099】
<本実施形態の作用及び効果>
本実施形態では、上記第1実施形態における効果(1-1)~(1-7)と同等の効果に加え、以下に示す効果をさらに得ることができる。
【0100】
(2-1)上記水分凍結条件が成立していない場合には、第1通路54及び第2通路55で水分が凍結しない。そこで、本実施形態では、水分凍結条件が成立していない場合には、累積時間TMtが減少される。これにより、第1通路54及び第2通路55で水分が凍結しないにも拘わらず、累積時間TMtが判定累積時間TMtTh以上となって運転状態変更処理が開始されることを抑制できる。したがって、第1通路54及び第2通路55で水分が凍結することを抑制しつつ、運転状態変更処理の実行頻度が増大することを抑制できる。
【0101】
(第3実施形態)
車両制御装置の第3実施形態を
図9及び
図10に従って説明する。なお、第3実施形態では、車両制御装置が適用される車両がハイブリッド車両である点、及び運転状態変更処理の内容などが上記複数の実施形態と異なっている。以下の説明においては、上記複数の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、上記複数の実施形態と同一の部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0102】
図9は、車両制御装置としての制御装置70が適用される車両10Aを図示している。車両10Aは、動力源として、内燃機関20及びモータジェネレータ100を備えるハイブリッド車両である。
【0103】
<供給通路で水分が凍結することを抑制する処理>
図10を参照し、供給通路で水分が凍結することを抑制するための処理ルーチンについて説明する。この処理ルーチンは、制御プログラムをCPU71が繰り返し実行することにより、所定の制御サイクル毎に繰り返し実行される。
【0104】
本処理ルーチンにおいてステップS61では、CPU71は、上記ステップS11と同様に、外気温TMPが判定温度TMPth以下であるか否かを判定する。外気温TMPが判定温度TMPth以下である場合(S61:YES)、CPU71は処理をステップS63に移行する。一方、外気温TMPが判定温度TMPthよりも高い場合(S61:NO)、CPU71は処理をステップS71に移行する。
【0105】
ステップS63において、CPU71は、上記ステップS15と同様に、上記2つの条件(A1)及び(A2)のうち、少なくとも一方が成立しているか否かを判定する。2つの条件(A1)及び(A2)のうち、少なくとも一方が成立している場合(S63:YES)、CPU71は処理をステップS65に移行する。一方、2つの条件(A1)及び(A2)の何れもが成立していない場合(S63:NO)、CPU71は処理をステップS71に移行する。
【0106】
ステップS65において、CPU71は、上記ステップS13と同様にPCVバルブ53が閉弁しているか否かを判定する。PCVバルブ53が閉弁していると判定した場合(S65:YES)、CPU71は処理をステップS69に移行する。一方、PCVバルブ53が閉弁していないと判定した場合(S65:NO)、CPU71は処理をステップS67に移行する。
【0107】
ステップS67において、CPU71は、運転状態変更処理を実行中であるか否かを判定する。運転状態変更処理を実行中である場合(S67:YES)、CPU71は本処理ルーチンを一旦終了する。すなわち、CPU71は運転状態変更処理の実行を継続する。一方、運転状態変更処理を実行していない場合(S67:NO)、CPU71は処理をステップS71に移行する。
【0108】
ステップS69において、CPU71は運転状態変更処理を実行する。すなわち、CPU71は、運転状態変更処理において、第1通路54の通路下流部分54aの圧力が規定圧未満になるように内燃機関20の運転を非過給運転とする。このように内燃機関20の運転状態を変更すると、駆動輪14に入力される駆動トルクが減少する。そのため、本実施形態では、CPU71は、運転状態変更処理において、内燃機関20の出力トルクの減少を補うようにモータジェネレータ100の出力トルクを増大させる。その後、CPU71は本処理ルーチンを一旦終了する。
【0109】
ステップS71において、CPU71は運転状態変更処理を停止する。すなわち、CPU71は、運転状態変更処理の停止前よりもモータジェネレータ100の出力トルクを減少させる一方で内燃機関20の出力トルクを増大させる。すなわち、CPU71は、内燃機関20の運転が過給運転になることを許容する。その後、CPU71は本処理ルーチンを一旦終了する。
【0110】
<本実施形態の作用及び効果>
本実施形態の作用のうち、上記複数の実施形態の作用と相違する部分を中心に説明する。
【0111】
上記水分凍結条件が成立していると、第1通路54及び第2通路55で水分が凍結するおそれがあるため、運転状態変更処理が実行される。具体的には、第1通路54の通路下流部分54aの圧力が規定圧未満になるように内燃機関20の運転が非過給運転になる。また、通路下流部分54aの圧力を減少させたことに起因する内燃機関20の出力トルクの減少を補うようにモータジェネレータ100の出力トルクが増大される。これにより、運転状態変更処理の実行に伴って車両10Aの走行速度SPが変化することを抑制できる。
【0112】
通路下流部分54aの圧力が規定圧未満になると、PCVバルブ53が開弁される。そのため、蓄積室51のブローバイガスが第1通路54を介して吸気通路31に供給されるようになる。このように第1通路54を比較的高温のブローバイガスが流れるようにすることにより第1通路54で水分が凍結することを抑制できる。PCVバルブ53が開弁されて第1通路54をブローバイガスが流れるようになると、第2通路55にはブローバイガスが流れないようになる。その結果、第2通路55で水分が凍結することを抑制できる。したがって、本実施形態では、車両10Aの走行速度SPの低下を抑制しつつ、第1通路54及び第2通路55で水分が凍結することを抑制できる。
【0113】
なお、本実施形態では、上記第1実施形態の効果(1-1)及び(1-2)と同等の効果を得ることもできる。
<変更例>
上記複数の実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記複数の実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0114】
・上記第3実施形態で実行される運転状態変更処理では、モータジェネレータ100の出力トルクを増大させるため、バッテリの蓄電量があまり多くない場合には運転状態変更処理を実行できないおそれがある。そこで、車両10Aが変速装置を備えているとき、バッテリの蓄電量が判定蓄電量以上である場合には、第3実施形態で説明した運転状態変更処理を実行することが好ましい。その一方で、バッテリの蓄電量が判定蓄電量未満である場合には、第1実施形態及び第2実施形態で説明した運転状態変更処理を実行するとよい。
【0115】
・上記第1実施形態及び第2実施形態において、車両10が備える変速装置は、無段式の変速装置であってもよい。
・上記第2実施形態では、運転状態変更処理を実行していない状況下で
図8に示したステップS11、S13及びS15の判定のうち少なくとも1つの条件が非成立である場合には、累積時間TMtを減少させるようにしていたが、これに限らない。例えば、こうした場合には累積時間TMtを0(零)にリセットするようにしてもよい。
【0116】
・上記第1実施形態において、累積時間TMtを計測しなくてもよい。
・上記第1実施形態及び第2実施形態において、運転状態変更処理と復帰処理とを交互に実行しなくてもよい。すなわち、上記水分凍結条件が成立した状態の継続時間がディレイ時間TMdに達すると、運転状態変更処理を実行し続けるようにしてもよい。
【0117】
・上記第1実施形態及び第2実施形態において、外気温TMPが判定温度TMPth以下であり、PCVバルブ53が閉弁されていると判定し、さらに供給通路が過冷却されていると判定した場合には、ディレイ時間TMdの経過を待つことなく運転状態変更処理を開始してもよい。
【0118】
・上記複数の実施形態において、過冷却判定処理は、走行速度SPが判定速度SPth以上であるか否かを判定する処理と、走行速度SPと機関回転数Neとに基づいて第2通路55が過冷却されているか否かを判定する処理との少なくとも一方のみを含む処理でもよい。
【0119】
・外気温TMPが低いほど、供給通路で水分が凍結しやすい。そこで、外気温TMPが低いほど短い時間を、ディレイ時間TMdとして設定してもよい。また、外気温TMPが低いほど短い時間を、判定累積時間TMtThとして設定してもよい。
【0120】
・外気温TMPが低いほど低い速度を、判定速度SPthとして設定してもよい。
また、外気温TMPが低いほど長い時間を、第1経過時間TM1として設定してもよい。外気温TMPが低いほど短い時間を、第2経過時間TM2として設定してもよい。
【0121】
・上記複数の実施形態では、吸気通路31のうち、スロットルバルブ32よりも下流の部分の圧力を推定し、当該圧力の推定値が規定圧以上である場合にPCVバルブ53が閉弁していると判定しているが、これに限らない。例えば、内燃機関20が、吸気通路31のうち、スロットルバルブ32よりも下流の部分の圧力を検出するセンサを備えている場合、当該センサの検出値が規定圧以上である場合にPCVバルブ53が閉弁していると判定するようにしてもよい。
【0122】
・制御装置70は、CPUとROMとを備えて、ソフトウェア処理を実行するものに限らない。すなわち、制御装置70は、以下(a)~(c)の何れかの構成であればよい。
(a)制御装置70は、コンピュータプログラムに従って各種処理を実行する一つ以上のプロセッサを備えている。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROMなどのメモリを含んでいる。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリ、すなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含んでいる。
【0123】
(b)制御装置70は、各種処理を実行する一つ以上の専用のハードウェア回路を備えている。専用のハードウェア回路としては、例えば、特定用途向け集積回路、すなわちASIC又はFPGAを挙げることができる。なお、ASICは、「Application Specific Integrated Circuit」の略記であり、FPGAは、「Field Programmable Gate Array」の略記である。
【0124】
(c)制御装置70は、各種処理の一部をコンピュータプログラムに従って実行するプロセッサと、各種処理のうちの残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備えている。
【0125】
なお、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」又は「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」又は「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0126】
10,10A…車両
12…変速装置
20…内燃機関
31…吸気通路
35…排気通路
40…過給器
41…タービン
42…コンプレッサ
50…ブローバイガス処理装置
53…PCVバルブ
54…第1通路
54a…通路下流部分
55…第2通路
70…制御装置
71…CPU
100…モータジェネレータ