IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ いすゞ自動車株式会社の特許一覧

特許7509191表示制御装置、表示制御方法及びプログラム
<>
  • 特許-表示制御装置、表示制御方法及びプログラム 図1
  • 特許-表示制御装置、表示制御方法及びプログラム 図2
  • 特許-表示制御装置、表示制御方法及びプログラム 図3
  • 特許-表示制御装置、表示制御方法及びプログラム 図4
  • 特許-表示制御装置、表示制御方法及びプログラム 図5
  • 特許-表示制御装置、表示制御方法及びプログラム 図6
  • 特許-表示制御装置、表示制御方法及びプログラム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】表示制御装置、表示制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20240625BHJP
   G01C 21/36 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
G08G1/09 Q
G01C21/36
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022199751
(22)【出願日】2022-12-14
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】竹田 愛
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-305042(JP,A)
【文献】特開2017-142756(JP,A)
【文献】特開2010-198198(JP,A)
【文献】特開2011-108175(JP,A)
【文献】特開2018-163667(JP,A)
【文献】特開2019-212190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
B60R 21/00-21/13
B60R 21/34-21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方に設置された規制標識と前記車両との距離を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記距離に基づいて、前記規制標識に対応する画像の表示部への表示を制御する表示制御部と、
前記車両の車速と定められた減速度とに基づいて第1距離を決定し、前記車両の進行方向前方の交差点において走行道路と交差する交差道路の幅よりも大きく、且つ前記第1距離よりも小さい第2距離を決定する決定部と、を有し、
前記表示制御部は、
前記規制標識が一時停止を示す場合に、前記規制標識と前記車両との距離が前記第1距離以下になったことに応じて、前記規制標識に対応する画像の表示を開始させ、
前記規制標識が進入禁止を示す場合に、前記規制標識と前記車両との距離が前記第1距離よりも小さい前記第2距離以下になったことに応じて、前記規制標識に対応する画像の表示を開始させる、
表示制御装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記規制標識に対応する識別情報を取得し、
前記表示制御部は、前記規制標識と前記車両との距離が、前記識別情報に対応する画像の表示を開始するための距離を示す表示開始距離以下になったことを条件として、前記画像を前記表示部に表示させる制御を実行する、
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、進入禁止を示す前記規制標識と前記車両との距離に基づいて前記車両が当該規制標識を通過したことを特定した場合に、前記規制標識に対応する画像と異なる警告画像を表示させる、
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項4】
進入禁止を示す前記規制標識と前記車両との距離に基づいて前記車両が当該規制標識を通過したことを特定した場合に、スピーカに警告音を出力させる警告部をさらに有する、
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項5】
前記警告部は、前記車両が進入禁止を示す前記規制標識を通過したことを特定した時刻から経過した時間と前記車両の車速とに基づいて、当該規制標識を通過した後に前記車両が走行した距離を特定し、当該距離が閾値以上である場合に前記スピーカに警告音を出力させる、
請求項4に記載の表示制御装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記車両の車速をさらに取得し、
前記表示制御部は、前記車両の車速が閾値以下である場合に、前記規制標識に対応する画像の表示を開始させる、
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項7】
プロセッサが実行する、
車両の前方に設置された規制標識と前記車両との距離を取得するステップと、
前記距離に基づいて、前記規制標識に対応する画像の表示部への表示を制御するステップと、
前記車両の車速と定められた減速度とに基づいて第1距離を決定し、前記車両の進行方向前方の交差点において走行道路と交差する交差道路の幅よりも大きく、且つ前記第1距離よりも小さい第2距離を決定するステップと、
を有し、
前記表示部への表示を制御するステップにおいて、
前記規制標識が一時停止を示す場合に、前記規制標識と前記車両との距離が前記第1距離以下になったことに応じて、前記規制標識に対応する画像の表示を開始させ、前記規制標識が進入禁止を示す場合に、前記規制標識と前記車両との距離が前記第1距離よりも小さい前記第2距離以下になったことに応じて、前記規制標識に対応する画像の表示を開始させる、
表示制御方法。
【請求項8】
プロセッサに、
車両の前方に設置された規制標識と前記車両との距離を取得するステップと、
前記距離に基づいて、前記規制標識に対応する画像の表示部への表示を制御するステップと、
前記車両の車速と定められた減速度とに基づいて第1距離を決定し、前記車両の進行方向前方の交差点において走行道路と交差する交差道路の幅よりも大きく、且つ前記第1距離よりも小さい第2距離を決定するステップと、を実行させ、
前記表示部への表示を制御するステップにおいて、
前記規制標識が一時停止を示す場合に、前記規制標識と前記車両との距離が前記第1距離以下になったことに応じて、前記規制標識に対応する画像の表示を開始させ、前記規制標識が進入禁止を示す場合に、前記規制標識と前記車両との距離が前記第1距離よりも小さい前記第2距離以下になったことに応じて、前記規制標識に対応する画像の表示を開始させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示制御装置、表示制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の電子機器は、一時停止を示す規制標識と車両との距離が所定距離以下となった場合に、その旨を運転者に通知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-60929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電子機器は、規制標識の種類によらず車両と規制標識との距離が一定の距離以下である場合に運転者に通知する。そのため、車両の進行方向前方の交差点の先に進入禁止の規制標識がある場合には、当該規制標識を認識して車両が交差点に進入する前に運転者に通知する場合がある。その結果、運転者が、交差点への進入を禁止されていると誤認してしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、進入禁止であることを適切な走行位置で運転者に通知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る表示制御装置は、車両の前方に設置された規制標識と前記車両との距離を取得する取得部と、前記取得部が取得した前記距離に基づいて、前記規制標識に対応する画像の表示部への表示を制御する表示制御部と、を有し、前記表示制御部は、前記規制標識が一時停止を示す場合に、前記規制標識と前記車両との距離が第1距離以下になったことに応じて、前記規制標識に対応する画像の表示を開始させ、前記規制標識が進入禁止を示す場合に、前記規制標識と前記車両との距離が前記第1距離よりも小さい第2距離以下になったことに応じて、前記規制標識に対応する画像の表示を開始させる。
【0007】
前記取得部は、前記規制標識に対応する識別情報を取得し、前記表示制御部は、前記規制標識と前記車両との距離が、前記識別情報に対応する画像の表示を開始するための距離を示す表示開始距離以下になったことを条件として、前記画像を前記表示部に表示させる制御を実行してもよい。
【0008】
前記表示制御部は、進入禁止を示す前記規制標識と前記車両との距離に基づいて前記車両が当該規制標識を通過したことを特定した場合に、前記規制標識に対応する画像と異なる警告画像を表示させてもよい。
【0009】
進入禁止を示す前記規制標識と前記車両との距離に基づいて前記車両が当該規制標識を通過したことを特定した場合に、スピーカに警告音を出力させる警告部をさらに有してもよい。
【0010】
前記警告部は、前記車両が進入禁止を示す前記規制標識を通過したことを特定した時刻から経過した時間と前記車両の車速とに基づいて、当該規制標識を通過した後に前記車両が走行した距離を特定し、当該距離が閾値以上である場合に前記スピーカに警告音を出力させてもよい。
【0011】
前記取得部は、前記車両の車速をさらに取得し、前記表示制御部は、前記車両の車速が閾値以下である場合に、前記規制標識に対応する画像の表示を開始させてもよい。
【0012】
前記車両の車速と定められた減速度とに基づいて前記第1距離を決定し、前記車両の進行方向前方の交差点において走行道路と交差する交差道路の幅よりも大きく、且つ前記第1距離よりも小さい前記第2距離を決定する決定部をさらに有してもよい。
【0013】
本発明の第2の態様に係る表示制御方法は、プロセッサが実行する、車両の前方に設置された規制標識と前記車両との距離を取得するステップと、前記距離に基づいて、前記規制標識に対応する画像の表示部への表示を制御するステップと、を有し、前記表示部への表示を制御するステップにおいて、前記規制標識が一時停止を示す場合に、前記規制標識と前記車両との距離が第1距離以下になったことに応じて、前記規制標識に対応する画像の表示を開始させ、前記規制標識が進入禁止を示す場合に、前記規制標識と前記車両との距離が前記第1距離よりも小さい第2距離以下になったことに応じて、前記規制標識に対応する画像の表示を開始させる。
【0014】
本発明の第3の態様に係るプログラムは、プロセッサに、車両の前方に設置された規制標識と前記車両との距離を取得するステップと、前記距離に基づいて、前記規制標識に対応する画像の表示部への表示を制御するステップと、を実行させ、前記表示部への表示を制御するステップにおいて、前記規制標識が一時停止を示す場合に、前記規制標識と前記車両との距離が第1距離以下になったことに応じて、前記規制標識に対応する画像の表示を開始させ、前記規制標識が進入禁止を示す場合に、前記規制標識と前記車両との距離が前記第1距離よりも小さい第2距離以下になったことに応じて、前記規制標識に対応する画像の表示を開始させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、進入禁止であることを適切な走行位置で運転者に通知するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る車両Sの概要を説明するための図である。
図2】記憶部22に記憶された規制標識に関する情報の一例を示す図である。
図3】一時停止を示す規制標識に対する動作を説明するための図である。
図4】進入禁止を示す規制標識に対する動作を説明するための図である。
図5】表示制御装置2における処理シーケンスの例を示す図である。
図6】変形例に係る表示制御装置2の構成を示す図である。
図7】第2表示開始距離L2を決定する動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<車両Sの概要>
図1は、本実施形態に係る車両Sの概要を説明するための図である。図1に示す車両Sは、カメラ1と、表示制御装置2と、表示部3と、スピーカ4と、を備える。車両Sは、車両Sの進行方向前方に設置された規制標識が示す規制内容をディスプレイ等の表示部3に表示する機能を有する。規制内容は、例えば、制限速度、追い越し禁止、一時停止、又は進入禁止である。
【0018】
カメラ1は、車両Sの進行方向前方を撮像して生成した撮像画像から規制標識を抽出し、当該規制標識に対応する識別情報(以下、「規制標識ID」という)及び当該規制標識と車両Sとの距離を表示制御装置2に送信する検出装置である。
【0019】
表示制御装置2は、カメラ1から取得した規制標識IDに対応する画像を表示部3に表示させる処理を実行する。画像は、例えば、規制標識IDに対応する規制標識の態様を示す画像である。表示制御装置2は、電子部品を含む筐体を有していてもよく、電子部品が実装されたプリント基板であってもよい。
【0020】
表示部3は、速度、燃料の残量、時刻又は気温等を表示するディスプレイであり、規制標識IDに対応する画像を表示制御装置2から取得して表示する。表示部3は、車両Sのインストルメンタルパネルに設けられているが、運転者が使用する情報端末に設けられていてもよい。
【0021】
スピーカ4は、表示制御装置2が出力した音を取得して出力する。スピーカ4が表示制御装置2から取得する音は、例えば、車両Sが進入禁止を示す規制標識を通過したことを運転者に警告するための音である。
【0022】
ところで、規制標識が一時停止を示す場合、表示制御装置2は、車両Sが一時停止線の所定距離だけ手前に至ったタイミングで、規制標識に対応する画像を表示部3に表示させる必要がある。しかしながら、車両Sの進行方向前方の交差点の先に進入禁止を示す規制標識がある場合、当該規制標識に対応する画像も上記のタイミングで表示させると、運転者は、交差点の進入を禁止されていると誤認する可能性がある。
【0023】
これに対して、表示制御装置2は、規制標識が進入禁止を示す場合、規制標識が一時停止を示す場合よりも車両Sが規制標識に近接したタイミングで表示部3に表示を開始させる。これにより、進入禁止を適切な走行位置で運転者に通知することになるので、交差点の先に進入禁止を示す規制標識がある場合に、運転者は交差点への進入が禁止されていると誤認することを防止できる。
以下、表示制御装置2の構成及び動作を詳細に説明する。
【0024】
<表示制御装置2の構成>
表示制御装置2は、通信部21と、記憶部22と、制御部23と、を有する。制御部23は、取得部231と、表示制御部232と、警告部233と、を有する。
【0025】
通信部21は、ネットワーク又はデジタル信号伝送バスを介して情報を送受信するための通信デバイスを含む。通信デバイスは、例えば、CAN(Controller Area Network)コントローラである。
【0026】
記憶部22は、例えば、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部22は、制御部23が実行するプログラムを記憶している。記憶部22は、規制標識に対応する画像を表示部3に表示させるための各種の情報を記憶している。
【0027】
図2は、記憶部22に記憶された規制標識に関する情報の一例を示す。図2においては、規制標識ID、表示開始距離、及び表示画像名が関連付けられている。表示開始距離は、規制標識に対応する画像の表示を表示部3に開始させる、規制標識と車両Sとの距離である。表示画像名は、表示部3に表示させる画像の画像データ名であり、記憶部22内のアドレスに関連付けられた画像データのファイル名である。制御部23は、表示画像名を指定することにより画像データにアクセスすることができる。
【0028】
制御部23は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はECU(Electronic Control Unit)等のプロセッサである。制御部23は、記憶部22に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部231、表示制御部232及び警告部233として機能する。なお、制御部23は、1つのプロセッサで構成されていてもよいし、複数のプロセッサ又は1以上のプロセッサと電子回路との組み合わせにより構成されていてもよい。
以下、制御部23により実現される各部の構成を説明する。
【0029】
取得部231は、車両Sの進行方向前方に設置された規制標識と車両Sとの距離、及び規制標識に対応する規制標識IDを取得する。例えば、取得部231は、カメラ1から通信部21を介して、規制標識と車両Sとの距離、及び規制標識IDを取得し、取得した時刻に関連付けて記憶部22に記憶させる。取得部231は、カメラ1から通信部21を介して、規制標識を示す情報を受け付ける受付部であるともいえる。
【0030】
取得部231は、車両Sの車速をさらに取得してもよい。例えば、取得部231は、車両Sが備える車速センサ(不図示)から車両Sの車速を取得し、取得した時刻に関連付けて記憶部22に記憶させる。
【0031】
表示制御部232は、取得部231が取得した距離に基づいて、カメラ1により抽出された規制標識に対応する画像を表示部3へ表示させる制御を実行する。表示制御部232は、取得部231が取得した距離が、規制標識IDに対応する画像の表示を開始するための距離を示す表示開始距離以下になったことを条件として、画像を表示部3に表示させる。すなわち、表示制御部232は、カメラ1が抽出した規制標識に対応する画像を、車両Sと当該規制標識との距離が当該規制標識に対応する所定の距離以下になったことに応じて、表示部3に表示させる、といえる。
【0032】
例えば、表示制御部232は、図2に示す規制標識に関する情報を参照することにより、取得部231が取得した規制標識IDに対応する表示開始距離を特定し、取得部231が取得した距離が、特定した表示開始距離以下であるか否かを判定する。表示制御部232は、表示開始距離以下であるか否かの判定結果と判定した時刻とを記憶部22に記憶させる。
【0033】
続いて、表示制御部232は、記憶部22を参照することにより、現在時刻の前の判定時刻の判定結果を特定する。現在時刻の前の判定時刻の判定結果が「表示開始距離より大きい」であり、且つ現在時刻の判定結果が「表示開始距離以下」である場合、表示制御部232は、図2を参照することにより、規制標識IDに対応する「表示画像名」が示す画像を表示部3に表示させる。表示制御部232がこのように動作することで、規制標識の種別ごとに、表示を開始させる位置を設定できる。
【0034】
表示制御部232は、規制標識IDに対応する規制標識が一時停止を示す場合に、規制標識と車両Sとの距離が第1表示開始距離L1以下になったことを条件として、規制標識に対応する画像の表示を開始させる。すなわち、表示制御部232は、カメラ1により抽出された規制標識が一時停止を示す場合に、当該規制標識と車両Sとの距離が第1表示開始距離L1以下になったことに応じて、当該規制標識に対応する画像の表示を開始させる。第1表示開始距離L1は、車両Sが一時停止線の手前で停止することが可能な距離であり、例えば、時速40kmの車両Sが毎秒1.5mの減速度で減速を開始してから停止するまでの距離(おそよ42m)である。
【0035】
図3は、一時停止を示す規制標識に対する動作を説明するための図である。図3においては、道路Aを走行する車両Sの進行方向前方に一時停止を示す標識R1が設置されており、標識R1に対応する一時停止線K1が設けられている。表示制御部232は、例えば、車両Sの先端が位置F1に到達した時刻において、標識R1と車両Sとの距離が第1表示開始距離L1以下になったことを特定し、標識R1に対応する画像の表示を開始させる。
【0036】
表示制御部232は、規制標識IDに対応する規制標識が進入禁止を示す場合に、規制標識と車両Sとの距離が第1表示開始距離L1よりも小さい第2表示開始距離L2以下になったことを条件として、規制標識に対応する画像の表示を開始させる。すなわち、表示制御部232は、カメラ1により抽出された規制標識が進入禁止を示す場合に、規制標識と車両Sとの距離が第1表示開始距離L1よりも小さい第2表示開始距離L2以下になったことに応じて、規制標識に対応する画像の表示を開始させる。第2表示開始距離L2の詳細については、後述する。
【0037】
図4は、進入禁止を示す規制標識に対する動作を説明するための図である。図4においては、道路A(すわなち走行道路)を走行する車両Sの進行方向前方の交差点Tの先に、道路Cへの進入禁止を示す標識R2が設置されている。車両Sと交差点Tとの間には、交差点Tに対する道路A上の車両停止線K2が設けられている。図4において、取得部231が取得した距離が第1表示開始距離L1以下になったことを条件として画像の表示を開始させた場合、運転者は、位置F1に車両Sの先頭がある時刻から画像を視認できる。この場合、運転者は、交差点Tへの進入を禁止されていると誤認する可能性がある。
【0038】
これに対して、表示制御部232は、標識R2が進入禁止を示すことにより、取得部231が取得した距離が第2表示開始距離L2以下になったことを条件として画像の表示を開始させる。第2表示開始距離L2は、車両Sの進行方向前方の交差点の先に規制標識がある場合であっても、運転者が、当該交差点への進入を禁止されていると誤認しない距離である。具体的には、第2表示開始距離L2は、交差点において走行道路と交差する交差道路の幅、及び当該交差点において走行道路に設けられた停止線と交差道路の路肩との距離の合計(例えば17m)である。
【0039】
表示制御部232がこのように動作することで、運転者は、車両停止線K2に車両Sの先頭がある時刻から画像を視認できるため、車両Sが交差点の手前で誤って停止することを防ぐことができる。
【0040】
表示制御部232が一時停止又は進入禁止を示す規制標識を表示させた場合、車両Sの運転者は、車両Sの速度を減速するための操作を行い安全に走行しようとする蓋然性が高い。しかし、車両Sが高速道路を走行中に、カメラ1が一時停止又は進入禁止を示す規制標識を誤検出し、表示制御装置2が表示部3に画像を表示させた場合は、運転者が車両Sの速度を減速するための操作を行うと危険である。
【0041】
そこで、表示制御部232は、車両Sの車速が閾値以下である場合に、規制標識に対応する画像の表示を開始させてもよい。閾値は、高速道路の最低制限速度よりも小さい速度であり、例えば、最低制限速度が時速50kmである場合、閾値は時速40kmである。表示制御部232は、例えば、取得部231が取得した距離が表示開始距離以下になった時刻に取得部231が取得した車両Sの車速が閾値以下である場合は、表示部3に画像の表示を開始させる。一方、表示制御部232は、取得部231が取得した距離が表示開始距離以下になった時刻に取得部231が取得した車両Sの車速が閾値より大きい場合は、表示部3に画像の表示を開始させない。その結果、車両Sが高速道路を走行中に規制標識を誤検出した場合であっても、運転者は安全に運転できる。
【0042】
ところで、カメラ1が進入禁止を示す規制標識を検出し、表示制御部232が規制標識に対応する画像を表示部3に表示させたとしても、車両Sが規制標識を通過して走行してしまう場合がある。そこで、表示制御部232は、進入禁止を示す規制標識と車両Sとの距離に基づいて車両Sが当該規制標識を通過したことを特定した場合に、規制標識に対応する画像と異なる警告画像を表示させる。警告画像は、例えば「危険」又は「止まれ」を示す文字、マークなどを含む画像である。
【0043】
例えば、表示制御部232は、取得部231が取得した距離がゼロを示すことにより車両Sが規制標識を通過した(すなわち車両Sが進入禁止の道路に進入した)ことを特定し、警告画像を表示部3に表示させる。表示制御部232がこのように動作することで、車両Sが進入禁止の道路に進入したことを運転者に知らせることができる。なお、表示制御部232が通過を判断する距離は、ゼロに限らず、あらかじめ運転手や管理者によって設定されたゼロより大きい通過閾値を取ることも可能である。この場合、取得部231が取得した距離が通過閾値以下であり、かつ、車両Sの速度が所定の速度以上である場合に、表示制御部232は、車両Sが規制標識を通過したと特定する。また、取得部231が取得した距離が通過閾値以下であっても、車両Sの速度が所定の速度未満である場合に、表示制御部232は、車両Sが停止することが可能な状態であるとして、規制標識を通過したと特定しない。
【0044】
警告部233は、進入禁止を示す規制標識と車両Sとの距離に基づいて車両Sが当該規制標識を通過したことを特定した場合に、スピーカ4に警告音を出力させる。警告音は、ビープ音のような単音でもよいし、「危険です」又は「停止してください」を示す音声でもよい。
【0045】
例えば、警告部233は、取得部231が取得した距離がゼロを示すことにより車両Sが規制標識を通過した(すなわち車両Sが進入禁止の道路に進入した)ことを特定し、警告音をスピーカ4に出力させる。警告部233がこのように動作することで、車両Sが進入禁止の道路に進入したことを運転者が知る蓋然性を高くできる。
【0046】
車両Sが進入禁止の道路に進入する直前で、運転者が進入禁止を示す規制標識に気付いて車両Sを停止又は右左折させる操作を行った場合、取得部231が取得した距離がゼロを示すことにより警告部233が警告音を出力させる場合がある。
【0047】
そこで、警告部233は、車両Sが進入禁止を示す規制標識を通過したことを特定した時刻から経過した時間と車両Sの車速とに基づいて、当該規制標識を通過した後に車両Sが走行した距離を特定する。そして、警告部233は、特定した距離が閾値以上である場合にスピーカ4に警告音を出力させてもよい。閾値は、例えば、車両Sの長さよりも大きい距離である。
【0048】
警告部233は、例えば、取得部231が取得した距離がゼロを示した時刻と現在の時刻との差と、取得部231が取得した車両Sの車速とに基づいて、車両Sが規制標識を通過した後に走行した距離を特定する。警告部233は、特定した距離が閾値以上である場合はスピーカ4に警告音を出力させ、特定した距離が閾値未満である場合はスピーカ4に警告音を出力させない。警告部233がこのように動作することで、スピーカ4に誤って警告音を出力させることを防ぐことができる。
【0049】
<表示制御装置2における処理シーケンス>
図5は、表示制御装置2における処理シーケンスの例を示す図である。図5に示す処理シーケンスは、一例として、カメラ1から取得した規制標識ID及び距離に基づいて規制標識に対応する画像の表示を開始するか否かを判定する動作を示している。表示制御装置2は、図5に示す処理シーケンスを一定時間ごとに繰り返す。
【0050】
まず、取得部231は、カメラ1から、規制標識ID及び規制標識と車両Sとの距離を取得する(S11)。表示制御部232は、記憶部22を参照することにより、取得部231が取得した規制標識IDに対応する規制標識を特定する(S12)。
【0051】
表示制御部232は、記憶部22を参照することにより、特定した規制標識に対応する画像を表示部3が表示しているか否かを判定する。表示制御部232が、特定した規制標識に対応する画像を表示部3が表示していると判定した場合(S13のNO)表示制御装置2は、処理をステップS11に戻す。一方、特定した規制標識に対応する画像を表示部3が表示していないと判定した場合(S13のYES)、表示制御装置2は、処理をステップS14に進める。
【0052】
特定した規制標識が一時停止を示す場合(S14のYES)、表示制御部232は、取得部231がカメラ1から取得した距離が、規制標識に対応する第1表示開始距離L1以下であるか否かを特定する(S15)。カメラ1から取得した距離が第1表示開始距離L1以下である場合(S15のYES)、表示制御部232は、規制標識に対応する画像の表示を表示部3に開始させる(S16)。一方、表示制御部232は、カメラ1から取得した距離が第1表示開始距離L1より大きい場合(S15のNO)、規制標識に対応する画像の表示を表示部3に開始させない。
【0053】
特定した規制標識が一時停止ではない場合(S14のNO)、表示制御部232は、当該規制標識が進入禁止を示すか否かを特定する(S17)。特定した規制標識が進入禁止ではない場合(S17のNO)、表示制御装置2は、処理をステップS19に進める。特定した規制標識が進入禁止を示す場合(S17のYES)、表示制御部232は、取得部231がカメラ1から取得した距離が、規制標識に対応する第2表示開始距離L2以下であるか否かを特定する(S18)。
【0054】
カメラ1から取得した距離が第2表示開始距離L2以下である場合(S18のYES)、表示制御部232は、規制標識に対応する画像の表示を表示部3に開始させる(S16)。一方、カメラ1から取得した距離が第2表示開始距離L2より大きい場合(S18のNO)、表示制御部232は、規制標識に対応する画像の表示を表示部3に開始させない。
【0055】
表示制御装置2は、処理を終了する操作が行われていない場合(S19のNO)、ステップS11からステップS18までの処理を繰り返す。処理を終了する操作が行われた場合(S19のYES)、表示制御装置2は、処理を終了する。
【0056】
<変形例>
以上の説明においては、カメラ1から取得した規制標識と車両Sとの距離が、記憶部22に記憶された表示開始距離以下であるか否かを特定する動作を例示したが、これに限らない。表示制御装置2は、カメラ1から取得した規制標識IDに対応する規制標識ごとに表示開始距離を決定してもよい。図6は、変形例に係る表示制御装置2の構成を示す図である。図6に示す表示制御装置2は、決定部234を有する点で図1に示す表示制御装置2と異なり、他の点において同じである。
【0057】
決定部234は、車両Sの車速と定められた減速度とに基づいて第1表示開始距離L1を決定する。例えば、決定部234は、記憶部22を参照することにより、現在の時刻において取得部231が取得した規制標識IDを、現在の時刻よりも前の時刻に取得したか否かを特定する。現在の時刻よりも前の時刻に取得していない場合、決定部234は、現在の時刻において取得部231が取得した車速で走行する車両Sが、記憶部22に記憶された減速度で減速を開始してから停止するまでの距離を特定し、特定した距離を第1表示開始距離L1に決定する。
【0058】
決定部234は、車両Sの進行方向前方の交差点において走行道路と交差する交差道路の幅よりも大きく、且つ第1表示開始距離L1よりも小さい第2表示開始距離L2を決定する。
【0059】
図7は、第2表示開始距離L2を決定する動作を説明するための図である。図7においては、道路A(すなわち走行道路)を走行する車両Sの進行方向前方の交差点Tの先に、道路Cへの進入禁止を示す標識R2が設置されている。さらに、図7には、道路B(すなわち交差道路)の車幅M1、及び道路Bの路肩から交差点Tに対する道路A上の車両停止線K2までの距離M2が示されている。
【0060】
決定部234は、例えば、車両が有するGPS(Global Positioning System)ユニット(不図示)がGPS衛星から受信した電波に基づいて算出した車両Sの位置(例えば、緯度・経度)を取得する。決定部234は、記憶部22に記憶された地図情報を参照することにより、取得した車両Sの位置から進行方向前方にある交差点Tの車幅M1及び距離M2を特定する。決定部234は、車幅M1と距離M2とを合計した距離を第2表示開始距離として決定する。上記のように、決定部234が表示開始距離を決定することで、表示制御部232は、車両Sが走行する位置に適した表示開始距離を用いることができる。
【0061】
<表示制御装置2による効果>
以上説明したように、表示制御装置2は、車両Sの進行方向前方に設置された規制標識と車両Sとの距離を取得する取得部231と、規制標識に対応する画像を表示部3に表示させる表示制御部232と、を有する。そして、表示制御部232は、規制標識が進入禁止を示す場合に、規制標識と車両Sとの距離が第1表示開始距離L1よりも小さい第2表示開始距離L2以下になったことを条件として、規制標識に対応する画像の表示を開始させる。
【0062】
表示制御装置2がこのように構成されることで、進入禁止であることを適切な走行位置で運転者に通知することができるため、運転者が交差点の手前で誤って停止することを防ぐことができる。その結果、運転者は、表示部3が表示した画像に基づいて安全に車両Sを操作することができる。
【0063】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0064】
1 カメラ
2 表示制御装置
3 表示部
4 スピーカ
21 通信部
22 記憶部
23 制御部
231 取得部
232 表示制御部
233 警告部
234 決定部
【要約】
【課題】進入禁止であることを適切な走行位置で運転者に通知する。
【解決手段】表示制御装置2は、車両の前方に設置された規制標識と車両との距離を取得する取得部231と、取得部231が取得した距離に基づいて、規制標識に対応する画像の表示部3への表示を制御する表示制御部232と、を有し、表示制御部232は、規制標識が一時停止を示す場合に、規制標識と車両との距離が第1距離以下になったことに応じて、規制標識に対応する画像の表示を開始させ、規制標識が進入禁止を示す場合に、規制標識と車両との距離が第1距離よりも小さい第2距離以下になったことに応じて、規制標識に対応する画像の表示を開始させる。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7