(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】固体電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 9/028 20060101AFI20240625BHJP
H01G 9/055 20060101ALI20240625BHJP
H01G 9/15 20060101ALI20240625BHJP
H01G 9/048 20060101ALN20240625BHJP
【FI】
H01G9/028 F
H01G9/055 103
H01G9/15
H01G9/048 F
(21)【出願番号】P 2022531872
(86)(22)【出願日】2021-06-16
(86)【国際出願番号】 JP2021022848
(87)【国際公開番号】W WO2021261351
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2020109712
(32)【優先日】2020-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】真野 響太郎
(72)【発明者】
【氏名】福田 恭丈
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-186684(JP,A)
【文献】特開平04-276613(JP,A)
【文献】特開昭61-163630(JP,A)
【文献】特表2016-510944(JP,A)
【文献】国際公開第01/075917(WO,A1)
【文献】特開2008-135444(JP,A)
【文献】特開2001-143968(JP,A)
【文献】特開2003-188052(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110444401(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/028
H01G 9/055
H01G 9/15
H01G 9/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に多孔質部を有する弁作用金属基体と、
前記多孔質部の表面上に設けられた誘電体層と、
前記誘電体層の表面上に設けられた固体電解質層と、
前記固体電解質層の表面上に設けられた導電層と、
前記導電層の表面上に設けられた陰極引き出し層と、を厚み方向に備え、
前記厚み方向から見たとき、前記固体電解質層は、前記固体電解質層の中心を含む中央領域と、前記中央領域の周囲に位置し、かつ、前記固体電解質層の外縁のすべてを含む外周領域と、を有し、
前記厚み方向における前記多孔質部の最高点を含み、かつ、前記厚み方向に直交する基準面に対して、前記厚み方向の高さを定義したとき、前記外周領域は、前記中央領域の周囲にわたって前記中央領域よりも高く、
前記導電層は、前記固体電解質層の少なくとも前記中央領域上に設けられている、ことを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項2】
前記外周領域の最高点の高さは、前記中央領域の最高点の高さよりも2μm以上大きい、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
前記固体電解質層は、前記中央領域において複数の突起を表面に有し、
前記複数の突起の頂点は、前記外周領域よりも低い、請求項1又は2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
前記複数の突起の頂点の間隔は、170μm以下である、請求項3に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項5】
前記複数の突起の頂点の高さは、2μm以上である、請求項4に記載の固体電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
固体電解コンデンサは、例えば、弁作用金属からなる陽極の表面上に誘電体層を形成した後、誘電体層を介して陽極に対向するように陰極を形成することにより作製される。陰極を形成する際には、例えば、誘電体層の表面上に固体電解質層を形成した後、固体電解質層の表面上に導電層(導電体層とも言う)を形成する。
【0003】
例えば、特許文献1には、第1のシートを準備する工程と、第2のシートを準備する工程と、第1のシートを絶縁材料により被覆する工程と、第1のシートに導電体層を形成する工程と、積層シートを作製する工程と、積層ブロック体を作製する工程と、積層ブロック体を切断することにより、複数個の素子積層体を作製する工程と、第1の外部電極及び第2の外部電極を形成する工程とを備える、固体電解コンデンサの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の固体電解コンデンサの製造方法では、表面に誘電体層が形成された弁作用金属基体、及び、誘電体層上に設けられた固体電解質層を有する第1のシートに対して、固体電解質層上に導電性ペーストを塗工することにより導電体層を形成した後、金属箔からなる第2のシートを積層している。しかしながら、導電体層を構成する導電性ペーストの塗工量が多い状態で第2のシートを積層したり、強い押圧力で第2のシートを積層したりすると、導電体層が第1のシート上で押し広げられて外部に漏れ出すおそれがある。そのため、得られる固体電解コンデンサにおいて封止欠陥が生じることで、外部からの水分侵入による劣化等で長期信頼性が低下したり、外部電極形成時のめっき液侵入による内部材料の溶解等で品質が低下したりするおそれがある。これに対して、導電体層が漏れ出さないようにするために、導電体層を構成する導電性ペーストの塗工量が少ない状態で第2のシートを積層したり、低い押圧力で第2のシートを積層したりすると、導電体層が第1のシート上で押し広げられず、固体電解質層と導電体層との接触面積が小さくなるため、得られる固体電解コンデンサの抵抗が高くなるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、導電層の漏れを防止しつつ、低抵抗化が可能な固体電解コンデンサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の固体電解コンデンサは、表面に多孔質部を有する弁作用金属基体と、上記多孔質部の表面上に設けられた誘電体層と、上記誘電体層の表面上に設けられた固体電解質層と、上記固体電解質層の表面上に設けられた導電層と、上記導電層の表面上に設けられた陰極引き出し層と、を厚み方向に備え、上記厚み方向から見たとき、上記固体電解質層は、上記固体電解質層の中心を含む中央領域と、上記中央領域の周囲に位置し、かつ、上記固体電解質層の外縁のすべてを含む外周領域と、を有し、上記厚み方向における上記多孔質部の最高点を含み、かつ、上記厚み方向に直交する基準面に対して、上記厚み方向の高さを定義したとき、上記外周領域は、上記中央領域の周囲にわたって上記中央領域よりも高く、上記導電層は、上記固体電解質層の少なくとも上記中央領域上に設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、導電層の漏れを防止しつつ、低抵抗化が可能な固体電解コンデンサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態1の固体電解コンデンサを示す斜視模式図である。
【
図2】
図1中の線分A1-A2に対応する部分を示す断面模式図である。
【
図3】
図1に示した樹脂成形体の一部を分解して示す斜視模式図である。
【
図4】
図3に対して導電層及び陰極引き出し層が除かれた状態を示す斜視模式図である。
【
図5】
図3中の線分B1-B2に対応する部分の一部を示す断面模式図である。
【
図6】本発明の実施形態1の変形例の固体電解コンデンサを示す断面模式図である。
【
図7】本発明の実施形態2の固体電解コンデンサにおいて、樹脂成形体の一部を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の固体電解コンデンサについて説明する。なお、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更されてもよい。また、以下において記載する個々の好ましい構成を複数組み合わせたものもまた本発明である。
【0011】
以下に示す各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示す構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。実施形態2以降では、実施形態1と共通の事項についての記載は省略し、異なる点を主に説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態毎に逐次言及しない。以下の説明において、各実施形態を特に区別しない場合、単に「本発明の固体電解コンデンサ」と言う。
【0012】
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1の固体電解コンデンサを示す斜視模式図である。
【0013】
図1に示すように、固体電解コンデンサ1は、樹脂成形体9と、第1外部電極11と、第2外部電極13と、を有している。
【0014】
本明細書中、長さ方向、厚み方向、及び、幅方向を、
図1等に示すように、各々、L、T、及び、Wで定められる方向とする。ここで、長さ方向Lと厚み方向Tと幅方向Wとは、互いに直交している。
【0015】
樹脂成形体9は、略直方体状であり、長さ方向Lに対向する第1端面9a及び第2端面9bと、厚み方向Tに対向する第1主面9c及び第2主面9dと、幅方向Wに対向する第1側面9e及び第2側面9fと、を有している。
【0016】
樹脂成形体9の第1端面9a及び第2端面9bは、長さ方向Lに厳密に直交している必要はない。また、樹脂成形体9の第1主面9c及び第2主面9dは、厚み方向Tに厳密に直交している必要はない。更に、樹脂成形体9の第1側面9e及び第2側面9fは、幅方向Wに厳密に直交している必要はない。
【0017】
第1外部電極11は、樹脂成形体9の第1端面9a上に設けられている。第1外部電極11は、樹脂成形体9の第1端面9aから、第1主面9c、第2主面9d、第1側面9e、及び、第2側面9fの少なくとも一面における、各面の一部にわたって延在していてもよい。
【0018】
第2外部電極13は、樹脂成形体9の第2端面9b上に設けられている。第2外部電極13は、樹脂成形体9の第2端面9bから、第1主面9c、第2主面9d、第1側面9e、及び、第2側面9fの少なくとも一面における、各面の一部にわたって延在していてもよい。
【0019】
図2は、
図1中の線分A1-A2に対応する部分を示す断面模式図である。
【0020】
図2に示すように、樹脂成形体9は、複数のコンデンサ素子20と、複数のコンデンサ素子20の周囲を封止する封止樹脂8と、を有している。より具体的には、樹脂成形体9は、複数のコンデンサ素子20が厚み方向Tに積層されてなる積層体30と、積層体30の周囲を封止する封止樹脂8と、を有している。
【0021】
積層体30において、コンデンサ素子20同士は、導電性接着層を介して互いに接合されていてもよい。
【0022】
樹脂成形体9は、複数のコンデンサ素子20を有していることが好ましいが、1つのコンデンサ素子20を有していてもよい。
【0023】
樹脂成形体9の底部には、ガラスエポキシ基板等の支持基板が設けられていてもよい。支持基板が設けられている場合、支持基板の底面が樹脂成形体9の第1主面9cを構成することになる。
【0024】
コンデンサ素子20は、陽極3と、誘電体層5と、陰極7と、を有している。陽極3と陰極7とは、誘電体層5を介して対向している。陽極3は、樹脂成形体9の第1端面9aから露出している。陰極7、ここでは、後述する陰極引き出し層7cは、樹脂成形体9の第2端面9bから露出している。
【0025】
陽極3は、弁作用金属基体3aを中心に有している。
【0026】
弁作用金属基体3aを構成する弁作用金属としては、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウム、マグネシウム、ケイ素等の金属単体、これらの金属単体の少なくとも1種を含有する合金等が挙げられる。中でも、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。
【0027】
弁作用金属基体3aの形状は、平板状であることが好ましく、箔状であることがより好ましい。
【0028】
弁作用金属基体3aは、多孔質部3bを表面に有している。
【0029】
多孔質部3bは、弁作用金属基体3aが塩酸等によりエッチング処理されたエッチング層であることが好ましい。
【0030】
エッチング処理前の弁作用金属基体3aの厚みは、好ましくは60μm以上であり、また、好ましくは180μm以下である。エッチング処理後の状態において、エッチングされていない弁作用金属基体3aの芯部の厚みは、好ましくは10μm以上であり、また、好ましくは70μm以下である。多孔質部3bの厚みは、固体電解コンデンサ1に要求される耐電圧、静電容量等に合わせて設計されるが、
図2に示した断面において、弁作用金属基体3aの両側に設けられた多孔質部3bの合計厚みは、好ましくは10μm以上であり、また、好ましくは120μm以下である。なお、多孔質部3bは、弁作用金属基体3aの一方の主面上に設けられていてもよい。
【0031】
誘電体層5は、多孔質部3bの表面上に設けられている。
【0032】
誘電体層5は、上述した弁作用金属の酸化皮膜からなることが好ましい。例えば、弁作用金属基体3aがアルミニウム箔である場合、弁作用金属基体3aに対して、ホウ酸、リン酸、アジピン酸、又は、これらのナトリウム塩、アンモニウム塩等を含む水溶液中で陽極酸化処理を行うことにより、誘電体層5となる酸化皮膜が形成される。誘電体層5は多孔質部3bの表面に沿って形成されるため、結果的に、誘電体層5には細孔(凹部)が設けられることになる。
【0033】
誘電体層5の厚みは、固体電解コンデンサ1に要求される耐電圧、静電容量等に合わせて設計されるが、好ましくは10nm以上であり、また、好ましくは100nm以下である。
【0034】
陰極7は、固体電解質層7aと、導電層7bと、陰極引き出し層7cと、を有している。
【0035】
固体電解質層7aは、誘電体層5の表面上に設けられている。
【0036】
固体電解質層7aの構成材料としては、例えば、ピロール類、チオフェン類、アニリン類等を骨格とした導電性高分子等が挙げられる。チオフェン類を骨格とした導電性高分子としては、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)が挙げられ、ドーパントとなるポリスチレンスルホン酸(PSS)と複合化させたPEDOT:PSSであってもよい。
【0037】
固体電解質層7aは、例えば、3,4-エチレンジオキシチオフェン等のモノマーを含む処理液を用いて、誘電体層5の表面上にポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)等の重合膜を形成する方法、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)等のポリマーの分散液を誘電体層5の表面に塗工した後で乾燥させる方法、等により形成される。固体電解質層7aは、上述した処理液又は分散液を、スクリーン印刷法、スポンジ転写法、インクジェット印刷法、浸漬塗布法、ディスペンサ塗布法、スプレー塗布法等の方法、好ましくはスクリーン印刷法で誘電体層5の表面に塗工することにより、所定の領域に形成される。なお、固体電解質層7aとして、誘電体層5の細孔(凹部)を充填する内層用の固体電解質層を形成した後、誘電体層5の全体を被覆する外層用の固体電解質層を形成することが好ましい。
【0038】
固体電解質層7aの形態については、後述する。
【0039】
導電層7bは、固体電解質層7aの表面上に設けられている。
【0040】
導電層7bは、例えば、カーボンペースト、グラフェンペースト、又は、銀ペーストのような導電性ペーストを、スクリーン印刷法、スポンジ転写法、インクジェット印刷法、浸漬塗布法、ディスペンサ塗布法、スプレー塗布法等の方法で固体電解質層7aの表面に塗工することにより形成される。
【0041】
導電層7bは、上述した方法により形成される、カーボン層、グラフェン層、又は、銀層であることが好ましい。また、導電層7bは、カーボン層又はグラフェン層上に銀層が設けられた複合層であってもよいし、カーボンペースト又はグラフェンペーストと銀ペーストとが混合された混合層であってもよい。
【0042】
導電層7bの厚みは、好ましくは2μm以上であり、また、好ましくは20μm以下である。
【0043】
陰極引き出し層7cは、導電層7bの表面上に設けられている。
【0044】
陰極引き出し層7cは、例えば、金属箔、樹脂電極層等により構成される。
【0045】
陰極引き出し層7cが金属箔である場合、その金属箔は、アルミニウム、銅、銀、及び、これらの金属の少なくとも1種を主成分として含有する合金からなる群より選択される少なくとも1種の金属からなることが好ましい。金属箔が上述した金属からなると、金属箔の抵抗が低くなるため、固体電解コンデンサ1の等価直列抵抗(ESR)が低くなりやすい。
【0046】
金属箔としては、例えば、スパッタ、蒸着等の成膜方法によりカーボンコート、チタンコート等が表面に施された金属箔を用いてもよい。中でも、カーボンコートされたアルミニウム箔が好ましく用いられる。
【0047】
金属箔の厚みは、製造工程でのハンドリング性向上、小型化、ESR低減の観点から、好ましくは20μm以上であり、また、好ましくは50μm以下である。
【0048】
陰極引き出し層7cが樹脂電極層である場合、その樹脂電極層は、例えば、導電成分と樹脂成分とを含む導電性ペーストを、スクリーン印刷法、スポンジ転写法、インクジェット印刷法、浸漬塗布法、ディスペンサ塗布法、スプレー塗布法等の方法で導電層7bの表面に塗工することにより形成される。
【0049】
陰極引き出し層7cの形成時に用いられる導電性ペーストは、導電成分の主成分として、銀、銅、又は、ニッケルを含むことが好ましい。
【0050】
陰極引き出し層7cを上述したような印刷法で形成する場合、金属箔よりも薄くすることができる。例えば、陰極引き出し層7cをスクリーン印刷法で形成する場合、20μm以下の厚みにすることができる。
【0051】
陰極引き出し層7cは、導電層7bが乾燥前の粘性のある状態で、導電層7bの表面上に形成されることが好ましい。
【0052】
陰極引き出し層7cは、絶縁性接着層10を介して、誘電体層5に接合されていることが好ましい。これにより、陰極引き出し層7cの位置が固定されやすくなる。
【0053】
厚み方向Tから見たとき、絶縁性接着層10は、固体電解質層7aを囲むように設けられていることが好ましい。
【0054】
絶縁性接着層10は、例えば、絶縁性樹脂等の絶縁材料を誘電体層5の表面に塗工することにより、所定の領域に形成される。
【0055】
以上のように、固体電解コンデンサ1を構成するコンデンサ素子20は、多孔質部3bを表面に有する弁作用金属基体3aと、誘電体層5と、固体電解質層7aと、導電層7bと、陰極引き出し層7cと、を厚み方向Tに有している。
【0056】
封止樹脂8は、少なくとも樹脂を含み、樹脂及びフィラーを含むことが好ましい。
【0057】
封止樹脂8中の樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、液晶ポリマー等が好ましく用いられる。
【0058】
封止樹脂8中のフィラーとしては、シリカ粒子、アルミナ粒子等が好ましく用いられる。
【0059】
封止樹脂8としては、固形エポキシ樹脂とフェノール樹脂とシリカ粒子とを含む材料が好ましく用いられる。
【0060】
樹脂成形体9の成形方法としては、固形の封止樹脂8を用いる場合、コンプレッションモールド、トランスファーモールド等の樹脂モールドが好ましく用いられ、コンプレッションモールドがより好ましく用いられる。また、液状の封止樹脂8を用いる場合、ディスペンサ塗布法、印刷法等の成形方法が好ましく用いられる。中でも、コンプレッションモールドにより積層体30の周囲を封止樹脂8で封止して、樹脂成形体9とすることが好ましい。
【0061】
樹脂成形体9では、角部に丸みが付けられていてもよい。樹脂成形体9の角部に丸みを付ける方法としては、例えば、バレル研磨等が用いられる。
【0062】
第1外部電極11は、樹脂成形体9の第1端面9aから露出した陽極3に接続されている。
【0063】
第2外部電極13は、樹脂成形体9の第2端面9bから露出した陰極7、ここでは、陰極引き出し層7cに接続されている。
【0064】
第1外部電極11及び第2外部電極13は、各々、スクリーン印刷法、スポンジ転写法、インクジェット印刷法、浸漬塗布法、ディスペンサ塗布法、スプレー塗布法、刷毛塗り法、ドロップキャスト法、静電塗装法、めっき法、及び、スパッタ法からなる群より選択される少なくとも1種の方法により形成されることが好ましい。
【0065】
第1外部電極11は、導電成分と樹脂成分とを含む樹脂電極層を有することが好ましい。第1外部電極11が樹脂電極層を有することにより、第1外部電極11と封止樹脂8との密着性が高まるため、信頼性が向上する。
【0066】
第2外部電極13は、導電成分と樹脂成分とを含む樹脂電極層を有することが好ましい。第2外部電極13が樹脂電極層を有することにより、第2外部電極13と封止樹脂8との密着性が高まるため、信頼性が向上する。
【0067】
樹脂電極層の導電成分は、銀、銅、ニッケル、錫等の金属単体、これらの金属単体の少なくとも1種を含有する合金等を主成分として含むことが好ましい。
【0068】
樹脂電極層の樹脂成分は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等を主成分として含むことが好ましい。
【0069】
樹脂電極層は、例えば、スクリーン印刷法、スポンジ転写法、インクジェット印刷法、浸漬塗布法、ディスペンサ塗布法、スプレー塗布法、刷毛塗り法、ドロップキャスト法、静電塗装法等の方法により形成される。
【0070】
第1外部電極11及び第2外部電極13の少なくとも一方は、めっき層を有していてもよい。めっき層としては、例えば、亜鉛・銀・ニッケルめっき層、銀・ニッケルめっき層、ニッケルめっき層、亜鉛・ニッケル・金めっき層、ニッケル・金めっき層、亜鉛・ニッケル・銅めっき層、ニッケル・銅めっき層等が挙げられる。これらのめっき層上には、例えば、銅めっき層と、ニッケルめっき層と、錫めっき層とが順に(あるいは、一部のめっき層を除いて)更に設けられることが好ましい。
【0071】
第1外部電極11及び第2外部電極13の少なくとも一方は、樹脂電極層及びめっき層をともに有していてもよい。例えば、第1外部電極11は、陽極3に接続された樹脂電極層と、樹脂電極層における陽極3と反対側の表面上に設けられた外層めっき層と、を有していてもよい。また、第1外部電極11は、陽極3に接続された内層めっき層と、内層めっき層を覆うように設けられた樹脂電極層と、樹脂電極層における陽極3と反対側の表面上に設けられた外層めっき層と、を有していてもよい。
【0072】
以下では、固体電解質層7aの形態について説明する。
【0073】
図3は、
図1に示した樹脂成形体の一部を分解して示す斜視模式図である。
図3では、固体電解質層及び導電層の配置態様に着目するため、陰極引き出し層を透視した状態を示している。
【0074】
図3に示すように、樹脂成形体9では、固体電解質層7aがバスタブ状になっており、その内部空間に導電層7bが設けられつつ、陰極引き出し層7cで蓋がされたような構造になっている。より具体的には、以下の通りである。
【0075】
図4は、
図3に対して導電層及び陰極引き出し層が除かれた状態を示す斜視模式図である。
【0076】
図4に示すように、厚み方向Tから見たとき、固体電解質層7aは、固体電解質層7aの中心を含む中央領域AR1と、中央領域AR1の周囲に位置し、かつ、固体電解質層7aの外縁のすべてを含む外周領域AR2と、を有している。厚み方向Tから見たとき、固体電解質層7aの外縁は、長さ方向Lに対向する第1外縁E1及び第2外縁E2と、幅方向Wに対向する第3外縁E3及び第4外縁E4と、を含んでいる。固体電解質層7aの中心は、固体電解質層7aを厚み方向Tに投影したときの面積重心を意味する。
【0077】
中央領域AR1は、以下の範囲で定められる。
【0078】
長さ方向L及び厚み方向Tに沿う断面を見たとき、中央領域AR1の長さ方向Lにおける範囲は、第1外縁E1と第2外縁E2との中点から、第1外縁E1及び第2外縁E2に向かって、各々、第1外縁E1と第2外縁E2との長さ方向Lにおける距離の30%の長さにわたる範囲である。つまり、
図4に示した固体電解質層7aでは、中央領域AR1の長さ方向Lにおける長さM1は、第1外縁E1と第2外縁E2との長さ方向Lにおける距離N1の60%である。
【0079】
幅方向W及び厚み方向Tに沿う断面を見たとき、中央領域AR1の幅方向Wにおける範囲は、第3外縁E3と第4外縁E4との中点から、第3外縁E3及び第4外縁E4に向かって、各々、第3外縁E3と第4外縁E4との幅方向Wにおける距離の30%の長さにわたる範囲である。つまり、
図4に示した固体電解質層7aでは、中央領域AR1の幅方向Wにおける長さM2は、第3外縁E3と第4外縁E4との幅方向Wにおける距離N2の60%である。
【0080】
外周領域AR2は、以下の範囲で定められる。
【0081】
長さ方向L及び厚み方向Tに沿う断面を見たとき、外周領域AR2の長さ方向Lにおける範囲は、第1外縁E1及び第2外縁E2から、第1外縁E1と第2外縁E2との中点に向かって、各々、第1外縁E1と第2外縁E2との長さ方向Lにおける距離の15%の長さにわたる範囲である。つまり、
図4に示した固体電解質層7aでは、外周領域AR2の長さ方向Lにおける長さM3は、第1外縁E1と第2外縁E2との長さ方向Lにおける距離N1の15%である。
【0082】
幅方向W及び厚み方向Tに沿う断面を見たとき、外周領域AR2の幅方向Wにおける範囲は、第3外縁E3及び第4外縁E4から、第3外縁E3と第4外縁E4との中点に向かって、各々、第3外縁E3と第4外縁E4との幅方向Wにおける距離の15%の長さにわたる範囲である。つまり、
図4に示した固体電解質層7aでは、外周領域AR2の幅方向Wにおける長さM4は、第3外縁E3と第4外縁E4との幅方向Wにおける距離N2の15%である。
【0083】
厚み方向Tにおける多孔質部3bの最高点を含み、かつ、厚み方向Tに直交する基準面に対して、厚み方向Tの高さを定義したとき、外周領域AR2は、中央領域AR1の周囲にわたって中央領域AR1よりも高い。このような固体電解質層7aの形態について、長さ方向L及び厚み方向Tに沿う断面を見たときを例として、以下に説明する。
【0084】
図5は、
図3中の線分B1-B2に対応する部分の一部を示す断面模式図である。なお、
図5に示した、長さ方向L及び厚み方向Tに沿う断面では、説明の便宜上、多孔質部3b全体における最高点と、中央領域AR1全体における最高点と、外周領域AR2全体における最高点とが含まれるものとしている。
【0085】
図5に示すように、厚み方向Tにおける多孔質部3bの最高点Pを含み、かつ、厚み方向Tに直交する基準面Sに対して、厚み方向Tの高さを定義したとき、外周領域AR2は、中央領域AR1よりも高くなっている。より具体的には、外周領域AR2の最高点Q2は、中央領域AR1の最高点Q1よりも高くなっている。ここで、基準面Sは、対象となる固体電解質層7aに厚み方向Tで最も近い多孔質部3bに対して定義される。
【0086】
固体電解質層7aがこのような形態であることにより、導電層7bを構成する導電性ペーストの塗工量が多い状態で陰極引き出し層7cを積層したり、強い押圧力で陰極引き出し層7cを積層したりしても、固体電解質層7aと陰極引き出し層7cとの間で押し広げられた導電層7bは、外周領域AR2に堰き止められるため、外部に漏れ出さない。そのため、陰極引き出し層7cを積層する際の押圧力により、導電層7bを広く押し広げることができ、結果的に、固体電解質層7aと導電層7bとの接触面積を大きくすることができる。以上により、固体電解コンデンサ1では、導電層7bの漏れを防止しつつ、低抵抗化が可能である。
【0087】
導電層7bは、固体電解質層7aの少なくとも中央領域AR1上に設けられている。低抵抗化の観点から、導電層7bは、中央領域AR1の全体上に設けられていることが好ましく、中央領域AR1から外周領域AR2にわたって延在していることがより好ましい。
【0088】
一方、固体電解質層7aと陰極引き出し層7cとの間には、導電層7bが設けられていない空間Uが存在していてもよい。より具体的には、固体電解質層7aと導電層7bと陰極引き出し層7cとで囲まれた、好ましくは、固体電解質層7aの外周領域AR2と導電層7bと陰極引き出し層7cとで囲まれた空間Uが存在していてもよい。これにより、固体電解コンデンサ1を高温状態にする、例えば、固体電解コンデンサ1を配線基板にはんだを介して実装する際にリフロー炉で加熱処理を行う場合に、空間Uが膨張バッファー空間として機能する。つまり、固体電解コンデンサ1が高温状態であるときに、線膨張係数が異なる複数の部材、ここでは、固体電解質層7a、導電層7b、陰極引き出し層7c等の部材が互いに干渉することでコンデンサ素子20の破壊を引き起こすような負荷を、空間Uで緩衝することができる。
【0089】
外周領域AR2の最高点Q2の高さH2は、中央領域AR1の最高点Q1の高さH1よりも2μm以上大きいことが好ましい。この場合、導電層7bを構成する導電性ペーストの塗工量がより多い状態で陰極引き出し層7cを積層したり、より強い押圧力で陰極引き出し層7cを積層したりしても、導電層7bが外部に漏れ出さない。そのため、固体電解質層7aと導電層7bとの接触面積をより大きくすることができ、結果的に、固体電解コンデンサ1の更なる低抵抗化が可能となる。
【0090】
図5では、多孔質部3bの最高点Pと、中央領域AR1の最高点Q1と、外周領域AR2の最高点Q2とが含まれるものとしたが、これらの最高点は、長さ方向L及び厚み方向Tに沿う断面に共存していなくてもよいし、幅方向W及び厚み方向Tに沿う断面に共存していなくてもよい。
【0091】
多孔質部3bの最高点Pは、厚み方向Tから見たときの位置が特に限定されない。例えば、多孔質部3bの最高点Pは、厚み方向Tから見たとき、多孔質部3bの中心に位置していてもよいし、多孔質部3bの中心から外縁側に離れた部分に位置していてもよい。つまり、多孔質部3bは、中心で最も高くなっていてもよいし、中心から外縁側に離れた部分で最も高くなっていてもよい。
【0092】
中央領域AR1の最高点Q1は、厚み方向Tから見たときの位置が特に限定されない。例えば、中央領域AR1の最高点Q1は、厚み方向Tから見たとき、中央領域AR1の中心、すなわち、固体電解質層7aの中心に位置していてもよいし、中央領域AR1の中心から外周領域AR2側に離れた部分に位置していてもよい。つまり、中央領域AR1は、中心で最も高くなっていてもよいし、中心から外周領域AR2側に離れた部分で最も高くなっていてもよい。
【0093】
図5に示した断面を見たときの、中央領域AR1の最も高い位置に存在する点が、中央領域AR1全体における最高点Q1であるものとしたが、最高点Q1でなくてもよい。つまり、厚み方向Tに沿う他の断面を見たときの、中央領域AR1の最も高い位置に存在する点が最高点Q1であってもよい。
【0094】
中央領域AR1の最高点Q1は、中央領域AR1全体において、1点のみ存在していてもよいし、複数点存在していてもよい。また、厚み方向Tに沿う断面によっては、中央領域AR1の最高点Q1が、存在していなくてもよいし、1点のみ存在していてもよいし、
図5に示すように複数点存在していてもよい。
図5では、中央領域AR1の高さが一定であるように示されており、中央領域AR1の最高点Q1があたかも複数点存在している。
【0095】
厚み方向Tに沿う断面を見たときの、中央領域AR1の最も高い位置に存在する点の高さは、厚み方向Tに沿う断面によって変化していてもよいし、変化していなくてもよい。
【0096】
外周領域AR2の最高点Q2は、厚み方向Tから見たときの位置が特に限定されない。例えば、外周領域AR2の最高点Q2は、厚み方向Tから見たとき、外周領域AR2における中央領域AR1と反対側の端部、すなわち、固体電解質層7aの外縁に位置していてもよいし、外周領域AR2における中央領域AR1と反対側の端部から中央領域AR1側に離れた部分に位置していてもよい。つまり、外周領域AR2は、中央領域AR1と反対側の端部で最も高くなっていてもよいし、中央領域AR1と反対側の端部から中央領域AR1側に離れた部分で最も高くなっていてもよい。
【0097】
図5に示した断面を見たときの、外周領域AR2の最も高い位置に存在する点が、外周領域AR2全体における最高点Q2であるものとしたが、最高点Q2でなくてもよい。つまり、厚み方向Tに沿う他の断面を見たときの、外周領域AR2の最も高い位置に存在する点が最高点Q2であってもよい。
【0098】
外周領域AR2の最高点Q2は、外周領域AR2全体において、1点のみ存在していてもよいし、複数点存在していてもよい。また、厚み方向Tに沿う断面によっては、外周領域AR2の最高点Q2が、存在していなくてもよいし、1点のみ存在していてもよいし、
図5に示すように複数点存在していてもよい。
図5では、外周領域AR2の高さが、中央領域AR1と反対側の両端部で最も高くなっているように示されており、外周領域AR2の最高点Q2が2点存在している。
【0099】
厚み方向Tに沿う断面を見たときの、外周領域AR2の最も高い位置に存在する点の高さは、厚み方向Tに沿う断面によって変化していてもよいし、変化していなくてもよい。
【0100】
図5では、長さ方向L及び厚み方向Tに沿う断面を見たときを示したが、厚み方向Tに沿う他の断面、例えば、幅方向W及び厚み方向Tに沿う断面を見たときにも同様に、外周領域AR2は、中央領域AR1よりも高くなっている。このように、厚み方向Tに沿う断面を見たときに、外周領域AR2が中央領域AR1よりも高くなっていることから、外周領域AR2は、中央領域AR1の周囲にわたって中央領域AR1よりも高い、と言える。
【0101】
外周領域AR2が中央領域AR1の周囲にわたって中央領域AR1よりも高くなっていることは、例えば、共焦点顕微鏡で撮像されたコンター画像から分かる。また、
図5に例示したような厚み方向Tに沿う断面は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像された断面画像として観察される。上述したようなコンター画像及び断面画像の解析を組み合わせて行うことにより、多孔質部3bの最高点Pの位置、つまり、基準面Sの位置と、中央領域AR1の最高点Q1の位置と、外周領域AR2の最高点Q2の位置とが分かる。
【0102】
本発明の実施形態1の固体電解コンデンサ、すなわち、
図1、
図2等に示した固体電解コンデンサ1は、例えば、以下の方法で製造される。
【0103】
<樹脂成形体形成工程>
まず、多孔質部3bを表面に有する弁作用金属基体3a、すなわち、陽極3を準備する。そして、多孔質部3bの表面に陽極酸化処理を行うことにより、誘電体層5を多孔質部3bの表面上に形成する。
【0104】
次に、固体電解質層7aを、好ましくはスクリーン印刷法により、誘電体層5の表面上に形成する。この際、外周領域AR2が中央領域AR1の周囲にわたって中央領域AR1よりも高くなるように、固体電解質層7aを誘電体層5の表面上に形成する。
【0105】
このような形態の固体電解質層7aは、例えば、誘電体層5の表面に対するスクリーン印刷時の塗工回数を、外周領域AR2に対応する領域で中央領域AR1に対応する領域よりも多くしたり、スクリーン印刷版の仕様を調整したり、スクリーン印刷時の塗工条件を調整したりすることにより形成可能である。
【0106】
誘電体層5の表面に対するスクリーン印刷時の塗工回数を、外周領域AR2に対応する領域で中央領域AR1に対応する領域よりも多くする場合、例えば、中央領域AR1に対応する領域への塗工回数を1回とし、外周領域AR2に対応する領域への塗工回数を2回としてもよい。但し、製造効率及びコストの観点からは、中央領域AR1に対応する領域への塗工と外周領域AR2に対応する領域への塗工とは、1回で同時に行うことが好ましい。この場合、固体電解質層7aを形成する際には、以下のように、スクリーン印刷版の仕様を調整したり、スクリーン印刷時の塗工条件を調整したりすることが好ましい。
【0107】
スクリーン印刷版の仕様を調整する場合、例えば、スクリーン印刷版の線径を、外周領域AR2に対応する領域で中央領域AR1に対応する領域よりも小さくしたり、スクリーン印刷版の目開きを、外周領域AR2に対応する領域で中央領域AR1に対応する領域よりも大きくしたりすることが有効である。
【0108】
スクリーン印刷時の塗工条件を調整する場合、例えば、スクリーン印刷時の印圧を、外周領域AR2に対応する領域で中央領域AR1に対応する領域よりも高くしたり、スクリーン印刷時の印刷速度を、外周領域AR2に対応する領域で中央領域AR1に対応する領域よりも遅くしたりすることが有効である。
【0109】
次に、導電層7bを、スクリーン印刷法等により固体電解質層7aの表面上に形成する。
【0110】
更に、陰極引き出し層7cを、金属箔を積層する方法、スクリーン印刷法等により導電層7bの表面上に形成する。陰極引き出し層7cを形成する際、絶縁性接着層10を介して、誘電体層5に接合することが好ましい。
【0111】
このようにして、固体電解質層7aと導電層7bと陰極引き出し層7cとを有する陰極7を形成する。
【0112】
以上により、陽極3と、陽極3の表面上に設けられた誘電体層5と、誘電体層5を介して陽極3に対向する陰極7と、を有するコンデンサ素子20を作製する。
【0113】
次に、複数のコンデンサ素子20を積層することにより、積層体30を作製する。そして、コンプレッションモールド等により積層体30の周囲を封止樹脂8で封止することにより、樹脂成形体9を形成する。
【0114】
樹脂成形体9は、略直方体状であり、長さ方向Lに対向する第1端面9a及び第2端面9bと、厚み方向Tに対向する第1主面9c及び第2主面9dと、幅方向Wに対向する第1側面9e及び第2側面9fと、を有している。
【0115】
樹脂成形体9では、陽極3が第1端面9aから露出し、陰極7、ここでは、陰極引き出し層7cが第2端面9bから露出している。
【0116】
<第1外部電極形成工程>
樹脂成形体9の第1端面9a上に、第1端面9aから露出した陽極3に接続された第1外部電極11を形成する。この際、第1外部電極11を、樹脂成形体9の第1端面9aから、第1主面9c、第2主面9d、第1側面9e、及び、第2側面9fの少なくとも一面における、各面の一部にわたって延在するように形成してもよい。
【0117】
<第2外部電極形成工程>
樹脂成形体9の第2端面9b上に、第2端面9bから露出した陰極7、ここでは、陰極引き出し層7cに接続された第2外部電極13を形成する。この際、第2外部電極13を、樹脂成形体9の第2端面9bから、第1主面9c、第2主面9d、第1側面9e、及び、第2側面9fの少なくとも一面における、各面の一部にわたって延在するように形成してもよい。
【0118】
第1外部電極形成工程と第2外部電極形成工程とは、異なるタイミングで行われてもよいし、同じタイミングで行われてもよい。両工程が異なるタイミングで行われる場合、これらの順序は特に限定されない。
【0119】
以上により、
図1、
図2等に示した固体電解コンデンサ1を製造する。
【0120】
[実施形態1の変形例]
本発明の実施形態1の固体電解コンデンサ、すなわち、
図1、
図2等に示した固体電解コンデンサ1では、陰極引き出し層7cが絶縁性接着層10を介して誘電体層5に接合されていたが、絶縁性接着層10は設けられていなくてもよい。
【0121】
図6は、本発明の実施形態1の変形例の固体電解コンデンサを示す断面模式図である。
【0122】
図6に示すように、固体電解コンデンサ1aでは、絶縁性接着層10が設けられておらず、より具体的には、誘電体層5と陰極引き出し層7cとの間に絶縁性接着層10が介在していない。
【0123】
[実施形態2]
本発明の固体電解コンデンサにおいて、上記固体電解質層は、上記中央領域において複数の突起を表面に有していてもよく、上記複数の突起の頂点は、上記外周領域よりも低くてもよい。このような本発明の固体電解コンデンサの一例を、本発明の実施形態2の固体電解コンデンサとして以下に説明する。本発明の実施形態2の固体電解コンデンサは、固体電解質層の形態以外、本発明の実施形態1の固体電解コンデンサと同様である。
【0124】
図7は、本発明の実施形態2の固体電解コンデンサにおいて、樹脂成形体の一部を示す断面模式図である。なお、
図7に示した、長さ方向L及び厚み方向Tに沿う断面では、
図5と同様に、説明の便宜上、多孔質部3b全体における最高点と、中央領域AR1全体における最高点と、外周領域AR2全体における最高点とが含まれるものとしている。
【0125】
図7に示すように、樹脂成形体109では、固体電解質層7aの一部が突出している。これにより、固体電解質層7aは、中央領域AR1において、複数の突起50を表面に有している。
【0126】
複数の突起50の頂点Q3は、外周領域AR2よりも低い。より具体的には、複数の突起50の頂点Q3は、外周領域AR2の最高点Q2よりも低くなっている。
【0127】
一方、外周領域AR2は、中央領域AR1の周囲にわたって中央領域AR1よりも高いことから、外周領域AR2は、中央領域AR1の周囲にわたって複数の突起50の頂点Q3よりも高い、とも言える。より具体的には、外周領域AR2の最高点Q2は、複数の突起50の頂点Q3よりも高くなっている。
【0128】
複数の突起50の頂点Q3は、厚み方向Tに沿う断面を見たときの固体電解質層7aの表面の極大点を指す。よって、複数の突起50の頂点Q3のうち、最も高い位置に存在する頂点は、中央領域AR1の最高点Q1でもある。例えば、
図7では、複数の突起50の頂点Q3の高さが互いに同じであるように示されており、各々の頂点Q3が中央領域AR1の最高点Q1ともなっている。
【0129】
従来の固体電解コンデンサでは、固体電解コンデンサを高温状態にする、例えば、固体電解コンデンサを配線基板にはんだを介して実装する際にリフロー炉で加熱処理を行うと、固体電解質層に穴が開くことで、誘電体層、多孔質部等の下地が固体電解質層から露出することがある。この場合、陰極引き出し層に外部から圧力が加わったり、固体電解コンデンサが内部膨張したりすると、陽極と陰極引き出し層とが近づくことになるため、陽極と陰極引き出し層とが短絡するおそれがある。これに対して、本発明の固体電解コンデンサでは、固体電解質層7aの外周領域AR2が、中央領域AR1の周囲にわたって中央領域AR1よりも高いため、陽極3と陰極引き出し層7cとが近づきにくくなっている。これに加えて、本発明の実施形態2の固体電解コンデンサでは、固体電解質層7aが有する複数の突起50により、陽極3と陰極引き出し層7cとの間隔が確保されるため、陽極3と陰極引き出し層7cとが更に近づきにくくなっている。そのため、本発明の実施形態2の固体電解コンデンサでは、高温状態であっても陽極3と陰極引き出し層7cとの短絡が防止され、信頼性が高まる。
【0130】
陽極3と陰極引き出し層7cとの間隔を確保する観点から、複数の突起50の頂点Q3の間隔Rは、好ましくは170μm以下であり、また、好ましくは50μm以上である。この場合、
図7に示した、長さ方向L及び厚み方向Tに沿う断面を見たときはもちろんのこと、厚み方向Tに沿う他の断面、例えば、幅方向W及び厚み方向Tに沿う断面を見たときにも同様に、複数の突起50の頂点Q3の間隔Rは、好ましくは170μm以下であり、また、好ましくは50μm以上である。
【0131】
複数の突起50の頂点Q3の間隔Rは、以下のようにして定められる。
【0132】
厚み方向Tに沿う断面を見たときに、頂点Q3が5点以上存在する場合、そのうちの位置が高い順に選択された5点の頂点Q3に対して、隣り合う頂点Q3の間隔の平均値を算出する。一方、厚み方向Tに沿う断面を見たときに、頂点Q3が5点以上存在しない場合、すべての頂点Q3に対して、隣り合う頂点Q3の間隔の平均値を算出する。そして、このようにして得られた平均値を、複数の突起50の頂点Q3の間隔Rと定める。
【0133】
陽極3と陰極引き出し層7cとの間隔を確保する観点から、複数の突起50の頂点Q3の高さH3は、好ましくは2μm以上であり、また、好ましくは3μm以下である。この場合、
図7に示した、長さ方向L及び厚み方向Tに沿う断面を見たときはもちろんのこと、厚み方向Tに沿う他の断面、例えば、幅方向W及び厚み方向Tに沿う断面を見たときにも同様に、複数の突起50の頂点Q3の高さH3は、好ましくは2μm以上であり、また、好ましくは3μm以下である。
【0134】
複数の突起50の頂点Q3の高さH3は、以下のようにして定められる。
【0135】
厚み方向Tに沿う断面を見たときに、頂点Q3が5点以上存在する場合、そのうちの位置が高い順に選択された5点の頂点Q3に対して、頂点Q3の高さの平均値を算出する。一方、厚み方向Tに沿う断面を見たときに、頂点Q3が5点以上存在しない場合、すべての頂点Q3に対して、頂点Q3の高さの平均値を算出する。そして、このようにして得られた平均値を、複数の突起50の頂点Q3の高さH3と定める。
【0136】
複数の突起50の頂点Q3の間隔Rが170μmよりも大きい場合、複数の突起50の頂点Q3の高さH3が2μmよりも小さいと、陽極3と陰極引き出し層7cとの間隔が充分に確保されず、高温状態で陽極3と陰極引き出し層7cとが短絡するおそれがある。このような陽極3と陰極引き出し層7cとの短絡を防止する観点から、複数の突起50の頂点Q3の間隔Rが170μmよりも大きい場合、複数の突起50の頂点Q3の高さH3は、好ましくは3μm以上である。
【0137】
複数の突起50の頂点Q3の間隔Rが70μmよりも小さい場合、複数の突起50の頂点Q3の高さH3は2μm以下であってもよい。
【0138】
厚み方向Tに沿う断面を見たとき、複数の突起50において、隣り合う頂点Q3の間隔は、
図7に示すように互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0139】
厚み方向Tに沿う断面を見たとき、複数の突起50の頂点Q3の高さは、
図7に示すように互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
図7では、複数の突起50の頂点Q3の高さが互いに同じであるように示されており、各々の頂点Q3が中央領域AR1の最高点Q1ともなっているため、複数の突起50の頂点Q3の高さH3は、中央領域AR1の最高点Q1の高さH1と同じになっている。
【0140】
複数の突起50の形状としては、特に限定されず、例えば、円錐形状、角錐形状等が挙げられる。このように、厚み方向Tに沿う断面を見たとき、複数の突起50は、誘電体層5側から陰極引き出し層7c側に向かって厚み方向Tに直交する方向における長さが小さくなる、いわゆるテーパー形状であってもよいが、テーパー形状でなくてもよい。
【0141】
複数の突起50の先端は、尖っていてもよいし、丸みを帯びていてもよいし、平坦であってもよい。
【0142】
複数の突起50の形状は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0143】
固体電解質層7aにおいて、複数の突起50は、中央領域AR1に加えて、中央領域AR1以外の領域に存在していてもよい。例えば、複数の突起50は、中央領域AR1に加えて、中央領域AR1と外周領域AR2との間の領域に存在していてもよいし、外周領域AR2に存在していてもよいし、中央領域AR1と外周領域AR2との間の領域及び外周領域AR2に存在していてもよい。
【0144】
本発明の実施形態2の固体電解コンデンサの製造方法は、樹脂成形体形成工程で樹脂成形体109を形成する際に、中央領域AR1において複数の突起50を表面に有するように固体電解質層7aを形成すること以外、本発明の実施形態1の固体電解コンデンサの製造方法と同様である。
【0145】
固体電解質層7aは、上述したように、好ましくはスクリーン印刷法により、誘電体層5の表面上に形成される。この際、スクリーン印刷版のメッシュ形状に起因する、いわゆるメッシュ痕が、固体電解質層7aの中央領域AR1の表面に現れるようにする。これにより、固体電解質層7aの中央領域AR1の表面に複数の突起50を形成できる。
【0146】
固体電解質層7aをスクリーン印刷法で形成する際、スクリーン印刷版の線径、目開き等を調整することにより、複数の突起50の頂点Q3の間隔R、複数の突起50の頂点Q3の高さH3等の、複数の突起50の各種パラメータを制御できる。
【符号の説明】
【0147】
1、1a 固体電解コンデンサ
3 陽極
3a 弁作用金属基体
3b 多孔質部
5 誘電体層
7 陰極
7a 固体電解質層
7b 導電層
7c 陰極引き出し層
8 封止樹脂
9、109 樹脂成形体
9a 第1端面
9b 第2端面
9c 第1主面
9d 第2主面
9e 第1側面
9f 第2側面
10 絶縁性接着層
11 第1外部電極
13 第2外部電極
20 コンデンサ素子
30 積層体
50 突起
AR1 中央領域
AR2 外周領域
E1 第1外縁
E2 第2外縁
E3 第3外縁
E4 第4外縁
H1 中央領域の最高点の高さ
H2 外周領域の最高点の高さ
H3 突起の頂点の高さ
L 長さ方向
M1 中央領域の長さ方向における長さ
M2 中央領域の幅方向における長さ
M3 外周領域の長さ方向における長さ
M4 外周領域の幅方向における長さ
N1 第1外縁と第2外縁との長さ方向における距離
N2 第3外縁と第4外縁との幅方向における距離
P 多孔質部の最高点
Q1 中央領域の最高点
Q2 外周領域の最高点
Q3 突起の頂点
R 突起の頂点の間隔
S 基準面
T 厚み方向
U 空間
W 幅方向