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特許7509212情報処理システム、情報処理方法、及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 16/906 20190101AFI20240625BHJP
   G06F 18/241 20230101ALI20240625BHJP
【FI】
G06F16/906
G06F18/241
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022546802
(86)(22)【出願日】2020-09-03
(86)【国際出願番号】 JP2020033474
(87)【国際公開番号】W WO2022049704
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】宮川 大輝
(72)【発明者】
【氏名】海老原 章記
【審査官】早川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-156148(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0276845(US,A1)
【文献】EBIHARA, Akinori F. et al.,DEEP NEURAL NETWORKS FOR THE SEQUENTIAL PROBABILITY RATIO TEST ON NON-I.I.D. DATA SERIES [online],Cornell University,2020年06月17日,pp.1-56,[検索日:2020.10.08], Internet<URL:https://arxiv.org/abs/2006.05587>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00-16/958
G06F 18/00-18/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
系列データに含まれる複数の要素を逐次的に取得する取得手段と、
前記複数の要素の各々について、複数のクラスのいずれに属するかを示す第1の指標を算出する第1算出手段と、
前記複数の要素の各々について、前記第1の指標の算出に係る信頼度に応じた重みを算出する重み算出手段と、
前記重みにより重み付けした前記第1の指標に基づいて、前記系列データが前記複数のクラスのいずれに属するかを示す第2の指標を算出する第2算出手段と、
前記第2の指標に基づいて、前記系列データを前記複数のクラスのいずれかに分類する分類手段と
を備え、
前記重み算出手段は、前記複数の要素のうち、連続して取得される2つの要素において算出される前記第1の指標間の差分の小ささ、又は連続して取得される所定数の要素において算出される第1の指標間のボラティリティの小ささ、を前記信頼度として重みを算出する
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
前記信頼度が紐付けられた訓練データを用いて前記信頼度に関する機械学習を実行し、前記機械学習の結果に基づいて前記複数の要素の各々の前記信頼度を決定する学習手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記第1の指標は、前記複数の要素の各々が前記複数のクラスのうちのあるクラスに属することの尤もらしさを示す尤度比を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記第2の指標は、前記系列データが前記複数のクラスのうちのあるクラスに属することの尤もらしさを示す尤度比を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記分類手段は、前記第2の指標が所定の閾値を超えているクラスが存在する場合に、前記系列データを前記第2の指標が前記所定の閾値を超えているクラスに分類することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記第2の指標が所定の閾値を超えているクラスが存在しない場合に、
前記分類手段は、前記系列データをいずれのクラスにも分類せず、
前記取得手段は、更に要素を取得する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項7】
系列データに含まれる複数の要素を逐次的に取得し、
前記複数の要素の各々について、複数のクラスのいずれに属するかを示す第1の指標を算出し、
前記複数の要素の各々について、前記第1の指標の算出に係る信頼度に応じた重みを算し、
前記重みにより重み付けした前記第1の指標に基づいて、前記系列データが前記複数のクラスのいずれに属するかを示す第2の指標を算出し、
前記第2の指標に基づいて、前記系列データを前記複数のクラスのいずれかに分類し、
前記重みを算出する際には、前記複数の要素のうち、連続して取得される2つの要素において算出される前記第1の指標間の差分の小ささ、又は連続して取得される所定数の要素において算出される第1の指標間のボラティリティの小ささ、を前記信頼度として重みを算出する
ことを特徴とする情報処理システムが実行する情報処理方法。
【請求項8】
系列データに含まれる複数の要素を逐次的に取得し、
前記複数の要素の各々について、複数のクラスのいずれに属するかを示す第1の指標を算出し、
前記複数の要素の各々について、前記第1の指標の算出に係る信頼度に応じた重みを算し、
前記重みにより重み付けした前記第1の指標に基づいて、前記系列データが前記複数のクラスのいずれに属するかを示す第2の指標を算出し、
前記第2の指標に基づいて、前記系列データを前記複数のクラスのいずれかに分類し、
前記重みを算出する際には、前記複数の要素のうち、連続して取得される2つの要素において算出される前記第1の指標間の差分の小ささ、又は連続して取得される所定数の要素において算出される第1の指標間のボラティリティの小ささ、を前記信頼度として重みを算出する
ようにコンピュータを動作させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、例えば生体認証に関する情報を処理する情報処理システム、情報処理方法、及びコンピュータプログラムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシステムとして、逐次確率比検定(SPRT:Sequential Probability Ratio Test)を用いるものが知られている。例えば特許文献1では、SPRTにより、目標検出、目標不検出、判定保留のいずれかを選択する技術が開示されている。特許文献2では、入力される複数の時系列データが、登録された自分或いはその他のオブジェクトのいずれに属するかを識別する技術が開示されている。上述した特許文献では、系列全体の対数尤度比(LLR:Log Likelihood Ratio)が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-040616号公報
【文献】特許第5061382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この開示は、上述した関連する技術を改善する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この開示の情報処理システムの一の態様は、系列データに含まれる複数の要素を逐次的に取得する取得手段と、前記複数の要素の各々について、複数のクラスのいずれに属するかを示す第1の指標を算出する第1算出手段と、前記複数の要素の各々について、前記第1の指標の算出に係る信頼度に応じた重みを算出する重み算出手段と、前記重みにより重み付けした前記第1の指標に基づいて、前記系列データが前記複数のクラスのいずれに属するかを示す第2の指標を算出する第2算出手段と、前記第2の指標に基づいて、前記系列データを前記複数のクラスのいずれかに分類する分類手段とを備える。
【0006】
この開示の情報処理方法の一の態様は、系列データに含まれる複数の要素を逐次的に取得し、前記複数の要素の各々について、複数のクラスのいずれに属するかを示す第1の指標を算出し、前記複数の要素の各々について、前記第1の指標の算出に係る信頼度に応じた重みを算し、前記重みにより重み付けした前記第1の指標に基づいて、前記系列データが前記複数のクラスのいずれに属するかを示す第2の指標を算出し、前記第2の指標に基づいて、前記系列データを前記複数のクラスのいずれかに分類する。
【0007】
この開示のコンピュータプログラムの一の態様は、系列データに含まれる複数の要素を逐次的に取得し、前記複数の要素の各々について、複数のクラスのいずれに属するかを示す第1の指標を算出し、前記複数の要素の各々について、前記第1の指標の算出に係る信頼度に応じた重みを算し、前記重みにより重み付けした前記第1の指標に基づいて、前記系列データが前記複数のクラスのいずれに属するかを示す第2の指標を算出し、前記第2の指標に基づいて、前記系列データを前記複数のクラスのいずれかに分類するようにコンピュータを動作させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る情報処理システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係る情報処理システムの機能的構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態に係る情報処理システムの動作の流れを示すフローチャートである。
図4】第2実施形態に係る情報処理システムで処理される画像データの一例を示す図(その1)である。
図5】第2実施形態に係る情報処理システムで処理される画像データの一例を示す図(その2)である。
図6】第2実施形態に係る情報処理システムで処理される画像データの一例を示す図(その3)である。
図7】第3実施形態に係る情報処理システムで算出される第1の指標の差分の一例を示す図である。
図8】第3実施形態に係る情報処理システムで算出される第1の指標のボラティリティの一例を示す図である。
図9】第4実施形態に係る情報処理システムの機能的構成を示すブロック図である。
図10】第5実施形態に係る情報処理システムの機能的構成を示すブロック図である。
図11】第5実施形態に係る情報処理システムの動作の流れを示すフローチャートである。
図12】第5実施形態に係る情報処理システムによるクラス分類の一例を示すグラフである。
図13】第6実施形態に係る個人識別システムの機能的構成を示すブロック図である。
図14】第7実施形態に係る情報処理システムの機能的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、情報処理システム、情報処理方法、及びコンピュータプログラムの実施形態について説明する。
【0010】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る情報処理システムについて、図1から図3を参照して説明する。
【0011】
(ハードウェア構成)
まず、図1を参照しながら、第1実施形態に係る情報処理システムのハードウェア構成について説明する。図1は、第1実施形態に係る情報処理システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、第1実施形態に係る情報処理システム10は、プロセッサ11と、RAM(Random Access Memory)12と、ROM(Read Only Memory)13と、記憶装置14とを備えている。情報処理システム10は更に、入力装置15と、出力装置16とを備えていてもよい。プロセッサ11と、RAM12と、ROM13と、記憶装置14と、入力装置15と、出力装置16とは、データバス17を介して接続されている。
【0013】
プロセッサ11は、コンピュータプログラムを読み込む。例えば、プロセッサ11は、RAM12、ROM13及び記憶装置14のうちの少なくとも一つが記憶しているコンピュータプログラムを読み込むように構成されている。或いは、プロセッサ11は、コンピュータで読み取り可能な記録媒体が記憶しているコンピュータプログラムを、図示しない記録媒体読み取り装置を用いて読み込んでもよい。プロセッサ11は、ネットワークインタフェースを介して、情報処理システム10の外部に配置される不図示の装置からコンピュータプログラムを取得してもよい(つまり、読み込んでもよい)。プロセッサ11は、読み込んだコンピュータプログラムを実行することで、RAM12、記憶装置14、入力装置15及び出力装置16を制御する。本実施形態では特に、プロセッサ11が読み込んだコンピュータプログラムを実行すると、プロセッサ11内には、系列データを分類するための機能ブロックが実現される。また、プロセッサ11として、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(field-programmable gate array)、DSP(Demand-Side Platform)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のうち一つを用いてもよいし、複数を並列で用いてもよい。
【0014】
RAM12は、プロセッサ11が実行するコンピュータプログラムを一時的に記憶する。RAM12は、プロセッサ11がコンピュータプログラムを実行している際にプロセッサ11が一時的に使用するデータを一時的に記憶する。RAM12は、例えば、D-RAM(Dynamic RAM)であってもよい。
【0015】
ROM13は、プロセッサ11が実行するコンピュータプログラムを記憶する。ROM13は、その他に固定的なデータを記憶していてもよい。ROM13は、例えば、P-ROM(Programmable ROM)であってもよい。
【0016】
記憶装置14は、情報処理システム10が長期的に保存するデータを記憶する。記憶装置14は、プロセッサ11の一時記憶装置として動作してもよい。記憶装置14は、例えば、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置、SSD(Solid State Drive)及びディスクアレイ装置のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0017】
入力装置15は、情報処理システム10のユーザからの入力指示を受け取る装置である。入力装置15は、例えば、キーボード、マウス及びタッチパネルのうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0018】
出力装置16は、情報処理システム10に関する情報を外部に対して出力する装置である。例えば、出力装置16は、情報処理システム10に関する情報を表示可能な表示装置(例えば、ディスプレイ)であってもよい。
【0019】
(機能的構成)
次に、図2を参照しながら、第1実施形態に係る情報処理システム10の機能的構成について説明する。図2は、第1実施形態に係る情報処理システムの機能的構成を示すブロック図である。
【0020】
図2に示すように、第1実施形態に係る情報処理システム10は、その機能を実現するための処理ブロックとして、取得部50と、第1算出部110と、第2算出部120と、重み算出部130と、分類部60とを備えている。なお、取得部50、第1算出部110、第2算出部120、重み算出部130、及び分類部60の各々は、上述したプロセッサ11(図1参照)によって実現されてよい。
【0021】
取得部50は、系列データに含まれる複数の要素を逐次的に取得可能に構成されている。取得部50は、例えば複数の要素を1つずつ取得する。取得部50は、任意のデータ取得装置(例えば、カメラ等)から直接データを取得するものであってもよいし、あらかじめデータ取得装置で取得されストレージ等に記憶されているデータを読み出すものであってもよい。取得部50で取得された系列データの要素は、第1算出部110に出力される構成となっている。
【0022】
第1算出部110は、第1指標算出部111と、第1記憶部112とを有している。第1指標算出部111は、取得部50によって取得された要素と、過去の第1の指標とを用いて、取得された要素に対する第1の指標を算出可能に構成されている。ここでの「第1の指標」は、系列データの要素が、複数のクラスのいずれに属するかを示す指標である。第1指標の具体例や具体的な算出方法については、後述する他の実施形態において詳しく説明する。第1記憶部112は、第1指標算出部111で算出された過去の第1の指標、又は取得部50で取得された過去の要素を記憶可能に構成されている。第1記憶部112で記憶されている情報は、第1指標算出部111によって読み出し可能に構成されている。第1記憶部112が過去の第1の指標を記憶している場合、第1指標算出部111は、記憶された過去の第1の指標を読み出して、取得された要素に対する第1の指標を算出すればよい。一方、第1記憶部112が過去に取得された要素を記憶している場合、第1指標算出部111は、記憶された過去の要素から過去の第1の指標を算出して、取得された要素に対する第1の指標を算出すればよい。クラスは、物体についての事象の真偽に関するものであってもよいし、物体の特定の属性の有無に関するものであってもよい。クラスは、物体の状態の陽と陰に関するものであってもよい。例えば、クラスは、人物の顔が本物か(真)、あるいは、仮面等による変装(なりすまし)をしているか(偽)を示してもよい。他の例では、クラスは、人物が何らかのアクセサリを装着しているか(有)、していないか(無)を示してもよい。その他の例では、クラスは、人物の健康状態が良好か(陽)、あるいは、健康状態が悪いか(陰)に関するものであってもよい。しかしながら、クラスは上述した例には限定されない。
【0023】
第2算出部120は、第2指標算出部121と、第2記憶部122とを有している。第2指標算出部121は、第1算出部110で算出された第1の指標と、過去の第2の指標とを用いて、取得された要素に対する第2の指標を算出可能に構成されている。ここでの「第2の指標」は、系列データが複数のクラスのいずれに属するかを示す指標である。第2算出部120で算出される第2の指標は、重み算出部130で算出された重みによって重み付けされた値である。第2の指標の具体例や具体的な算出方法については、後述する他の実施形態において詳しく説明する。第2記憶部122は、第2指標算出部111で算出された過去の第2の指標を記憶可能に構成されている。第2記憶部122で記憶されている情報は、第2指標算出部121によって読み出し可能に構成されている。第2指標算出部121は、第2記憶部122に記憶された過去の第2の指標を読み出して、取得された要素に対する第2の指標を算出すればよい。
【0024】
重み算出部130は、第2の指標を算出する際に用いる重みを算出可能に構成されている。ここでの「重み」は、第2の指標の算出に用いられる第1の指標と、及び過去の第2の指標とが、算出される新たな第2の指標に与える影響度を調整するための値であり、取得された要素の信頼度に応じて算出される。重みは、例えば実数の値として算出される。重みは、「1」又は「0」のように2値的なものとして算出されてもよい。「信頼度」は、第1の指標の算出に係る信頼性の度合いであり、例えば適切な第1の指標が算出される要素の信頼度は高くなり、適切でない第1の指標が算出される要素の信頼度は低くなる。信頼度の具体例や、具体的な設定方法については、後述する他の実施形態において詳しく説明する。なお、重み算出部130で算出された重みは、第2の指標を算出する際に適用される(即ち、重み付けされる)が、重み付けのタイミングについては特に限定されるものではなく、最終的に算出される第2の指標(具体的には、分類部60での分類に利用される第2の指標)が重み付けされたものになっていればよい。このため、重み算出部130は、系列データの要素に対して、取得部50で取得されたタイミングで重み付けを行ってもよい。または、重み算出部130は、取得された要素や第1の指標に対して、第1記憶部112に記憶されるタイミング又は第1記憶部112から読み出されるタイミングで重み付けを行ってもよい。更にまたは、重み算出部130は、第2の指標に対して、第2記憶部122に記憶されるタイミング又は第2記憶部122から読み出されるタイミングで重み付けを行ってもよい。
【0025】
分類部60は、第2算出部120で算出された第2の指標に基づいて、系列データを複数のクラスのいずれかに分類する。なお、複数のクラスは予め設定されていればよく、2つのクラスだけが設定されていてもよいし、3つ以上のクラスが設定されていてもよい。第2の指標に基づく具体的な分類手法については、後述する他の実施形態で詳しく説明する。分類部60は、第2の指標から分類するクラスを決定できない場合に、取得部50に対して更に要素を取得するように指示する機能を有していてもよい。
【0026】
(動作の流れ)
次に、図3を参照しながら、第1実施形態に係る情報処理システム10の動作の流れについて説明する。図3は、第1実施形態に係る情報処理システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【0027】
図3に示すように、第1実施形態に係る情報処理システム10では、まず取得部50が、系列データから1つの要素を取得する(ステップS11)。取得部50は、取得した系列データの要素を、第1算出部110に出力する。
【0028】
続いて、第1算出部110における第1指標算出部111が、第1記憶部112から過去データを読み出す(ステップS12)。過去データは、例えば取得部50で今回取得された要素の1つ前に取得された要素の第1指標算出部111での処理結果(言い換えれば、1つ前の要素に対して算出された第1の指標)であってよい。或いは、過去データは、取得で取得された要素の1つ前に取得された要素そのものであってもよい。
【0029】
続いて、第1指標算出部111は、取得部50で取得された要素と、第1記憶部112から読みだした過去データに基づいて、新たな第1の指標(即ち、取得部50で今回取得された要素に対する第1の指標)を算出する(ステップS13)。第1指標算出部111は、算出した第1の指標を、第2算出部120に出力する。第1指標算出部111は、算出した第1の指標を、第1記憶部112に記憶してもよい。
【0030】
続いて、第2算出部120における第2指標算出部121が、第2記憶部122から過去の第2の指標を読み出す(ステップS14)。過去の第2の指標は、例えば取得部50で今回取得された要素の1つ前に取得された要素についての、第2指標算出部121での処理結果(言い換えれば、1つ前の要素に対して算出された第2の指標)であってよい。
【0031】
続いて、第2指標算出部121は、第1算出部110で算出された第1の指標と、第2記憶部122から読みだした過去の第2の指標に基づいて、新たな第2の指標(即ち、取得部50で今回取得された要素に対する第2の指標)を算出する(ステップS15)。ここで特に、第2指標算出部121は、重み算出部130で算出された重みによる重み付けをして、新たな第2の指標を算出する。第2指標算出部121は、算出した第2の指標を、分類部60に出力する。第2指標算出部121は、算出した第2の指標を、第2記憶部122に記憶してもよい。
【0032】
続いて、分類部60が、第2算出部120で算出された第2の指標を用いて、系列データが複数のクラスのいずれかに分類可能であるか否かを判定する(ステップS16)。なお、この判定の具体的な処理内容については、後述する他の実施形態において詳しく説明する。第2の指標を用いて系列データを複数のクラスのいずれかに分類することができないと判定した場合(ステップS16:NO)、第1実施形態に係る情報処理システム10は、再びステップS11から処理を解する。具体的には、第1実施形態に係る情報処理システム10は、今回取得した系列データの要素の次の要素について、同様の処理を繰り返す。一方、第2の指標を用いて複数のクラスのいずれかに系列データを分類することができると判定した場合(ステップS16:YES)、分類部60は、第2の指標に基づいて系列データを複数のクラスのいずれかに分類する(ステップS17)。この場合、一連の処理は終了することになる。
【0033】
(技術的効果)
次に、第1実施形態に係る情報処理システム10によって得られる技術的効果について説明する。
【0034】
第1実施形態に係る情報処理システム10では、系列データに含まれる要素から算出される第1の指標及び第2の指標を用いて、系列データが複数のクラスのいずれかに分類される。第1実施形態では特に、クラス分類する際に用いられる第2の指標が、各要素の信頼度に応じて算出された重みによって重み付けされた第1の指標から算出されている。即ち、系列データに含まれる各要素が分類結果に与える影響に、偏りを持たせることができる。例えば、信頼度が高い要素については、第1の指標に大きい重みを付与することで、分類結果に与える影響を大きくする一方で、信頼度が低い要素については、第1の指標に小さい重みを付与することで、分類結果に与える影響を小さくすることができる。この結果、重み付けを行わない場合と比較して、より適切に系列データを分類することが可能となる。
【0035】
第1実施形態に係る情報処理システム10における分類処理は、系列データの要素間の相関が強い場合により効果的である。仮に、系列データの要素間の関連性が考慮されないアルゴリズムが用いられる場合、実際には要素間の関連性が強い系列データに対しても要素間に関連性が無いものとして分類が行われる。これに対し、第1実施形態の情報処理システム10における分類処理は、系列データの要素間の関連性が考慮されるため、要素間の関連性が強い系列データに対して、分類精度を向上することができる。
【0036】
系列データの要素間の相関が強い場合の具体例としては、動画データまたは音声データ等の時系列データが挙げられる。例えば、動画データにおいては、一般的には、あるフレームとその次のフレームは似た特徴を有していることが多いためである。したがって、第1実施形態に係る情報処理システム10における分類処理は、時系列データの処理において更に有効である。あるいはまた、系列データの要素間の相関が強い場合の他の具体例としては、ツリー構造、フローチャートなどが挙げられる。
【0037】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る情報処理システム10について、図4(a)(b)から図6を参照して説明する。なお、第2実施形態は、第1実施形態で説明した信頼度の具体例を説明するためのものであり、システム構成や動作については、第1実施形態(図1から図3参照)と同様であってよい。このため、以下では、第1実施形態と重複する部分については適宜説明を省略するものとする。なお、第2実施形態では、系列データが時系列の画像データとして取得される前提で説明を進める。
【0038】
(鮮明度に基づく信頼度)
まず、図4(a)(b)を参照しながら、画像の鮮明度に基づく信頼度について説明する。図4(a)(b)は、第2実施形態に係る情報処理システムで処理される画像データの一例を示す図(その1)である。
【0039】
図4(a)(b)に示すように、第2実施形態に係る情報処理システム10では、系列データに含まれる各要素の信頼度が、画像データの鮮明度に基づいて設定されてよい。例えば、図4(a)に示すような鮮明度が高い画像データについては、信頼度が高く設定されてよい。一方、図4(b)に示すような鮮明度が低い画像データについては、信頼度が低く設定されてよい。
【0040】
より具体的には、信頼度は、画像データ鮮明度における注目領域(撮像対象を含む領域)のボケの少なさ、および/または、撮像対象のブレの少なさを示すパラメータから算出される値であってよい。例えば、画像データの被写界深度と撮像対象の位置との関係を示す第1のパラメータ、撮像対象の動く速度とシャッタースピードとの関係を示す第2のパラメータ、および/または、撮像対象の暗さを示す第3のパラメータ鮮明度を含む計算式を予め用意しておけば、重み算出部130は、鮮明度上記の計算式に、第1のパラメータ、第2のパラメータおよび/または第3のパラメータを代入することで、容易に信頼度を算出することができる。以下、第1のパラメータから第3のパラメータを、画像データの「鮮明度の指標」あるいは単に「鮮明度」と呼ぶ。画像データの鮮明度は、取得部50により画像データと共に取得されてもよいし、画像データから推定して取得されてもよい。あるいは、算出部130は、画像データの鮮明度に代えて、画像を撮影したカメラの被写界深度および顔
【0041】
或いは、信頼度は、画像データの鮮明度が所定の閾値以上であるか否かに基づいて設定されてよい。この場合、重み算出部130は、画像データの鮮明度が所定の閾値以上であれば、信頼度を「高」に設定し、画像データの鮮明度が所定の閾値未満であれば、信頼度を「低」に設定するようにしてもよい。また、重み算出部130は、鮮明度に関する所定の閾値を複数設定してもよい。例えば、画像データの鮮明度が第1閾値以上であれば、重み算出部130は、信頼度を「高」に設定し、画像データの鮮明度が第1閾値未満且つ第2閾値以上であれば、重み算出部130は、信頼度を「中」に設定し、画像データの鮮明度が第2閾値未満であれば、重み算出部130は、信頼度を「低」に設定するようにしてもよい。
【0042】
画像データの鮮明度が低いと、画像に写り込んでいる撮像対象を正確に識別することが難しくなる。よって、このような画像データがクラス分類に大きな影響を与えてしまうと、適切な分類を行うことができなくなるおそれがある。しかるに、画像データの鮮明度の高さに応じて信頼度を設定するようにすれば、各画像データがクラス分類に与える影響を低減することができる。例えば、信頼度に応じた重みによる重み付けをすることで、鮮明度の高い(即ち、信頼度の高い)画像データについては、クラス分類に与える影響を大きくすることができる。一方で、鮮明度の低い(即ち、信頼度の低い)画像データについては、クラス分類に与える影響を小さくすることができる。以上のように、画像データの鮮明度に応じて信頼度を設定すれば、適切な重み付けが行われ、系列データを適切に分類することが可能となる。
【0043】
(対象物との距離に基づく信頼度)
次に、図5(a)(b)を参照しながら、対象物との距離に基づく信頼度について説明する。図5(a)(b)は、第2実施形態に係る情報処理システムで処理される画像データの一例を示す図(その2)である。
【0044】
図5(a)(b)に示すように、第2実施形態に係る情報処理システム10では、重み算出部130は、系列データに含まれる各要素の信頼度を、画像データにおける撮像対象の近さ(具体的には、画像データを撮像するカメラと撮像対象との距離の近さ)に基づいて設定してよい。例えば、図5(a)に示すような撮像対象(ここでは、人物)の距離が近い画像データについては、重み算出部130は、信頼度を高く設定してよい。一方、図5(b)に示すような撮像対象の距離が低い画像データについては、重み算出部130は、信頼度を低く設定してよい。
【0045】
より具体的には、信頼度は、画像データにおける撮像対象との距離を示すパラメータから算出される値であってよい。例えば、撮像対象の距離が近いほど高い値が算出される計算式を予め用意しておけば、重み算出部130は、撮像対象の鮮明度から容易に信頼度を算出することができる。画像データにおける撮像対象の距離は、画像データと共に取得されてもよいし、画像データから推定して取得されてもよい。撮像対象の距離は、例えば画像における撮像対象の大きさ(例えば、撮像対象が画像全体に占める割合)等から算出されてもよい。あるいは、撮像対象の距離は、測距センサを用いて計測されてもよい。
【0046】
或いは、信頼度は、画像データにおける撮像対象との距離が所定の閾値未満であるか否かに基づいて設定されてよい。この場合、撮像対象との距離が所定の閾値未満であれば、重み算出部130は、信頼度を「高」に設定し、撮像対象との距離が所定の閾値以上であれば、重み算出部130は、信頼度を「低」に設定するようにしてもよい。また、重み算出部130は、距離に関する所定の閾値を複数設定してもよい。例えば、撮像対象との距離が第1閾値未満であれば、重み算出部130は、信頼度を「高」に設定し、撮像対象との距離が第1閾値以上且つ第2閾値未満であれば、重み算出部130は、信頼度を「中」に設定し、撮像対象との距離が第2閾値以上であれば、重み算出部130は、信頼度を「低」に設定するようにしてもよい。
【0047】
画像データにおける撮像対象との距離が遠いと、画像に写り込んでいる撮像対象を正確に識別することが難しくなる。よって、このような画像データがクラス分類に大きな影響を与えてしまうと、適切な分類を行うことができなくなるおそれがある。しかるに、画像データにおける撮像対象との距離の近さに応じて信頼度を設定するようにすれば、各画像データがクラス分類に与える影響を低減することができる。例えば、信頼度に応じた重みによる重み付けをすることで、距離の近い(即ち、信頼度の高い)画像データについては、クラス分類に与える影響を大きくすることができる。一方で、距離の遠い(即ち、信頼度の低い)画像データについては、クラス分類に与える影響を小さくすることができる。以上のように、画像データにおける撮像対象の距離に応じて信頼度を設定すれば、適切な重み付けが行われ、系列データを適切に分類することが可能となる。
【0048】
(取得タイミングに基づく信頼度)
次に、図6を参照しながら、画像の取得タイミングに基づく信頼度について説明する。図6は、第2実施形態に係る情報処理システムで処理される画像データの一例を示す図(その3)である。
【0049】
図6に示すように、第2実施形態に係る情報処理システム10では、系列データに含まれる各要素の信頼度が、画像データの取得タイミングに基づいて設定されてよい。例えば、図6に示す例では、撮像対象である人物が徐々にカメラに近づいてくる時系列の画像データが取得されている。このような場合、最初の数フレームの画像データについては、画像中の撮像対象が小さいため、撮像対象を正確に識別することが難しい。よって、最初の数フレーム分の画像データについては、信頼度が低く設定されてよい。一方、その後のフレームの画像データについては、信頼度が低く設定されてよい。ここで、最初のフレームを決定する基準は限定されない。例えば、時系列の画像データにおいて、最初のフレームは、人物の顔が初めて検出されたフレームであってもよいし、人感センサによって、人物が初めて検出されたフレームであってもよい。
【0050】
より具体的には、信頼度は、その画像データが何番目に取得されたものであるのかを示すパラメータから算出される値であってよい。例えば、取得されたタイミングが早いほど低い値が算出される計算式を予め用意しておけば、重み算出部130は、画像データの取得タイミングから容易に信頼度を算出することができる。画像データの取得タイミングを示すパラメータは、例えば図6に示す例のように、画像データのフレーム数であってもよいし、画像データが取得された時刻を示すパラメータであってもよい。また、ここでの取得タイミングは、画像データが撮像されたタイミングに対応するものであってよいし、画像データが取得部50によって取得されたタイミングに対応するものであってもよい。
【0051】
或いは、信頼度は、画像データの取得タイミングが所定の閾値以上であるか否かに基づいて設定されてよい。この場合、画像データの取得タイミングが所定の閾値以上であれば、重み算出部130は、信頼度を「高」に設定し、画像データの取得タイミングが所定の閾値未満であれば、重み算出部130は、信頼度を「低」に設定するようにしてもよい。また、取得タイミングに関する所定の閾値を複数設定してもよい。例えば、画像データの取得タイミングが第1閾値以上であれば、重み算出部130は、信頼度を「高」に設定し、画像データの取得タイミングが第1閾値未満且つ第2閾値以上であれば、重み算出部130は、信頼度を「中」に設定し、画像データの取得タイミングが第2閾値未満であれば、重み算出部130は、信頼度を「低」に設定するようにしてもよい。
【0052】
画像データは、取得タイミングの違いによって、その品質や性質(例えば、撮像対象の写り込み方等)が大きく変化することがある。このような場合には、画像データの取得タイミングに応じて信頼度を設定するようにすれば、各画像データがクラス分類に与える影響を低減することができる。例えば、信頼度に応じた重みによる重み付けをすることで、取得タイミングの遅い(即ち、信頼度の高い)画像データについては、クラス分類に与える影響を大きくすることができる。一方で、取得タイミングの早い(即ち、信頼度の低い)画像データについては、クラス分類に与える影響を小さくすることができる。なお、ここまで説明した例とは逆に、取得タイミングの遅い画像データの信頼度を低くし、取得タイミングの早い画像データの信頼度を高くするようにしてもよい。この例は、撮像対象がカメラから徐々に遠ざかるような時系列の画像データが取得される場合等に適用できる。以上のように、適取得タイミングの違いに応じて信頼度を設定すれば、適切な重み付けが行われ、系列データを適切に分類することが可能となる。
【0053】
<第3実施形態>
第3実施形態に係る情報処理システム10について、図7(a)(b)及び図8(a)(b)を参照して説明する。なお、第3実施形態は、上述した第2実施形態と同様に、信頼度の具体例を説明するためのものであり、システム構成や動作については、第1実施形態(図1から図3参照)と同様であってよい。このため、以下では、第1実施形態と重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0054】
(第1の指標の差分に基づく信頼度)
まず、図7(a)(b)を参照しながら、第1の指標の差分に基づく信頼度について説明する。図7(a)(b)は、第3実施形態に係る情報処理システムで算出される第1の指標の差分の一例を示す図である。
【0055】
図7(a)(b)に示すように、第3実施形態に係る情報処理システム10では、第1算出部110で算出される第1の指標の差分に基づいて、取得される各要素の信頼度を設定する。具体的には、n番目に取得された要素nについて算出される第1の指標と、n+1番目に取得された要素n+1について算出される第1の指標との差分に基づいて、n番目に取得される要素nの信頼度、及び/又はn+1番目に取得された要素n+1の信頼度が設定される。なお、第1の指標の差分は、上述したように連続して取得される2つの要素の第1の指標の差分として算出される。
【0056】
系列データに含まれる各要素の信頼度は、第1の指標の差分が小さいほど、高くなるように設定される。例えば、図7(a)に示すように、要素nについて算出される第1の指標と、要素n+1について算出される第1の指標との差分が小さい場合、信頼度は高く設定されてよい。一方、図7(b)に示すように、要素nについて算出される第1の指標と、要素n+1について算出される第1の指標との差分が大きい場合、信頼度は低く設定されてよい。
【0057】
より具体的には、信頼度は、第1の指標の差分の値から算出される値であってよい。例えば、第1の指標の差分が小さいほど高い値が算出される計算式を予め用意しておけば、第1の指標の差分から容易に信頼度を算出することができる。
【0058】
或いは、信頼度は、第1の指標の差分が所定の閾値未満であるか否かに基づいて設定されてよい。この場合、第1の指標の差分が所定の閾値未満であれば、重み算出部130は、信頼度を「高」に設定し、第1の指標の差分が所定の閾値以上であれば、重み算出部130は、信頼度を「低」に設定するようにしてもよい。また、重み算出部130は、第1の指標の差分に関する所定の閾値を複数設定してもよい。例えば、第1の指標の差分が第1閾値未満であれば、重み算出部130は、信頼度を「高」に設定し、第1の指標の差分が第1閾値以上且つ第2閾値未満であれば、重み算出部130は、信頼度を「中」に設定し、第1の指標の差分が第2閾値以上であれば、重み算出部130は、信頼度を「低」に設定するようにしてもよい。
【0059】
第1の指標の差分が大きい場合、連続する2つの要素に大きな差異が生じていることが想定される。このような場合、2つの要素のいずれか一方は、第1の指標を算出するのに適さない要素である可能性が高い。しかるに、第1の指標の差分に応じて信頼度を設定するようにすれば、各要素がクラス分類に与える影響をすることができる。例えば、信頼度に応じた重みによる重み付けをすることで、第1の指標の差分が小さい要素については、クラス分類に与える影響を大きくすることができる。一方で、第1の指標の差分が大きい要素については、クラス分類に与える影響を小さくすることができる。以上のように、第1の指標の差分に応じて信頼度を設定すれば、適切な重み付けが行われ、系列データを適切に分類することが可能となる。
【0060】
(第1の指標のボラティリティに基づく信頼度)
次に、図8(a)(b)を参照しながら、第1の指標のボラティリティに基づく信頼度について説明する。図8(a)(b)は、第3実施形態に係る情報処理システムで算出される第1の指標のボラティリティの一例を示す図である。
【0061】
図8(a)(b)に示すように、第3実施形態に係る情報処理システム10では、第1算出部110で算出される第1の指標のボラティリティに基づいて、取得される各要素の信頼度を設定する。具体的には、n番目に取得された要素nについて算出される第1の指標と、n+1番目に取得された要素n+1について算出される第1の指標と、n+2番目に取得された要素n+2について算出される第1の指標と、n+3番目に取得された要素n+3について算出される第1の指標との間での揺らぎの大きさに基づいて、n番目に取得される要素n、n+1番目に取得された要素n+1、n+2番目に取得された要素n+2、及びn+3番目に取得された要素n+3の少なくとも1つの信頼度が設定される。
【0062】
系列データに含まれる各要素の信頼度は、第1の指標のボラティリティが小さいほど、高くなるように設定される。例えば、図8(a)に示すように、要素n、要素n+1、要素n+2、及び要素n+3について算出される第1の指標のボラティリティが小さい場合、信頼度は高く設定されてよい。一方、図8(b)に示すように、要素n、要素n+1、要素n+2、及び要素n+3について算出される第1の指標のボラティリティが大きい場合、信頼度は低く設定されてよい。
【0063】
より具体的には、信頼度は、第1の指標のボラティリティを示す値から算出される値であってよい。例えば、第1の指標のボラティリティが小さいほど高い値が算出される計算式を予め用意しておけば、第1の指標のボラティリティから容易に信頼度を算出することができる。なお、第1の指標のボラティリティを示す値は、既存の手法を適宜採用して算出することができるため、ここでの具体的な説明は省略する。
【0064】
或いは、信頼度は、第1の指標のボラティリティが所定の閾値未満であるか否かに基づいて設定されてよい。この場合、第1の指標のボラティリティが所定の閾値未満であれば、重み算出部130は、信頼度を「高」に設定し、第1の指標のボラティリティが所定の閾値以上であれば、重み算出部130は、信頼度を「低」に設定するようにしてもよい。また、重み算出部130は、第1の指標のボラティリティに関する所定の閾値を複数設定してもよい。例えば、第1の指標のボラティリティが第1閾値未満であれば、重み算出部130は、信頼度を「高」に設定し、第1の指標のボラティリティが第1閾値以上且つ第2閾値未満であれば、重み算出部130は、信頼度を「中」に設定し、第1の指標のボラティリティが第2閾値以上であれば、重み算出部130は、信頼度を「低」に設定するようにしてもよい。
【0065】
第1の指標のボラティリティが大きい場合、各要素に大きな差異が生じていることが想定される。このような場合、それらの複数の要素のうち少なくとも1つは、第1の指標を算出するのに適さない要素である可能性が高い。しかるに、第1の指標のボラティリティに応じて信頼度を設定するようにすれば、各要素がクラス分類に与える影響を低減することができる。例えば、信頼度に応じた重みによる重み付けをすることで、第1の指標のボラティリティが小さい要素については、クラス分類に与える影響を大きくすることができる。一方で、第1の指標のボラティリティが大きい要素については、クラス分類に与える影響を小さくすることができる。以上のように、第1の指標のボラティリティに応じて信頼度を設定すれば、適切な重み付けが行われ、系列データを適切に分類することが可能となる。
【0066】
<第4実施形態>
第4実施形態に係る情報処理システム10について、図9を参照して説明する。なお、第4実施形態は、上述した第1から第3実施形態と比べて一部の構成が異なるものであり、ハードウェア構成、及び上述したシステム全体としての動作については、第1実施形態(図1及び図3参照)と同様であってよい。このため、以下では、上述した第1から第3実施形態と異なる部分について詳しく説明し、他の重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0067】
(機能的構成)
まず、図9を参照しながら、第4実施形態に係る情報処理システム20の機能的構成について説明する。図9は、第4実施形態に係る情報処理システムの機能的構成を示すブロック図である。なお、図9では、図2で示した各構成要素と同様の要素に同一の符号を付している。
【0068】
図9に示すように、第4実施形態に係る情報処理システム20は、その機能を実現するための処理ブロックとして、取得部50と、第1算出部110と、第2算出部120と、重み算出部130と、分類部60と、信頼度学習部200とを備えている。即ち、第4実施形態に係る情報処理システム20は、第1実施形態の構成(図2参照)に加えて、信頼度学習部200を更に備えて構成されている。なお、信頼度学習部200は、上述したプロセッサ11(図1参照)によって実現されてよい。
【0069】
信頼度学習部200は、系列データに含まれる各要素の信頼度に関する機械学習を実行可能に構成されている。例えば、信頼度学習部200は、ニューラルネットワークを含んで構成されており、系列データに含まれる各要素の各々の信頼度を決定するモデルを学習により最適化する。信頼度学習部200は、例えば訓練データとして、要素とその信頼度とのペアを利用して機械学習を実行する。信頼度学習部200は、機械学習の結果を用いて、取得部50で取得される各要素の信頼度を決定する。例えば、信頼度学習部200は、取得部50から取得した要素の情報を取得し、学習結果を用いてその要素の信頼度を決定する。信頼度学習部200で決定された信頼度は、例えば重み算出部130に出力され、重みの算出に用いられる。或いは、信頼度学習部200で決定された信頼度は、取得部50で取得された要素に紐付けて第1記憶部112等に記憶されてもよい。あるいは、信頼度学習部200は、要素単独の信頼度に変えて、系列データに含まれる要素間の信頼度を用いることもできる。この場合、要素間の信頼度は、それらの要素が連なる確率の高さを表してもよい。
【0070】
(技術的効果)
次に、第4実施形態に係る情報処理システム20によって得られる技術的効果について説明する。
【0071】
第4実施形態に係る情報処理システム20では、信頼度学習部200によって系列データに含まれる各要素の信頼度が決定される。よって、系列データに含まれる各要素の信頼度を容易に決定することができ、結果として適切な重みを算出することが可能である。
【0072】
<第5実施形態>
第5実施形態に係る情報処理システム10について、図10から図12を参照して説明する。なお、第5実施形態は、上述した第1から第4実施形態と比べて一部の構成及び動作が異なるものであり、例えばハードウェア構成については、第1実施形態(図1参照)と同様であってよい。このため、以下では、上述した第1から第4実施形態と異なる部分について詳しく説明し、他の重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0073】
(機能的構成)
まず、図10を参照しながら、第5実施形態に係る情報処理システム10の機能的構成について説明する。図10は、第5実施形態に係る情報処理システムの機能的構成を示すブロック図である。なお、図10では、図2で示した各構成要素と同様の要素に同一の符号を付している。
【0074】
図10に示すように、第5実施形態に係る情報処理システム10は、その機能を実現するための処理ブロックとして、取得部50と、第1算出部110と、第2算出部120と、重み算出部130と、分類部60とを備えている。また、第5実施形態に係る情報処理システム10は、第1実施形態の第1指標算出部111に代えて、尤度比算出部113を備えており、第2指標算出部121に代えて、統合尤度比算出部123を備えている。なお、信尤度比算出部113及び統合尤度比算出部123の各々は、上述したプロセッサ11(図1参照)によって実現されてよい。
【0075】
尤度比算出部113は、第1の指標として尤度比を算出可能に構成されている。尤度比算出部113は、取得した要素と、過去データに基づいて尤度比を算出する。尤度比は、複数の要素の各々が複数のクラスのうちのあるクラスに属することの尤もらしさを示す値である。以下では、尤度比の具体例を説明する。
【0076】
系列データを構成するN個の要素を、x,… ,xとし、複数のクラスをR,Fとする。すなわち、本例では、簡略化のため、クラスの数が2である2クラス分類であるものとする。ここで、要素xがクラスRに属する確率について、過去データを考慮せずに算出した結果をp(R|x)と表記する。また、要素xがクラスFに属する確率について、過去データを考慮せずに算出した結果をp(F|x)と表記する。このとき、これらの尤度比は、以下の式(1)で表される。
【0077】
【数1】
【0078】
上記式(1)の尤度比は、要素xがクラスRに属する確率と、要素xがクラスFに属する確率との尤もらしさの比を示している。例えば、尤度比が1を超えている場合には、p(R|x)>p(R|x)であるため、要素xはクラスFよりもクラスRに分類すればよい。このように、式(1)の尤度比は、入力された要素がクラスRとクラスFのいずれに属するのかを示す指標として機能する。
【0079】
また、尤度比算出部113は、上述のように複数の要素(即ち、入力された要素と過去データとの関連性)を考慮して算出することができる。この場合、例えば、2つの要素x,xi-1を考慮して算出された尤度比は、以下の式(2)のように表される。
【0080】
【数2】
【0081】
統合尤度比算出部123は、第2の指標として統合尤度比を算出可能に構成されている。統合尤度比算出部123は、尤度比算出部113で算出された尤度比と、過去の統合尤度比とを用いて統合尤度比を算出する。統合尤度比は、系列データが複数のクラスのうちのあるクラスに属することの尤もらしさを示す値である。以下では、尤度比の具体例を説明する。なお、上述した尤度比の説明と同様に、クラスの数が2である2クラス分類の場合について説明する。
【0082】
統合尤度比の算出時点において、N個の要素が入力されている場合、このN個の要素は、x,…,xと表される。ここで、系列データの全体がクラスRに属する確率をp(x,…,x|R)と表記する。また、系列データの全体がクラスFに属する確率をp(x,…,x|F)と表記する。この場合、これらの尤度比は以下の式(3)で表される。式(3)を統合尤度比と呼ぶ。
【0083】
【数3】
【0084】
系列データの各要素が独立であることを仮定する場合には、統合尤度比は、以下の式(4)のように1要素ごとの項に分解して算出することができる。
【0085】
【数4】
【0086】
上記式(4)では、計算の簡略化のため尤度比の対数を用いることにより各要素を和に分解しているが、これは必須ではない。なお、以下では、このような対数尤度比に対しても尤度比又は統合尤度比という用語が用いられることがある。また、対数の底の表記は省略されているが、底の値は任意である。
【0087】
しかしながら、上述したように本実施形態では、2以上の要素を考慮して尤度比及び統合尤度比を算出するため、各要素が独立であるという仮定が成立しないことが多い。したがって、式(4)のように1要素ごとの項に分解することはできず、関係性を考慮する要素の数に応じて異なる計算式により統合尤度比の計算が行われる。
【0088】
例えば、ある要素とその1つ前の要素の2つの要素を考慮する場合には、以下の式(5)を用いて統合尤度比を算出することができる。
【0089】
【数5】
【0090】
また、本実施形態に係る統合尤度比算出部123は、各要素の信頼度に応じた重みによる重み付けをして統合尤度比を算出する。ここで、重みをδ 及びδ であるとすると、式(5)の右辺の統合尤度比を、式(6)のように表すことができる。
【0091】
【数6】
【0092】
式(6)では、クラスRとクラスFとの尤度比を算出する2クラス分類の場合の例を示しているが、クラスの数は3以上であってもよい。例えば、クラスの数がM個である場合には、M個のクラスのうちのk番目のクラスとk番目以外のすべてのクラスとの間の統合尤度比を算出できるように式(6)を拡張したものを用いることができる。そのような拡張の例としては、以下の式(7)のようにk番目以外のすべてのクラスのうちの最大尤度を用いるものが挙げられる。
【0093】
【数7】
【0094】
また、別の例としては、以下の式(8)のように、k番目以外のすべてのクラスの尤度の和を用いるものが挙げられる。
【0095】
【数8】
【0096】
なお、クラスの数が3以上である場合における統合尤度比の算出方法はこれらに限られるものではない。また、式(6)から式(8)では2つ要素を考慮する場合について例示しているが、3つ以上の要素を考慮してもよい。
【0097】
(動作の流れ)
次に、図11を参照しながら、第5実施形態に係る情報処理システム10の動作の流れについて説明する。図11は、第5実施形態に係る情報処理システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【0098】
図11に示すように、第5実施形態に係る情報処理システム10は、取得部50が、系列データから1つの要素を取得する(ステップS21)。取得部50は、取得した系列データの要素を、第1算出部110に出力する。
【0099】
続いて、第1算出部110における尤度比標算出部113が、第1記憶部112から過去データを読み出す(ステップS22)。過去データは、例えば取得部50で今回取得された要素の1つ前に取得された要素の第1指標算出部111での処理結果(言い換えれば、1つ前の要素に対して算出された尤度比)であってよい。或いは、過去データは、取得で取得された要素の1つ前に取得された要素そのものであってもよい。
【0100】
続いて、尤度比算出部113は、取得部50で取得された要素と、第1記憶部112から読みだした過去データに基づいて、新たな尤度比(即ち、取得部50で今回取得された要素に対する尤度比)を算出する(ステップS23)。尤度比算出部113は、算出した尤度比を、第2算出部120に出力する。尤度比算出部113は、算出した尤度比を、第1記憶部112に記憶してもよい。
【0101】
続いて、第2算出部120における統合尤度比算出部123が、第2記憶部122から過去の統合尤度比を読み出す(ステップS24)。過去の統合尤度比は、例えば取得部50で今回取得された要素の1つ前に取得された要素についての、統合尤度比算出部123での処理結果(言い換えれば、1つ前の要素に対して算出された統合尤度比)であってよい。
【0102】
続いて、統合尤度比算出部123は、尤度比算出部113で算出された尤度比と、第2記憶部122から読みだした過去の統合尤度比に基づいて、新たな統合尤度比(即ち、取得部50で今回取得された要素に対する統合尤度比)を算出する(ステップS25)。ここで特に、統合尤度比算出部123は、重み算出部130で算出された重みによる重み付けをして、新たな統合尤度比を算出する(上述した式(6)等を参照)。統合尤度比算出部123は、算出した統合尤度比を、分類部60に出力する。統合尤度比算出部123は、算出した統合尤度比を、第2記憶部122に記憶してもよい。
【0103】
続いて、分類部60が、統合尤度比算出部123で算出された統合尤度比が閾値を超えるクラスがあるか否かを判定する(ステップS26)。ここでの閾値は、系列データが複数のクラスのいずれに属するか判定するための閾値として予め設定されている。このため、閾値は複数のクラスの各々に設定されている。以下では、具体的な例を挙げてより説明を進める。
【0104】
分類部60の分類処理は、クラスR又はクラスFへの2クラス分類であるものとし、クラスRとクラスFの判定に用いる閾値をそれぞれT、Tとする。また、統合尤度比をLとする。この場合、L<Tである場合には(ステップS26:YES)、分類部60は、系列データをクラスRに分類する(ステップS27)。一方、L>Tである場合には(ステップS26:YES)、分類部60は、系列データをクラスFに分類する(ステップS27)。このようにすれば、統合尤度比と各クラスの閾値とを比較することで、系列データがいずれのクラスに属するかを適切に判定することができる。また、T≦L且つL≦2である場合には(ステップS26:NO)、分類部140は、系列データを分類可能でないと判定し、取得部50は次の要素を取得する。このようにすれば、更に取得される要素を考慮して統合尤度比を算出することができるため、統合尤度比がいずれかのクラスの閾値を超えるまで(即ち、系列データをいずれかのクラスに分類できるまで)、統合尤度比を更新しながら処理を続行することができる。
【0105】
なお、M種類のクラスを分類する場合には、M個の閾値を準備しておき、M個の統合尤度比とM個の閾値とをそれぞれ比較することにより分類処理を行うことができる。このとき、分類部60は、統合尤度比が最初に閾値を超えたクラスに系列データを分類すればよい。統合尤度比がいずれの閾値も超えない場合には、分類部60は、系列データを分類可能でないと判定し、取得部50は次の要素を取得する。
【0106】
上述の分類手法は例示であり、これに限られない。例えば、入力された要素数が所定値(最大要素数)よりも多い場合には、統合尤度比が閾値を超えているクラスが存在しない場合であっても系列データを強制的にいずれかのクラスに分類して処理を終了するように手順を変形してもよい。これにより、計算時間が長くなりすぎることを防ぐことができる。この例では、いずれかのクラスに確実に分類されるように判定基準を相互排他的なものとすることが望ましい。
【0107】
(具体的な分類例)
次に、図12を参照しながら、第5実施形態に係る情報処理システム10による具体的な分類例について説明する。図12は、第5実施形態に係る情報処理システムによるクラス分類の一例を示すグラフである。
【0108】
図12に示すように、第5実施形態に係る情報処理システム10が、本物の顔と、偽物の顔とを分類するものであるとする。即ち、第5実施形態に係る情報処理システム10が、系列データとして入力される顔情報を、本物の顔のクラス又は偽物の顔のクラスに分類するものであるとする。
【0109】
まず、線Aで示す統合尤度比は、比較的早い段階で本物の顔に対応する閾値+Tに到達している。よって、線Aに対応する系列データは、判定が容易な本物の顔であると判断できる。また、線Bで示す統合尤度比は、線Aで示す統合尤度比と比べると少し遅い段階で本物の顔に対応する閾値+Tに到達している。よって、線Bに対応する系列データは、判定が難しい本物の顔であると判断できる。一方、線Cで示す統合尤度比は、最終的に偽物の顔に対応する閾値-Tに到達している。よって、線Cに対応する系列データは、偽物の顔であると判断できる。なお、線Dで示す統合尤度比は、本物の顔に対応する閾値+T、及び偽物の顔に対応する閾値-Tのいずれにも到達することなくタイムアウトとなっている(即ち、処理開始から所定時間が経過している)。このような系列データについては、いずれのクラスにも分類することなく処理を終了してもよい。この場合、第5実施形態に係る情報処理システム10は、判定不能であることを示す情報を出力するようにしてもよい。
【0110】
なお、上述した閾値+Tと閾値-Tとは、互いに異なる値であってよい。即ち、「+T」及び「-T」は、その絶対値が互いに異なる値として設定されてもよい。例えば、閾値+Tを閾値-Tよりも大きく設定すると、本物の顔であると判定され易くする一方で、偽物の顔であると判定され難くすることができる。逆に、閾値+Tを閾値-Tよりも小さく設定すると、本物の顔であると判定され難くする一方で、偽物の顔であると判定され易くすることができる。
【0111】
(技術的効果)
次に、第5実施形態に係る情報処理システム10によって得られる技術的効果について説明する。
【0112】
第5実施形態に係る情報処理システム10では、系列データに含まれる要素から尤度比、及び統合尤度比が算出され、系列データが複数のクラスのいずれかに分類される。尤度比は、すでに説明したように、複数の要素の各々が複数のクラスのうちのあるクラスに属することの尤もらしさを示す値である。よって、尤度比を第1の指標として用いれば、適切に第2の指標(即ち、統合尤度比)を算出することができる。また、統合尤度比は、系列データが複数のクラスのうちのあるクラスに属することの尤もらしさを示す値である。よって、統合尤度比を第2の指標として用いれば、適切に系列データを複数のクラスに分類することができる。
【0113】
なお、統合尤度比を用いる場合、その一部に適切でないデータが含まれていることで、予期せぬ不具合が発生し得る。具体的には、系列全体の要素を考慮するが故に、一部の適切なデータについても考慮され、その結果として分類精度悪化や、分類時間遅延等の問題が生ずるおそれがある。しかるに本実施形態では、各要素に対して重み付けされた状態で統合尤度比が算出される。よって、上記のような不具合の発生を効果的に抑制することが可能である。
【0114】
<第6実施形態>
第6実施形態に係る個人識別システムについて、図13を参照して説明する。なお、第6実施形態は、上述した第1から第5実施形態に係る情報処理システムの適用例を説明するものであり、例えばハードウェア構成については、第1実施形態(図1参照)と同様であってよい。このため、以下では、上述した第1から第5実施形態と異なる部分について詳しく説明し、他の重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0115】
(機能的構成)
まず、図13を参照しながら、第6実施形態に係る個人識別システム300の機能的構成について説明する。図13は、第6実施形態に係る個人識別システムの機能的構成を示すブロック図である。
【0116】
図13において、第6実施形態に係る個人識別システム300は、例えば、顔画像、指紋画像、虹彩画像等の識別対象者の生体情報を予め登録されている生体情報と照合することにより、個人を識別するシステムとして構成されている。個人識別システム300は、生体情報を取得するための装置(例えば、カメラ等)を備え、スタンドアローンで動作するものであってもよく、個人識別システム内の他の装置から生体情報を取得して個人の識別を行うものであってもよい。また、個人識別システム300は互いに通信接続された複数の装置により構成されていてもよい。
【0117】
個人識別システム300は、例えば、顔認証ゲート用の認証装置として構成されてもよい。或いは、個人識別装置300は、インテリジェントカメラとして構成されてもよい。ここでのインテリジェントカメラとは、内部に解析機能を備えるIP(Internet Protocol)カメラ又はネットワークカメラであり、スマートカメラと呼ばれることもある。
【0118】
第6実施形態に係る個人識別システム300は、その機能を実現するための処理ブロックとして、分類部301と、生体情報取得部302と、生体情報記憶部103を備えている。
【0119】
分類部301は、上述した各実施形態の情報処理システム10を含んで構成される。分類装置301には、第1実施形態の情報処理システム100が用いられる。分類部310は、生体情報を要素とする系列データを取得する。分類部301は、生体情報記憶部303に記憶された情報を参照しつつ、入力された系列データを予め定められた複数のクラスのうちのいずれかに分類する。ここでの複数のクラスは、例えば入力された系列データが登録された人物のいずれかと合致したことを示すクラスであってよい。或いは、複数のクラスは、入力された系列データになりすましが存在することを示すクラスと、入力された系列データになりすましが存在しないことを示すクラスとを含んでいてもよい。
【0120】
生体情報取得部302は、生体情報を取得する装置である。生体情報取得部302は、例えば動画を撮影可能なデジタルカメラを含んで構成されてよい。なお、生体情報の識別において、生体情報取得部302で取得された画像等から照合用の特徴量を抽出する場合がある。この特徴量抽出処理は、分類部301で行われてもよく、生体情報取得部302で生体情報取得時に行われてもよく、その他の装置により行われてもよい。以下では、生体情報取得部302で取得された画像等そのものと、これから抽出された特徴量とをまとめて生体情報と称することがある。
【0121】
生体情報記憶部303は、個人識別システム300で用いる生体情報等の各情報を記録可能に構成されている。例えば、生体情報取得部302で取得された生体情報は、生体情報記憶部303に記憶されてよい。生体情報記憶部303に記憶されている情報は、分類部301によって適宜読み出し可能な状態で記憶されていてもよい。また、分類部301の分類結果に関する情報も、生体情報記憶部303に記憶されてよい。
【0122】
(動作例)
次に、第6実施形態に係る個人識別システム300の動作例について説明する。以下では、個人識別システム300が、なりすまし検出を行う例を説明する。
【0123】
顔認証等の生体認証におけるなりすまし手法の1つとして、本人の顔写真、顔模型等の非生体を用いる手法が知られている。このようななりすましを検出する手法として、複数の画像を撮影し、複数の画像間の差異が少ない場合に生体ではないと判定する手法がある。本実施形態の分類装置301は、系列データとして認証対象者の時系列画像を入力し、画像間の差異を特徴量として、系列データをなりすましの有無を示すクラス分類を行う。これにより、系列データがどのクラスに分類されたかによって、なりすまし検出が可能である。この手法では、入力される時系列データに含まれる画像の時間変化が非常に少なく、画像間の相関が強い場合が多い。そのため、なりすまし検出の分類を行う場合においては、要素間の関連性が強い系列データに対して分類精度が劣化しにくい上述した第1から第5実施形態の情報処理システム100の分類処理を用いることが効果的である。
【0124】
<第7実施形態>
第7実施形態に係る情報処理システム10について、図14を参照して説明する。なお、第7実施形態は、上述した第1から第5実施形態に係る情報処理システムの基本的な構成を示すものであり、その構成や動作については、すでに説明した各実施形態と同様であってよい。このため、以下では、上述した第1から第5実施形態と異なる部分について詳しく説明し、他の重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0125】
(機能的構成)
まず、図14を参照しながら、第7実施形態に係る情報処理システム10の機能的構成について説明する。図14は、第7実施形態に係る情報処理システムの機能的構成を示すブロック図である。なお、図14では、図2で示した各構成要素と同様の要素に同一の符号を付している。
【0126】
図14に示すように、第7実施形態に係る情報処理システム10は、その機能を実現するための処理ブロックとして、取得部50と、第1算出部110と、第2算出部120と、重み算出部130と、分類部60とを備えている。
【0127】
取得部50は、系列データに含まれる複数の要素を逐次的に取得可能に構成されている。第1算出部110は、系列データに含まれる複数の要素の各々について、複数のクラスのいずれに属するかを示す第1の指標を算出可能に構成されている。重み算出部130は、第1の指標の算出に係る信頼度に応じた重みを算出可能に構成されている。第2算出部120は、重み算出部130で算出した重みにより重み付けした第1の指標に基づいて、系列データが複数のクラスのいずれに属するかを示す第2の指標を算出可能に構成されている。分類部60は、第2算出部120で算出された第2の指標に基づいて、系列データを複数のクラスのいずれかに分類可能に構成されている。
【0128】
(技術的効果)
次に、第7実施形態に係る情報処理システム10によって得られる技術的効果について説明する。
【0129】
第7実施形態に係る情報処理システム10では、系列データに含まれる要素から算出される第1の指標及び第2の指標を用いて、系列データが複数のクラスのいずれかに分類される。第7実施形態では特に、クラス分類する際に用いられる第2の指標が、各要素の信頼度に応じて算出された重みによって重み付けされている。この結果、重み付けを行わない場合と比較して、より適切に系列データを分類することが可能となる。
【0130】
<付記>
以上説明した実施形態に関して、更に以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0131】
(付記1)
付記1に記載の情報処理システムは、系列データに含まれる複数の要素を逐次的に取得する取得手段と、前記複数の要素の各々について、複数のクラスのいずれに属するかを示す第1の指標を算出する第1算出手段と、前記複数の要素の各々について、前記第1の指標の算出に係る信頼度に応じた重みを算出する重み算出手段と、前記重みにより重み付けした前記第1の指標に基づいて、前記系列データが前記複数のクラスのいずれに属するかを示す第2の指標を算出する第2算出手段と、前記第2の指標に基づいて、前記系列データを前記複数のクラスのいずれかに分類する分類手段とを備えることを特徴とする情報処理システムである。
【0132】
(付記2)
付記2に記載の情報処理システムは、前記系列データは画像データであり、前記重み算出手段は、前記画像データの鮮明度の高さ、前記画像データを取得した撮像手段と撮像対象との間の距離の近さ、又は前記画像データを取得したタイミング、を前記信頼度として前記重みを算出することを特徴とする付記1に記載の情報処理システムである。
【0133】
(付記3)
付記3に記載の情報処理システムは、前記重み算出手段は、前記複数の要素のうち、連続して取得される2つの要素において算出される前記第1の指標間の差分の小ささ、又は連続して取得される所定数の要素において算出される第1の指標間のボラティリティの小ささ、を前記信頼度として重みを算出することを特徴とする付記1に記載の情報処理システムである。
【0134】
(付記4)
付記4に記載の情報処理システムは、前記信頼度が紐付けられた訓練データを用いて前記信頼度に関する機械学習を実行し、前記機械学習の結果に基づいて前記複数の要素の各々の前記信頼度を決定する学習手段を更に備えることを特徴とする付記1から3のいずれか一項に記載の情報処理システムである。
【0135】
(付記5)
付記5に記載の情報処理システムは、前記第1の指標は、前記複数の要素の各々が前記複数のクラスのうちのあるクラスに属することの尤もらしさを示す尤度比を含むことを特徴とする付記1から4のいずれか一項に記載の情報処理システムである。
【0136】
(付記6)
付記6に記載の情報処理システムは、前記第2の指標は、前記系列データが前記複数のクラスのうちのあるクラスに属することの尤もらしさを示す尤度比を含むことを特徴とする付記1から5のいずれか一項に記載の情報処理システムである。
【0137】
(付記7)
付記7に記載の情報処理システムは、前記分類手段は、前記第2の指標が所定の閾値を超えているクラスが存在する場合に、前記系列データを前記第2の指標が前記所定の閾値を超えているクラスに分類することを特徴とする付記1から6のいずれか一項に記載の情報処理システムである。
【0138】
(付記8)
付記8に記載の情報処理システムは、前記第2の指標が所定の閾値を超えているクラスが存在しない場合に、前記分類手段は、前記系列データをいずれのクラスにも分類せず、前記取得手段は、更に要素を取得することを特徴とする付記1から7のいずれか一項に記載の情報処理システムである。
【0139】
(付記9)
付記9に記載の情報処理方法は、系列データに含まれる複数の要素を逐次的に取得し、前記複数の要素の各々について、複数のクラスのいずれに属するかを示す第1の指標を算出し、前記複数の要素の各々について、前記第1の指標の算出に係る信頼度に応じた重みを算し、前記重みにより重み付けした前記第1の指標に基づいて、前記系列データが前記複数のクラスのいずれに属するかを示す第2の指標を算出し、前記第2の指標に基づいて、前記系列データを前記複数のクラスのいずれかに分類することを特徴とする情報処理方法である。
【0140】
(付記10)
付記10に記載のコンピュータプログラムは、系列データに含まれる複数の要素を逐次的に取得し、前記複数の要素の各々について、複数のクラスのいずれに属するかを示す第1の指標を算出し、前記複数の要素の各々について、前記第1の指標の算出に係る信頼度に応じた重みを算し、前記重みにより重み付けした前記第1の指標に基づいて、前記系列データが前記複数のクラスのいずれに属するかを示す第2の指標を算出し、前記第2の指標に基づいて、前記系列データを前記複数のクラスのいずれかに分類するようにコンピュータを動作させることを特徴とするコンピュータプログラムである。
【0141】
(付記11)
付記11に記載の記録媒体は、付記10に記載のコンピュータプログラムが記録されていることを特徴とする記録媒体である。
【0142】
この開示は、請求の範囲及び明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う情報処理システム、情報処理方法、及びコンピュータプログラムもまたこの開示の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0143】
10,20 情報処理システム
11 プロセッサ
50 取得部
110 第1算出部
111 第1指標算出部
112 第1記憶部
113 尤度比算出部
120 第2算出部
121 第2指標算出部
122 第2記憶部
123 統合尤度比算出部
130 重み算出部
200 信頼度学習部
300 個人識別システム
301 分類装置
302 生体情報取得部
303 生体情報記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14