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特許7509223フィルムコンデンサ、フィルム、及び、金属化フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】フィルムコンデンサ、フィルム、及び、金属化フィルム
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/32 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
H01G4/32 511L
H01G4/32 511G
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022555530
(86)(22)【出願日】2021-10-06
(86)【国際出願番号】 JP2021036978
(87)【国際公開番号】W WO2022075359
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2020171217
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】山崎 一人
(72)【発明者】
【氏名】稲倉 智生
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/175511(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/161984(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/097751(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/128726(WO,A1)
【文献】特開2001-002805(JP,A)
【文献】特開2019-172921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有する第1有機材料と、芳香族化合物のうちでイソシアネート基を有する第2有機材料との硬化物を含み、かつ、厚み方向に対向する第1主面及び第2主面を有する誘電体フィルムと、前記誘電体フィルムの少なくとも前記第1主面上に設けられた金属層とが巻回されてなる巻回体を備え、
前記誘電体フィルムの前記第1主面には、前記第2有機材料を有する複数の突起が存在し、
前記誘電体フィルムの前記第1主面の100μm×140μmの面積範囲において、前記誘電体フィルムの前記第1主面のスキューネスは、0.782以上、14.3以下である、ことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記誘電体フィルムの前記第1主面上に設けられた前記金属層における、前記誘電体フィルムの前記第1主面と反対側の表面には、前記複数の突起に沿う複数の凸部が存在する、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項3】
前記誘電体フィルムの前記第1主面上に設けられた前記金属層の前記表面側での静摩擦係数は、1.4以下である、請求項2に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項4】
前記巻回体の巻軸方向に垂直な断面を見たときに、前記巻回体の断面形状は、扁平形状である、請求項1~3のいずれかに記載のフィルムコンデンサ。
【請求項5】
水酸基を有する第1有機材料と、芳香族化合物のうちでイソシアネート基を有する第2有機材料との硬化物を含み、かつ、厚み方向に対向する第1主面及び第2主面を有する誘電体フィルムと、前記誘電体フィルムの少なくとも前記第1主面上に設けられた金属層とが巻回されてなる巻回体を備え、
前記誘電体フィルムの前記第1主面には、前記第2有機材料を有する複数の突起が存在し、
前記誘電体フィルムの前記第1主面上に設けられた前記金属層における、前記誘電体フィルムの前記第1主面と反対側の表面には、前記複数の突起に沿う複数の凸部が存在し、
前記金属層の前記表面の100μm×140μmの面積範囲において、前記金属層の前記表面のスキューネスは、0.562以上、13.9以下である、ことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項6】
前記誘電体フィルムの前記第1主面上に設けられた前記金属層の前記表面側での静摩擦係数は、1.4以下である、請求項5に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項7】
前記巻回体の巻軸方向に垂直な断面を見たときに、前記巻回体の断面形状は、扁平形状である、請求項5又は6に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項8】
水酸基を有する第1有機材料と、芳香族化合物のうちでイソシアネート基を有する第2有機材料との硬化物を含み、かつ、厚み方向に対向する第1主面及び第2主面を有し、
前記第1主面には、前記第2有機材料を有する複数の突起が存在し、
前記第1主面の100μm×140μmの面積範囲において、前記第1主面のスキューネスは、0.782以上、14.3以下である、ことを特徴とするフィルム。
【請求項9】
前記第1主面側での静摩擦係数が1.0以下である、請求項8に記載のフィルム。
【請求項10】
水酸基を有する第1有機材料と、芳香族化合物のうちでイソシアネート基を有する第2有機材料との硬化物を含み、かつ、厚み方向に対向する第1主面及び第2主面を有するフィルムと、
前記フィルムの少なくとも前記第1主面上に設けられた金属層と、を備え、
前記フィルムの前記第1主面には、前記第2有機材料を有する複数の突起が存在し、
前記フィルムの前記第1主面上に設けられた前記金属層における、前記フィルムの前記第1主面と反対側の表面には、前記複数の突起に沿う複数の凸部が存在し、
前記金属層の前記表面の100μm×140μmの面積範囲において、前記金属層の前記表面のスキューネスは、0.562以上、13.9以下である、ことを特徴とする金属化フィルム。
【請求項11】
前記フィルムの前記第1主面上に設けられた前記金属層の前記表面側での静摩擦係数は、1.4以下である、請求項10に記載の金属化フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムコンデンサ、フィルム、及び、金属化フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサの一種として、可撓性を有するフィルムを誘電体フィルムとして用いながら、フィルムを挟んで互いに対向する第1金属層及び第2金属層を配置した構造のフィルムコンデンサが知られている。このようなフィルムコンデンサは、例えば、第1金属層が形成されたフィルムと第2金属層が形成されたフィルムとを巻回又は積層することによって製造される。
【0003】
フィルムを巻回して巻回体を作製することによりフィルムコンデンサを製造する際、フィルムコンデンサを低背化するために巻回体をプレスすることがある。この際、フィルムの滑り性が良好であると、巻回体が均一にプレスされやすくなることでフィルムコンデンサの低背化が容易になる。
【0004】
一方、巻回体において、重なり合うフィルム同士の間に隙間が形成されると、絶縁破壊時に、フィルムからの分解ガスがフィルムコンデンサの内部から飛散しやすくなり、結果的に、フィルムの絶縁状態が回復する、いわゆるセルフヒーリング機能が働くとされている。巻回体を作製する際、フィルムの滑り性が良好であると、重なり合うフィルム同士の間に隙間が均一に形成されやすくなるため、セルフヒーリング機能が働きやすくなる。
【0005】
以上のことから、フィルムコンデンサのプレス性及びセルフヒーリング性を高めるために、フィルムに滑り性を付与することがある。フィルムに滑り性を付与する方法として、特許文献1には、ベース樹脂に有機フィラーを配合する方法が開示されている。このように、従来では、樹脂にフィラーを配合してフィルムの表面を荒らすことにより、フィルムに滑り性を付与している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-251493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、樹脂にフィラーが配合された従来のフィルムでは、樹脂及びフィラーの誘電率が異なることにより、フィラーの近傍に電界が集中しやすくなり、結果的に、絶縁破壊電圧が低下してしまう。そのため、従来のフィルムでは、滑り性及び耐電圧性を両立させる点で、改善の余地があると言える。
【0008】
一方、フィルムの表面を荒らすことにより、フィルムを巻回してフィルムコンデンサを製造したときに、重なり合うフィルム同士の間に隙間が形成されやすくなる。そのため、絶縁破壊時に、セルフヒーリング機能が働きやすくなると考えられる。
【0009】
しかしながら、フィルムの表面が荒れている部分の硬度が低いと、フィルムを巻回してフィルムコンデンサを製造する際に、フィルムの表面が荒れている部分が潰れやすくなるため、重なり合うフィルム同士の間に隙間が形成されにくくなる。その結果、絶縁破壊時に、フィルムからの分解ガスがフィルムコンデンサの内部から飛散しにくくなるため、セルフヒーリング機能が働きにくくなってしまう。
【0010】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、滑り性及び耐電圧性に優れ、かつ、優れたプレス性及びセルフヒーリング性を付与可能な誘電体フィルムを有するフィルムコンデンサを提供することを目的とするものである。また、本発明は、上記フィルムコンデンサの誘電体フィルムとして使用可能なフィルムを提供することを目的とするものである。更に、本発明は、上記フィルムコンデンサに使用可能な金属化フィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のフィルムコンデンサは、第1態様において、水酸基を有する第1有機材料と、芳香族化合物のうちでイソシアネート基を有する第2有機材料との硬化物を含み、かつ、厚み方向に対向する第1主面及び第2主面を有する誘電体フィルムと、上記誘電体フィルムの少なくとも上記第1主面上に設けられた金属層とが巻回されてなる巻回体を備え、上記誘電体フィルムの上記第1主面には、上記第2有機材料を有する複数の突起が存在し、上記誘電体フィルムの上記第1主面の100μm×140μmの面積範囲において、上記誘電体フィルムの上記第1主面のスキューネスは、0.782以上、14.3以下である、ことを特徴とする。
【0012】
本発明のフィルムコンデンサは、第2態様において、水酸基を有する第1有機材料と、芳香族化合物のうちでイソシアネート基を有する第2有機材料との硬化物を含み、かつ、厚み方向に対向する第1主面及び第2主面を有する誘電体フィルムと、上記誘電体フィルムの少なくとも上記第1主面上に設けられた金属層とが巻回されてなる巻回体を備え、上記誘電体フィルムの上記第1主面には、上記第2有機材料を有する複数の突起が存在し、上記誘電体フィルムの上記第1主面上に設けられた上記金属層における、上記誘電体フィルムの上記第1主面と反対側の表面には、上記複数の突起に沿う複数の凸部が存在し、上記金属層の上記表面の100μm×140μmの面積範囲において、上記金属層の上記表面のスキューネスは、0.562以上、13.9以下である、ことを特徴とする。
【0013】
本発明のフィルムは、水酸基を有する第1有機材料と、芳香族化合物のうちでイソシアネート基を有する第2有機材料との硬化物を含み、かつ、厚み方向に対向する第1主面及び第2主面を有し、上記第1主面には、上記第2有機材料を有する複数の突起が存在し、上記第1主面の100μm×140μmの面積範囲において、上記第1主面のスキューネスは、0.782以上、14.3以下である、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の金属化フィルムは、水酸基を有する第1有機材料と、芳香族化合物のうちでイソシアネート基を有する第2有機材料との硬化物を含み、かつ、厚み方向に対向する第1主面及び第2主面を有するフィルムと、上記フィルムの少なくとも上記第1主面上に設けられた金属層と、を備え、上記フィルムの上記第1主面には、上記第2有機材料を有する複数の突起が存在し、上記フィルムの上記第1主面上に設けられた上記金属層における、上記フィルムの上記第1主面と反対側の表面には、上記複数の突起に沿う複数の凸部が存在し、上記金属層の上記表面の100μm×140μmの面積範囲において、上記金属層の上記表面のスキューネスは、0.562以上、13.9以下である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、滑り性及び耐電圧性に優れ、かつ、優れたプレス性及びセルフヒーリング性を付与可能な誘電体フィルムを有するフィルムコンデンサを提供できる。また、本発明によれば、上記フィルムコンデンサの誘電体フィルムとして使用可能なフィルムを提供できる。更に、本発明によれば、上記フィルムコンデンサに使用可能な金属化フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のフィルムコンデンサの一例を示す斜視模式図である。
図2図1中の線分A1-A2に対応する部分を示す断面模式図である。
図3図1及び図2中の巻回体の一例を示す斜視模式図である。
図4】ヒューズ部が設けられた金属層の一例を示す平面模式図である。
図5】本発明のフィルムの一例を示す平面模式図である。
図6図5中の線分B1-B2に対応する部分を示す断面模式図である。
図7】本発明のフィルムコンデンサを構成する金属化フィルムの一例を示す平面模式図である。
図8図7中の線分C1-C2に対応する部分を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のフィルムコンデンサと、本発明のフィルムと、本発明の金属化フィルムとについて説明する。なお、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更されてもよい。また、以下において記載する個々の好ましい構成を複数組み合わせたものもまた本発明である。
【0018】
本発明のフィルムコンデンサは、第1態様及び第2態様において、水酸基を有する第1有機材料と、芳香族化合物のうちでイソシアネート基を有する第2有機材料との硬化物を含み、かつ、厚み方向に対向する第1主面及び第2主面を有する誘電体フィルムと、上記誘電体フィルムの少なくとも上記第1主面上に設けられた金属層とが巻回されてなる巻回体を備える。
【0019】
本発明のフィルムコンデンサの第1態様及び第2態様を特に区別しない場合、単に「本発明のフィルムコンデンサ」と言う。
【0020】
以下では、本発明のフィルムコンデンサの一例として、誘電体フィルムの少なくとも一方の主面上に金属層が設けられた金属化フィルムが積層された状態で巻回されてなる、いわゆる巻回型のフィルムコンデンサについて説明する。
【0021】
図1は、本発明のフィルムコンデンサの一例を示す斜視模式図である。図2は、図1中の線分A1-A2に対応する部分を示す断面模式図である。図3は、図1及び図2中の巻回体の一例を示す斜視模式図である。
【0022】
本明細書中、フィルムコンデンサにおける積層方向及び幅方向を、図1図2、及び、図3に示すように、各々、T及びWで定められる方向とする。なお、巻回型のフィルムコンデンサでは、積層方向が複数存在するとも言えるが、本明細書中ではTで定められる方向とする。ここで、積層方向Tと幅方向Wとは、互いに直交している。
【0023】
図1及び図2に示すように、フィルムコンデンサ10は、巻回体40と、巻回体40の一方の端面上に設けられた第1外部電極41と、巻回体40の他方の端面上に設けられた第2外部電極42と、を有している。ここで、巻回体40の両端面は、幅方向Wにおいて互いに対向している。
【0024】
図2及び図3に示すように、巻回体40は、第1金属化フィルム11と第2金属化フィルム12とが積層方向Tに積層された状態で巻回されてなる巻回体である。つまり、フィルムコンデンサ10は、巻回体40を有する巻回型のフィルムコンデンサである。
【0025】
フィルムコンデンサ10では、フィルムコンデンサ10の低背化の観点から、前記巻回体の巻軸方向に垂直な断面を見たときに、巻回体40の断面形状は、扁平形状であることが好ましい。より具体的には、巻回体40の断面形状が楕円又は長円のような扁平形状にプレスされ、巻回体40の断面形状が真円であるときよりも厚みが小さい形状とされることが好ましい。
【0026】
巻回体の断面形状が扁平形状となるようにプレスされたかどうかについては、例えば、巻回体にプレス痕が存在するかどうかで確認できる。
【0027】
フィルムコンデンサ10は、円柱状の巻回軸を有していてもよい。巻回軸は、巻回状態の第1金属化フィルム11及び第2金属化フィルム12の中心軸上に配置されるものであり、第1金属化フィルム11及び第2金属化フィルム12を巻回する際の巻軸となるものである。
【0028】
第1金属化フィルム11は、第1誘電体フィルム13と、第1金属層15と、を有している。
【0029】
第1誘電体フィルム13は、厚み方向(図2中では、積層方向T)に対向する第1主面13a及び第2主面13bを有している。
【0030】
第1金属層15は、第1誘電体フィルム13の第1主面13a上に設けられている。より具体的には、第1金属層15は、幅方向Wにおいて、第1誘電体フィルム13の一方の側縁に届き、第1誘電体フィルム13の他方の側縁に届かないように設けられている。
【0031】
第2金属化フィルム12は、第2誘電体フィルム14と、第2金属層16と、を有している。
【0032】
第2誘電体フィルム14は、厚み方向(図2中では、積層方向T)に対向する第1主面14a及び第2主面14bを有している。
【0033】
第2金属層16は、第2誘電体フィルム14の第1主面14a上に設けられている。より具体的には、第2金属層16は、幅方向Wにおいて、第2誘電体フィルム14の一方の側縁に届かず、第2誘電体フィルム14の他方の側縁に届くように設けられている。
【0034】
巻回体40では、第1金属層15における第1誘電体フィルム13の側縁に届いている側の端部が巻回体40の一方の端面に露出し、第2金属層16における第2誘電体フィルム14の側縁に届いている側の端部が巻回体40の他方の端面に露出するように、隣り合う第1金属化フィルム11及び第2金属化フィルム12が幅方向Wにずれている。
【0035】
巻回体40は、第1金属化フィルム11と第2金属化フィルム12とが積層方向Tに積層された状態で巻回されてなることから、第1金属層15、第1誘電体フィルム13、第2金属層16、及び、第2誘電体フィルム14が積層方向Tに順に積層された状態で巻回されてなる巻回体である、とも言える。
【0036】
巻回体40では、第1金属化フィルム11が第2金属化フィルム12の内側となり、第1金属層15が第1誘電体フィルム13の内側となり、第2金属層16が第2誘電体フィルム14の内側となるように、第1金属化フィルム11と第2金属化フィルム12とが積層方向Tに積層された状態で巻回されている。つまり、第1金属層15と第2金属層16とは、第1誘電体フィルム13又は第2誘電体フィルム14を挟んで互いに対向している。
【0037】
第2金属層16は、第2誘電体フィルム14の第1主面14a上ではなく、第1誘電体フィルム13の第2主面13b上に設けられていてもよい。この場合、巻回体40では、第1誘電体フィルム13の第1主面13a上に第1金属層15が設けられ、かつ、第2主面13b上に第2金属層16が設けられた金属化フィルムと、第2誘電体フィルム14とが積層方向Tに積層された状態で巻回されていることになる。
【0038】
第1金属層15及び第2金属層16には、各々、ヒューズ部が設けられていることが好ましい。
【0039】
図4は、ヒューズ部が設けられた金属層の一例を示す平面模式図である。
【0040】
図4に示すように、第1金属層15には、複数の分割電極部61と、電極部62と、ヒューズ部63と、が設けられている。
【0041】
複数の分割電極部61は、絶縁スリット64により区分されており、巻回体40において第2金属層16と対向することになる部分である。
【0042】
電極部62は、絶縁スリット64を挟んで複数の分割電極部61に隣り合っており、巻回体40において第2金属層16と対向しない部分である。
【0043】
ヒューズ部63は、各々の分割電極部61と電極部62とを接続する部分であり、分割電極部61及び電極部62よりも細くなっている。
【0044】
ヒューズ部が設けられた第1金属層15の電極パターンは、図4に示した電極パターンの他に、例えば、特開2004-363431号公報、特開平5-251266号公報等に開示された電極パターンであってもよい。ヒューズ部が設けられた第2金属層16の電極パターンについても同様である。
【0045】
第1外部電極41は、巻回体40の一方の端面上に設けられ、第1金属層15の露出端部に接触することで第1金属層15に接続されている。
【0046】
第1金属層15と第1外部電極41との接続性の観点から、巻回体40の一方の端面において、第1金属化フィルム11は、第2金属化フィルム12に対して幅方向Wに突出していることが好ましい。
【0047】
第2外部電極42は、巻回体40の他方の端面上に設けられ、第2金属層16の露出端部に接触することで第2金属層16に接続されている。
【0048】
第2金属層16と第2外部電極42との接続性の観点から、巻回体40の他方の端面において、第2金属化フィルム12は、第1金属化フィルム11に対して幅方向Wに突出していることが好ましい。
【0049】
第1外部電極41及び第2外部電極42の構成材料としては、各々、例えば、亜鉛、アルミニウム、スズ、亜鉛-アルミニウム合金等の金属が挙げられる。
【0050】
第1外部電極41及び第2外部電極42は、各々、好ましくは、巻回体40の一方の端面及び他方の端面に、上述したような金属を溶射することにより形成される。
【0051】
巻回体40の構成は、図2に示した構成と異なっていてもよい。例えば、第1金属化フィルム11において第1金属層15が幅方向Wで2つの金属層に分断され、一方の金属層が第1誘電体フィルム13の一方の側縁に届き、他方の金属層が第1誘電体フィルム13の他方の側縁に届くように設けられていてもよい。この場合、第1金属層15において、一方の金属層が第1外部電極41に接続され、かつ、他方の金属層が第2外部電極42に接続されつつ、第2金属層16が第1外部電極41及び第2外部電極42の両方に接続されないように設けられると、第1金属層15と第2金属層16との間でコンデンサを構成できる。
【0052】
本発明のフィルムコンデンサでは、誘電体フィルムとして、本発明のフィルムが使用可能である。
【0053】
本発明のフィルムは、水酸基を有する第1有機材料と、芳香族化合物のうちでイソシアネート基を有する第2有機材料との硬化物を含み、かつ、厚み方向に対向する第1主面及び第2主面を有する。
【0054】
図5は、本発明のフィルムの一例を示す平面模式図である。図6は、図5中の線分B1-B2に対応する部分を示す断面模式図である。
【0055】
図5及び図6に示すように、フィルム(誘電体フィルム)110は、厚み方向に対向する第1主面110a及び第2主面110bを有している。
【0056】
フィルム110は、水酸基を有する第1有機材料と、芳香族化合物のうちでイソシアネート基を有する第2有機材料との硬化物を含んでいる。より具体的には、フィルム110は、第1有機材料の水酸基(OH基)と第2有機材料のイソシアネート基(NCO基)とが反応して得られるウレタン結合を有する硬化物を含んでいる。
【0057】
フィルムにおけるウレタン結合の存在については、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)で分析することにより確認できる。
【0058】
第1有機材料は、分子内に複数の水酸基を有するポリオールであることが好ましい。
【0059】
ポリオールとしては、例えば、ポリビニルアセトアセタール等のポリビニルアセタール、フェノキシ樹脂等のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0060】
ポリオールとしては、フェノキシ樹脂が好ましい。
【0061】
第1有機材料としては、複数種類の材料が併用されてもよい。
【0062】
第2有機材料は、芳香族化合物のうちでイソシアネート基を有する、いわゆる芳香族イソシアネートである、とも言える。
【0063】
第2有機材料は、第1有機材料の水酸基と反応して架橋構造を形成することにより、フィルム110を製造する際に、樹脂溶液を硬化させる硬化剤として機能する。
【0064】
第2有機材料は、芳香族化合物のうちで分子内に複数のイソシアネート基を有する、いわゆる芳香族ポリイソシアネートであることが好ましい。
【0065】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)等が挙げられる。芳香族ポリイソシアネートとしては、これらの芳香族ポリイソシアネートの変性体が用いられてもよい。
【0066】
芳香族ポリイソシアネートとしては、MDIが好ましい。MDIとしては、例えば、ポリメリックMDI又はモノメリックMDIを用いることができる。
【0067】
第2有機材料としては、複数種類の材料が併用されてもよい。
【0068】
フィルム110は、図2に示したフィルムコンデンサ10において、第1誘電体フィルム13及び第2誘電体フィルム14の両方に用いられてもよいし、第1誘電体フィルム13及び第2誘電体フィルム14の一方に用いられてもよい。フィルム110が、図2に示したフィルムコンデンサ10の第1誘電体フィルム13及び第2誘電体フィルム14の両方に用いられる場合、第1誘電体フィルム13及び第2誘電体フィルム14の組成は、互いに異なっていてもよいが、互いに同じであることが好ましい。
【0069】
フィルム110は、第1有機材料及び第2有機材料を含む樹脂溶液を、基材の表面に塗工して乾燥させた後、加熱処理で硬化させることによって製造される。得られたフィルム110は、基材から剥離された状態で使用される。
【0070】
本発明のフィルムでは、上記第1主面には、上記第2有機材料を有する複数の突起が存在する。
【0071】
図5及び図6に示したフィルム110では、第1主面110aには、複数の突起120が存在している。また、フィルム110の第1主面110aには、突起120が存在していない平坦部130が存在している。
【0072】
突起の存在については、フィルムの第1主面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより、黒く見える部分として確認できる。
【0073】
突起120は、第2有機材料、すなわち、芳香族イソシアネートを有している。より具体的には、突起120が有する芳香族イソシアネートは、フィルム110が含む硬化物を構成する芳香族イソシアネートに由来している。
【0074】
突起120が芳香族イソシアネートを有することにより、芳香族イソシアネートの芳香環に起因して突起120の硬度が高くなる。よって、フィルム110を用いてフィルムコンデンサを製造する際に、フィルム110を巻回したり、巻回後にプレスしたりしても、突起120が潰れにくくなるため、重なり合うフィルム110同士の間に隙間が形成されやすくなる。その結果、絶縁破壊時に、フィルム110からの分解ガスがフィルムコンデンサの内部から飛散しやすくなるため、フィルムコンデンサはセルフヒーリング性に優れたものとなる。
【0075】
これに対して、突起120が脂肪族イソシアネートを有する場合には、突起120が芳香族イソシアネートを有する場合と比較して、突起120の硬度が低くなる。よって、フィルム110を用いてフィルムコンデンサを製造する際に、フィルム110を巻回したり、巻回後にプレスしたりすると、突起120が潰れやすくなるため、重なり合うフィルム110同士の間に隙間が形成されにくくなる。その結果、絶縁破壊時に、フィルム110からの分解ガスがフィルムコンデンサの内部から飛散しにくくなるため、フィルムコンデンサのセルフヒーリング性が低下する。
【0076】
なお、突起120が芳香族イソシアネートを有していても、例えば、後述するフィルム110の第1主面110aのスキューネスが0.782よりも低いと、フィルム110を巻回してフィルムコンデンサを製造したときに、重なり合うフィルム110同士の間に隙間が形成されにくくなるため、フィルムコンデンサのセルフヒーリング性が低下する。
【0077】
突起における芳香族イソシアネートの存在については、以下のようにして確認できる。まず、日本分光(JASCO)社製のフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)「FT/IR-4100ST」を用いて、測定波数範囲を500cm-1以上、4000cm-1以下として、減衰全反射法(ATR)で突起の赤外線吸収スペクトルを測定する。そして、突起の赤外線吸収スペクトルにおいて、芳香環の吸収ピークとイソシアネート基の吸収ピークとが検出されることを確認することにより、突起が芳香族イソシアネートを有することを確認できる。例えば、芳香族イソシアネートとしてMDIを用いた場合、赤外線吸収スペクトルでは、芳香環の吸収ピークが1450cm-1以上、1550cm-1以下の波数範囲で検出され、イソシアネート基の吸収ピークが2200cm-1以上、2400cm-1以下の波数範囲で検出される。
【0078】
更に、同様の方法により、平坦部の赤外線吸収スペクトルにおいて、芳香環の吸収ピークとイソシアネート基の吸収ピークとが検出されることを確認することにより、突起が有する芳香族イソシアネートが、フィルムが含む硬化物を構成する芳香族イソシアネートに由来していることを確認できる。
【0079】
本発明のフィルムでは、上記第1主面の100μm×140μmの面積範囲において、上記第1主面のスキューネスは、0.782以上、14.3以下である。
【0080】
図5及び図6に示したフィルム110では、第1主面110aの100μm×140μmの面積範囲において、第1主面110aのスキューネスは、0.782以上、14.3以下である。
【0081】
フィルムの表面のスキューネスは、表面高さスキューネスSsk(偏り度)とも呼ばれ、フィルムの表面の高さ分布の対称性を表す指標である。フィルムの表面は、Sskの範囲によって、以下のような態様を示す。
Ssk>0:フィルムの表面に細かい山(突起)が多いことを示す。
Ssk=0:フィルムの表面が厚み方向に対称であることを示す。
Ssk<0:フィルムの表面に細かい谷(凹み)が多いことを示す。
【0082】
フィルム110では、突起120の高さが小さいほど、又は、突起120の個数が少ないほど、第1主面110aのスキューネスが低くなる。一方、フィルム110では、突起120の高さが大きいほど、又は、突起120の個数が多いほど、第1主面110aのスキューネスが高くなる。
【0083】
フィルム110同士を滑らせる際の滑り性を高めるためには、フィルム110同士の接触面積を小さくすることが重要である。このような観点から、フィルム110では、上述したように、第1主面110aに複数の突起120が存在しており、これにより、フィルム110同士を滑らせる際に、フィルム110同士の接触面積を小さくしようとしている。しかしながら、フィルム110の第1主面110aのスキューネスによっては、滑り性及び耐電圧性を両立できないことがある。これに対して、フィルム110の第1主面110aの上述した面積範囲において、フィルム110の第1主面110aのスキューネスが0.782以上、14.3以下であることにより、フィルム110は、滑り性及び耐電圧性に優れたものとなる。更に、フィルム110の滑り性が優れたものとなることにより、フィルム110が巻回されてフィルムコンデンサを構成するときに、プレス性及びセルフヒーリング性が高まる。
【0084】
フィルム110の第1主面110aのスキューネスが0.782よりも低い場合、フィルム110同士を滑らせる際に、フィルム110同士の接触面積が大きくなりやすいため、滑り性が低下する。フィルム110の第1主面110aのスキューネスが14.3よりも高い場合、突起120のような電界が集中しやすい箇所が多くなるため、耐電圧性が低下する。
【0085】
フィルム110の第1主面110aの上述した面積範囲において、フィルム110の第1主面110aのスキューネスが0.782以上、14.3以下であれば、フィルム110の第1主面110aには、複数の突起120に加えて、複数の凹みが存在していてもよい。
【0086】
フィルムの第1主面のスキューネスは、以下のようにして定められる。まず、キーエンス社製のレーザー顕微鏡「VK-8700」を用いて、フィルムの第1主面を100倍に拡大し、100μm×140μmの面積範囲を観察する。この際、フィルムの第1主面に、厚みが10nmであるアルミニウムを予め蒸着しておいてもよい。そして、キーエンス社製のレーザー顕微鏡「VK-8700」の専用解析ソフト「VK-analyzer」を用いて、上述した面積範囲における表面高さスキューネスSskを測定し、得られた測定値を、フィルムの第1主面のスキューネスと定める。
【0087】
突起120の平面形状は、図5に示すような円形状であってもよいし、楕円形状であってもよいし、他の形状であってもよい。
【0088】
突起120の平面形状は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0089】
突起120の断面形状は、図6に示すようなテーパー形状であってもよいし、テーパー形状以外の形状であってもよい。
【0090】
突起120の断面形状は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0091】
突起120の頂面は、図6に示すように窪んでいることが好ましい。この場合、フィルム110同士を滑らせる際に、突起120同士の接触面積が小さくなりやすいため、滑り性が高まりやすくなる。なお、突起120の頂面は、窪んでいなくてもよい。
【0092】
なお、突起120は、先端が尖っている形状であってもよいし、先端が丸みを帯びている形状であってもよい。
【0093】
フィルム110の第2主面110bには、突起が存在していないが、複数の突起が存在していてもよい。この場合、フィルム110の第2主面110bの100μm×140μmの面積範囲において、フィルム110の第2主面110bのスキューネスは、0.782以上、14.3以下であることが好ましい。このとき、フィルム110の第2主面110bには、複数の突起に加えて、複数の凹みが存在していてもよい。
【0094】
フィルムの第2主面のスキューネスは、観察対象をフィルムの第2主面とすること以外、フィルムの第1主面のスキューネスと同様に定められる。
【0095】
本発明のフィルムでは、上記第1主面側での静摩擦係数が1.0以下であることが好ましい。
【0096】
図5及び図6に示したフィルム110では、第1主面110a側での静摩擦係数が1.0以下であることが好ましい。この場合、フィルム110の滑り性が非常に優れたものとなる。
【0097】
一方、フィルム110の第1主面110a側での静摩擦係数が小さくなり過ぎると、フィルム110を巻回してフィルムコンデンサを製造する際に、幅方向にフィルム110の巻きずれが生じてしまい、後の工程で、得られた巻回体の端面上に外部電極を形成しにくくなることがある。このような観点から、フィルム110の第1主面110a側での静摩擦係数は、好ましくは0.1以上である。
【0098】
フィルムの静摩擦係数は、以下のようにして定められる。まず、測定用試料として、フィルムを2枚準備する。ここで、各測定用試料の両主面について、製造時に、基材側であった主面を離型面、基材と反対側であった主面を乾燥面と定義する。より具体的には、各測定試料について、乾燥面は第1主面に該当し、離型面は第2主面に該当する。また、各測定用試料の長さ方向は、フィルムコンデンサの製造過程においてフィルムに引っ張り応力が加わる方向、例えば、フィルムの巻回方向と同じであることが好ましい。次に、2枚の測定用試料のうち、一方の測定用試料について、離型面に角形状の板を固定し、乾燥面が露出するようにする。また、他方の測定用試料について、乾燥面に重さ200gの角形状の重りを貼り付け、離型面が露出するようにする。その後、乾燥面に重りが貼り付けられた状態である他方の測定用試料の離型面を、離型面に板が固定された状態である一方の測定用試料の乾燥面に、長さ方向が互いに平行となるように当接させる。そして、他方の測定用試料の乾燥面に貼り付けられた重りを、イマダ社製のフォースゲージに取り付けた後、長さ方向に150mm/分の速度で引っ張る。この際、重りが他方の測定用試料とともに移動し始めるまでの最大摩擦力を読み取り、その値から静摩擦係数を算出する。
【0099】
フィルム110では、ガラス転移点が130℃以上であることが好ましい。この場合、フィルム110の耐熱性が優れたものとなり、フィルム110で構成されるフィルムコンデンサの保証温度を、例えば、125℃以上と高くすることができる。
【0100】
フィルムのガラス転移点は、以下のようにして定められる。まず、TA Instruments社製の動的粘弾性測定(DMA)装置「RSA-III」を用いて、フィルムを昇温速度10℃/分で室温から250℃まで昇温させながら、測定周波数を10rad/秒、strainを0.1%とする測定条件下で、フィルムの貯蔵弾性率及び損失弾性率を測定する。そして、損失弾性率/貯蔵弾性率で表される損失正接(tanδ)が最大ピーク値を示す温度を、ガラス転移点と定める。
【0101】
フィルム110の厚みSは、好ましくは1μm以上、10μm以下であり、より好ましくは3μm以上、5μm以下である。
【0102】
フィルムの厚みSは、図6に示すように、突起120が存在していない位置で定められる厚みである。
【0103】
フィルムの厚みについては、光学式膜厚計を用いて測定できる。
【0104】
本発明のフィルムは、少なくとも第1主面上に金属層が設けられることで金属化フィルムとなり、本発明のフィルムコンデンサを構成可能となる。
【0105】
図7は、本発明のフィルムコンデンサを構成する金属化フィルムの一例を示す平面模式図である。図8は、図7中の線分C1-C2に対応する部分を示す断面模式図である。
【0106】
図7及び図8に示すように、金属化フィルム210は、図5及び図6に示したフィルム110と、フィルム110の第1主面110a上に設けられた金属層220と、を有している。
【0107】
本発明のフィルムコンデンサでは、上記誘電体フィルムの上記第1主面には、上記第2有機材料を有する複数の突起が存在する。
【0108】
図8に示したフィルム110では、図5及び図6に示したフィルム110と同様に、第1主面110aには、第2有機材料、すなわち、芳香族イソシアネートを有する複数の突起120が存在している。また、フィルム110の第1主面110aには、突起120が存在していない平坦部130が存在している。
【0109】
突起120が芳香族イソシアネートを有することにより、フィルム110の第1主面110a上に金属層220が設けられた金属化フィルム210で構成されるフィルムコンデンサをセルフヒーリング性に優れたものとすることができる。
【0110】
本発明のフィルムコンデンサの第1態様では、上記誘電体フィルムの上記第1主面の100μm×140μmの面積範囲において、上記誘電体フィルムの上記第1主面のスキューネスは、0.782以上、14.3以下である。このように、本発明のフィルムコンデンサの第1態様では、上記複数の突起が存在する上記誘電体フィルムの上記第1主面のスキューネスに着目している。
【0111】
図8に示したフィルム110では、図5及び図6に示したフィルム110と同様に、第1主面110aの100μm×140μmの面積範囲において、第1主面110aのスキューネスは、0.782以上、14.3以下である。
【0112】
フィルム110の第1主面110aの上述した面積範囲において、フィルム110の第1主面110aのスキューネスが0.782以上、14.3以下であることにより、フィルム110は、滑り性及び耐電圧性に優れたものとなる。更に、フィルム110の滑り性が優れたものとなることにより、フィルム110が巻回されてフィルムコンデンサを構成するときに、プレス性及びセルフヒーリング性が高まる。
【0113】
フィルムコンデンサにおいて、フィルムの第1主面のスキューネスを測定する際、フィルムコンデンサの最表面に位置する金属化フィルムで金属層が設けられていない領域に対して、上述した方法により測定を行う。この際、測定領域の表面にマスキングオイルが付着している場合は、ヘキサン、トルエン等の溶剤を用いてマスキングオイルを除去した状態で測定を行うことが好ましい。
【0114】
本発明のフィルムコンデンサでは、金属化フィルムとして、本発明の金属化フィルムが使用可能である。
【0115】
本発明の金属化フィルムは、水酸基を有する第1有機材料と、芳香族化合物のうちでイソシアネート基を有する第2有機材料との硬化物を含み、かつ、厚み方向に対向する第1主面及び第2主面を有するフィルムと、上記フィルムの少なくとも上記第1主面上に設けられた金属層と、を備える。また、本発明の金属化フィルムでは、上記フィルムの上記第1主面には、上記第2有機材料を有する複数の突起が存在する。更に、本発明の金属化フィルムでは、上記フィルムの上記第1主面上に設けられた上記金属層における、上記フィルムの上記第1主面と反対側の表面には、上記複数の突起に沿う複数の凸部が存在する。
【0116】
本発明のフィルムコンデンサの第1態様では、後述する本発明のフィルムコンデンサの第2態様と同様に、上記誘電体フィルムの上記第1主面上に設けられた上記金属層における、上記誘電体フィルムの上記第1主面と反対側の表面には、上記複数の突起に沿う複数の凸部が存在することが好ましい。
【0117】
本発明のフィルムコンデンサの第1態様では、上記誘電体フィルムの上記第1主面上に設けられた上記金属層の上記表面に、上記複数の凸部が存在する場合、後述する本発明のフィルムコンデンサの第2態様と同様に、上記金属層の上記表面の100μm×140μmの面積範囲において、上記金属層の上記表面のスキューネスは、0.562以上、13.9以下であることが好ましい。
【0118】
本発明のフィルムコンデンサの第2態様では、上記誘電体フィルムの上記第1主面上に設けられた上記金属層における、上記誘電体フィルムの上記第1主面と反対側の表面には、上記複数の突起に沿う複数の凸部が存在する。
【0119】
図7及び図8に示した金属化フィルム210では、金属層220における、フィルム110の第1主面110aと反対側の表面220aには、複数の突起120に沿う複数の凸部230が存在している。また、金属層220の表面220aには、凸部230が存在していない平坦部240が存在している。
【0120】
凸部の存在については、金属層の表面を走査型電子顕微鏡で観察することにより、黒く見える部分として確認できる。
【0121】
本発明の金属化フィルムでは、上記金属層の上記表面の100μm×140μmの面積範囲において、上記金属層の上記表面のスキューネスは、0.562以上、13.9以下である。
【0122】
本発明のフィルムコンデンサの第2態様では、上記金属層の上記表面の100μm×140μmの面積範囲において、上記金属層の上記表面のスキューネスは、0.562以上、13.9以下である。このように、本発明のフィルムコンデンサの第2態様では、上記複数の凸部が存在する上記金属層の上記表面のスキューネスに着目している。
【0123】
図7及び図8に示した金属化フィルム210では、金属層220の表面220aの100μm×140μmの面積範囲において、金属層220の表面220aのスキューネスは、0.562以上、13.9以下である。
【0124】
金属層220の表面220aの上述した面積範囲において、金属層220の表面220aのスキューネスが0.562以上、13.9以下であることにより、金属化フィルム210は、滑り性及び耐電圧性に優れたものとなる。更に、金属化フィルム210の滑り性が優れたものとなることにより、金属化フィルム210が巻回されてフィルムコンデンサを構成するときに、プレス性及びセルフヒーリング性が高まる。
【0125】
金属層220の表面220aのスキューネスが0.562よりも低い場合、金属化フィルム210同士を滑らせる際に、金属化フィルム210同士の接触面積が大きくなりやすいため、滑り性が低下する。金属層220の表面220aのスキューネスが13.9よりも高い場合、凸部230のような電界が集中しやすい箇所が多くなるため、耐電圧性が低下する。
【0126】
金属層220の表面220aの上述した面積範囲において、金属層220の表面220aのスキューネスが0.562以上、13.9以下であれば、金属層220の表面220aには、複数の凸部230に加えて、複数の凹みが存在していてもよい。
【0127】
金属層の表面のスキューネスは、観察対象を金属層の表面とすること以外、フィルムの第1主面のスキューネスと同様に定められる。
【0128】
フィルムコンデンサにおいて、金属層の表面のスキューネスを測定する際、フィルムコンデンサの最表面に位置する金属化フィルムの所定の領域で測定を行う。
【0129】
図3に示した巻回体40では、最表面に位置する第2金属化フィルム12の領域Lにおいて、第2金属層16が設けられた状態で、上述した方法により、第2金属層16の表面のスキューネスを測定することが好ましい。ここで、第2金属化フィルム12の領域Lは、幅方向W及び長さ方向(巻回方向)における長さがともにMである正方形状である。また、第2金属化フィルム12の端辺Nの中心点Pを通り、長さ方向に延びる中心線Qを定義するとき、第2金属化フィルム12の領域Lは、中心線Qに対して幅方向Wに線対称である。第2金属化フィルム12の領域Lの長さMは、第2金属化フィルム12の端辺Nの長さの10%である。
【0130】
本発明の金属化フィルムでは、上記フィルムの上記第1主面上に設けられた上記金属層の上記表面側での静摩擦係数は、1.4以下であることが好ましい。
【0131】
本発明のフィルムコンデンサの第1態様では、上記誘電体フィルムの上記第1主面上に設けられた上記金属層の上記表面に、上記複数の凸部が存在する場合、上記誘電体フィルムの上記第1主面上に設けられた上記金属層の上記表面側での静摩擦係数は、1.4以下であることが好ましい。
【0132】
本発明のフィルムコンデンサの第2態様では、上記誘電体フィルムの上記第1主面上に設けられた上記金属層の上記表面側での静摩擦係数は、1.4以下であることが好ましい。
【0133】
図7及び図8に示した金属化フィルム210では、金属層220の表面220a側での静摩擦係数は、1.4以下であることが好ましい。この場合、金属化フィルム210の滑り性が非常に優れたものとなる。
【0134】
一方、金属化フィルム210において、金属層220の表面220a側での静摩擦係数が小さくなり過ぎると、金属化フィルム210を巻回してフィルムコンデンサを製造する際に、幅方向に金属化フィルム210の巻きずれが生じてしまい、後の工程で、得られた巻回体の端面上に外部電極を形成しにくくなることがある。このような観点から、金属化フィルム210において、金属層220の表面220a側での静摩擦係数は、好ましくは0.2以上である。
【0135】
金属化フィルムの静摩擦係数は、測定用試料として金属化フィルムを用いること以外、フィルムの静摩擦係数と同様に定められる。
【0136】
金属層220の構成材料としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、チタン、マグネシウム、スズ、ニッケル等の金属が挙げられる。
【0137】
金属層220の厚みは、好ましくは5nm以上、40nm以下である。
【0138】
金属層の厚みについては、金属化フィルムの厚み方向における切断面を、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより特定できる。
【0139】
本発明のフィルムは、例えば、以下の方法で製造される。
【0140】
<樹脂溶液の作製工程>
水酸基を有する第1有機材料と、芳香族化合物のうちでイソシアネート基を有する第2有機材料とを混合することにより、樹脂溶液を作製する。
【0141】
第1有機材料及び第2有機材料としては、上述したものが用いられる。
【0142】
樹脂溶液を作製する際には、第1有機材料及び第2有機材料を溶剤で希釈させてもよい。特に、ケトン類から選択される第1溶剤と環状エーテル化合物から選択される第2溶剤とを含む混合溶剤で、第1有機材料及び第2有機材料を希釈させることが好ましい。
【0143】
第1溶剤が選択されるケトン類としては、例えば、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等が挙げられる。
【0144】
第1溶剤としては、複数種類のケトン類が併用されてもよい。
【0145】
第2溶剤が選択される環状エーテル化合物としては、例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等が挙げられる。
【0146】
第2溶剤としては、複数種類の環状エーテル化合物が併用されてもよい。
【0147】
溶剤としては、メチルエチルケトン及びテトラヒドロフランを含む混合溶剤を用いることが好ましい。
【0148】
<樹脂溶液の乾燥・硬化工程>
まず、樹脂溶液を、基材の表面に塗工する。
【0149】
基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。
【0150】
次に、得られた樹脂溶液の塗膜を乾燥炉で乾燥させた後、加熱処理で硬化させる。これにより、フィルムを基材の表面上に作製する。
【0151】
この際、樹脂溶液の塗膜に対して、乾燥炉での乾燥温度、乾燥時間、風量等を調整することにより、塗膜における基材と反対側の主面である乾燥面に、第2有機材料、すなわち、芳香族イソシアネートを凝集させ、その凝集物として複数の突起を生じさせて、更に、これらの突起の高さ、個数等を制御する。その結果、塗膜を硬化させることにより得られたフィルムの状態で、乾燥面に該当する第1主面の100μm×140μmの面積範囲において、第1主面のスキューネスを0.782以上、14.3以下となるように制御できる。
【0152】
塗膜の乾燥温度は、70℃以上、150℃以下の範囲で調整されることが好ましい。
【0153】
塗膜の乾燥時間は、塗膜付きの基材を乾燥炉内で搬送する搬送速度により調整可能である。搬送速度は、100m/分以上、160m/分以下の範囲で調整されることが好ましい。
【0154】
なお、得られたフィルムは、基材から剥離された状態で使用される。上述したように、フィルムの第1主面は、塗膜における基材と反対側の主面であった乾燥面に該当する。また、フィルムの第2主面は、塗膜における基材側の主面であった離型面に該当する。
【0155】
以上により、図5及び図6に示したようなフィルムを作製する。
【0156】
本発明の金属化フィルムは、例えば、以下の方法で製造される。
【0157】
<金属化フィルムの作製工程>
まず、上述した本発明のフィルムの製造方法により、第1誘電体フィルム及び第2誘電体フィルムとして、図5及び図6に示したようなフィルムを作製する。
【0158】
次に、第1誘電体フィルムの第1主面に金属を蒸着して第1金属層を形成することにより、第1金属化フィルムを作製する。この際、第1金属層における、第1誘電体フィルムの第1主面と反対側の表面に、第1誘電体フィルムの複数の突起に沿う複数の凸部が存在するように、第1金属層を形成する。更に、幅方向において、第1誘電体フィルムの一方の側縁に届き、第1誘電体フィルムの他方の側縁に届かないように、第1金属層を形成する。
【0159】
また、第2誘電体フィルムの第1主面に金属を蒸着して第2金属層を形成することにより、第2金属化フィルムを作製する。この際、第2金属層における、第2誘電体フィルムの第1主面と反対側の表面に、第2誘電体フィルムの複数の突起に沿う複数の凸部が存在するように、第2金属層を形成する。更に、幅方向において、第2誘電体フィルムの一方の側縁に届かず、第2誘電体フィルムの他方の側縁に届くように、第2金属層を形成する。
【0160】
本工程により、第1金属化フィルム及び第2金属化フィルムとして、図7及び図8に示したような金属化フィルムを作製する。
【0161】
本発明のフィルムコンデンサは、例えば、以下の方法で製造される。
【0162】
<巻回体の作製工程>
まず、上述した本発明の金属化フィルムの製造方法により、第1金属化フィルム及び第2金属化フィルムとして、図7及び図8に示したような金属化フィルムを作製する。
【0163】
次に、第1金属化フィルム及び第2金属化フィルムを、幅方向に所定の距離だけずらした状態で重ねた後、巻回することにより巻回体を作製する。なお、必要に応じて、得られた巻回体を幅方向に垂直な方向から挟んで楕円円筒形状にプレスしてもよい。
【0164】
<外部電極の形成工程>
巻回体の一方の端面に金属を溶射することにより、第1外部電極を、第1金属層に接続されるように形成する。
【0165】
また、巻回体の他方の端面に金属を溶射することにより、第2外部電極を、第2金属層に接続されるように形成する。
【0166】
以上により、図1及び図2に示したようなフィルムコンデンサを製造する。
【0167】
本発明のフィルムコンデンサは、公知の用途に適用できるが、高温での温度変化が大きい環境下で用いられる機器の長寿命化を図れるため、自動車、産業機器等に搭載される、電動コンプレッサー/ポンプ、チャージャー、DC-DCコンバータ、駆動用インバータ等のパワー用エレクトロニクス機器に好適に用いられる。
【実施例
【0168】
以下、本発明のフィルムコンデンサと、本発明のフィルムと、本発明の金属化フィルムとをより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0169】
フィルム試料1~5を、以下の方法で製造した。
【0170】
<樹脂溶液の作製工程>
フェノキシ樹脂とMDIとを、メチルエチルケトン及びテトラヒドロフランの混合溶剤で希釈して混合することにより、樹脂溶液を作製した。
【0171】
<樹脂溶液の乾燥・硬化工程>
まず、樹脂溶液を、グラビアコーターを用いてポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に塗工した。
【0172】
次に、得られた樹脂溶液の塗膜を乾燥炉で乾燥させた後、一定時間の加熱処理で硬化させた。これにより、厚みが4.5μmであるフィルム試料1~5を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面上に作製した。
【0173】
この際、樹脂溶液の塗膜に対して、乾燥温度を70℃以上、150℃以下の範囲で調整し、また、乾燥炉内での搬送速度を100m/分以上、160m/分以下の範囲で調整することにより、フィルム試料の第1主面において、MDIを有する突起の生成具合、更には、突起の高さ、個数等を制御した。これにより、フィルム試料の第1主面のスキューネスを、フィルム試料1~5で異ならせた。
【0174】
その後、得られたフィルム試料1~5を、ポリエチレンテレフタレートフィルムから剥離した。
【0175】
また、フィルム試料1~5を製造する際に用いた樹脂溶液において、MDIの代わりに脂肪族ポリイソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を配合し、フィルム試料1~5と同様の方法でフィルム試料6を製造した。
【0176】
また、フィルム試料1~5を製造する際と同様の樹脂溶液を用いて、第1主面に突起が存在しないフィルム試料7を製造した。更に、フィルム試料7を製造する際に用いた樹脂溶液にフィラーを更に配合し、フィラーの配合割合を変化させることにより、フィルム試料8~10を製造した。フィラーの配合割合については、フェノキシ樹脂及びMDIの合計重量に対して、フィルム試料8では1重量%、フィルム試料9では3重量%、フィルム試料10では10重量%とした。フィラーとしては、綜研化学社製のアクリルビーズ「MP-1451」(平均粒径:0.15μm)を用いた。
【0177】
[評価]
フィルム試料1~5については、上述した方法により、突起がMDIを有することを確認した。フィルム試料6については、突起がHDIを有することを確認した。フィルム試料7については、第1主面に突起が存在していないことを確認した。フィルム試料8~10については、フィラーに起因して第1主面が荒れていることを確認した。
【0178】
更に、フィルム試料1~10について、以下の評価を行った。結果を、表1に示す。なお、表1では、フィルム試料を単に「試料」と表記する。
【0179】
<スキューネス1>
フィルム試料1~10について、上述した方法により、フィルム試料の第1主面のスキューネスを測定した。なお、表1では、フィルムの状態でのスキューネスを「スキューネス1」と表記する。
【0180】
<スキューネス2>
フィルム試料1~10の第1主面にアルミニウムを蒸着して金属層を形成することにより、金属化フィルムを作製した。そして、得られた金属化フィルムについて、上述した方法により、金属層の表面のスキューネスを測定した。なお、表1では、金属化フィルムの状態でのスキューネスを「スキューネス2」と表記する。
【0181】
<ガラス転移点>
フィルム試料1~6について、上述した方法により、ガラス転移点を測定した。
【0182】
<静摩擦係数1>
フィルム試料1~10について、上述した方法により、静摩擦係数を測定した。なお、表1では、フィルムの状態での静摩擦係数を「静摩擦係数1」と表記する。
【0183】
<静摩擦係数2>
フィルム試料1~10の第1主面にアルミニウムを蒸着して金属層を形成することにより、金属化フィルムを作製した。そして、得られた金属化フィルムについて、上述した方法により、静摩擦係数を測定した。なお、表1では、金属化フィルムの状態での静摩擦係数を「静摩擦係数2」と表記する。
【0184】
<絶縁破壊電圧>
まず、フィルム試料1~10の両主面にアルミニウムを蒸着して金属層を形成することにより、測定用試料を作製した。この際、フィルム試料の両主面に蒸着された金属層が互いに重なる領域の面積を、3cmとした。このような測定用試料を、フィルム試料1~10の各々に対して、16個ずつ作製した。次に、16個の測定用試料に対して、電界強度25V/μm刻みで各電界強度を10分間保持し、フィルム試料に破壊痕が8個生じたときの電界強度を故障電圧とした。測定温度については、125℃とした。そして、16個の測定用試料の故障電圧をワイブルプロットし、そのワイブル分布で故障頻度が50%となる値を、フィルム試料の絶縁破壊電圧として採用した。
【0185】
<プレス性>
まず、フィルム試料1~10の第1主面にアルミニウムを蒸着して金属層を形成することにより、金属化フィルムを作製した。この際、金属層にパターンを付けるため、フィルム試料の第1主面にフッ素系オイルを予め塗布した。次に、金属化フィルムを所定の幅に切り出した後、所定の長さ分だけ円筒状に巻回して巻回体を作製した。そして、巻回体の大きさに応じて、10N以上、100N以下の範囲で加圧力を適宜調整しながら巻回体をプレスした後、巻回体が均一にプレスされたかどうかを評価した。評価指標については、巻回体を幅方向から見た際に(図3参照)、巻きの中心にある空隙部の内側に沿ったフィルムにシワ・折れが無かった場合を○(良)、巻きの中心にある空隙部の内側に沿ったフィルムにシワ・折れがあった場合を×(不可)とした。
【0186】
<セルフヒーリング性>
まず、フィルム試料1~10の第1主面にアルミニウムを蒸着して金属層を形成することにより、金属化フィルムを作製した。この際、金属層にパターンを付けるため、フィルム試料の第1主面にフッ素系オイルを予め塗布した。次に、金属化フィルムを所定の幅に切り出した後、所定の長さ分だけ円筒状に巻回して巻回体を作製した。そして、得られた巻回体の両端面に金属を溶射して外部電極を形成することにより、フィルムコンデンサを作製した。その後、得られたフィルムコンデンサに電圧を印加しつつ、その印加電圧を徐々に上げていき、絶縁破壊時に印加電圧が瞬間的に低下しても、元の印加電圧に復帰するかどうかを評価した。評価指標については、元の印加電圧に復帰した場合を○(良)、元の印加電圧に復帰しなかった場合を×(不可)とした。
【0187】
【表1】
【0188】
表1において、試料名に*を付したものは、本発明の範囲外の比較例である。
【0189】
以上により、フィルム試料1~3では、芳香族イソシアネートを有する突起が第1主面に存在し、更に、第1主面のスキューネスが0.782以上、14.3以下であることが確認された。また、フィルム試料1~3の第1主面に金属層を蒸着して金属化フィルムとした状態では、金属層の表面のスキューネスが0.562以上、13.9以下であることが確認された。このようなフィルム試料1~3によれば、優れた滑り性及び耐電圧性が得られ、更に、フィルムコンデンサのプレス性及びセルフヒーリング性を優れたものとすることができた。より具体的には、フィルム試料1~3によれば、静摩擦係数1及び静摩擦係数2が低いことによる非常に優れた滑り性と、絶縁破壊電圧が300V/μm以上という非常に優れた耐電圧性とが得られ、更に、フィルムコンデンサのプレス性及びセルフヒーリング性を優れたものとすることができた。また、フィルム試料1~3では、ガラス転移点が130℃以上であり、耐熱性も優れていた。
【0190】
フィルム試料4では、突起が第1主面にほとんど存在せず、第1主面のスキューネスが0.782よりも低いことが確認された。また、フィルム試料4の第1主面に金属層を蒸着して金属化フィルムとした状態では、凸部が金属層の表面にほとんど存在せず、金属層の表面のスキューネスが0.562よりも低いことが確認された。このようなフィルム試料4によれば、フィルム試料1~3と比較して、静摩擦係数1及び静摩擦係数2が高くなり、フィルムコンデンサのプレス性及びセルフヒーリング性を優れたものとすることができなかった。
【0191】
フィルム試料5では、突起が第1主面に非常に多く存在し、第1主面のスキューネスが14.3よりも高いことが確認された。また、フィルム試料5の第1主面に金属層を蒸着して金属化フィルムとした状態では、凸部が金属層の表面に非常に多く存在し、金属層の表面のスキューネスが13.9よりも高いことが確認された。このようなフィルム試料5によれば、フィルム試料1~3と比較して、絶縁破壊電圧が低くなった。
【0192】
フィルム試料6では、突起が脂肪族イソシアネートを有していたため、フィルムコンデンサのセルフヒーリング性を優れたものとすることができなかった。
【0193】
フィルム試料7では、突起が存在しなかった。また、フィルム試料7の第1主面に金属層を蒸着して金属化フィルムとした状態では、凸部が存在しなかった。そのため、フィルム試料7によれば、フィルム試料1~3と比較して、静摩擦係数1及び静摩擦係数2が高くなり、フィルムコンデンサのプレス性及びセルフヒーリング性を優れたものとすることができなかった。なお、フィルム試料7では、第1主面が全体的になだらかに凹んでいたため、第1主面のスキューネスが負の値であった。また、フィルム試料7の第1主面に金属層を蒸着して金属化フィルムとした状態では、金属層の表面が全体的になだらかに凹んでいたため、金属層の表面のスキューネスが負の値であった。
【0194】
フィルム試料8~10では、フィラーが配合されていたため、フィルム試料1~3と比較して、絶縁破壊電圧が低かった。また、フィルム試料8によれば、フィルム試料1~3と比較して、静摩擦係数1及び静摩擦係数2が高くなり、フィルムコンデンサのプレス性及びセルフヒーリング性を優れたものとすることができなかった。
【符号の説明】
【0195】
10 フィルムコンデンサ
11 第1金属化フィルム
12 第2金属化フィルム
13 第1誘電体フィルム
13a 第1誘電体フィルムの第1主面
13b 第1誘電体フィルムの第2主面
14 第2誘電体フィルム
14a 第2誘電体フィルムの第1主面
14b 第2誘電体フィルムの第2主面
15 第1金属層
16 第2金属層
40 巻回体
41 第1外部電極
42 第2外部電極
61 分割電極部
62 電極部
63 ヒューズ部
64 絶縁スリット
110 フィルム(誘電体フィルム)
110a フィルムの第1主面
110b フィルムの第2主面
120 フィルムの突起
130 フィルムの平坦部
210 金属化フィルム
220 金属層
220a 金属層の表面
230 金属層の凸部
240 金属層の平坦部
L 第2金属化フィルムの領域
M 第2金属化フィルムの領域の長さ
N 第2金属化フィルムの端辺
P 第2金属化フィルムの端辺の中心点
Q 中心線
S フィルムの厚み
T 積層方向
W 幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8