(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】検出装置、検出システム、検出方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
A61B5/11 230
(21)【出願番号】P 2022561716
(86)(22)【出願日】2020-11-10
(86)【国際出願番号】 JP2020041897
(87)【国際公開番号】W WO2022101971
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】黄 晨暉
(72)【発明者】
【氏名】福司 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】オウ シンイ
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 史行
(72)【発明者】
【氏名】奥田 広志
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-161227(JP,A)
【文献】特開2009-000391(JP,A)
【文献】特開2016-112108(JP,A)
【文献】特開2016-131827(JP,A)
【文献】佐川貢一, 佐藤豊, 猪岡光,水平方向歩行距離の無拘束計測,計測自動制御学会論文集,Vol.36,No.11,2000年11月,p.909-915
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/11
A61H 1/02
A63B 69/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
足の動きに関するセンサデータを用いて歩行波形を生成する波形生成部と、
矢状面内の角度、角速度、および加速度の
少なくともいずれかに設定された条件に基づいて、前記歩行波形から歩行イベントを検出する検出部と、を備え、
前記検出部は、
前記矢状面内の角度、角速度、および加速度の前記歩行波形に所定の時間分のウィンドウを設定し、
前記矢状面内の角度の前記歩行波形において、前記ウィンドウの両端のタイミングにおける角度の値と、前記ウィンドウの内部で最大の角度との大小関係に基づいてピーク候補を検出するための第一検出条件と、前記ピーク候補がピークであるか判定するための第一判定条件とに基づいて、前記矢状面内における角度の前記歩行波形から前記ピークを検出し、
前記矢状面内の角速度の前記歩行波形において、前記ウィンドウの内部における角速度の変化量の急峻な箇所を検出するための第二検出条件と、前記ウィンドウの両端のタイミングにおける角速度の値と、前記ウィンドウの内部で最大の角速度との大小関係に基づいて、前記ウィンドウの内部における角速度の変化量の急峻な箇所が底屈ピークおよび背屈ピークのいずれに対応付けられるか判定するための第二判定条件とに基づいて、前記矢状面内における角度の前記歩行波形から検出された前記ピークが、前記底屈ピークおよび前記背屈ピークのいずれに対応付けられるか判定し、
前記底屈ピークに対応付けられたタイミングを爪先離地のタイミングとして検出し、
前記背屈ピークに対応付けられたタイミングを踵接地のタイミングとして検出し、
前記矢状面内の角度、角速度、および加速度の前記歩行波形に設定された前記ウィンドウを時間方向にスライドさせて
、前記爪先離地および前記踵接地のタイミングを基準として前記歩行イベントを検出する検出装置。
【請求項2】
前記検出部は、
前記第二判定条件の代わりに、前記ウィンドウの内部で検出された前記ピークのタイミングにおける前記矢状面内の進行方向の加速度の値に基づいて、前記ピークが
前記底屈ピークおよび
前記背屈ピークのいずれに対応付けられるか判定するための第三判定条
件に基づいて、前記矢状面内における角度の前記歩行波形から検出された前記ピークが前記底屈ピークおよび前記背屈ピークのいずれに対応付けられるか判定する請求項
1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記検出部によって検出された前記ピークに基づいて歩行状態を判定する判定部を備える請求項
1または2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記判定部は、
連続する前記底屈ピークと前記背屈ピークの間の期間を遊脚相と判定し、
連続する前記背屈ピークと前記底屈ピークの間の期間を立脚相と判定し、
前記波形生成部によって生成された前記歩行波形の時間が、前記遊脚相および前記立脚相のうちいずれに対応付けられるかを示す情報を出力する請求項
3に記載の検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の検出装置と、
歩行波形の計測対象であるユーザの履く履物に配置され、前記ユーザの歩行に応じて空間加速度および空間角速度を計測し、計測した前記空間加速度および前記空間角速度に基づくセンサデータを生成し、生成した前記センサデータを前記検出装置に送信するデータ取得装置と、を備える検出システム。
【請求項6】
コンピュータが、
足の動きに関するセンサデータを用いて歩行波形を生成し、
矢状面内の角度、角速度、および加速度の
少なくともいずれかに設定され
た条件に基づいて、前記歩行波形から歩行イベントを検出し、
前記検出において、
前記矢状面内の角度、角速度、および加速度の前記歩行波形に所定の時間分のウィンドウを設定し、
前記矢状面内の角度の前記歩行波形において、前記ウィンドウの両端のタイミングにおける角度の値と、前記ウィンドウの内部で最大の角度との大小関係に基づいてピーク候補を検出するための第一検出条件と、前記ピーク候補がピークであるか判定するための第一判定条件とに基づいて、前記矢状面内における角度の前記歩行波形から前記ピークを検出し、
前記矢状面内の角速度の前記歩行波形において、前記ウィンドウの内部における角速度の変化量の急峻な箇所を検出するための第二検出条件と、前記ウィンドウの両端のタイミングにおける角速度の値と、前記ウィンドウの内部で最大の角速度との大小関係に基づいて、前記ウィンドウの内部における角速度の変化量の急峻な箇所が底屈ピークおよび背屈ピークのいずれに対応付けられるか判定するための第二判定条件とに基づいて、前記矢状面内における角度の前記歩行波形から検出された前記ピークが、前記底屈ピークおよび前記背屈ピークのいずれに対応付けられるか判定し、
前記底屈ピークに対応付けられたタイミングを爪先離地のタイミングとして検出し、
前記背屈ピークに対応付けられたタイミングを踵接地のタイミングとして検出し、
前記矢状面内の角度、角速度、および加速度の前記歩行波形に設定された前記ウィンドウを時間方向にスライドさせて
、前記爪先離地および前記踵接地のタイミングを基準として前記歩行イベントを検出する検出方法。
【請求項7】
足の動きに関するセンサデータを用いて歩行波形を生成する処理と、
矢状面内の角度、角速度、および加速度の
少なくともいずれかに設定され
た条件に基づいて、前記歩行波形から歩行イベントを検出する処理と、
前記検出する処理において、
前記矢状面内の角度、角速度、および加速度の前記歩行波形に所定の時間分のウィンドウを設定する処理と、
前記矢状面内の角度の前記歩行波形において、前記ウィンドウの両端のタイミングにおける角度の値と、前記ウィンドウの内部で最大の角度との大小関係に基づいてピーク候補を検出するための第一検出条件と、前記ピーク候補がピークであるか判定するための第一判定条件とに基づいて、前記矢状面内における角度の前記歩行波形から前記ピークを検出する処理と、
前記矢状面内の角速度の前記歩行波形において、前記ウィンドウの内部における角速度の変化量の急峻な箇所を検出するための第二検出条件と、前記ウィンドウの両端のタイミングにおける角速度の値と、前記ウィンドウの内部で最大の角速度との大小関係に基づいて、前記ウィンドウの内部における角速度の変化量の急峻な箇所が底屈ピークおよび背屈ピークのいずれに対応付けられるか判定するための第二判定条件とに基づいて、前記矢状面内における角度の前記歩行波形から検出された前記ピークが、前記底屈ピークおよび前記背屈ピークのいずれに対応付けられるか判定する処理と、
前記底屈ピークに対応付けられたタイミングを爪先離地のタイミングとして検出する処理と、
前記背屈ピークに対応付けられたタイミングを踵接地のタイミングとして検出する処理と、
前記矢状面内の角度、角速度、および加速度の前記歩行波形に設定された前記ウィンドウを時間方向にスライドさせて
、前記爪先離地および前記踵接地のタイミングを基準として前記歩行イベントを検出する処理と、をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歩行イベントを検出する検出装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
体調管理を行うヘルスケアへの関心の高まりから、歩行の特徴を含む歩容を計測し、その歩容に応じた情報をユーザに提供するサービスが注目されている。歩行に関するデータから、踵が地面に接地する事象(踵接地とも呼ぶ)や、爪先が地面から離れる事象(爪先離地とも呼ぶ)などの歩行イベントを検出できれば、歩容に応じたサービスをより的確に提供できる。例えば、体に不自由のある人の歩行イベントを、健康な人と同じように検出できれば、より多くの人に歩容に応じたサービスを提供できる。
【0003】
特許文献1には、歩行が困難な人における3次元歩行特性を、長時間測定できる歩行特性評価システムについて開示されている。特許文献1のシステムは、足爪先に実装されたセンサよって測定される加速度や角速度などのデータを演算処理して、一歩ごとの足爪先の3次元軌跡を生成する。特許文献1のシステムは、生成された3次元軌跡から、歩数や歩幅、歩調、歩行速度、足爪先と歩行面との距離、足爪先の振り上げ角度などの3次元歩行特性を導出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のシステムは、歩行が困難な人に関して、歩数や歩幅、歩調、歩行速度、足爪先と歩行面との距離、足爪先の振り上げ角度などの3次元歩行特性を導出できる。しかしながら、特許文献1のシステムは、歩行が困難な人に関して、足の挙動については検証できるものの、踵接地や爪先離地などの歩行イベントを検出することはできなかった。
【0006】
本開示の目的は、体に不自由のある人の歩行に関しても、歩行波形に基づいて歩行イベントを検出できる検出装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の検出装置は、足の動きに関するセンサデータを用いて歩行波形を生成する波形生成部と、矢状面内の角度、角速度、および加速度の各々に設定された条件に基づいて、歩行波形から歩行イベントを検出する検出部と、を備える。
【0008】
本開示の一態様の検出方法においては、コンピュータが、足の動きに関するセンサデータを用いて歩行波形を生成し、矢状面内の角度、角速度、および加速度の各々に設定された第一条件、第二条件、および第三条件に基づいて、歩行波形から歩行イベントを検出する。
【0009】
本開示の一態様のプログラムは、足の動きに関するセンサデータを用いて歩行波形を生成する処理と、矢状面内の角度、角速度、および加速度の各々に設定された第一条件、第二条件、および第三条件に基づいて、歩行波形から歩行イベントを検出する処理と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、体に不自由のある人の歩行に関しても、歩行波形に基づいて歩行イベントを検出できる検出装置等を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る検出システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係る検出システムのデータ取得装置の配置例を示す概念図である。
【
図3】第1の実施形態に係る検出システムのデータ取得装置に設定される座標系について説明するための概念図である。
【
図4】第1の実施形態に係る検出システムの検出装置に適用される人体面について説明するための概念図である。
【
図5】歩行イベントについて説明するための概念図である。
【
図6】第1の実施形態に係る検出システムの検出装置が生成する歩行波形の一例である。
【
図7】第1の実施形態に係る検出システムの検出装置が生成する歩行波形の別の一例である。
【
図8】第1の実施形態に係る検出システムのデータ取得装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図9】第1の実施形態に係る検出システムの検出装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図10】第1の実施形態に係る検出システムの検出装置による歩行イベントの検出について説明するための概念図である。
【
図11】第1の実施形態に係る検出システムの検出装置によるピークの検出例について説明するための概念図である。
【
図12】第1の実施形態に係る検出システムの検出装置によるピークの検出例および判定例について説明するための概念図である。
【
図13】第1の実施形態に係る検出システムの検出装置によるピークの判定例について説明するための概念図である。
【
図14】第1の実施形態に係る検出システムの検出装置の動作の概要の一例について説明するためのフローチャートである。
【
図15】第1の実施形態に係る検出システムの検出装置による検出処理の一例について説明するためのフローチャートである。
【
図16】第2の実施形態に係る検出システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図17】第2の実施形態に係る検出システムの検出装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図18】関連技術を用いて判定された歩行状態の一例について説明するための概念図である。
【
図19】第2の実施形態に係る検出システムの判定部によって判定された歩行状態の一例について説明するための概念図である。
【
図20】第3の実施形態に係る検出装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図21】各実施形態に係る検出装置を実現するハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0013】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る検出システムについて図面を参照しながら説明する。本実施形態の検出システムは、歩行者の足部に設置されたセンサによって取得されたセンサデータを用いて、その歩行者の歩行イベントを検出する。例えば、歩行イベントは、足の底屈/背屈が最大になるタイミングを含む。例えば、歩行イベントは、足が地面に着地する事象(踵接地とも呼ぶ)や、足が地面から離れる事象(爪先離地とも呼ぶ)などを含む。本実施形態の検出システムが検出する歩行イベントの詳細については後述する。
【0014】
(構成)
図1は、本実施形態の検出システム1の構成を示すブロック図である。検出システム1は、データ取得装置11および検出装置12を備える。データ取得装置11と検出装置12は、有線で接続されてもよいし、無線で接続されてもよい。データ取得装置11と検出装置12は、単一の装置で構成してもよい。また、検出システム1の構成からデータ取得装置11を除き、検出装置12だけで検出システム1を構成してもよい。
【0015】
例えば、データ取得装置11は、靴等の履物に設置される。本実施形態では、足の足弓の裏側の位置にデータ取得装置11が配置される例について説明する。データ取得装置11は、加速度センサおよび角速度センサを含む。データ取得装置11は、履物を履くユーザの足の動きに関する物理量として、空間加速度や空間角速度などの足の動きに関する物理量を計測する。データ取得装置11が計測する足の動きに関する物理量には、加速度や角速度に加えて、加速度や角速度を積分することによって計算される速度や角度も含まれる。また、データ取得装置11が計測する足の動きに関する物理量には、加速度を二階積分することによって計算される位置(軌跡)も含まれる。
【0016】
データ取得装置11は、計測された物理量をデジタルデータ(センサデータとも呼ぶ)に変換する。データ取得装置11は、変換後のセンサデータを検出装置12に送信する。例えば、データ取得装置11は、ユーザが携帯する携帯端末(図示しない)を介して、検出装置12に接続される。携帯端末(図示しない)は、ユーザによって携帯可能な通信機器である。例えば、携帯端末は、スマートフォンや、スマートウォッチ、携帯電話等の通信機能を有する携帯型の通信機器である。携帯端末は、ユーザの足の動きに関するセンサデータをデータ取得装置11から受信する。携帯端末は、受信されたセンサデータを、検出装置12が実装されたサーバ等に送信する。なお、検出装置12の機能は、携帯端末にインストールされたアプリケーションによって実現されていてもよい。その場合、携帯端末は、受信されたセンサデータを、自身にインストールされたアプリケーションソフトウェア等によって処理する。
【0017】
データ取得装置11は、例えば、加速度センサと角速度センサを含む慣性計測装置によって実現される。慣性計測装置の一例として、IMU(Inertial Measurement Unit)があげられる。IMUは、3軸の加速度センサと、3軸の角速度センサを含む。また、慣性計測装置の一例として、VG(Vertical Gyro)や、AHRS(Attitude Heading)、GPS/INS(Global Positioning System/Inertial Navigation System)があげられる。
【0018】
図2は、データ取得装置11を靴100の中に設置する一例を示す概念図である。
図2の例では、データ取得装置11は、足弓の裏側に当たる位置に設置される。例えば、データ取得装置11は、靴100の中に挿入されるインソールに設置される。例えば、データ取得装置11は、靴100の底面に設置される。例えば、データ取得装置11は、靴100の本体に埋設される。データ取得装置11は、靴100から着脱できてもよいし、靴100から着脱できなくてもよい。データ取得装置11は、足の動きに関するセンサデータを取得できさえすれば、足弓の裏側ではない位置に設置されてもよい。また、データ取得装置11は、ユーザが履いている靴下や、ユーザが装着しているアンクレットなどの装飾品に設置されてもよい。また、データ取得装置11は、足に直に貼り付けられたり、足に埋め込まれたりしてもよい。
図2においては、左足の靴100にデータ取得装置11を設置する例を示す。データ取得装置11は、少なくとも一方の足部に設置されればよく、左右両方の足部に設置されてもよい。両足の靴100にデータ取得装置11を設置すれば、両足の動きに対応付けて歩行イベントを検出できる。
【0019】
図3は、データ取得装置11を足弓の裏側に設置する場合に、データ取得装置11に設定されるローカル座標系(x軸、y軸、z軸)と、地面に対して設定される世界座標系(X軸、Y軸、Z軸)について説明するための概念図である。世界座標系(X軸、Y軸、Z軸)では、ユーザが直立した状態で、ユーザの横方向がX軸方向(左向きが正)、ユーザの背面の方向がY軸方向(後ろ向きが正)、重力方向がZ軸方向(鉛直上向きが正)に設定される。本実施形態においては、データ取得装置11を基準とするx方向、y方向、およびz方向からなるローカル座標系を設定する。本実施形態においては、左右の足に同じ座標系を設定する。
【0020】
図4は、人体に対して設定される面(人体面とも呼ぶ)について説明するための概念図である。本実施形態では、身体を左右に分ける矢状面、身体を前後に分ける冠状面、身体を水平に分ける水平面が定義される。なお、
図4のような直立した状態では、世界座標系とローカル座標系が一致する。本実施形態においては、x軸を回転軸とする矢状面内の回転をロール、y軸を回転軸とする冠状面内の回転をピッチ、z軸を回転軸とする水平面内の回転をヨーと定義する。また、x軸を回転軸とする矢状面内の回転角をロール角、y軸を回転軸とする冠状面内の回転角をピッチ角、z軸を回転軸とする水平面内の回転角をヨー角と定義する。本実施形態においては、身体を右側から見て、矢状面内における時計回りの回転を正と定義し、矢状面内における反時計回りの回転を負と定義する。
【0021】
図5は、左足を基準とする一歩行周期について説明するための概念図である。右足を基準とする一歩行周期も、左足と同様である。
図5の横軸は、左足の踵が地面に着地した時点を起点とし、次に左足の踵が地面に着地した時点を終点とする左足の一歩行周期を100%として正規化された歩行周期である。片足の一歩行周期は、足の裏側の少なくとも一部が地面に接している立脚相と、足の裏側が地面から離れている遊脚相とに大別される。立脚相は、さらに、立脚初期T1、立脚中期T2、立脚終期T3、遊脚前期T4に細分される。遊脚相は、さらに、遊脚初期T5、遊脚中期T6、遊脚終期T7に細分される。
【0022】
図5の(a)は、左足の踵が接地する事象(踵接地)を表す(HS:Heel Strike)。
図5の(b)は、左足の足裏が接地した状態で、右足の爪先が地面から離れる事象(反対足爪先離地)を表す(OTO:Opposite Toe Off)。
図5の(c)は、左足の足裏が接地した状態で、左足の踵が持ち上がる事象(踵持ち上がり)を表す(HR:Heel Rise)。図の5の(d)は、右足の踵が接地した事象(反対足踵接地)である(OHS:Opposite Heel Strike)。
図5の(e)は、右足の足裏が接地した状態で、左足の爪先が地面から離れる事象(爪先離地)を表す(TO:Toe Off)。
図5の(f)は、右足の足裏が接地した状態で、右足と左足が交差する事象(足交差)を表す(FA:Foot Adjacent)。
図5の(g)は、右足の足裏が接地した状態で、左足の脛骨が地面に対してほぼ垂直になる事象(脛骨垂直)を表す(TV:Tibia Vertical)。
図5の(h)は、左足の踵が接地する事象(踵接地)を表す(HS:Heel Strike)。
図5の(h)は、
図5の(a)から始まる歩行周期の終点に相当するとともに、次の歩行周期の起点に相当する。
【0023】
検出装置12は、ユーザの足の動きに関するセンサデータを取得する。検出装置12は、取得されたセンサデータの時系列データに基づく波形(歩行波形とも呼ぶ)を生成する。検出装置12は、生成された歩行波形から、角度、角速度、および加速度の各々に設定された条件に基づいて、歩行イベントを検出する。
【0024】
図6は、左右の足に異常がない人(健常者とも呼ぶ)の歩行波形の一例である。
図6には、ロール角(実線)、進行方向加速度(破線)、およびロール角速度(点線)の歩行波形を示す。左側の軸がロール角(実線)および進行方向加速度(破線)の軸であり、右側の軸がロール角速度(点線)の軸である。健常者の歩行波形からは、歩行に伴う周期的なピークが明確に検出される。例えば、ロール角(実線)の歩行波形に着目すると、正のピークと負のピークを明確に区別できる。ロール角速度(点線)の歩行波形に着目すると、ロール角(実線)の歩行波形のピークの近傍に正のピークが現れる。ロール角(実線)とロール角速度(点線)の歩行波形にピークが現れるタイミングは、完全には一致しないものの、足の底屈が最大になるタイミングと、足の背屈が最大になるタイミングとに対応付けられる。また、進行方向加速度(破線)の歩行波形に着目すると、足の底屈および背屈が最大となるタイミングの近傍に特徴的な変化が現れる。
【0025】
図7は、左半身に麻痺がある人(以下、半身麻痺の人と呼ぶ)の左足に関する歩行波形の一例である。
図7の歩行波形や軸は、
図6の例と同様である。半身麻痺の人の歩行波形には、特徴的なピークが含まれるものの、歩行に伴う周期的なピークが、健常者の歩行波形ほどは明確に検出されない。半身麻痺の人と健常者の歩行波形の共通点は、ロール角(実線)の歩行波形において、足の底屈が最大となるタイミングで正のピークが現れる点である。また、健常者の歩行波形ほど明確ではないものの、半身麻痺の人のロール角の歩行波形には、足の背屈が最大となるタイミングで負のピークが現れる。また、足首の運動がうまくいかなくても、前進するために下肢(股関節)の回転があるので、半身麻痺の人のロール角速度の歩行波形には、爪先離地と踵接地のタイミングの近傍に急峻な変化が現れる。また、足の底屈が最大になるタイミングが到来すると、足が前方方向に蹴り出される際に、足の動きが前方に向けて加速されるので、進行方向加速度の絶対値が大きくなる。このとき、進行方向(Y方向)においては、前方が負であるので、進行方向加速度が負のピークを示す。一方、足の背屈が最大になるタイミングが到来すると、足の動きが急減速されるので、進行方向加速度の絶対値が大きくなる。このとき、進行方向(Y方向)においては、前方が負であるので、進行方向加速度が正のピークを示す。本実施形態においては、健常者と半身麻痺の人の歩行波形から共通に検出される特徴に基づいて、歩行イベントを検出する。
【0026】
例えば、検出装置12は、歩行波形において、所定の時間分のウィンドウを時間方向にスライドさせて、角度、角速度、および加速度の各々に設定された条件に基づいて、歩行イベントを検出する。例えば、検出装置12は、角度の条件(第一条件とも呼ぶ)、角速度の条件(第二条件とも呼ぶ)、および加速度の条件(第三条件とも呼ぶ)に基づいて、歩行波形から歩行イベントを検出する。検出装置12による歩行イベントの検出については、後述する。
【0027】
〔データ取得装置〕
次に、データ取得装置11の詳細について図面を参照しながら説明する。
図8は、データ取得装置11の詳細構成の一例を示すブロック図である。データ取得装置11は、加速度センサ111、角速度センサ112、制御部113、およびデータ送信部115を有する。また、データ取得装置11は、図示しない電源を含む。以下においては、加速度センサ111、角速度センサ112、制御部113、およびデータ送信部115の各々を動作主体として説明するが、データ取得装置11を動作主体とみなしてもよい。
【0028】
加速度センサ111は、3軸方向の加速度(空間加速度とも呼ぶ)を計測するセンサである。加速度センサ111は、計測した加速度を制御部113に出力する。例えば、加速度センサ111には、圧電型や、ピエゾ抵抗型、静電容量型などの方式のセンサを用いることができる。なお、加速度センサ111に用いられるセンサは、加速度を計測できれば、その計測方式に限定を加えない。
【0029】
角速度センサ112は、3軸方向の角速度(空間角速度とも呼ぶ)を計測するセンサである。角速度センサ112は、計測した角速度を制御部113に出力する。例えば、角速度センサ112には、振動型や静電容量型等の方式のセンサを用いることができる。なお、角速度センサ112に用いられるセンサは、角速度を計測できれば、その計測方式に限定を加えない。
【0030】
制御部113は、加速度センサ111および角速度センサ112の各々から、3軸方向の加速度および角速度の各々を取得する。制御部113は、取得した加速度および角速度をデジタルデータに変換し、変換後のデジタルデータ(センサデータとも呼ぶ)をデータ送信部115に出力する。センサデータには、アナログデータの加速度をデジタルデータに変換した加速度データ(3軸方向の加速度ベクトルを含む)と、アナログデータの角速度をデジタルデータに変換した角速度データ(3軸方向の角速度ベクトルを含む)とが少なくとも含まれる。なお、加速度データおよび角速度データには、それらのデータの取得時間が紐付けられる。また、制御部113は、取得した加速度データおよび角速度データに対して、実装誤差や温度補正、直線性補正などの補正を加えたセンサデータを出力するように構成してもよい。また、制御部113は、取得した加速度データおよび角速度データを用いて、3軸方向の角度データを生成してもよい。
【0031】
例えば、制御部113は、データ取得装置11の全体制御やデータ処理を行うマイクロコンピュータまたはマイクロコントローラである。例えば、制御部113は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等を有する。制御部113は、加速度センサ111および角速度センサ112を制御して角速度や加速度を計測する。例えば、制御部113は、計測された角速度および加速度等の物理量(アナログデータ)をAD変換(Analog-to-Digital Conversion)し、変換後のデジタルデータをフラッシュメモリに記憶させる。なお、加速度センサ111および角速度センサ112によって計測された物理量(アナログデータ)は、加速度センサ111および角速度センサ112の各々においてデジタルデータに変換されてもよい。フラッシュメモリに記憶されたデジタルデータは、所定のタイミングでデータ送信部115に出力される。
【0032】
データ送信部115は、制御部113からセンサデータを取得する。データ送信部115は、取得したセンサデータを検出装置12に送信する。データ送信部115は、ケーブルなどの有線を介してセンサデータを検出装置12に送信してもよいし、無線通信を介してセンサデータを検出装置12に送信してもよい。例えば、データ送信部115は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)などの規格に則した無線通信機能(図示しない)を介して、センサデータを検出装置12に送信するように構成される。なお、データ送信部115の通信機能は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)以外の規格に則していてもよい。
【0033】
〔検出装置〕
次に、検出装置12の詳細について図面を参照しながら説明する。
図9は、検出装置12の構成の一例を示すブロック図である。検出装置12は、波形生成部121および検出部123を有する。
【0034】
波形生成部121は、歩行者の履いている履物に設置されたデータ取得装置11(センサ)からセンサデータを取得する。波形生成部121は、センサデータを用いて、データ取得装置11が設置された履物を履いた歩行者の歩行に伴う時系列データ(歩行波形とも呼ぶ)を生成する。
【0035】
例えば、波形生成部121は、空間加速度や空間角速度などの時系列データを生成する。また、波形生成部121は、空間加速度や空間角速度を積分し、空間速度や空間角度(足底角)、空間軌跡などの時系列データを生成する。波形生成部121は、一般的な歩行周期や、ユーザに固有の歩行周期に合わせて設定された所定のタイミングや時間間隔で時系列データを生成する。波形生成部121が時系列データを生成するタイミングは、任意に設定できる。例えば、波形生成部121は、ユーザの歩行が継続されている期間、時系列データを生成し続けるように構成される。また、波形生成部121は、特定の時刻において、時系列データを生成するように構成されてもよい。
【0036】
検出部123は、波形生成部121によって生成された歩行波形から、角度、角速度、および加速度の各々に設定された条件に基づいて、歩行イベントを検出する。例えば、検出部123は、歩行波形において、所定の時間分のウィンドウを時間方向にスライドさせて、角度、角速度、および加速度の各々に設定された条件に基づいて、歩行イベントを検出する。例えば、検出部123は、波形生成部121によって生成された歩行波形から、角度の条件(第一条件とも呼ぶ)、角速度の条件(第二条件とも呼ぶ)、および加速度の条件(第三条件とも呼ぶ)に基づいて、歩行イベントを検出する。本実施形態においては、矢状面内における角度(ロール角)、矢状面内における角速度(ロール角速度)、および矢状面内(進行方向)の加速度(進行方向加速度)の各々に設定された条件に基づいて、歩行イベントを検出する例について説明する。
【0037】
図10は、
図7の歩行波形において、所定の時間分のウィンドウを時間方向にスライドさせて、矢状面内の角度、角速度、および加速度の各々に設定された条件に基づいて、歩行イベントを検出する一例について説明するための概念図である。検出部123は、矢状面内の角度、角速度、および加速度の各々に関する歩行波形に関して、所定の時間分のウィンドウを時間方向にスライドさせて、角度、角速度、および加速度の各々に設定された条件に基づいて、歩行イベントを検出する。
【0038】
所定の時間分のウィンドウの時間幅は、矢状面内の角度、角速度、および加速度の各々に関する歩行波形から、歩行イベントを検出できる幅に設定される。例えば、歩行波形の計測データが1秒間に100点(100ヘルツ)計測される場合、ウィンドウは、3~7点の時間幅に設定される。時間幅を広げすぎると、歩行波形に含まれる変曲点を誤検出する可能性が高くなる。そのため、ウィンドウの時間幅は、7点程度に設定されることが好ましい。歩行波形の計測データの計測間隔が100ヘルツではない場合、ウィンドウの時間幅は、それぞれの計測間隔に合わせて設定されればよい。
【0039】
ここで、底屈ピークおよび背屈ピークの検出の一例について、具体例を用いて説明する。以下においては、第一条件に基づいてピークを検出し、検出されたピークが底屈および背屈のいずれに対応するのかを第二条件と第三条件を用いて判定する例について説明する。
【0040】
<第一条件>
第一条件は、矢状面内の回転における角度(ロール角)の歩行波形から、ピークを検出するための条件である。
図11は、ロール角の歩行波形から、第一条件に基づいてピークを検出する一例について説明するための概念図である。例えば、検出部123は、ロール角の歩行波形において、所定の時間分のウィンドウを時間方向にスライドさせて、第一条件に基づいてピークを検出する。
【0041】
図11において、ウィンドウは、時間方向において、左右両端を含めた七つの線(計測線とも呼ぶ)で、六つの領域に分割される。七つの計測線の各々に対応するタイミングには、左から順番に識別番号(ID:Identifier)が付与される。本実施形態では、七つの計測線の各々に対して、左から順番に1、2、3、4、5、6、ENDというIDを付与する。ウィンドウの内部で一番左の計測線(左端)のタイミング(始点とも呼ぶ)のID(1)におけるロール角の値は、roll[1]と記載される。ウィンドウの内部で一番右の計測線(右端)のタイミング(終点とも呼ぶ)のID(END)におけるロール角の値は、roll[END]と記載される。ウィンドウの内部で一番大きいロール角の値は、max(roll)と記載される。ウィンドウの内部で一番小さいロール角の値は、min(roll)と記載される。
【0042】
例えば、第一条件は、ロール角の歩行波形から、ウィンドウの内部で上に凸のピークを検出するための条件(第一検出条件とも呼ぶ)と、検出されたピークがノイズではないと判定するための条件(第一判定条件とも呼ぶ)とを含む。
【0043】
第一検出条件は、ウィンドウの内部におけるロール角の最大値よりも始点におけるロール角が小さく、かつ、ウィンドウの内部におけるロール角の最大値よりも終点におけるロール角が小さいという条件である。以下の式1および式2をともに満たされる場合、第一検出条件が満たされる。
max(roll)>roll[1]・・・(1)
max(roll)>roll[END]・・・(2)
なお、ウィンドウの内部で下に凸のピークを検出する場合は、roll[1]およびroll[END]よりも、min(roll)が小さいという条件を満たせばよい。
【0044】
第一判定条件は、ウィンドウの内部におけるロール角の最大値から、始点(ID=1)および終点(ID=END)におけるロール角の値を引いた値が、第一閾値Th1を超えるという条件である。第一閾値Th1は、ロール角の歩行波形に含まれるノイズの大きさに応じて設定される。例えば、第一閾値Th1は、0.2度に設定される。以下の式3が満たされる場合、第一判定条件が満たされ、ロール角の歩行波形からピークが検出される。
max(roll)-min(roll(1)、roll(END))>T1・・・(3)
なお、ウィンドウの内部で下に凸のピークを検出する場合は、roll[1]およびroll[END]のうち小さい方よりも、min(roll)が小さいという条件を満たせばよい。
【0045】
<第二条件>
第二条件は、矢状面内の回転における角速度(ロール角速度)の歩行波形を用いて、第一条件で検出されたピークが底屈および背屈のいずれかに相当するかを判定するための条件である。
図12は、第二条件に基づいて、ウィンドウの内部のロール角速度の歩行波形に、足の底屈または背屈の最大に対応付けられるピークが含まれるか判定する一例について説明するための概念図である。例えば、検出部123は、第二条件に基づいて、所定の時間分のウィンドウの内部のロール角速度の歩行波形において、第一条件で検出されたピークが底屈および背屈のいずれかに相当するかを判定する。
【0046】
図12において、ウィンドウの内部で一番左の計測線(左端)のタイミング(始点:ID=1)におけるロール角速度の値は、gx[1]と記載される。ウィンドウの内部で一番右の計測線(右端)のタイミング(終点:ID=END)におけるロール角速度の値は、gx[END]と記載される。ウィンドウの内部で一番大きいロール角速度の値は、max(gx)と記載される。ウィンドウの内部で一番小さいロール角速度の値は、min(gx)と記載される。
【0047】
例えば、第二条件は、第二検出条件と第二判定条件を含む。第二検出条件は、ウィンドウの内部で、ロール角速度の変化量が急峻な箇所を検出するための条件である。第二判定条件は、検出された変化量が大きな箇所が足の底屈および背屈のいずれの最大に対応付けられるのかを判定するための条件である。
【0048】
第二検出条件は、ウィンドウの内部におけるロール角速度の最大値から、始点および終点のいずれかにおけるロール角速度を引いた値の各々が、第二閾値Th2よりも大きいという条件である。例えば、第二閾値Th2は、50度/秒に設定される。以下の式4および式5のうちいずれかが成り立つ場合、第二検出条件が満たされる。
max(gx)-gx[1]>T2・・・(4)
max(gx)-gx[END]>T2・・・(5)
上記の式4が満たされれば、第一条件で検出されたピークは底屈に相当すると推定される。一方、上記の式5が満たされれば、第一条件で検出されたピークは背屈に相当すると推定される。
【0049】
第二判定条件は、始点(ID=1)におけるロール角速度の値が第三閾値Th3よりも小さい、または、終点(ID=END)におけるロール角速度の値が第三閾値Th3と第四閾値Th4の間の値であるという条件である。例えば、第三閾値Th3は、-70度/秒に設定される。例えば、第四閾値Th4は、15度/秒に設定される。以下の式6または式7が満たされる場合、第二判定条件が満たされる。
gx[1]<T3・・・(6)
T3<gx[END]<T4・・・(7)
上記の式6が満たされれば、第一条件で検出されたピークは底屈に相当すると判定される。一方、上記の式7が満たされれば、第一条件で検出されたピークは背屈に相当すると判定される。
【0050】
検出部123は、第二検出条件と第二判定条件をともに満たすピークを、足の底屈または背屈の最大に対応付けられるピークとして検出する。
図12の例の場合、上記の式(6)が満たされるので、検出部123は、第二検出条件に基づいて検出されたピークが、足の底屈の最大に対応付けられるピークであると判定する。上記の式(7)が満たされる場合、検出部123は、第二検出条件に基づいて検出されたピークが、足の背屈の最大に対応付けられるピークであると判定する。
【0051】
<第三条件>
第三条件は、矢状面内(進行方向)における加速度(進行方向加速度)の歩行波形を用いて、第一条件で検出されたピークが、足の底屈または背屈の最大に対応付けられるかを判定するための条件である。
図13は、進行方向加速度の歩行波形から、第三条件に基づいて歩行イベントを検出する一例について説明するための概念図である。例えば、検出部123は、第三条件に基づいて、所定の時間分のウィンドウの内部における進行方向加速度の歩行波形において、第一条件で検出されたピークが底屈および背屈のいずれかに相当するかを判定する。第三条件に基づく判定は、第二条件の第二判定条件に基づく判定と合わせて行われてもよいし、第二条件の第二判定条件の代わりに行われてもよい。また、第二条件に基づく判定で十分な場合は、第三条件に基づく判定は行われなくてもよい。
【0052】
図13において、ウィンドウの内部で一番左の計測線(左端)のタイミング(始:ID=1)における進行方向加速度の値は、y[1]と記載される。ウィンドウの内部で一番右の計測線(右端)のタイミング(終点:ID=END)における進行方向加速度の値は、y[END]と記載される。ウィンドウの内部で検出される進行方向加速度のピークは、上に凸のピークと、下に凸のピークを含みうる。ウィンドウの内部で一番大きい進行方向加速度の値は、max(y)と記載される。ウィンドウの内部で一番小さい進行方向加速度の値は、min(y)と記載される。第一条件に基づいてウィンドウの内部で検出されたロール角度のピークのIDに対応する進行方向加速度の値は、y(peak)と記載される。
【0053】
第三条件は、ウィンドウの内部で検出されたピークが底屈ピークおよび背屈ピークのいずれであるかを判定するための条件(第三判定条件とも呼ぶ)を含む。第三判定条件は、y(peak)の値が第五閾値Th5よりも小さい、または、y(peak)の値が第六閾値Th6よりも大きいという条件である。例えば、第五閾値Th5は、-0.4gに設定される(gは重力加速度)。例えば、第六閾値Th6は、+0.2gに設定される。以下の式8または式9が満たされる場合、第三判定条件が満たされる。
y(peak)<T5・・・(8)
y(peak)>T6・・・(9)。
【0054】
検出部123は、第三判定条件を満たすピークを、足の底屈または背屈の最大に対応付けられるピークとして検出する。検出部123は、上記の式(8)が満たされるピークを、足の底屈の最大に対応付けられるピークであると判定する。検出部123は、上記の式(9)が満たされるピークを、足の背屈の最大に対応付けられるピークであると判定する。
【0055】
上記の第一判定条件、第二判定条件、および第三判定条件を踏まえ、検出部123は、ユーザの歩行に伴う歩行イベントを検出する。例えば、検出部123は、足の底屈の最大に対応付けられるピークのタイミングを爪先離地のタイミングとして検出する。例えば、検出部123は、足の背屈の最大に対応付けられるピークのタイミングを踵接地のタイミングとして検出する。例えば、検出部123は、爪先離地や踵接地を基準として、種々の歩行イベントを歩行波形から検出する。例えば、検出部123は、爪先離地や踵接地を基準として、歩行波形から検出される特徴に基づいて、種々の歩行イベントを歩行波形から検出する。例えば、検出部123は、爪先離地や踵接地を基準とする時間経過や時間配分に基づいて、種々の歩行イベントを歩行波形から検出する。例えば、検出部123は、爪先離地や踵接地を基準として、反対足爪先離地や、踵持ち上がり、反対足踵接地足交差、脛骨垂直等の歩行イベントを検出する。例えば、検出部123の検出結果は、歩行の軌跡や、歩行速度、ストライド長、歩行の対称性、歩行フェーズの長さ等の検証に用いることができる。
【0056】
(動作)
次に、本実施形態の検出システム1の検出装置12の動作について図面を参照しながら説明する。
図14は、検出装置12の動作の概略について説明するためのフローチャートである。検出装置12の動作の詳細は、上述の構成に関する説明の通りである。
図14のフローチャートに沿った説明においては、検出装置12を動作主体として説明する。
【0057】
図14において、まず、検出装置12は、足の動きに関するセンサデータを取得する(ステップS11)。
【0058】
次に、検出装置12は、取得されたセンサデータを用いて時系列データ(歩行波形とも呼ぶ)を生成する(ステップS12)。
【0059】
次に、検出装置12は、生成された歩行波形に対して検出処理を実行する(ステップS13)。例えば、検出装置12は、ロール角、ロール角速度、および進行方向加速度の歩行波形から、第一条件、第二条件、および第三条件を満たすピークを検出し、検出されたピークに対応する歩行イベントを判定する。
【0060】
〔検出処理〕
次に、検出装置12による検出処理について図面を参照しながら説明する。
図15は、検出装置12による検出処理について説明するためのフローチャートである。
図15のフローチャートに沿った説明においては、検出装置12を動作主体として説明する。
【0061】
まず、検出装置12は、ロール角、ロール角速度、および進行方向加速度をセットとする歩行波形の初期位置にウィンドウを設定する(ステップS131)。歩行波形の初期位置にウィンドウを設定することを初期設定とも呼ぶ。例えば、初期位置は、歩行波形における最も早い時刻に、ウィンドウの始点(ID=1)の計測線が重なる位置である。
【0062】
次に、ロール角の歩行波形に関して第一検出条件が満たされた場合(ステップS132でYes)、ロール角が最大(または最小)の値を示すタイミングをピークの候補として検出する。一方、第一検出条件が満たされなかった場合(ステップS132でNo)、ステップS131に戻り、検出装置12は、ウィンドウをスライドさせる。例えば、検出装置12は、ウィンドウの始点(ID=1)の計測線が終点(ID=END)の計測線に重なる位置まで、ウィンドウをスライドさせる。
【0063】
ステップS132の次に、第一判定条件が満たされた場合(ステップS133でYes)、検出装置12は、ステップS132で検出されたピークの候補をピークとして検出する(ステップS134)。一方、第一判定条件が満たされなかった場合(ステップS133でNo)、ステップS131に戻り、検出装置12は、ウィンドウをスライドさせる。
【0064】
ステップS134の次に、検出部123は、ピークが検出されたウィンドウの内部において、ロール角速度が第二検出条件を満たすか検証する(ステップS136)。ロール角速度が第二検出条件を満たす場合(ステップS135でYes)、検出部123は、第二判定条件または第三判定条件に基づいて、ピークが足の底屈および背屈のうちいずれの最大に対応付けられるかを判定する(ステップS136)。一方、ロール角速度が第二検出条件を満たさなかった場合(ステップS135でNo)、ステップS131に戻り、検出装置12は、ウィンドウをスライドさせる。
【0065】
ステップS135の次に、ロール角速度が第二判定条件を満たす、または進行方向加速度が第三判定条件を満たす場合(ステップS136でYes)、検出部123は、そのピークが底屈および背屈のいずれかの最大に対応付けられると判定する(ステップS137)。例えば、検出部123は、ロール角速度が第三閾値よりも小さい場合、検出されたピークが底屈に相当すると判定する。例えば、検出部123は、ロール角速度が第三閾値と第四閾値の間の値である場合、検出されたピークが足の背屈の最大に対応付けられると判定する。例えば、検出部123は、ピークのタイミングにおける進行方向加速度が第5閾値よりも小さい場合、検出されたピークが足の底屈の最大に対応付けられると判定する。例えば、ピークのタイミングにおける進行方向加速度が第6閾値よりも大きい場合、検出されたピークが足の背屈の最大に対応付けられると判定する。ステップS136において、検出部123は、検出されたピークのタイミングが足の底屈および背屈のいずれの最大に対応付けられるか判定する際に、ロール角速度および進行方向加速度の両方を用いてもよいし、ロール角速度および進行方向加速度のうち一方を用いてもよい。
【0066】
ステップS137の後、処理が停止されない場合(ステップS138でNo)、ステップS131に戻る。一方、処理が停止された場合(ステップS138でYes)、
図15のフローチャートに沿った処理は終了である。
【0067】
以上のように、本実施形態の検出システムは、データ取得装置と検出装置を備える。データ取得装置は、空間加速度および空間角速度を計測し、計測した空間加速度および空間角速度に基づくセンサデータを生成し、生成したセンサデータを推定装置に送信する。検出装置は、波形生成部および検出部を有する。波形生成部は、足の動きに関するセンサデータを用いて歩行波形を生成する。検出部は、矢状面内の角度、角速度、および加速度の各々に設定された条件に基づいて、歩行波形から歩行イベントを検出する。
【0068】
本実施形態においては、矢状面内の角度、角速度、および加速度の各々に設定された条件に基づいて歩行波形から歩行イベントを検出する。そのため、本実施形態によれば、健常者の歩行のみならず、体に不自由のある人の歩行に関しても、歩行波形に基づいて歩行イベントを検出できる。
【0069】
本実施形態の一態様において、検出部は、矢状面内の角度、角速度、および加速度の歩行波形に所定の時間分のウィンドウを設定し、ウィンドウを時間方向にスライドさせて歩行イベントを検出する。本態様によれば、ウィンドウの内部の局所領域で歩行波形を検証するため、全体的な歩行波形からは把握しにくい特徴を検出できる。そのため、本態様によれば、歩行波形に変曲点が多く含まれる場合であっても、歩行波形に基づいて歩行イベントを検出できる。
【0070】
本実施形態の一態様において、検出部は、第一検出条件と第一判定条件とを含む第一条件に基づいて、矢状面内における角度の歩行波形からピークを検出する。第一検出条件は、矢状面内の角度の歩行波形において、ウィンドウの両端のタイミングにおける角度の値と、ウィンドウの内部で最大の角度との大小関係に基づいてピーク候補を検出するための条件である。第一判定条件は、ピーク候補がピークであるか判定するための条件である。本態様によれば、矢状面内における角度の歩行波形から、ノイズが除去されたピークを検出できる。
【0071】
本実施形態の一態様において、検出部は、第二検出条件と第二判定条件とを含む第二条件に基づいて、矢状面内における角度の歩行波形から検出されたピークが、足の底屈および背屈のいずれの最大に対応付けられるか判定する。第二検出条件は、矢状面内の角速度の歩行波形において、ウィンドウの内部における角速度の変化量の急峻な箇所を検出するための条件である。第二判定条件は、ウィンドウの両端のタイミングにおける角速度の値と、ウィンドウの内部で最大の角速度との大小関係に基づいて、ウィンドウの内部における角速度の変化量の急峻な箇所が底屈ピークおよび背屈ピークのいずれに対応付けられるか判定するための条件である。本態様によれば、第二検出条件と第二判定条件とを組み合わせることによって、矢状面内における角度の歩行波形から検出されたピークが、足の底屈または背屈のうちいずれの最大に対応付けられるか判定できる。
【0072】
本実施形態の一態様において、検出部は、第二検出条件と第三判定条件(第三条件)とに基づいて、矢状面内における角度の歩行波形から検出されたピークが、足の底屈および背屈のいずれの最大に対応付けられるか判定する。第二検出条件は、矢状面内の角速度の歩行波形において、ウィンドウの内部における角速度の変化量の急峻な箇所を検出するための条件である。第三判定条件は、ウィンドウの内部で検出されたピークのタイミングにおける矢状面内の進行方向の加速度の値に基づいて、ピークが底屈ピークおよび背屈ピークのいずれに対応付けられるか判定するための条件である。本態様によれば、第二検出条件と第三判定条件とを組み合わせることによって、矢状面内における角度の歩行波形から検出されたピークが、足の底屈および背屈のうちいずれの最大に対応付けられるか判定できる。
【0073】
本実施形態の手法は、半身麻痺に限らず、パーキンソン病やリウマチ、変形性膝関節症、骨粗しょう症、回内/回外、外反母趾等が原因で体に不自由のある人の歩行にも適用できる。また、本実施形態の手法は、一方の足に人工関節を入れている人や、一方の足を怪我している人の歩行に適用できる。例えば、本実施形態の手法は、歩行波形の推移を検証すれば、足の怪我等の回復状態をモニターする用途にも用いることができる。
【0074】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る検出装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の検出装置は、足の底屈/背屈の検出結果を用いて歩行状態を判定する点において、第1の実施形態の検出装置とは異なる。本実施形態においては、足が地面に接地している期間(立脚相)と、足が地面から離れている期間(遊脚相)とを判別することによって、歩行状態を判定する例について説明する。以下において、第1の実施形態と同様の部分については、詳細な説明を省略する。
【0075】
(構成)
図16は、本実施形態の検出システム2の構成を示すブロック図である。検出システム2は、データ取得装置21および検出装置22を備える。データ取得装置21と検出装置22は、有線で接続されてもよいし、無線で接続されてもよい。データ取得装置21と検出装置22は、単一の装置で構成してもよい。また、検出システム2の構成からデータ取得装置21を除き、検出装置22だけで検出システム2を構成してもよい。なお、
図16にはデータ取得装置21を一つしか図示していないが、左右両足に対応付けて一つずつ(計二つ)のデータ取得装置21を配置してもよい。データ取得装置21は、第1の実施形態のデータ取得装置11と同様の構成である。以下においては、第1の実施形態とは異なる検出装置22について、第1の実施形態との相違点に焦点を当てて説明する。
【0076】
〔検出装置〕
図17は、本実施形態の検出装置22の構成の一例を示すブロック図である。検出装置22は、波形生成部221、検出部223、および判定部225を備える。波形生成部221および検出部223は、第1の実施形態の検出装置12の対応する構成と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0077】
判定部225は、検出部223の検出結果を取得する。例えば、判定部225は、第一条件を満たすピークが、足の底屈および背屈のいずれの最大に対応付けられるかという検出結果を取得する。以下において、足の底屈の最大に対応付けられるピークを底屈ピークと呼び、足の背屈の最大に対応付けられるピークを背屈ピークと呼ぶ。
【0078】
判定部225は、取得した検出結果に基づいて、歩行状態を判定する。例えば、判定部225は、連続する底屈ピークの間の期間を一歩として判定する。例えば、判定部225は、連続する背屈ピークの間の期間を一歩として判定する。例えば、判定部225は、連続する底屈ピークと背屈ピークの間の期間を遊脚相と判定する。例えば、判定部225は、連続する背屈ピークと底屈ピークの間の区間を立脚相と検出する。例えば、判定部225は、波形生成部221によって生成された歩行波形に、遊脚相および立脚相に関する判定結果を対応付けた情報を出力する。例えば、判定部225から出力された情報は、図示しない表示機器の画面に表示される。
【0079】
図18は、関連技術を用いて判定された歩行状態の一例について説明するための概念図である。
図18は、ロール角の歩行波形だけに基づく歩行状態の判定結果を、半身麻痺の人のロール角の歩行波形に重ねたグラフの一例である。
図18のグラフにおいて、歩行状態を示す数値は、初期状態が0であり、立脚相が1であり、遊脚相が2である。半身麻痺の人のロール角の歩行波形は、底屈ピークは明確であるものの、複雑な変曲点が含まれるため、背屈ピークを判定することは難しい。すなわち、ロール角の歩行波形だけからは、半身麻痺の人の歩行状態を正確に判定することが難しい。
【0080】
図19は、判定部225によって判定された歩行状態の一例について説明するための概念図である。
図19は、判定部225による歩行状態の判定結果を、半身麻痺の人のロール角の歩行波形に重ねたグラフの一例である。
図19のグラフにおいて、歩行状態を示す数値は、初期状態が0であり、立脚相が1であり、遊脚相が2である。
図19のように、本実施形態の手法によれば、半身麻痺の人の歩行波形であっても、底屈ピークと背屈ピークの間の期間を遊脚相と判定し、背屈ピークと底屈ピークの間の期間を立脚相と判定することができる。そのため、本実施形態の手法によれば、半身麻痺の人の歩行状態を正確に判定できる。すなわち、本実施形態によれば、第一条件、第二条件、および第三条件に基づいて、ロール角、ロール角速度、および進行方向加速度の歩行波形から、足の底屈/背屈に相当するタイミングを正確に検出できるので、半身麻痺の人の歩行状態を正確に判定できる。また、本実施形態の手法によれば、健常者の歩行波形に関しても、足の底屈/背屈に相当するタイミングを正確に検出できるので、半身麻痺の人の歩行状態を正確に判定できる。例えば、本実施形態の手法で歩数をカウントし、3歩以上の歩数が検出された時点で安定歩行が開始されたことを検出できる。このように、本実施形態の手法を用いれば、半身麻痺等の影響によって歩行に異常がある人に関しても、健常者と同様に歩行状態を検証できる。
【0081】
以上のように、本実施形態の検出システムは、データ取得装置と検出装置を備える。データ取得装置は、空間加速度および空間角速度を計測し、計測した空間加速度および空間角速度に基づくセンサデータを生成し、生成したセンサデータを推定装置に送信する。検出装置は、波形生成部、検出部、および判定部を有する。波形生成部は、足の動きに関するセンサデータを用いて歩行波形を生成する。検出部は、矢状面内の角度、角速度、および加速度の各々に設定された条件に基づいて、歩行波形から歩行イベントを検出する。判定部は、検出部によって検出されたピークに基づいて歩行状態を判定する。
【0082】
本実施形態によれば、検出部によって検出されたピークに基づいて歩行状態を判定することによって、健常者の歩行のみならず、体に不自由のある人の歩行に関しても、歩行波形に基づいて歩行イベントを検出できる。
【0083】
本実施形態の一態様において、判定部は、連続する底屈ピークと背屈ピークの間の期間を遊脚相と判定し、連続する背屈ピークと底屈ピークの間の区間を立脚相と判定する。判定部は、波形生成部によって生成された歩行波形の時間が、遊脚相および立脚相のうちいずれに対応付けられるかを示す情報を出力する。本態様によれば、判定部の判定結果を歩行波形に対応付けることによって、歩行波形に含まれる特徴が、どのような歩行状態に起因するのかを検証できる。
【0084】
(第3の実施系鄭)
次に、第3の実施形態に係る検出装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の検出装置は、各実施形態の検出装置を簡略化した構成である。
図20は、本実施形態の検出装置32の構成の一例を示すブロック図である。検出装置32は、波形生成部321および検出部323を備える。
【0085】
波形生成部321は、足の動きに関するセンサデータを用いて歩行波形を生成する。検出部323は、矢状面内の角度、角速度、および加速度の各々に設定された条件に基づいて、歩行波形から歩行イベントを検出する。
【0086】
本実施形態の検出装置によれば、矢状面内の角度、角速度、および加速度の各々に設定された条件に基づいて歩行波形から歩行イベントを検出するため、健常者の歩行のみならず、体に不自由のある人の歩行に関しても、歩行波形に基づいて歩行イベントを検出できる。
【0087】
(ハードウェア)
ここで、本開示の各実施形態に係る検出装置の処理を実行するハードウェア構成について、
図21の情報処理装置90を一例として挙げて説明する。なお、
図21の情報処理装置90は、各実施形態の検出装置の処理を実行するための構成例であって、本開示の範囲を限定するものではない。
【0088】
図21のように、情報処理装置90は、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96を備える。
図21においては、インターフェースをI/F(Interface)と略して表記する。プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96は、バス98を介して互いにデータ通信可能に接続される。また、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93および入出力インターフェース95は、通信インターフェース96を介して、インターネットやイントラネットなどのネットワークに接続される。
【0089】
プロセッサ91は、補助記憶装置93等に格納されたプログラムを主記憶装置92に展開し、展開されたプログラムを実行する。本実施形態においては、情報処理装置90にインストールされたソフトウェアプログラムを用いる構成とすればよい。プロセッサ91は、本実施形態に係る検出装置による処理を実行する。
【0090】
主記憶装置92は、プログラムが展開される領域を有する。主記憶装置92は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリとすればよい。また、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)などの不揮発性メモリを主記憶装置92として構成・追加してもよい。
【0091】
補助記憶装置93は、種々のデータを記憶する。補助記憶装置93は、ハードディスクやフラッシュメモリなどのローカルディスクによって構成される。なお、種々のデータを主記憶装置92に記憶させる構成とし、補助記憶装置93を省略することも可能である。
【0092】
入出力インターフェース95は、情報処理装置90と周辺機器とを接続するためのインターフェースである。通信インターフェース96は、規格や仕様に基づいて、インターネットやイントラネットなどのネットワークを通じて、外部のシステムや装置に接続するためのインターフェースである。入出力インターフェース95および通信インターフェース96は、外部機器と接続するインターフェースとして共通化してもよい。
【0093】
情報処理装置90には、必要に応じて、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力機器を接続するように構成してもよい。それらの入力機器は、情報や設定の入力に使用される。なお、タッチパネルを入力機器として用いる場合は、表示機器の表示画面が入力機器のインターフェースを兼ねる構成とすればよい。プロセッサ91と入力機器との間のデータ通信は、入出力インターフェース95に仲介させればよい。
【0094】
また、情報処理装置90には、情報を表示するための表示機器を備え付けてもよい。表示機器を備え付ける場合、情報処理装置90には、表示機器の表示を制御するための表示制御装置(図示しない)が備えられていることが好ましい。表示機器は、入出力インターフェース95を介して情報処理装置90に接続すればよい。
【0095】
また、情報処理装置90には、ドライブ装置を備え付けてもよい。ドライブ装置は、プロセッサ91と記録媒体(プログラム記録媒体)との間で、記録媒体からのデータやプログラムの読み込み、情報処理装置90の処理結果の記録媒体への書き込みなどを仲介する。ドライブ装置は、入出力インターフェース95を介して情報処理装置90に接続すればよい。
【0096】
以上が、本発明の各実施形態に係る検出装置を可能とするためのハードウェア構成の一例である。なお、
図21のハードウェア構成は、各実施形態に係る検出装置の演算処理を実行するためのハードウェア構成の一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。また、各実施形態に係る検出装置に関する処理をコンピュータに実行させるプログラムも本発明の範囲に含まれる。さらに、各実施形態に係るプログラムを記録したプログラム記録媒体も本発明の範囲に含まれる。記録媒体は、例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体で実現できる。また、記録媒体は、USB(Universal Serial Bus)メモリやSD(Secure Digital)カードなどの半導体記録媒体や、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、その他の記録媒体によって実現してもよい。プロセッサが実行するプログラムが記録媒体に記録されている場合、その記録媒体はプログラム記録媒体に相当する。
【0097】
各実施形態の検出装置の構成要素は、任意に組み合わせることができる。また、各実施形態の検出装置の構成要素は、ソフトウェアによって実現してもよいし、回路によって実現してもよい。
【0098】
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0099】
1、2 検出システム
11、21 データ取得装置
12、22、32 検出装置
111 加速度センサ
112 角速度センサ
113 制御部
115 データ送信部
121、221、321 波形生成部
123、223、323 検出部
225 判定部