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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】X線透視撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240625BHJP
【FI】
A61B6/00 550M
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022576972
(86)(22)【出願日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 JP2021037605
(87)【国際公開番号】W WO2022158056
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2021009541
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】山本 貴也
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-185007(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0015440(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0313563(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体にX線を照射するX線源と、前記X線源から照射されたX線を検出するX線検出器とを含む撮影部と、
前記撮影部により撮影されたX線画像を取得するX線画像取得部と、
学習済みの学習モデルを用いて前記X線画像に写る対象の分布を出力する対象分布学習識別部と、
前記X線画像の画質を向上させる画質向上処理を行う画質向上処理部と、
前記X線画像を表示する表示部と、を備え、
前記画質向上処理部は、前記対象分布学習識別部による学習識別結果を用いて、前記X線画像に対して前記画質向上処理を行う第1画像処理モードと、前記学習識別結果を用いずに前記X線画像に対して前記画質向上処理を行う第2画像処理モードとを切り替え可能なように構成されている、X線透視撮影装置。
【請求項2】
前記画質向上処理は、少なくとも、ノイズ低減処理を含み、
前記画質向上処理部は、前記学習識別結果を用いる前記第1画像処理モードにおいては、前記X線画像中の前記対象の強調処理が行われた強調画像に対して前記ノイズ低減処理を行い、前記学習識別結果を用いない前記第2画像処理モードにおいては、前記強調処理が行われていない前記X線画像に対して前記ノイズ低減処理を行うように構成されている、請求項1に記載のX線透視撮影装置。
【請求項3】
少なくとも前記第2画像処理モードを実行中に、前記第2画像処理モードである旨を前記X線画像とともに前記表示部に表示させ、前記第1画像処理モードを実行中には、前記表示部において、前記第1画像処理モードである旨を表示しないように構成された表示制御部をさらに備える、請求項1に記載のX線透視撮影装置。
【請求項4】
前記対象分布学習識別部による前記学習識別結果を用いるか否かの切り替えを行う学習識別結果利用切替部をさらに備える、請求項1に記載のX線透視撮影装置。
【請求項5】
前記学習識別結果利用切替部は、撮影部位および撮影条件の少なくともいずれかが変更された場合でも、実行中の前記第1画像処理モードまたは前記第2画像処理モードを維持するように構成されている、請求項4に記載のX線透視撮影装置。
【請求項6】
操作者の操作入力を受け付ける入力受付部をさらに備え、
前記学習識別結果利用切替部は、前記入力受付部による入力に基づいて、前記第1画像処理モードと前記第2画像処理モードとを切り替えるように構成されている、請求項4に記載のX線透視撮影装置。
【請求項7】
前記学習識別結果利用切替部は、前記学習モデルから出力される前記学習識別結果に基づいて、前記第1画像処理モードと前記第2画像処理モードとを切り替えるように構成されている、請求項4に記載のX線透視撮影装置。
【請求項8】
前記X線画像取得部、前記画質向上処理部、および、前記学習識別結果利用切替部を含む第1プロセッサと、
前記第1プロセッサとは別個に設けられ、前記対象分布学習識別部を含む第2プロセッサとを備え、
前記X線画像取得部は、動画像としての前記X線画像を取得するように構成されており、
前記対象分布学習識別部は、前記第1画像処理モードおよび前記第2画像処理モードのいずれにおいても、前記対象を識別する処理を行うように構成されている、請求項4に記載のX線透視撮影装置。
【請求項9】
前記画質向上処理部は、前記ノイズ低減処理として、少なくとも、前記X線画像の各フレームにおける所定の画素の画素値を加算するリカーシブフィルタを用いた処理を行うように構成されている、請求項2に記載のX線透視撮影装置。
【請求項10】
前記対象は、前記X線画像に写るステント、ガイドワイヤ、カテーテル、血管、および、骨のうちの少なくともいずれかを含む、請求項1に記載のX線透視撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、X線透視撮影装置に関し、特に、学習済みの学習モデルを用いて被検者の体内に導入されたデバイスの識別を行うX線透視撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線透視撮影装置に関し、学習済みの学習モデルを用いて被検者の体内に導入されたデバイスの識別を行うX線透視撮影装置が知られている。このようなX線透視撮影装置は、たとえば、特開2017―185007号公報に開示されている。
【0003】
特開2017―185007号公報に開示されているX線透視撮影装置は、照射部と、放射線検出部と、画像生成部と、対象物検出部とを備える。照射部は、被検体に放射線を照射するように構成されている。放射線検出部は、被検体を透過した放射線を検出するように構成されている。画像生成部は、放射線検出部の検出信号に基づき放射線画像を生成するように構成されている。対象物検出部は、機械学習により予め取得された画像認識用の学習結果データに基づいて、放射線画像中から画像認識により対象物を識別するように構成されている。また、特開2017―185007号公報では、識別した対象物を強調する処理を行うように構成されている。特開2017―185007号公報では、ガイドワイヤなどのデバイスを対象物として識別し、強調する構成が開示されている。また、特開2017―185007号公報では、対象物検出部は、動画像の形式の放射線画像中から対象物を識別するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017―185007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特開2017―185007号公報には開示されていないが、機械学習を行うことによって生成された学習済みの学習モデルは、学習させるアルゴリズム、および、学習に用いる教師用データが、対象物(デバイス)の識別の精度に影響する。また、デバイスを患者の体内に導入する手術に用いるデバイスは、患者への負担を低減させるために、形状などが改良されている。そのため、患者の負担を軽減させる改良が行われたデバイス(対象)を用いた場合、学習モデルの学習に用いた教師用データにおける対象(デバイス)の形状と、実際に手術に用いるデバイス(対象)の形状との違いによっては、学習モデルによる対象の識別精度が低下する場合がある。この場合、学習モデルによる識別結果の精度が充分な精度とはならず対象を誤検知する場合がある。対象を誤検知した場合、学習モデルによって出力された学習識別結果に基づいて強調処理を行うことにより対象ではない部分が強調され、X線画像中における対象の視認性が低下する場合があるという不都合がある。そのため、学習モデルを用いてX線画像中の対象を識別する構成において、学習モデルが出力する学習識別結果に起因して対象の視認性が低下することを抑制することが可能なX線透視撮影装置が望まれている。なお、学習識別結果とは、学習モデルによって出力される対象の分布(デバイスの位置情報)を含む。
【0006】
この発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、学習モデルを用いてX線画像中の対象を識別する構成において、学習モデルが出力する学習識別結果に起因してデバイスの視認性が低下することを抑制することが可能なX線透視撮影装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるX線透視撮影装置は、被検体にX線を照射するX線源と、X線源から照射されたX線を検出するX線検出器とを含む撮影部と、撮影部により撮影されたX線画像を取得するX線画像取得部と、学習済みの学習モデルを用いてX線画像に写る対象の分布を出力する対象分布学習識別部と、X線画像の画質を向上させる画質向上処理を行う画質向上処理部と、X線画像を表示する表示部と、を備え、画質向上処理部は、対象分布学習識別部による学習識別結果を用いて、X線画像に対して画質向上処理を行う第1画像処理モードと、学習識別結果を用いずにX線画像に対して画質向上処理を行う第2画像処理モードとを切り替え可能なように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
上記一の局面におけるX線透視撮影装置では、上記のように、学習識別結果を用いてX線画像に対して画質向上処理を行う第1画像処理モードと、学習識別結果を用いずにX線画像に対して画質向上処理を行う第2画像処理モードとを切り替え可能なように構成されている画質向上処理部を備える。これにより、学習識別結果の精度が高い場合と低い場合とで、学習識別結果を用いる第1画像処理モードと学習識別結果を用いない第2画像処理モードとを切り替えることができる。すなわち、学習識別結果の精度が高い場合には、第1画像処理モードによって対象の視認性を向上させることが可能であり、学習識別結果の精度が低い場合には、第2画像処理モードによってX線画像の画質向上処理を行うことにより、学習識別結果に起因して対象の視認性が低下することを抑制することができる。その結果、学習モデルを用いてX線画像中のデバイスを識別する構成において、学習モデルが出力する学習識別結果に起因して対象の視認性が低下することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態によるX線透視撮影装置の全体構成を示した図である。
図2】一実施形態による画質向上処理部が第1画像処理モードによる画質向上処理後の強調画像を生成する構成を説明するための模式図である。
図3】一実施形態による画質向上処理部が第2画像処理モードによる画質向上処理後のX線画像を生成する構成を説明するための模式図である。
図4】第1画像処理モードと第2画像処理モードとの切り替えを説明するための模式図である。
図5】一実施形態による画質向上処理を説明するためのフローチャートである。
図6】一実施形態による画像処理モード切替処理を説明するためのフローチャートである。
図7】変形例によるX線透視撮影装置の全体構成を示した図である。
図8】変形例による画質向上処理を説明するためのフローチャートである。
図9】変形例による画像処理モード切替処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(X線透視撮影装置の構成)
図1を参照して、本発明の一実施形態によるX線透視撮影装置100の構成について説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態によるX線透視撮影装置100は、撮影部1と、コンピュータ2と、表示部3と、入力受付部4と、記憶部5と、天板6と、装置制御部8と、を備える。本実施形態では、X線透視撮影装置100は、被検体として、被検者90を撮影する。X線透視撮影装置100は、たとえば、デバイス80(図2参照)を用いて、被検者90の血管の狭窄部位などの治療を行う手技において用いられる。デバイス80は、被検者90の血管に導入されたカテーテル、ステント、および、ガイドワイヤの少なくともいずれかを含む。
【0012】
撮影部1は、X線源1aと、X線検出器1bと、X線源1aとX線検出器1bとが対向するように配置されるアーム1cとを有している。
【0013】
X線源1aは、被検体にX線を照射するように構成されている。具体的には、X線源1aは、図示しない駆動部によって電圧が印加されることにより、X線を照射する。X線源1aは、X線の照射範囲である照射野を調節可能なコリメータを有している。本実施形態では、X線源1aは、アーム1cの一方側の先端に取り付けられている。
【0014】
X線検出器1bは、X線源1aから照射されたX線を検出するように構成されている。本実施形態では、X線検出器1bは、アーム1cの他方側の先端に取り付けられている。すなわち、X線検出器1bは、天板6を挟んで、X線源1aとは反対側に配置されている。また、X線検出器1bは、X線を検出することができるように構成されている。X線検出器1bは、たとえば、FPD(Flat Panel Detector)である。X線検出器1bは、被検体を透過したX線を検出し、検出したX線に基づいて検出信号を出力するように構成されている。
【0015】
コンピュータ2は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、または、画像処理用に構成されたFPGA(Field-Programmable Gate Array)などの第1プロセッサ2aと、CPU、GPU、または、画像処理用に構成されたFPGAなどの第2プロセッサ2bと、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)とを含んで構成される。
【0016】
図1に示すように、第1プロセッサ2aは、X線画像取得部20、および、画質向上処理部22を含む。なお、本実施形態では、第1プロセッサ2aは、学習識別結果利用切替部23をさらに含む。また、本実施形態では、第1プロセッサ2aは、表示制御部24をさらに含む。X線画像取得部20、画質向上処理部22、学習識別結果利用切替部23、および、表示制御部24は、第1プロセッサ2aが各種プログラムを実行することにより実現される機能ブロックとしてソフトウェア的に構成される。X線画像取得部20、画質向上処理部22、学習識別結果利用切替部23、および、表示制御部24は、専用のプロセッサ(処理回路)を設けてハードウェアにより構成されていてもよい。
【0017】
第2プロセッサ2bは、第1プロセッサ2aとは別個に設けられている。第2プロセッサ2bは、対象分布学習識別部21を含む。対象分布学習識別部21は、第2プロセッサ2bが各種プログラムを実行することにより実現される機能ブロックとしてソフトウェア的に構成される。対象分布学習識別部21は、専用の処理回路によりハードウェアとして構成されていてもよい。
【0018】
X線画像取得部20は、撮影部1により撮影されたX線画像10を取得するように構成されている。本実施形態では、X線画像取得部20は、動画像としてのX線画像10を取得するように構成されている。すなわち、X線画像取得部20は、X線画像10を、フレーム毎に取得するように構成されている。
【0019】
対象分布学習識別部21は、学習済みの学習モデル7を用いてX線画像10に写る対象の分布を出力するように構成されている。本実施形態では、対象は、X線画像10に写るデバイス80、血管、および、骨のうちの少なくともいずれかを含む。すなわち、本実施形態では、対象は、ステント、ガイドワイヤ、カテーテル、血管、および、骨のうちの少なくともいずれかを含む。なお、本実施形態では、対象がデバイス80である例を用いて説明する。また、対称の分布とは、デバイス80の位置情報である。学習モデル7は、X線画像10に写るデバイス80を識別することを学習させることにより予め生成されている。また、学習モデル7は、記憶部5に記憶されている。
【0020】
また、画質向上処理部22は、X線画像10の画質を向上させる画質向上処理を行うように構成されている。また、学習識別結果利用切替部23は、対象分布学習識別部21によるデバイス80の学習識別結果7aを用いるか否かの切り替えを行うように構成されている。また、表示制御部24は、X線画像10とともに、画像処理モードを表示させるように構成されている。対象分布学習識別部21、画質向上処理部22、学習識別結果利用切替部23、および、表示制御部24の詳細な構成については、後述する。なお、デバイス80の学習識別結果7aとは、X線画像10に写るデバイス80の位置情報を含む。
【0021】
表示部3は、X線画像10を表示するように構成されている。本実施形態では、表示部3は、画質向上処理後の動画像としてのX線画像10a(図3参照)、または、画質向上処理後の動画像としての強調画像11a(図2参照)を表示するように構成されている。表示部3は、X線透視撮影装置100が備えるモニターである。
【0022】
入力受付部4は、操作者の操作入力を受け付けるように構成されている。入力受付部4は、たとえば、マウス、キーボードなどの入力デバイスを含む。
【0023】
記憶部5は、X線画像取得部20が取得したX線画像10、画質向上処理後のX線画像10a、X線画像10中のデバイス80を強調した強調画像11(図2参照)、画質向上処理後の強調画像11aなどを記憶するように構成されている。また、記憶部5は、第1プロセッサ2aおよび第2プロセッサ2bが実行する各種プログラムを記憶するように構成されている。記憶部5は、HDD(Hard Disk Drive)、または、SSD(Solid State Drive)などの不揮発性のメモリを含む。
【0024】
図1に示すように、天板6は、平面視において、長方形の平板状に形成されている。被検者90の頭足方向が長方形の長辺に沿う方向、かつ、被検者90の左右方向が長方形の短辺に沿う方向となるように、被検者90は、天板6上に載置される。
【0025】
天板6には移動機構(図示せず)が設けられている。X線透視撮影装置100は、天板6を移動機構により長手方向に移動させることにより天板6と撮影部1との相対位置を変更しながら、被検体を撮影することができる。
【0026】
装置制御部8は、X線透視撮影装置100の制御を行うように構成されている。具体的には、装置制御部8は、X線源1a、アーム1c、天板6などの制御を行うように構成されている。また、装置制御部8は、操作者の入力により、X線源1aを制御することにより、X線源1aから出力されるX線の線量を制御するように構成されている。
【0027】
図1に示すように、術者(医師、技師など)は、天板6に載置された被検者90に造影剤を投与するとともに撮影部1と天板6との相対位置を変更しながら複数のX線画像10を撮影する。また、術者は、被検者90の血管に導入したデバイス80を所定の位置まで移動させる際に、X線画像10を撮影する。本実施形態では、術者は、被検者90の心臓の血管に対して、デバイス80を導入する。ここで、被検者90の被ばく線量を低減させるために、X線源1aから照射されるX線の線量を低減することが好ましい。
【0028】
しかしながら、X線の線量を低減させると、図2に示すように、X線画像10にノイズが生じる。X線画像10にノイズが生じている場合、X線画像10におけるデバイス80の視認性が低下する。そのため、術者がデバイス80用いて手術を行うことが困難な場合がある。なお、図2に示す例では、ハッチングを付して図示することにより、X線画像10のノイズを表現している。
【0029】
(第1画像処理モード)
そこで、本実施形態では、図2に示すように、画質向上処理部22は、X線画像10の画質を向上させる画質向上処理を行うことにより、デバイス80の視認性を向上させるように構成されている。本実施形態では、画質向上処理は、少なくとも、ノイズ低減処理を含む。
【0030】
また、図2に示すように、X線画像10には、被検者90の人体構造物90aが写り込んでいる場合がある。この場合、デバイス80と人体構造物90aとを識別することが困難な場合がある。なお、人体構造物90aは、たとえば、心臓の血管のうち、デバイス80を導入する血管以外の血管である。なお、人体構造物90aは、血管の他に、心臓などの臓器のエッジ、横隔膜のエッジなどを含む。
【0031】
そこで、画質向上処理部22は、第1画像処理モードにおいては、X線画像10中のデバイス80の強調処理が行われた強調画像11を生成するように構成されている。なお、本実施形態では、画質向上処理部22は、強調処理を行う際に、学習識別結果7aを用いてデバイス80とデバイス80ではない背景部分とを識別する。そして、画質向上処理部22は、デバイス80に対して画素値を増加させる処理を行い、デバイス80を強調する。なお、本明細書では、デバイス80の画素値の増加を、デバイス80を図示する太さを変更することにより表現している。すなわち、デバイス80の画素値が増加するにしたがい、デバイス80が太くなるように図示している。
【0032】
また、本実施形態では、画質向上処理部22は、学習識別結果7aを用いる第1画像処理モードにおいては、強調画像11に対してノイズ低減処理を行うように構成されている。
【0033】
第1画像処理モードにおいて、画質向上処理部22は、強調画像11に対して、ノイズ低減処理を行うことにより、画質向上処理後の強調画像11aを生成する。なお、本実施形態では、画質向上処理部22は、ノイズ低減処理として、少なくとも、X線画像10の各フレームにおける所定の画素の画素値を加算するリカーシブフィルタを用いた処理を行うように構成されている。リカーシブフィルタを用いた処理では、X線画像10の各フレームにおける所定の画素の画素値を、重み付けを行ったうえで加算する。しかしながら、本実施形態のように、たとえば、心臓の血管などにデバイス80を導入する手術において、フレーム毎にデバイス80が写る位置が異なる。
【0034】
そこで、本実施形態では、リカーシブフィルタを用いた処理を行う際に、フレーム毎にデバイス80の位置合わせを行い、加算する画素の位置合わせを行う。
【0035】
画質向上処理後の強調画像11aは、学習識別結果7aが充分な精度の場合、フレーム毎のデバイス80の位置合わせの精度が高いため、後述する第2画像処理モードにおける画質向上処理後のX線画像10a(図3参照)よりもデバイス80の視認性が高い。そのため、本実施形態では、第1画像処理モードが、標準の画像処理モードとして設定されている。
【0036】
(第2画像処理モード)
ここで、学習識別結果7aによるデバイス80の識別結果の精度が低い場合、X線画像10中において、デバイス80以外の血管などがデバイス80であると誤検知される場合がある。この場合、動画像としてのX線画像10の一部のフレームにおいて、デバイス80とは異なる位置に存在する血管などが強調されることがある。また、学習識別結果7aによるデバイス80の識別結果の精度が低い場合、動画像としてのX線画像10に対して、リカーシブフィルタを用いたノイズ低減処理を行う場合に、デバイス80の位置合わせの精度も低下する。この場合、リカーシブフィルタを用いた処理を行った結果、加算する画素の位置にずれが生じるため、デバイス80の残像が生じてしまう。したがって、動画像としてのX線画像10中におけるデバイス80の視認性が低下する。
【0037】
そこで、本実施形態では、図3に示すように、画質向上処理部22は、学習識別結果7aを用いない第2画像処理モードにおいては、強調処理が行われていないX線画像10に対してノイズ低減処理を行うように構成されている。言い換えると、第2画像処理モードにおいては、画質向上処理部22は、X線画像取得部20が取得したX線画像10に対して、ノイズ低減処理を行う。具体的には、第2画像処理モードにおいては、画質向上処理部22は、各フレームにおけるデバイス80を、パターンマッチングによって位置合わせを行う。これにより、リカーシブフィルタを用いた処理において、残像が生じることを抑制しつつ、ノイズを低減させる。なお、X線の線量が低い場合、第2画像処理モードによって画質向上処理を行ったとしても、画質向上処理後のX線画像10のコントラストが低い場合がある。その場合、術者が、X線の線量を増加させる操作入力を行うことが考えられる。したがって、装置制御部8は、X線源1aから照射されるX線の線量を増加させる操作入力を受け付け可能に構成されている。
【0038】
(画像処理モードの切り替え)
医師によっては、学習識別結果7aの精度に起因してデバイス80の視認性がわずかに低下した場合でも、許容できない場合がある。また、医師などの好みにより、最初から第2画像処理モードによって画質向上処理を行ったX線画像10aを表示させたい場合もある。
【0039】
そこで、本実施形態では、画質向上処理部22は、学習識別結果7aを用いて、X線画像10に対して画質向上処理を行う第1画像処理モードと、学習識別結果7aを用いずにX線画像10に対して画質向上処理を行う第2画像処理モードとを切り替え可能なように構成されている。具体的には、画質向上処理部22は、学習識別結果利用切替部23が画像処理モードを切り替えることにより、第1画像処理モードと第2画像処理モードとを切り替えるように構成されている。本実施形態では、学習識別結果利用切替部23は、入力受付部4(図1参照)による入力に基づいて、第1画像処理モードと第2画像処理モードとを切り替えるように構成されている。
【0040】
具体的には、図4に示すように、学習識別結果利用切替部23は、医師などが入力受付部4によって切替ボタン4aを操作することにより入力された操作入力に基づいて、第1画像処理モードと第2画像処理モードとを切り替えるように構成されている。なお、切替ボタン4aは、表示部3において、画質向上処理後のX線画像10a、または、画質向上処理後の強調画像11aとともに表示されるGUI(Graphical User Interface)上のボタンである。
【0041】
また、本実施形態では、対象分布学習識別部21は、第1画像処理モードおよび第2画像処理モードのいずれにおいても、対象(デバイス80)を識別する処理を行うように構成されている。すなわち、第2画像処理モードにおいて学習識別結果7aを用いないが、対象分布学習識別部21は、第2画像処理モードにおいても学習識別結果7aを出力し続ける。
【0042】
(画像処理モードの表示)
図4に示すように、本実施形態では、表示制御部24は、少なくとも第2画像処理モードを実行中に、第2画像処理モードである旨をX線画像10とともに表示部3に表示させるように構成されている。具体的には、表示制御部24は、第2画像処理モードにおいて生成されたX線画像10aまたはX線画像10bを表示部3に表示させる際に、第2画像処理モードであるメッセージ30をX線画像10aまたはX線画像10bとともに表示させるように構成されている。
【0043】
なお、本実施形態では、図4に示すように、第1画像処理モードが標準の画像処理モードとして設定されている。そのため、表示制御部24は、第1画像処理モードを実行中には、表示部3において、第1画像処理モードである旨を表示しないように構成されている。
【0044】
(撮影位置または撮影条件の切り替え)
X線透視撮影装置100は、入力受付部4によって医師などの操作入力を受け付けることにより、撮影位置または撮影条件を切り替えることが可能なように構成されている。撮影条件は、たとえば、X線源1aから出力されるX線の線量、アーム1cによるX線源1aおよびX線検出器1bの配置などを含む。
【0045】
ここで、医師などは、切替ボタン4aを操作することにより、意図的に第1画像処理モードと第2画像処理モードとを切り替える。たとえば、医師などが、第1画像処理モードと第2画像処理モードとを切り替えた後に撮影位置および撮影条件の少なくともいずれかを変更した場合に、切り替える前の画像処理モードに戻ってしまった場合、再び第2画像処理モードに切り替えることとなり、医師などに不要な操作を行わせることになる。
【0046】
そこで、図4に示すように、本実施形態では、学習識別結果利用切替部23は、撮影部位および撮影条件の少なくともいずれかが変更された場合でも、実行中の第1画像処理モードまたは第2画像処理モードを維持するように構成されている。
【0047】
図4に示す例では、医師などが撮影条件を切り替えた場合を示している。具体的には、図4に示す例は、医師などが、X線の線量を変更した場合を示している。図4では、第2撮影条件が、第1撮影条件よりも、X線の線量が低い場合の例を示している。第2撮影条件では、X線の線量が低いため、第2撮影条件によって取得された画質向上処理後のX線画像10bに写るデバイス80および人体構造物90aは、第1撮影条件によって撮影された画質向上処理後のX線画像10aよりも画素値が小さくなる。図4では、第2撮影条件によって撮影されたX線画像10bに写るデバイス80および人体構造物90aを細く図示することにより、第1撮影条件によって撮影されたX線画像10aに写るデバイス80および人体構造物90aの画素値が小さいことを表現している。
【0048】
また、第2撮影条件によって取得された画質向上処理後の強調画像11bに写るデバイス80および人体構造物90aについても、第1撮影条件によって撮影された画質向上処理後の強調画像11aよりも細く図示することにより、画素値が小さいことを表現している。
【0049】
次に、図5を参照して、X線透視撮影装置100によるX線画像10の画質向上処理について説明する。なお、X線透視撮影装置100によるX線画像10の画質向上処理は、X線画像10の各フレームを取得する度に行われる。
【0050】
ステップ101において、X線画像取得部20は、X線画像10を取得する。具体的には、X線画像取得部20は、動画像としてのX線画像10をフレーム毎に取得する。
【0051】
ステップ102において、学習識別結果利用切替部23は、現在実行中の画像処理モードを取得する。
【0052】
ステップ103において、学習識別結果利用切替部23は、実行中の画像処理モードが第1画像処理モードであるか否かを判定する。実行中の画像処理モードが第1画像処理モードであった場合、処理は、ステップ104へ進む。実行中の画像処理モードが第2画像処理モードであった場合、処理は、ステップ107へ進む。
【0053】
ステップ104において、画質向上処理部22は、学習識別結果7aを用いてX線画像10中のデバイス80を強調することにより、強調画像11を取得する。
【0054】
ステップ105において、画質向上処理部22は、強調画像11に対して画質向上処理を行う。具体的には、画質向上処理部22は、強調画像11に対してノイズ低減処理を行うことにより、画質向上処理後の強調画像11aを取得する。
【0055】
ステップ106において、表示制御部24は、画質向上処理後の強調画像11aを表示部3に表示する。
【0056】
ステップ102からステップ107に処理が進んだ場合、ステップ107において、画質向上処理部22は、X線画像10に対して画質向上処理を行う。具体的には、画質向上処理部22は、X線画像10に対してノイズ低減処理を行うことにより、画質向上処理後のX線画像10aを取得する。
【0057】
ステップ108において、表示制御部24は、画質向上処理後のX線画像10aを表示部3において表示する。
【0058】
ステップ109において、表示制御部24は、第2画像処理モードである旨を表示部3に表示する。具体的には、表示制御部24は、第2画像処理モードであるメッセージ30を、画質向上処理後のX線画像10aとともに表示部3に表示する。その後、処理は、終了する。
【0059】
次に、図6を参照して、X線透視撮影装置100が、第1画像処理モードと第2画像処理モードとを切り替える処理について説明する。なお、以下の処理は、操作者が入力受付部4によって、切替ボタン4aを操作することにより開始される。
【0060】
ステップ201において、学習識別結果利用切替部23は、画像処理モードを取得する。
【0061】
ステップ202において、学習識別結果利用切替部23は、第1画像処理モードを実行中であるか否かを判定する。第1画像処理モードを実行中でない場合、処理は、ステップ203へ進む。第1画像処理モードを実行中の場合、処理は、ステップ204へ進む。
【0062】
ステップ203において、学習識別結果利用切替部23は、画像処理モードを第1画像処理モードに切り替える。その後、処理は、終了する。
【0063】
また、ステップ202からステップ204へ処理が進んだ場合、ステップ204において、学習識別結果利用切替部23は、画像処理モードを第2画像処理モードに切り替える。その後、処理は、終了する。
【0064】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0065】
本実施形態では、上記のように、X線透視撮影装置100は、被検体(被検者90)にX線を照射するX線源1aと、X線源1aから照射されたX線を検出するX線検出器1bとを含む撮影部1と、撮影部1により撮影されたX線画像10を取得するX線画像取得部20と、学習済みの学習モデル7を用いてX線画像10に写る対象の分布(デバイス80の位置情報)を出力する対象分布学習識別部21と、X線画像10の画質を向上させる画質向上処理を行う画質向上処理部22と、X線画像10を表示する表示部3と、を備え、画質向上処理部22は、学習識別結果7aを用いて、X線画像10に対して画質向上処理を行う第1画像処理モードと、学習識別結果7aを用いずにX線画像10に対して画質向上処理を行う第2画像処理モードとを切り替え可能なように構成されている。
【0066】
これにより、学習識別結果7aの精度が高い場合と低い場合とで、学習識別結果7aを用いる第1画像処理モードと学習識別結果7aを用いない第2画像処理モードとを切り替えることができる。すなわち、学習識別結果7aの精度が高い場合には、第1画像処理モードによって対象(デバイス80)の視認性を向上させることが可能であり、学習識別結果7aの精度が低い場合には、第2画像処理モードによってX線画像10の画質向上処理を行うことにより、学習識別結果7aに起因して対象の視認性が低下することを抑制することができる。その結果、学習モデル7を用いてX線画像10中の対象を識別する構成において、学習モデル7が出力する学習識別結果7aに起因して対象の視認性が低下することを抑制することができる。
【0067】
また、上記実施形態では、以下のように構成したことによって、下記のような更なる効果が得られる。
【0068】
すなわち、本実施形態では、上記のように、画質向上処理は、少なくとも、ノイズ低減処理を含み、画質向上処理部22は、学習識別結果7aを用いる第1画像処理モードにおいては、X線画像10中の対象(デバイス80)の強調処理が行われた強調画像11に対してノイズ低減処理を行い、学習識別結果7aを用いない第2画像処理モードにおいては、強調処理が行われていないX線画像10に対してノイズ低減処理を行うように構成されている。これにより、第1画像処理モードにおいては、デバイス80を強調する強調処理を行ったうえでノイズ低減処理を行うことにより、学習識別結果7aを用いない第2画像処理モードによる画質向上処理によって得られる画像よりも、より一層デバイス80の視認性を向上させることができる。また、学習識別結果7aの精度が低く、学習識別結果7aを用いない第2画像処理モードにおいても、ノイズ低減処理を行うことにより、ノイズ低減処理を行わないX線画像10よりも、デバイス80の視認性を向上させることができる。これらの結果、学習識別結果7aによってデバイス80の視認性が低下することを抑制しつつ、ノイズ低減処理を行わないX線画像10よりもデバイス80の視認性を向上させることができる。
【0069】
また、本実施形態では、上記のように、少なくとも第2画像処理モードを実行中に、第2画像処理モードである旨をX線画像10とともに表示部3に表示させ、第1画像処理モードを実行中には、表示部3において、第1画像処理モードである旨を表示しないように構成された表示制御部をさらに備える。これにより、第2画像処理モードを実行中にのみ、第2画像処理モードである旨が表示部3に表示されるので、学習モデル7による学習識別結果7aを用いていない状態を操作者に容易に把握させることができる。
【0070】
また、本実施形態では、上記のように、対象分布学習識別部21による学習識別結果7aを用いるか否かの切り替えを行う学習識別結果利用切替部23をさらに備える。これにより、学習識別結果利用切替部23によって学習識別結果7aを用いるか否かを切り替えることにより、に第1画像処理モードと第2画像処理モードとを容易切り替えることができる。
【0071】
また、本実施形態では、上記のように、学習識別結果利用切替部23は、撮影部位および撮影条件の少なくともいずれかが変更された場合でも、実行中の第1画像処理モードまたは第2画像処理モードを維持するように構成されている。これにより、実行中の画像処理モードが維持されるので、撮影部位および撮影条件の少なくともいずれかが変更された場合でも、操作者が意図して変更した画像処理モードが変更前の画像処理モードに戻ることを抑制することができる。その結果、撮影部位および撮影条件の少なくともいずれかが変更された場合に、画像処理モードを標準の画像処理モードに戻す構成と比較して、操作者に不要な操作を行わせることを抑制することが可能となるので、操作者の利便性(ユーザビリティ)を向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態では、上記のように、操作者の操作入力を受け付ける入力受付部4をさらに備え、学習識別結果利用切替部23は、入力受付部4による入力に基づいて、第1画像処理モードと第2画像処理モードとを切り替えるように構成されている。これにより、操作者が任意のタイミングで第1画像処理モードと第2画像処理モードとを切り替えることが可能となるので、操作者の利便性(ユーザビリティ)をより向上させることができる。
【0073】
また、本実施形態では、上記のように、X線画像取得部20、画質向上処理部22、および、学習識別結果利用切替部23を含む第1プロセッサ2aと、第1プロセッサ2aとは別個に設けられ、対象分布学習識別部21を含む第2プロセッサ2bとを備え、X線画像取得部20は、動画像としてのX線画像10を取得するように構成されており、対象分布学習識別部21は、第1画像処理モードおよび第2画像処理モードのいずれにおいても、デバイス80を識別する処理を行うように構成されている。これにより、デバイス80の学習識別結果7aを取得する処理と、X線画像10の画質を向上させる処理とが異なるプロセッサで実行される。したがって、X線画像取得部20、画質向上処理部22、学習識別結果利用切替部23、および、対象分布学習識別部21が1つのプロセッサに含まれる構成と異なり、第1画像処理モードおよび第2画像処理モードのいずれにおいて対象(デバイス80)の識別処理を行ったとしても、プロセッサにおける処理負荷が増加することを抑制することができる。また、第2プロセッサ2bに含まれる対象分布学習識別部21によって、第2画像処理モードを実行中にも学習識別結果7aを取得し続けることができる。そのため、第2画像処理モードを実行中には学習識別結果7aを取得しない構成と比較して、第2画像処理モードから第1画像処理モードに切り替えた場合でも、画質向上処理の切り替えに要する時間が増加することを抑制することができる。これらの結果、動画像としてのX線画像10に対して、本発明を適用することは特に有効である。
【0074】
また、本実施形態では、上記のように、画質向上処理部22は、ノイズ低減処理として、少なくとも、X線画像10の各フレームにおける所定の画素の画素値を加算するリカーシブフィルタを用いた処理を行うように構成されている。これにより、第1画像処理モードにおいては、リカーシブフィルタを用いた処理を行う際に、デバイス80の学習識別結果7aを用いることができる。その結果、各画像においてデバイス80の位置を詳細に取得することが可能となるため、リカーシブフィルタ処理によって生じるデバイス80の残像を低減することができる。また、第2画像処理モードにおいては、学習識別結果7aによって、実際には存在しない位置に写るデバイス80を用いてリカーシブフィルタ処理を行うことを抑制することが可能となるので、リカーシブフィルタ処理によるノイズの低減効果を向上させることができる。
【0075】
また、本実施形態では、上記のように、対象は、X線画像10に写るステント、ガイドワイヤ、カテーテル、血管、および、骨のうちの少なくともいずれかを含む。これにより、X線画像10に写るステント、ガイドワイヤ、カテーテル、血管、および、骨のうちの、操作者が所望する対象に対して、第1画像処理モードまたは第2画像処理モードにおいて画質向上処理を行うことができる。その結果、所望する対称に対して所望する画像処理モードによって画質向上処理を行うことが可能となるので、操作者の利便性(ユーザビリティ)を向上させることができる。
【0076】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0077】
たとえば、上記実施形態では、学習識別結果利用切替部23が、入力受付部4の入力に基づいて、学習識別結果7aを利用するか否かを切り替える構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、図7に示す変形例のように、学習識別結果利用切替部120は、学習識別結果7aに基づいて、学習識別結果7aを利用するか否かを切り替えるように構成されていてもよい。
【0078】
図7に示す変形例によるX線透視撮影装置200は、コンピュータ2の代わりにコンピュータ12を備える点で、上記実施形態によるX線透視撮影装置100とは異なる。コンピュータ12は、第1プロセッサ2aの代わりに第1プロセッサ12aを備える点で、上記実施形態によるコンピュータ2とは異なる。また、第1プロセッサ12aは、学習識別結果利用切替部23の代わりに学習識別結果利用切替部120を備える点で、上記実施形態による第1プロセッサ2aとは異なる。
【0079】
変形例では、学習識別結果利用切替部120は、学習モデル7から出力される学習識別結果7aに基づいて、第1画像処理モードと第2画像処理モードとを切り替えるように構成されている。具体的には、学習識別結果利用切替部120は、学習識別結果7aの精度に基づいて、第1画像処理モードと第2画像処理モードとを切り替えるように構成されている。より具体的には、学習識別結果利用切替部120は、学習識別結果7aの精度が閾値以上の場合、第1画像処理モードに設定し、学習識別結果7aの精度が閾値よりも小さい場合、第2画像処理モードに設定するように構成されている。なお、本実施形態では、学習識別結果7aの精度は、学習モデル7が学習識別結果7aとともに出力される、出力結果の確からしさを示す数値を含む。
【0080】
次に、図8を参照して、変形例による画質向上処理について説明する。なお、上記実施形態による画質上場処理と同様の処理については、同様の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0081】
ステップ101において、X線画像取得部20は、X線画像10を取得する。
【0082】
ステップ110において、学習識別結果利用切替部120は、学習識別結果7aを取得する。具体的には、学習識別結果利用切替部120は、学習識別結果7aの精度を取得する。
【0083】
ステップ111において、学習識別結果利用切替部120は、学習識別結果7aの精度が、所定の閾値以上であるか否かを判定する。学習識別結果7aの精度が所定の閾値以上の場合、処理は、ステップ104~ステップ106へ進み、その後、終了する。また、学習識別結果7aの精度が所定の閾値よりも小さい場合、処理は、ステップ107~ステップ109へ進み、その後、終了する。
【0084】
次に、図9を参照して、変形例による画像処理モード切替処理について説明する。なお、上記実施形態による画像処理モード切替処理と同様の処理については、同様の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0085】
ステップ206において、学習識別結果利用切替部120は、学習識別結果7aを取得する。具体的には、学習識別結果利用切替部120は、学習識別結果7aの精度を取得する。
【0086】
ステップ207において、学習識別結果利用切替部120は、学習識別結果7aの精度が、所定の閾値以上であるか否かを判定する。学習識別結果7aの精度が所定の閾値以上の場合、処理は、ステップ202、ステップ203へ進み、その後、終了する。また、学習識別結果7aの精度が所定の閾値よりも小さい場合、処理は、ステップ204へ進み、その後、終了する。
【0087】
変形例では、上記のように、学習識別結果利用切替部120は、学習モデル7から出力される学習識別結果7aに基づいて、第1画像処理モードと第2画像処理モードとを切り替えるように構成されている。これにより、学習識別結果7aによって第1画像処理モードと第2画像処理モードとが切り替えられるので、たとえば、操作者(医師または技師)の熟練度が低く、デバイス80の誤検知が生じていることを操作者が把握できない場合でも、第1画像処理モードと第2画像処理モードとを切り替えることができる。その結果、ユーザの熟練度によらず、学習識別結果7aに起因してデバイス80の視認性が低下することを抑制することができる。
【0088】
また、上記実施形態では、画質向上処理部22が、X線画像10に対して強調処理を行うことにより、強調画像11を取得する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、学習モデルに対してデバイス80を識別するとともに、識別したデバイス80を強調することを学習させることにより、学習モデルによって強調画像11を取得するように構成されていてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、表示制御部24が、第2画像処理モードを実行中には、第2画像処理モードである旨を表示し、第1画像処理モードを実行中には、第1画像処理モードである旨を表示しない構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、表示制御部は、第1画像処理モードを実行中には、第1画像処理モードである旨を表示するように構成されていてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、X線透視撮影装置100が、第1プロセッサ2aおよび第2プロセッサ2bを備える構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、X線透視撮影装置は、1つのプロセッサのみを備える構成であってもよい。しかしながら、X線透視撮影装置が1つのプロセッサのみを備える構成の場合、対象分布学習識別部によるデバイス80の識別処理によって、プロセッサによる処理の負荷が増加する。そのため、X線透視撮影装置は、第1プロセッサ2aと、第2プロセッサ2bとを備えるように構成されることが好ましい。
【0091】
また、上記実施形態では、対象分布学習識別部21が、第1画像処理モードおよび第2画像処理モードのいずれにおいても、X線画像10に写るデバイス80の識別処理を行う構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、対象分布学習識別部は、第1画像処理モードを実行中にのみ、X線画像10に写るデバイス80の識別処理を行うように構成されていてもよい。すなわち、対象分布学習識別部は、第2画像処理モードを実行中には、X線画像10に写るデバイス80の識別処理を行なわないように構成されていてもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、画質向上処理部22が、画質向上処理として、ノイズ低減処理を行う構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、画質向上処理部は、ノイズ低減処理に加えて、X線画像10のコントラストを向上させる処理を行うように構成されていてもよい。X線画像10に写るデバイス80の視認性を向上させることが可能であれば、画質向上処理部は、どのような処理を行ってもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、画質向上処理部22が、ノイズ低減処理として、リカーシブフィルタを用いた処理を行う構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、画質向上処理部は、ノイズ低減処理として、ローパスフィルタによる処理など、リカーシブフィルタを用いた処理以外の処理を行うように構成されていてもよい。X線画像10のノイズを低減させることが可能であれば、画質向上処理部は、どのような処理を行うように構成されていてもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、学習識別結果利用切替部が、撮影条件が変更された場合でも、実行中の第1画像処理モードまたは第2画像処理モードを維持する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、学習識別結果利用切替部は、撮影部位が変更された場合でも、実行中の画像処理モードを維持するように構成されていてもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、学習識別結果利用切替部が、撮影条件として、X線の線量が変更された場合でも、実行中の第1画像処理モードまたは第2画像処理モードを維持する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、学習識別結果利用切替部は、アーム1cの角度を変更するなど、X線の線量以外の撮影条件が変更された場合でも、実行中の第1画像処理モードまたは第2画像処理モードを維持するように構成されていてもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、学習識別結果利用切替部が、撮影部位または撮影条件が変更された場合でも、実行中の第1画像処理モードまたは第2画像処理モードを維持する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、学習識別結果利用切替部は、撮影部位または撮影条件が変更された場合に、標準の画像処理モードに変更するように構成されていてもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、X線透視撮影装置100が、学習識別結果利用切替部23を備える構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、X線透視撮影装置100は、学習識別結果利用切替部23を備えていなくてもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、X線画像取得部20が、動画像としてのX線画像10を取得し、画質向上処理部22が、動画像としてのX線画像10に対して第1画像処理モードおよび第2画像処理モードのいずれかにおいて画質向上処理を行う構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、X線画像取得部は、静止画としてのX線画像を取得し、画質向上処理部は、静止画としてのX線画像に対して第1画像処理モードおよび第2画像処理モードのいずれかにおいて画質向上処理を行うように構成されていてもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、切替ボタン4aが、GUI上のボタンとして、表示部3に表示される構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、切替ボタン4aは、物理ボタンとして、入力受付部に含まれていてもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、画質向上処理部22が、対象として、X線画像10に写るデバイス80に対して画質向上を行う構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、画質向上処理部22は、対象として、X線画像10に写る血管、または、骨に対して画質向上を行うように構成されていてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、学習モデル7が、デバイス80として、カテーテル、ステント、および、ガイドワイヤの少なくともいずれかを識別する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、学習モデルは、デバイスとして、動脈瘤などの治療に用いるコイルなどを識別するように構成されていてもよい。X線透視撮影装置によって撮影しながら用いるデバイスであれば、学習モデルが識別するデバイスはどのようなものであってもよい。
【0102】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0103】
(項目1)
被検体にX線を照射するX線源と、前記X線源から照射されたX線を検出するX線検出器とを含む撮影部と、
前記撮影部により撮影されたX線画像を取得するX線画像取得部と、
学習済みの学習モデルを用いて前記X線画像に写る対象の分布を出力する対象分布学習識別部と、
前記X線画像の画質を向上させる画質向上処理を行う画質向上処理部と、
前記X線画像を表示する表示部と、を備え、
前記画質向上処理部は、前記対象分布学習識別部による学習識別結果を用いて、前記X線画像に対して前記画質向上処理を行う第1画像処理モードと、前記学習識別結果を用いずに前記X線画像に対して前記画質向上処理を行う第2画像処理モードとを切り替え可能なように構成されている、X線透視撮影装置。
【0104】
(項目2)
前記画質向上処理は、少なくとも、ノイズ低減処理を含み、
前記画質向上処理部は、前記学習識別結果を用いる前記第1画像処理モードにおいては、前記X線画像中の前記対象の強調処理が行われた強調画像に対して前記ノイズ低減処理を行い、前記学習識別結果を用いない前記第2画像処理モードにおいては、前記強調処理が行われていない前記X線画像に対して前記ノイズ低減処理を行うように構成されている、項目1に記載のX線透視撮影装置。
【0105】
(項目3)
少なくとも前記第2画像処理モードを実行中に、前記第2画像処理モードである旨を前記X線画像とともに前記表示部に表示させ、前記第1画像処理モードを実行中には、前記表示部において、前記第1画像処理モードである旨を表示しないように構成された表示制御部をさらに備える、項目1または2に記載のX線透視撮影装置。
【0106】
(項目4)
前記対象分布学習識別部による前記学習識別結果を用いるか否かの切り替えを行う学習識別結果利用切替部をさらに備える、項目1~3のいずれか1項に記載のX線透視撮影装置。
【0107】
(項目5)
前記学習識別結果利用切替部は、撮影部位および撮影条件の少なくともいずれかが変更された場合でも、実行中の前記第1画像処理モードまたは前記第2画像処理モードを維持するように構成されている、項目4に記載のX線透視撮影装置。
【0108】
(項目6)
操作者の操作入力を受け付ける入力受付部をさらに備え、
前記学習識別結果利用切替部は、前記入力受付部による入力に基づいて、前記第1画像処理モードと前記第2画像処理モードとを切り替えるように構成されている、項目4または5に記載のX線透視撮影装置。
【0109】
(項目7)
前記学習識別結果利用切替部は、前記学習モデルから出力される前記学習識別結果に基づいて、前記第1画像処理モードと前記第2画像処理モードとを切り替えるように構成されている、項目4~6のいずれか1項に記載のX線透視撮影装置。
【0110】
(項目8)
前記X線画像取得部、前記画質向上処理部、および、前記学習識別結果利用切替部を含む第1プロセッサと、
前記第1プロセッサとは別個に設けられ、前記対象分布学習識別部を含む第2プロセッサとを備え、
前記X線画像取得部は、動画像としての前記X線画像を取得するように構成されており、
前記対象分布学習識別部は、前記第1画像処理モードおよび前記第2画像処理モードのいずれにおいても、前記対象を識別する処理を行うように構成されている、項目4~7のいずれか1項に記載のX線透視撮影装置。
【0111】
(項目9)
前記画質向上処理部は、前記ノイズ低減処理として、少なくとも、前記X線画像の各フレームにおける所定の画素の画素値を加算するリカーシブフィルタを用いた処理を行うように構成されている、項目2に記載のX線透視撮影装置。
【0112】
(項目10)
前記対象は、前記X線画像に写るステント、ガイドワイヤ、カテーテル、血管、および、骨のうちの少なくともいずれかを含む、項目1~9のいずれか1項に記載のX線透視撮影装置。
【符号の説明】
【0113】
1 撮影部
1a X線源
1b X線検出器
2a、12a 第1プロセッサ
2b 第2プロセッサ
3 表示部
4 入力受付部
7 学習モデル
7a 学習識別結果
10、10a、10b X線画像
11、11a、11b 強調画像
20 X線画像取得部
21 対象分布学習識別部
22 画質向上処理部
23、120 学習識別結果利用切替部
24 表示制御部
80 デバイス(対象)
100、200 X線透視撮影装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9