(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】圧延生産性向上支援装置
(51)【国際特許分類】
B21B 37/00 20060101AFI20240625BHJP
B21B 38/00 20060101ALI20240625BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B21B37/00 300
B21B38/00 Z
G05B19/418 Z
(21)【出願番号】P 2023527061
(86)(22)【出願日】2022-05-12
(86)【国際出願番号】 JP2022020125
(87)【国際公開番号】W WO2023218619
(87)【国際公開日】2023-11-16
【審査請求日】2023-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東谷 諒介
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113219910(CN,A)
【文献】特開2013-145521(JP,A)
【文献】特開2021-030264(JP,A)
【文献】特開2012-143782(JP,A)
【文献】特開2011-215873(JP,A)
【文献】特開2017-170456(JP,A)
【文献】特開2007-061870(JP,A)
【文献】特開2019-035123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 37/00、38/00
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄・非鉄材料を圧延するプラントにおいて、
前記プラントから生産計画、生産実績、操業状態を含むプラントデータを収集するデータ収集部と、
前記データ収集部によって取得された前記プラントデータに対して、生産性と、前記生産性の構成要素と、前記構成要素のそれぞれの指標の値とを算定する指標算定部と、
前記データ収集部によって取得された前記プラントデータと、前記指標算定部によって算定された前記指標の値のデータである指標データとを記憶するデータ記憶部と、
前記プラントデータが揃う度に、逐次、評価対象の生産性の指標と、過去の生産性の指標の実績とを比較して、生産性低下の評価を行う生産性評価部と、
前記生産性評価部によって行われた前記生産性低下の評価結果と、前記評価結果の評価根拠となった前記生産性と、前記生産性の前記構成要素と、前記構成要素のそれぞれの前記指標の値とを表示する表示部と、
を備え
、
前記生産性評価部は、過去の生産性の実績データのばらつきの影響を避けて評価を行う場合、過去の生産性の指標として、平均値又は中央値を採用し、よりよい生産性を追求するために評価を行う場合、過去の生産性の指標として、チャンピオンデータを採用する
ことを特徴とする圧延生産性向上支援装置。
【請求項2】
鉄・非鉄材料を圧延するプラントにおいて、
前記プラントから生産計画、生産実績、操業状態を含むプラントデータを収集するデータ収集部と、
前記データ収集部によって取得された前記プラントデータに対して、生産性と、前記生産性の構成要素と、前記構成要素のそれぞれの指標の値とを算定する指標算定部と、
前記データ収集部によって取得された前記プラントデータと、前記指標算定部によって算定された前記指標の値のデータである指標データとを記憶するデータ記憶部と、
前記プラントデータが揃う度に、逐次、評価対象の生産性の指標と、過去の生産性の指標の実績とを比較して、生産性低下の評価を行う生産性評価部と、
前記生産性評価部によって行われた前記生産性低下の評価結果と、前記評価結果の評価根拠となった前記生産性と、前記生産性の前記構成要素と、前記構成要素のそれぞれの前記指標の値とを表示する表示部と、
を備え
、
前記生産性評価部は、シフト毎の生産性の評価をするときは、シフトが完了する度に、前記シフトで生産された所定の層別の材料や製品群に関する生産性指標に対して評価を行い、営業日毎の生産性の評価をするときは、営業日が完了する度に、前記営業日で生産された所定の層別の材料や製品群に関する生産性指標に対して評価を行う
ことを特徴とする圧延生産性向上支援装置。
【請求項3】
鉄・非鉄材料を圧延するプラントにおいて、
前記プラントから生産計画、生産実績、操業状態を含むプラントデータを収集するデータ収集部と、
前記データ収集部によって取得された前記プラントデータに対して、生産性と、前記生産性の構成要素と、前記構成要素のそれぞれの指標の値とを算定する指標算定部と、
前記データ収集部によって取得された前記プラントデータと、前記指標算定部によって算定された前記指標の値のデータである指標データとを記憶するデータ記憶部と、
前記プラントデータが揃う度に、逐次、評価対象の生産性の指標と、過去の生産性の指標の実績とを比較して、生産性低下の評価を行う生産性評価部と、
前記生産性評価部によって行われた前記生産性低下の評価結果と、前記評価結果の評価根拠となった前記生産性と、前記生産性の前記構成要素と、前記構成要素のそれぞれの前記指標の値とを表示する表示部と、
を備え
、
前記生産性評価部は、生産性を評価した結果、前記生産性が下がった旨の評価をしたときは、前記生産性低下の要因の検出を行う
ことを特徴とする圧延生産性向上支援装置。
【請求項4】
請求項1
から請求項3のいずれか1項に記載の圧延生産性向上支援装置において、
前記指標算定部の代わりに、又は前記指標算定部とともに、前記プラントの設備の諸元データと生産計画データとに対して、前記設備の諸元に基づく理想的な生産性の指標を算定する規範指標算定部をさらに備え、
前記生産性評価部は、材ごと又は集計期間毎に、かつ層別毎に、前記プラントデータが揃う度に、逐次、評価対象の生産性の指標と、過去の生産性の指標の実績、又は規範の生産性の指標とを比較して、生産性低下の評価と、前記生産性低下の要因候補の検出とを行う
ことを特徴とする圧延生産性向上支援装置。
【請求項5】
請求項1
から請求項3のいずれか1項に記載の圧延生産性向上支援装置において、
生産性の指標が変化したときに、前記生産性の指標の構成要素について、前記指標が変化した構成要素と相関のある前記プラントデータの項目を検出する要因候補検出部をさらに備え、
前記表示部は、前記生産性低下の評価結果と、前記評価結果の評価根拠となった前記生産性と、前記生産性の前記構成要素と、前記生産性低下の要因候補と、前記構成要素のそれぞれの前記指標の値とを表示する
ことを特徴とする圧延生産性向上支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄・非鉄材料を圧延するプラントにおいて、プラントの生産性の向上を支援する、圧延生産性向上支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば、鉄・非鉄材料を圧延するプラントでは、熱間圧延ラインを有する。典型的な熱間圧延ラインの設備構成について説明すると、典型的な熱間圧延ラインは、例えば、加熱炉、粗圧延機、仕上圧延機、巻き取り機といった一連の設備を有する。そして、各設備において加工プロセスを経た材料は、最終的に巻き取り機で巻き取られて製品となる。
【0003】
このようなプラントにおける生産性は、材料・製品に対する各設備での加工プロセスが、滞りなく、より早く実行されることで向上する。一方、加工プロセスは、材料、製品、操業の状態等による影響を受けるため、これらの影響により、生産性の成績は、変動する。
【0004】
このため、熱間圧延ラインにおいて、材料処理(圧延)及び搬送のために要する時間を考慮して、熱間圧延ラインに対して材料を投入するタイミングを最適調整する技術として、ミルペーシングが知られている。そして、最適調整についての様々な手法も、提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。しかし、これらの手法は、現時点での材料処理(圧延)と搬送時間とを前提とする技術であり、これらの前提を改善するものではない。
【0005】
一方、生産性改善のために、材料処理(圧延)と搬送時間とを改善する場合、長期間の実績データを分析して、改善要点を見つけるという作業も一般に知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本特許第5957963号公報
【文献】日本特許第5440359号公報
【文献】日本特許第5185783号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】「操業見える化による熱延工場の圧延能率向上」The Papers of Technical Meeting on "Monozukuri", IEE Japan, 2021-10-27、「我が国におけるホットストリップミル製造技術」(日本鉄鋼協会) p141-143
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、生産性は、材料、圧延条件、設備状況等によって、大きく異なり、同じ圧延材料の生産性であっても、振れ幅が大きい。このため、製品1つ毎に、圧延の都度、当該材の生産性が低下しているか否かを漏れなく発見・判定することは難しい。また、プラントにおける生産情報は膨大であるため、生産性が低下していると判定された場合であっても、当該生産性の低下がどのような要因によるものかを高い確度で判定することは難しい。
【0009】
一方、例えば、複数の工程を経て製品又は半製品を製造するプロセスを有する鉄鋼圧延プラントにおいて、操業中に生産性の低下が検出された場合、プラントの管理者や操業担当者は、生産性の低下の要因が分かれば、迅速に対処策を取ることができる。このため、異常が検出されたパラメータや構成要素を、圧延材料の生産性を低下させている要因とし、ここから推定される事象を、プラントの管理者や操業担当者に提示することが出来れば、生産性の迅速な改善・向上に寄与することができる。
【0010】
そこで、本件開示は、生産性を、管理区分別の生産性パラメータやその構成要素に分解して得られる指標で特定し、当該指標を生産性の低下の要因候補としてプラントの管理者や操業担当者に提示することで、生産性の迅速な改善・向上に寄与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様に係る圧延生産性向上支援装置は、鉄・非鉄材料を圧延するプラントにおいて、プラントから生産計画、生産実績、操業状態を含むプラントデータを収集するデータ収集部と、データ収集部によって取得されたプラントデータに対して、生産性と、生産性の構成要素と、構成要素のそれぞれの指標の値とを算定する指標算定部と、データ収集部によって取得されたプラントデータと、指標算定部によって算定された指標の値のデータである指標データとを記憶するデータ記憶部と、プラントデータが揃う度に、逐次、評価対象の生産性の指標と、過去の生産性の指標の実績とを比較して、生産性低下の評価を行う生産性評価部と、生産性評価部によって行われた生産性低下の評価結果と、評価結果の評価根拠となった生産性と、生産性の構成要素と、構成要素のそれぞれの指標の値とを表示する表示部と、を備え、生産性評価部は、過去の生産性の実績データのばらつきの影響を避けて評価を行う場合、過去の生産性の指標として、平均値又は中央値を採用し、よりよい生産性を追求するために評価を行う場合、過去の生産性の指標として、チャンピオンデータを採用することを特徴とする。
別の態様に係る圧延生産性向上支援装置は、鉄・非鉄材料を圧延するプラントにおいて、プラントから生産計画、生産実績、操業状態を含むプラントデータを収集するデータ収集部と、データ収集部によって取得されたプラントデータに対して、生産性と、生産性の構成要素と、構成要素のそれぞれの指標の値とを算定する指標算定部と、データ収集部によって取得されたプラントデータと、指標算定部によって算定された指標の値のデータである指標データとを記憶するデータ記憶部と、プラントデータが揃う度に、逐次、評価対象の生産性の指標と、過去の生産性の指標の実績とを比較して、生産性低下の評価を行う生産性評価部と、生産性評価部によって行われた生産性低下の評価結果と、評価結果の評価根拠となった生産性と、生産性の構成要素と、構成要素のそれぞれの指標の値とを表示する表示部と、を備え、生産性評価部は、シフト毎の生産性の評価をするときは、シフトが完了する度に、シフトで生産された所定の層別の材料や製品群に関する生産性指標に対して評価を行い、営業日毎の生産性の評価をするときは、営業日が完了する度に、営業日で生産された所定の層別の材料や製品群に関する生産性指標に対して評価を行うことを特徴とする。
別の態様に係る圧延生産性向上支援装置は、鉄・非鉄材料を圧延するプラントにおいて、プラントから生産計画、生産実績、操業状態を含むプラントデータを収集するデータ収集部と、データ収集部によって取得されたプラントデータに対して、生産性と、生産性の構成要素と、構成要素のそれぞれの指標の値とを算定する指標算定部と、データ収集部によって取得されたプラントデータと、指標算定部によって算定された指標の値のデータである指標データとを記憶するデータ記憶部と、プラントデータが揃う度に、逐次、評価対象の生産性の指標と、過去の生産性の指標の実績とを比較して、生産性低下の評価を行う生産性評価部と、生産性評価部によって行われた生産性低下の評価結果と、評価結果の評価根拠となった生産性と、生産性の構成要素と、構成要素のそれぞれの指標の値とを表示する表示部と、を備え、生産性評価部は、生産性を評価した結果、生産性が下がった旨の評価をしたときは、生産性低下の要因の検出を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本件開示によれば、生産性を、管理区分別の生産性パラメータやその構成要素に分解して得られる指標で特定し、当該指標を生産性の低下の要因候補としてプラントの管理者や操業担当者に提示することで、生産性の迅速な改善・向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】プラントにおける熱間圧延ラインの一例を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態に係る圧延生産性向上支援装置の構成の一例を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係る圧延生産性向上支援装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】第2実施形態に係る圧延生産性向上支援装置の構成の一例を示す図である。
【
図5】第2実施形態に係る圧延生産性向上支援装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】第3実施形態に係る圧延生産性向上支援装置の構成の一例を示す図である。
【
図7】第3実施形態に係る圧延生産性向上支援装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図1~
図7に示した実施形態における圧延生産性向上支援装置が有する処理回路のハードウェア構成例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本件開示に係る圧延生産性向上支援装置の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0015】
<第1実施形態の構成>
図1は、プラントにおける熱間圧延ライン100の一例を示す模式図である。
図1は、熱間圧延ライン100の一例を横から見た様子を示している。熱間圧延ライン100は、例えば、不図示の鉄又は非鉄材料等の圧延材料を圧延するプラントに設けられる。圧延材料は、
図1中、左側から右側に流れていくよう制御されている。なお、以下、本明細書において、熱間圧延ライン100は、「プラント100」とも称される。また、以下、本明細書において、圧延材料は、「圧延材」又は単に「材」とも称される。
【0016】
熱間圧延ライン(プラント)100は、加熱炉1、粗圧延機3、仕上圧延機5、巻き取り機7といった主要設備、また、これら設備間の搬送装置など製造プロセスの段階に分けて管理される。すなわち、熱間圧延ライン100は、これらの加熱炉1、粗圧延機3、仕上圧延機5、巻き取り機7、また、各搬送装置をゾーンという管理区分に分けて、各プロセスの生産性が管理される。
【0017】
熱間圧延ライン100は、例えば、加熱炉ゾーン11と、第一搬送ゾーン12と、粗圧延機ゾーン13と、第二搬送ゾーン14と、仕上圧延機ゾーン15と、第三搬送ゾーン16と、巻き取り機ゾーン17とを有する。なお、原則として各ゾーンには、複数の圧延材を入れることはできない。
【0018】
加熱炉ゾーン11は、圧延材を加熱する加熱炉1を有する。
【0019】
加熱炉1は、圧延対象である例えばスラブ状の圧延材を受け入れて加熱する。加熱処理済みの圧延材は、加熱炉1から抽出されて、第一搬送ゾーン12へ投入される。加熱炉1は、その後、後続する次の圧延材を受け入れ、受け入れた次の圧延材を加熱する。加熱炉1は、このような圧延材受入工程と圧延材加熱工程と圧延材抽出工程とを圧延材毎に順次繰り返す。なお、加熱炉1からの圧延材の受け入れや抽出のタイミングは、例えば、ミルペーシング等によって制御される。
【0020】
第一搬送ゾーン12は、例えば、加熱炉1で加熱された圧延材料を加熱炉1の出側から粗圧延機3の入側まで搬送する第一搬送装置2を有する。
【0021】
第一搬送装置2は、例えば、搬送テーブル、コンベヤ、又は複数の搬送ロール等を用いて実現される。第一搬送装置2は、加熱炉1から抽出された圧延材を粗圧延機3へ搬送する。なお、第一搬送装置2は、例えば、搬送中の圧延材の加工が可能になるまで待ち時間がある場合、搬送中の圧延材を前後に往復させて、同時に複数の圧延材が次の粗圧延機3に投入されないようにしてもよい。
【0022】
粗圧延機ゾーン13は、圧延材を粗圧延する粗圧延機3を有する。
【0023】
粗圧延機3は、例えば、1スタンド以上の圧延機を用いて実現される。粗圧延機3は、加熱炉1から抽出され、第一搬送装置2によって搬送された圧延材を受け入れる。その後、粗圧延機3は、受け入れた圧延材を粗圧延する。粗圧延機3によって粗圧延された圧延材は、第二搬送ゾーン14に送出される。
【0024】
第二搬送ゾーン14は、例えば、粗圧延機3で粗圧延された圧延材を粗圧延機3の出側から仕上圧延機5の入側まで搬送する第二搬送装置4を有する。
【0025】
第二搬送装置4は、例えば、搬送テーブル、コンベヤ、又は複数の搬送ロール等を用いて実現される。第二搬送装置4は、粗圧延機3から送出された圧延材を仕上圧延機5へ搬送する。なお、第二搬送装置4は、例えば、搬送中の圧延材の加工が可能になるまで待ち時間がある場合、搬送中の圧延材を前後に往復させて、同時に複数の圧延材が次の仕上圧延機5に投入されないようにしてもよい。
【0026】
仕上圧延機ゾーン15は、仕上圧延機5を有する。
【0027】
仕上圧延機5は、例えば、複数スタンドの圧延機を用いて実現される。仕上圧延機5は、粗圧延機3から送出され第二搬送装置4を介して搬送された圧延材を受け入れる。その後、仕上圧延機5は、受け入れた圧延材を仕上圧延する。仕上圧延機5は、例えば、粗圧延機3による粗圧延後の圧延材を帯状に仕上圧延する。仕上圧延機5によって仕上圧延された帯状の圧延材は、第三搬送ゾーン16に送出される。
【0028】
第三搬送ゾーン16は、例えば、仕上圧延機5で仕上圧延された圧延材を仕上圧延機5の出側から巻き取り機7まで案内する第三搬送装置6を有する。
【0029】
第三搬送装置6は、例えば、ピンチロール及びサイドガイド部等を用いて実現される。第三搬送装置6は、仕上圧延機5から帯状に仕上圧延されて送出された圧延材を巻き取り機7へ案内する。なお、第三搬送装置6を有する第三搬送ゾーンでは、例えば、仕上圧延機5で仕上圧延された圧延材が冷却される冷却工程を有していてもよい。
【0030】
巻き取り機ゾーン17は、帯状に仕上圧延された圧延材を巻き取る巻き取り機7を有する。
【0031】
巻き取り機7は、例えば、仕上圧延工程後の圧延材を巻き取ってコイルにする巻取工程を行う。巻き取り機7は、仕上圧延機5から送出され第三搬送装置6を介して案内された帯状の圧延材を受け入れる。巻き取り機7は、受け入れた帯状の圧延材をコイル状に巻き取る。巻き取り機7によって巻き取られたコイル状の圧延材は、例えば、不図示の結束機等によって結束され、不図示の搬送車等によって外部に搬送される。
【0032】
熱間圧延ライン100の上記の各ゾーンには、不図示の各種センサ等が設けられ、各種センサによって検出された値は、後述の圧延生産性向上支援装置20に出力され、後述のデータ収集部21等によって取得される(
図2等参照)。
【0033】
図2は、第1実施形態に係る圧延生産性向上支援装置20の構成の一例を示す図である。圧延生産性向上支援装置20は、例えば、プラントにおける熱間圧延ライン100に配置される。なお、圧延生産性向上支援装置20は、プラントの一部又は全部を制御する不図示の制御装置の機能の一部であってもよい。
【0034】
図2に示すとおり、圧延生産性向上支援装置20は、データ収集部21と、指標算定部22と、データ記憶部23と、生産性評価部24と、表示部25との構成又は機能を有する。
【0035】
データ収集部21は、例えば、不図示の信号線等を介して、プラントにおける熱間圧延ライン100の不図示の各センサと接続されている。データ収集部21は、プラントから、プラントの生産計画や生産実績等のデータを取得する。また、データ収集部21は、プラントの熱間圧延ライン100における各ゾーンの不図示の各種センサによって取得された、プラントの操業状態を示すプラントデータを逐次収集する。データ収集部21は、取得したデータを指標算定部22に出力する。
【0036】
指標算定部22は、データ収集部21から出力されたデータを取得する。指標算定部22は、データ収集部21によってプラントから取得されたデータに対して、生産性と、その構成要素と、それぞれの指標の値とを算定する。指標算定部22は、データ収集部21によって取得されたプラントデータや算定した指標の値等をデータ記憶部23に記憶させる。
【0037】
データ記憶部23は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、その他の半導体メモリ等の揮発性又は不揮発性の記憶媒体である。データ記憶部23は、例えば、圧延生産性向上支援装置20の各部の動作に必要なプログラムを記憶するとともに、圧延生産性向上支援装置20の各部により、各種の情報の書き込みや読み出しが行われる。
【0038】
データ記憶部23は、現在又は過去のプラントデータや算定された指標の値等を記憶する。また、データ記憶部23は、圧延生産性向上支援装置20の各種の判定等に用いられる現在又は過去の各種値や演算結果や所定の閾値等を記憶する。データ記憶部23は、例えば、不図示のバス等により、圧延生産性向上支援装置20の各部と接続されている。なお、データ記憶部23は、圧延生産性向上支援装置20の外部に設けられ、有線又は無線で圧延生産性向上支援装置20と接続されていてもよい。また、データ記憶部23は、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disc)等の外部記憶媒体等であっても、オンラインストレージ等であってもよい。また、データ記憶部23は、後述のメモリ92(
図8参照)と共通であってもよい。
【0039】
生産性評価部24は、データ記憶部23に記憶された各種値や各種データを取得し、プラントデータが揃う度に逐次、評価対象の生産性指標と過去の生産性指標実績とを比較して、生産性低下の評価を行う。生産性評価部24は、生産性低下の評価結果と、その評価根拠となった生産性と、その構成要素と、それぞれの指標の値とを表示部25に出力する。
【0040】
表示部25は、生産性評価部24から出力された生産性低下の評価結果と、その評価根拠となった生産性と、その構成要素と、それぞれの指標の値とを表示する。なお、表示部25は、圧延生産性向上支援装置20の各部で管理されている各種の値や各種のデータ等の情報も表示してもよい。表示部25によって表示(提示)されるこれらの情報は、プラント管理者・操業担当者26によって監視される。
【0041】
表示部25によって、これらの情報が表示(提示)されることによって、プラント管理者・操業担当者26に対し、圧延生産性向上のための支援が行われる。なお、表示部25は、例えば、GUI(Graphical User Interface)形式のタッチパネル等による不図示の操作部を有していてもよく、プラント管理者・操業担当者26により所望の情報が表示されるように操作可能なものであってもよい。
【0042】
プラント管理者・操業担当者26は、プラントやプラントにおける熱間圧延ライン100の運転状況や生産状況等を、表示部25を介して監視する。プラント管理者・操業担当者26は、表示部25による表示(提示)によって、プラントやプラントにおける熱間圧延ライン100における生産性の低下の要因を把握したときは、迅速に対処策を取り、生産性の迅速な改善及び向上を図ることができる。
【0043】
<第1実施形態の動作>
図3は、第1実施形態に係る圧延生産性向上支援装置20の動作の一例を示すフローチャートである。
図3に示すフローチャートは、例えば、プラントにおける
図1に示す熱間圧延ライン100の操業が開始されたときに開始する。なお、
図3に示すフローチャートは、
図1に示す熱間圧延ライン100の操業中は、常に動作していても良く、所定間隔毎に定期的に動作が開始されても良く、プラント管理者・操業担当者26の指示や所定の条件又は制御に従って動作が開始されてもよい。
【0044】
ステップS21において、圧延生産性向上支援装置20のデータ収集部21は、プラントから生産計画、生産実績、操業状態等を示すプラントデータを逐次収集する。
【0045】
ステップS22において、圧延生産性向上支援装置20の指標算定部22は、プラントから取得したデータに対して、生産性と、その構成要素と、それぞれの指標の値とを算定する。すなわち、指標算定部22は、プラントから、不図示のセンサ等を介して、プラントに関わるデータであるプラントデータを取得して、生産性の指標を算定する。
【0046】
ここで、生産性の指標として、プラント全体での生産性(第一階層)は、管理区分別の生産性パラメータ(第二階層)と、その構成要素(第三階層)との階層構造に分解される。なお、生産性の分解の仕方は、同様の構造が実現できれば、三階層には限られない。
【0047】
生産性は、例えば、生産量をサイクルタイムで除した値である。この生産性の指標を評価することで、生産性低下を検出することができる。また、生産性は、生産ラインの管理区分であるゾーン毎の生産性パラメータに分けて定義することができる。
【0048】
ゾーンには、例えば、
図1に示すように、加熱炉ゾーン11と、第一搬送ゾーン12と、粗圧延機ゾーン13と、第二搬送ゾーン14と、仕上圧延機ゾーン15と、第三搬送ゾーン16と、巻き取り機ゾーン17とがある。これらのゾーン毎の生産性パラメータを評価することで、生産性低下の要因となっているゾーンひいては設備を検出することができる。
【0049】
また、生産性は、サイクルタイムのうち生産に寄与しなかった時間によって変化する。生産に寄与しなかった時間としては、計画や事故による休止又は停止、あるいは、先行材に続いて自材の加工が可能になるまでの待ち時間がある。待ち時間としては、オシレーションやギャップタイムがある。
【0050】
なお、オシレーションとは、例えば、
図1中、仕上圧延機5で材を圧延中に粗圧延機3から次の材が出てきてしまった場合、次の材を、第二搬送ゾーン14において、前後に往復動作させることなどをいう。これにより、第二搬送ゾーン14において、熱々の次の材が1箇所にとどまって焼き付いてしまうことを抑制することや、仕上圧延機5に入るための適正な温度まで空冷することなどができる。また、ギャップタイムとは、例えば、上記の場合、第二搬送ゾーン14における次の材が、安全上の理由から仕上圧延機5に入る前に経過しなければならない時間のことなどをいう。
【0051】
また、サイクルタイムは、圧延機での圧延時間、圧延機をパスする間隔であるパス間時間などの構成要素に分解される。
【0052】
これらの値は、生産性を構成する要素であり、生産性を変化させる要因である。これらの生産性及びゾーンごとの生産性パラメータの構成要素のそれぞれの変化が検出されることによって、生産性の変化の要因を検出することができる。
【0053】
ステップS23において、圧延生産性向上支援装置20のデータ記憶部23は、プラントデータと算定された指標データとを記憶する。すなわち、データ記憶部23は、データ収集部21によって取得されたプラントデータと、指標算定部22によって算出された生産性の指標データと、その構成要素の実績データとを記憶する。なお、データ記憶部23は、プラントデータをデータ記憶部23から不図示のバス等を介して直接取得して記憶しても良く、指標算定部22を介して取得して記憶してもよい。
【0054】
生産性の指標としては、上述したプラント全体での生産性や、ゾーン毎の生産性パラメータであるton/hがある。データ記憶部23は、製品が生産される度に生産性の評価が行われることが出来るよう、材料や製品の実績データ等を取得する度にデータを記憶する。また、データ記憶部23は、評価をするときに、同等の条件の実績データ同士を容易に比較できるように、材料や製品毎に、その材質や寸法等の属性値を併せて記憶する。なお、データ記憶部23は、これらの現在又は過去のデータを記憶している。
【0055】
ステップS24において、圧延生産性向上支援装置20の生産性評価部24は、プラントデータが揃う度に逐次、評価対象の生産性指標と過去の生産性指標実績とを比較して、生産性低下の評価を行う。すなわち、生産性評価部24は、例えば、製品が生産される度に、直近で生産された任意の製品を評価対象として、その評価対象の生産性指標と、過去の生産性の指標実績とを比較して、生産性の評価と、生産性低下の要因の検出とを行う。
【0056】
過去の生産性の指標としては、過去に生産された製品に関わる全ての生産性の指標の平均値、チャンピオンデータ、ワーストデータ等のデータの統計値等であってもよい。そして、生産性を評価する意図に応じて、任意の統計値が選ばれてもよい。例えば、過去の生産性の実績データのばらつきの影響を避けて評価が行われる場合は、平均値や中央値が採用されてもよい。一方、例えば、よりよい生産性を追求するために評価が行われる場合は、チャンピオンデータが採用されてもよい。
【0057】
生産性評価部24によって評価が行われるとき、生産性の指標が、材質や寸法等、材料や製品の諸元に影響を受けない条件で比較が行われる。このため、評価の基準とする過去の生産性の指標は、例えば、評価対象の材料や製品と、材質や寸法等が同じ属性値を持つ集団、すなわち同じ層別のデータが用いられる。同一条件のもの同士が比較されなければ、適正な優劣が判断できないためである。
【0058】
生産性評価部24は、生産性の指標について、評価対象と評価基準とを比較して指標の良し悪しを定量的に算出する。例えば、生産性評価部24は、比較した両者がどれだけ相違するか、生産性の低下の度合いが基準値で定義した許容範囲内にあるか否か、あるいは、評価対象の指標が評価基準となる母集団の分布中でどのような位置にあるかといった定量的な評価を行う。定量的な評価は、例えば、パーセンテージや、統計的な分布や、偏差値等での評価が考えられる。
【0059】
さらに、生産性評価部24は、プラント全体での生産性低下を評価するだけではなく、ゾーン毎の生産性パラメータや、その構成要素の指標をそれぞれ過去の実績と比較して、生産性低下の要因を検出する。要因としては、例えば、上述のように、サイクルタイムを構成するゾーン毎の圧延時間、パス間時間、生産に寄与しなかった時間を構成する計画や事故による休止期間又は停止期間、オシレーション、ギャップタイム等が考えられる。さらに、休止又は停止の要因となった事象も要因である。
【0060】
なお、評価の基準とする過去の生産性の指標実績データについては、ある時点から遡ったすべての期間のデータに限らず、過去の任意の期間のデータに限定してもよい。例えば、プラントの操業においては、設備の老朽化による生産性能劣化や、操業条件の変更による生産性能の変化が起こり得る。このため、これらの影響を避けるため、過去の生産性の指標実績データについては、ある程度条件が同等であると見込まれる直近の期間のデータを評価の基準として選定することができる。
【0061】
なお、生産性の評価の対象は、評価を行う頻度の要求に応じて選定される。例えば、製品を生産する度に、直近で生産されたある製品を評価対象とすることに限らなくてよい。すなわち、例えば、朝のシフトや夜のシフト等、シフト毎での生産性の評価をするためであれば、シフトが完了する度に、当該シフトで生産された所定の層別の材料や製品群に関する生産性指標に対して評価が行われてもよい。また、例えば、営業日毎の生産性の評価をするためであれば、営業日が完了する度に、当該営業日で生産された所定の層別の材料や製品群に関する生産性指標に対して評価が行われてもよい。なお、所定の材料や製品群を評価の対象とする場合、上述の統計値を評価の指標値として採用してもよい。
【0062】
これらの生産性及びゾーンごとの生産性パラメータの構成要素のそれぞれの変化が評価・検出されることによって、生産性の変化の要因を評価・検出することができる。そして、生産性が下がった場合、階層構造に分解して評価することにより、具体的にいずれのゾーンが原因で生産性が下がったのか、いずれの構成要素が原因で生産性が下がったのか検出することができる。例えば、所定の製品を製造する場合、どれほどの生産性であり、当該生産性の良し悪しが評価されたときに、例えば、いずれのゾーンがボトルネックになっているのかを検出することができる。また、例えば、当該ゾーンにおいていずれの構成要素(例えば、オシレーション、ギャップタイム、アクシデント等)に問題があるのか等を検出することができる。なお、生産性評価部24は、生産性を評価した結果、生産性が下がった旨の評価をしたときにのみ、生産性低下の要因の検出を行ってもよい。
【0063】
ステップS25において、圧延生産性向上支援装置20の表示部25は、生産性低下の評価結果と、その評価根拠となった生産性と、その構成要素と、それぞれの指標の値とを表示して、プラント管理者・操業担当者26に提示する。
【0064】
すなわち、表示部25は、製品が生産される度に、直近で生産された所定の製品を評価対象として、所定のデータを表示する。例えば、表示部25は、生産性低下の評価結果と、その評価根拠となった生産性指標と、ゾーン毎の生産性パラメータと、その構成要素の指標と、その生産性指標に関連する生産計画や生産実績と、操業状態を示すデータとを表示する。
【0065】
なお、表示部25が表示するデータは、製品を生産する度に、生産されたある製品を評価対象とすることには限られず、これに関連するデータに限らなくてよい。すなわち、例えば、表示部25は、製品を生産する度に、直近で生産された同じ層別の数本の製品を評価対象として表示してもよい。例えば、表示部25は、その材料・製品群に関する生産性指標に対して評価を行って得られる、生産性低下の評価結果と、その評価根拠となった生産性指標と、ゾーン毎の生産性パラメータと、その構成要素の指標とを表示してもよい。また、表示部25は、その生産性指標に関連する生産計画や生産実績と、操業状態とを示すデータとを表示して、プラント管理者・操業担当者26に提示してもよい。
【0066】
表示部25は、生産性評価部24によって行われた判定や、算出されたデータ項目を全て表示してもよいし、プラント管理者・操業担当者26等の要求に応じて表示する情報が取捨選択されたものを表示してもよい。なお、表示部25は、一つの画面とは限らず、生産性評価の観点に応じて複数の画面が設けられていてもよい。
【0067】
<第1実施形態の作用効果>
以上、
図1から
図3に示す第1実施形態では、生産性が、管理区分別の生産性パラメータやその構成要素に分解して得られる指標で特定され、当該指標が、生産性の低下の要因候補としてプラント管理者・操業担当者26に提示される。これにより、プラント管理者・操業担当者26は、膨大な情報の中から効率的に生産性の低下の要因を把握することが出来るため、迅速に対処策を取ることができる。このため、
図1から
図3に示す第1実施形態によれば、生産性の迅速な改善・向上に寄与することができる。
【0068】
<第2実施形態の構成>
図4は、第2実施形態に係る圧延生産性向上支援装置30の構成の一例を示す図である。
図4においては、
図1~
図3に示す第1実施形態と同一又は同様の構成又は機能については同一の符号を付し、詳細な説明は省略又は簡略化する。
【0069】
図4に示すとおり、圧延生産性向上支援装置30は、データ収集部21と、指標算定部22と、データ記憶部23Aと、生産性評価部24Aと、表示部25Aと、規範指標算定部32との構成又は機能を有する。すなわち、第2実施形態に係る圧延生産性向上支援装置30は、データ記憶部23Aと、生産性評価部24Aと、表示部25Aとの構成又は機能が、
図1~
図3に示す第1実施形態と一部相違する。また、第2実施形態に係る圧延生産性向上支援装置30は、規範指標算定部32の構成又は機能をさらに有する点で、
図1~
図3に示す第1実施形態と相違する。
【0070】
規範指標算定部32は、データ収集部21から出力されたデータを取得する。規範指標算定部32は、設備の諸元データと、生産しようとする材料・製品の材質や寸法、生産時に適用する制御パラメータなどの生産計画データに対して、材料又は製品ごとに、設備の諸元に基づく理想的な生産性の指標を計算する。なお、設備の諸元又は諸元データは、例えば、当該設備の性能、性質、形態、形状、素材、材質等、設備を構成する個々の要素の仕様やデータのことを示す。規範指標算定部32は、データ収集部21によって取得されたプラントデータや計算した理想的な生産性の指標の値等をデータ記憶部23Aに記憶させる。
【0071】
データ記憶部23Aは、
図1~
図3に示す第1実施形態におけるデータ記憶部23の構成又は機能を有する。さらに、データ記憶部23Aは、規範指標算定部32から出力された、規範指標算定部32によって計算された材料又は製品ごとの設備の諸元に基づく理想的な生産性の指標を記憶する。
【0072】
生産性評価部24Aは、
図1~
図3に示す第1実施形態における生産性評価部24の構成又は機能を有する。さらに、生産性評価部24Aは、評価対象の生産性指標の実績と、評価基準として、規範指標算定部によって計算された理想的な生産性の指標とを比較して、生産性の評価と、生産性低下の要因の検出とを行う。
【0073】
表示部25Aは、
図1~
図3に示す第1実施形態における表示部25の構成又は機能を有する。さらに、表示部25Aは、製品が生産される度に、理想的な生産性の指標に対して、生産性指標の実績の評価結果と、その評価根拠となった生産性指標と、ゾーン毎の生産性パラメータと、その構成要素の指標とを表示する。また、表示部25Aは、その生産性指標に関連する生産計画、生産実績、操業状態等を示すデータを表示する。プラント管理者に提示する。表示部25Aによって表示(提示)されるこれらの情報は、プラント管理者・操業担当者26によって監視される。
【0074】
<第2実施形態の動作>
図5は、第2実施形態に係る圧延生産性向上支援装置30の動作の一例を示すフローチャートである。
図5においては、
図1~
図3に示す第1実施形態と同一又は同様の動作については、詳細な説明は、適宜省略又は簡略化する。
図5に示すフローチャートは、
図3に示すフローチャートと同様のタイミングで動作が開始される。
【0075】
ステップS31の動作は、
図3に示す第1実施形態のステップS21の動作と同一又は同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0076】
ステップS32において、圧延生産性向上支援装置30の規範指標算定部32は、実績ベースに基づく指標算定部22の代わりに、又は並行して、設備の諸元データと生産計画データとに対して、設備の諸元に基づく理想的な生産性の指標を算定(計算)する。すなわち、規範指標算定部32は、設備の諸元データと、生産しようとする材料又は製品の材質、寸法、生産時に適用する制御パラメータ等の生産計画データに対して、材料又は製品毎に、設備の諸元に基づく理想的な生産性の指標を計算する。
【0077】
規範指標算定部32は、設備の諸元に基づく理想的な生産性の指標を算定するために、プラント100の全体やプラント100を構成する各設備に関する、物理モデルや統計モデル等から成るシミュレータを有する。規範指標算定部32は、与えられた生産性計画データの条件の下で製品を生産するという仮定の下で生産性を計算し、設備の諸元に基づく理想的な生産性の指標を上記のシミュレータによりシミュレーションを行うことで計算する。また、規範指標算定部32は、計算の過程で、ゾーン毎の生産性パラメータと、その構成要素とのシミュレーションデータも計算する。なお、規範指標算定部32は、何度も条件を変えて、シミュレーションデータを計算してもよい。
【0078】
なお、規範指標算定部32が、実績ベースに基づく指標算定部22と並行して動作している場合、ステップS32では、指標算定部22による、
図3に示すステップS22の動作も並行して行われる。
【0079】
ステップS33において、圧延生産性向上支援装置30のデータ記憶部23Aは、プラントデータと算定された指標データとを記憶する。すなわち、データ記憶部23Aは、データ収集部21によって取得されたプラントデータと、指標算定部22によって算出された生産性の指標データと、その構成要素の実績データとを記憶する。また、データ記憶部23Aは、実績ベースに基づく指標算定部22からデータを取得する代わりに、又は並行して、規範指標算定部32によって算出された、設備の諸元に基づく理想的な生産性の指標データを記憶する。なお、データ記憶部23Aは、規範指標算定部32によって、様々な条件の下で算出された、現在又は過去の設備の諸元に基づく理想的な生産性の指標データを記憶してもよい。
【0080】
なお、その他のステップS33の動作は、
図3に示す第1実施形態のステップS23の動作と同一又は同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0081】
ステップS34において、圧延生産性向上支援装置30の生産性評価部24Aは、材又は集計期間毎、かつ層別毎に、プラントデータが揃う度に逐次、評価対象の生産性指標と過去の生産性指標実績又は規範生産性指標とを比較する。そして、生産性評価部24Aは、比較結果に基づいて、生産性低下の評価と要因候補の評価とを行う。すなわち、生産性評価部24Aは、評価対象である生産性指標の実績と、評価基準とされる規範指標算定部32によって計算された理想的な生産性指標とを比較し、比較結果に基づいて、生産性の評価と、生産性低下の要因の検出とを行う。
【0082】
生産性評価部24Aは、生産性指標について、評価対象と評価基準とを比較して指標の良し悪しを定量的に算出する。さらに、生産性評価部24Aは、プラント100全体での生産性低下を評価するだけではなく、ゾーン毎の生産性パラメータや、その構成要素の指標を、それぞれ規範指標算定部32によって計算されたデータと比較して、生産性低下の要因を検出する。
【0083】
なお、規範指標算定部32が、実績ベースに基づく指標算定部22と並行して動作している場合、ステップS34では、
図3に示すステップS24の動作も並行して行われてもよい。なお、その場合、他のステップS34の動作は、
図3に示す第1実施形態のステップS24の動作と同一又は同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0084】
ステップS35において、圧延生産性向上支援装置30の表示部25Aは、生産性低下の評価結果と、その評価根拠となった生産性と、その構成要素と、それぞれの指標の値とを表示して、プラント管理者・操業担当者26に提示する。
【0085】
すなわち、表示部25Aは、製品が生産される度に、理想的な生産性の指標に対して、生産性指標の実績の評価結果を表示する。例えば、表示部25Aは、評価結果と、その評価根拠となった生産性指標と、ゾーン毎の生産性パラメータと、その構成要素の指標と、その生産性指標に関連する生産計画、生産実績、操業状態等を示すデータとを表示する。
【0086】
なお、その他のステップS35の動作は、
図3に示す第1実施形態のステップS25の動作と同一又は同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0087】
<第2実施形態の作用効果>
以上、
図4及び
図5に示す第2実施形態では、
図1から
図3に示した第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0088】
また、
図4及び
図5に示す第2実施形態によれば、規範指標算定部32は、シミュレータを有し、当該シミュレータ等を用いて、例えば、何度も条件を変えて、当該設備の諸元に基づく理想的な生産性、すなわち、設備の理論上最高の生産性が算定する。これにより、
図4及び
図5に示す第2実施形態では、生産性評価部24Aは、規範指標算定部32により算出された理論上最高性能の生産性と、現在の生産性指標との比較結果に基づいて、生産性低下の評価と要因候補の評価とを行うことができる。
【0089】
このため、
図4及び
図5に示す第2実施形態によれば、規範指標算定部32により算出された理想的な生産性と、現在の生産性指標との比較結果に基づいて、生産性の低下の要因候補がプラント管理者・操業担当者26に提示される。これにより、プラント管理者・操業担当者26は、理想的な生産性と、現在の生産性指標との比較に基づいて、生産性の低下の要因を把握することが出来るため、理想的な生産性との関係で、現状何が問題(ボトルネック)になっているのかを把握することができる。
【0090】
<第3実施形態の構成>
図6は、第3実施形態に係る圧延生産性向上支援装置40の構成の一例を示す図である。
図6においては、
図1~
図3に示す第1実施形態と同一又は同様の構成又は機能については同一の符号を付し、詳細な説明は省略又は簡略化する。
【0091】
図6に示すとおり、圧延生産性向上支援装置40は、データ収集部21と、指標算定部22と、データ記憶部23と、生産性評価部24と、表示部25Bと、要因候補検出部44との構成又は機能を有する。すなわち、第3実施形態に係る圧延生産性向上支援装置40は、表示部25Bの構成又は機能が、
図1~
図3に示す第1実施形態と一部相違する。また、第3実施形態に係る圧延生産性向上支援装置40は、要因候補検出部44の構成又は機能をさらに有する点で、
図1~
図3に示す第1実施形態と相違する。
【0092】
要因候補検出部44は、データ記憶部23に記憶された各種値や各種データを取得し、生産性の指標が変化(悪化)したときに、その生産性指標の構成要素について、指標が悪化した構成要素と相関のあるプラントデータ項目を検出する。なお、データ記憶部23には、各種値や各種データの一例として、設備の休止や停止、設備のアラーム、インターロックの履歴、圧延時間や待ち時間の実績値等が記憶されている。
【0093】
表示部25Bは、
図1~
図3に示す第1実施形態における表示部25の構成又は機能を有する。さらに、表示部25Bは、指標が変化(悪化)した構成要素と相関のあるプラントデータ項目が検出されると、生産性低下の評価結果と、その評価根拠となった生産性と、その構成要素と、生産性変化の要因候補と、それぞれの指標の値等を示すデータを表示する。表示部25Bによって表示(提示)されるこれらの情報は、プラント管理者・操業担当者26によって監視される。
【0094】
<第3実施形態の動作>
図7は、第3実施形態に係る圧延生産性向上支援装置40の動作の一例を示すフローチャートである。
図7においては、
図1~
図3に示す第1実施形態と同一又は同様の動作については、詳細な説明は、適宜省略又は簡略化する。
図7に示すフローチャートは、
図3に示すフローチャートと同様のタイミングで動作が開始される。
【0095】
ステップS41~ステップS43の動作は、
図3に示す第1実施形態のステップS21~ステップS23の動作と同一又は同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0096】
ステップS44において、圧延生産性向上支援装置40の要因候補検出部44は、生産性の指標が変化(悪化)したときに、その生産性指標の構成要素について、指標が悪化した構成要素と相関のあるプラントデータ項目を検出する。すなわち、要因候補検出部44は、生産性が低下したとき、例えば、サイクルタイムを構成する、ゾーン毎の圧延時間、パス間時間が、どのような要因により変化したかを検出する。また、要因候補検出部44は、例えば、生産に寄与しなかった時間として、計画や事故による休止期間または停止期間、オシレーションやギャップタイムなどの待ち時間、生産性の構成要素が、どのような要因により変化したかを検出する。そして、要因候補検出部44は、検出したデータ項目を生産性低下の要因候補とする。
【0097】
例えば、設備の劣化や不具合により、メンテナンスのための計画休止、設備の故障やインターロック不成立などの事象が起こる。これらの事象は、休止や停止の記録、設備のアラーム、インターロックの履歴等として、例えば、データ記憶部23にデータが記録される。
【0098】
また、例えば、設備の所定の条件下での性能リミット、定格値、制御シーケンスアルゴリズムに設けられた余裕時間、制御指令値へのオペレータ介入等により、圧延時間や待ち時間等に変化が起こる。これらの事象は、圧延時間や待ち時間の実績値として、例えば、データ記憶部23にデータが記録される。
【0099】
要因候補検出部44は、これらのデータ項目の中から、生産性が低下したときと、平時との差、もしくは理想状態との差を比較して、生産性低下と相関のあるデータ項目を検出する。なお、相関を判定する手段としては、統計的手法、機械学習的手法等が適用可能である。
【0100】
なお、要因候補検出部44は、
図4~
図5に示す第2実施形態に示した規範指標算定部32を構成する物理モデルや、設備の諸元、仕様、制御装置のアルゴリズム等を参照することも可能である。これにより、生産性低下やその構成要素と因果関係にないデータ項目を除外することも可能であるため、要因候補の検出確度を向上させることができる。
【0101】
例えば、所定のゾーンで生産性低下が検出されたとき、当該ゾーンよりも前工程で発生した前材に対するインターロックの不成立は、設備や制御装置の仕様から、当該のゾーンに対して影響のあるものではないことが分かる。このため、要因候補検出部44は、当該インターロックの不成立が、検出された生産性低下とは因果関係にないと判定することができる。
【0102】
ステップS45において、圧延生産性向上支援装置40の表示部25Bは、生産性低下の評価結果と、その評価根拠となった生産性と、その構成要素と、生産性変化の要因候補と、それぞれの指標の値とを表示して、プラント管理者・操業担当者26に提示する。
【0103】
すなわち、表示部25Bは、製品が生産される度に、生産性低下の評価結果と、その評価根拠となった生産性指標と、ゾーン毎の生産性パラメータとを表示して、プラント管理者・操業担当者26に提示する。また、表示部25Bは、それらの構成要素の指標と、その生産性指標に関連する生産計画、生産実績、操業状態等を示すデータと、要因候補検出部によって検出された要因候補とを表示して、プラント管理者・操業担当者26に提示する。
【0104】
なお、その他のステップS45の動作は、
図3に示す第1実施形態のステップS25の動作と同一又は同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0105】
<第3実施形態の作用効果>
以上、
図6及び
図7に示す第3実施形態では、
図1から
図3に示した第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0106】
また、
図6及び
図7に示す第3実施形態によれば、要因候補検出部44は、生産性の指標が変化(悪化)したときに、その生産性指標の構成要素について、指標が悪化した構成要素と相関のあるプラントデータ項目を検出する。そして、表示部25Bは、要因候補検出部によって検出された要因候補を表示して、プラント管理者・操業担当者26に提示する。これにより、プラント管理者・操業担当者26は、平時のプラントデータ項目と、要因候補検出部44によって検出された要因候補とを把握することが出来るため、平時のプラントとの関係で、現状何が問題で生産性が低下しているのかを把握することができる。
【0107】
<ハードウェア構成例>
図8は、
図1~
図7に示した実施形態における圧延生産性向上支援装置20,30,40が有する処理回路90のハードウェア構成例を示す概念図である。上述した各機能は処理回路90により実現される。一態様として、処理回路90は、少なくとも1つのプロセッサ91と少なくとも1つのメモリ92とを備える。他の態様として、処理回路90は、少なくとも1つの専用のハードウェア93を備える。
【0108】
処理回路90がプロセッサ91とメモリ92とを備える場合、各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、メモリ92に格納される。プロセッサ91は、メモリ92に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各機能を実現する。
【0109】
処理回路90が専用のハードウェア93を備える場合、処理回路90は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、又はこれらを組み合わせたものである。各機能は処理回路90で実現される。
【0110】
圧延生産性向上支援装置20,30,40が有する各機能は、それぞれ一部又は全部がハードウェアによって構成されてもよく、プロセッサが実行するプログラムとして構成されてもよい。すなわち、圧延生産性向上支援装置20,30,40は、コンピュータとプログラムとによっても実現可能であり、プログラムは、記憶媒体に記憶されることも、ネットワークを通して提供されることも可能である。
【0111】
<実施形態の補足事項>
以上、
図1~
図8に示す実施形態によれば、
図1~
図3に示す圧延生産性向上支援装置20と、
図4~
図5に示す圧延生産性向上支援装置30と、
図6~
図7に示す圧延生産性向上支援装置40とに分けて説明したが、これには限られない。圧延生産性向上支援装置20,30,40の一部又は全部の構成及び動作が、直列又は並列に組み合わされてもよい。これらの構成及び動作が組み合わされることにより、組み合わされた構成及び動作は、組み合わされる前の各構成及び動作によって奏される各作用効果を奏することができる。
【0112】
また、
図1から
図8に示す実施形態によれば、本件開示の一態様として、圧延生産性向上支援装置20,30,40を例に説明したが、これには限られない。本件開示は、プラント100と、圧延生産性向上支援装置20,30,40とが組み合わされた圧延生産性向上支援システムとしても実現可能である。
【0113】
また、本件開示は、圧延生産性向上支援装置20,30,40の各部における処理ステップが行われる圧延生産性向上支援方法としても実現可能である。
【0114】
また、本件開示は、圧延生産性向上支援装置20,30,40の各部における処理ステップをコンピュータに実行させる圧延生産性向上支援プログラムとしても実現可能である。
【0115】
また、本件開示は、圧延生産性向上支援プログラムが記憶された記憶媒体(非一時的なコンピュータ可読媒体)としても実現可能である。圧延生産性向上支援プログラムは、例えば、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリ等のリムーバブルディスク等に記憶して頒布可能である。なお、圧延生産性向上支援プログラムは、圧延生産性向上支援装置20,30,40が有する不図示のネットワークインタフェース等を介して、ネットワーク上にアップロードされてもよい。また、圧延生産性向上支援プログラムは、当該ネットワークインタフェース等を介して、ネットワークからダウンロードされ、データ記憶部23,23A又はメモリ92等に格納されてもよい。
【0116】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずである。したがって、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。
【符号の説明】
【0117】
1…加熱炉;2…第一搬送装置;3…粗圧延機;4…第二搬送装置;5…仕上圧延機;6…第三搬送装置;7…巻き取り機;11…加熱炉ゾーン;12…第一搬送ゾーン;13…粗圧延機ゾーン;14…第二搬送ゾーン;15…仕上圧延機ゾーン;16…第三搬送ゾーン;17…巻き取り機ゾーン;20…圧延生産性向上支援装置;21…データ収集部;22…指標算定部;23,23A…データ記憶部;24,24A…生産性評価部;25,25A,25B…表示部;26…プラント管理者・操業担当者;30…圧延生産性向上支援装置;32…規範指標算定部;40…圧延生産性向上支援装置;44…要因候補検出部;90…処理回路;91…プロセッサ;92…メモリ;93…ハードウェア;100…熱間圧延ライン(プラント)