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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】二軸配向ポリプロピレン系フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240625BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240625BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20240625BHJP
   B29C 55/12 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B7/023
B32B7/022
B29C55/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023570848
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2022046275
(87)【国際公開番号】W WO2023127535
(87)【国際公開日】2023-07-06
【審査請求日】2024-03-06
(31)【優先権主張番号】P 2021214642
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金谷 敦史
(72)【発明者】
【氏名】今井 徹
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-154187(JP,A)
【文献】国際公開第2012/002123(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/142983(WO,A1)
【文献】特開2015-178594(JP,A)
【文献】特開2018-141122(JP,A)
【文献】国際公開第2017/221781(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02181843(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0229408(US,A1)
【文献】米国特許第06410132(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 7/022-7/023
B32B 27/32
B29C 55/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層(A)、表面層(B)、表面層(C)の少なくとも3層からなり、表面層(B)、表面層(C)が以下の(1)、(2)を満たし、かつ表面層(B)が以下の(B1)、(B2)を満たし、かつ表面層(C)が以下の(C1)、(C2)を満たすことを特徴とする二軸配向ポリプロピレン系フィルム。
(1)表面の濡れ張力が38mN/m以上である。
(2)表面積2000μm中の500nm以上の突起数が50個以上、200個以下である。
(B1)表面のマルテンス硬さが350N/mm以下である。
(B2)表面の算術平均粗さが1.5nm以上、3.0nm以下である。
(C1)表面のマルテンス硬さが270N/mm以下である。
(C2)表面の算術平均粗さが3.5nm以上、5.5nm以下である。
【請求項2】
フィルムのヘイズ値が6%以下である、請求項1に記載の二軸配向ポリプロピレン系フィルム。
【請求項3】
フィルムの縦方向の引張弾性率が2.0GPa以上であり、横方向の引張弾性率が3.0GPa以上である、請求項1又は2に記載の二軸配向ポリプロピレン系フィルム。
【請求項4】
フィルム厚みが5μm以上、200μm以下である、請求項1又は2に記載の二軸配向ポリプロピレン系フィルム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の二軸配向ポリプロピレン系フィルムと無延伸ポリプロピレンフィルムとの積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸配向ポリプロピレンフィルムに関する。詳細には、フィルムの巻き品位に優れ、無機物や有機物の蒸着層、コート層、他部材フィルムとのラミネートに使用する接着剤層との密着性に優れた二軸配向ポリプロピレンフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二軸配向ポリプロピレン系フィルムは、その透明性や機械的特性において非常に優れたものであるところから、食品や繊維製品などを始めとする様々の物品の包装材料として広く用いられている。しかしながら、ポリプロピレン系フィルムの問題点としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂が無極性であることから表面エネルギーが小さく、そのために無機物や有機物での蒸着や、コーティング、他部材フィルムとのラミネートなどの加工で密着力が十分ではないことが指摘されている。
【0003】
特に、蒸着やコーティングによる薄膜層形成では密着力だけでなく、表面凹凸による突起部分で薄膜形成が出来ず、バリア性などが不良となる問題もある。一方で二軸配向ポリプロピレン系フィルムはその優れた柔軟性と平面性により滑り性が乏しく、フィルム同士で貼りつくブロッキングが発生するため、一般的にアンチブロッキング剤を添加し、表面凹凸を形成させる。そのため、形成した表面凹凸で蒸着やコーティングによる薄膜形成が不十分となり、バリア性などの不良につながる。
【0004】
このような問題点に対する対策として様々の方法が提案されており、例えば、プロピレン樹脂に分岐鎖状ポリプロピレンを混ぜ、ポリプロピレンのβ晶をα晶に結晶変態させることでフィルム表面に凹凸を形成させ、実質的に無機物や有機物によるアンチブロッキング剤を用いずに滑り性を良好とする方法(例えば、特許文献1等参照。)が開示されている。
【0005】
また、アンチブロッキング剤を用いて、フィルム表面層に凹凸を形成させ、インキや他部材フィルムとのラミネートでの密着性を上げる方法(例えば、特許文献2等参照。)が開示されている。
【0006】
しかしながら、フィルム巻き品位や蒸着層やコート層を形成後のガスバリア性についてより一層の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2007/094072号
【文献】国際公開第2018/142983号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、二軸配向ポリプロピレンフィルムが本来有している優れた透明性や機械的特性を損なうことなく、フィルムの巻き品位に優れ、蒸着層やコート層、他部材フィルムとのラミネートにおける接着剤層との密着性に優れた軸配向ポリプリロピレンフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層(A)、表面層(B)、表面層(C)の少なくとも3層からなり、表面層(B)、表面層(C)が以下の(1)、(2)を満たし、かつ表面層(B)が以下の(B1)、(B2)を満たし、かつ表面層(C)が以下の(C1)、(C2)を満たすことを特徴とする二軸配向ポリプロピレン系フィルム。
(1)表面の濡れ張力が38mN/m以上である。
(2)表面積2000μm中に500nm以上の突起数が50個以上、200個以下する。
(B1)表面のマルテンス硬さが350N/mm以下である。
(B2)表面の算術平均粗さ(Ra)が1.5nm以上、3.0nm以下である。
(C1)表面のマルテンス硬さが270N/mm以下である。
(C2)表面の算術平均粗さ(Ra)が3.5nm以上、5.5nm以下である。
【0010】
この場合において、フィルムのヘイズ値が6%以下であることが好適である。
【0011】
また、この場合において、フィルムの縦方向の引張弾性率が2.0GPa以上であり、横方向の引張弾性率が3.0GPa以上であることが好適である。
【0012】
さらにまた、この場合において、フィルム厚みが5μm以上、200μm以下であることが好適である。
【0013】
さらにまた、前記のいずれかの二軸配向ポリプロピレン系フィルムと無延伸ポリプロピレンフィルムとの積層体が好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムが本来有している優れた透明性や機械的特性を損なうことなく、フィルムの巻き品位に優れ、蒸着層やコート層、他のフィルムとのラミネートにおける接着剤層と優れた密着性を示すものであった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムは、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層(A)、表面層(B)、表面層(C)の少なくとも3層からなり、表面層(B)、表面層(C)が以下の(1)、(2)を満たし、かつ表面層(B)が以下の(B1)、(B2)を満たし、かつ表面層(C)が以下の(C1)、(C2)を満たすことを特徴とする二軸配向ポリプロピレン系フィルム。
(1)表面の濡れ張力が38mN/m以上である。
(2)表面積2000μm中の500nm以上の突起数が50個以上、200個以下である。
(B1)表面のマルテンス硬さが350N/mm以下である。
(B2)表面の算術平均粗さ(Ra)が1.5nm以上、3.0nm以下である。
(C1)表面のマルテンス硬さが270N/mm以下である。
(C2)表面の算術平均粗さ(Ra)が3.5nm以上、5.5nm以下である。
【0016】
表面層(B)、表面層(C)の表面の濡れ張力は、表面層(B)、表面層(C)をぬらすと判定された混合液試薬の表面張力(mN/m)の数値を表わし、蒸着層やコート層、接着剤層の濡れやすさに関係するものである。
【0017】
表面層(B)、表面層(C)の表面の表面積2000μm中の500nm以上の突起の数が多いとフィルム同士でのブロッキングや金属などとの滑りにおいて、表面層(B)と他の表面層との接触面積が小さくなり、滑り性や耐ブロッキング性が向上し、ひいてはフィルムの巻き品位の向上につながる。
【0018】
表面層(B)、表面層(C)の表面のマルテンス硬さは、ダイナミック超微小硬度計を使用し、曲率半径0.1μm以下の針先で表面0.1μm程押し込んだ時の表面層(B)、表面層(C)の硬さを示すものである。マルテンス硬さが小さいことは、表面層(B)、表面層(C)が柔らかいことを示し、表面層(B)の表面に積層された蒸着層やコート層、接着剤層の動きに表面層(B)が追従しやすく、蒸着層やコート層、接着剤層との密着性が向上し、ひいてはガスバリア性の向上につながる。
【0019】
表面層(B)、表面層(C)の表面の算術平均粗さ(Raともいう。)は、走査型プローブ顕微鏡(AFM)を使用し、JIS-B0601(1994)に記載の算術平均粗さの定義に準じて求めたもので、比較的大きな山や谷の部分以外の、比較的平坦な箇所の表面の凹凸を表す指標であり、蒸着層やコート層、他の部材とのラミネートで使用する接着剤層との密着性に関係する。Raが小さいと蒸着層やコート層、接着剤層がフィルム表面に均一に積層された、かつ密着性も向上し、ひいてはガスバリア性が向上する。
【0020】
(1)基材層(A)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムの基材層(A)はポリプロピレン系樹脂を主成分とするものである。基材層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂は、共重合成分を含まないポリプロピレン単独重合体、及びエチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンを0.5モル%以下で共重合したポリプロピレン樹脂を用いることができる。共重合成分は0.3モル%以下が好ましく、0.1モル%以下がより好ましく、共重合成分を含まないポリプロピレン単独重合体が最も好ましい。
エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンの共重合量が、0.5モル%以下であると、結晶性や剛性が低下しにくく、高温での熱収縮率が大きくなりにくい。これらの樹脂をブレンドして用いても良い。ここでいう主成分とは基材層(A)において最も含有量が最も多いことを意味し、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは55重量%以上であり、さらに好ましくは60重量%以上であり、最も好ましくは70重量%以上である。
【0021】
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムの基材層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂の立体規則性の指標である13C-NMRで測定されるメソペンタッド分率([mmmm]%)は、93.5%以上、99.5%以下であることが好ましい。より好ましくは、94.0%以上であり、さらに好ましくは96.0%以上であり、特に好ましくは97.5%以上であり、最も好ましくは98.5%以上である。ポリプロピレン系樹脂のメソペンタッド率37.5%以上であると、弾性率が大きくなり、耐熱性も向上する。99.5%が現実的な上限である。
【0022】
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムの基材層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂の質量平均分子量(Mw)は、180,000以上、500,000以下が好ましい。
180,000より小さいと、溶融粘度が低いため、キャスト時に安定せず、製膜性が悪くなることがある。Mwが500,000を超えると、分子量10万以下の成分の量が減少し、高温での熱収縮率が低減しにくい。
より好ましいMwの下限は190,000、さらに好ましくは200,000であり、特に好ましくは220,000であり、より好ましいMwの上限は350,000、さらに好ましくは340,000、特に好ましくは330,000である。
【0023】
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムの基材層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂の数平均分子量(Mn)は、20,000以上、200,000以下が好ましい。
20,000より小さいと、溶融粘度が低いため、キャスト時に安定せず、製膜性が悪くなることがある。200,000を超えると、高温での熱収縮率が低減しにくい。
より好ましいMnの下限は30,000、さらに好ましくは40,000、特に好ましくは50,000であり、より好ましいMnの上限は100,000、さらに好ましくは90,000、特に好ましくは85,000である。
【0024】
また、分子量分布の指標であるMw/Mnは、基材層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂では2.5以上、10.0以下が好ましい。より好ましくは3.0以上、9.0以下、さらに好ましくは3.5以上、7.0以下であり、特に好ましくは3.5以上、6.0以下である。Mw/Mnが2.5以上であると高温での熱収縮率が低減しにくい。
なお、ポリプロピレン系樹脂の分子量分布は、異なる分子量の成分を多段階に一連のプラントで重合したり、異なる分子量の成分をオフラインで混錬機でブレンドしたり、異なる性能をもつ触媒をブレンドして重合したり、所望の分子量分布を実現できる触媒を用いたりすることで調整することが可能である。
【0025】
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムの基材層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂は、メルトフローレート(MFR;230℃、2.16kgf)が1.0g/10分以上、10g/10分以下であることが好ましい。
基材層(A)のポリプロピレン系樹脂のMFRの下限は、1.2g/10分であることがより好ましく、1.5g/10分であることがさらに好ましく、2.0g/10分であることがよりさらに好ましく、5.5g/10分であることが特に好ましい。基材層(A)のポリプロピレン系樹脂のMFRの上限は、9.0g/10分であることがより好ましく、8.0g/10分であることがさらに好ましい。
基材層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂のMw/Mn及びMFRが、この範囲であると、引張弾性率を高く、かつ高温での熱収縮率も小さく保つことができる。
【0026】
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムの基材層(A)には、添加剤やその他の樹脂を含有させてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、造核剤、粘着剤、防曇剤、難燃剤、無機または有機の充填剤等が挙げられる。その他の樹脂としては、本発明で用いられるポリプロピレン樹脂以外のポリプロピレン樹脂、プロピレンとエチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体であるランダムコポリマーや、各種エラストマー等が挙げられる。これらは、多段の反応器を用いて逐次重合するか、ポリプロピレン樹脂とヘンシェルミキサーでブレンドするか、事前に溶融混錬機を用いて作製したマスターペレットを所定の濃度になるようにポリプロピレンで希釈するか、予め全量を溶融混練して使用してもよい。表面抵抗率を下げるために加える界面活性剤が基材層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂に対して、6000ppm以下が好ましく、1500ppmがより好ましく、500ppmがさらに好ましく、100ppm以下が特に好ましい。
【0027】
(2)表面層(B)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面層(B)はポリプロピレン系樹脂を主成分とするものである。表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂は、共重合成分を含まないポリプロピレン単独重合体、及びエチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンを0.5モル%以下で共重合したポリプロピレン樹脂を用いることができる。共重合成分は0.3モル%以下が好ましく、0.1モル%以下がより好ましく、共重合成分を含まないポリプロピレン単独重合体が最も好ましい。
炭素数4以上のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル・1-ペンテン、1-オクテンなどが挙げられる。また、その他の共重合成分として極性を有するマレイン酸等を使用しても良い。
エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンの共重合量が、0.5モル%以下であると、結晶性や剛性が低下しにくく、高温での熱収縮率が大きくなりにくい。これらの樹脂をブレンドして用いても良い。ここでいう主成分とは表面層(B)において最も含有量が最も多いことを意味し、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上であり、さらに好ましくは90重量%以上であり、最も好ましくは95重量%以上である。
【0028】
表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂として、メルトフローレート(MFR)が異なる2種以上のポリプロピレン系樹脂の混合物を使用しても良い。
ポリプロピレン系樹脂の混合物中の2種以上のポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)の差が小さい方が、それぞれのポリプロピレン系樹脂の結晶化速度や結晶化度が大きく異ならず、表面に微少な凹凸が生成しやすいものと推測している。但し、フィルムの製造時に未延伸シートの冷却速度が遅かったりすると、球晶による表面凹凸が大きくなること、縦延伸あるいは横延伸時に延伸温度が高すぎて表面凹凸が大きくなりやすいため、注意が必要である。
それぞれのポリプロピレン系樹脂としては、共重合成分を含まないポリプロピレン単独重合体、及びエチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンを0.5モル%以下で共重合したポリプロピレン樹脂を用いることができる。共重合成分は0.3モル%以下が好ましく、0.1モル%以下がより好ましく、共重合成分を含まないポリプロピレン単独重合体が最も好ましい。
炭素数4以上のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル・1-ペンテン、1-オクテンなどが挙げられる。また、その他の共重合成分として極性を有するマレイン酸等を使用しても良い。
エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィン、その他の共重合成分は合計で0.5モル%以下であることが好ましい。
【0029】
本発明で用いるポリプロピレン樹脂は、チーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒等の公知の触媒を用いて、原料のプロピレンを重合させることにより得られる。中でも、異種結合をなくすためにはチーグラー・ナッタ触媒を用い、立体規則性の高い重合が可能な触媒を用いることが好ましい。
原料のプロピレンを重合する方法としては、公知の方法を採用すればよく、例えば、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の不活性溶剤中で重合する方法、液状のモノマー中で重合する方法、気体のモノマーに触媒を添加し、気相状態で重合する方法、または、これらを組み合わせて重合する方法等が挙げられる。
【0030】
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂の立体規則性の指標である13C-NMRで測定されるメソペンタッド分率([mmmm]%)は、90.0%以上、99.5%以下であることが好ましい。下限はより好ましくは、92.0%以上であり、さらに好ましくは93.0%以上であり、特に好ましくは93.5%である。上限はより好ましくは、99.0%以下であり、さらに好ましくは98.5%以下であり、特に好ましくは98.5%である。ポリプロピレン系樹脂のメソペンタッド率が90.0%より大きいと、弾性率が大きくなり、耐熱性も向上する。
【0031】
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂の質量平均分子量(Mw)は、200,000以上、500,000以下が好ましい。200,000より小さいと、溶融粘度が低いため、キャスト時に安定せず、製膜性が悪くなることがある。Mwが500,000を超えると、分子量10万以下の成分の量が減少し、高温での熱収縮率が低減しにくい。
より好ましいMwの下限は220,000、さらに好ましくは250,000であり、より好ましいMwの上限は400,000、さらに好ましくは360,000、特に好ましくは330,000である。
【0032】
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂の数平均分子量(Mn)は、20,000以上、200,000以下が好ましい。
20,000より小さいと、溶融粘度が低いため、キャスト時に安定せず、製膜性が悪くなることがある。200,000を超えると、高温での熱収縮率が低減しにくい。
より好ましいMnの下限は30,000、さらに好ましくは40,000、特に好ましくは50,000であり、より好ましいMnの上限は80,000、さらに好ましくは70,000、特に好ましくは60,000である。
【0033】
また、分子量分布の指標であるMw/Mnは、表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂では3.2以上、10.0以下が好ましい。より好ましくは3.5以上、8.0以下、さらに好ましくは4.0以上、6以下であり、特に好ましくは4.5以上、6以下である。Mw/Mnが3.2以上であると高温での熱収縮率が低減しにくい。
なお、ポリプロピレン系樹脂の分子量分布は、異なる分子量の成分を多段階に一連のプラントで重合したり、異なる分子量の成分をオフラインで混錬機でブレンドしたり、異なる性能をもつ触媒をブレンドして重合したり、所望の分子量分布を実現できる触媒を用いたりすることで調整することが可能である。
【0034】
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂は、メルトフローレート(MFR;230℃、2.16kgf)が1.0g/10分以上、8g/10分以下であることが好ましい。
表面層(B)のポリプロピレン系樹脂のMFRの下限は、1.5g/10分であることがより好ましく、2.0g/10分であることがさらに好ましく、2.5g/10分であることが特に好ましい。表面層(B)のポリプロピレン系樹脂のMFRの上限は、8g/10分であることがより好ましく、7g/10分であることがさらに好ましく、6g/10分以下であることがさらに好ましい。
表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂のMw/Mn及びMFRが、この範囲であると、冷却ロールへの密着性も良好で、好適な表面突起の形成に有利であり、表面のマルテンス硬さを高く、かつ高温での熱収縮率も小さく保つことができる、
【0035】
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面層(B)には、添加剤やその他の樹脂を含有させてもよい。添加剤としては、例えば、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、造核剤、粘着剤、防曇剤、難燃剤、無機または有機の充填剤等が挙げられる。その他の樹脂としては、本発明で用いられるポリプロピレン樹脂以外のポリプロピレン樹脂、プロピレンとエチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体であるランダムコポリマーや、各種エラストマー等が挙げられる。これらは、多段の反応器を用いて逐次重合するか、ポリプロピレン樹脂とヘンシェルミキサーでブレンドするか、事前に溶融混錬機を用いて作製したマスターペレットを所定の濃度になるようにポリプロピレンで希釈するか、予め全量を溶融混練して使用してもよい。
【0036】
表面層(B)に含むアンチブロッキング剤としては、無機系及び有機系の粒子の中から、適宜選択して使用することができる。これらの中でも、ケイ素化合物を用いるのが特に好ましい。ケイ素化合物の例として、例えばケイ酸塩、シリカ、シロキサン結合による主骨格を有する化合物を挙げることができる。粒子形状は球形でも不定形でも良い。これらの粒子の中でも、シロキサン結合による主骨格を有する化合物とアクリル酸とからなる粒子(シリコーン系微粒子)が好ましい。シリコーン系微粒子は表面層(B)のポリプロピレン系樹脂へのなじみや分散性に優れるため透明性に優れ、表面層(B)に設けたコート層や蒸着層との親和性に優れ、コート層のハジキが少なく、あるいは蒸着層と密着性に優れることを見いだした。
粒子の好ましい平均粒子径は1.0μm以上、3.0μm以下であり、より好ましくは1.5μm以上、2.7μm以下である。ここでいう平均粒径の測定法は、走査電子顕微鏡で写真撮影し、イメージアナライザー装置を用いて水平方向のフェレ径を測定し、その平均値で表示したものである。
粒子の添加量は、400ppm以上、4000ppm以下であることが好ましい。アンチブロッキング剤の添加量は400ppm以上、2300ppm以下がより好ましく、800ppm以上、2500ppmがさらに好ましく、1200ppm以上、2500ppm以下が特に好ましい。表面突起数やマルテンス硬度が既定の範囲内になるように実施する。500ppm以上ではフィルムの滑り性や耐ブロッキング性が優れ、4000ppm以下ではアンチブロッキング過剰量添加による失透やアルミ蒸着やコーティングなど薄膜層を施す際に粒子による薄膜層の貫通や、凸部分側面に薄膜が形成されることが起きにくく、バリア性低下や密着不良となりにくい。
【0037】
表面抵抗率を下げるために加える界面活性剤は6000ppm以下が好ましく、1500ppmがより好ましく、500ppmがさらに好ましく、100ppm以下が特に好ましい。
【0038】
(2)表面層(C)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面層(C)はポリプロピレン系樹脂を主成分とするものである。表面層(C)を構成するポリプロピレン系樹脂は、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンを3.0モル%以下であるポリプロピレン樹脂を用いることができる。共重合成分は2.5モル%以下が好ましく、2.0モル%以下がより好ましい。共重合成分は0.5モル%以上が好ましく、1.0モル%以上がより好ましく、1.2モル%以上が特に好ましい。
炭素数4以上のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル・1-ペンテン、1-オクテンなどが挙げられる。また、その他の共重合成分として極性を有するマレイン酸等を使用しても良い。
エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンの共重合量が、3.0モル%以下であると、結晶性や剛性が低下しにくく、高温での熱収縮率が大きくなりにくい。これらの樹脂をブレンドして用いても良い。ここでいう主成分とは表面層(C)において最も含有量が最も多いことを意味し、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上であり、さらに好ましくは90重量%以上であり、最も好ましくは95重量%以上である。共重合成分は0.5モル%以上であると蒸着層やコート層との密着性が向上する。
【0039】
表面層(C)を構成するポリプロピレン系樹脂として、メルトフローレート(MFR)が異なる2種以上のポリプロピレン系樹脂の混合物を使用しても良い。
ポリプロピレン系樹脂の混合物中の2種以上のポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)の差が小さい方が、それぞれのポリプロピレン系樹脂の結晶化速度や結晶化度が大きく異ならず、表面に微少な凹凸が生成しやすいものと推測している。但し、フィルムの製造時に未延伸シートの冷却速度が遅かったりすると、球晶による表面凹凸が大きくなること、縦延伸あるいは横延伸時に延伸温度が高すぎて表面凹凸が大きくなりやすいため、注意が必要である。
それぞれのポリプロピレン系樹脂としては、共重合成分を含まないポリプロピレン単独重合体、及びエチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンを5.0モル%以下で共重合したポリプロピレン樹脂を用いることができる。共重合したポリプロピレン樹脂の共重合成分は4.0モル%以下が好ましく、3.5モル%以下がより好ましい。共重合したポリプロピレン樹脂の共重合成分は1.0モル%以上が好ましく、1.5モル%以上がより好ましく、2.0モル%以上がさらに好ましく、2.5モル%以上が特に好ましい。
炭素数4以上のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル・1-ペンテン、1-オクテンなどが挙げられる。また、その他の共重合成分として極性を有するマレイン酸等を使用しても良い。
【0040】
本発明で用いるポリプロピレン樹脂は、チーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒等の公知の触媒を用いて、原料のプロピレンを重合させることにより得られる。中でも、異種結合をなくすためにはチーグラー・ナッタ触媒を用い、立体規則性の高い重合が可能な触媒を用いることが好ましい。
原料のプロピレンを重合する方法としては、公知の方法を採用すればよく、例えば、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の不活性溶剤中で重合する方法、液状のモノマー中で重合する方法、気体のモノマーに触媒を添加し、気相状態で重合する方法、または、これらを組み合わせて重合する方法等が挙げられる。
【0041】
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面層(C)を構成するポリプロピレン系樹脂の立体規則性の指標である13C-NMRで測定されるメソペンタッド分率([mmmm]%)は、90.0%以上、99.5%以下であることが好ましい。下限はより好ましくは、92.0%以上であり、さらに好ましくは93.0%以上であり、特に好ましくは93.5%である。上限はより好ましくは、99.0%以下であり、さらに好ましくは98.5%以下であり、特に好ましくは98.0%以下である。ポリプロピレン系樹脂のメソペンタッド率が90.0%より大きいと、弾性率が大きくなり、耐熱性も向上する。
【0042】
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面層(C)を構成するポリプロピレン系樹脂の質量平均分子量(Mw)は、200,000以上、500,000以下が好ましい。
200,000より小さいと、溶融粘度が低いため、キャスト時に安定せず、製膜性が悪くなることがある。Mwが500,000を超えると、分子量10万以下の成分の量が減少し、高温での熱収縮率が低減しにくい。
より好ましいMwの下限は210,000、さらに好ましくは220,000であり、より好ましいMwの上限は400,000、さらに好ましくは360,000、特に好ましくは330,000である。
【0043】
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面層(C)を構成するポリプロピレン系樹脂の数平均分子量(Mn)は、20,000以上、200,000以下が好ましい。
20,000より小さいと、溶融粘度が低いため、キャスト時に安定せず、製膜性が悪くなることがある。200,000を超えると、高温での熱収縮率が低減しにくい。
より好ましいMnの下限は30,000、さらに好ましくは40,000、特に好ましくは50,000であり、より好ましいMnの上限は120,000、さらに好ましくは100,000、特に好ましくは80,000である。
【0044】
また、分子量分布の指標であるMw/Mnは、表面層(C)を構成するポリプロピレン系樹脂では1.0以上、10.0以下が好ましい。より好ましくは2.0以上、8.0以下である。Mw/Mnが2.0以上であると高温での熱収縮率が低減しにくい。
なお、ポリプロピレン系樹脂の分子量分布は、異なる分子量の成分を多段階に一連のプラントで重合したり、異なる分子量の成分をオフラインで混錬機でブレンドしたり、異なる性能をもつ触媒をブレンドして重合したり、所望の分子量分布を実現できる触媒を用いたりすることで調整することが可能である。
【0045】
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面層(C)を構成するポリプロピレン系樹脂は、メルトフローレート(MFR;230℃、2.16kgf)が2g/10分以上、8g/10分以下であることが好ましい。
表面層(C)のポリプロピレン系樹脂のMFRの下限は、2.3g/10分であることがより好ましく、2.5g/10分であることがさらに好ましく、2.8g/10分であることがよりさらに好ましく、3.0g/10分であることが特に好ましい。表面層(C)のポリプロピレン系樹脂のMFRの上限は、9g/10分であることがより好ましく、8g/10分であることがさらに好ましく、7g/10分以下であることがさらに好ましい。
表面層(C)を構成するポリプロピレン系樹脂のMw/Mn及びMFRが、この範囲であると、冷却ロールへの密着性も良好で、好適な表面突起の形成に有利であり、表面のマルテンス硬さを高く、かつ高温での熱収縮率も小さく保つことができる、
【0046】
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面層(C)には、添加剤やその他の樹脂を含有させてもよい。添加剤としては、例えば、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、造核剤、粘着剤、防曇剤、難燃剤、無機または有機の充填剤等が挙げられる。その他の樹脂としては、本発明で用いられるポリプロピレン樹脂以外のポリプロピレン樹脂、プロピレンとエチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体であるランダムコポリマーや、各種エラストマー等が挙げられる。これらは、多段の反応器を用いて逐次重合するか、ポリプロピレン樹脂とヘンシェルミキサーでブレンドするか、事前に溶融混錬機を用いて作製したマスターペレットを所定の濃度になるようにポリプロピレンで希釈するか、予め全量を溶融混練して使用してもよい。
【0047】
表面層(C)に含むアンチブロッキング剤としては、無機系及び有機系の粒子の中から、適宜選択して使用することができる。これらの中でも、ケイ素化合物を用いるのが特に好ましい。ケイ素化合物の例として、例えばケイ酸塩、シリカ、シロキサン結合による主骨格を有する化合物を挙げることができる。粒子形状は球形でも不定形でも良い。これらの粒子の中でも、シロキサン結合による主骨格を有する化合物とアクリル酸とからなる粒子(シリコーン系微粒子)が好ましい。シリコーン系微粒子は表面層(C)のポリプロピレン系樹脂へのなじみや分散性に優れるため透明性に優れ、表面層(C)に設けたコート層や蒸着層との親和性に優れ、コート層のハジキが少なく、あるいは蒸着層と密着性に優れることを見いだした。
粒子の好ましい平均粒子径は1.0以上、3.0μm以下であり、より好ましくは1.5μm以上、2.7μm以下である。ここでいう平均粒径の測定法は、走査電子顕微鏡で写真撮影し、イメージアナライザー装置を用いて水平方向のフェレ径を測定し、その平均値で表示したものである。
粒子の添加量は、400ppm以上、4000ppm以下であることが好ましい。アンチブロッキング剤の添加量は400ppm以上、2500ppm以下がより好ましく、800ppm以上、2500ppmがさらに好ましく、1200ppm以上、2500ppm以下が特に好ましい。表面突起数やマルテンス硬度が既定の範囲内になるように実施する。500ppm以上ではフィルムの滑り性や耐ブロッキング性が優れ、4000ppm以下ではアンチブロッキング過剰量添加による失透やアルミ蒸着やコーティングなど薄膜層を施す際に粒子による薄膜層の貫通や、凸部分側面に薄膜が形成されないことが起きにくく、バリア性低下や密着不良となりにくい。
【0048】
表面抵抗率を下げるために加える界面活性剤は6000ppm以下が好ましく、1500ppmがより好ましく、500ppmがさらに好ましく、100ppm以下が特に好ましい。
【0049】
(3)二軸配向ポリプロピレン系フィルム
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムは、表面層(B)/基材層(A)/表面層(C)の3層構造、表面層(B)/基材層(A)/中間層(D)/表面層(C)の4層構造、それ以上の多層構造であってもよい。
【0050】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルム全体の厚みは1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、5μm以上がさらに好ましく、10μm以上がよりさらに好ましいく、15μm以上が特に好ましい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルム全体の厚みは100μm以下が好ましく、8以下がより好ましく、60μm以下がさらに好ましく、50μm以下がよりさらに好ましい。
【0051】
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムにおける各層の厚み比率としては、表面層(B)、表面層(C)の厚みの合計/全基材層(A)の厚みが、0.01以上、0.50以下であることが好ましく、0.02以上、0.40以下であることがより好ましく、0.03以上、0.30以下であることがさらに好ましく、0.04以上、0.20以下であることが特に好ましい。0.50を超えると、収縮率が大きくなる傾向を示す。
【0052】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムにおける表面層(B)と表面層(C)の厚みの合計/フィルムの厚みが0.010以上であることが好ましく、0.020以上であることがより好ましく、0.030以上であることがさらに好ましく、0.040以上であることが特に好ましい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムにおける表面層(B)と表面層(C)の厚みの合計と基材層(A)の厚みの比率としては、表面層(B)と表面層(C)の厚みの合計/全基材層(A)の厚みが0.500以下であることが好ましく、0.400以下であることがより好ましく、0.300以下であることがさらに好ましく0.200以下であることがよりさらに好ましく、0.115以下であることが特に好ましく0.110以下であることが最も好ましくい。表面層(B)と表面層(C)の厚みの合計/全基材層(A)の厚みが0.500を以下であると収縮率が小さくなり好ましい。
【0053】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムにおける表面層(B)の厚み/フィルムの厚みが0.02以上であることが好ましく、0.030以上であることがより好ましい。
表面層(B)の厚み/フィルムの厚みが0.02以上であると蒸着層やコート層、接着剤層との密着性が向上する。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムにおける表面層(B)の厚み/フィルムの厚みが0.08以下であることが好ましく、0.07以下であることがより好ましく、0.06以下であることがさらに好ましく0.055以下であることがよりさらに好ましい。表面層(B)の厚み/フィルムの厚みが0.08以下であると収縮率が小さくなり好ましい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムにおける表面層(C)の厚み/フィルムの厚みが0.02以上であることが好ましく、0.030以上であることがより好ましい。
表面層(C)の厚み/フィルムの厚みが0.02以上であると蒸着層やコート層、接着剤層との密着性が向上する。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムにおける表面層(C)の厚み/フィルムの厚みが0.08以下であることが好ましく、0.07以下であることがより好ましく、0.06以下であることがさらに好ましく0.055以下であることがよりさらに好ましい。表面層(C)の厚み/フィルムの厚みが0.08以下であると収縮率が小さくなり好ましい。
【0054】
また、フィルム全体の厚みに対する、基材層(A)の厚み、あるいは基材層(A)及び中間層(D)の合計厚みは0.50以上、0.99以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.60以上、0.97以下、特に好ましくは0.7以上、0.90%以下、最も好ましくは0.80以上、0.92以下である。
【0055】
(4)製造方法
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムは、基材層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物と表面層(B)、表面層(C)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物を別々の押出機により溶融押し出しし、ダイスから共押出しして、冷却ロールで冷却して、未延伸シートを形成し、その未延伸シートを縦方向(MD)及び幅方向(TD)に延伸した後、熱固定処理することによって得ることができる。
溶融押出し温度は200~280℃程度が好ましく、この温度範囲内で層を乱さずに良好な外観の積層フィルムを得るには、基材層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物と表面層(B)、表面層(C)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物の粘度差(MFR差)が5.0g/10分以下となるようにすることが好ましい。粘度差が5.0g/10分より大きいと、層が乱れて外観不良となりやすい。より好ましくは4.0g/10分以下、さらに好ましくは3.0g/10分以下である。
【0056】
冷却ロール表面温度は25~50℃が好ましく、30~45℃がより好ましい。冷却ロール温度が50℃以下であると、ポリプロピレン系樹脂の結晶化度が高くなりすぎず、形成した球晶に表面凹凸で表面層(B)または表面層(C)の表面の算術平均粗さ(Ra)が大きくなりにくい。
【0057】
縦方向(MD)の延伸倍率の下限は、好ましくは4倍であり、より好ましくは4.2倍である。4倍以上であると膜厚ムラとなりにくい。MDの延伸倍率の上限は好ましくは8倍であり、より好ましくは7倍である。8倍以下であると引き続き行うTD延伸がおこないやすくなる。MDの延伸温度の下限は好ましくは118℃であり、より好ましくは120℃であり、さらに好ましくは122℃である。118℃以上であると機械的負荷が大きくなりにくく、厚みムラが大きくなりにくく、フィルムの表面荒れが起こりにくい。MDの延伸温度の上限は好ましくは135℃であり、より好ましくは132℃であり、さらに好ましくは128℃である。温度が高い方が熱収縮率の低下には好ましいが、ロールに付着し延伸できなくなることや、表面荒れが起こることがある。
【0058】
幅方向(TD)の延伸倍率の下限は好ましくは7倍であり、より好ましくは7.5倍であり、さらに好ましくは8倍である。7倍以上であると厚みムラが大きくなりにくい。TD延伸倍率の上限は好ましくは15倍であり、より好ましくは12倍であり、さらに好ましくは10倍である。上記を超えると熱収縮率が高くなったり、延伸時に破断したりすることがある。
基材層に使用するポリプロピレン樹脂のメソペンダット分率が高くない場合は、TD延伸での予熱温度は好ましくは延伸温度より1~10℃高く設定する。
基材層に使用するポリプロピレン樹脂のメソペンダット分率が高い場合は、TD延伸での予熱温度は速やかに延伸温度付近にフィルム温度を上げるため、好ましくは延伸温度より10~20℃高く設定する。TDの延伸温度の下限は好ましくは150℃であり、より好ましくは152℃であり、さらに好ましくは154℃、特に好ましくは156℃である。150℃以上であると充分に軟化しやすく、破断したり、熱収縮率が高くなったりしにくい。TD延伸温度の上限は好ましくは164℃であり、より好ましくは162℃であり、さらに好ましくは160℃である。熱収縮率を低くするためには温度は高い方が好ましいが、170℃以上であると低分子成分の融解や、再結晶化による配向の低下が起こりにくく、表面荒れやフィルムの白化も起こりにくい。
【0059】
延伸後のフィルムは熱固定される。熱固定温度の下限は好ましくは168℃であり、より好ましくは170℃であり、さらに好ましくは173℃である。168℃以上であると熱収縮率が高くなりにくく、熱収縮率を低くするために長時間の処理を行う必要がない。熱固定温度の上限は好ましくは180℃であり、より好ましくは178℃である。180℃以下であると低分子成分の融解や、再結晶化による配向の低下が起こりにくく、表面荒れやフィルムの白化も起こりにくい。
【0060】
熱固定時には緩和(リラックス)させることが好ましい。リラックス率の下限は好ましくは2%であり、より好ましくは3%であり、さらに好ましくは5%である。2%以上であると熱収縮率が高くなりにくい。リラックス率の上限は好ましくは10%であり、より好ましくは8%である。10%以下であると厚みムラが大きくなりにくい。
【0061】
さらに、熱収縮率を低下させるために、上記の工程で製造されたフィルムを一旦ロール状に巻き取った後、オフラインでアニールさせることもできる。
【0062】
こうして得られた二軸配向ポリプロピレン系フィルムに、必要に応じて、コロナ放電、プラズマ処理、火炎処理等を施した後、ワインダーで巻き取ることにより本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムロールを得ることができる。
【0063】
(フィルム特性)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、下記特性に特徴がある。ここで本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムにおける「縦方向」とは、フィルム製造工程における流れ方向に対応する方向であり、「幅方向」とは、前記のフィルム製造工程における流れ方向と直交する方向である。フィルム製造工程における流れ方向が不明なポリプロピレンフィルムについては、フィルム表面に対して垂直方向に広角X線を入射し、α型結晶の(110)面に由来する散乱ピークを円周方向にスキャンし、得られた回折強度分布の回折強度が最も大きい方向を「縦方向」、それと直交する方向を「幅方向」とする。
【0064】
(濡れ張力)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面層(C)の表面の濡れ張力が38mN/m以上であることが好ましい。濡れ張力は38mN/m以上であると、蒸着膜やコーティング膜、他部材フィルムとのラミネートに使用する接着剤との密着性が向上する。濡れ張力を38mN/m以上とするには、帯電防止剤や界面活性剤などの添加剤を使用することが通常行われているが、これらの方法では、表面抵抗値を下げる効果があるため、コロナ処理、火炎処理などの物理化学的な表面処理を行うことが好ましい。
例えば、コロナ処理では、予熱ロール、処理ロールを用い、空中で放電を行うことが好ましい。濡れ張力は44mN/m以下であることが好ましく、43mN/m以下であることがより好ましく、42mN/m以下であることがさらに好ましい。
【0065】
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面層(B)、表面層(C)の表面の3次元粗さ計による表面2000μm中の500nm以上の突起数は50個以上、200個以下であることが好ましい。表面層(B)、表面層(C)の表面の突起数は50個以上、180個以下がより好ましく、60個以上、160個以下がさらに好ましく、80個以上、150個以下が特に好ましい。表面層(B)、表面層(C)の突起の大きさが500nm以上、かつその突起数が50個以上の場合では、フィルムの滑り性やフィルム同士での空気抜け時間、耐ブロッキング性に優れる。突起数が200個以下の場合、アルミニウム蒸着層やコート層を積層する際に突起によるアルミニウム蒸着層やコート層の貫通や、凸部分側面にアルミニウム蒸着層やコート層が形成されないことが起きにくく、密着性が向上しやすい。表面層(B))、表面層(C)の突起サイズと突起数を規定の範囲内とする方法はいくつかあるが、アンチブロッキング剤の種類、平均粒径や添加量で調整することが可能である。
【0066】
(マルテンス硬さ)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面層(B)のマルテンス硬さは350N/mm以下であることが好ましく、より好ましくは340N/mm以下であり、さらに好ましくは320N/mm以下であり、特に好ましくは310N/mm以下であり、最も好ましくは300N/mm以下である。
マルテンス硬さが350N/mm以下である場合、蒸着層やコート層と表面層(B)の表面の密着力が向上する。さらに表面層(B)の厚みとフィルムの比率を小さくしても密着性を向上しやすい。マルテンス硬さを350N/mm以下にするためには、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィン、その他の共重合成分を添加することで可能である。また、フィルムの延伸倍率を低くし、分子鎖の配向を下げることでもマルテンス硬さを下げることが可能である。
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面層(B)のマルテンス硬さは150N/mm以上であることが好ましく、より好ましくは180N/mm以上であり、さらに好ましくは220N/mm以上であり、よりさらに好ましくは240N/mm以上であり、よりさらに好ましくは260N/mm以上である。
表面層(B)の表面のマルテンス硬さは、ダイナミック超微小硬度計を使用し、曲率半径0.1μm以下の針先で表面0.1μm程押し込んだ時の表面層(B)の硬さを示すものである。マルテンス硬さが大きいことは、表面層(B)が硬いことを示し、表面層(B)の表面に形成された突起部の沈み込みが小さく、表面層(B)と他の表面層との接触面積が小さい状態が維持され、滑り性や耐ブロッキング性が向上し、ひいてはフィルムの巻き品位の向上につながる。
また本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面層(C)のマルテンス硬さは270N/mm以下であることが好ましく、より好ましくは260N/mm以下であり、さらに好ましくは250N/mm以下であり、特に好ましくは240N/mm以下であり、最も好ましくは230N/mm以下である。
マルテンス硬さが270N/mm以下である場合、蒸着層やコート層と表面層(C)の表面の密着力が向上する。さらに表面層(C)の厚みとフィルムの比率を小さくしても密着性を向上しやすい。マルテンス硬さを270N/mm以下にするためには、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィン、その他の共重合成分を添加することで可能である。また、フィルムの延伸倍率を低くし、分子鎖の配向を下げることでもマルテンス硬さを下げることが可能である。
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面層(C)のマルテンス硬さは150N/mm以上であることが好ましく、より好ましくは180N/mm以上であり、さらに好ましくは220N/mm以上であり、よりさらに好ましくは240N/mm以上であり、よりさらに好ましくは260N/mm以上である。
表面層(C)の表面のマルテンス硬さは、ダイナミック超微小硬度計を使用し、曲率半径0.1μm以下の針先で表面0.1μm程押し込んだ時の表面層(B)の硬さを示すものである。マルテンス硬さが大きいことは、表面層(C)が硬いことを示し、表面層(C)の表面に形成された突起部の沈み込みが小さく、表面層(B)と他の表面層との接触面積が小さい状態が維持され、滑り性や耐ブロッキング性が向上し、ひいてはフィルムの巻き品位の向上につながる。
【0067】
(算術平均粗さ)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの表面層(B)の表面の算術平均粗さ(Ra)が1.5nm以上、3.0nm以下であることが好適である。算術平均粗さ(Ra)は2.9nm以下がさらに好ましく、2.8nm以下がより好ましく、2.7nm以下が特に好ましい。算術平均粗さ(Ra)は3.0nm以下の場合、蒸着層やコート層が突起部分での抜けが発生しにくく、ガスバリア性などに優れる。
表面層(B)の表面の算術平均粗さ(Ra)は1.8nm以上がより好ましく、2.0nm以上がさらに好ましく、2.2nm以上が特に好ましく、2.3nm以上が最も好ましい。算術平均粗さ(Ra)は1.5nm以上であると蒸着層やコート層との密着性が向上し、ガスバリア性などに優れる。
また本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面層(C)の表面の算術平均粗さ(Ra)が3.5nm以上、5.5nm以下であることが好適である。算術平均粗さ(Ra)が3.5nm以上であると、蒸着やコーティング、ラミネートなどでの加工において、密着力が低下しにくい。算術平均粗さ(Ra)が5.5nm以下の場合、蒸着やコーティングで抜けが発生しにくく、バリア性などに優れる。
表面層(C)の表面の算術平均粗さ(Ra)は3.6nm以上がより好ましく、3.7nm以上がさらに好ましく、3.8nm以上が特に好ましく、3.9nm以上が最も好ましい。
【0068】
(表面抵抗値)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面層(B)、表面層(C)の表面の表面抵抗値は14LogΩ以上であることが好ましい。表面抵抗値は14LogΩ以上であることが蒸着膜やコーティング膜、接着剤との密着性の点でより好ましい。表面抵抗値は14.5LogΩ以上であるのがさらに好ましく、15LogΩ以上であることが特に好ましい。このためには界面活性剤を過剰に含ませないことが好ましい。表面抵抗値は18LogΩ以下であることが好ましく、17LogΩ以下であることがより好ましい。
【0069】
(ヘイズ)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムのヘイズは、6%以下が好ましく、0.2%以上、5.0%以下がより好ましく、0.3以上、4.5%がさらに好ましく、0.4%以上、4.0%が特に好ましい。上記範囲であると透明が要求される用途で使いやすくなることがある。ヘイズは例えば延伸温度、熱固定温度が高すぎる場合、冷却ロール温度が高く未延伸(原反)シートの冷却速度が遅い場合、低分子量成分が多すぎる場合に悪くなる傾向があり、これらを調節することで上記の範囲内とすることが出来る。
【0070】
(引張弾性率)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの縦方向の引張弾性率は、1.5GPa以上、5.0GPa以下であることが好ましく、1.8GPa以上、5.0GPa以下であることがより好ましく、2.0GPa以上、4.0GPa以下であることがさらに好ましく、2.1GPa以上、3.5GPa以下が特に好ましい。
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムの幅方向の引張弾性率は、3.0GPa以上、8.0GPa以上であることが好ましく、3.2GPa以上、7.0GPa以下であることがより好ましく、3.5GPa以上、6.5GPa以下であることがさらに好ましく、3.8GPa以上、6.5GPa以下であることが特に好ましく、4.0GPa以上、6.5GPa以下であることが最も好ましい。
引張弾性率が上記範囲であれば、腰が強くなり、フィルム厚みが小さくても使用できるため、フィルムの使用量を減らすことが可能となる。引張弾性率の測定方法は後述する。
【0071】
(熱収縮率)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムにおいては、150℃での縦方向の熱収縮率は0.2%以上、15.0%以下であることが好ましく、0.3%以上、13.0%以下がより好ましく、0.5%以上、9.0%以下であることがさらに好ましく、1.0%以上、8.0%以下であることが特に好ましい。熱収縮率が上記範囲であれば、耐熱性に優れたフィルムということができ、高温にさらされる可能性のある用途でも使用できる。なお、150℃熱収縮率は1.5%程度までなら、例えば低分子量成分を多くする、延伸条件、熱固定条件を調整することで可能である。
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムにおいては、150℃での幅方向の熱収縮率は0.5%以上、20.0%以下であることが好ましく、1.0%以上、15.0%以下がより好ましく、1.5%以上、10.0%以下であることがさらに好ましく、1.8%以上、8.0%以下であることが特に好ましい。熱収縮率が上記範囲であれば、耐熱性に優れたフィルムということができ、高温にさらされる可能性のある用途でも使用できる。なお、150℃熱収縮率は1.5%程度までなら、例えば低分子量成分を多くする、延伸条件、熱固定条件を調整することで可能である。
【0072】
(積層フィルム)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムのガスバリア性や意匠性を高めたいときは、
蒸着層やコート層を設けるのが好ましい。
蒸着層の材料はアルミニウム、Al、SiOx(X<2)、AlとSiOの混合物やAlとSiOの混合物等などが挙げられる。
コート層の材料はポリ塩化ビニリデン、ナイロン、エチレンービニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。蒸着層やコート層は薄膜層であることが好ましい。蒸着層の場合は5~40nmであることが好ましく、10~30nmであることがより好ましい。コート層の場合は0.05~0.5g/mのコート量が好ましく、0.10~0.3g/mのコート量がより好ましい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの表面に設けた蒸着層は部分的にしか剥がれがないのが好ましく、全く剥がれがないのがより好ましい。また、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの表面に設けたコート層は部分的にしかハジキがないのが好ましく、ハジキがないのがより好ましい。
【0073】
(蒸着層の作製方法)
蒸着層の作製には、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法などのPVD法(物理蒸着法)、あるいは、CVD法(化学蒸着法)などの公知の製法が適宜用いられるが、物理蒸着法であることが好ましく、真空蒸着法であることがより好ましい。例えば、真空蒸着法においては、蒸着源材料としてアルミニウム、Al、SiOx(X<2)、Al2O3とSiO2の混合物やAlとSiO2の混合物等が用いられ、加熱方式としては、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビ-ム加熱等を用いることができる。また、反応性ガスとして、酸素、窒素、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着を用いてもよい。また、フィルム基材にバイアス等を加えたり、フィルム基材の温度を上げたり、あるいは、下げたりしたり等、本発明の目的を損なわない限りにおいて、作製条件を変更してもよい。スパッター法やCVD法等のほかの作製法でも同様である。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、包装用に限定されず、コンデンサーやモーターなどの絶縁フィルム、太陽電池のバックシーのベースフィルムとして用いることも可能である。
【0074】
(積層体)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルム又はそれに蒸着層やコート層を設けたものと、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリエステルからなる未延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムとの積層体を使用して、包装袋に加工するのが好ましい。
【0075】
(ラミネート積層体の作製方法)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムにヒートシール性を有するポリオレフィン系樹脂層を設けた積層体を使用して飲食品、医薬品、洗剤、シャンプ-、オイル、歯磨き、接着剤、粘着剤等の化学品ないし化粧品、その他の種々の物品の充填包装適性、保存適性等に優れた包装容器を製造することができる。
ヒートシール性を有するポリオレフィン系樹脂層としは熱によって溶融し相互に融着し得る樹脂のフィルムないしシ-トを使用することができ、具体的には、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマ-樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマ-、ポリブテンポリマ-、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマ-ル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、その他の各種の樹脂のフィルムないしシ-トを使用することができる。代表的なものは直鎖状(線状)低密度
ポリエチレンあるいはポリプロピレンからなるフィルムないしはシートである。
【0076】
ラミネート積層体の温度23℃、相対湿度65%下における酸素透過度の上限は、50mL/m/day/MPaであることが好ましく、より好ましくは30mL/m/day/MPaであり、さらに好ましくは20mL/m/day/MPaであり、特に好ましくは15mL/m/day/MPaである。酸素透過度の上限が50mL/m/day/MPaであると、酸素により劣化する物質や食品の保存性に優れる。温度23℃、湿度65%における積層ポリプロピレンフィルムの酸素透過度の下限は、特に限定されないが、好ましくは0.1mL/m/day/MPaである。また、製造上の点から、0.1mL/m/day/MPaが下限と考える。
【実施例
【0077】
以下、実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施する場合は、本発明に含まれる。
【0078】
(測定方法)
実施例および比較例で用いた原料や得られたフィルム物性の測定方法は、以下の通りである。
【0079】
1)メソペンタッド分率([mmmm]単位:%)
メソペンタッド分率の測定は、13C-NMRを用いて行った。メソペンタッド分率は、「Zambelliら、Macromolecules,第6巻,925頁(1973)」に記載の方法に従って算出した。13C-NMR測定は、BRUKER社製「AVANCE500」を用い、試料200mgをo-ジクロロベンゼンと重ベンゼンの8:2(体積比)の混合液に135℃で溶解し、110℃で行った。
【0080】
2)メルトフローレート([MFR]g/10分)
JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgfで測定した。
原料樹脂の場合はペレット(パウダー)をそのまま必要量を秤り取って用いた。
フィルムの場合は必要量切り出した後、約5mm角にカットしたサンプルを用いた。
【0081】
3)分子量および分子量分布
原料樹脂及びフィルムの分子量および分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて単分散ポリスチレン基準により求めた。GPC測定での使用カラム、溶媒等の測定条件は以下のとおりである。
溶媒:1,2,4-トリクロロベンゼン
カラム:TSKgel GMHHR-H(20)HT×3
流量:1.0ml/min
検出器:RI
測定温度:140℃
【0082】
数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)は、それぞれ、分子量校正曲線を介して得られたGPC曲線の各溶出位置の分子量(M)の分子数(N)により次式で定義される。
数平均分子量:Mn=Σ(N・M)/ΣN
質量平均分子量:Mw=Σ(N・M )/Σ(N・M
分子量分布:Mw/Mn
ベースラインが明確でないときは、標準物質の溶出ピークに最も近い高分子量側の溶出ピークの高分子量側のすそ野の最も低い位置までの範囲でベースラインを設定することとした。
【0083】
4)融解ピーク温度(℃)、融解ピーク面積(J/g)
SII製示差走査型熱量計(DSC)を用い、サンプル量10mg、昇温速度20℃/分で測定した。DSC曲線から融解吸熱ピーク温度と融解ピーク面積を求めた。
【0084】
5)厚み(μm)
基材層(A)と表面層(B)各層の厚みは、二軸延伸積層ポリプロピレン系フィルムを変性ウレタン樹脂で固めたものの断面をミクロトームで切り出し、微分干渉顕微鏡で観察して、測定した。
【0085】
6)ヘイズ(%)
JIS K 7105に準じて23℃で測定した。ヘイズメータ(日本電色工業株式会社製、300A)を用いて測定した。なお、測定は2回行い、その平均値を求めた。
【0086】
7)引張弾性率(GPa)
JIS K 7127に準じて測定した。フィルムの縦方向および幅方向に幅10mm、長さ180mmの試料を、剃刀を用いて切り出して試料とした。23℃、65%RHの雰囲気下で12時間放置したあと、測定は23℃、65%RHの雰囲気下、チャック間距離100mm、引っ張り速度200mm/分の条件で行い、5回の測定結果の平均値を用いた。測定装置としては島津製作所社製オートグラフAG5000Aを用いた。
【0087】
8)熱収縮率
JISZ1712に準拠して以下の方法で測定した。フィルムを20mm巾で200mmの長さでフィルムの縦方向、幅方向にそれぞれカットし、150℃の熱風オーブン中に吊るして5分間加熱した。加熱後の長さを測定し、元の長さに対する収縮した長さの割合で熱収縮率を求めた。
【0088】
9)濡れ張力(mN/m)
K 6768 :1999に順じて、フィルムを23℃、相対湿度 50%で24時間エージング後、下記手順でフィルムの表面層(B)、及び表面層(C)の表面を測定した。
手順1)
測定は,温度 23℃,相対湿度 50%の標準試験室雰囲気(JIS K 7100 参照)で行う。
手順2)
試験片をハンドコータ(4.1)の基板の上に置き,試験片の上に試験用混合液を数滴滴下して,直ちにワイヤバーを引いて広げる。
綿棒又はブラシを使用して試験用混合液を広げる場合は,液体は少なくとも 6cm以上の面積に速やかに広げる。液体の量は,たまりを作らないで,薄層を形成する程度にする。
濡れ張力の判定は,試験用混合液の液膜を明るいところで観察し,3 秒後の液膜の状態で行う。液膜破れを生じないで,3秒以上,塗布されたときの状態を保っているのは,ぬれていることになる。濡れが3秒以上保つ場合は,さらに,次に表面張力の高い混合液に進み,また逆に、3秒以下で液膜が破れる場合は,次の表面張力の低い混合液に進む。
この操作を繰り返し,試験片の表面を正確に、3秒間で濡らすことができる混合液を選ぶ。
手順3)
各々の試験には,新しい綿棒を使用する。ブラシ又はワイヤバーは,残留する液体が蒸発によって組成及び表面張力を変化させるので,使用ごとにメタノールで洗浄し,乾燥させる。
手順4)
試験片の表面を3秒間でぬらすことができる混合液を選ぶ操作を少なくとも 3回行う。このようにして選ばれた混合液の表面張力をフィルムの濡れ張力として報告する。
【0089】
10)表面抵抗値(LogΩ)
JIS K6911に準拠し、フィルムを23℃、24時間エージング後、フィルムの表面層(B)面を測定した。
【0090】
10)マルテンス硬さ(N/mm
得られたフィルムを約2cm角に切り取り、厚さが約1mmのガラス板上に、測定面の反対面を粘着剤にて固定した後、23℃、50%RHの雰囲気下で12時間放置して調湿した。測定面は表面層(B)、及び表面層(C)とした。この試料について、ダイナミック超微小硬度計(島津製作所製の「DUH-211」を用いて、ISO14577-1(2002)に準拠した方法により、下記測定条件で測定した。測定はフィルムの位置を変えて10回行い、最大と最小を除いた8点の平均値を求めた。
【0091】
<測定条件>
(設定)
・測定環境:温度23℃・相対湿度50%
・試験モード:負荷-除荷試験
・使用圧子:稜間角115度、三角錐圧子
・圧子弾性率:1.140×106N/mm
・圧子ポアソン比:0.07
・Cf-Ap,As補正:あり
(条件)
・試験力:0.10mN
・負荷速度:0.0050mN/sec
・負荷保持時間:5sec
・除荷保持時間:0sec
【0092】
11)突起数
得られたフィルムの表面層(B)、及び表面層(C)の表面積2000μm中に500nm以上の突起数は、三次元粗さ計(小坂研究所社製、型番ET-30HK)を使用し、触針圧20mgにて、X方向の測定長さ1mm、送り速さ100μm/秒、Y方向の送りピッチ2μmで収録ライン数99本、高さ方向倍率20000倍、カットオフ80μmの測定を行い、基準高さからの高さを算出し、500nm以上の突起数を計算した。
突起数はそれぞれ3回の試行を行い、その平均値で評価した。
【0093】
12)算術平均粗さ(Ra)(nm)
得られたフィルムの表面層(B)上、及び表面層(C)表面の算術平均粗さ(Ra)は、走査型プローブ顕微鏡(島津製作所製「SPM-9700」)を用いて測定した。ダイナミックモードにてX、Y方向の測定長さが共に2μmの範囲で測定し、得られた画像を補正(傾き、ラインフィット、ノイズライン除去)後、JIS-B0601(1994)に記載の算術平均粗さの定義に準じて求めた。
【0094】
13)表面抵抗値(LogΩ)
JIS K6911に準拠し、フィルムを23℃、24時間エージング後、フィルムの表面層(B)面を測定した。
【0095】
14)フィルムロールシワ評価
製膜した二軸配向ポリプロピレンフィルムを幅600mm、巻長1500mで巻き取り、下記基準でロール表層にあるシワの評価を目視で行い判定した。◎、○を合格とした。
◎:シワがない。
〇:弱いシワがあるが、引き出したフィルムに張力を5N/m程度をかけるとシワが消える。
△:弱いシワがあるが、引き出したフィルムに張力を20N/m程度をかけるとシワが消える。
×:強いシワがあり、引き出したフィルムに張力を20N/m程度をかけてもシワが消えない。
【0096】
15)コート適性評価
ブタンジオールビニルアルコール共重合体(日本合成化学工業株式会社製、ニチゴ-G-ポリマーOKS-8049)をイソプロピルアルコール15%水溶液に溶解させ、固形分濃度5%のコート液を調合した。フィルムロールから切り取ったフィルムの表面層(B)上、及び表面層(C)上に調合したコート液を垂らし、マイヤーバー#3でドライ0.2g/mのコート量となるようにコートした。その後ドライヤーで十分に溶液を揮発させ、コート層のハジキの評価を目視で行った。判定◎、○を合格とした。
◎:コート層のハジキがない
〇:コート層のハジキが9割ないが、僅かに微小なハジキがある
△:コート層のハジキが部分的にあり、コートハジキがない割合が9割未満
×:コート層のハジキが全面にある
【0097】
16)アルミニウム蒸着膜密着評価
フィルムロールから繰り出したフィルムの表面層(B)、及び表面層(C)上に、小型真空蒸着装置(アルバック機工株式会社製、VWR-400/ERH)を使用してアルミニウム膜厚30nmとなるように蒸着を行った。得られた蒸着フィルムの蒸着面にニチバン社製セロテープ(登録商標)18mm幅使用して90°剥離法によりアルミニウム蒸着膜の密着状態を評価した。判定〇を合格とした。
○:アルミニウム蒸着膜の剥がれがない
△:部分的にアルミニウム蒸着膜の剥がれがある
×:全面にアルミニウム蒸着膜の剥がれがある
【0098】
(原料樹脂)
下記実施例、比較例で使用したポリプロピレン系樹脂原料の詳細、フィルム製膜条件を表1~3に示す。
アンチブロッキング剤として使用するシリコーン粒子のマスターバッチはポリプロピレン樹脂として、表1に示すMn=56,000、Mw=310,000、MFR=2.5g/10分、メソペンタッド分率[mmmm]=94.8%であるプロピレン単独重合体(日本ポリプロ(株)製 ノバテック(登録商標)PP「FL203D」:共重合モノマー量は0mol%;以下「PP-1」と略する)を用い、アンチブロッキング剤として使用しているシリコーン粒子は粒子径2.0μm、アンチブロッキング剤含有量は50,000ppmとした。また、表2記載のシリカ粒子のマスターバッチは粒子径2.7μm、アンチブロッキング剤含有量は50,000ppmとした。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
【表3】
【0102】
(実施例1)
基材層(A)には表1に示すMn=81,000、Mw=320,000、MFR=2.2g/10分、メソペンタッド分率[mmmm]=99.2%であるプロピレン単独重合体(住友化学(株)製 PP「FS2012」:共重合モノマー量は0mol%;以下「PP-2」と略する)を30.0重量%、Mn=65,000、Mw=240,000、MFR=7.5g/10分、メソペンタッド分率[mmmm]=98.9%であるプロピレン単独重合体(住友化学(株)製 PP「FLX80E4」:共重合モノマー量は0mol%;以下「PP-3」と略する)を70.0重量%の割合で配合したものを使用した。
また、表面層(B)には、Mn=59,000、Mw=310,000、MFR=5.3g/10分、であるプロピレン重合体((株)プライムポリマー製プライムポリプロ「F―300SP」:「PP-5」と略する)を96.0重量%、表2に示すマスターバッチAを4.0重量%の割合で配合したものを使用した。
また、表面層(C)には表1に示すMn=80,000、Mw=220,000、MFR=7.0g/10分、であるプロピレン-エチレン共重合体(日本ポリプロ(株)製ウィンテック(登録商標)PP「WFX4M」:「PP-4」と略する)を52.0重量%、PP-1を45.0%、表2に示すマスターバッチAを重量3.0%の割合で配合したものを使用した。
基材層(A)は45mm押出機、表面層(B)は25mm押出機、表面層(C)は20mm押出機を用いて、それぞれ原料樹脂を250℃で溶融し、Tダイからシート状に共押し出しし、40℃の冷却ロールに表面層(B)が接触するよう冷却固化した後、125℃縦方向(MD)に4.5倍に延伸した。次いでテンター内で、フィルム幅方向(TD)両端をクリップで挟み、167℃で予熱後、163℃で幅方向(TD)に8.2倍に延伸し、幅方向(TD)に6.7%緩和させながら、169℃で熱固定した。このときの製膜条件を製膜条件aとした。
こうして、表面層(B)/基材層(A)/表面層(C)の構成の二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。
二軸配向ポリプロピレンフィルムの表面層(B)と表面層(C)の表面を、ソフタル・コロナ・アンド・プラズマGmbH社製のコロナ処理機を用いて、印加電流値:0.75Aの条件で、コロナ処理を施した後、ワインダーで巻き取った。得られたフィルムの厚みは20μm(表面層(B)/基材層(A)/表面層(C)の厚みが1.0μm/17.7μm/1.3μm)であった。
【0103】
(実施例2)
表面層(B)に表2に示すマスターバッチAを3.0重量%、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-5を97.0重量%の割合で配合したもの使用した。
また、表面層(C)には、表2に示すマスターバッチAを4.0重量%、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-5を44.0重量%、表1に示すエチレン共重合ポリプロピレン重合体PP-4を52.0重量%の配合で作成し、それ以外は実施例1と同じ条件とし、20μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。
【0104】
(実施例3)
基材層(A)の厚みを17.2μm、表面層(B)の厚みを1.0μm、表面層(C)の厚みを1.8μmとなるように押出機からの樹脂の吐出量を調整した以外は実施例1と同じ条件とし、20μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。
【0105】
(実施例4)
基材層(A)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を100重量%使用した。
また、表面層(B)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-5を96.0重量%、表2に示すマスターバッチAを4.0重量%の割合で配合したものを使用した。
また、表面層(C)には表1に示すエチレン共重合ポリプロピレン重合体PP-4を52.0重量%、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を45.0%、表2に示すマスターバッチAを重量3.0%の割合で配合したものを使用した。
基材層(A)は45mm押出機、表面層(B)は25mm押出機、表面層(C)は20mm押出機を用いて、それぞれ原料樹脂を250℃で溶融し、Tダイからシート状に共押し出しし、30℃の冷却ロールに表面層(B)が接触するよう冷却固化した後、125℃縦方向(MD)に4.5倍に延伸した。次いでテンター内で、フィルム幅方向(TD)両端をクリップで挟み、168℃で予熱後、155℃で幅方向(TD)に8.2倍に延伸し、幅方向(TD)に6.7%緩和させながら、165℃で熱固定した。このときの製膜条件を製膜条件bとした。
こうして、表面層(B)/基材層(A)/表面層(C)の構成の二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。
二軸配向ポリプロピレンフィルムの表面層(B)と表面層(C)の表面を、ソフタル・コロナ・アンド・プラズマGmbH社製のコロナ処理機を用いて、印加電流値:0.75Aの条件で、コロナ処理を施した後、ワインダーで巻き取った。得られたフィルムの厚みは20μm(表面層(B)/基材層(A)/表面層(C)の厚みが1.0μm/17.7μm/1.3μm)であった。
【0106】
(実施例5)
表面層(B)に表2に示すマスターバッチAを3.0重量%、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-5を97.0重量%の割合で配合したもの使用した。
また、表面層(C)に表2に示すマスターバッチAを4.0重量%、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-5を44.0重量%、表1に示すエチレン共重合ポリプロピレン重合体PP-4を52.0重量%の配合で作成し、それ以外は実施例4と同じ条件とし、20μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。
【0107】
(比較例1)
表面層(B)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を43.2重量%、表1に示すエチレン共重合ポリプロピレン重合体PP-3を52.0重量%、表2に示すマスターバッチBを4.8重量%の割合で配合したものを使用し、表面層(C)には表2に示すマスターバッチBを6.4重量%、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を93.6重量%を使用した以外は実施例4と同じ条件とし、20μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。
【0108】
(比較例2)
基材層(A)の厚みを15.1μm、表面層(B)の厚みを3.9μmとなるように押出機からの樹脂の吐出量を調整した以外は比較例1と同じ条件とし、20μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。
【0109】
(比較例3)
表面層(B)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を45.0重量%、表1に示すエチレン共重合ポリプロピレン重合体PP-3を52.0重量%、表2に示すマスターバッチBを3.0重量%の割合で配合したものを使用した以外は比較例1と同じ条件とし、20μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。
【0110】
(比較例4)
表面層(B)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を1.2重量%、表1に示すエチレン共重合ポリプロピレン重合体PP-3を94.0重量%、表2に示すマスターバッチBを4.8重量%の割合で配合したものを使用した以外は比較例1と同じ条件とし、20μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。
【0111】
(比較例5)
フィルム製膜条件を下記に変更した以外は比較例4と同じ条件とし、20μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。
基材層(A)は45mm押出機、表面層(B)は25mm押出機、第2の表面層(B)は20mm押出機を用いて、それぞれ原料樹脂を250℃で溶融し、Tダイからシート状に共押し出しし、30℃の冷却ロールに表面層(B)が接触するよう冷却固化した後、125℃縦方向(MD)に4.5倍に延伸した。次いでテンター内で、フィルム幅方向(TD)両端をクリップで挟み、175℃で予熱後、166で幅方向(TD)に8.2倍に延伸し、幅方向(TD)に6.7%緩和させながら、171℃で熱固定した。
このときの製膜条件を製膜条件cとした。
【0112】
(比較例6)
表面層BにはPP-1を95.2重量%、マスターバッチBを4.8重量%の割合で配合した以外は比較例1と同じ条件とし、20μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。
【0113】
上記実施例、比較例で使用したフィルムの原料・製造方法、物性を表4-1、表4-2、表5-1、表5-2に示す。
【0114】
【表4-1】
【0115】
【表4-2】
【0116】
【表5-1】
【0117】
【表5-2】
【0118】
実施例1~5で得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムは、フィルムロールにはシワがなく、優れたものであった。また、アルミニウム蒸着層の剥がれがなく、コート液のハジキもない密着性に優れるものであった。
それに対して、比較例1~6のフィルムは、いずれもロールの巻き品位及び/又は密着性や状態に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、二軸配向ポリプロピレンフィルムが本来有している優れた透明性や機械的特性を損なうことなく、フィルムの巻き品位に優れ、蒸着層やコート層、他部材フィルムとのラミネートにおける接着剤層との密着性に優れる。
故に、加工原反に適したものである。菓子などに使用される食品包装用やラベル、工業用フィルム等に使用可能である。また、安価にフィルムを製造できるため、産業上有用である。