(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】エッチング液管理システム、エッチング液管理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
H01L21/306 A
(21)【出願番号】P 2024021207
(22)【出願日】2024-02-15
【審査請求日】2024-02-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】合田 歩美
(72)【発明者】
【氏名】和田 晋一
(72)【発明者】
【氏名】太田 真司
(72)【発明者】
【氏名】横田 涼輔
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-200942(JP,A)
【文献】特表2020-520096(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112864042(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第116130351(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジストの複数の開口部各々におけるエッチング液の流速を示す流速情報を取得する流速取得部と、
前記エッチング液の状態を示す液状態情報を取得する状態取得部と、
前記状態取得部が取得した前記液状態情報と、前記流速取得部が取得した前記流速情報と、前記複数の開口部各々の形状を示す形状情報とを少なくとも用いて、前記複数の開口部各々におけるエッチングの深さを推定するエッチング推定部と、
前記エッチング推定部が推定した前記複数の開口部各々におけるエッチングの深さに基づき、前記液状態情報に対応するエッチング液を用いた場合のエッチング結果を評価する評価部と、
前記評価部による評価に少なくとも基づき、前記エッチング液に関する調整指示を決定するエッチング液調整部と
を備える、エッチング液管理システム。
【請求項2】
前記液状態情報は、前記エッチング液のORP値、温度、濃度のいずれかを少なくとも含む、請求項1に記載のエッチング液管理システム。
【請求項3】
前記形状情報は、前記複数の開口部各々の開口幅、レジスト厚のいずれかを少なくとも含む、請求項1に記載のエッチング液管理システム。
【請求項4】
前記流速情報は、流速ベクトルである、請求項1に記載のエッチング液管理システム。
【請求項5】
前記評価部は、前記エッチングの深さの前記複数の開口部の間での分布に関する特徴量に基づき、前記エッチング結果を評価する、請求項1に記載のエッチング液管理システム。
【請求項6】
レジストの複数の開口部各々におけるエッチング液の流速を示す流速情報を取得する第1のステップと、
前記エッチング液の状態を示す液状態情報を取得する第2のステップと、
前記第2のステップにおいて取得した前記液状態情報と、前記第1のステップにおいて取得した前記流速情報と、前記複数の開口部各々の形状を示す形状情報とを少なくとも用いて、前記複数の開口部各々におけるエッチングの深さを推定する第3のステップと、
前記第3のステップにおいて推定した前記複数の開口部各々におけるエッチングの深さに基づき、前記液状態情報に対応するエッチング液を用いた場合のエッチング結果を評価する第4のステップと、
前記第4のステップによる評価に少なくとも基づき、前記エッチング液に関する調整指示を決定する第5のステップと
を有する、エッチング液管理方法。
【請求項7】
コンピュータを、
レジストの複数の開口部各々におけるエッチング液の流速を示す流速情報を取得する流速取得部、
前記エッチング液の状態を示す液状態情報を取得する状態取得部、
前記状態取得部が取得した前記液状態情報と、前記流速取得部が取得した前記流速情報と、前記複数の開口部各々の形状を示す形状情報とを少なくとも用いて、前記複数の開口部各々におけるエッチングの深さを推定するエッチング推定部、
前記エッチング推定部が推定した前記複数の開口部各々におけるエッチングの深さに基づき、前記液状態情報に対応するエッチング液を用いた場合のエッチング結果を評価する評価部、
前記評価部による評価に少なくとも基づき、前記エッチング液に関する調整指示を決定するエッチング液調整部
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング液管理システム、エッチング液管理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ウェットエッチングは、銅などのエッチング基材のレジストにより覆われていない部分(開口部)を、エッチング液により腐食させることで、エッチング基材を所望の形にする加工方法である。エッチング液は繰り返し使用されることがあるが、エッチング液には、腐食されたエッチング基材が溶けていくため、使用により成分が変化する。このため、特許文献1では、エッチング液などの薬液を、所定の濃度に維持する薬液管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、所定の濃度に維持する薬液管理システムにおいては、所望のエッチング結果が得られないことがあるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、所望のエッチング結果が得られる割合を従来よりも高くできるエッチング液管理システム、エッチング液管理方法、およびプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明の一態様は、レジストの複数の開口部各々におけるエッチング液の流速を示す流速情報を取得する流速取得部と、前記エッチング液の状態を示す液状態情報を取得する状態取得部と、前記状態取得部が取得した前記液状態情報と、前記流速取得部が取得した前記流速情報と、前記複数の開口部各々の形状を示す形状情報とを少なくとも用いて、前記複数の開口部各々におけるエッチングの深さを推定するエッチング推定部と、前記エッチング推定部が推定した前記複数の開口部各々におけるエッチングの深さに基づき、前記液状態情報に対応するエッチング液を用いた場合のエッチング結果を評価する評価部と、前記評価部による評価に少なくとも基づき、前記エッチング液に関する調整指示を決定するエッチング液調整部とを備える、エッチング液管理システムである。
【0007】
また、本発明の他の一態様は、上述したエッチング液管理システムであって、前記液状態情報は、前記エッチング液のORP(Oxidation-Reduction Potential)値、温度、濃度のいずれかを少なくとも含む。
【0008】
また、本発明の他の一態様は、上述したエッチング液管理システムであって、前記形状情報は、前記複数の開口部各々の開口幅、レジスト厚のいずれかを少なくとも含む。
【0009】
また、本発明の他の一態様は、上述したエッチング液管理システムであって、前記流速情報は、流速ベクトルである。
【0010】
また、本発明の他の一態様は、上述したエッチング液管理システムであって、前記評価部は、前記エッチングの深さの前記複数の開口部の間での分布に関する特徴量に基づき、前記エッチング結果を評価する。
【0011】
また、本発明の他の一態様は、レジストの複数の開口部各々におけるエッチング液の流速を示す流速情報を取得する第1のステップと、前記エッチング液の状態を示す液状態情報を取得する第2のステップと、前記第2のステップにおいて取得した前記液状態情報と、前記第1のステップにおいて取得した前記流速情報と、前記複数の開口部各々の形状を示す形状情報とを少なくとも用いて、前記複数の開口部各々におけるエッチングの深さを推定する第3のステップと、前記第3のステップにおいて推定した前記複数の開口部各々におけるエッチングの深さに基づき、前記液状態情報に対応するエッチング液を用いた場合のエッチング結果を評価する第4のステップと、前記第4のステップによる評価に少なくとも基づき、前記エッチング液に関する調整指示を決定する第5のステップとを有する、エッチング液管理方法である。
【0012】
また、本発明の他の一態様は、コンピュータを、レジストの複数の開口部各々におけるエッチング液の流速を示す流速情報を取得する流速取得部、前記エッチング液の状態を示す液状態情報を取得する状態取得部、前記状態取得部が取得した前記液状態情報と、前記流速取得部が取得した前記流速情報と、前記複数の開口部各々の形状を示す形状情報とを少なくとも用いて、前記複数の開口部各々におけるエッチングの深さを推定するエッチング推定部、前記エッチング推定部が推定した前記複数の開口部各々におけるエッチングの深さに基づき、前記液状態情報に対応するエッチング液を用いた場合のエッチング結果を評価する評価部、前記評価部による評価に少なくとも基づき、前記エッチング液に関する調整指示を決定するエッチング液調整部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、所望のエッチング結果が得られる割合を従来よりも高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明の一実施形態によるウェットエッチングシステム100の構成を示す概略ブロック図である。
【
図2】同実施形態におけるエッチング液管理システム60の機能構成を示す概略ブロック図である。
【
図3】同実施形態におけるエッチングシミュレート部61によるシミュレーション結果の例を示す図である。
【
図4】同実施形態におけるエッチング液管理システム60の動作例を説明するフローチャートである。
【
図5】同実施形態のおけるエッチング推定部66の動作例を説明するフローチャートである。
【
図6】同実施形態の変形例におけるエッチング液管理システム60aの機能構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、この発明の一実施形態によるウェットエッチングシステム100の構成を示す概略ブロック図である。ウェットエッチングシステム100は、エッチング液を調整しながら、繰り返し使用してウェットエッチングを行う。本実施形態では、ウェットエッチングシステム100は、エッチング液として塩化鉄(III)水溶液を用いて、エッチング基材である銅を腐食させてエッチングしているが、その他のエッチング液(例えば、王水、フッ酸など)、あるいはエッチング基材(例えば、その他の金属、ガラス、半導体など)が用いられてもよい。
【0016】
ウェットエッチングシステム100は、ウェットエッチング装置10、調整タンク20、水タンク30、塩酸タンク40、鉄液タンク50、エッチング液管理システム60を備える。ウェットエッチング装置10は、調整タンク20から供給されたエッチング液を用いて、ウェットエッチングを行い、使用したエッチング液を調整タンク20に戻す。
【0017】
調整タンク20は、エッチング液を貯蔵しており、エッチング液をウェットエッチング装置10に供給する。また、調整タンク20には、ウェットエッチング装置10で使用されたエッチング液、水タンク30の水、塩酸タンク40の塩酸、鉄液タンク50の鉄液(塩化鉄(III)溶液、塩化第二鉄溶液)が供給される。また、調整タンク20に貯蔵されているエッチング液の一部は、廃液として廃棄される。なお、調整タンク20への水タンク30の水、塩酸タンク40の塩酸、鉄液タンク50の鉄液各々の供給量、および廃液の量は、エッチング液管理システム60からの調整指示により制御される。
【0018】
水タンク30は、水を貯蔵し、エッチング液管理システム60からの調整指示に従い、調整タンク20に水を供給する。塩酸タンク40は、塩酸を貯蔵し、エッチング液管理システム60からの調整指示に従い、調整タンク20に塩酸を供給する。鉄液タンク50は、鉄液を貯蔵し、エッチング液管理システム60からの調整指示に従い、調整タンク20に鉄液を供給する。
【0019】
エッチング液管理システム60は、調整タンク20に貯蔵されているエッチング液の状態を示す液状態情報を取得し、該液状態情報に基づきウェットエッチング装置10によるエッチングの結果を推定する。エッチング液管理システム60は、この推定結果を評価し、該評価結果に少なくとも基づき、水タンク30の水、塩酸タンク40の塩酸、鉄液タンク50の鉄液各々の調整タンク20へ供給量、および調整タンク20からの廃液の量を制御する。なお、エッチング液管理システム60は、1つまたは複数のコンピュータがプログラムを読み込み実行することで実現されてもよい。
【0020】
図2は、本実施形態におけるエッチング液管理システム60の機能構成を示す概略ブロック図である。エッチング液管理システム60は、エッチングシミュレート部61、エッチング予測モデル生成部62、状態取得部63、流速算出部64、記憶部65、エッチング推定部66、評価部67、エッチング液調整部68を備える。
【0021】
エッチングシミュレート部61は、複数の条件下におけるエッチングのシミュレーション(数値シミュレーション)を行う。このシミュレーションでは、レジストの仮想的な開口部におけるエッチング液によるエッチング基材(金属基板)の腐食の進行がシミュレーションされる。より具体的には、流動と拡散によるエッチング液におけるエッチャント(Fe3+)の濃度分布、銅とエッチャントの反応(FeCl3+Cu→FeCl2+CuCl)、流動と拡散による溶解した銅(Cu+)の濃度分布がシミュレーションされる。なお、複数の条件下の間では、該開口部の形状に関する条件、エッチング液の流速に関する条件、エッチング液の状態に関する条件のいずれかが異なっている。
【0022】
開口部の形状に関する条件は、開口部の形状を示す形状情報により与えられる。形状情報は、開口幅、レジスト厚の少なくとも一部を含んでもよい。エッチング液の流速に関する条件は、エッチング液の流速を示す流速情報により与えられる。流速情報は、開口部におけるエッチング液の流速の絶対値、開口部におけるエッチング液の開口幅方向の流速の絶対値、開口部におけるエッチング液の深さ方向の流速の絶対値、開口部におけるエッチング液の開口幅方向および深さ方向の双方に垂直な方向の流速の絶対値、開口部におけるエッチング液の流速ベクトルの少なくとも一部を含んでもよい。エッチング液の状態に関する条件は、エッチング液の状態を示す液状態情報により与えられる。液状態情報は、エッチング液の温度、ORP(Oxidation-Reduction Potential)値、鉄濃度の少なくとも一部を含んでもよい。ここで、ORP値は、エッチング液に含まれるエッチャントの使用された割合を示す値である。本実施形態においては、エッチング液に含まれるFeイオン(Fe3+とFe2+)のうちのFe3+イオンの割合を示す値である。その他、溶解物の濃度や価数、塩酸濃度の情報を含んでも良い。
【0023】
エッチング予測モデル生成部62は、エッチングシミュレート部61によるシミュレーション結果を用いた機械学習により、エッチング予測モデルを生成する。このエッチング予測モデルは、レジストの開口部の形状に関する条件、エッチング液の流速に関する条件、エッチング液の状態に関する条件、エッチングされている深さから、エッチングの進行速度、あるいは所定の時間後のエッチングの深さを得る。なお、機械学習には、回帰分析、ニューラルネットワークなど、いずれの手法を用いてもよい。
【0024】
状態取得部63は、調整タンク20に貯蔵されているエッチング液の状態を示す液状態情報を取得する。
流速算出部64(流速取得部)は、レジストの複数の開口部各々におけるエッチング液の流速を示す流速情報を取得する。例えば、流速算出部64は、記憶部65からエッチング基材の形状を示す情報を読み出し、該情報と、あらかじめ用意したスプレーノズルや液圧の情報とを用いて、エッチング基材に噴射されたエッチング液の流れを数値シミュレーションする。この数値シミュレーションにより、エッチング基材上のレジストの開口部各々におけるエッチング液の流速が算出される。エッチング基材の形状を示す情報には、エッチング基材に対するエッチング液の噴射位置、エッチング基材を搬送するウェットエッチング装置10のローラの位置などの情報が含まれていてもよい。
【0025】
記憶部65は、ウェットエッチング装置10でエッチングされるエッチング基材の形状を示す情報を記憶する。
エッチング推定部66は、状態取得部63が取得した液状態情報と、流速算出部が取得した流速情報と、レジストの複数の開口部各々の形状を示す形状情報とを少なくとも用いて、複数の開口部各々におけるエッチングの深さを推定する。この推定には、エッチング予測モデル生成部62が生成したエッチング予測モデルを用いる。
【0026】
評価部67は、エッチング推定部66が推定した複数の開口部各々におけるエッチングの深さに基づき、液状態情報に対応するエッチング液を用いた場合のエッチング結果を評価する。例えば、評価部67は、エッチングの深さの複数の開口部間の平均値が、所望の範囲内か否かを判定し、所望の範囲内であれば、エッチング結果が良好であると判定し、所望の範囲内になければ、エッチング結果に問題ありと判定する。また、評価部67は、平均値に加え、エッチングの深さの複数の開口部の間での分布に関する特徴量(例えば、3σ)に基づき、エッチング結果を評価してもよい。
【0027】
エッチング液調整部68は、評価部67による評価に少なくとも基づき、エッチング液に関する調整指示を決定する。エッチング液調整部68は、評価部67がエッチング結果は良好であると判定した場合は、特にエッチング液の調整を行わなくてもよい。また、エッチング液調整部68は、評価部67がエッチング結果は良好であると判定した場合は、エッチング液の液状態情報が変化しないように、水タンク30、塩酸タンク40、鉄液タンク50からの供給、および調整タンク20からの廃液の量を決定してもよい。
【0028】
また、エッチング液調整部68は、評価部67がエッチング結果に問題ありと判定した場合は、水タンク30、塩酸タンク40、鉄液タンク50からの供給、および調整タンク20からの廃液の量を決定し、調整指示とする。なお、これらの量の決定には、エッチング推定部66により推定されたエッチングの深さ、あるいは該深さの分布の特徴量を用いるようにしてもよい。また、これらの量の決定には、回帰分析などの機械学習の手法が用いられてもよい。
【0029】
図3は、本実施形態におけるエッチングシミュレート部61によるシミュレーション結果の例を示す図である。
図3は、1つの開口部に対するシミュレーションにより得られたある時刻におけるエッチング液中のFe
3+の濃度分布を示す図である。
図3の例では、エッチング基材にレジスト厚Tのレジストが塗布され、開口幅Wのレジストの開口部があり、エッチング深さDまで腐食が進んでいる。
【0030】
図4は、本実施形態におけるエッチング液管理システム60の動作例を説明するフローチャートである。まず、エッチングシミュレート部61が、複数の条件下での仮想的な開口部におけるエッチングのシミュレートを行う(ステップSa1)。次に、エッチング予測モデル生成部62は、ステップSa1のシミュレート結果を用いて、エッチング予測モデルを生成する(ステップSa2)。次に、状態取得部63が、調整タンク20に貯蔵されているエッチング液の液状態情報を取得する(ステップSa3)。次に、流速算出部64が、エッチング液の流速を算出する(ステップSa4)。
【0031】
次に、エッチング推定部66が、ステップSa2で生成したエッチング予測モデルを用いてエッチングの深さを推定する(ステップSa5)。次に、評価部67が、ステップSa5で推定したエッチングの深さに基づき、エッチング結果を評価する(ステップSa6)。評価部67による評価が良好である場合(ステップSa7-Yes)、処理を終了し、評価部67による評価が良好でない場合(ステップSa7-No)、エッチング液調整部68が、調整タンク20、水タンク30、塩酸タンク40、鉄液タンク50に対して、エッチング液の調整指示を行う(ステップSa8)。
【0032】
図5は、本実施形態のおけるエッチング推定部66の動作例を説明するフローチャートである。まず、エッチング推定部66は、時刻、エッチングの深さに初期値を設定する(ステップSb1)。次に、エッチング推定部66は、設定時刻における流速情報を流速算出部64から取得する(ステップSb2)。次に、エッチング推定部66は、エッチング予測モデルを用いて、設定時刻においてエッチングの深さが設定された深さである場合に、設定時刻から所定時間t後のエッチングの深さを推定する(ステップSb3)。設定時刻から所定時間t後が終了時刻を過ぎている場合は(ステップSb4-Yes)、エッチング推定部66は、処理を終了する。また、設定時刻から所定時間t後が終了時刻を過ぎていない場合は(ステップSb4-No)、エッチング推定部66は、設定時刻を所定時間t後に変更する(ステップSb5)。次に、エッチング推定部66は、設定時刻におけるエッチングの深さに、ステップSb3で推定した値を設定し(ステップSb6)、ステップSb2に戻る。
【0033】
このように、エッチング推定部66は、エッチングの深さを所定時間tごとに推定する。すなわち、エッチング予測モデルは、ある時刻のエッチングの深さを入力の一部として、該時刻から所定時間t後のエッチングの深さを予測するモデルである。
【0034】
図6は、本実施形態の変形例におけるエッチング液管理システム60aの機能構成を示す概略ブロック図である。
図6において、
図2の各部と同一の部分には、同じ符号を付し、説明を省略する。エッチング液管理システム60aは、状態取得部63、流速算出部64、記憶部65、エッチング推定部66、評価部67、エッチング液調整部68、モデル記憶部69を備える。モデル記憶部69は、エッチング予測モデルを記憶しており、エッチング推定部66は、モデル記憶部69が記憶するエッチング予測モデルを用いて、エッチングの深さを推定する。
【0035】
上述の実施形態および変形例において、エッチング予測モデルを用いてエッチングの深さを推定し、該深さに基づきエッチング結果を評価しているが、深さに加えて角R、サイドエッチング量(エッチング幅)、EF(Etching Factor)の少なくとも1つを推定し、該深さと該角R、該サイドエッチング量(エッチング幅)、該EF(Etching Factor)の少なくとも1つに基づきエッチング結果を評価してもよい。
【0036】
このように、上述の実施形態および変形例におけるエッチング液管理システム60、60aは、液状態情報と、流速情報と、複数の開口部各々の形状を示す形状情報とを少なくとも用いて、複数の開口部各々におけるエッチングの深さを推定するエッチング推定部66と、エッチング推定部66が推定したエッチングの深さに基づき、エッチング結果を評価する評価部67と、評価部67による評価に少なくとも基づき、エッチング液に関する調整指示を決定するエッチング液調整部68とを備える。
これにより、所望のエッチング結果が得られる割合を従来よりも高くできる。
【0037】
また、本発明は、以下のような実施形態であってもよい。
(1)本発明の一実施形態は、レジストの複数の開口部各々におけるエッチング液の流速を示す流速情報を取得する流速取得部と、前記エッチング液の状態を示す液状態情報を取得する状態取得部と、前記状態取得部が取得した前記液状態情報と、前記流速取得部が取得した前記流速情報と、前記複数の開口部各々の形状を示す形状情報とを少なくとも用いて、前記複数の開口部各々におけるエッチングの深さを推定するエッチング推定部と、前記エッチング推定部が推定した前記複数の開口部各々におけるエッチングの深さに基づき、前記液状態情報に対応するエッチング液を用いた場合のエッチング結果を評価する評価部と、前記評価部による評価に少なくとも基づき、前記エッチング液に関する調整指示を決定するエッチング液調整部とを備える、エッチング液管理システムである。
【0038】
(2)また、本発明の他の一実施形態は、(1)に記載のエッチング液管理システムであって、前記液状態情報は、前記エッチング液のORP値、温度、濃度のいずれかを少なくとも含む。
【0039】
(3)また、本発明の他の一実施形態は、(1)または(2)に記載のエッチング液管理システムであって、前記形状情報は、前記複数の開口部各々の開口幅、レジスト厚のいずれかを少なくとも含む。
【0040】
(4)また、本発明の他の一実施形態は、(1)から(3)のいずれかに記載のエッチング液管理システムであって、前記流速情報は、流速ベクトルである。
【0041】
(5)また、本発明の他の一実施形態は、(1)から(4)のいずれかに記載のエッチング液管理システムであって、前記評価部は、前記エッチングの深さの前記複数の開口部の間での分布に関する特徴量に基づき、前記エッチング結果を評価する。
【0042】
(6)また、本発明の他の一実施形態は、レジストの複数の開口部各々におけるエッチング液の流速を示す流速情報を取得する第1のステップと、前記エッチング液の状態を示す液状態情報を取得する第2のステップと、前記第2のステップにおいて取得した前記液状態情報と、前記第1のステップにおいて取得した前記流速情報と、前記複数の開口部各々の形状を示す形状情報とを少なくとも用いて、前記複数の開口部各々におけるエッチングの深さを推定する第3のステップと、前記第3のステップにおいて推定した前記複数の開口部各々におけるエッチングの深さに基づき、前記液状態情報に対応するエッチング液を用いた場合のエッチング結果を評価する第4のステップと、前記第4のステップによる評価に少なくとも基づき、前記エッチング液に関する調整指示を決定する第5のステップとを有する、エッチング液管理方法である。
【0043】
(7)また、本発明の他の一実施形態は、コンピュータを、レジストの複数の開口部各々におけるエッチング液の流速を示す流速情報を取得する流速取得部、前記エッチング液の状態を示す液状態情報を取得する状態取得部、前記状態取得部が取得した前記液状態情報と、前記流速取得部が取得した前記流速情報と、前記複数の開口部各々の形状を示す形状情報とを少なくとも用いて、前記複数の開口部各々におけるエッチングの深さを推定するエッチング推定部、前記エッチング推定部が推定した前記複数の開口部各々におけるエッチングの深さに基づき、前記液状態情報に対応するエッチング液を用いた場合のエッチング結果を評価する評価部、前記評価部による評価に少なくとも基づき、前記エッチング液に関する調整指示を決定するエッチング液調整部として機能させるためのプログラムである。
【0044】
また、
図1、
図2、
図6におけるエッチング液管理システム60、60aの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりエッチング液管理システム60、60aを実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0045】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0046】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0047】
10 ウェットエッチング装置
20 調整タンク
30 水タンク
40 塩酸タンク
50 鉄液タンク
60、60a エッチング液管理システム
61 エッチングシミュレート部
62 エッチング予測モデル生成部
63 状態取得部
64 流速算出部
65 記憶部
66 エッチング推定部
67 評価部
68 エッチング液調整部
100 ウェットエッチングシステム
【要約】
【課題】所望のエッチング結果が得られる割合を従来よりも高くできるエッチング液管理システムを提供すること。
【解決手段】レジストの複数の開口部各々におけるエッチング液の流速を示す流速情報を取得する流速取得部と、エッチング液の状態を示す液状態情報を取得する状態取得部と、液状態情報と、流速情報と、複数の開口部各々の形状を示す形状情報とを少なくとも用いて、複数の開口部各々におけるエッチングの深さを推定するエッチング推定部と、エッチング推定部が推定した複数の開口部各々におけるエッチングの深さに基づき、液状態情報に対応するエッチング液を用いた場合のエッチング結果を評価する評価部と、評価部による評価に少なくとも基づき、エッチング液に関する調整指示を決定するエッチング液調整部とを備える、エッチング液管理システムである。
【選択図】
図1