(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】トリゴネリンベースの化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 213/80 20060101AFI20240625BHJP
A61K 31/4425 20060101ALI20240625BHJP
A61K 31/4427 20060101ALI20240625BHJP
A61K 31/444 20060101ALI20240625BHJP
A61K 31/4709 20060101ALI20240625BHJP
A61K 31/4985 20060101ALI20240625BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20240625BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20240625BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240625BHJP
A61P 1/06 20060101ALI20240625BHJP
A61P 1/08 20060101ALI20240625BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240625BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240625BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240625BHJP
A61P 7/10 20060101ALI20240625BHJP
A61P 9/08 20060101ALI20240625BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20240625BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240625BHJP
A61P 11/14 20060101ALI20240625BHJP
A61P 13/06 20060101ALI20240625BHJP
A61P 15/10 20060101ALI20240625BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20240625BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240625BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20240625BHJP
A61P 23/00 20060101ALI20240625BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240625BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240625BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20240625BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20240625BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240625BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240625BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240625BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240625BHJP
C07D 401/14 20060101ALI20240625BHJP
C07D 405/12 20060101ALI20240625BHJP
C07D 405/14 20060101ALI20240625BHJP
C07D 471/14 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
C07D213/80
A61K31/4425
A61K31/4427
A61K31/444
A61K31/4709
A61K31/4985
A61K31/506
A61K47/54
A61P1/04
A61P1/06
A61P1/08
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P7/10
A61P9/08
A61P9/12
A61P11/06
A61P11/14
A61P13/06
A61P15/10
A61P17/04
A61P19/02
A61P21/02
A61P23/00
A61P25/00
A61P25/04
A61P25/06
A61P25/20
A61P25/24
A61P31/04
A61P31/12
A61P35/00
C07D401/14
C07D405/12
C07D405/14
C07D471/14 102
(21)【出願番号】P 2019500052
(86)(22)【出願日】2017-03-14
(86)【国際出願番号】 IN2017050091
(87)【国際公開番号】W WO2017158621
(87)【国際公開日】2017-09-21
【審査請求日】2020-03-05
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】2882/DEL/2015
(32)【優先日】2016-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】524200302
【氏名又は名称】ピボット ホールディングス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥガー、サンディープ
(72)【発明者】
【氏名】マハジャン、ディネシュ
(72)【発明者】
【氏名】セン、ソムダッター
【合議体】
【審判長】阪野 誠司
【審判官】木村 敏康
【審判官】冨永 保
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-535849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D213/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物であって、
【化1】
〔式中、DX-は、活性医薬成分(API)又は医薬物質である。
Xは、Oである。
Z
-は、Cl
-、Br
-、I
-、メシレート、トシレート、テトラフルオロボレート、カーボネート及びホスフェートから選択される。〕
前記化合物が、以下のi)~iv)又はviii)の化合物である、化合物。
i) 3-((((1R,2R)-1-ベンズアミド-3-(((2aR,4S,6R,9S,11S,12S,12bS)-6,12b-ジアセトキシ-12-(ベンゾイルオキシ)-4,11-ジヒドロキシ-4a,8,13,13-テトラメチル-5-オキソ-2a,3,4,4a,5,6,9,10,11,12,12a,12b-ドデカヒドロ-1H-7,11-メタノシクロデカ[3,4]ベンゾ[1,2-b]オキセト-9-イル)オキシ)-3-オキソ-1-フェニルプロパン-2-イル)オキシ)カルボニル)-1-メチルピリジン-1-イウム アイオダイド、
ii) 3-((((1R,2R)-1-ベンズアミド-3-(((2aR,4S,6R,9S,11S,12S,12bS)-6,12b-ジアセトキシ-12-(ベンゾイルオキシ)-4,11-ジヒドロキシ-4a,8,13,13-テトラメチル-5-オキソ-2a,3,4,4a,5,6,9,10,11,12,12a,12b-ドデカヒドロ-1H-7,11-メタノシクロデカ[3,4]ベンゾ[1,2-b]オキセト-9-イル)オキシ)-3-オキソ-1-フェニルプロパン-2-イル)オキシ)カルボニル)-1-メチルピリジン-1-イウム メシレート、
iii) 3-((((1R,2R)-1-ベンズアミド-3-(((2aR,4S,6R,9S,11S,12S,12bS)-6,12b-ジアセトキシ-12-(ベンゾイルオキシ)-4,11-ジヒドロキシ-4a,8,13,13-テトラメチル-5-オキソ-2a,3,4,4a,5,6,9,10,11,12,12a,12b-ドデカヒドロ-1H-7,11-メタノシクロデカ[3,4]ベンゾ[1,2-b]オキセト-9-イル)オキシ)-3-オキソ-1-フェニルプロパン-2-イル)オキシ)カルボニル)-1-メチルピリジン-1-イウム テトラフルオロボレート、
iv) 3-((((1R,2R)-1-ベンズアミド-3-(((2aR,4S,6R,9S,11S,12S,12bS)-6,12b-ジアセトキシ-12-(ベンゾイルオキシ)-4,11-ジヒドロキシ-4a,8,13,13-テトラメチル-5-オキソ-2a,3,4,4a,5,6,9,10,11,12,12a,12b-ドデカヒドロ-1H-7,11-メタノシクロデカ[3,4]ベンゾ[1,2-b]オキセト-9-イル)オキシ)-3-オキソ-1-フェニルプロパン-2-イル)オキシ)カルボニル)-1-メチルピリジン-1-イウム トシレート、
viii) 3-(((((2R,3S)-1-(((2aR,4S,4aS,6R,9S,11S,12S,12aR,12bS)-12b-アセトキシ-12-(ベンゾイルオキシ)-4,6,11-トリヒドロキシ-4a,8,13,13-テトラメチル-5-オキソ-2a,3,4,4a,5,6,9,10,11,12,12a,12b-ドデカヒドロ-1H-7,11-メタノシクロデカ[3,4]ベンゾ[1,2-b]オキセト-9-イル)オキシ)-3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-1-オキソ-3-フェニルプロパン-2-イル)オキシ)カルボニル)-1-メチルピリジン-1-イウム アイオダイド。
【請求項2】
以下の工程i)、又は工程ii)及び必要に応じて工程iii)を含む、請求項1に記載された
i)~iv)又はviii)の化合物の調製方法。
i) 塩基の存在下、必要に応じて、触媒及び/又は脱水剤と共に、式:D-XHの活性医薬成分(API)又は医薬物質を、ニコチン酸誘導体(100)と反応させて、化合物(200)を得て、
【化4】
〔式中、Yは、ハライド及びOHから選択される。
Xは、Oである。
D-XHは、前記活性医薬
成分(API)又は医薬物質である。〕
及び、化合物(200)を、アルキルハライドと、必要に応じて対イオンとしての触媒と反応させて、
化合物(300)を得る工程、
【化5】
〔式中、Z
-
は、I
-
である。〕
ii) 式:D-XHの活性医薬成分(API)又は医薬物質を、3,3’-(オキシビス(カルボニル))ビス(1-メチルピリジン-1-イウム)アイオダイドと反応させて、化合物(300A)を得る工程、
【化6】
iii) 触媒と適切な対イオンを加えることで、化合物(300A)のアイオダイド対イオンを別の対イオンに変換して、化合物(400)を得る工程。
【化7】
〔式中、M
-は、メシレート、トシレート及びテトラフルオロボレートから選択されるいずれかの対イオンである。〕
【請求項3】
工程i)の第1ステップで用いられる塩基が、DIPEA(N,N-ジイソプロピルエチルアミン)、トリエチルアミン、ピリジン、及びNaH(水素化ナトリウム)、ナトリウム又はカリウムの炭酸塩等の無機塩基を含む群から選択され、工程i)の第1ステップで用いられる溶媒が、DCM(ジクロロメタン)、THF(テトラヒドロフラン)、ACN(アセトニトリル)及び酢酸エチルを含む群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程i)の第1ステップで用いられる触媒が、DMAP(4-ジメチルアミノピリジン)、TBAC(酢酸tert-ブチル)を含む群から選択され、工程i)の第1ステップで使用される脱水剤が、DCC(N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド)又はEDC(ジクロロエタン)を含む群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
工程i)の第2ステップで用られるアルキルハライドが、メチルハライドを含む群から選択され、工程iii)で用いられる触媒が、メタンスルホン酸銀を含む群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
工程i)の第2ステップで用いられる触媒が、18-クラウン-6,12-クラウン-4、DMAP(4-ジメチルアミノピリジン)、TBAC(酢酸tert-ブチル)を含む群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
溶解性を改善し、薬物動態特性を変化させるための、請求項1に記載の
i)~iv)又はviii)の化合物の使用(治療方法を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された溶解度及び変更された薬物動態特性を有する新規な化合物、並びに化合物の薬物動態プロフィールを変化させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬学的に興味がある多くの化合物は、その薬物動態特性又は薬力学特性のために、またそれらのわずかな溶解度のために、医薬開発プロセスの間に課題に直面する。
【0003】
医薬物質の分子改変は、他の側面の中でも、特定の標的部位の特異性を高め、その効力を高め、その吸収の速度及び程度を改善し、医薬物質の有効性及び毒性値を維持しながら、医薬物質が体内で生物学的に利用可能になる時間間隔を変更するように設計される。pHとは無関係に医薬物質の水溶性を高めることができ、又はその有効性及び毒性に影響を与えずに医薬物質の薬物動態特性を変えることができる、既知の化学的改変の数は限られている。
【0004】
興味深いことに、タキサン等の医薬化合物の溶解性を改善するための分子改変に基づく試みは、いかなる成功した臨床製品ももたらしていない。タキソール及びいくつかの他の生成物へインビボで変換を受けるとされている、タキソールの特定のプロドラッグが調製されている。例えば、WO1997/044063は、特定のプロドラッグを開示しているが、これらの化合物は依然として所望の薬物動態特性を有していないようである。医薬産業は、生物学的に関心のある分子を臨床用途に開発するため、その分子に望ましい溶解度プロファイルを生成するには、新規な製剤又は賦形剤に主に依存している。
【0005】
先行技術において、部位特異的ドラッグデリバリーのための薬物種の分子改変のためのプリン又はピリミジン塩基型構造を有するいくつかのアルカロイドが知られている。
【0006】
例えば、EP0110955B1には、中枢作用性薬剤種を脳に部位特異的/持続的に送達するための式[D-DHC]の化合物が開示されている。本化合物は投与と同時に体内で四級化塩に変換され、脳内のみに閉じ込められ、体の他の部分に入る塩は肝臓及び腎臓から容易に排泄される。従って、四級塩の濃度は、体の他の部分と比較して脳内でより高い。
【0007】
有効なドラッグデリバリーのための改善された溶解度及び/又は薬物動態特性を有し、活性分子又は薬物の治療有効性の喪失及び毒性の増加がない、より良好なプロドラッグ又は改変された化合物を開発する必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】WO1997/044063
【文献】EP0110955B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、トリゴネリンを誘導体化剤として用いる化学的改変による、媒体のpHとは無関係により良好な水溶性、及び改善された又は変更された薬物動態プロファイルを有する新規な化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、改善された溶解度及び変更された薬物動態特性を有する新規な化合物を提供する。本発明の化合物は、以下の式(I)で表すことができる。
【0011】
【0012】
〔式中、DX-は、活性医薬成分(API)又は医薬物質である。
Xは、O又はNRのいずれか、又は前記API若しくは医薬物質の一部である官能化可能なNである。
Zは、Cl-、Br-、I-、メシレート、トシレート、テトラフルオロボレート及びホスフェートから選択される。
Rは、H、CH3、低級直鎖若しくは分枝鎖アルキルであるか、あるいはRとDの中の別の原子との間に結合が存在する場合、Xは3~7員環の一部であってもよい。〕
【0013】
本発明はまた、本発明の化合物の調製方法及び本発明の化合物の使用を開示する。式(I)の化合物はCYP450の基質ではない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
従って、本発明は、改善された溶解度及び変更された薬物動態特性を有する新規な化合物、及び化合物の薬物動態プロファィルを変化させる方法を提供する。
【0015】
【0016】
〔式中、DX-は、活性医薬成分(API)又は医薬物質である。
Xは、O又はNRのいずれか、又は前記API若しくは医薬物質の一部である官能化可能なNである。
Zは、Cl-、Br-、I-、メシレート、トシレート、テトラフルオロボレート及びホスフェートから選択される。
Rは、H、CH3、低級直鎖若しくは分枝鎖アルキルであるか、あるいはRとDの中の別の原子との間に結合が存在する場合、Xは3~7員環の一部であってもよい。〕
【0017】
活性医薬成分(API)又は医薬物質は、鎮痛薬、麻酔薬、抗関節炎剤、抗喘息薬を含む呼吸器系薬、抗腫瘍剤を含む抗癌剤、抗コリン作用薬、抗けいれん薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、下痢止め薬、駆虫薬、抗ヒスタミン薬、抗高脂血症剤、抗高血圧剤、抗生物質及び抗ウイルス薬等の抗感染症薬、抗炎症剤、抗片頭痛薬、抗嘔吐剤、抗パーキンソン病薬、鎮痒薬、解熱剤、鎮痙薬、抗結核薬、抗潰瘍剤、抗ウイルス剤、不安緩解薬、食欲抑制剤、注意欠陥障害(ADD)薬及び注意欠陥多動障害(ADHD)薬、カルシウムチャンネル遮断薬を含む心血管製剤、CNS剤、β遮断薬、抗不整脈薬、αアドレナリンアンタゴニスト又はアゴニスト、鬱血除去薬を含む咳及び風邪製剤、鎮咳薬、利尿薬、胃腸(GI)運動剤、ホルモン、ホルモン剤、催眠薬、血糖降下剤、免疫抑制剤、ロイコトリエン阻害剤、有糸分裂阻害剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、筋弛緩剤、麻薬拮抗薬、オピオイド修飾薬、ニコチン、ニコチン/アセチルコリンアンタゴニスト又はアゴニスト、精神刺激剤、鎮静剤、ステロイド、精神安定剤、一般的な心臓、末梢及び大脳を含む血管拡張剤を含む群から選択されてもよい。
【0018】
活性医薬成分(API)又は医薬物質は、好ましくはパクリタキセル、ドセタキセル及びカバジタキセル等の抗癌化合物、タダフィル等のホスホジエステラーゼ5阻害剤、ドーパミン等の血管拡張剤、麻薬拮抗薬、オピオイド修飾薬、ニコチン、ニコチン/アセチルコリンアンタゴニスト又はアゴニストの群から選択されてもよく、最も好ましくは、前記活性医薬成分は抗癌化合物である。
【0019】
本発明は、式(II)及び式(III)の化合物を開示する。
【0020】
【0021】
〔式中、Drugは、前記のいずれかの活性医薬成分又は医薬物質であってもよい。〕
【0022】
水酸基及び酸のための標準的なカップリング方法を用いて、活性医薬成分又は医薬物質の水酸基等の官能化可能な酸素を介して、活性医薬成分又は医薬物質を式(IV)の化合物に結合させることで、式(II)の化合物を得ることができる。
【0023】
【0024】
アミノ基及び酸のための標準的なカップリング方法を用いて、活性医薬成分又は医薬物質のアミノ基等の官能化可能な窒素を介して、活性医薬成分又は医薬物質を式(IV)の化合物に結合させることで、式(III)の化合物を得ることができる。
【0025】
本発明にはまた、式(I)の化合物の範囲内に含まれる種々の化合物が含まれる。式(I)の化合物はCYP450の基質ではない。
【0026】
式(I)の化合物を、以下の表1に例示する。表1は、本発明に記載の方法を用いて改変することができる現在存在する活性医薬成分又は医薬物質の例示的な、しかし非限定的なリストを示す。
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
本発明の化合物は、以下のi)~xiii)の化合物を含むが、それらに限定されない。
i) 3-((((1R,2R)-1-ベンズアミド-3-(((2aR,4S,6R,9S,11S,12S,12bS)-6,12b-ジアセトキシ-12-(ベンゾイルオキシ)-4,11-ジヒドロキシ-4a,8,13,13-テトラメチル-5-オキソ-2a,3,4,4a,5,6,9,10,11,12,12a,12b-ドデカヒドロ-1H-7,11-メタノシクロデカ[3,4]ベンゾ[1,2-b]オキセト-9-イル)オキシ)-3-オキソ-1-フェニルプロパン-2-イル)オキシ)カルボニル)-1-メチルピリジン-1-イウム アイオダイド、
ii) 3-((((1R,2R)-1-ベンズアミド-3-(((2aR,4S,6R,9S,11S,12S,12bS)-6,12b-ジアセトキシ-12-(ベンゾイルオキシ)-4,11-ジヒドロキシ-4a,8,13,13-テトラメチル-5-オキソ-2a,3,4,4a,5,6,9,10,11,12,12a,12b-ドデカヒドロ-1H-7,11-メタノシクロデカ[3,4]ベンゾ[1,2-b]オキセト-9-イル)オキシ)-3-オキソ-1-フェニルプロパン-2-イル)オキシ)カルボニル)-1-メチルピリジン-1-イウム メシレート、
iii) 3-((((1R,2R)-1-ベンズアミド-3-(((2aR,4S,6R,9S,11S,12S,12bS)-6,12b-ジアセトキシ-12-(ベンゾイルオキシ)-4,11-ジヒドロキシ-4a,8,13,13-テトラメチル-5-オキソ-2a,3,4,4a,5,6,9,10,11,12,12a,12b-ドデカヒドロ-1H-7,11-メタノシクロデカ[3,4]ベンゾ[1,2-b]オキセト-9-イル)オキシ)-3-オキソ-1-フェニルプロパン-2-イル)オキシ)カルボニル)-1-メチルピリジン-1-イウム テトラフルオロボレート、
iv) 3-((((1R,2R)-1-ベンズアミド-3-(((2aR,4S,6R,9S,11S,12S,12bS)-6,12b-ジアセトキシ-12-(ベンゾイルオキシ)-4,11-ジヒドロキシ-4a,8,13,13-テトラメチル-5-オキソ-2a,3,4,4a,5,6,9,10,11,12,12a,12b-ドデカヒドロ-1H-7,11-メタノシクロデカ[3,4]ベンゾ[1,2-b]オキセト-9-イル)オキシ)-3-オキソ-1-フェニルプロパン-2-イル)オキシ)カルボニル)-1-メチルピリジン-1-イウム トシレート、
v) 3-((6R,12aR)-6-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-2-メチル-1,4-ジオキソ-1,2,3,4,6,7,12,12a-オクタヒドロピラジノ[1’,2’:1,6]ピリド[3,4-b]インドール-7-カルボニル)-1-メチルピリジン-1-イウム アイオダイド、
vi) 3-((4-((1E,4Z,6E)-5-ヒドロキシ-7-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-3-オキソヘプタ-1,4,6-トリエン-1-イル)-2-メトキシフェノキシ)カルボニル)-1-メチルピリジン-1-イウム アイオダイド、
vii) 3,3’-(((((1E,3Z,6E)-3-ヒドロキシ-5-オキソヘプタ-1,3,6-トリエン-1,7-ジイル)ビス(2-メトキシ-4,1-フェニレン))ビス(オキシ)ビス(カルボニル)ビス(1-メチルピリジン-1-イウム) アイオダイド、
viii) 3-(((((2R,3S)-1-(((2aR,4S,4aS,6R,9S,11S,12S,12aR,12bS)-12b-アセトキシ-12-(ベンゾイルオキシ)-4,6,11-トリヒドロキシ-4a,8,13,13-テトラメチル-5-オキソ-2a,3,4,4a,5,6,9,10,11,12,12a,12b-ドデカヒドロ-1H-7,11-メタノシクロデカ[3,4]ベンゾ[1,2-b]オキセト-9-イル)オキシ)-3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-1-オキソ-3-フェニルプロパン-2-イル)オキシ)カルボニル)-1-メチルピリジン-1-イウム アイオダイド、
ix) 3-((1-((2R,4R,5R)-3,3-ジフルオロ-4-ヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル)カルバモイル)-1-メチルピリジン-1-イウム アイオダイド、
x) 3-((((2R,3R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1(2H)-イル)-4,4-ジフルオロ-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)カルボニル)-1-メチルピリジン-1-イウム アイオダイド、
xi) 3-((R)-2-((S)-(2,8-ビス(トリフルオロメチル)キノリン-4-イル)(ヒドロキシ)メチル)ピペリジン-1-カルボニル)-1-メチルピリジン-1-イウム、
xii) (R)-3-(((1-(4-((2-(5-クロロ-2-フルオロフェニル)-5-イソプロピルピリミジン-4-イル)アミノ)ニコチンアミド)プロパン-2-イル)オキシ)カルボニル)-1-メチルピリジン-1-イウム、
xiii) (S)-3-(((1-(4-((2-(5-クロロ-2-フルオロフェニル)-5-イソプロピルピリミジン-4-イル)アミノ)ニコチンアミド)プロパン-2-イル)オキシ)カルボニル)-1-メチルピリジン-1-イウム アイオダイド。
【0033】
一側面において、本発明は、式(V)で表されてもよい式(I)の化合物を含む。
【0034】
【0035】
〔式中、R1は、メチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル等の環式、非環式又は分岐鎖のアルキル、アリール、ベンジル等のアラルキル、水素、tert-ブトキシカルボニルアミノ、及びN-フェニルカルバモイルから選択される。
R2は、水素、水酸基、非環式、環式又は分枝鎖のアルキル、アリール、及びアラルキルから選択される。
R3及びR4は、独立して、水素、水酸基、低級アルキル、低級アルコキシ、アセチル、及びベンジルの群から選択される。〕
【0036】
本発明はまた、式(I)の化合物の調製方法を開示する。式(I)の化合物は、以下に記載する以下の一般的スキームによって調製することができる。
【0037】
式(I)の化合物を調製する方法は、活性医薬成分又は医薬物質の官能基に基づくことができる。
【0038】
例えば、官能基として水酸基を含む活性医薬成分又は医薬物質については、以下に示す合成スキーム1又は2に従って調製することができる。
【0039】
官能基の1つとして-OHを有する生物学的に興味がある薬物又は分子の改変の一般的合成スキーム
【0040】
【0041】
〔式中、Yは、OH、Cl、F、Br、及び酸無水物等の酸の任意の活性化形態を含む群から選択される。
Drugは、上記の任意の活性医薬成分又は医薬物質であってよい。〕
【0042】
本発明はまた、活性成分の官能基が-NH-である式(I)の化合物の合成方法を開示する。
【0043】
例えば、該官能基としてアミノ基を含有する化合物は、以下に示す合成スキーム3又は4を調製することができる。
【0044】
官能基の1つとして-NH-を有する生物学的に興味がある薬物又は分子の改変の一般的合成スキーム
【0045】
【0046】
〔式中、Yは、OH、Cl、F、Br、及び酸無水物等の酸の任意の活性化形態を含む群から選択される。
Drugは、上記の任意の活性医薬成分又は医薬物質であってよい。〕
【0047】
式(I)の化合物の合成は、以下の工程からなることができる。
工程1:
【0048】
【0049】
〔式中、Yは、F、Cl又はBr等のハライド及びOHから選択される。
Xは、O、Nから選択される。
nは、Xの許容可能な価数に応じて0~2である。〕
活性医薬成分を溶媒に溶解し、塩基の存在下、必要に応じて、触媒及び/又は脱水剤と共に、0~60℃の範囲の温度で、ニコチン酸、又はニコチン酸クロライド若しくは対応する酸無水物等のニコチン酸の活性化形態で処理することができる。
【0050】
本明細書において用いられる活性医薬成分は、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、タダラフィル、クルクミンから選択することができる。塩基は、DIPEA(N,N-ジイソプロピルエチルアミン)、トリエチルアミン、ピリジン、又はNaH(水素化ナトリウム)、ナトリウム若しくはカリウムの炭酸塩等の無機塩基等のいずれかの塩基から選択することができる。溶媒は、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド等から選択することができる。脱水剤は、ジメチルアミノピリジン等のいずれかの助触媒と共に又は助触媒無しで、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド又はEDCI等とすることができる。
【0051】
工程2:式(I)の化合物の合成
【0052】
【0053】
適当な溶媒中の工程1の生成物に、MeI等のアルキルハライドを化学量論量又は過剰量で加える。次いで、0℃~還流温度の範囲の温度で、出発物質が最大に消費されるまでの期間、反応を撹拌する。真空下で溶媒を除去し、得られた残渣を溶媒洗浄又は結晶化によって精製して、精製された化合物を得る。溶媒は、アセトニトリル、エーテル、n-ペンタン、テトラヒドロフランから選択することができる。
【0054】
他の実施態様において、本発明の方法は、テトラブチルアンモニウムクロライド等の助触媒、又は他の相間移動触媒、例えば4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩、ポリエチレングリコール、クラウンエーテル、アルキル硫酸塩、アルキルスルホナート、両性界面活性剤等、典型的には、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、アリコート336、硫酸水素トリオクチルメチルアンモニウムアンモニウム、18-クラウン-6、テトラブチルホスホニウムクロライド、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等を含むことができる。されに、これらは単独で用いることができ、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0055】
工程3:必要に応じて、式:D-XHnの活性医薬成分(API)を、3,3’-(オキシビス(カルボニル))ビス(1-メチルピリジン-1-イウム)アイオダイドと反応させて、化合物(300)を得る工程
【0056】
【0057】
工程4:必要に応じて、触媒と適切な対イオンを加えることで、化合物(300)のアイオダイド対イオンを別の対イオンに変換して、化合物(400)を得る工程
【0058】
【0059】
〔式中、M-は、アイオダイド、クロライド、ブロマイド、メシレート、トシレート、テトラフルオロボレート及び任意の他の薬学上許容されるアニオンから選択されるいずれかの対イオンであり、対イオンは電荷に釣り合う1つ又はそれ以上の対イオンである。〕
【0060】
本発明の改変された医薬化合物は、活性医薬成分と比較して高められた薬物動態特性を有する。改変された薬物は、広いpH範囲でより高い溶解度を有する。本発明の改変化合物は、望ましい安全性と毒性プロファイルを有する。本発明の改変化合物は、体内で医薬化合物及び式(IV)の化合物に解離する。
【0061】
【0062】
式(IV)の化合物は一般に、トリゴネリンとして知られている。トリゴネリン(N-メチルニコチネート)は、マメ科(Fabaceae)から最も報告されている、化学式:C7H7NO2を有するピリジンアルカロイドである。これは、フェヌグリーク又はメティーとしても知られている、植物:トリゴネラ・フォエナム・グレカム(Trigonella foenum-graecum)の種子に広く見出される。これは、ナイアシン(ビタミンB3)の窒素原子のメチル化によって形成される双性イオンである。これは、コレステロール低下剤であり、栄養学的な利益及びグルコース低下活性を有する。
【0063】
トリゴネリンは、FDAによってGRAS(Generally Recognized as Safe:一般に安全と認められた)ステータスを有する。これは植物中に見られる天然に存在する代謝物であるため、体が新しい分子を活性な親薬物に十分に戻すことができると考えられる。
【0064】
本発明の改変化合物は、所望の安全性及び毒性プロファイルを維持しながら、改善された薬物動態特性を有する薬物及び/又は医薬品としての使用に適している。本発明はまた、化合物の薬物動態プロファイルを変化させて、生理食塩水及び/又は生物学的に有用なpHで化合物をより可溶性にする方法を提供する。
【0065】
本発明の新規化合物は、医薬及び栄養補助の目的のために使用することができる。本発明の化合物は、リンパ腫、及び頭、首、乳房、食道、肺、胃、膀胱、前立腺、卵巣の癌、黒色腫、及び他のタイプの固形腫瘍、カポジ肉腫を含む、様々な種類の癌を治療するために用いられ、また、皮膚疾患:尋常性ざ瘡等の炎症性疾患、肺動脈性高血圧、不安、アルツハイマー病、アポトーシス、勃起不全、重症高血圧、徐脈(遅い心拍数)、循環性ショック、又は心停止の治療に用いられる。
【0066】
本発明はその範囲内に、塩、溶媒和物及び異性体を含む。式(I)及び式(VI)の化合物の溶媒和物は、好ましくは水和物又は任意の他の薬学上許容される溶媒和物である。
【0067】
エナンチオマー及びジアステレオマーの形態を含む、活性医薬成分又は医薬物質の不斉炭素に起因して存在し得るもの等の本発明の化合物のすべての立体異性体は、本発明の範囲内にあると考えられる。本発明の化合物の個々の立体異性体は、例えば、他の異性体を実質的に含まなくてもよく、又は、例えば、ラセミ体として、若しくは他のすべての選択された立体異性体と混合されていてもよい。本発明のキラル中心はS又はR配置を有することができる。
【0068】
本発明はまた、その範囲内で、適切な対イオンの選択の効果を想定している。本発明の化合物の対イオンは、前記pH範囲内でイオン化することができる薬物の解離定数を選択することによって選択することができる。対アニオンは、ハライド、メシレート、トシレート、ボレート、カルボナート、ホスホネート等から選択される。
【0069】
従って、本発明はまた、ヒト用又は動物用医薬に用いるための、本明細書で定義される改変されたエンティティの使用を提供する。医薬として使用するための化合物は、医薬製剤として提供することができる。
【0070】
従って、本発明は、更なる側面において、本発明の改変化合物と、その薬学上許容される担体と、必要に応じて他の治療成分及び/又は予防成分とを含む医薬製剤を提供する。製剤の他の成分と適合し、そのレシピエントに有害ではないという意味で、担体は「許容される」ものでなければならない。適切には、医薬製剤は適切な単位投与形態である。
【0071】
医薬製剤は、いかなる製剤であってもよく、経口、鼻腔内、眼内又は非経口(筋肉内及び静脈内を含む)投与に適したものが含まれる。製剤は、適切な場合には、別個の投与単位で都合よく提供されてもよく、薬学の分野で周知の任意の方法によって調製されてもよい。すべての方法は、活性化合物を液体担体又は微粉化した固体担体又はそれらの両方と混合する工程、及び必要に応じて生成物を所望の製剤に成形する工程を含む。
【0072】
理論によって限定されるものではないが、本発明の化合物は、CYP3A4等のチトクロームP450酵素の適切な基質又は阻害剤ではないかもしれず、活性医薬成分又は医薬物質の用量を減らし安全性及び有効性を高めることができる。
【0073】
これらの目的のために、本発明の化合物は、従来の無毒性の薬学上許容される担体、アジュバント及びビヒクルを含む投薬単位製剤で、経口、局所、鼻腔内、眼内、非経口、吸入スプレーで又は直腸に投与することができる。本明細書で使用される非経口という用語は、皮下注射、静脈内、筋肉内、腔内注射又は注入技術を含む。マウス、ラット、ウマ、イヌ、ネコ等の温血動物の治療に加えて、本発明の化合物はヒトの治療に有効である。
【実施例】
【0074】
以下の実施例は、本開示の代表例であり、中間体化合物の調製を含む、本開示の化合物を調製するための詳細な方法を提供する。特定の実施態様の化合物の調製は、以下の実施例で詳細に記載されるが、当業者は、様々な実施態様の多数の他の薬剤を調製するために記載された化学反応を容易に適合し得ることを認識するであろう。例えば、例示されていない化合物の合成は、当業者に明らかな改変によって、例えば妨げる基を適切に保護することで、当分野で公知の他の適切な試薬に変更することで、又は反応条件の日常的な改変を行うことによって、首尾よく行うことができる。
【0075】
本明細書中で用いられる際、これらの方法、スキーム及び実施例で用いられる記号及び慣例は、特定の略語が具体的に定義されているかどうかに関わらず、現代の科学文献、例えば、Journal of American Chemical Society又はJournal of Biological Chemistryで用いられているものと一致する。
【0076】
実施例1:式(I)の化合物(1001)の合成
【0077】
【0078】
パクリタキセルの2’-ニコチン酸エステルの合成:
工程1:
窒素雰囲気下、0℃で、無水DCM25ml中のパクリタキセル[1.0g,1.1709mmol,1.0モル当量]の溶液に、DIPEA[0.755g,d=0.756,5.8527mmol,5.0当量]を加え、反応物を同じ温度で15分間撹拌した。温度を0℃に保ちながら、上記反応物に、ニコチン酸クロライド塩酸塩[0.625g,3.0当量]を一度に加えた。反応物を0℃でさらに30分間、室温で24時間撹拌した。反応全体を5%水性HCl20ml×2回、続いて水20ml×2回で、処理し、無水Na2SO4で乾燥させ、真空下で溶媒を除去することで反応を後処理し、所望の生成物を得た。収率:89%。MS:m/z 959及び960。
【0079】
工程2:
トリゴネリンエステルの合成:
室温で、無水ACN5ml中のパクリタキセルの2’-ニコチン酸エステル[0.03g、0.03125mmol]の溶液に、大過剰のヨウ化メチル[0.5ml]を加えた。反応物を室温で24時間撹拌した。ACNを真空下で除去し、黄色残渣をペンタン/ジエチルエーテルの1:1混合物5mlで処理し、粉砕して自由流動性の黄褐色の結晶を得た。この反応で最終生成物(1001)が得られ、収率は約60%であった。
【0080】
実施例2~4:上記の合成実施例1の手順を利用して、化合物(1002)、化合物(1003)及び化合物(1004)の合成を行う
【0081】
【0082】
MS:m/z 974,975及び976。
アイオダイド対イオンを、室温で銀(I)メタンスルホナート(1.0当量)を加えることで、メシレートイオンに変換した。反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応物を濾過してヨウ化銀を除去した。濾液を真空下で濃縮し、これを乾燥エーテル(5ml×2回)で粉砕し、デカンテーションによりエーテルを除去し、真空下で生成物を乾燥させて所望の生成物メシレートを得た。この反応で所望の生成物メシレートとして最終生成物(1002)、(1003)及び(1004)のメシレートが得られた。
【0083】
上記の手順を用いて、以下のクルクミン化合物(1006)、化合物(1007)、ドセタキセル(1008)、ゲムシタビン(1009)及び化合物(1010)の誘導体を合成する
【0084】
【0085】
実施例5:3-((6R,12aR)-6-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-2-メチル-1,4-ジオキソ-1,2,3,4,6,7,12,12a-オクタヒドロピラジノ[1’,2’:1,6]ピリド[3,4-b]インドール-7-カルボニル)-1-メチルピリジン-1-イウム アイオダイド化合物(1005)の合成
工程1:(6R,12aR)-6-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-2-メチル-7-ニコチノイル-2,3,6,7,12,12a-ヘキサヒドロピラジノ[1’,2’:1,6]ピリド[3,4-b]インドール-1,4-ジオンの合成
【0086】
【0087】
0℃で、無水THF中のタダラフィル[0.05g,0.128mmol]の溶液に、NaH[0.020g,0.257mmol,2.0当量]を加え、反応物を黄色になるまで攪拌した。別のNaH[0.020g,0.257mmol,2.0当量]を加え、続いて0℃でニコチン酸クロライド塩酸塩[0.045g,0.257mmol,2.0当量]を加えた。反応物を0℃でさらに1時間、次いで30℃で30分間撹拌し、続いて触媒量の18-クラウン-6を加えた。反応物を55℃(外部温度)に加熱し、反応物を36時間撹拌した。反応物を水に注ぎ、酢酸エチル10ml×2回で抽出し、乾燥させ、酢酸エチルを真空下で除去して、黄色の生成物を得た。収量38mg。m/z 494。
【0088】
工程2:3-((6R,12aR)-6-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-2-メチル-1,4-ジオキソ-1,2,3,4,6,7,12,12a-オクタヒドロピラジノ[1’,2’:1,6]ピリド[3,4-b]インドール-7-カルボニル)-1-メチルピリジン-1-イウム アイオダイドの合成
【0089】
【0090】
30℃で、無水ACN中の(6R,12aR)-6-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-2-メチル-7-ニコチノイル-2,3,6,7,12,12a-ヘキサヒドロピラジノ[1’,2’:1,6]ピリド[3,4-b]インドール-1,4-ジオン[0.038g]の溶液に、Mel[0.5ml]を加えた。反応物を所定の温度で24時間撹拌した。ACNを真空下で除去し、1:1のエーテル:n-ペンタンを加え、粉砕して黄色の沈殿物を得た。これを吸引濾過下で濾過して乾燥することで単離した。この反応で最終生成物(1005)が得られ、収量は10mgであった。m/z 509。
【0091】
実施例6:3-((R)-2-((S)-(2,8-ビス(トリフルオロメチル)キノリン-4-イル)(ヒドロキシ)メチル)ピペリジン-1-カルボニル)-1-メチルピリジン-1-イウム アイオダイド(1011)の合成
工程1:((R)-2-((S)-(2,8-ビス(トリフルオロメチル)キノリン-4-イル)(ヒドロキシ)メチル)ピペリジン-1-イル)(ピリジン-3-イル)メタノンの合成
【0092】
【0093】
DMF2ml中のメフロキン[0.150g,0.39mmol,1当量]の溶液に、EDC[0.090g,0.47mmol,1.2当量]及びHOBt[0.069g,0.51mmol,1.3当量]を加え、室温で20分間撹拌した。NMM[0.1ml,0.79mmol,2当量]及びニコチン酸[0.058g,0.47mmol,1.2当量]を加え、室温で24時間撹拌した。反応全体の中に氷冷水をゆっくりと加え、得られた固体を濾過し、冷水で洗浄し、真空乾燥して、((R)-2-((S)-(2,8-ビス(トリフルオロメチル)キノリン-4-イル)(ヒドロキシ)メチル)ピペリジン-1-イル)(ピリジン-3-イル)メタノンを得た(収量0.100g,67%)。m/z 484。
【0094】
工程2:3-((R)-2-((S)-(2,8-ビス(トリフルオロメチル)キノリン-4-イル)(ヒドロキシ)メチル)ピペリジン-1-カルボニル)-1-メチルピリジン-1-イウム アイオダイドの合成
【0095】
【0096】
((R)-2-((S)-(2,8-ビス(トリフルオロメチル)キノリン-4-イル)(ヒドロキシ)メチル)ピペリジン-1-イル)(ピリジン-3-イル)メタノン[0.050g]の溶液に、MeI[0.1ml]を加えた。反応物を所定の温度で24時間撹拌した。反応全体を真空下で蒸発させ、1:1のエーテル:n-ペンタンを加え、粉砕して褐色固体:3-((R)-2-((S)-(2,8-ビス(トリフルオロメチル)キノリン-4-イル)(ヒドロキシ)メチル)ピペリジン-1-カルボニル)-1-メチルピリジン-1-イウム アイオダイドを得た。この反応で最終生成物(1011)が得られ、収率は0.035g、70%であった。m/z 498。
【0097】
実施例7:本発明の化合物の溶解性プロファイルの評価
それぞれ1mg/mlのメフロキン溶液及び2mg/mlのタダラフィル溶液と、本発明のそれぞれ同量のトリゴネリン改変化合物(1011)溶液及び化合物(1005)溶液をミリQ水に取り、ボルテックスし、3分間遠心分離し、濾過し、HPLCカラム(Zorbax Eclipse C18;移動相:A:0.1%TFA、B:ACN;実行時間15分間、Waters2996HPLCモデル)にかけた。各々の曲線下面積を測定し、それに基づいて、溶解度の増加倍率を測定した。結果を以下の表2に示す。
【0098】
【0099】
上記の表2に示されるように、本発明の改変化合物(1011)及び化合物(1005)の両方は、その親薬物に対して水溶性の有意な増加を示した。
【0100】
実施例8:パクリタキセル改変薬物(1001)の溶解度
パクリタキセルのトリゴネリン改変薬物(1001)をその水溶性について評価した。異なる溶媒系で溶解度を調べた。所望の濃度で改変薬物を可溶化し、分子の安定性を維持することが見出された溶媒のみが選択された。改変薬物は、選択された溶媒中で安定であることが判明した。
【0101】
改変薬物(1001)の溶解度は、通常の生理食塩水、通常の生理食塩水中の5%DMA、通常の生理食塩水中の9%NMP、及び通常の生理食塩水中の5%DMSOで評価した。
【0102】
パクリタキセル及び本発明に提示された化合物(1001)を上記の異なる溶媒系に取り、ボルテックスし、3分間遠心分離し、濾過し、HPLCカラム(Zorbax Eclipse C18;Waters2996HPLCモデル)にかけた。各々の曲線下面積を測定し、それに基づいて、溶解度の増加倍率を測定した。結果を以下の表3に示す。
【0103】
【0104】
溶解度の増加倍率:
・通常の生理食塩水中 >5,000倍
・5%ジメチルアセトアミドを含む通常の生理食塩水中 >10,000倍
・5%ジメチルスルホキシドを含む通常の生理食塩水中 >12,000倍
・9%N-メチルピロリドンを含む通常の生理食塩水中 >15,000倍
【0105】
上記表3から、本発明の化合物(1001)は高い溶解度を示すことが分かる。
【0106】
実施例9:パクリタキセル改変薬物(1001)の親薬物パクリタキセルとの比較PKプロファイル
静脈内(iv)に投与した際のSDラットにおけるパクリタキセルの改変薬物の血漿暴露を評価するために、薬物動態研究を行った。その結果を、同じ投与ビヒクルを用いたパクリタキセルの暴露と比較した。この研究で使用した投与ビヒクルは、一定組成中のPEG400及び生理食塩水であった。本発明の化合物(1001)は、与えられた溶媒中で安定であり、可溶であることが判明した。溶解度データで報告した通り、化合物(1001)は、より良好な水溶性を示した。これによって、改変薬物でのより容易なiv投薬がもたらされた。改変薬物には3mpk及びlmpkのiv投薬を、パクリタキセルの親薬物には3mpkのiv投与を行った。改変薬物のiv投与の後、異なる時点での連続的な出血によって、血液をヘパリン処理した試験管中に採取した。血液試料を4℃で10,000rpmで5分間遠心分離して血漿を得た。これらを別々の標識した試験管の中に吸引し、-80℃で保存した。抽出溶媒を血漿に加え、ボルテックスし、撹拌器で10分間振とうし、4℃で10,000rpmで10分間遠心分離した。上清を分析のために保存した。
【0107】
アセトニトリル及び血漿の検量線を生成し、血漿からの薬物回収率を決定した。液体クロマトグラフィータンデム質量分析計(API3000 LC-MS/MS)によって、定量分析を行った。グラフパッドPRISMバージョン5.04を用いてCmax、Tmax、AUC及びt1/2を計算した。その結果を表4に示す。
【0108】
【0109】
表4から、本発明の改変化合物(1001)は、Cmaxが80倍以上増加し、AUCが10倍以上増加していることが分かる。従って、本発明の化合物(1001)は、API化合物よりも高い薬物動態及び溶解度を有する。
【0110】
実施例10:本発明の化合物(1008)(ドセタキセル)の薬物動態プロファイル
静脈内(iv)に投与した際のSDラットにおけるドセタキセルの改変薬物(1008)の血漿暴露を評価するために、薬物動態研究を行った。その結果を、同じ投与ビヒクルを用いたドセタキセル(10mpk)の暴露と比較した。この研究で使用した投与ビヒクルは、一定組成中のPEG400及び生理食塩水であった。ドセタキセルの改変薬物(1008)は、与えられた溶媒中で安定であり、可溶であることが判明した。ドセタキセルの改変薬物(1008)は、表で示すように、親薬物と比較して、有意に高い暴露を有することが判明した。
【0111】
溶解度データで報告した通り、ドセタキセルの改変薬物(1008)は、より良好な水溶性を示した。改変薬物(1008)には3mpkのiv投薬を、ドセタキセルの親薬物には10mpkのiv投与を行った。改変薬物のiv投与の後、異なる時点での連続的な出血によって、血液をヘパリン処理した試験管中に採取した。血液試料を4℃で10,000rpmで5分間遠心分離して血漿を得た。これらを別々の標識した試験管の中に吸引し、-80℃で保存した。抽出溶媒を血漿に加え、ボルテックスし、撹拌器で10分間振とうし、4℃で10,000rpmで10分間遠心分離した。上清を分析のために保存した。
【0112】
アセトニトリル及び血漿の検量線を生成し、血漿からの薬物回収率を決定した。液体クロマトグラフィータンデム質量分析計(API3000 LC-MS/MS)によって、定量分析を行った。グラフパッドPRISMバージョン5.04を用いてCmax、Tmax、AUC及びt1/2を計算した。その結果を表5に示す。
【0113】
【0114】
上記の表5から、本発明の化合物(1008)は元の化合物よりも高められた薬物動態を有することが分かる。