(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】表示基板およびその作製方法、表示装置、ならびに表示パネル
(51)【国際特許分類】
G09F 9/30 20060101AFI20240625BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20240625BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20240625BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20240625BHJP
H01L 23/522 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
G09F9/30 330
G09F9/30 309
G09F9/30 310
G09F9/30 348A
H01L29/78 617N
H01L21/88 T
H01L21/90 A
(21)【出願番号】P 2022523726
(86)(22)【出願日】2020-05-06
(86)【国際出願番号】 CN2020088695
(87)【国際公開番号】W WO2021223086
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.10 Jiuxianqiao Rd.,Chaoyang District,Beijing 100015,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【氏名又は名称】松永 宣行
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】朱 小研
【審査官】西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/187137(WO,A1)
【文献】特開2014-016944(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109728188(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107403807(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0294463(US,A1)
【文献】国際公開第2017/013538(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03-3/047
G09F 9/00-9/46
H01L 21/02
H01L 21/3205
H01L 21/76
H01L 21/768
H01L 23/52
H01L 27/12
H01L 29/786
H10K 50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示基板であって、
第1導電パターンと、前記第1導電パターンの
一側に位置する有機層と、前記有機層の前記
第1導電パターンから遠い側に位置する第2導電層とを含み、
前記表示基板は、画素領域とバインディング領域とを有し、前記第1導電パターンは、前記表示基板のバインディング領域に位置し、
前記有機層には、前記
第1導電パターンに垂直な方向に前記有機層を貫通するビアが開設され、前記ビアの位置は、前記第1導電パターンの位置に対応し、かつ前記第2導電層は、前記ビアを介して前記第1導電パターンと電気的に接続され、
前記第1導電パターンの前記第2導電層から遠い側の表面は、前記表示基板の外部に露出する表面であり、
前記表示基板は、前記ビアを充填する充填構造をさらに含
む、表示基板。
【請求項2】
前記有機層の前記
第1導電パターンから遠い側にバリア層をさらに含み、
前記バリア層の前記ビアに対応する領域は、前記充填構造と前記第2導電層との間に位置する請求項1に記載の表示基板。
【請求項3】
前記有機層の前記
第1導電パターンから遠い側にバリア層をさらに含み、
前記バリア層の前記ビアに対応する領域は、前記充填構造の前記
第1導電パターンから遠い側に位置する請求項1に記載の表示基板。
【請求項4】
前記バリア層の前記
有機層から遠い側にバッファ層をさらに含み、
前記バッファ層の異なる領域と前記
第1導電パターンが位置する平面との間の距離の差は、
所定の閾値未満であ
り、
前記バリア層の異なる領域は、前記ビアの形状にフィットする窪み領域と、前記窪み領域以外のその他の領域とを含む、請求項3に記載の表示基板。
【請求項5】
前記バッファ層の前記
有機層から遠い側に、第1ゲート絶縁層、第2ゲート絶縁層、誘電体層のうちの1つ以上をさらに含み、
前記第1ゲート絶縁層の異なる領域と前記
第1導電パターンが位置する平面との間の距離の差は、
所定の閾値未満であり、
前記第2ゲート絶縁層の異なる領域と前記
第1導電パターンが位置する平面との間の距離の差は、前記所定の閾値未満であり、
前記誘電体層の異なる領域と前記
第1導電パターンが位置する平面との間の距離の差は、前記所定の閾値未満であ
り、
前記第1ゲート絶縁層の異なる領域は、前記ビアの形状にフィットする窪み領域と、前記窪み領域以外のその他の領域とを含み、
前記第2ゲート絶縁層の異なる領域は、前記ビアの形状にフィットする窪み領域と、前記窪み領域以外のその他の領域とを含む、請求項4に記載の表示基板。
【請求項6】
前記有機層は、前記第1導電パターンの厚さに垂直な方向の一側に位置するターゲット部分をさらに含み、前記ターゲット部分は、前記第1導電パターンの厚さ方向において対向して設けられる第1面及び第2面を含み、前記第1導電パターンの厚さ方向において、前記第1導電パターンの前記第2導電層から遠い側の表面は、前記第1面と前記第2面との間に位置する、請求項1
に記載の表示基板
。
【請求項7】
請求項
1~6
のいずれか一項に記載の表示パネルを含
み、
前記画素領域は、無機発光ダイオードである画素を含む表示装置。
【請求項8】
表示基板の作製方法であって、
下地基板を用意するステップと、
前記下地基板上に第1導電パターンを作製するステップと、
前記第1導電パターンの前記下地基板から遠い側に有機層を作製するステップと、
前記有機層にビアを開設するステップと、
前記ビアを介して前記第1導電パターンと電気的に接続される第2導電層を、前記有機層の前記下地基板から遠い側に作製するステップと、
前記ビアを充填する充填構造を作製するステップとを含み、
前記第1導電パターンの前記下地基板に近い側の表面が露出するように、前記下地基板を剥離する、表示基板の作製方法。
【請求項9】
前記の前記ビアを充填する充填構造を作製するステップの後に、
前記充填構造の前記下地基板から遠い側にバリア層を作製するステップをさらに含む請求項8に記載の表示基板の作製方法。
【請求項10】
前記の前記ビアを充填する充填構造を作製するステップの前に、
前記有機層の前記下地基板から遠い側にバリア層を作製するステップをさらに含み、
前記の前記ビアを充填する充填構造を作製するステップは、
前記バリア層の前記下地基板から遠い側に、前記ビアを充填する充填構造を作製することを含む請求項8に記載の表示基板の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示技術分野に係り、特に表示基板およびその作製方法、表示装置、ならびに表示パネルに係る。
【背景技術】
【0002】
Micro-LED(マイクロ発光ダイオード)技術の成熟に伴い、Micro-LEDの使用も一般的になってきている。従来のMicro-LED表示基板は、画素領域とバインディング領域とを有し、バインディング領域におけるバインディング回路(bonding IC)とのバインディング(bonding)により電気的接続を実現しているが、バインディング時に応力集中が発生する可能性があり、表示基板が破損する可能性が高くなる。
【発明の概要】
【0003】
1つの態様として、本開示の実施例は、表示基板を提供する。前記表示基板は、下地基板と、前記下地基板上に位置する第1導電パターンと、前記第1導電パターンの前記下地基板から遠い側に位置する有機層と、前記有機層の前記下地基板から遠い側に位置する第2導電層とを含む。前記表示基板は、画素領域とバインディング領域とを有し、前記第1導電パターンは、前記表示基板のバインディング領域に位置する。前記有機層には、前記下地基板に垂直な方向に前記有機層を貫通するビアが開設され、前記ビアの位置は、前記第1導電パターンの位置に対応し、かつ前記第2導電層は、前記ビアを介して前記第1導電パターンと電気的に接続される。前記表示基板は、前記ビアを充填する充填構造をさらに含む。前記充填構造の前記下地基板から遠い側の表面と前記下地基板との距離と、前記有機層の下地基板から遠い側の表面と前記下地基板との距離との距離差は、所定の閾値未満である。
【0004】
選択可能に、前記有機層の前記下地基板から遠い側にバリア層をさらに含み、前記バリア層の前記ビアに対応する領域は、前記充填構造と前記第2導電層との間に位置する。
【0005】
選択可能に、前記有機層の前記下地基板から遠い側にバリア層をさらに含み、前記バリア層の前記ビアに対応する領域は、前記充填構造の前記下地基板から遠い側に位置する。
【0006】
選択可能に、前記バリア層の前記下地基板から遠い側にバッファ層をさらに含み、前記バッファ層の異なる領域と前記下地基板との間の距離の差は、前記所定の閾値未満である。
【0007】
選択可能に、前記バッファ層の前記下地基板から遠い側に、第1ゲート絶縁層、第2ゲート絶縁層、誘電体層のうちの1つ以上をさらに含む。前記第1ゲート絶縁層の異なる領域と前記下地基板との間の距離の差は、前記所定の閾値未満である。前記第2ゲート絶縁層の異なる領域と前記下地基板との間の距離の差は、前記所定の閾値未満である。前記誘電体層の異なる領域と前記下地基板との間の距離の差は、前記所定の閾値未満である。
【0008】
第2の態様として、本開示の実施例は、上記のいずれか1つに記載の表示基板を含む表示パネルを提供する。
【0009】
第3の態様として、本開示の実施例は、上記の表示パネルを含む表示装置を提供する。
【0010】
第4の態様として、本開示の実施例は、表示基板の作製方法を提供し、下地基板を用意するステップと、前記下地基板上に第1導電パターンを作製するステップと、前記第1導電パターンの前記下地基板から遠い側に有機層を作製するステップと、前記有機層にビアを開設するステップと、前記ビアを介して前記第1導電パターンと電気的に接続される第2導電層を、前記有機層の前記下地基板から遠い側に作製するステップと、前記ビアを充填する充填構造を作製するステップとを含み、前記充填構造の前記下地基板から遠い側の表面と前記下地基板との距離と、前記有機層の下地基板から遠い側の表面と前記下地基板との距離との距離差が、所定の閾値未満である。
【0011】
選択可能に、前記の前記ビアを充填する充填構造を作製するステップの後に、前記充填構造の前記下地基板から遠い側にバリア層を作製するステップをさらに含み、前記バリア層と前記下地基板との間の距離が均一である。
【0012】
選択可能に、前記の前記ビアを充填する充填構造を作製するステップの前に、前記有機層の前記下地基板から遠い側にバリア層を作製するステップをさらに含み、前記の前記ビアを充填する充填構造を作製するステップは、前記バリア層の前記下地基板から遠い側に、前記ビアを充填する充填構造を作製することを含む。
【0013】
本開示の実施例に記載の表示基板およびその作製方法、表示装置、ならびに表示パネルは、従来と比較して、バインディング領域のビアに、ビアを充填する充填構造を設けることにより、バインドプロセスで発生する圧力の分担をこの充填構造により図ることができ、ビアに応力が集中する可能性を低減し、表示基板が破損する可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】本開示の少なくとも1つの実施例に係る表示基板の構成を示す図である。
【
図1B】本開示の少なくとも1つの実施例に係る表示基板のさらに他の構成を示す図である。
【
図1C】本開示の少なくとも1つの実施例に係る表示基板のさらに他の構成を示す図である。
【
図1D】本開示の少なくとも1つの実施例に係る表示基板のさらに他の構成を示す図である。
【
図2A】従来の表示基板のシミュレーションモデルである。
【
図2B】従来の表示基板の応力シミュレーション結果である。
【
図2C】本開示の少なくとも1つの実施例に係る表示基板のシミュレーションモデルである。
【
図2D】本開示の少なくとも1つの実施例に係る表示基板の応力シミュレーション結果である。
【
図3】本開示の少なくとも1つの実施例に係る表示基板の作製方法のフローチャートである。
【
図4A】本開示の少なくとも1つの実施例に係る表示基板の中間作製工程を示す図である。
【
図4B】本開示の少なくとも1つの実施例に係る表示基板のさらに他の中間作製工程を示す図である。
【
図4C】本開示の少なくとも1つの実施例に係る表示基板のさらに他の中間作製工程を示す図である。
【
図4D】本開示の少なくとも1つの実施例に係る表示基板のさらに他の中間作製工程を示す図である。
【
図4E】本開示の少なくとも1つの実施例に係る表示基板のさらに他の中間作製工程を示す図である。
【
図4F】本開示の少なくとも1つの実施例に係る表示基板のさらに他の中間作製工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施例における図面を参照しながら、本開示の実施例における技術手段を明確且つ完全に記載する。明らかに、記載される実施例は、本開示の一部の実施例に過ぎず、すべての実施例ではない。本開示の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働を行うことなく得られる他の全ての実施例は、すべて本開示の保護範囲内である。
【0016】
本開示の少なくとも1つの実施例は、表示基板を提供する。
【0017】
図1Aおよび
図1Bに示すように、この表示基板は、下地基板101と、下地基板101上に位置する第1導電パターン102と、第1導電パターン102の下地基板101から遠い側に位置する有機層103と、有機層103の下地基板101から遠い側に位置する第2導電層104とを含む。
【0018】
ここで、表示基板は、画素領域とバインディング領域とを有する。画素領域は、複数の画素と、複数の画素に電気信号を供給するための駆動配線とを含む。バインディング領域には、COF(Chip On Flex)やIC(Integrated Circuit)などの外部駆動回路をバインド(bonding)するための、駆動配線に接続されたバインディング構造(例えばバインディング端子)が含まれる。
【0019】
第1導電パターン102は、
図1Aに示すバインディング領域Aに位置する。
【0020】
図1Aに示すように、下地基板101の材質は、剛性材料であり、例えばガラスである。表示基板は、作製完了後にこの下地基板101から剥離する必要がある。有機層103には、下地基板101に垂直な方向に有機層103を貫通するビア105が開設されている。ビア105の位置は、第1導電パターン102の位置に対応し、かつ第2導電層104は、ビア105を介して第1導電パターン102と電気的に接続される。
【0021】
第1導電パターン102は、外部駆動回路と表示基板上の駆動配線との電気的接続を図るためのバインディング構造の一部であり、厚さが60~200nmに制御されたチタン/アルミニウム/チタン(Ti/Al/Ti)の積層構造であってもよく、厚さが約80~150nmに制御された銅の単層構造であってもよいが、これに限定されない。
【0022】
有機層103は、PI(ポリイミド)を選択することができる。有機層103は、約6~20μm、より具体的には約6~10μmの厚さを有する。有機層103には、ビア105が開設されている。ビア105の領域は、第1導電パターン102が位置する領域に対応している。これにより、ビア105から第1導電パターン102が露出し、第2導電層104は、このビア105を介して第1導電パターン102と電気的に接続される。さらに、第2導電層104は、表示基板の他の構造と電気的に接続されていてもよく、これにより、第1導電パターン102と電気的に接続されたバインディング構造と表示基板との電気的接続が実現される。
【0023】
第2導電層104は、アルミニウム、銅等の金属材料または金属材料の複合材料を選択することができるが、これに限定されるものではなく、その厚さが約60~200nmである。第2導電層104は、第1導電パターン102と電気的に接触し、かつ積層配線されている。
【0024】
図1Dに示すように、表示基板の下地基板101を剥離した後、第1導電パターン102の下地基板101に近い側の面が露出し、第2導電層104が第1導電パターン102に遮られる。これにより、第2導電層104と外部環境との接触を回避することができ、腐食等による第2導電層104の故障の可能性を低減するのに役立つ。
【0025】
図1Bに示すように、表示基板は、ビア105を充填する充填構造106をさらに含み、充填構造106の下地基板101から遠い側の表面と下地基板101との間の距離と、有機層103の下地基板101から遠い側の表面と下地基板101との間の距離との距離差が所定の閾値未満である。
【0026】
充填構造106は、有機層103と同じ材料を選択して作製することができる。充填構造106の下地基板101から遠い側の表面と下地基板101との間の距離と、有機層103の下地基板101から遠い側の表面と下地基板101との間の距離との距離差が所定の閾値未満であるとは、充填構造106を作製した場合、充填構造106の下地基板101から遠い側の面と下地基板101との間の距離と、有機層103の下地基板101から遠い側の表面と下地基板101との間の距離との距離差は、比較的に小さい。
【0027】
選択可能な実施例において、この所定の閾値は、有機層103の厚さの10%以下であり、例えば、有機層103の厚さが6μmであれば、600nm以下である。明らかに、実際に実施される場合、この所定の閾値が小さいほど、後に作製される膜層の平坦度も高くなり、表示パネルの信頼性のさらなる向上に寄与する。
【0028】
この充填構造106が作製されていない場合、ビア105の下地基板101から遠い側に位置する膜層の一部は、このビア105の形状に合わせた形状である。すなわち、これらの膜層は、ビア105が位置する領域と、ビア105以外の領域とで、ビアの深さ寸法に相当する段差が存在する。充填構造106を作製することにより、ビア105の下地基板101から遠い側に位置する膜層の一部を充填構造上に直接配置することができ、膜層全体を比較的平坦な状態にすることができる。
【0029】
本開示の実施例に係る表示基板およびその作製方法、表示装置、ならびに表示パネルは、従来と比較して、バインディング領域Aのビア105に、ビア105を充填する充填構造106を設けることにより、バインドプロセスで発生する圧力の分担をこの充填構造106により図ることができ、ビア105に応力が集中する可能性を低減し、表示基板が破損する可能性を低減する。
【0030】
図1Aおよび
図1Bに示すように、表示基板は、例えば犠牲層DBL(De-Bonding-Layer)107、保護層など、他の膜層構造をさらに含んでもよいが、明らかに、これらの膜層構造は、必須ではなく、実情に応じて他の構造の膜層を選択的に追加することができる。
【0031】
本開示の少なくとも1つの実施例において、犠牲層107は、第1導電パターン102と下地基板101との間に位置し、その材料として、PI類(ポリイミド類)材料を選択することができ、約50~150nmの厚さを有し、第1導電性パターン102を下地基板101から分離して、バインディング構造を表示基板にバインドしかつ第1導電性パターン102と電気的に接触させるために使用される。
【0032】
本開示の少なくとも1つの実施例において、保護層は、第1保護層108Aと、第2保護層108Bとを含む。ここで、第1保護層108Aは、第1導電パターン102の下地基板101から遠い側に位置し、二珪酸の酸化物を選択して作製することができ、一般的に、その厚さが第1導電性パターン102の厚さよりも大きく、具体的に約100~400nmの厚さを有し、第1導電性パターン102を保護するとともに、第1導電パターン102と有機層103との付着力を向上させる。
【0033】
第2保護層108Bは、有機層103と第2導電層104との間に位置し、シリコン窒化物材料から選択的に作製され、その厚さが約10~200nmであり、主に有機層103に水分や酸素等が浸入して第2導電層104が腐食することを防止するために用いられる。
【0034】
さらに、本開示の少なくとも1つの実施例において、バリア層109をさらに含む。バリア層109は、その材料としてSiNxまたはシリコン酸化物(SiOx)を選択し、その厚さが約40~200nmである。バリア層109は、主に、レーザ剥離時のレーザ照射による薄膜トランジスタ(TFT)構造への悪影響を低減するためのものである。
【0035】
バリア層109の位置は、固定されていない。
【0036】
選択可能に、1つの具体的な実施形態において、バリア層109は、有機層103の下地基板101から遠い側に位置し、バリア層109のビア105に対応する領域は、充填構造106と第2導電層104との間に位置する。
【0037】
選択可能に、別の具体的な実施形態において、バリア層109は、有機層103の下地基板101から遠い側に位置し、バリア層109のビア105に対応する領域は、充填構造106の下地基板101から遠い側に位置する。
【0038】
すなわち、バリア層109の下地基板101から遠い側にビア105を充填する充填構造106を設けてもよいし、ビア105を充填する充填構造106を設けた後にバリア層109を作製してもよい。
【0039】
選択可能に、バリア層109の下地基板101から遠い側にバッファ層110をさらに含み、バッファ層110の異なる領域と下地基板101との間の距離の差は、所定の閾値未満である。
【0040】
バッファ層110は、通常、シリコンの窒化物、シリコンの酸化物のうちの1つ以上の材料から形成された無機層であり、厚さが250nm~400nm程度である。
【0041】
充填構造106を設けることにより、バッファ層110のビア105に対応する部分は、充填構造106の下地基板101から遠い側に位置するので、その膜層は、ビア105の形状に合わせた凹部領域を含まず、むしろ、ほぼ平坦な状態にあることが理解される。このように、作製されたバッファ層110の異なる領域と下地基板101との間の距離の差が比較的に小さく、バッファ層110は、比較的に平坦な状態となる。
【0042】
選択可能に、バリア層109の下地基板101から遠い側に、第1ゲート絶縁層111A、第2ゲート絶縁層111B、誘電体層113のうちの1つ以上をさらに含み、第1ゲート絶縁層111Aの異なる領域と下地基板101との間の距離の差は、所定の閾値未満であり、第2ゲート絶縁層111Bの異なる領域と下地基板101との間の距離の差は、所定の閾値未満であり、誘電体層113の異なる領域と下地基板101との間の距離の差は、所定の閾値未満である。
【0043】
すなわち、上記第1ゲート絶縁層111A、第2ゲート絶縁層111B、誘電体層113のうちの1つ以上の下地基板101から遠い側は、平坦化処理されて平坦面とされている。
【0044】
本実施例において、第1ゲート絶縁層111A、第2ゲート絶縁層111Bは、シリコンの窒化物やシリコンの酸化物等の絶縁材料で作製することができるが、誘電体層113は、有機材料が選択され、その厚さが約30~150nmである。
【0045】
具体的には、第1ゲート絶縁層111Aは、バリア層109の下地基板101から遠い側に位置する。従来、第1ゲート絶縁層111Aは、ビア105の構造に適合する必要があったが、このため、ビア105に対応する領域では、ビア105の形状に合わせて立ち上がる必要がある。ビア105に対応する領域では、第1ゲート絶縁層111Aと下地基板との間の距離が小さく、一方、第1ゲート絶縁層111A以外の領域では、第1ゲート絶縁層111Aと下地基板との間の距離が大きく、この距離差は、ビア105の深さ程度である。
【0046】
これに対し、本開示の実施例の技術手段において、充填構造106が設けられているため、ビア105に対応する領域では、第1ゲート絶縁層111Aと下地基板101との間にさらに充填構造を有するので、第1ゲート絶縁層111Aの異なる領域と下地基板101との間の距離の差が大幅に小さくなる。
【0047】
具体的には、この所定の閾値は、600nm以下であり、すなわち、第1ゲート絶縁層111A、第2ゲート絶縁層111B、誘電体層113の平坦度は、600nm以下である。さらに、1つの具体的な実施形態において、この所定の閾値は、200nm以下であり、各膜層の平坦性をさらに向上させることができる。
【0048】
バッファ層110の構造と同様に、充填構造106を設けることで、後続する他の膜層の構造も変化し、ビア105の形状に合わせて立ち上がる必要がないため、比較的平坦な構造となり、これらの膜層の異なる領域と下地基板101との間の距離が比較的均一であり、その距離差が小さいことも理解される。
【0049】
同時に、これらの膜層の形状が比較的平坦であり、ビア105の形状に合わせた構造を作製する必要がないため、これらの膜層を作製する際には、材料の堆積を行うだけでよく、ビア105に対応する領域をmaskプロセス(マスク露光)で露光する必要がなく、mask(マスク)の使用を低減することができる。
【0050】
例えば、第1ゲート絶縁層111A、第2ゲート絶縁層111Bおよび誘電体層113の作製に必要なmaskを低減することができる。これにより、4回のパターニング工程が節約され、コストの節約およびプロセスフローの節約に寄与するとともに、露光、エッチング等の操作を必要としないため、フォトレジスト(PR)や作製過程においてビア105の対応する領域に金属が残留する可能性も低減でき、表示基板の品質向上に寄与する。
【0051】
さらに、
図1Cおよび
図1Dに示すように、表示基板に薄膜トランジスタが含まれるのであれば、表示基板には、例えば活性層116、第1ゲート層112A、第2ゲート層112B、第1ソースドレイン電極115A、第2ソースドレイン電極115B、第1平坦層114A、第2平坦層114B、第3保護層108C、第4保護層108Dおよび第3導電層117等の膜層をさらに含んでもよいが、これらに限定されない。
【0052】
第3保護層108Cおよび第4保護層108Dには、この第3保護層108および第4保護層108Dを貫通する複数の排気孔118が開設されている。この第3保護層108Cおよび第4保護層108Dは、いずれも緻密な無機層であり、この排気孔118を設けることにより、その後の高温プロセスにおいて、これらの膜層がバブリングする可能性を低減することができる。
【0053】
さらに、第4保護層108Dおよび第3導電層117の下地基板から遠い側に画素ユニットを作製し、画素ユニットの駆動電極が第3導電層117と電気的に接続する。
図1Dに示すように、表示基板内の画素が無機発光ダイオード119である場合には、駆動配線が作製された下地基板上に無機発光ダイオード119を移転してバインドする必要がある。無機発光ダイオード119のP電極、N電極は、それぞれ第3導電層117における対応する電極に電気的に接続する。
【0054】
図2A~
図2Dを参照すると、
図2Aは、主に表示基板の力学的特性をシミュレーションするために使用される従来の表示基板のシミュレーションモデルである。なお、
図2Aには、貫通孔を含む有機層201Aが示されており、有機層201Aの貫通孔内に設けられた金属層202Aと、金属層202Aの上方に位置する他の膜層203Aとが模式的に示されている。
図2Cは、本開示の少なくとも1つの実施例に係る表示基板のシミュレーションモデルであり、貫通孔を含む有機層201Bが示されており、有機層201Bの貫通孔内に配置された金属層202Bと、貫通孔の存在により金属層202Bにおける貫通孔に対応する位置に存在する凹部を充填する充填構造206と、金属層202Bおよび充填構造206の上方に位置する他の膜層203Bとが模式的に示されている。上記表示基板の他の構造203A、203Bは、
図1Cおよび
図1Dに示す表示基板において、有機層103の下地基板101から遠い側に位置する各膜層構造の集合を指す。
【0055】
図2Aおよび
図2Cに示すシミュレーションモデルでは、表示基板の上境界の境界条件をU1=0、U2=0、R12=0としている。すなわち、表示基板の上境界の横方向、縦方向の変位は、いずれも0であり、回転は、0である。図中の矢印は、表示基板の下境界に荷重を印加することを示し、1回のシミュレーションでは、印加荷重は、0.3メガパスカル(MPa)である。
【0056】
実際のバインドプロセスでは、表示基板における
図2Aに示す上境界が固定されており、上境界の境界条件シミュレーションにより、図中の下境界の方向に沿って圧力を印加してバインド圧力ヘッドを形成し、表示基板とバインディング構造とのバインディングを実現する。上述した荷重シミュレーションを完成する
【0057】
図2Bおよび
図2Dに示すように、図中の単位は、MPaである。
図2Bに示す従来の表示基板のシミュレーション結果では、ビアに大きな応力集中が見られるが、
図2Dに示す本開示の一実施例に係る表示基板のシミュレーション結果では、ビアにおける応力集中が大幅に低減されている。
【0058】
本開示の少なくとも1つの実施例に係る表示パネルは、上述した表示基板を含む。
【0059】
本開示の少なくとも1つの実施例に係る表示装置は、上述した表示パネルを含む。
【0060】
本開示の少なくとも1つの実施例により提供される表示装置は、携帯電話、タブレット、テレビ、ディスプレイ、ノートパソコン、デジタルフォトフレーム、ナビゲーションなど、表示機能を有する任意の製品または部品である。
【0061】
本開示の実施例により提供される表示基板の作製方法は、
図3に示すように、以下のステップを含む。
【0062】
ステップ301において、下地基板を用意する。
【0063】
図4Aに示すように、本開示の少なくとも1つの具体的な実施形態において、まず下地基板401上に犠牲層402を作製する。
【0064】
ステップ302において、前記下地基板上に第1導電パターンを作製する。
【0065】
さらに、
図4Bに示すように、さらに、犠牲層402上に第1導電パターン403を作製する。
【0066】
ステップ303において、前記第1導電パターンの前記下地基板から遠い側に有機層を作製する。
【0067】
ステップ304において、前記有機層にビアを開設する。
【0068】
図4Cに示すように、まず、第1導電パターン403上に第1保護層404を作製した後、有機層405を作製し、さらに、有機層405上にビア406を開設した後、第2保護層407を作製する。
【0069】
ステップ305において、前記有機層の前記下地基板から遠い側に第2導電層を作製し、前記第2導電層は、前記ビアを介して前記第1導電パターンと電気的に接続される。
【0070】
次に、
図4Dに示すように、第2導電層408を形成する。第2導電層408は、ビア406を介して第1導電パターン403と電気的に接触する。
【0071】
ステップ306において、前記ビアを充填する充填構造を作製し、前記充填構造の前記下地基板から遠い側の表面と前記下地基板との距離と、前記有機層の下地基板から遠い側の表面と前記下地基板との距離との距離差が、所定の閾値未満である。
【0072】
本実施例における上記ステップ301~ステップ305のプロセスは、いずれも関連技術を参照することができる。
【0073】
図4Eに示すように、第2導電層408の作製が終了すると、ビアを充填する充填構造409が形成されるが、具体的には、塗布(coating)やインクジェット印刷等によりビア内に充填することができ、その材料は、耐高温PIを選択することができ、それにより表示基板作製中の一部の高温プロセスに適応し、高温プロセスでの損傷を回避する。
【0074】
本実施例において、上述した表示基板の実施例における表示基板を作製することができるので、少なくとも上述した表示基板の実施例の全ての技術的効果を奏することができるので、その説明は、省略する。
【0075】
本開示の少なくとも1つの実施例において、バリア層410を作製するステップをさらに含み、このステップについて、上記ステップ306の前に作製されてもよいし、上記ステップ306の後に作製されてもよい。
【0076】
選択可能に、1つの具体的な実施形態において、ステップ306の後、前記充填構造の前記下地基板から遠い側にバリア層を作製することをさらに含む。
【0077】
選択可能に、別の具体的な実施形態において、ステップ306の前に、前記有機層の前記下地基板から遠い側にバリア層を作製することをさらに含む。ステップ306は、具体的には、前記バリア層の前記下地基板から遠い側に、前記ビアを充填する充填構造を作製することを含む。
【0078】
すなわち、
図4Fに示すように、バリア層410を先に作製し、
図4Eに示すように、このビアを充填する充填構造409を作製してもよいし、ビアを充填する充填構造を先に作製し、次に、充填構造の下地基板から遠い側にバリア層を作製してもよい。
【0079】
さらに、バリア層の作製が完了した後、例えば、ソースドレイン電極層、平坦化層、パッシベーション層等の作製、およびLEDの移転・バインディングなど、いくつかの他の構造の作製を含むこともできるが、これらに限定されない。
【0080】
そのうち、その他の膜層構造の作製プロセスおよび材料などは、いずれも関連技術を参考にすることができ、LEDの移転は、大量の移転でも単一の移転でも選択することができ、LEDのバインド方法は、共晶溶接または導電性接着剤などの異なるバインド方法を選択することができる。これらのプロセスは、いずれも関連技術を参照することができるので、ここではさらに限定および説明をしない。
【0081】
以上記載されたのは、本開示の好適な実施形態である。なお、当業者は、本開示に記載されている原理を逸脱せずに様々な改良や修飾をすることもできる。これらの改良や修飾も、本開示の保護範囲として見なされるべきである。