(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】水冷却システムおよびそれを備える空気分離装置
(51)【国際特許分類】
F25J 3/04 20060101AFI20240625BHJP
F25J 3/08 20060101ALI20240625BHJP
F28B 1/02 20060101ALI20240625BHJP
F28B 1/06 20060101ALI20240625BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20240625BHJP
F28B 7/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
F25J3/04 Z
F25J3/08
F28B1/02
F28B1/06
B01D53/26 100
F28B7/00
(21)【出願番号】P 2023206024
(22)【出願日】2023-12-06
【審査請求日】2023-12-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100229851
【氏名又は名称】岡本 亜季
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 献児
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-097741(JP,A)
【文献】特開2021-196164(JP,A)
【文献】特開2012-145326(JP,A)
【文献】特開2007-024488(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104511231(CN,A)
【文献】特開平11-019461(JP,A)
【文献】実開昭55-002407(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J 1/00-5/00
F28B 1/00-11/00
F25B 1/00-7/00
F25B 19/00-30/06
F25B 43/00-49/04
F25D 1/00-9/00
B01D 53/26-53/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理ガスを取り込む圧縮機で圧縮された圧縮ガスを冷却する圧縮ガス冷却器と、
前記圧縮ガス冷却器で生じた凝縮水を、補給水として導入される湿式水冷却器と、
前記湿式水冷却器から導出された冷却水によって前記圧縮ガスを冷却するために前記圧縮ガス冷却器の冷端へ送る冷却水ポンプと、
前記圧縮ガス冷却器の温端から導出された前記冷却水を冷却する乾式水冷却器と、
前記湿式水冷却器から導出された前記冷却水を、前記圧縮ガス冷却器の冷端へ送り、前記圧縮ガス冷却器の温端から前記乾式水冷却器へ送り、導出された前記冷却水を前記湿式水冷却器又は前記冷却水ポンプの上流へ送る冷却水ライン配管と、
前記圧縮ガス冷却器から導出される凝縮水を
前記湿式水冷却器へ送る第一凝縮水ライン配管と、
前記第一凝縮水ライン配管へ設けられ、凝縮水の流量を調整する第一流量調整弁と、を備える、水冷却システム。
【請求項2】
前記凝縮水を貯留する水バッファを備える、請求項1に記載の水冷却システム。
【請求項3】
前記水バッファから前記湿式水冷却器へ凝縮水を送る第二凝縮水ライン配管と、
前記第二凝縮水ライン配管に設けられ、凝縮水の流量を調整する第二流量調整弁と、を備える、
請求項2に記載の水冷却システム。
【請求項4】
前記第一流量調整弁を制御し、凝縮水の供給量を制御する第一制御部を備える、請求項1に記載の水冷却システム。
【請求項5】
前記第二流量調整弁を制御し、凝縮水の供給量を制御する第一制御部を備える、
請求項3に記載の水冷却システム。
【請求項6】
電力コストの増減に合わせて、前記乾式水冷却器の稼働率を制御する第二制御部を備える、請求項1に記載の水冷却システム。
【請求項7】
請求項1に記載の水冷却システムを備える、空気分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水冷却システムに関し、例えば特に空気圧縮機に使用される冷却水を冷却する水冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
機器の冷却に用いられる冷却水は、一般的に湿式水冷却器および乾式水冷却器で冷却される(例えば、引用文献1参照)。
湿式水冷却器は、冷却水の一部を蒸発させ、その潜熱によって冷却水を冷却するものであって、大気に解放されたものや、大気から遮断されて減圧下で行われる構成(例えば、引用文献2参照)等ある。しかし、蒸発によって失われる冷却水を補給する必要がある。
補給水は、冷却水と混合する構成と、冷却水と混合せずに熱交換器を介して間接的に冷却する構成が考えられる。しかし、いずれの構成においても水の蒸発損失があることは共通の課題である。また、補給水と冷却水を混合すると、水中に含まれるミネラル成分等の濃縮を伴う問題もある。
乾式水冷却器は、冷却水を大気との熱交換器によって冷却するものであって、熱交換の効率を向上させるために送風機等を適用する必要がある(例えば、引用文献3参照)。
【0003】
水資源および電力の供給能力を鑑み、湿式水冷却器および乾式水冷却器を組み合わせて水冷却システムを最適化することは以前より知られているが、何れにせよ湿式冷却器を稼働するためには補給水の供給が必要となる。
特に水資源と電力の両方の供給が切迫する昨今においては、冷却を必要とする設備を追加することなく、環境の条件に応じて水および電力の使用を最適化するシステムの構築が求められる。この需要は、空気圧縮機を備えた空気分離装置において特に顕著である。一般的に空気圧縮機の冷却水と大気の温度差は小さく、大気冷却の場合、送風量が増大して送風機の負荷が大きくなるので、水の蒸発潜熱を利用して水を冷却し、送風機の消費電力を低減する経済的合理性が高いためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭51-056644公報
【文献】特開2004-232925号公報
【文献】米国特許公開第2021/0341222 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、上記問題および要望に鑑みて、乾式水冷却器と湿式水冷却器とを備えたシステムにおいて、圧縮ガス冷却器によって凝縮水を生成し、この凝縮水を湿式水冷却器へ供給することで補給水を抑制できる、水冷却システムを提供する。
また、この水冷却システムを備える空気分離装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の水冷却システムは、
被処理ガスを取り込む圧縮機で圧縮された圧縮ガスを冷却する圧縮ガス冷却器と、
前記圧縮ガス冷却器で生じた凝縮水を、補給水として導入される湿式水冷却器と、
前記湿式水冷却器から導出された冷却水によって前記圧縮ガスを冷却するために前記圧縮ガス冷却器の冷端へ送る冷却水ポンプと、
前記圧縮ガス冷却器の温端から導出された前記冷却水を冷却する乾式水冷却器と、
前記圧縮ガス冷却器から導出される凝縮水を送る第一凝縮水ライン配管と、
前記第一凝縮水ライン配管へ設けられ、凝縮水の流量を調整する第一流量調整弁と、を備える。
【0007】
被処理ガスは、例えば、空気(大気)、液化天然ガス(LNG)、天然ガス(NG)、ボイルオフガスなどが挙げられる。
圧縮ガスは、例えば、圧縮空気、圧縮天然ガス、圧縮ボイルオフガスなどが挙げられる。
【0008】
本開示の水冷却システム(A1、A2、A3)は、
大気を取り込む空気圧縮機(11)で圧縮された圧縮空気を冷却する圧縮空気冷却器(12)と、
前記圧縮空気冷却器(12)で生じた凝縮水を、補給水として導入される湿式水冷却器(13)と、
前記湿式水冷却器(13)から導出された冷却水によって前記圧縮空気を冷却するために前記圧縮空気冷却器(12)の冷端へ送る冷却水ポンプ(14)と、
前記圧縮空気冷却器(12)の温端から導出された温水(熱交換された冷却水)を冷却する乾式水冷却器(15)と、
前記圧縮空気冷却器(12)から導出される凝縮水を(前記前記湿式水冷却器(13)へ)送る第一凝縮水ライン配管(L2)と、
前記第一凝縮水ライン配管(L2)へ設けられ、凝縮水の流量を調整する第一流量調整弁(121)と、
を備えていてもよい。
【0009】
本開示の水冷却システム(A1、A2、A3)は、
前記湿式水冷却器(13)から導出された冷却水を、前記圧縮空気冷却器(12)の冷端へ送り、前記圧縮空気冷却器(12)の温端から前記乾式水冷却器(15)へ送り、導出された前記冷却水を前記湿式水冷却器(13)へ送る冷却水ライン配管(L3)を備えていてもよい。
【0010】
前記水冷却システム(A1、A2、A3)は、
前記大気を前記空気圧縮機(11)へ送り、前記空気圧縮機(11)から圧縮空気を前記圧縮空気冷却器(12)へ送る大気ライン配管(L1)と、を備えていてもよい。
【0011】
前記圧縮空気冷却器(12)から導出される圧縮空気(水蒸気飽和)を、空気分離装置へ供給されてもよい。
【0012】
前記水冷却システム(A1、A2、A3)は、
前記凝縮水を貯留する、圧縮空気冷却器(12)の貯留部(12a)あるいは別に設けられるバッファ、湿式水冷却器(13)の貯留部(131)あるいは別に設けられるバッファ、凝縮水ライン配管(L2)に設けられる水バッファ(16)の貯留部(161)のうち1種以上を備えていてもよい。
前記水冷却システム(A1)は、
前記水バッファ(16)から前記湿式水冷却器(13)へ凝縮水を送る第二凝縮水ライン配管(L21)と、
前記第二凝縮水ライン配管(L21)に設けられ、凝縮水の流量を調整する第二流量調整弁(122)と、を備えていてもよい。
【0013】
前記水冷却システム(A2)は、
前記第一流量調整弁(121)および/または第二流量調整弁(122)を制御し、凝縮水の供給量を制御する第一制御部(18)と、を備えていてもよい。
前記水冷却システム(A1)は、
前記湿式水冷却器(13)の冷却水貯留部(131)の冷却水の液量を測定する第一レベル計(22)と、
前記水バッファ(16)の貯留部(161)の水の液量を測定する第二レベル計(21)と、
を備えていてもよい。
前記第一制御部(18)は、冷却水ポンプ(14)の駆動を制御してもよい。
【0014】
前記水冷却システム(A3)は、
電力コストの増減に合わせて、前記乾式水冷却器(15)の稼働率を制御する(送風機を制御する)第二制御部(19)と、を備えていてもよい。
前記第二制御部(19)は、前記第一レベル計(22)のデータと、前記第二レベル計(21)のデータに基づいて、第二流量調整弁(122)を制御してもよい。
前記第二制御部(19)は、冷却水ポンプ(14)の駆動を制御してもよい。
【0015】
本開示の空気分離装置は、前記水冷却システム(A1、A2、A3)を備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態1の水冷却システムを示す図である。
【
図2】実施形態2の水冷却システムを示す図である。
【
図3】実施形態3の水冷却システムを示す図である。
【
図4】実施形態1の別実施形態の水冷却システム(並列配置)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本開示のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本開示の一例を説明するものである。本開示は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本開示の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本開示の必須の構成であるとは限らない。上流や下流はガス流の流れ方向を基準にしている。
【0018】
(実施形態1)
実施形態1の水冷却システムA1を
図1を用いて説明する。
水冷却システムA1は、圧縮空気冷却器12と、湿式水冷却器13と、冷却水ポンプ14と、乾式水冷却器15を備える。
【0019】
圧縮空気冷却器12は、大気を取り込む空気圧縮機11で圧縮された圧縮空気を冷却する。圧縮空気冷却器12は、底部に凝縮水を貯留する凝縮水貯留部12aを備える。空気圧縮機11で圧縮された圧縮空気は、冷却水により水蒸気飽和の状態まで乾燥され、凝縮水が生じる。冷却水は、冷却水ポンプ14により、湿式水冷却器13の貯留部131から送られる。圧縮空気冷却器12は、空気圧縮機11によって圧縮された大気と冷却水とを熱交換することによって、水蒸気飽和した圧縮空気が製造する。冷却によって凝縮した水は、熱交換器表面で結露して滴下したり、ミストセパレータ等によって圧縮空気中に漂う霧状または液滴状の凝縮水が分離され、圧縮空気冷却器12内に貯められる。
【0020】
湿式水冷却器13は、貯留部131を有し、圧縮空気冷却器12で生じた凝縮水を、第一凝縮水ライン配管L2を通じて補給水として導入される。湿式水冷却器13は、冷却水の一部を蒸発させて、その蒸発潜熱によって冷却水を冷却する。本実施形態では、大気(自然対流または強制対流)と接触させることで水を蒸発させているが、大気解放する必要はなく、大気と遮断された減圧条件で蒸発されても良いし、水の蒸発によって冷却された熱交換器によって冷却水が間接的に冷却されてもよい。
【0021】
第一凝縮水ライン配管L2には、流量調整弁121が設けられており、開弁、閉弁の制御により凝縮水を圧縮空気冷却器12から湿式水冷却器13へ送ることができる。
例えば、流量調整弁121は、タイマー制御で開閉されるものでも良いし、圧縮空気冷却器12内の凝縮水液位に基づいて開閉されても良いし、凝縮水ライン配管L2に配置された凝縮水流量計(不図示)による流量制御で制御されても良い。
【0022】
冷却水ポンプ14は、冷却水ライン配管L3に配置され、湿式水冷却器13の貯留部131から導出された冷却水によって圧縮空気を冷却するために圧縮空気冷却器12の冷端へ送る。
【0023】
乾式水冷却器15は、圧縮空気冷却器12の温端から導出された冷却水を冷却する。送風機のモータを駆動し、冷却する。乾式水冷却器15は、冷却水を送風機から送られる空気と間接的に熱交換することによって、冷却する。
【0024】
大気ライン配管L1は、大気を空気圧縮機11へ送り、空気圧縮機11から圧縮空気を圧縮空気冷却器12へ送る配管である。
第一凝縮水ライン配管L2は、圧縮空気冷却器12の貯留部12aから湿式水冷却器13へ凝縮水を送る配管である。
冷却水ライン配管L3は、湿式水冷却器13の貯留部131から圧縮空気冷却器12の冷端へ冷却水を送る。また、冷却水ライン配管L3は、圧縮空気冷却器12の温端から乾式水冷却器15へ送り、冷却された冷却水を湿式水冷却器13へ送る配管である。
【0025】
実施形態1によれば、圧縮空気は産業上幅広い利用があるが、圧縮空気の冷却時に大気由来の水蒸気が凝縮して凝縮水が得られる。この凝縮水を湿式冷却器13に供給すれば、冷却水の蒸発損失の一部を賄うか、乾式水冷却器15の冷却負荷を抑えるように湿式水冷却器13の負荷を高めることができ、乾式水冷却器15に使用される送風機に必要な消費電力を低減することができる。
圧縮空気冷却器12は、冷却水ライン配管L3より高い圧力で運用され得るので、第一凝縮水ライン配管L2に流量調整弁121を配置することで、圧縮空気冷却器12から凝縮水を導出する際の減圧によるエネルギー損失を最小にするように制御することができる。
【0026】
(別実施形態)
湿式水冷却器13と乾式水冷却器15とは、直列に配置されていたが、並列に配置されてもよい。
図4に並列配置を示す。冷却水ライン配管L3は、圧縮空気冷却器12の温端から乾式水冷却器15へ送る途中に分岐する分岐配管L31を有する。分岐配管L31は、圧縮空気冷却器12の温端からの水を湿式水冷却器13へ送る配管である。また、乾式水冷却器15で冷却された冷却水は、冷却水ポンプ14の上流の冷却水ライン配管L3へ合流する。
【0027】
(実施形態2)
実施形態2の水冷却システムA2を
図2を用いて説明する。
水冷却システムA2は、圧縮空気冷却器12と、湿式水冷却器13と、冷却水ポンプ14と、乾式水冷却器15、水バッファ16、第一制御部18を備える。実施形態1と同じ構成要素は説明を省略する。
【0028】
冷却水システムA2の電力または水資源等の用役アクセスは、必ずしも一定ではないので、いかなる状況でも安定的にシステムを稼働するためにバッファを持つことは好ましい。
水バッファ16は、系外からの供給水(工業用水等)と凝縮水を合わせて貯めることができる。凝縮水は、大気中成分を不純物として含みうるので、単独または供給水と一緒に浄化装置等によって浄化されてもよい。浄化装置は、水バッファ16と湿式水冷却器13との間に配置されてもよい。
凝縮水は大気由来であるから、必ずしも回収できる量が安定はしないので、水バッファ16を設けることによって安定した凝縮水管理が可能となる。
【0029】
水バッファ16は、貯留部161を有する。水バッファ16は、用水が供給されうる。また、第一凝縮水ライン配管L2は、圧縮空気冷却器12の貯留部12aから貯留部161へ接続され、凝縮水が送られる。
第二凝縮水ライン配管L21は、水バッファ16の貯留部161から湿式水冷却器13の貯留部131へ凝縮水(補給水)を送る配管である。
第二流量調整弁122は、第二凝縮水ライン配管L21に設けられている。第二流量調整弁122は、凝縮水(補給水)の流量を調整する。第二流量調整弁122は、タイマー制御で開閉されるものでも良いし、水バッファ16の貯留部161の凝縮水液位および/または湿式水冷却器13の貯留部131の液水位に基づいて開閉されても良いし、第二凝縮水ライン配管L21に配置された凝縮水流量計による流量制御で制御されても良い。
【0030】
第一レベル計22は、湿式水冷却器13の貯留部131の冷却水の液量を測定する。第二レベル計21は、水バッファ16の貯留部161の水の液量を測定する。
第一制御部18は、第一レベル計22および第二レベル計21の各データに基づいて、第一流量調整弁121および第二流量調整弁122を制御し、凝縮水(補給水)の供給量を制御する。
第一制御部18は、冷却水ポンプ14の駆動を制御してもよい。
【0031】
(実施形態3)
実施形態3の水冷却システムA3を
図3を用いて説明する。
水冷却システムA3は、圧縮空気冷却器12と、湿式水冷却器13と、冷却水ポンプ14と、乾式水冷却器15、水バッファ16、第一制御部18、第二制御部19を備える。実施形態1、2と同じ構成要素は説明を省略する。
【0032】
第二制御部19は、電力コストの増減に合わせて、乾式水冷却器15の稼働率を制御する、具体的には、送風機を制御する。電力コストのデータは、電力コストの変動を保存する外部装置から送られる。
電力コストが高いときは、乾式水冷却器15の稼働率を調整する。また第一制御部18は、水バッファ16から凝縮水を湿式冷却水塔13に導入して、その稼働率を調整する。
【0033】
また、太陽光発電や風力発電等、電力供給能力が環境によって変化しうる場合、乾式水冷却器15と湿式水冷却器13の各々の負荷を調整することが必要となる。
例えば、太陽光発電が可能な日中は安価な電力で乾式水冷却器15を主に稼働し、夜間に電力単価が上昇するに伴って湿式水冷却器13の負荷を上げるといった制御をする。
この時、日中は、圧縮空気冷却器12から得られた凝縮水を水バッファ16に貯め、夜間に水バッファ16に貯めた水で湿式水冷却器13の水需要を賄う制御を行う。つまり、凝縮水を電力価格と照らして最も価値が高い条件で使用することで、冷却水システムの経済性を向上できる。
【0034】
電力単価等の経済性データは、冷却水システムA3の稼働法、すなわち乾式水冷却器15(主に電力を消費)と湿式水冷却器13(主に水を消費)の負荷分担を決定するのに使用される。電力コストが低いと判断される場合は、乾式水冷却器15を主に稼働し、凝縮水を水バッファ16に貯め、電力コストが高いと判断される場合は、乾式水冷却器15の負荷を下げ、湿式水冷却器13の負荷を上げる。
湿式水冷却器13の負担は蒸発による水の逸失、具体的には湿式水冷却器13の貯留部131の水位の低下で検出できるので、水位が管理値に収まるように水バッファ16から補給水(凝縮水または凝縮水と用水の混合)が供給される。
乾式水冷却器15の負荷調整の判断に、水バッファ16内の水量(水位)が考慮されてもよく、こうすることによって水バッファ16内の水位が低下した時でも、乾式水冷却器15の負荷を高めることによって、冷却水温が安定するようにシステムを運用することができる。
【0035】
(実施例)
実施形態3の物理シミュレーションをした結果を示す。
入口条件温度35℃、相対湿度80%、1barAの空気100,000Nm3/hを、圧縮段を4段備える空気圧縮機で圧縮、冷却して、出口条件42℃、相対湿度100%、10barAの圧縮空気を得る場合を検討する。
入口条件において、空気中に含まれる水は3786kg/hであるが、出口条件では飽和しており、水蒸気としては684kg/hしか存在しないので、差の3102kg/hは凝縮水として回収することができる。
水の蒸発潜熱は40℃で575cal/gなので、冷却水温が40℃の場合、凝縮水3102kg/hで蒸発潜熱1783Mcal/h分だけ、冷却水を冷却できることになる。
乾式水冷却器に求められる動力は、大気温度と冷却水温度の差によって変わりうるが、一般的に温度差が小さくなるほど多くの送風量が必要となり、例えば35℃の大気を送風して40℃の冷却水を得る場合、1Mcal/hの冷却に0.052kWの電力を消費する。
上記凝縮水を水冷却に使用すれば、1783Mcal/h x 0.052kWh/Mcal=93kWの電力を削減することができる。
【0036】
乾式水冷却器と凝縮水が使用される湿式水冷却器で7400Mcal/hの熱負荷(上記空気圧縮機の冷却需要に相当)の水冷却を、昼夜で電力コストが異なった場合の最適化を検討する。
昼間を12時間としてその時の電力コストを20円/kWHとし、夜間を12時間としてその時の電力コストを60円/kWHとする。
昼夜関わらず凝縮水を湿式冷却器で連続的に使用した場合、乾式水冷却器の負荷は93kW低減され、292kW(=7400Mcal/hx0.052KWh/Mcalー93kW)の電力を使用する。
この場合、電力コスト一日あたり20円/kWhx292kWx12h+60円/kWhx292kWx12h=280320円となる。
一方、昼は乾式水冷却器のみ稼働して凝縮水は貯め、夜間に供給される凝縮水と貯めた凝縮水の両方を使用する場合、乾式水冷却器の負荷は、昼間は385kWとなる一方で、夜間は199kW(=385kW-186kW)の電力を使用する。
この場合、電力コスト一日あたり20円/kWhx385kWx12h+60円/kWhx199kWx12h=235680円となる。
つまり、凝縮水を電力コストの高い夜間に集中的に利用することによって、一日あたり約16%の電力コストの低減が見込まれることを意味する。
【0037】
本実施形態では、空気の圧縮冷却にともなって得られる凝縮水を利用して、水冷却にかかる電力及び水供給の負荷を低減することを意図しているが、凝縮水の利用タイミングを再生可能エネルギーの利用によって生じ得る電力供給能力に応じて調整し、特に電力が不足しがちな場合に凝縮水を積極的に利用して水冷却に係る消費電力を低減することで、電力コスト(これには安定した発電が可能な発電機や蓄電池の設置コストが暗に含まれる)を低減できる。
【0038】
(別実施形態)
(1)実施形態1から4で生成された圧縮空気は、空気分離装置へ提供されてもよい。
(2)実施形態1から4は、圧縮空気に限定されず、LNGの圧縮ガス、ボイルオフガスの圧縮ガスに適用されてもよい。
【符号の説明】
【0039】
11 空気圧縮機
12 圧縮空気冷却器
13 湿式水冷却器
15 乾式水冷却器
【要約】
【課題】乾式水冷却器と湿式水冷却器とを備えたシステムにおいて、圧縮空気冷却器によって凝縮水を生成し、この凝縮水を湿式水冷却器へ供給することで補給水を抑制できる、水冷却システムを提供する。
【解決手段】水冷却システムA1は、圧縮空気を冷却する圧縮空気冷却器12と、圧縮空気冷却器12で生じた凝縮水を、補給水として導入される湿式水冷却器13と、湿式水冷却器13から導出された冷却水によって圧縮空気を冷却するために圧縮空気冷却器12の冷端へ送る冷却水ポンプ14と、圧縮空気冷却器12の温端から導出された温水を冷却する乾式水冷却器15と、凝縮水の流量を調整する第一流量調整弁121とを備える。
【選択図】
図1