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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】多孔質体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/00 20060101AFI20240625BHJP
   A61L 27/02 20060101ALI20240625BHJP
   A61L 27/56 20060101ALI20240625BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20240625BHJP
   C02F 1/28 20230101ALI20240625BHJP
   A61L 9/014 20060101ALI20240625BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
C04B38/00 303Z
A61L27/02
A61L27/56
C04B38/00 304Z
B01J20/18 C
C02F1/28 E
A61L9/014
A61L9/01 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019203757
(22)【出願日】2019-11-11
(65)【公開番号】P2021075422
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-08-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391066490
【氏名又は名称】日本ゼトック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501228783
【氏名又は名称】株式会社オーエスユー
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】濱本 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 みずき
(72)【発明者】
【氏名】中島 佑一
(72)【発明者】
【氏名】山田 修
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 純平
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-055063(JP,A)
【文献】特開2000-281464(JP,A)
【文献】特開平04-034178(JP,A)
【文献】特開平11-179158(JP,A)
【文献】特開2013-221746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 38/00
A61L 27/02
A61L 27/56
A61K 6/00
B01J 20/18
C02F 1/28
A61L 9/014
A61L 9/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素源と、チタン源と、ゼオライトとを混合して燃焼合成してなる多孔質体を含前記多孔質体の質量に対する前記ゼオライトの質量割合が15~40質量%である、水、空気、土壌及び/又は物質の汚染の浄化又は予防用組成物。
【請求項2】
前記ゼオライトが、構造コードLTA又はFAUのゼオライトである、請求項1に記載の汚染の浄化又は予防用組成物。
【請求項3】
前記多孔質体の質量に対する前記ゼオライトの質量割合が1530質量%である、請求項1又は2に記載の汚染の浄化又は予防用組成物。
【請求項4】
前記燃焼合成が、1000~4000℃で1秒~10分間行われ、前記ゼオライトは細孔を有し、前記ゼオライトの細孔径が0.1~10Åである、請求項1~3のいずれかに記載の汚染の浄化又は予防用組成物。
【請求項5】
銀、銅、亜鉛、及び錫から選択される少なくとも1種の無機化合物を、前記炭素源、前記チタン源、及び前記ゼオライトと共に混合する、請求項1~4のいずれかに記載の汚染の浄化又は予防用組成物。
【請求項6】
前記汚染が、微生物、ウイルス、有機化合物、着色液体、アンモニア、窒素酸化物、硫黄化合物、及びアルデヒド類から選択される1種以上の汚染物質による、請求項1~5のいずれかに記載の汚染の浄化又は予防用組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の汚染の浄化又は予防用組成物を含む、酸化還元剤。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載の汚染の浄化又は予防用組成物を含む、ラジカル触媒。
【請求項9】
(1)炭素源と、チタン源と、ゼオライトとを混合する工程、及び
(2)前記工程(1)で得られた混合物を成形し、得られた成形体を空気中又は酸化性雰囲気中、1000~4000℃で1秒~10分間燃焼合成して多孔質体を得る工程、
を含む、請求項1~6のいずれかに記載の汚染の浄化又は予防用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質体及びその製造方法に関する。より具体的には、炭素源と、チタン源と、ゼオライトとを混合して燃焼合成してなる多孔質体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりセラミックス系多孔質材料は、水質浄化、空気浄化、土壌浄化等の分野において有害有機物等を除去するための浄化剤や触媒として利用されてきている。特に水には、人の健康に被害を生ずる恐れがある有機物が含まれており、それらをより効果的に除去する技術が求められている。それら有害有機物を分解・除去する化合物としては、炭化チタンが知られている。炭化チタンは、水、空気、土壌の浄化、これらの脱臭、抗菌及び汚染の予防に効果を発揮する(特許文献1)。しかし炭化チタンはこれら汚染物質の分解速度が遅く、かつ、分解には光エネルギーを必要とするため、実用化には改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-55063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、吸着性に優れた新たなセラミックス系多孔質材料を提供することを目的とする。本発明は、また、水質浄化、空気浄化、土壌浄化の分野で有害有機物や微生物等を吸着、除去、分解、又はこれらの汚染を予防できる、新規な汚染の浄化又は予防用組成物を提供することを目的とする。本発明は、さらに、当該多孔質体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、数々の多孔質体を鋭意検討した結果、炭素源、チタン源及びゼオライトを混合して燃焼合成してなる多孔質体が優れた汚染の浄化効果等を奏することを見出した。より具体的には、本発明は以下の構成であり得る。
〔1〕
炭素源と、チタン源と、ゼオライトとを混合して燃焼合成してなる多孔質体。
〔2〕
前記ゼオライトが、構造コードLTA又はFAUのゼオライトである、前記〔1〕に記載の多孔質体。
〔3〕
前記多孔質体の質量に対する前記ゼオライトの質量割合が1~99質量%である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の多孔質体。
〔4〕
前記燃焼合成が、1000~4000℃で1秒~10分間行われ、前記ゼオライトは細孔を有し、前記ゼオライトの細孔径が0.1~10Åである、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の多孔質体。
〔5〕
銀、銅、亜鉛、及び錫から選択される少なくとも1種の無機化合物を、前記炭素源、前記チタン源、及び前記ゼオライトと共に混合する、前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の多孔質体。
〔6〕
前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の多孔質体を含む、水、空気、土壌及び/又は物質の汚染の浄化又は予防用組成物。
〔7〕
前記汚染が、微生物、ウイルス、有機化合物、着色液体、アンモニア、窒素酸化物、硫黄化合物、及びアルデヒド類から選択される1種以上の汚染物質による、前記〔6〕に記載の汚染の浄化又は予防用組成物。
〔8〕
前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の多孔質体を含む、酸化還元剤。
〔9〕
前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の多孔質体を含む、ラジカル触媒。
〔10〕
(1)炭素源と、チタン源と、ゼオライトとを混合する工程、及び
(2)前記工程(1)で得られた混合物を成形し、得られた成形体を空気中又は酸化性雰囲気中、1000~4000℃で1秒~10分間燃焼合成して多孔質体を得る工程、
を含む、前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の多孔質体の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の好ましい態様により、吸着性に優れた新たなセラミックス系多孔質材料を提供することができる。本発明の好ましい態様により、水質浄化、空気浄化、土壌浄化の分野で有害有機物や微生物等を吸着、除去、分解、又はこれらの汚染を予防できる、新規な汚染の浄化又は予防用組成物を提供することができる。本発明により、当該多孔質体の製造方法を提供することができる。より具体的には、本発明の好ましい態様により、炭素源、チタン源及びゼオライトから構成される多孔質体による優れた汚染の浄化効果、汚染の防止効果を提供することができる。また、本発明の当該多孔質体は、汚染浄化等のための外部からの放射エネルギー(光)を必要とすることなく、多孔質体内のゼオライトに物質が吸着等されるため、汚染物質を効率的かつ短時間で分解、単離等することができる。従って、本発明の多孔質体は従来の炭化チタン系多孔質材料よりも高い汚染物質除去効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】試験例5における、比較例1(写真の左側)と実施例3(写真の右側)の試験結果を示す写真である。
図2】一般的なLTA型ゼオライトの骨格を示す化学構造式である。
図3】一般的なLTA型ゼオライトの骨格構造である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
[混合物]
本発明の一態様は、炭素源と、チタン源と、ゼオライトとを混合して燃焼合成してなる多孔質体である。
ここで、炭素源は、燃焼合成時に炭素を提供する材料であれば、いかなる炭素の化合物や組成物であっても良く、例えば、無機炭素やアモルファスカーボン、黒鉛(グラファイト)のような炭素からなる元素鉱物(単体の炭素のみからなる物質)の他、カーボンブラックのような有機物質から製造される炭素粒子、有機化合物のような炭素化合物、炭素の酸化物、窒化物、塩類(硝酸塩、塩化物、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩等)、水酸化物、炭化物セラミックス(炭化ケイ素、炭化ホウ素等)であってもよい。当該炭素源は、粉末であってもよい。炭素源の粉末を使用する場合、当該粉末の平均粒径は、レーザー回折・散乱法で測定した場合、例えば、0.01~500μm、好ましくは、0.05~200μm、より好ましくは、0.1~10μmである。
【0009】
チタン源は、燃焼合成時にチタンを提供する材料であれば、いかなるチタンの化合物や組成物であっても良く、例えば、金属チタンからなる元素鉱物(単体のチタンのみからなる物質)の他、酸化チタン(IV)等のチタン酸化物、有機物チタン、チタン合金、チタンの炭化物、窒化物、ホウ化物、塩類(硝酸塩、塩化物、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩等)、水酸化物であってもよい。チタン源として好ましくは、例えば金属チタンの粉末が挙げられる。チタン源の粉末を使用する場合、当該粉末の平均粒径は、レーザー回折・散乱法で測定した場合、例えば、0.01~500μm、好ましくは、0.1~200μm、より好ましくは、1~45μmである。
【0010】
上記炭素源とチタン源との混合割合は、用いる各原材料の種類、最終製品の用途等に応じて適宜設定すれば良いが、例えば、炭素源:チタン源(炭素元素及びチタン元素を基準とするモル比)=0.1~10:1程度、好ましくは0.5~5:1、より好ましくは0.9~1.1:1である。
【0011】
上記炭素源及びチタン源に加え、さらに、金属(銀、銅、亜鉛、錫、アルミニウム、ジルコニウム、ハフニウム、モリブデン、ステンレス鋼、鉄、白金及び白金-イリジウム合金等)、酸化物セラミックス(酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等)、ホウ化物セラミックス(ホウ化ジルコニウム、ホウ化アルミニウム、ホウ化ハフニウム、ホウ化ケイ素等)、窒化物セラミックス(窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等)、ケイ化物セラミックス(ケイ化アルミニウム、ケイ化チタン、ケイ化ジルコニウム、ケイ化ハフニウム等)、金属間化合物(チタンアルミニウム、ニッケルチタン等)、ホウ素、及びケイ素等から選択される少なくとも1種の他の無機化合物をゼオライトと共に混合して本発明の多孔質体を調製してもよい。当該他の無機化合物は、特に当該他の無機化合物として金属を使用する場合は、当該他の無機化合物の粉末を使用することができる。当該他の無機化合物粉末の平均粒径は、上記炭素源及びチタン源を粉末として使用する場合と同程度の平均粒径であればよく、具体的にはレーザー回折・散乱法で測定した場合、例えば、0.01~500μm、好ましくは、0.1~200μm、より好ましくは、1~100μmである。当該他の無機化合物の混合割合は、当該他の無機化合物の種類、形態等に応じて適宜決定できるが、燃焼合成前の炭素源、チタン源、並びにゼオライトを含む混合物全体の質量に対し、例えば、0.1~30質量%、好ましくは1~20質量%程度であってもよい。
【0012】
上記炭素源及びチタン源とともに混合されるゼオライトは、シリカ及び/又はアルミナを含有する、結晶性アルミノケイ酸塩であって、酸化物セラミックス系多孔質材料とも呼ばれる多孔質結晶である。
一般に、ゼオライトが有する結晶構造(骨格構造ともいう)の基本的な単位は、ケイ素原子又はアルミニウム原子を取り囲んだ4個の酸素原子からなる四面体(TO4四面体構造、TはSi及び/又はAl)であり、これらが3次元方向に連なって結晶構造を形成している。ゼオライトの一般的な組成は、以下の式(I):
z+[(SiO2x(Al23yz- (I)
(式(I)中、Mはイオン交換可能なカチオン種であって、通常、1価又は2価の金属を表し、zはMの原子価であり、x及びyは任意の整数である)
で示すことができる。好ましくは、Mは1A~7A、8、及び1B~3B族から選択される金属原子であり、より好ましくは水素イオンリチウムイオン、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びバリウムイオンであり、x/y(SiO2/Al23モル比)は、例えば1~100、好ましくは2~6である。なお、上記式(I)で示されるゼオライトは、さらに水和物を含む一般式として表現してもよい。
【0013】
本発明で用いる合成ゼオライトの結晶構造は、特に制限はなく、例えば、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association)が定めるアルファベット3文字からなる構造コードにて表される各種の結晶構造が挙げられる。構造コードの例としては、例えば、LTA、FER、MWW、MFI、MOR、LTL、FAU、BEAの構造コードが挙げられる。また、本発明で用いる当該結晶構造の好適な一態様を結晶構造の名称で示すと、A型、X型、β型、Y型、L型、ZSM-5型、MCM-22型、フェリエライト型及びモルデナイト型である。
一般に合成ゼオライトは、その結晶構造中に、陽イオンを有しており、当該陽イオンが、アルミノケイ酸塩から構成される上記結晶構造中の負電荷を補償して、正電荷の不足を補っている。
本発明で用いることができるゼオライトは、特に制限はないが、当該陽イオンとして、好ましくは、水素イオンリチウムイオン、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びバリウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有するゼオライトであってもよい。そして、より好ましくは、当該陽イオンとして、水素イオン、リチウムイオン、カルシウムイオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有するゼオライト、更に好ましくは水素イオン、カルシウムイオン及びナトリウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有するゼオライトであってもよい。
さらに、ゼオライト骨格のシリコン元素全部または一部をリン(P)などの他の元素に置換したもの及びゼオライト骨格のアルミニウム元素をボロン(B)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)などの他の元素に全部または一部を置換したものであってもよい。
【0014】
ゼオライトは固有の細孔径、表面電場、イオン交換能、固体酸性質、吸着能などを有し、乾燥剤、吸着剤、分子ふるい型分離剤、イオン交換剤、触媒等の用途に用いられる。ここで使用されるゼオライトの細孔径は、ガス吸着法で測定して、例えば、0.01~100Åであり、好ましくは0.1~50Åであり、より好ましくは1~10Åである。ゼオライトの粉末を使用する場合、当該ゼオライトの平均粒径は、d50%メジアン径で、レーザー回折・散乱法によって測定した場合、例えば、0.01~100μm、好ましくは、0.1~50μm、より好ましくは、0.5~10μmである。
【0015】
上記ゼオライトと共に、又は上記ゼオライトに代わって、当該ゼオライトと同様の効果を持つ吸着剤である、シリカ(フュームドシリカ若しくは沈降シリカ)、粘土(モンモリロナイト、カオリン)、天然ゼオライト、パーライトを用いることもできる。
【0016】
燃焼合成前の前記炭素源、チタン源、並びにゼオライトの混合物全体の質量(100質量%)に対する、炭素源の質量割合は、例えば、1~99質量%であり、好ましくは5~60質量%であり、より好ましくは10~30質量%である。上記混合物全体の質量に対する、チタン源の質量割合は、例えば、1~99質量%であり、好ましくは20~90質量%であり、より好ましくは40~80質量%である。上記混合物全体の質量に対する、ゼオライトの質量割合は、例えば、1~99質量%であり、好ましくは5~60質量%であり、より好ましくは10~40質量%、さらに好ましくは15~30質量%である。
【0017】
[多孔質体]
上記炭素源と、チタン源と、ゼオライトとの混合物を、任意に金型に充填して成形体を得、さらに当該混合物又は成形体を燃焼することによって、多孔質体を合成することができる。
具体的に、本発明の多孔質体の製造方法は、以下の工程を含み得る。
(1)炭素源と、チタン源と、ゼオライトと、任意の他の無機化合物とを混合する工程、及び
(2)前記混合物を成形し、得られた成形体を空気中又は酸化性雰囲気中、1000~4000℃、好ましくは1500~3500℃、より好ましくは2000~3000℃で、1秒~10分、好ましくは5秒~5分、より好ましくは30秒~1分間燃焼合成する工程。
【0018】
上記混合は、ミキサー及びミル等を利用することができる。ここで、上記成形体の成形方法は、上記特許文献1に記載された方法のような、公知のセラミックスの成形法に従って実施することができ、例えば、プレス成形、鋳込み成形、射出成形、静水圧成形等の成形法が挙げられる。成形の際の圧力等の成形条件は、用いる原材料の種類、最終製品の用途等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、0.01~400MPa、好ましくは0.05~100MPa、より好ましくは0.1~10MPa等の条件を挙げることができる。また、成形体の形状も限定的でなく、柱状体、筒状体(パイプ状)、球状体、直方体、板状体等のいずれであっても良い。成形体の形状として好ましくは、直径10~30mm、高さ10~30mm程度の円柱形が適当である。
【0019】
上記混合物又は成形体の燃焼合成は、上記特許文献1に記載された方法のような、公知のセラミックスの燃焼合成法に従って実施することがでる。例えば、まず、放電、レーザー照射、カーボンヒーター等による着火等により成形体を局部的に加熱することによって反応を開始させることができる。いったん反応が開始すれば、自発的な発熱により反応が進行し、最終的に目的とする多孔質体を得ることができる。反応時間は、成形体の大きさ等にもよるが、通常は数秒~数分程度である。燃焼反応は、大気中(空気中)、酸化性雰囲気中(酸素・オゾン・二酸化窒素を主として含む雰囲気)、不活性ガス中(アルゴン、窒素、ヘリウム等)、及び真空中(例えば、0.1気圧以下)等で行ってもよい。また、好ましい反応温度(燃焼合成温度)としては、例えば、1000℃以上、より好ましくは1500℃以上、さらに好ましくは1500~3500℃、特に好ましくは、2000~3000℃の範囲を挙げることができる。さらに、好ましい反応時間としては、例えば、1秒~10分、より好ましくは5秒~5分、さらに好ましくは30秒~1分を挙げることができる。
【0020】
当該多孔質体の細孔径は、d50%メジアン径で、BETの比表面積法で測定して、例えば、0.01~100μmであり、好ましくは0.02~10μmであり、より好ましくは0.05~5μmである。また、多孔質体の多孔度(多孔質体の全体積あたりの細孔が占める体積の割合)は、例えば、30~90%であり、好ましくは45~80%であり、より好ましくは50~70%である。上記多孔質体の相対密度は、例えば、20~70%程度、好ましくは30~50%とすることが望ましい。多孔度及び相対密度は、成形体の密度、燃焼温度、雰囲気、圧力等によって制御することができる。また、多孔質体は、三次元網目構造を有し、(a)表面の一部又は全部に形成された酸化物系セラミックス層と、(b)前記セラミックス層以外の部分に形成された非酸化物系セラミックス部分と、を含むことが好ましい。特に、上記多孔質材料中の細孔が貫通孔(連通孔)であることが好ましい。
【0021】
上記多孔質体全体の質量(100質量%)に対する、炭素源の質量割合は、例えば、1~99質量%であり、好ましくは5~60質量%であり、より好ましくは10~30質量%である。上記混合物全体の質量に対する、チタン源の質量割合は、例えば、1~99質量%であり、好ましくは20~90質量%であり、より好ましくは40~80質量%である。上記多孔質体全体の質量に対する、ゼオライトの質量割合は、例えば、1~99質量%であり、好ましくは5~60質量%であり、より好ましくは10~40質量%である。上記多孔質体全体の質量に対する、上記他の無機化合物の質量割合は、例えば、0.1~30質量%、好ましくは1~20質量%である。上記多孔質体全体の質量に対する、上記多孔質体に存在する、上記炭素源とチタン源との存在割合は、例えば、炭素源:チタン源(炭素元素及びチタン元素を基準とするモル比)=0.1~10:1程度、好ましくは0.5~5:1、より好ましくは0.9~1.1:1である。
【0022】
本発明の多孔質体は、燃焼反応に先立って、予め成形体表面に金属及び金属酸化物の少なくとも1種を付与してもよい。これにより、燃焼合成時に金属及び/又は金属酸化物が成形体表面に溶融付着し、表面改質を行うことができる。金属及び金属酸化物としては、例えばチタン、ジルコニウム、ハフニウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、クロム、バナジウム、銅、銀、亜鉛、錫、金、白金、鉄、ニッケル、コバルト、チタニア、シリカ、カルシア、マグネシア、アルミナ、クロミア、ヘマタイト等を挙げることができる。また、これらを付与する方法としては、例えば金属及び金属酸化物の少なくとも1種の粉末を適当な溶媒に分散させた分散液又はペーストを塗付する方法のほか、ディッピング法、スプレー法、スピンコート法等の方法が挙げられる。
【0023】
理論に縛られないが、本発明の多孔質体は、ゼオライトを燃焼合成して得られた多孔質体の細孔中に、炭素、チタン及び炭化チタンがコーティング及び/又は結合されている状態にあると考えられる。炭素、チタン及び炭化チタンは、原材料の量、形態等にもよるが、多孔質体の細孔中の壁面に、分散されて付着及び/又は結合されているような状態にあり、細菌等の汚染物質等が当該細孔内に取り込まれ、吸着され、保持されている間に、細孔内に付着及び/又は結合した炭素、チタン及び炭化チタンの触媒効果によって当該汚染物質等が分解されることにより、汚染が浄化されるものと推測される。例えば、炭化チタンそれ自体は粒径がμオーダーであるため、炭化チタンとゼオライトを単に混合しただけでは、0.1~10Å程度の小さなゼオライト細孔内に入らない。従って、炭素源、チタン源及び/又は炭化チタンをゼオライトと混合したものと、これらを燃焼合成して得られたものとではその物性や特性を異にするものと思われる。
【0024】
[多孔質体の用途]
本発明の多孔質体は、汚染の浄化又は予防用の組成物として有用である。理論に縛られないが、本発明の多孔質体は、主に多孔質部分に汚染物質を取り込むことによって、汚染の浄化又は予防を行うことができると考えられる。汚染の浄化又は予防を行う対象としては、水、空気、土壌及び/又は物質を挙げることができる。ここで、物質としては、プラスチック、ガラス、布、皮、木材、金属、コンクリート、紙及び紙パルプ等を挙げることができる。また、汚染としては、細菌、真菌、ウイルス、バイオフィルム等の微生物類;農薬、殺虫剤、殺鼠剤、抗菌剤、環境ホルモン、排気ガス等の化学物質;フェノール、トルエン、ベンゼン等の有機化合物;コーヒー、紅茶、ワイン、醤油、ソース等の液体類;アンモニア、窒素酸化物等の窒素化合物;硫化水素、メチルメルカプタンなどの硫黄化合物;アルデヒド類等を挙げることができる。細菌としては、緑膿菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌、芽胞菌等を挙げることができる。真菌としては、酵母菌、カンジタ菌、カビ等が挙げられる。さらなる用途としては、抗菌材、化学物質除去剤、水質浄化剤、漂白剤、消臭剤等が挙げられる。
加えて、本発明の多孔質体は、酸化還元剤及び触媒としても利用できる。例えば、過マンガン酸カリウム、ニクロム酸カリウム、オゾン等の化学物質の酸化還元反応を促進するために本発明の多孔質体を用いることができる。また、本発明の多孔質体が触媒する反応としては、例えばチタン、炭素及び炭化チタンにおけるラジカル反応を挙げることができ、過酸化水素、ヨウ化カリウム等のラジカル分解反応として作用するために本発明の多孔質体を用いることができる(ラジカル触媒としての用途)。
ここで言う汚染の浄化には、有害有機物や細菌等の汚染を吸着、除去、及び/又は分解することが含まれる。また、汚染の予防には、有害有機物や細菌等で汚染されないように抑制・防止し、又は汚染を遅延することが含まれる。
【0025】
本発明の多孔質体は、従来の多孔質材料が使用される各種用途に幅広く使用することができる。例えば、フィルター、触媒又は触媒担体、センサー、生体材料(人工骨、人工歯根、人工関節等)、抗菌・防汚材料、気化器、放熱板又は熱交換器、電極材料、半導体ウェハー吸着板、吸着材、ガス放出用ベントホール、防振・防音材料、発熱体(ダイオキシン分解用発熱体等)等が挙げられる。
【0026】
本発明の多孔質体は加工性が良好であり、上記のような各種の用途に応じて加工し、所望の形状とすることができる。加工方法は、例えば切削等の公知の加工方法(装置)によって実施することができる。
【0027】
本発明の多孔質体は、フィルター(セラミックスフィルター)としても好適に用いることができる。フィルターとしての使用方法は限定的でなく、公知のセラミックスフィルターと同様の方法で用いることができる。また、気相用又は液相用のいずれの用途にも使用できる。例えば、廃水、廃液、汚染水、濁水等の液体をろ過するためのフィルターとして上記多孔質体を用いることができる。これらは、抗菌又は防汚機能を発揮し得ることから、難分解性有害物質の酸化除去等に有効である。
【0028】
本発明の多孔質体は、加熱することによって再利用を図ることができる。加熱により、細孔内又は表面部に蓄積した介在物がガス化して多孔質体外に放散され、これにより所望の機能を再現することが可能である。加熱温度は、再利用可能になるような温度であれば限定されないが、通常は500℃以上の範囲内で適宜決定すれば良い。
【0029】
本発明の多孔質体は、光照射してもしなくても上記触媒等の作用を発揮し得るが、暗室のような光が無い状態であっても、微生物、ウイルス、化学物質、有機化合物、着色液体、アンモニア、窒素酸化物、硫黄化合物、及びアルデヒド類などから選択される1種以上の汚染物質の吸着及び分解ができる。「光が無い状態」は、可視光、紫外線及び赤外線を含むすべての光(エネルギー線)を遮光する場合を含む。また、本発明の多孔質体は、可視光、紫外線及び赤外線を含むすべての光(エネルギー線)又は可視光、紫外線及び赤外線のいずれかを照射しても、微生物、ウイルス、化学物質、有機化合物、着色液体、アンモニア、窒素酸化物、硫黄化合物、及びアルデヒド類などから選択される1種以上の汚染物質の吸着及び分解ができる。照射する光強度は、対象物質によって適宜決定すれば良い。
【0030】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、当該実施例は本発明の範囲を限定する意図ではないことを確認的に明記しておく。
【実施例
【0031】
(原材料)
以下の実施例及び比較例で使用する原材料の詳細は以下の通りである。
・チタン粉末
チタン元素(Ti)の粉末、平均粒径(レーザー回折・散乱法による):40μm
・炭素粉末
炭素元素(C)の粉末、平均粒径(レーザー回折・散乱法による):0.2μm
・LTA型ゼオライト粉末(構造コード:LTA、ゼオライトタイプ:A型)
SiO2/Al23モル比:2.0、ゼオライトの細孔径(ガス吸着法で測定):4.1Å、ゼオライトの平均粒径(レーザー回折・散乱法による):2.6μm、下記式(I)Mz+[(SiO2x(Al23yz- (I)
で示す場合、式(I)中、MはNa、zは1、x/yは2.0
【0032】
(実施例1)
炭素粉末(2.88g(燃焼合成前の出発原料に対して18質量%))及びチタン粉末(11.52g(燃焼合成前の出発原料に対して72質量%))を準備し、炭素粉末:チタン粉末が1:1(モル比)である混合粉末(14.4g(燃焼合成前の出発原料に対して90質量%))にLTA型ゼオライト粉末(1.6g(燃焼合成前の出発原料に対して10質量%))を加え、これら3種からなる混合粉末16gを調製した。この混合粉末を金型に充填し、プレス成形して直径20mm、高さ25mmの円柱状の成形体を得た。この成形体密度は2.3g/cm3であった。次いで、空気中、黒鉛板上に置いた上記成形体の上部一端を放電により着火し、約2300℃の高温燃焼波を自己伝播させ、当該成形体は45秒間燃焼した。当該燃焼合成反応により、炭素・チタン・ゼオライト多孔質体(細孔径(BET比表面積法で測定、d50%メジアン径):0.2μm、多孔度:53%、相対密度:47%)が得られた。なお、実施例1は本願発明の要件を満たさない参考例である。
【0033】
(実施例2)
炭素粉末(2.72g(燃焼合成前の出発原料に対して17質量%))及びチタン粉末(10.88g(燃焼合成前の出発原料に対して68質量%))を準備し、LTA型ゼオライト粉末が、燃焼合成前の炭素粉末、チタン粉末、及び当該ゼオライト粉末の3種の粉末混合物の合計質量に対して15質量%になるように当該LTA型ゼオライト粉末を加えること、この成形体密度が2.2g/cm3であること、高温燃焼波による燃焼温度が約2200℃であることを除き、上記実施例1と同様に燃焼合成反応を行い、炭素・チタン・ゼオライト多孔質体(細孔径(BET比表面積法で測定、d50%メジアン径):0.2μm、多孔度:55%、相対密度:45%)を得た。
【0034】
(実施例3)
炭素粉末(2.24g(燃焼合成前の出発原料に対して14質量%))及びチタン粉末(8.96g(燃焼合成前の出発原料に対して56質量%))を準備し、LTA型ゼオライト粉末が、燃焼合成前の炭素粉末、チタン粉末、及び当該ゼオライト粉末の3種の粉末混合物の合計質量に対して30質量%になるように当該LTA型ゼオライト粉末を加えること、この成形体密度が2.0g/cm3であること、高温燃焼波による燃焼温度が約2100℃であることを除き、上記実施例1と同様に燃焼合成反応を行い、炭素・チタン・ゼオライト多孔質体(細孔径(BET比表面積法で測定、d50%メジアン径):0.2μm、多孔度:60%、相対密度:40%)を得た。
【0035】
(実施例4)
炭素粉末(1.92g(燃焼合成前の出発原料に対して12質量%))及びチタン粉末(7.68g(燃焼合成前の出発原料に対して48質量%))を準備し、LTA型ゼオライト粉末が、燃焼合成前の炭素粉末、チタン粉末、及び当該ゼオライト粉末の3種の粉末混合物の合計質量に対して40質量%になるように当該LTA型ゼオライト粉末を加えること、この成形体密度が1.9g/cm3であること、高温燃焼波による燃焼温度が約2000℃であることを除き、上記実施例1と同様に燃焼合成反応を行い、炭素・チタン・ゼオライト多孔質体(細孔径(BET比表面積法で測定、d50%メジアン径):0.2μm、多孔度:63%、相対密度:36%)を得た。
【0036】
(比較例2)
ゼオライトを含有せず、炭素粉末:チタン粉末が0.9:1(モル比)である混合粉末を調製した。得られた混合粉末を金型に充填し、プレス成形して直径50mm、高さ100mmの円柱状の成形体を得た。次いで、空気中、黒鉛板上に置いた上記成形体の上部一端を放電により着火し、約2800℃の高温燃焼波を自己伝播させ、当該成形体を約2800℃で5秒間燃焼した。当該燃焼合成反応により、炭化チタンを得た。
【0037】
(比較例3)
LTA型ゼオライト粉末で、SiO2/Al23モル比:2.0、ゼオライトの細孔径(ガス吸着法で測定):4.1Å、ゼオライトの平均粒径(レーザー回折・散乱法による):2.6μm、下記式(I):
z+[(SiO2x(Al23yz- (I)
で示す場合、式(I)中、MはNa、zは1、x/yは2.0
【0038】
(比較例4)
ゼオライトを含有せず、炭素粉末:チタン粉末が0.9:1(モル比)である混合粉末を調製した。得られた混合粉末を用いて直径50mm×高さ100mmの円柱状成形体を製造した。次いで、空気中、黒鉛板上に置いた上記成形体の上部一端を放電により着火し、約2800℃の高温燃焼波を自己伝播させ、当該成形体を約2800℃で5秒間燃焼した。当該燃焼合成反応により、炭化チタンが得られた。得られた炭化チタンとLTA型ゼオライトとを70:30(質量%)となるように混合した。なお得られた混合物は、炭化チタンとゼオライトを単に混合しただけであるので、炭化チタンはゼオライトの細孔内に入っていない構造と推測される。
【0039】
[評価]
(試験例1)
上記実施例及び比較例で調製した多孔質体等の試料について、水質浄化剤としてのフェノール分解能を評価した。具体的には、水の質量に対してフェノールの質量割合が1ppmとなるようにフェノール溶液を調製し、さらに上記実施例及び比較例の各試料を、懸濁液全体に対する試料の最終濃度が1質量%となるように当該フェノール溶液に加え、懸濁液を調製した。室温(25℃)・暗所で1時間攪拌後、各試料を含む懸濁液を0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、試料を除去してろ液を得た。液体クロマトグラフィーを用いて、当該ろ液中のフェノールの濃度を測定した。多孔質体等の試料を使用せずに調製したろ液をコントロール(比較例1)とし、当該コントロールを100としたときのフェノールの残存率(%)を算出した。
(結果1)
比較例1~比較例4と比較して、本発明の多孔質体である実施例~4に、良好なフェノール分解能が認められた。


【0040】
表1
【0041】
(試験例2)
上記実施例及び比較例で調製した多孔質体等の試料について、土壌浄化剤としてのダイアジノン(登録商標)分解能を評価した。具体的には、エタノール水溶液(水:エタノール質量比=1:1)の質量に対してダイアジノン(登録商標)の質量割合が10ppmとなるようにダイアジノン(登録商標)溶液を調製し、さらに上記実施例及び比較例の各試料を、懸濁液全体に対する試料の最終濃度が1質量%となるように当該ダイアジノン(登録商標)溶液に加え、懸濁液を調製した。室温(25℃)・暗所で1時間攪拌後、各試料を含む懸濁液を0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、試料を除去してろ液を得た。液体クロマトグラフィーを用いて、当該ろ液中のダイアジノン(登録商標)の濃度を測定した。多孔質体等の試料を使用せずに調製したろ液をコントロール(比較例1)とし、当該コントロールを100としたときのダイアジノンの残存率(%)を算出した。
(結果2)
比較例1~比較例4と比較して、本発明の多孔質体である実施例3に、良好なダイアジノン(登録商標)分解能が認められた。
【0042】
表2
【0043】
(試験例3)
上記実施例及び比較例で調製した多孔質体等の試料について、防汚剤及び洗浄剤としてのワイン脱色能を評価した。具体的には、ワイン(サントリー製、製品名:グラン ロモ マルベック トリヴェント アルゼンチン(赤ワイン))10mLに蒸留水90mLを加え、計100mLのワイン希釈液を調製した。さらに上記実施例及び比較例の各試料を、懸濁液全体に対する試料の最終濃度が1質量%となるように当該ワイン希釈液に加え、懸濁液を調製した。室温(25℃)・暗所で10分間攪拌後、各試料を含む懸濁液を0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、試料を除去してろ液を得た。分光光度計を用いて、ろ液の吸光度を測定した。多孔質体等の試料を使用せずに調製したろ液をコントロール(比較例1)とし、当該コントロールを100として色の残存率(%)を算出した。
(結果3)
比較例1~比較例4と比較して、本発明の多孔質体である実施例3に、良好なワイン脱色能が認められた。
【0044】
表3
【0045】
(試験例4)
上記実施例及び比較例で調製した多孔質体等の試料について、酸化還元剤としての過マンガン酸カリウムに対する酸化還元反応を評価した。具体的には、水の質量に対して過マンガン酸カリウムの濃度が0.1mMとなるように過マンガン酸カリウム溶液を調製し、さらに上記実施例及び比較例の各試料を当該過マンガン酸カリウム溶液に加えて、懸濁液全体に対する試料の最終濃度が1質量%である懸濁液を調製した。室温(25℃)・暗所で10分間攪拌後、各試料を含む懸濁液を0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、試料を除去してろ液を得た。分光光度計を用いて、当該ろ液の吸光度を求めた。多孔質体等の試料を使用せずに調製したろ液をコントロール(比較例1)とし、当該コントロールを100としたときの過マンガン酸カリウムの残存率(%)を算出した。
(結果4)
比較例1~比較例4と比較して、本発明の多孔質体である実施例3に、良好な過マンガン酸カリウム還元能が認められた。
【0046】
表4
【0047】
(試験例5)
上記実施例及び比較例で調製した多孔質体等の試料について、工業用途触媒としての過酸化水素に対する触媒活性を評価した。過酸化水素水(30質量%)に上記実施例及び比較例の各試料を加え、当該試料の最終濃度が1質量%となるように室温(25℃)・暗所で懸濁し、懸濁液を調製した。当該懸濁液を5日間静置し、目視で泡の発生の有無を確認した(図1も参照)。泡が発生した場合は過酸化水素の分解として評価した。泡の発生した場合を〇(良好)と判定し、泡の発生が認められなかった場合を×(不良)と判定した。
(結果5)
コントロール(比較例1)と比較して本発明の多孔質体である実施例3に、過酸化水素の分解が認められた(図1)。
【0048】
表5
【0049】
(試験例6)
上記実施例及び比較例で調製した多孔質体等の試料について、抗菌剤としての緑膿菌に対する殺菌効果を評価した。具体的には、記実施例及び比較例の各試料を滅菌水に加え、当該試料の最終濃度0.1質量%となるように試料溶液を調製した。当該試料溶液に対し、生理食塩水にて調製した緑膿菌(106 CFU/mL)を最終濃度が1質量%になるように添加し、室温(25℃)・暗所で24時間攪拌した。BBLTM TrypticaseTM Soy Agar with Lecithin and Polysorbate 80培地を用いて、混釈平板培養法にて32.5℃、5日間培養し、コロニー数を測定し、生菌数を算出した。
(結果6)
コントロール(比較例1)と比較して本発明の多孔質体である実施例3に、緑膿菌に対する殺菌効果が認められた。
【0050】
表6
図1
図2
図3