(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】寝具、及び寝具の製造方法
(51)【国際特許分類】
A47C 27/12 20060101AFI20240625BHJP
A47G 9/10 20060101ALI20240625BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
A47C27/12 D
A47G9/10 T
A47G9/10 V
A61B5/11 100
(21)【出願番号】P 2020091382
(22)【出願日】2020-05-26
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000196129
【氏名又は名称】西川株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】島田 紗樹
(72)【発明者】
【氏名】田實 佳郎
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-201487(JP,A)
【文献】特開平07-327939(JP,A)
【文献】特開2004-154242(JP,A)
【文献】特開2008-012278(JP,A)
【文献】国際公開第2019/230730(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/00-22
A61G 7/00-16
A47G 9/10
A61B 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の身体が載せられる寝具であって、
布製品と、
前記布製品に刺繍された複数の糸状センサと、
を備え、
前記複数の糸状センサは、
平面視において波状を呈する第1糸状センサと、
前記第1糸状センサとは異なる位置に設けられ、平面視において波状を呈する第2糸状センサと、
を含
み、
前記寝具は、平面視において、第1方向に延びる長辺、及び前記第1方向に交差する第2方向に延びる短辺を有する長方形状を呈し、
前記第1糸状センサ及び前記第2糸状センサのそれぞれは、コネクタ部と、ループ状に延びる糸状のセンサ部とを備え、
前記センサ部は、前記コネクタ部との接続部と、前記接続部から前記第2方向に向かって湾曲する山部と、前記山部から前記山部の突出方向の反対方向に湾曲する谷部とを有し、
前記センサ部の前記接続部との反対側の端部には、折り返し部が設けられる、
寝具。
【請求項2】
前記寝具は、平面視において長方形状とされた敷き寝具であり、
前記第2糸状センサは、平面視における前記敷き寝具の中央を通ると共に前記敷き寝具の長手方向に延びる基準線に沿うように配置されており、
前記第1糸状センサは、前記第2糸状センサから見て前記敷き寝具の短手方向の端部側に配置されている、
請求項1に記載の寝具。
【請求項3】
前記寝具は、平面視において長方形状とされた枕であり、
前記第1糸状センサは、平面視における前記枕の中央を通ると共に前記枕の短手方向に延びる基準線から見て前記枕の長手方向の一方側に配置されており、
前記第2糸状センサは、前記基準線から見て前記枕の長手方向の他方側に配置されている、
請求項1に記載の寝具。
【請求項4】
使用者の身体が載せられる寝具の製造方法であって、
布製品に糸状センサを配置する工程を備え、
前記糸状センサを配置する工程では、
複数の前記糸状センサが前記布製品に刺繍されることによって前記布製品に固定され
、
前記寝具は、平面視において、第1方向に延びる長辺、及び前記第1方向に交差する第2方向に延びる短辺を有する長方形状を呈し、
複数の前記糸状センサは、第1糸状センサ及び第2糸状センサを含んでおり、
前記第1糸状センサ及び前記第2糸状センサのそれぞれは、コネクタ部と、ループ状に延びる糸状のセンサ部とを備え、
前記センサ部は、前記コネクタ部との接続部と、前記接続部から前記第2方向に向かって湾曲する山部と、前記山部から前記山部の突出方向の反対方向に湾曲する谷部とを有し、
前記センサ部の前記接続部との反対側の端部には、折り返し部が設けられる、
寝具の製造方法。
【請求項5】
前記糸状センサを配置する工程では、ブランケットステッチ、チェーンステッチ、オープンチェーンステッチ、ハニカムステッチ、コーチングステッチ、ランニングステッチ、クロスステッチ、ストレートステッチ、フライステッチ、ヘリングボーンステッチ、フェザーステッチ、及びダブルフェザーステッチのいずれかによって前記糸状センサが前記布製品に刺繍される、
請求項4に記載の寝具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、寝具を使用する使用者の身体を測定するセンサを備えた寝具、及び寝具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2008-245682号公報には、被験者の寝姿勢を判定する寝姿勢判定装置が記載されている。寝姿勢判定装置は、棒状の形態で寝台に固定される第1センサ部、第2センサ部、第3センサ部、及び第4センサ部と、A/D変換器と、処理部とを備える。第1センサ部~第4センサ部のそれぞれは、被験者の寝台の在床を検知する歪みセンサを含んでいる。歪みセンサは、被験者が寝台に横たわったときに寝台にかかる押圧力によって生じた歪みを検出し、歪み量に応じた抵抗変化量(抵抗値)を出力する。
【0003】
特開2014-4227号公報には、就寝者の体動を検出し、就寝者の睡眠に関する情報を取得する睡眠情報取得装置が記載されている。睡眠情報取得装置は、装置本体と、チューブ状の睡眠センサとを有する。睡眠センサは、就寝者の下側に設置される感圧チューブと、感圧チューブの内圧が作用するマイクロフォンと、複数の感圧プレートとによって構成される。感圧チューブは、可撓性及び弾性を有する材料によって構成されている。感圧チューブは、ベッドの敷き寝具の上面に設置される本体部と、本体部から装置本体まで延びる連絡部とを有する。
【0004】
特開2019-673号公報には、ベッドパッドの上に配置される板状の振動センサー手段を備えた生体情報検出装置が記載されている。振動センサー手段は、ベッドパッド上に存在している人の身体の振動を検出する。振動センサー手段は、底板、クッション部材、振動センサー本体、及び振動収集板の順に並んで構成されている。人の身体の振動の検出は、上記の振動センサー手段をベッドパッドの上に配置することによって行われる。
【0005】
特開2019-37672号公報には、ベッドのマットレスを被覆するカバーの裏側に固定された板状の圧電センサを備えた生体情報検出装置が記載されている。圧電センサは、幅25mm、長さ550mm、厚さ0.45mmの長方形薄板状を呈する。圧電センサは、伸縮柔軟性を有しており、圧電層と、一対の電極層と、一対の保護層とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-245682号公報
【文献】特開2014-4227号公報
【文献】特開2019-673号公報
【文献】特開2019-37672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した寝姿勢判定装置では棒状の形態で第1センサ部~第4センサ部が固定されており、前述した睡眠情報取得装置ではチューブ状の睡眠センサが設けられる。また、前述した各生体情報検出装置では、板状の振動センサー手段、又は圧電センサが配置される。しかしながら、センサとして棒状、チューブ状、又は板状のものが配置される場合、寝具の使用者にセンサの配置の手間をかけさせる可能性がある。すなわち、使用者自身がセンサの配置をしなければならないので、センサの設置が煩雑であり使用者に煩わしさを感じさせる可能性がある。
【0008】
棒状、チューブ状、又は板状のセンサは、寝具を構成する布製品に対して大がかりなものであるため、その寝具の上で睡眠をとる使用者に違和感を感じさせる可能性がある。また、棒状、チューブ状、又は板状のセンサは、形が固定されているため、配置の自由度が低い。更に上記のセンサは、寝具の上に広範囲に配置できないので、データを高精度に取得できないという現状がある。
【0009】
本開示は、センサの設置を容易に行うことができ、寝具の使用者への違和感を抑制することができると共に、データを高精度に取得することができる寝具、及び寝具の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る寝具は、使用者の身体が載せられる寝具であって、布製品と、布製品に刺繍された複数の糸状センサと、を備え、複数の糸状センサは、平面視において波状を呈する第1糸状センサと、第1糸状センサとは異なる位置に設けられ、平面視において波状を呈する第2糸状センサと、を含み、寝具は、平面視において、第1方向に延びる長辺、及び第1方向に交差する第2方向に延びる短辺を有する長方形状を呈し、第1糸状センサ及び第2糸状センサのそれぞれは、コネクタ部と、ループ状に延びる糸状のセンサ部とを備え、センサ部は、コネクタ部との接続部と、接続部から第2方向に向かって湾曲する山部と、山部から山部の突出方向の反対方向に湾曲する谷部とを有し、センサ部の接続部との反対側の端部には、折り返し部が設けられる。
【0011】
この寝具は、布製品を備え、布製品に複数の糸状センサが刺繍されている。従って、使用者が使用する状態において複数の糸状センサが刺繍されていることにより、使用者にセンサの配置の手間をかけさせないようにすることができる。すなわち、使用者は、センサに電力を供給する電源をオン等するだけでセンサを使用することができる。従って、センサの設置を容易に行うことができ、使用者に煩わしさを感じさせないようにすることができる。また、布製品に糸状センサが刺繍されていることにより、その布製品の上で睡眠をとる使用者に違和感を感じさせないようにすることができる。糸状センサは、布製品に対して自由に縫い込むことができるため、配置の自由度が高い。更に、この寝具では、平面視において波状を呈する第1糸状センサと、第1糸状センサとは異なる位置で波状を呈する第2糸状センサとが刺繍されている。従って、第1糸状センサ及び第2糸状センサが、互いに異なる場所で波状を呈することにより、布製品の広範囲の場所からデータの取得を行うことができる。その結果、寝具の上に広範囲に配置できるので、データを高精度に取得することができる。
【0012】
寝具は、平面視において長方形状とされた敷き寝具であってもよく、第2糸状センサは、平面視における敷き寝具の中央を通ると共に敷き寝具の長手方向に延びる基準線に沿うように配置されていてもよく、第1糸状センサは、第2糸状センサから見て敷き寝具の短手方向の端部側に配置されていてもよい。この場合、敷き寝具の中央を通る基準線に沿って設けられる第2糸状センサによって使用者の仰向け寝のデータを測定可能となる。そして、第2糸状センサから見て敷き寝具の短手方向の端部側に設けられた第1糸状センサによって使用者の横向き寝のデータを測定可能となる。従って、敷き寝具の上に横たわる使用者の仰向き寝及び横向き寝のデータを測定することができる。
【0013】
寝具は、平面視において長方形状とされた枕であってもよく、第1糸状センサは、平面視における枕の中央を通ると共に枕の短手方向に延びる基準線から見て枕の長手方向の一方側に配置されていてもよく、第2糸状センサは、基準線から見て枕の長手方向の他方側に配置されていてもよい。この場合、枕の長手方向の一方側に波状の第1糸状センサが刺繍されており、枕の長手方向の他方側に波状の第2糸状センサが刺繍されているので、枕の長手方向の一方側及び他方側のそれぞれにおいてデータを測定することができる。
【0014】
本開示に係る寝具の製造方法は、使用者の身体が載せられる寝具の製造方法であって、布製品に糸状センサを配置する工程を備え、糸状センサを配置する工程では、複数の糸状センサが布製品に刺繍されることによって布製品に固定され、寝具は、平面視において、第1方向に延びる長辺、及び第1方向に交差する第2方向に延びる短辺を有する長方形状を呈し、複数の糸状センサは、第1糸状センサ及び第2糸状センサを含んでおり、第1糸状センサ及び第2糸状センサのそれぞれは、コネクタ部と、ループ状に延びる糸状のセンサ部とを備え、センサ部は、コネクタ部との接続部と、接続部から第2方向に向かって湾曲する山部と、山部から山部の突出方向の反対方向に湾曲する谷部とを有し、センサ部の接続部との反対側の端部には、折り返し部が設けられる。
【0015】
この寝具の製造方法では、布製品に糸状センサが刺繍されている。従って、刺繍によって糸状センサを布製品に固定させることができ、使用者は糸状センサが刺繍された寝具を使用できるので、使用者にセンサの配置の手間をかけさせないようにすることができる。すなわち、使用者は、予め刺繍によってセンサが布製品に固定された寝具を使用できるので、センサに電力を供給する電源をオン等するだけでセンサの使用を開始することができる。従って、センサの設置を容易に行うことができ、使用者に煩わしさを感じさせないようにすることができる。糸状センサは、布製品に対して自由に縫い込むことができるため、配置の自由度が高い。すなわち、糸状センサを波状となるように布製品に固定したり、広範囲にはり巡らせるように糸状センサを布製品に固定させたりすることができる。従って、センサの配置の自由度を高めることにより、布製品の広範囲の場所からデータの取得を行うことができ、その結果、データを高精度に取得することができる。
【0016】
糸状センサを配置する工程では、ブランケットステッチ、チェーンステッチ、オープンチェーンステッチ、ハニカムステッチ、コーチングステッチ、ランニングステッチ、クロスステッチ、ストレートステッチ、フライステッチ、ヘリングボーンステッチ、フェザーステッチ、及びダブルフェザーステッチのいずれかによって糸状センサが布製品に刺繍されてもよい。この場合、布製品に対する糸状センサの固定を通常の刺繍と同じように行うことができるので、布製品に対する糸状センサの固定を容易に行うことができる。従って、糸状センサ付きの寝具の製造を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、センサの設置を容易に行うことができ、寝具の使用者への違和感を抑制することができると共に、データを高精度に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る寝具の例を示す平面図である。
【
図2】
図1の寝具の側地、内容物、及び糸状センサを示す断面図である。
【
図3】実施形態に係る寝具の別の例を示す平面図である。
【
図4】実施形態に係る糸状センサによって測定されたデータの処理構成を示すブロック図である。
【
図5】実施形態に係る寝具を備える睡眠状態取得システムの例示的なブロック図である。
【
図6】(a)は、敷き寝具の上で使用者が仰向けとなったときの心拍の波形の例を示すグラフである。(b)は、敷き寝具の上で使用者が横向き寝となったときの心拍の波形の例を示すグラフである。
【
図7】(a)は、敷き寝具の上で使用者が右へ寝返りしたときの体動の波形の例を示すグラフである。(b)は、敷き寝具の上で使用者が左へ寝返りしたときの体動の波形の例を示すグラフである。
【
図8】糸状センサから取得されたRRIの波形の例を示すグラフである。
【
図9】(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)のそれぞれは糸状センサの刺繍の態様の例を示す図である。
【
図10】(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)及び(g)のそれぞれは糸状センサの刺繍の態様の別の例を示す図である。
【
図11】(a)、(b)及び(c)のそれぞれは変形例に係る糸状センサの配置態様を示す図である。
【
図12】更なる変形例に係る糸状センサの配置態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図面を参照しながら実施形態に係る寝具、及び寝具の製造方法について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0020】
本開示において、「寝具」とは、身体を休めるときに身体に当てられるものを示している。「寝具」としては、例えば、マットレス若しくは敷き布団等の敷き寝具、掛け布団等の掛け寝具、枕、ベッドパッド、クッション又は座布団が挙げられる。本開示において、「使用者」は、寝具を使用する者を示している。「使用者」としては、例えば、購入した寝具の上に横たわる者、又は購入のために寝具の上に横たわる者が挙げられる。
【0021】
本開示において、「布製品」とは、寝具の全部又は一部を構成する布状の部分を示している。「布製品」は、例えば、側地、シーツ(パッドシーツを含む)、又はカバー等である。以下の実施形態では、「布製品」が側地である例について説明する。「内容物」とは、寝具の内部に収容される物であって、例えば、ポリエステル製の粒綿を含む綿(わた)、ウレタン、及び羽毛を含む柔軟性素材である。「側地」とは、内容物を収容する布地部分を示している。本開示において、布製品には「糸状センサ」が刺繍によって固定されている。「糸状センサ」とは、一方向に直線状に伸ばしたり波状にしたりすることが可能なセンサであって、例えば、繊維を含み柔軟に曲げることが可能な糸状のセンサを示している。「波状」とは、線の少なくとも一部が一定の方向から当該一定の方向とは異なる方向に曲がっている状態を示している。「波状」は、正弦波状、三角波状、及び矩形波状を含んでいる。また、「波状」は、規則的に山部及び谷部が形成された形状であってもよいし、特定の部分に山部又は谷部が形成された形状であってもよい。
【0022】
図1は、実施形態に係る寝具を備える寝具セット1を示す平面図である。
図1に示されるように、寝具セット1は、本実施形態に係る寝具の一例である敷き寝具10と枕20とを備える。敷き寝具10及び枕20は、例えば、使用者が睡眠をとるときに当該使用者の睡眠状態を測定する寝具である。
【0023】
「睡眠状態を測定する」とは、例えば、睡眠中の使用者の呼吸、心拍及び体動の少なくともいずれかを測定することによって、当該使用者の眠りの深さ等を推定し、眠りの状態に関する情報を取得することを示している。寝具セット1は、通常の寝具セットと同様、睡眠をとるために個人用又は家庭用として用いられてもよいし、試験研究用として研究所等で用いられるものであってもよい。
【0024】
敷き寝具10は、平面視において、第1方向D1に延びる長辺、及び第1方向D1に交差する第2方向D2に延びる短辺を有する長方形状を呈する。枕20は、平面視において、第2方向D2に延びる長辺、及び第1方向D1に延びる短辺を有する長方形状を呈する。第1方向D1は、敷き寝具10の長手方向、及び枕20の短手方向に相当し、第2方向D2は、敷き寝具10の短手方向、及び枕20の長手方向に相当する。
【0025】
敷き寝具10は、例えば、敷き寝具10に横たわる使用者の呼吸、心拍及び体動の少なくともいずれかを測定する第1糸状センサ11、第2糸状センサ12及び第3糸状センサ13を備える。第1糸状センサ11、第2糸状センサ12及び第3糸状センサ13は、敷き寝具10の側地10Aと一体化されている。
【0026】
本開示において「一体化」とは、ある物と他の物とが互いに固定されて一体となることを示しており、ある物と他の物とが予め一体化されていること、及びある物と他の物とが後で一体化されること、の両方を含んでいる。なお、敷き寝具10の糸状センサの構成は、上記第1糸状センサ11、第2糸状センサ12及び第3糸状センサ13の例に限られない。例えば、第1糸状センサ11、第2糸状センサ12及び第3糸状センサ13の少なくともいずれかが省略されてもよい。
【0027】
図2は、敷き寝具10の第1糸状センサ11(第2糸状センサ12又は第3糸状センサ13であってもよい)を鉛直方向D3に沿って切断した模式的な断面図である。
図1及び
図2に示されるように、敷き寝具10は、側地10Aと、側地10Aの内部に収容された内容物10Bとを備える。
【0028】
内容物10Bは、柔軟性素材によって構成されている。一例として、内容物10Bは、ポリウレタン素材で形成された構造体である。しかしながら、内容物10Bとしては、他にも種々のものを用いることが可能である。例えば、内容物10Bは、固綿又はシート状ウレタンであってもよい。
【0029】
第1糸状センサ11は、例えば、コネクタ部11bと、ループ状に延びる糸状のセンサ部11cとを備える。センサ部11cは、例えば、圧電体が組紐にされた圧電組紐である。第2糸状センサ12は、コネクタ部11bと同様のコネクタ部12b、及びセンサ部11cと同様のセンサ部12cを備える。
【0030】
第3糸状センサ13は、コネクタ部11bと同様のコネクタ部13b、及びセンサ部11cと同様のセンサ部13cを備える。なお、第2糸状センサ12及び第3糸状センサ13の構成は、例えば、第1糸状センサ11の構成と同様であるため、以下では第2糸状センサ12及び第3糸状センサ13の構成の詳細な説明を適宜省略する。
【0031】
コネクタ部11bは、例えば、平面視における敷き寝具10の長手方向(第1方向D1)の一方側(例えば使用者の頭側)に設けられており、枕20の周辺に位置する。センサ部11cは、コネクタ部11bから敷き寝具10の長手方向の他方側(例えば使用者の脚側)に延び出している。
【0032】
糸状のセンサ部11cは、例えば、導電性繊維からなる芯と、当該芯を被覆すると共に圧電性繊維によって構成された紐状の被覆部とを含む。導電性繊維及び圧電性繊維のそれぞれは、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維、アラミド繊維、ポリスルホン繊維、ポリエーテル繊維若しくはポリウレタン繊維等の合成繊維、綿、麻若しくは絹等の天然繊維、アセテート等の半合成繊維、又は、レーヨン若しくはキュプラ等の再生繊維を含んでいる。
【0033】
センサ部11cの圧電性繊維は、一例として、ポリ乳酸を含む。芯には紐状の被覆部が巻き付けられている。更に、導電性繊維は、金属繊維、導電性高分子からなる繊維、又は繊維の表面に導電性を有する層が設けられた繊維であってもよい。圧電性繊維は圧電性高分子によって構成されていてもよく、圧電性高分子としてはポリフッ化ビニリデン又はポリ乳酸が挙げられる。以上のように構成されることにより、センサ部11cは糸のようにしなやか且つ柔軟な構成となる。例えば、センサ部11cの太さは1mm以下であり、センサ部11cはたこ糸と同様の手触りである。このため、センサ部11cの上に身体を載せても使用者はほとんど違和感を感じない。
【0034】
センサ部11cは、側地10Aに刺繍によって縫い込まれている。従って、センサ部11cは、側地10Aの上方に露出する部位と、側地10Aの下方に隠れる部位とを備える。すなわち、センサ部11cは、側地10Aから見て鉛直方向D3の一方側(上方)及び他方側(下方)のそれぞれに露出する。このようにセンサ部11cが側地10Aに縫い込まれることによって、側地10Aへのセンサ部11cの固定が実現される。
【0035】
センサ部11cは、コネクタ部11bとの接続部14と、接続部14から第2方向D2に向かって湾曲する山部15と、山部15から山部15の突出方向の反対方向に湾曲する谷部16とを有する。なお、センサ部11cは、1本の糸状部材によって形成されているが、センサ部11cの少なくとも一端のみが接続部14を介してコネクタ部11bに接続されていてもよい。すなわち、センサ部11cの両端がコネクタ部11bに接続されていなくてもよい。また、山部15及び谷部16は、例えば、第1方向D1に沿って交互に並んでいる。例えば、センサ部11cは、複数の山部15、及び複数の谷部16を有する。
【0036】
なお、山部15及び谷部16の数は、単数であっても、上記のように複数であってもよい。すなわち、山部15及び谷部16の数は、特に限定されない。一例として、山部15及び谷部16の数は3又は4である。例えば、各山部15は第2方向D2の一方側に張り出し、各谷部16は第2方向D2の他方側に張り出している。このように、センサ部11cは、山部15及び谷部16が交互に並ぶ波形に配置される。
【0037】
センサ部11cの接続部14との反対側の端部には、折り返し部17が設けられる。折り返し部17は、例えば、第1方向D1に山状に突出している。また、接続部14と折り返し部17とを結ぶ仮想直線に対して、山部15及び谷部16のそれぞれは互いに対称となる位置に配置されている。その結果、センサ部11cは、平面視においてそろばんのコマのような形状とされている。
【0038】
第2糸状センサ12のセンサ部12c、及び第3糸状センサ13のセンサ部13cは、センサ部11cと同様、接続部14、山部15、谷部16及び折り返し部17を備える。第2糸状センサ12は、例えば、敷き寝具10の第2方向D2の中央を通ると共に第1方向D1に延びる基準線Lに沿って配置されている。
【0039】
第1糸状センサ11は第2糸状センサ12から見て敷き寝具10の第2方向D2の一方側(一例として左側)に設けられ、第3糸状センサ13は第2糸状センサ12から見て敷き寝具10の第2方向D2の他方側(一例として右側)に設けられる。第1糸状センサ11及び第3糸状センサ13は、基準線Lに対して互いに対称となるように配置されてもよい。
【0040】
例えば、第2糸状センサ12は敷き寝具10において仰向き寝をする使用者の身体の位置に設けられる。そして、第1糸状センサ11は敷き寝具10において左向き(敷き寝具10に横たわる使用者から見たら右向き)に横向き寝をする位置に設けられ、第3糸状センサ13は敷き寝具10において右向き(敷き寝具10に横たわる使用者から見たら左向き)に横向き寝をする位置に設けられる。
【0041】
図3は、例示的な枕20の詳細を示す平面図である。
図3に示されるように、枕20は、例えば、枕20に頭部を当てる使用者の呼吸、心拍及び体動の少なくともいずれかを測定する第1糸状センサ21及び第2糸状センサ22を備える。例えば、第1糸状センサ21及び第2糸状センサ22は、平面視における枕20の第1方向D1の片側(一例として下側)に配置される。これにより、使用者の頸部からの測定も可能となる。しかしながら、第1糸状センサ21及び第2糸状センサ22の配置態様は適宜変更可能である。
【0042】
第1糸状センサ21及び第2糸状センサ22は、枕20の側地20Aと一体化されている。なお、枕20の糸状センサの構成は、上記第1糸状センサ21及び第2糸状センサ22の例に限られず、例えば、第1糸状センサ21及び第2糸状センサ22の少なくともいずれかが省略されてもよい。
【0043】
枕20は、側地20Aと、側地20Aの内部に収容された内容物とを備える。枕20の内容物は、例えば、敷き寝具10の内容物10Bと同様、柔軟性素材によって構成されている。但し、枕20の内容物の材料は、内容物10Bの材料とは異なっていてもよい。枕20の内容物は、例えば、綿(わた)、パイプ材、又はそば殻であってもよい。
【0044】
第1糸状センサ21は、例えば、コネクタ部21bと、ループ状に延びる糸状のセンサ部21cとを備える。センサ部21cは、例えば前述したセンサ部11cと同様、圧電組紐である。第2糸状センサ22は、コネクタ部21bと同様のコネクタ部22b、及びセンサ部21cと同様のセンサ部22cを備える。なお、第2糸状センサ22の構成は、例えば、第1糸状センサ21の構成と同様であるため、以下では第2糸状センサ22の構成の詳細な説明を適宜省略する。
【0045】
コネクタ部21bは、例えば、平面視における枕20の長手方向(第2方向D2)の一方側(例えば枕20に頭を載せた使用者から見て右側)に固定されている。センサ部21cは、コネクタ部21bから枕20の長手方向の中央側に延び出している。センサ部21cの材料は、例えば、前述したセンサ部11cの材料と同様である。すなわち、一例として、センサ部21c(センサ部22c)は、導電性繊維からなる芯と、当該芯を被覆すると共に圧電性繊維によって構成された紐状の被覆部とを含む。従って、センサ部21cに頭を載せた後に違和感を感じさせないようにすることができる。
【0046】
センサ部21c(センサ部22c)は、前述したセンサ部11cと同様、側地20Aに刺繍によって縫い込まれている。センサ部21cは、コネクタ部21bとの接続部24と、接続部24から第1方向D1に向かって湾曲する山部25と、山部25から山部25の突出方向の反対方向に湾曲する谷部26とを有する。なお、
図3に示されるセンサ部21cの形状及び配置態様はあくまで一例であって、
図3に示されるものに限られず適宜変更可能である。
【0047】
山部25及び谷部26は、例えば、第2方向D2に沿って交互に並んでいる。例えば、センサ部21cは、複数の山部25、及び複数の谷部26を有する。山部25及び谷部26の数は、一例として7又は8であるが、特に限定されない。例えば、各山部25は第1方向D1の一方側に張り出し、各谷部26は第1方向D1の他方側に張り出している。センサ部21cは、山部25及び谷部26が交互に並ぶ波状を呈する。
【0048】
センサ部21cの接続部24との反対側の端部には、折り返し部27が設けられる。折り返し部27は、例えば、第2方向D2に山状に突出している。例えば、接続部24と折り返し部27とを結ぶ仮想直線に対して、山部25及び谷部26のそれぞれは互いに対称となる位置に配置されている。
【0049】
センサ部21cは、山部25及び谷部26が第2方向D2に沿って連続して並ぶ第1波形部28と、第2方向D2に突出する山部、及び第2方向D2に窪む谷部が第2方向D2に沿って並ぶ第2波形部29とを有する。センサ部21cは、例えば、第1方向D1に沿って並ぶ複数(一例として4個)の第1波形部28と、枕20の第2方向D2の端部において接続部24から第1方向D1に沿って延びる単数の第2波形部29と、を備える。以上のように、センサ部21cは複数の第1波形部28と第2波形部29とを形成するが、センサ部21cは第1波形部28及び第2波形部29を形成する1本の糸状部材となっている。
【0050】
第2糸状センサ22のセンサ部22cは、センサ部21cと同様、例えば、接続部24、山部25、谷部26、折り返し部27、第1波形部28、及び第2波形部29を備える。第2糸状センサ22は、例えば、枕20の第2方向D2の中央を通ると共に第1方向D1に延びる基準線Lに対して第1糸状センサ21と対称となるように配置されている。すなわち、第1糸状センサ21及び第2糸状センサ22は、基準線Lに対して互いに対称となる位置に配置されている。
【0051】
換言すれば、第1糸状センサ21は基準線Lから見て第2方向D2の一方側に設けられ、第2糸状センサ22は基準線Lから見て第2方向D2の他方側に設けられる。第1糸状センサ21は枕20において左向き(枕20に頭を載せる使用者から見たら右向き)に横向き寝をする位置に設けられ、第2糸状センサ22は枕20において右向き(枕20に頭を載せる使用者から見たら左向き)に横向き寝をする位置に設けられる。
【0052】
次に、本実施形態に係る寝具の製造方法の例について説明する。まず、敷き寝具10の製造方法の例について説明する。最初に敷き寝具10の側地10A及び内容物10Bを用意する。そして、第1糸状センサ11、第2糸状センサ12及び第3糸状センサ13を用意する。
【0053】
その後、側地10Aに第1糸状センサ11のセンサ部11c、第2糸状センサ12のセンサ部12c、及び第3糸状センサ13のセンサ部13cを縫い込む(側地にセンサを配置する工程)。糸状センサ11,12,13を側地10Aに刺繍によって縫い込んだ後に側地10Aの内部に内容物10Bを収容する(内容物を収容する工程)。以上の工程を経て敷き寝具10が完成する。
【0054】
枕20の製造方法については、まず、側地20Aを用意すると共に第1糸状センサ21及び第2糸状センサ22を用意する。そして、側地20Aに第1糸状センサ21のセンサ部21c、及び第2糸状センサ22のセンサ部22cを縫い込む(側地にセンサを配置する工程)。第1糸状センサ21及び第2糸状センサ22を側地20Aに刺繍によって縫い込んだ後に側地20Aの内部に枕20の内容物を収容し(内容物を収容する工程)、その後、枕20が完成する。
【0055】
図4に示されるように、例えば、敷き寝具10の第1糸状センサ11、第2糸状センサ12、及び第3糸状センサ13、並びに、枕20の第1糸状センサ21及び第2糸状センサ22には、データ加工部30を介して睡眠状態取得システム100が接続されている。糸状センサ11,12,13,21,22のそれぞれとデータ加工部30との接続は有線接続であってもよいし、無線接続であってもよい。糸状センサ11,12,13,21,22のそれぞれは、例えば、電圧値の時系列データをデータ加工部30に出力し、データ加工部30は受信した時系列データの波形を整形して睡眠状態取得システム100に出力する。
【0056】
例えば、敷き寝具10の糸状センサ11,12,13のそれぞれとデータ加工部30との接続は有線接続である。この場合、コネクタ部11b,12b,13bにケーブルを介して物理的なデータ加工部30が接続される。例えば、枕20の糸状センサ21,22のそれぞれとデータ加工部30との接続は無線接続である。
【0057】
この場合、コネクタ部21b,22bのそれぞれに無線通信モジュールが接続されており、当該無線通信モジュールを介してデータ加工部30が接続される。しかしながら、上記の有線又は無線による接続は、あくまで一例であって、接続方式については特に限定されない。
【0058】
例示的なデータ加工部30は、プリアンプ31と、アンプ32と、時間波形データ取得部33とを備える。プリアンプ31は、例えば、ゲインが10倍のプリアンプであって、アンプ32のゲインは100倍である。時間波形データ取得部33は、例えば、ハイパスフィルタ及びローパスフィルタを備える。時間波形データ取得部33では、一例として、0.1Hz未満、又は10Hzより大きい周波数帯域の波形を遮断する。
【0059】
図5は、睡眠状態取得システム100の機能構成の例を示すブロック図である。なお、
図5では、簡略化のためデータ加工部30の図示を省略している。睡眠状態取得システム100は、例えば、敷き寝具10及び枕20のそれぞれとデータ加工部30を介して通信可能とされた制御部110と、制御部110と通信可能とされた端末120とを備える。
【0060】
制御部110は、一例としてサーバである。例示的な制御部110は、機能要素として、呼吸測定部111、心拍測定部112、寝返り測定部113、RRI測定部114、睡眠時間判定部115、睡眠質判定部116、及びストレス判定部117を備える。これらの機能要素による各機能は、睡眠状態取得システム100(制御部110)のハードウェアによって実現される。
【0061】
制御部110は、プロセッサ、主記憶部、補助記憶部、通信モジュール、及び入力インタフェースを含む。プロセッサは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラムを実行する演算装置である。主記憶部は、例えば、ROM又はRAMで構成され、ロードされたプログラム又は演算結果等を一時的に記憶する。補助記憶部は、フラッシュメモリ又はハードディスク等で構成され、プログラム又はデータを永続的に記憶する。通信モジュールは、無線通信モジュール又はネットワークカードで構成され、他のコンピュータ又は端末120との間でデータの送受信を行う。入力インタフェースは、タッチパネル又はマウス等で構成され、ユーザによるデータ又は指示の入力を受け付ける装置である。
【0062】
例えば、制御部110の前述した各機能要素は、プロセッサ又は主記憶部に所定のソフトウェア(例えば睡眠状態取得プログラム)を読み込ませてそのソフトウェアを実行することによって実現される。プロセッサはそのソフトウェアに従って通信モジュール又は入力インタフェースを動作させ、主記憶部又は補助記憶部におけるデータの読み出し及び書き込みを行う。処理に必要なデータ又はデータベースは、主記憶部又は補助記憶部に格納される。また、制御部110は、1台のコンピュータによって構成されていてもよいし、複数台のコンピュータによって構成されていてもよい。例えば、複数台のコンピュータで構成される場合には、複数のコンピュータがインターネット又はイントラネット等の通信ネットワークを介して互いに接続されることによって、論理的に1つの制御部110が構築されてもよい。
【0063】
呼吸測定部111は、例えば、糸状センサ11,12,13,21,22からデータ加工部30を介して得られた波形から敷き寝具10及び枕20の使用者の呼吸を測定する。心拍測定部112は、糸状センサ11,12,13,21,22からデータ加工部30を介して得られた波形から敷き寝具10及び枕20の使用者の呼吸を測定する。
【0064】
図6(a)は、使用者が仰向けをしたとき(仰臥位)における心拍の波形を示し、
図6(b)は、使用者が横向き寝をしたとき(側臥位)における心拍の波形を示している。これらの波形より、使用者の心拍の波形の周期は1秒程度であり、側臥位の波形の方が仰臥位の波形よりも大きいことが分かる。
【0065】
寝返り測定部113は、例えば、仰臥位、側臥位、及び俯せのそれぞれの時系列データを測定する。
図7(a)及び
図7(b)は、第1糸状センサ11、第2糸状センサ12、及び第3糸状センサ13のそれぞれから寝返り測定部113が測定した波形の例を示している。
【0066】
図7(a)は、敷き寝具10に横たわる使用者が測定開始から2秒後に右(第1糸状センサ11側)へ寝返ったときの測定結果を示している。
図7(a)に示されるように、測定開始から2秒後に使用者が右に寝返ったときに、第1糸状センサ11による電圧値が大きくなり、第2糸状センサ12による電圧値が小さくなっていることが分かる。
【0067】
一方、
図7(b)は、敷き寝具10に横たわる使用者が測定開始後から2秒後に左(第3糸状センサ13側)へ寝返ったときの測定結果を示している。
図7(b)に示されるように、測定開始から2秒後に使用者が左に寝返ったときに、第3糸状センサ13による電圧値が大きくなり、第2糸状センサ12による電圧値が小さくなっていることが分かる。
【0068】
寝返り測定部113は、第1糸状センサ11、第2糸状センサ12及び第3糸状センサ13のそれぞれから得られた電圧値を基に使用者の寝返りの状態を測定する。寝返り測定部113は、使用者の仰向けの時間及び回数、使用者の横向き寝の時間及び回数、並びに、使用者の俯せの時間及び回数を測定してもよい。
【0069】
RRI測定部114は、使用者の心拍変動の時系列データ(RRI:R-R Interval)を測定する。RRI測定部114は、例えば、心拍測定部112によって測定された使用者の心拍のデータからRRIを測定する。
図8は、RRI測定部114によって測定されたRRIの測定結果を示す波形の例を示している。この例から、RRI測定部114によって鮮明なRRIの波形を得られることが分かる。
【0070】
睡眠時間判定部115は、例えば、糸状センサ11,12,13,21,22のいずれかから使用者の荷重が検知されたときに睡眠時間の加算を行い、糸状センサ11,12,13,21,22から使用者の荷重が検知されなくなったときに睡眠時間の加算を停止することによって、使用者の睡眠時間を判定してもよい。また、睡眠時間判定部115は、呼吸測定部111による使用者の呼吸の測定結果、心拍測定部112による使用者の心拍の測定結果、又は寝返り測定部113による使用者の寝返りの測定結果から睡眠時間を判定してもよい。
【0071】
睡眠質判定部116は、例えば、睡眠中の使用者の睡眠深度を判定する。睡眠質判定部116は、例えば、呼吸測定部111によって測定された呼吸の測定結果、心拍測定部112によって測定された心拍の測定結果、及び、寝返り測定部113によって測定された寝返りの回数、の少なくともいずれかから使用者の睡眠深度を判定する。一例として、睡眠質判定部116は、寝返りの回数が所定回数以下であるときに使用者の睡眠深度が深いと判定してもよい。
【0072】
睡眠質判定部116は、呼吸及び心拍の少なくともいずれかが所定回数以上であるときに使用者の睡眠深度が浅いと判定してもよい。睡眠質判定部116は、例えば、使用者の睡眠深度を、0(レム睡眠)、1、2、3及び4のいずれかの5段階で判定してもよい。この場合、睡眠質判定部116が判定した睡眠深度の数値が大きいほど睡眠深度が深いことを示しており、例えば、睡眠深度「4」が最も深く、「0」が最も浅い。
【0073】
例えば、ストレス判定部117は、使用者のストレス度を判定する。一例として、「ストレス度」とは、使用者が受けているストレスの度合を示した値であって、「高」、「中」及び「低」の3段階で表される。ストレス判定部117は、例えば、RRI測定部114によって測定された使用者の心拍変動の時系列データであるRRIからストレス指標を示すLF/HFを判定し、当該判定の結果を「高」、「中」及び「低」のいずれかとしてもよい。
【0074】
端末120は、例えば、携帯電話、高機能携帯電話機(スマートフォン)、タブレット端末、又はラップトップ型のパーソナルコンピュータ等の携帯端末であってもよいし、据置型のパーソナルコンピュータ等の情報端末であってもよい。睡眠状態取得システム100は、複数のコンピュータによって構成される分散処理システムであってもよいし、クライアント-サーバシステム、又はクラウドシステムであってもよい。
【0075】
端末120では、例えば、睡眠状態取得システム100のアプリケーションをインストールすることによって、呼吸測定部111、心拍測定部112、寝返り測定部113、RRI測定部114、睡眠時間判定部115、睡眠質判定部116、及びストレス判定部117の少なくともいずれかの結果を表示可能である。従って、敷き寝具10又は枕20の使用者が端末120を所有する場合、睡眠時における自身の呼吸、心拍、寝返り、RRI、睡眠時間、睡眠の質(睡眠の深さ)、又はストレスを把握することが可能となる。
【0076】
次に、本実施形態に係る寝具、及び寝具の製造方法の作用効果について説明する。
図1及び
図2に示されるように、敷き寝具10、及び敷き寝具10の製造方法では、側地10Aと内容物10Bとを備え、側地10Aに第1糸状センサ11、第2糸状センサ12及び第3糸状センサ13が刺繍されている。従って、使用者が使用する状態において第1糸状センサ11、第2糸状センサ12及び第3糸状センサ13が刺繍されていることにより、使用者にセンサの配置の手間をかけさせないようにすることができる。
【0077】
すなわち、使用者は、第1糸状センサ11、第2糸状センサ12、及び第3糸状センサ13に電力を供給する電源をオン等するだけで第1糸状センサ11、第2糸状センサ12、及び第3糸状センサ13を使用することができる。従って、第1糸状センサ11、第2糸状センサ12及び第3糸状センサ13の設置を容易に行うことができ、使用者に煩わしさを感じさせないようにすることができる。
【0078】
また、側地10Aに第1糸状センサ11、第2糸状センサ12及び第3糸状センサ13が刺繍されていることにより、側地10Aの上で睡眠をとる使用者に違和感を感じさせないようにすることができる。第1糸状センサ11、第2糸状センサ12、及び第3糸状センサ13は、側地10Aに対して自由に縫い込むことができるため、配置の自由度が高い。
【0079】
更に、敷き寝具10では、平面視において波状を呈する第1糸状センサ11と、第1糸状センサ11とは異なる位置で波状を呈する第2糸状センサ12とが刺繍されている。従って、第1糸状センサ11及び第2糸状センサ12が、互いに異なる場所で波状を呈することにより、側地10Aの広範囲の場所からデータの取得を行うことができる。その結果、敷き寝具10の上に広範囲に配置できるので、データを高精度に取得することができる。以上の作用効果は、第1糸状センサ21及び第2糸状センサ22を備える枕20からも同様に得られる。
【0080】
本実施形態に係る寝具は、平面視において長方形状とされた敷き寝具10であってもよく、第2糸状センサ12は、平面視における敷き寝具10の中央を通ると共に敷き寝具10の長手方向(第1方向D1)に延びる基準線Lに沿うように配置されていてもよく、第1糸状センサ11は、第2糸状センサ12から見て敷き寝具10の短手方向(第2方向D2)の端部側に配置されていてもよい。
【0081】
この場合、敷き寝具10の中央を通る基準線Lに沿って設けられる第2糸状センサ12によって使用者の仰向け寝のデータを測定可能となる。そして、第2糸状センサ12から見て敷き寝具10の端部側に設けられた第1糸状センサ11によって使用者の横向き寝のデータを測定可能となる。従って、敷き寝具10の上に横たわる使用者の仰向き寝及び横向き寝のデータを測定することができる。
【0082】
図3に示されるように、本実施形態に係る寝具は、平面視において長方形状とされた枕20であってもよく、第1糸状センサ21は、平面視における枕20の中央を通ると共に枕20の短手方向(第1方向D1)に延びる基準線Lから見て枕20の長手方向(第2方向D2)の一方側に配置されていてもよく、第2糸状センサ22は、基準線Lから見て枕20の長手方向の他方側に配置されていてもよい。この場合、枕20の長手方向の一方側に波状の第1糸状センサ21が刺繍されており、枕20の長手方向の他方側に第2糸状センサ22が刺繍されているので、枕20の長手方向の一方側及び他方側のそれぞれにおいてデータを測定することができる。
【0083】
以上、本実施形態では、糸状センサを自由に刺繍できるので、センサの配置の自由度を高めることができる。
図9及び
図10に示されるように、ブランケットステッチ、チェーンステッチ、オープンチェーンステッチ、ハニカム(ハネコム)ステッチ、コーチング(コード)ステッチ、ランニングステッチ、クロスステッチ、ストレートステッチ、フライステッチ、ヘリングボーンステッチ、フェザーステッチ、及びダブルフェザーステッチのいずれかによって糸状センサが側地に刺繍されてもよい。
【0084】
図9(a)はブランケットステッチによって刺繍された糸状センサ131を示しており、
図9(b)はチェーンステッチによって刺繍された糸状センサ132を示している。
図9(c)はオープンチェーンステッチによって刺繍された糸状センサ133、
図9(d)はハニカムステッチによって刺繍された糸状センサ134、
図9(e)はコーチングステッチによって刺繍された糸状センサ135、をそれぞれ示している。なお、コーチングステッチでは、糸状センサ135が別の糸Sで縫い付けられることによって側地に固定される。
【0085】
図10(a)は前述した例のようにランニングステッチによって刺繍された糸状センサ136を示しており、
図10(b)はクロスステッチによって刺繍された糸状センサ137を示している。
図10(c)はストレートステッチによって刺繍された糸状センサ138、
図10(d)はフライステッチによって刺繍された糸状センサ139、
図10(e)はヘリングボーンステッチによって刺繍された糸状センサ140を示している。更に、
図10(f)はフェザーステッチによって刺繍された糸状センサ141を示しており、
図10(g)はダブルフェザーステッチによって刺繍された糸状センサ142を示している。
【0086】
以上のそれぞれの例のように、本実施形態では、側地に対する糸状センサの固定を通常の刺繍と同じように行うことができるので、側地に対する糸状センサの固定を容易に行うことができる。従って、糸状センサ付きの寝具の製造を容易に行うことができる。更に、前述した各例のうち、特に
図9(a)~
図9(e)に示されるブランケットステッチ、チェーンステッチ、オープンチェーンステッチ、ハニカムステッチ、及びコーチングステッチの少なくともいずれかによって糸状センサを側地に刺繍する場合、センサにより好適に外力がかかるので、より一層呼吸及び心拍等を精度良く取得できる。
【0087】
以上、本開示に係る寝具、及び寝具の製造方法の実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、前述した実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。すなわち、寝具の各部の形状、大きさ、数、材料、及び配置態様、並びに、寝具の製造方法の各工程の内容及び順序は、前述の実施形態の例に限られず適宜変更可能である。例えば、寝具に配置される糸状センサの数は、複数であってもよいし、単数であってもよい。単数の糸状センサであっても、寝具の使用者の呼吸、心拍又は体動の取得が可能である。また、複数の糸状センサを備える場合には、使用者が寝ている向き(例えば使用者が仰向き寝又は横向き寝のどちらで寝ているか等)を効果的に推定することが可能となる。
【0088】
例えば、前述の実施形態では、寝具が敷き寝具10又は枕20である例について説明した。しかしながら、本開示に係る寝具は、ベッドパッド、掛け寝具、座布団又はクッション等であってもよく、寝具の種類は適宜変更可能である。また、前述の実施形態では、糸状センサが波状に固定される例について説明したが、固定される糸状センサの態様は、波状以外の態様であってもよく、例えば、少なくとも一部が直線状に配置されてもよい。このように、糸状センサを用いることで種々の態様でセンサの配置を行うことができるので、取得するデータの高精度化に寄与する。
【0089】
また、前述の実施形態では、データ加工部30及び睡眠状態取得システム100が設けられ、睡眠状態取得システム100が制御部110及び端末120を含む例について説明した。しかしながら、データ加工部30、制御部110及び端末120の1つ又は2つが省略された睡眠状態取得システムであってもよい。
【0090】
また、呼吸測定部111、心拍測定部112、寝返り測定部113、RRI測定部114、睡眠時間判定部115、睡眠質判定部116及びストレス判定部117を備える制御部110を含む例について説明した。しかしながら、制御部は、呼吸測定部111、心拍測定部112、寝返り測定部113、RRI測定部114、睡眠時間判定部115、睡眠質判定部116及びストレス判定部117の少なくともいずれかを有しないものであってもよい。このように睡眠状態取得システムの各部の構成及び機能についても適宜変更可能である。
【0091】
前述の例では、側地10Aと、側地10Aの内部に収容された内容物10Bと、側地10Aに刺繍された糸状センサ11,12,13と、を備えた敷き寝具10について説明した。しかしながら、本開示に係る寝具は、側地10A以外の布製品に縫い付けられた糸状センサを備えていてもよい。例えば、シーツ、カバー、パッドシーツ、又はスポンジ等の柔軟性素材に縫い付けられた糸状センサであってもよい。このように、糸状センサが刺繍される布製品の種類は適宜変更可能である。
【0092】
前述の例では、
図11(a)に示されるように、曲線状に湾曲する波状の糸状センサ151について説明した。しかしながら、本開示において、「波状」は、曲線の波だけでなく、三角波又は矩形波等であってもよい。すなわち、
図11(b)及び
図11(c)のそれぞれに示されるように、本開示に係る寝具は、三角波状に配置された糸状センサ152、又は矩形波状に配置された糸状センサ153を備えていてもよい。このように配置された糸状センサ152、153であっても、糸状センサ151と同様、寝具に横たわる使用者の身体の状態を高精度に取得することができる。
【0093】
前述の例では、敷き寝具10の長手方向に延びる糸状センサ11,12,13、及び枕20の長手方向に延びる糸状センサ21,22について説明した。しかしながら、
図12に示されるように、寝具は、敷き寝具10の短手方向に延びる糸状センサ161、又は枕20の短手方向に延びる糸状センサ162を備えていてもよい。更には、斜めに延びる糸状センサを備えていてもよい。このように、糸状センサが延びる向きについても適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0094】
1…寝具セット、10…敷き寝具(寝具)、10A…側地(布製品)、10B…内容物、11…第1糸状センサ(糸状センサ)、11b…コネクタ部、11c…センサ部、12…第2糸状センサ(糸状センサ)、12b…コネクタ部、12c…センサ部、13…第3糸状センサ(糸状センサ)、13b…コネクタ部、13c…センサ部、14…接続部、15…山部、16…谷部、17…折り返し部、20…枕(寝具)、20A…側地、21…第1糸状センサ(糸状センサ)、21b…コネクタ部、21c…センサ部、22…第2糸状センサ(糸状センサ)、22b…コネクタ部、22c…センサ部、24…接続部、25…山部、26…谷部、27…折り返し部、28…第1波形部、29…第2波形部、30…データ加工部、31…プリアンプ、32…アンプ、33…時間波形データ取得部、100…睡眠状態取得システム、110…制御部、111…呼吸測定部、112…心拍測定部、113…寝返り測定部、114…RRI測定部、115…睡眠時間判定部、116…睡眠質判定部、117…ストレス判定部、120…端末、131,132,133,134,135,136,137,138,139,140,141,142,151,152,153,161,162…糸状センサ、D1…第1方向、D2…第2方向、D3…鉛直方向、L…基準線、S…糸。