IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大和ハウス工業株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社ミツマルの特許一覧

<>
  • 特許-マスクインナー 図1
  • 特許-マスクインナー 図2
  • 特許-マスクインナー 図3
  • 特許-マスクインナー 図4
  • 特許-マスクインナー 図5
  • 特許-マスクインナー 図6
  • 特許-マスクインナー 図7
  • 特許-マスクインナー 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】マスクインナー
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A41D13/11 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020159707
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2022053093
(43)【公開日】2022-04-05
【審査請求日】2023-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596156129
【氏名又は名称】株式会社ミツマル
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】松井 友香
(72)【発明者】
【氏名】仁部 数典
(72)【発明者】
【氏名】田中 秋水
(72)【発明者】
【氏名】南野 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】境 守
【審査官】西尾 元宏
(56)【参考文献】
【文献】実開昭64-020866(JP,U)
【文献】特開2014-124397(JP,A)
【文献】特開2014-033973(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0076680(US,A1)
【文献】実開昭52-134300(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/11
A62B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクの裏面に装着され、前記マスクの膨らみを保持するために用いられるフレーム状のマスクインナーであって、
前記マスクインナーの左右両側の外縁部として形成され、マスク利用者の頬に当接するように設けられた左右の外縁当接部と、
前記マスクインナーの上縁部及び下縁部として形成され、前記左右の外縁当接部よりも前記マスク側に向かって張り出している上縁張り出し部及び下縁張り出し部と、を備え、
前記左右の外縁当接部は、それぞれ上下方向に長尺となるように延びており、
前記上縁張り出し部は、前記左右の外縁当接部の上端部から前記マスクインナーの左右方向の中央部に向かって下方に傾斜するように延びていることを特徴とするマスクインナー。
【請求項2】
前記左右の外縁当接部は、前記マスク利用者の頬に上下方向にわたって当接するように設けられ、
前記上縁張り出し部及び前記下縁張り出し部は、前記マスク利用者の顔との間に所定の空間を形成するように張り出しており、
前記上縁張り出し部の左右方向の両端部が、前記マスク利用者の鼻と同じ高さ又は前記マスク利用者の鼻よりも上方に位置し、
前記上縁張り出し部の左右方向の中央部が、前記マスク利用者の鼻よりも下方に位置するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のマスクインナー。
【請求項3】
前記左右の外縁当接部よりも左右方向の外側に突出した位置にそれぞれ設けられ、前記マスクに対して着脱可能に装着するための左右のマスク装着部を備え、
前記左右のマスク装着部は、前記上縁張り出し部の左右方向の中央部よりも上方に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のマスクインナー。
【請求項4】
前記上縁張り出し部の左右方向の中央部と、前記下縁張り出し部の左右方向の中央部を連結する連結部を備え、
前記上縁張り出し部及び前記下縁張り出し部は、前記左右の外縁当接部から前記連結部に向かうに従って湾曲しながら張り出しており、
前記上縁張り出し部及び前記下縁張り出し部の表面には、前記マスク側に突出している突出リブが形成され、
前記突出リブは、前記上縁張り出し部及び前記下縁張り出し部の延出方向に沿って延びていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のマスクインナー。
【請求項5】
前記上縁張り出し部の左側に位置する左側部分と、前記上縁張り出し部の右側に位置する右側部分とを連結する補強部を備え、
前記補強部は、
前記上縁張り出し部の形状に沿って張り出しており、前記上縁張り出し部よりも幅狭となるように形成され、
前記マスク利用者の鼻よりも下方に位置するように設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のマスクインナー。
【請求項6】
前記左右の外縁当接部の裏面には、上下方向にわたって略網目状の凹凸部が形成され、
前記凹凸部が形成された部分は、前記上縁張り出し部の左右方向の中央部よりも上方に達する位置まで延びていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のマスクインナー。
【請求項7】
前記マスクインナーは、弾性を有する樹脂材料と、抗菌性を有する材料と、消臭性を有する材料とを含む混合物から形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のマスクインナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクインナーに係り、特に、マスクの裏面に装着され、マスクの膨らみを保持するために用いられるフレーム状のマスクインナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マスクの裏面に装着され、マスクの膨らみを保持するために用いられる樹脂製のマスクインナー(マスク補助具)が知られている。当該マスクインナーを利用することで、マスク利用者の呼吸や会話を円滑にすることができ、マスク利用者の顔とマスクの間に所定の空間を形成することでマスク内の衛生状態を確保することもできる。
また、昨今の新型コロナウイルスの影響によって暑い日であっても皆がマスクを着用せざるを得ない状況となっており、例えばマスク利用者の顔にマスクが密着した状態になっていると、マスク利用者の口腔内から飛び出した細菌が口周りで繁殖してしまう。そのため、衛生面に配慮されたフレーム状のマスクインナーが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1に記載のマスク補助具は、マスク利用者の鼻及び口を覆うように用いられ、マスク利用者の鼻及び口周りに当接する外縁部と、外縁部からマスク側に向かって円弧状に傾斜している左右の傾斜部と、マスク利用者の鼻に当接する部分に設けられ、マスクを把持するための左右の装着部と、から主に構成されている。
上記のように、マスク補助具は、マスク利用者の鼻に当接するように構成されているため、鼻とマスクの間に所定の空間が確保され、マスクが鼻に直接当接しなくなることで、マスク利用者が暑苦しさを感じることが抑制されている。
また、マスク補助具は、マスク利用者の鼻及び口周りにわたって当接しているため、マスク利用者の顔に対してマスク補助具の位置決めがし易くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-110577号公報
【文献】特開2015-9098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のようなマスク補助具では、マスク利用者の鼻及び口周りにわたって当接するように構成されているため、マスク利用者の顔の骨格(特に鼻の骨格)によっては顔から部分的に浮いてしまう、あるいはマスク補助具の高さ位置や前後位置が微調整することができず、マスク補助具の使用感を損なう虞があった。
また、マスク利用者の鼻とマスクとが密着していないため、マスク利用者がウイルス感染者であった場合に、鼻とマスクの間の隙間からウイルスが飛沫してしまい、衛生面で劣る虞があった。
そうしたなかで、特許文献2のようなフレーム状のマスク補助具であれば、マスク利用者の頬のみに当接し、鼻には当接しない形状となっているため、マスク利用者の鼻とマスクを密着させることができ、衛生面に配慮されたものとなっている。
しかしながら、特許文献2のようなマスク補助具の場合には、マスク利用者の顔に当接する部分が左右の頬の一部分のみとなっているため、マスク利用者の顔に対してマスク補助具の位置決めがし難く、マスク利用者に違和感をもたらす虞があった。
そこで、衛生面に配慮され、マスク利用者の顔に対して位置決めがし易く、マスク利用者の顔の骨格に応じて高さ位置や前後位置が微調整可能な新規なマスクインナーが求められていた。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、マスクに装着され、マスクの膨らみを好適に保持するために用いられる新規なフレーム状のマスクインナーを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、マスク利用者の鼻とマスクが密着し、衛生面に配慮されたマスクインナーを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、マスク利用者の顔に対して位置決めがし易く、マスク利用者の顔の骨格に応じて高さ位置や前後位置が微調整可能なマスクインナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明のマスクインナーによれば、マスクの裏面に装着され、前記マスクの膨らみを保持するために用いられるフレーム状のマスクインナーであって、前記マスクインナーの左右両側の外縁部として形成され、マスク利用者の頬に当接するように設けられた左右の外縁当接部と、前記マスクインナーの上縁部及び下縁部として形成され、前記左右の外縁当接部よりも前記マスク側に向かって張り出している上縁張り出し部及び下縁張り出し部と、を備え、前記左右の外縁当接部は、それぞれ上下方向に長尺となるように延びており、前記上縁張り出し部は、前記左右の外縁当接部の上端部から前記マスクインナーの左右方向の中央部に向かって下方に傾斜するように延びていること、により解決される。
上記構成により、新規なフレーム状のマスクインナーを実現することができる。また、マスク利用者の鼻とマスクが密着し、衛生面に配慮されており、マスク利用者の顔に対して位置決めがし易く、マスク利用者の顔の骨格に応じて高さ位置や前後位置が微調整可能なマスクインナーを実現できる。
詳しく述べると、マスクインナーが、マスク利用者の頬に当接する左右の外縁当接部と、左右の外縁当接部よりもマスク側に向かって張り出している上縁張り出し部及び下縁張り出し部と、を備えており、上縁張り出し部が、左右の外縁当接部の上端部からマスクインナーの中央部に向かって下方に傾斜するように延びており、マスク利用者の鼻には極力当接することがない形状となっている。
また、左右の外縁当接部が、それぞれ上下方向に長尺となるように延びており、マスク利用者の顔(頬)に当接する部分が上下方向にわたって確保された形状となっている。
さらに、上縁張り出し部及び下縁張り出し部が、マスク利用者の頬に当接する左右の外縁当接部からマスク側(前側)に向かって張り出しており、上縁張り出し部及び下縁張り出し部の張り出し位置(張り出し量)を微調整可能な形状となっている。すなわち、左右の外縁当接部に対して上縁張り出し部及び下縁張り出し部を撓ませることで(可動させることで)微調整可能な形状となっている。
その結果、マスク利用者の鼻とマスクを密着させて衛生面に配慮することができ、マスク利用者の顔に対して位置決めがし易くなり、マスク利用者の顔の骨格に応じて高さ位置や前後位置(張り出し位置)を微調整することが可能なマスクインナーとなる。
【0008】
このとき、前記左右の外縁当接部は、前記マスク利用者の頬に上下方向にわたって当接するように設けられ、前記上縁張り出し部及び前記下縁張り出し部は、前記マスク利用者の顔との間に所定の空間を形成するように張り出しており、前記上縁張り出し部の左右方向の両端部が、前記マスク利用者の鼻と同じ高さ又は前記マスク利用者の鼻よりも上方に位置し、前記上縁張り出し部の左右方向の中央部が、前記マスク利用者の鼻よりも下方に位置するように構成されていると良い。
上記構成により、マスクインナーがマスク利用者の鼻には当接しない形状となるため、マスク利用者がマスクを装着したときに鼻とマスクが密着し易く、より衛生面に優れたものになる。
また、マスクインナーがマスク利用者の鼻には当接しない形状となるため、マスクインナーと、マスク(市販マスク)のワイヤー部分とが干渉することを抑えることができ、マスク利用者の使用感を良好にすることができる。あるいは、マスク(専用マスク)においてワイヤー部分の配置を自由に設定することができる。
【0009】
このとき、前記左右の外縁当接部よりも左右方向の外側に突出した位置にそれぞれ設けられ、前記マスクに対して着脱可能に装着するための左右のマスク装着部を備え、前記左右のマスク装着部は、前記上縁張り出し部の左右方向の中央部よりも上方に配置されていると良い。
上記構成により、マスクに対してマスクインナーを安定して装着させることができる。
また、マスク装着部が、左右の外縁当接部よりも左右外側に設けられているため、マスク利用者が、自分の顔の骨格に応じて上縁張り出し部及び下縁張り出し部の張り出し位置(張り出し量)を微調整した場合であっても、マスク装着部が影響を受けることがない。そのため、マスク利用者にマスクの位置ズレによる違和感を与えることがない。
【0010】
このとき、前記上縁張り出し部の左右方向の中央部と、前記下縁張り出し部の左右方向の中央部を連結する連結部を備え、前記上縁張り出し部及び前記下縁張り出し部は、前記左右の外縁当接部から前記連結部に向かうに従って湾曲しながら張り出しており、前記上縁張り出し部及び前記下縁張り出し部の表面には、前記マスク側に突出している突出リブが形成され、前記突出リブは、前記上縁張り出し部及び前記下縁張り出し部の延出方向に沿って延びていると良い。
上記構成により、フレーム状のマスクインナーの剛性を好適に確保することができる。
また、上記突出リブが形成されているため、上縁張り出し部及び下縁張り出し部を前側へ張り出すように撓ませる(可動させる)ことが容易になる。また、上縁張り出し部及び下縁張り出し部を後ろ側へ張り出すように撓ませることは逆に難しくなるため、使い勝手の良いマスクインナーとなる。
【0011】
このとき、前記上縁張り出し部の左側に位置する左側部分と、前記上縁張り出し部の右側に位置する右側部分とを連結する補強部を備え、前記補強部は、前記上縁張り出し部の形状に沿って張り出しており、前記上縁張り出し部よりも幅狭となるように形成され、前記マスク利用者の鼻よりも下方に位置するように設けられていると良い。
上記補強部を備えていることで、フレーム状のマスクインナーの剛性をより好適に確保することができる。
また上記補強部が、マスク利用者の鼻よりも下方に位置するように設けられているため、マスク利用者の鼻とマスクが密着した状態を維持することができ、衛生面に配慮されたマスクインナーとなる。
【0012】
このとき、前記左右の外縁当接部の裏面には、上下方向にわたって略網目状の凹凸部が形成され、前記凹凸部が形成された部分は、前記上縁張り出し部の左右方向の中央部よりも上方に達する位置まで延びていると良い。
上記構成により、マスク利用者の頬に当接する面が平面となっている場合と比較して、頬に貼りついてしまうことを抑えられる。また汗が溜まって痒みや汗疹が生じることや、肌荒れの原因になることも抑えることができる。
【0013】
このとき、前記マスクインナーは、弾性を有する樹脂材料と、抗菌性を有する材料と、消臭性を有する材料とを含む混合物から形成されていると良い。
上記構成により、一般にヒトの口腔内には約300種以上の口腔内細菌が存在し、マスク利用者の口腔内から飛び出した細菌がマスクに付着し、マスク内で繁殖し易いところ、例えば、マスクインナーに含まれる抗菌性材料及び消臭性材料がマスクインナー表面に徐放(徐々にブリードアウト)することで、細菌を退治し、臭いを取ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、新規なフレーム状のマスクインナーを実現することができる。
また、マスク利用者の鼻とマスクが密着し、衛生面に配慮されたマスクインナーを実現することができる。
また、マスク利用者の顔に対して位置決めがし易く、マスク利用者の顔の骨格に応じて高さ位置や前後位置が微調整可能なマスクインナーを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態のマスクインナー付きのマスクをマスク利用者が装着した状態を説明する斜視図である。
図2】マスクインナーがマスク利用者の顔に当接した状態を説明する斜視図である。
図3】マスクインナーがマスク利用者の顔に当接した状態を説明する側面図である。
図4】マスクインナーの正面図である。
図5】マスクインナーの背面図である。
図6】マスクインナーの上面図である。
図7】マスクインナーの側面図である。
図8】第2実施形態のマスクインナーがマスク利用者の顔に当接した状態を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図1図8を参照して説明する。
本実施形態は、マスクの裏面に装着され、マスクの膨らみを保持するために用いられるフレーム状のマスクインナーであって、マスクインナーの左右両側の外縁部として形成され、マスク利用者の頬に当接するように設けられた左右の外縁当接部と、マスクインナーの上縁部及び下縁部として形成され、左右の外縁当接部よりもマスク側に向かって張り出している上縁張り出し部及び下縁張り出し部とを備えており、左右の外縁当接部は、それぞれ上下方向に長尺となるように延びており、上縁張り出し部は、左右の外縁当接部の上端部からマスクインナーの左右方向の中央部に向かって下方に傾斜するように延びていることを主な特徴とするマスクインナーの発明に関するものである。
なお、マスクインナーの前側とは、マスクインナーに対しマスクが位置する側であって、マスクインナーの後側とは、マスクインナーに対しマスク利用者Hの顔が位置する側である。
【0017】
本実施形態のマスクインナー1は、図1図3に示すように、マスクMの裏面に装着され、マスク利用者Hの顔に当接した状態でマスクMの膨らみを保持するために用いられるフレーム状のマスク補助具であって、弾性を有する樹脂材料から形成されている。
詳しく述べると、マスクインナー1は、マスク利用者Hの左右の頬H1に当接した状態で、マスク利用者Hの口及び口周りを覆っており、鼻H2を覆わない構成となっている。すなわち、マスク利用者Hの鼻H2を避けた位置(鼻H2とは重ならない位置)に取り付けられる。
そのため、マスク利用者Hの口及び口周りにおいてマスクMとの間に所定の空間を形成し、マスクMの膨らみを保持することができる。そして、マスク利用者Hの鼻H2及び鼻周りにおいて、また顎H3及び顎周りにおいてはマスクMが膨らむことなく、マスクMを密着させることができる。
【0018】
マスクインナー1は、図2図7に示すように、その左右両側の外縁部として形成され、マスク利用者Hの頬H1に当接するように設けられた左右の外縁当接部10と、マスクインナー1の上縁部及び下縁部として形成され、左右の外縁当接部10よりもマスクM側に向かって湾曲しながら張り出している上縁張り出し部20及び下縁張り出し部30と、上縁張り出し部20の左右方向の中央部21及び下縁張り出し部30の中央部31を連結する連結部40と、上縁張り出し部20の左側部分20a及び右側部分20bを連結する補強部50と、左右の外縁当接部10よりも左右方向の外側に突出した位置にそれぞれ設けられ、マスクMに対して着脱可能に装着するための左右のマスク装着部60と、から主に構成されている。
なお、マスクインナー1において外縁当接部10は、マスク利用者Hの顔(頬)と当接するように構成され、上縁張り出し部20、下縁張り出し部30、連結部40、補強部50及びマスク装着部60は、マスク利用者Hの顔との間で所定の空間を形成し、顔とは当接しないように構成されている。
【0019】
マスクインナー1とマスク利用者Hの顔(顔面)との位置関係について詳しく述べると、以下の通りである(図2図3参照)。
左右の外縁当接部10は、マスク利用者Hの頬H1に上下方向にわたって当接するように設けられている。具体的には、外縁当接部10の上端部11が、マスク利用者Hの鼻H2(鼻先)と同じ高さに位置し、外縁当接部10の下端部12が顎H3と同じ高さに位置している。
上縁張り出し部20は、マスク利用者Hの鼻H2を避けた位置(鼻とは重ならない位置)に設けられている。具体的には、上縁張り出し部20の左右方向の側端部22が、マスク利用者Hの鼻H2と同じ高さに位置し、上縁張り出し部20の中央部21が、鼻H2よりも下方位置、すなわち鼻H2と口の間の位置(鼻下位置)に設けられている。
下縁張り出し部30は、マスク利用者Hの顎H3と同じ高さ位置、すなわち下顎H4よりも上方位置に設けられている。
連結部40は、上下方向においてマスク利用者Hの鼻下の位置から顎H3の位置にかけて長尺に延びており、補強部50は、鼻下と同じ高さ位置に設けられており、左右方向において鼻H2よりも長尺となるように延びている。
左右のマスク装着部60は、マスク利用者Hの鼻H2と同じ高さに位置している。
【0020】
左右の外縁当接部10は、図2図7に示すように、左右方向に所定の間隔を空けて形成され、上下方向に長尺となるように延びている。
外縁当接部10は、マスク利用者Hの頬の骨格に対応させて前後方向に僅かに湾曲した形状を有している。
外縁当接部10の上方部分、詳しく述べると外縁当接部10の上端部11の周辺部分であって、上端部11よりもやや下方に位置する部分には、前後方向に屈曲した段差部13が形成されている。すなわち、外縁当接部10の上端部11が、外縁当接部10の中央部及び下端部12よりもやや後方に位置している。
段差部13が形成されることで、外縁当接部10の上端部11及びその周辺部分においてマスクインナー1の剛性が高められている。そのため、外縁当接部10及び上縁張り出し部20の連結部分の強度を高めることができ、上縁張り出し部20を安定して撓ませることができる。また、外縁当接部10及びマスク装着部60の連結部分の強度を高めることができ、マスク装着部60の剛性を確保し易くなる。
なお、左右の外縁当接部10に対して上縁張り出し部20(下縁張り出し部30)を撓ませた場合であっても、左右の外縁当接部10は、マスク利用者Hの顔(頬)に当接した状態を維持することができる。
【0021】
外縁当接部10の裏面には、図5に示すように、上下方向に略全面にわたって略網目状の凹凸部14がエンボス加工によって形成されている。
凹凸部14は、微細な凹凸形状を有する部分であって、外縁当接部10の下端部12から上端部11に至るまで形成されている。言い換えれば、上縁張り出し部20の中央部21よりも上方に達する位置まで延びている。
詳しく述べると、凹凸部14の下端部分は、外縁当接部10の下端部12から左右方向の内側に向かってやや延出しており、下縁張り出し部30においてマスクM側に張り出し始める起点部33に達する位置まで延びている。
また、凹凸部14の上端部分は、外縁当接部10の上端部11から左右方向の両側に向かってやや延出しており、上縁張り出し部20においてマスクM側に張り出し始める起点部23に達する位置と、マスク装着部60が形成された部分に達する位置とまでそれぞれ延びている。
外縁当接部10に凹凸部14が形成されることで、マスクインナー1がマスク利用者Hの頬に対して面接触ではなく点接触するようになる。そのため、マスクインナー1が接触することによる肌荒れや人体への影響を抑えることができる。
【0022】
上縁張り出し部20は、左右の外縁当接部10から連結部40に向かうに従って前側に張り出しており、かつ、左右の外縁当接部10の上端部11から連結部40に向かって下方に傾斜するように延びている。
詳しく述べると、上縁張り出し部20は、左右の上端部11から連結部40に向かって前側に膨らむように湾曲して張り出している。言い換えれば、図6に示すようにマスクインナー1を上方から見たときに略アーチ形状(略円弧形状)となるように形成されている。
【0023】
下縁張り出し部30は、上縁張り出し部20と同様に、左右の外縁当接部10から連結部40に向かうに従って前側に張り出している。また、左右の外縁当接部10の下端部12から連結部40に向かって左右方向に沿って延びている。
下縁張り出し部30は、図6に示すように、上縁張り出し部20よりも張り出し量がやや小さくなるように構成されている。
【0024】
連結部40は、上縁張り出し部20及び下縁張り出し部30を連結するように上下方向に延びており、かつ、上縁張り出し部20及び下縁張り出し部30の張り出し位置(張り出し量)に対応してやや湾曲した形状となっている。
なお、図4に示すように、マスクインナー1を正面から見たときに、上縁張り出し部20と連結部40とでY字形状のフレームを形成している。
補強部50は、上縁張り出し部20において左側部分20aの中央部と、右側部分20bの中央部とを連結するように左右方向に延びている。また、上縁張り出し部20の形状に対応して前側に湾曲して張り出している。
補強部50は、上縁張り出し部20、下縁張り出し部30及び連結部40よりも幅狭となるように形成されている。
なお、図4に示すように、マスクインナー1を正面から見たときに、上縁張り出し部20と補強部50とで三角形状のフレームを形成している。
【0025】
連結部40及び補強部50によって、上縁張り出し部20及び下縁張り出し部30の剛性を高めるとともに、上縁張り出し部20及び下縁張り出し部30を好適に撓ませる(可動させる)ことができる。
また、補強部50が、上縁張り出し部20等よりも幅狭に形成されていることで、上縁張り出し部20の剛性と撓み性(可動性)を好適に両立させることができる。
【0026】
マスク装着部60は、マスクMの裏面にマスクインナー1を着脱可能に装着するための掛け止め部(掛け止めフック)であって、外縁当接部10の上端部11から左右方向の外側に向かって突出した位置に設けられている。
詳しく述べると、マスク装着部60は、上縁張り出し部20の中央部21よりも上方に配置されており、より厳密には外縁当接部10の段差部13よりも上方位置に配置され、かつ、補強部50よりも上方位置に配置されている。
【0027】
上記構成において、図4に示すように、外縁当接部10、上縁張り出し部20、下縁張り出し部30及び連結部40の表面には、それぞれマスクM側に突出している突出リブ70が形成されている。
突出リブ70は、それぞれの延出方向に沿って長尺となるように延びている。
詳しく述べると、突出リブ70は、外縁当接部10及び上縁張り出し部20が連結した部分と、上縁張り出し部20及び連結部40が連結した部分と、下縁張り出し部30及び連結部40が連結した部分とにおいて、そのまま連続しながら長尺に延びている。一方で、外縁当接部10及び下縁張り出し部30が連結した部分においては、不連続となって途絶えている。
そうすることで、マスクインナー1の形状に合わせて好適に剛性を高めることができ、また上縁張り出し部20及び下縁張り出し部30を好適に前側へ撓ませる(可動させる)ことができる。
【0028】
また上記構成において、図6図7に示すように、マスクインナー1のうち、外縁当接部10の上端部11と、マスク装着部60とが、マスクインナー1の張り出し方向において最も低い位置に配置されている。言い換えれば、上端部11及びマスク装着部60が、外縁当接部10の中央部分及び下端部12よりも低い段差位置に配置されている。
そのため、一般に不織布製のマスクMにはマスク利用者Hの顔(特に鼻)にフィットするように左右に長尺なワイヤーM1が埋め込まれているところ(図1参照)、ワイヤーM1が、マスクインナー1のうち上端部11及びマスク装着部60の表面上に収まることになる。その結果、マスクMに対してマスクインナー1を安定して取り付けることができる。また、マスク利用者Hが、違和感なくマスクM及びマスクインナー1を装着することができる。
【0029】
<マスクインナーの組成>
マスクインナー1は、弾性を有する樹脂材料を含む混合物から形成されている。
詳しく述べると、マスクインナー1は、柔軟性を有する樹脂材料(例えば、ポリエチレン樹脂)と、抗菌性を有する抗菌性材料(例えば、無機系抗菌材料)と、消臭性を有する消臭性材料(例えば、無機系消臭材料)とを含む混合物から形成されている。
このとき、樹脂材料の含有量が、混合物の総重量に対して好ましくは75~95重量%、より好ましくは80~90重量%、一層好ましくは84~86%であると良い。
また、抗菌性材料及び消臭性材料の含有量が、混合物の総重量に対して好ましくは5~25重量%、より好ましくは10~20重量%、一層好ましくは14~16%であると良い。
そして、抗菌性材料と消臭性材料がマスクインナー1から好適に徐放するように、マスクインナー1の主成分となる樹脂材料中に混合されていると良い(練り込まれていると良い)。
なお、抗菌性材料と消臭性材料を別々に含むものであっても良いし、抗菌性及び消臭性を兼ね備えた材料を単独で含むものであっても良い。あるいは、複数の抗菌性材料と複数の消臭性材料を含むものであっても良い。
【0030】
<マスクインナーの第2実施形態>
次に、マスクインナーの第2実施形態について、図8に基づいて説明する。
なお、上述したマスクインナー1と重複する内容は説明を省略する。
【0031】
第2実施形態のマスクインナー101は、左右の外縁当接部110と、上縁張り出し部120及び下縁張り出し部130と、連結部140と、補強部150と、左右のマスク装着部160と、から主に構成されている。
上述のマスクインナー1の形状と比較して、下縁張り出し部130及び連結部140の形状が主に異なっている。
具体的には、マスクインナー101を正面から見たときに、上縁張り出し部120と、下縁張り出し部130と、連結部140とでX字形状のフレームを形成している。
【0032】
上縁張り出し部120は、マスク利用者Hの鼻H2を避けた位置(鼻とは重ならない位置)に設けられている。具体的には、側端部122が、マスク利用者Hの鼻H2と同じ高さに位置し、中央部121が、鼻H2よりも下方位置、すなわち鼻下位置に設けられている。
下縁張り出し部130は、マスク利用者Hの顎H3を避けた位置(顎とは重ならない位置)に設けられている。具体的には、側端部132が、マスク利用者Hの顎H3と同じ高さに位置し、中央部131が、顎H3よりも上方位置、すなわち鼻下位置に設けられている。
連結部140は、マスク利用者Hの鼻下位置又はその周辺位置に設けられている。
【0033】
下縁張り出し部130は、左右の外縁当接部110から連結部140に向かうに従って前側に張り出しており、かつ、左右の外縁当接部110の下端部112から連結部140に向かって上方に傾斜するように延びている。
下縁張り出し部130は、上縁張り出し部120とほぼ同じ張り出し位置(張り出し量)となるように構成されている。
連結部140は、上縁張り出し部120及び下縁張り出し部130を十字状となるように連結している部分であって、マスクインナー101の上下方向及び左右方向の中央位置に配置されている。
上記構成であっても、マスク利用者Hの鼻とマスクMが密着し、衛生面に配慮されており、マスク利用者Hの顔に対して位置決めがし易く、マスク利用者Hの顔の骨格に応じて高さ位置や張り出し位置が微調整可能なマスクインナー101を実現することができる。
【0034】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、図2図3に示すように、上縁張り出し部20が、マスク利用者Hの鼻H2を避けた位置(鼻H2とは重ならない位置)に設けられているが、特に限定されることなく、鼻H2(鼻H2の下端部分)に一部重なるように設けられていても良い。
【0035】
上記実施形態では、図2図3に示すように、上縁張り出し部20の側端部22が、マスク利用者Hの鼻H2と同じ高さに位置しているが、特に限定されることなく、鼻H2よりも上方に位置していても良い。
【0036】
上記実施形態では、図3図6に示すように、上縁張り出し部20及び下縁張り出し部30が、左右の外縁当接部10から連結部40に向かうに従って湾曲しながら張り出しているが、特に限定されることなく変更可能である。
例えば、上縁張り出し部20及び下縁張り出し部30が、略直線状に傾斜しながら張り出していても良いし、波状に蛇行しながら張り出していても良い。
【0037】
上記実施形態では、図4に示すように、マスク装着部60が、外縁当接部10の上端部11から外側に突出した位置に設けられているが、特に限定されることなく、外縁当接部10の上下方向の中央部又は下端部12から外側に突出した位置に設けられていても良い。
あるいは、マスク装着部60が、マスクインナー1の外縁の所定位置から外側に突出した位置に設けられていても良い。
【0038】
上記実施形態では、主として本発明に係るマスクインナーに関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
M マスク
M1 ワイヤー
H マスク利用者
H1 頬
H2 鼻
H3 顎
H4 下顎
1、101 マスクインナー
10、110 外縁当接部
11 上端部
12、112 下端部
13 段差部
14 凹凸部
20、120 上縁張り出し部
20a 左側部分
20b 右側部分
21、121 中央部
22、122 側端部
23 起点部
30、130 下縁張り出し部
31、131 中央部
32、132 側端部
33 起点部
40、140 連結部
50、150 補強部
60、160 マスク装着部
70 突出リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8