(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】バイオマーカーを生成する方法、システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
A61B5/055 380
(21)【出願番号】P 2022506318
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(86)【国際出願番号】 EP2020065380
(87)【国際公開番号】W WO2021018439
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-05-31
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年6月4日付け掲載の『放射線医学』北米放射線学会第292巻第1号のウェブサイトアドレス https://pubs.rsna.org/doi/suppl/10.1148/radiol.2019190052にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】506424209
【氏名又は名称】ユニベルシテ ドゥ ボルドー
(73)【特許権者】
【識別番号】516324917
【氏名又は名称】サントル・オスピタリエ・ユニベルシテール・ドゥ・ボルドー
(73)【特許権者】
【識別番号】500025477
【氏名又は名称】アンスティテュ、ナショナル、ド、ラ、サント、エ、ド、ラ、ルシェルシュ、メディカル(アンセルム)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE LA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICAL (INSERM)
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ドウルネス ゲール
(72)【発明者】
【氏名】ベンララ イリーズ
(72)【発明者】
【氏名】ローラン フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】バーガー パトリック
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-501866(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0078641(US,A1)
【文献】特開2006-051365(JP,A)
【文献】再公表特許第2017/150497(JP,A1)
【文献】特開2005-278690(JP,A)
【文献】BENLALA, Ilyes et al.,Automated Volumetric Quantification of Emphysema Severity by Using Ultrashort Echo Time MRI: Validation in Participants with Chronic Obstructive Pulmonary Disease,Radiology,Vol.292,Radiology,2019年06月04日,pp.216-225,https://pubs.rsna.org/doi/pdf/10.1148/radiol.2019190052
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/20-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-MRIシステムを用いて
MRI画像を取得し(ACQ);
-前記MRI画像を処理することによって肺の三次元画像を生成し(GEN 3D);
-前
記三次元画像の一部分の各ボクセルの異なるシグナル強度値の分布に対応する第1の
分布関数(F
1)を生成し(GEN F
1);
-前
記三次元画像の一部の各ボクセル
の異なるシグナル強度値
の少なくとも1つの第2の分布関数(F
2、F
A、Fg
1、Fg
2)から前記第1の
分布関数(F
1)の少なくとも1つのフィルタリング閾値(S
A、S
1、S
2)を自動的に計算し(DET_S);
-以下を含むボリュームをセグメント化し(SEG):
・肺ボリュームに対応するメインボリューム(V
P);
・第1の
分布関数(F
1)により定量化されたボクセルのボリュームを、少なくとも算出されたフィルタリング閾値(S
A、S
1)によりフィルタリングしたボリューム(V
F)
-前記画像のボクセルのシグナル強度値の絶対値と少なくとも前記算出されたフィルタリング閾値とから、前記肺ボリュームの三次元画像の値を正規化し(S
A、S
1);
-正規化された分割ボリューム比を示すバイオマーカー(B
IND)を生成する、
バイオマーカー生成方法。
【請求項2】
-MRI装置による三次元画像の取得(ACQ)が、以下のように構成され:
・T
2重み付け;
・予め定義された閾値よりも大きいエコー時間(TE);
-少なくとも1つのフィルタリング閾値の自動計算(S
A)は、以下を備える;
・基準ボリュームを取得し;
・
前記基準ボリュームの各ボクセルの異なるシグナル強度値の分布(VAIR)に対応する
前記第2の分布関数(F
A)を生成
し;
・前記
第2の分布関数(F
A)の標準偏差(σ
A)を計算し;
・算出された
第2の分布関数(F
A)の標準偏差から、
前記フィルタリング閾値(S
A
)を決定する、
請求項1に記載のバイオマーカー生成方法。
【請求項3】
前記取得がパラメーター化されており、さらに
-少なくとも4つのエコー時間(TE)のサイクル数にわたって取得された複数の画像から再構成された画像の取得であって、エコー時間は、増加する持続時間に従って構成される、画像の取得;
-スピンエコーシーケンス;
-取得されたシグナルを予備飽和又は飽和させるシグナルを発することを目的とするパラメーター設定、
を含む請求項2に記載のバイオマーカー生成方法。
【請求項4】
画像の第2の取得(ACQ
2)が、肺ボリューム(V
P)を概説する第1の構成(ConF
1)によって行われ、第1の構成(ConF
1)は、T
1又はプロトン密度重み付け取得のパラメーター化を定義し、画像処理のステップが、T
2重み付けで取得された画像と第2の取得(ACQ
2)で取得した画像とを結合するために行われる、
請求項2又は3に記載のバイオマーカー生成方法。
【請求項5】
超短エコー時間UTEによってT
1重み付けして取得した少なくとも1つの画像と、T
2重み付けして取得した少なくとも1つの画像とを結合する操作を行い、それぞれの取得画像からのデータを結合して肺ボリュームを区分した画像を生成する、
請求項4に記載のバイオマーカー生成方法。
【請求項6】
前記
フィルタリング閾値(S
A)は、前記
第2の分布関数(F
A)の基準分布値と、前記
第2の分布関数(F
A)の標準偏差(бA)の値の10倍から20倍の間で構成される値と、の組み合わせから定められる、
請求項2~4のいずれか一項に記載のバイオマーカー生成方法。
【請求項7】
前記
第2の分布関数(F
A)の基準分布値は、肺ボリューム(V
P)内でT
2重み付けして取得した画像のシグナル強度値の分布のメインモード(M
B)である、
請求項6に記載のバイオマーカー生成方法。
【請求項8】
正規化するステップを含み、該正規化は、フィルタリングされたボリューム(V
F)、フィルタリングされたボリュームから得られるボリューム(V
F)及び肺ボリューム(V
P)のシグナルの絶対値からシグナルのボリューム強度積(VIP)を計算することを含む、
請求項2~7のいずれか一項に記載のバイオマーカー生成方法。
【請求項9】
-MRI装置を用いた
MRI画像の取得(ACQ)は以下によって構成され:
・プロトン密度(長いTR又は長いTE)又はT
1重み付け、エコー時間(TE)(短いTR、短いTE)
・予め設定された閾値未満であるエコー時間;
-少なくとも1つのフィルタリング閾値の自動計算(S
1、S
2)は、以下の構成を有し:
・第1の
分布関数(F
1)の調整によって少なくとも2つのガウス関数(Fg
1、Fg
2)をモデル化(MODEL)し;
・第1のガウス関数(Fg
1)と第2のガウス関数(Fg
2)の交点の計算によって、第1
のフィルタリングの閾値を決定し;
・第1のガウス関数(Fg
1)の最小値及びボクセルのシグナル強度値の最小値に対応する第2の閾値(S
2)を決定する;
-前記フィルタリングされたボリューム(V
F)は、前記第1の閾値(S
1)と前記第2の閾値(S
2)との間で構成される前記第1のガウス関数(Fg
1)によって定量化(Q1)されたボクセルに対応する第1のボリューム(V
1)であって、前記ボクセルは空気媒体に対応し;
-前記第1の閾値(S
1)及び前記第2の閾値(S
2)から算出された肺ボリュームの三次元画像(V
P)の値(S
1,S
2)を正規化し;
-正規化されたセグメント化されたボリュームの特性ボリューム(V
C)の比率を示す第1のバイオマーカー(B
IND1)を生成し、前記比率は、特性ボリューム(V
C)と肺ボリューム(V
F)との間で計算される、
請求項1に記載のバイオマーカー生成方法。
【請求項10】
前記エコー時間が1ms以下である、
請求項9に記載のバイオマーカー生成方法。
【請求項11】
前記セグメント化(SEG)は、前記第1の閾値(S
1)よりも大きい第2のガウス関数(Fg
2)により定量化(Q2)されたボクセルに対応する第2のボリューム(V
2)の定義を含み、前記ボクセルは脂肪性又は中間媒質に対応する、
請求項9又は10に記載のバイオマーカー生成方法。
【請求項12】
前記セグメント化(SEG)は、シグナル強度値が第3の予め定められた閾値(S
3)よりも小さいフィルタリングされたボリューム(V
F)のボクセルからなる特性ボリューム(V
C)を抽出するステップを含み、前記第3の予め定められた閾値(S
3)は[0;1]の正規化スケールで決められる、
請求項9~11のいずれか一項に記載のバイオマーカー生成方法。
【請求項13】
前記セグメント化(SEG)は、同じ定量化(Q1、Q2、Q3)のボクセルの近傍から切断されたボクセルを除外/削除するステップを含む、
請求項11に記載のバイオマーカー生成方法。
【請求項14】
前記ガウス関数(Fg
1、Fg
2)のモデリングは、以下を含む:
-一回限りのエンコード時間を短縮し、ノイズ除去のために放射状に取得することにより、取得された画像に適用されるガウス平滑化;
-ローカルフィルタを適用して輪郭を描くこと;
-ボクセルの分布の頻度を表す曲線調整法を用いること、
請求項9に記載のバイオマーカー生成方法。
【請求項15】
第1関数(F
1)により定量化された各ボクセルのシグナル強度値の取得(ACQ)を含み、強度値が画像コントラストデータに対応する、
請求項1~14のいずれか一項に記載のバイオマーカー生成方法。
【請求項16】
前記取得(ACQ)は、レスピレーターと同期して行われ、前記レスピレーターは、ナビゲーター又は呼吸ベルトである、
請求項1~14のいずれか一項に記載のバイオマーカー生成方法。
【請求項17】
前記三次元画像の取得(ACQ)は、取得された二次元画像の積み重なりによって行われ、断面の厚さは、少なくともボクセルの幅に等しい、
請求項1~
16のいずれか一項に記載のバイオマーカー(B
IND)生成方法。
【請求項18】
前記取得は、時間単位あたりの前記第1のバイオマーカーの変動を予め定められた期間にわたって取得するように構成された四次元取得である、
請求項9~
14のいずれか一項に記載のバイオマーカー生成方法。
【請求項19】
前記四次元取得は、呼吸サイクルの持続時間に対応する時間単位でボクセルのボリュームを取得するように構成され、前記取得は、吸気及び/又は呼気の特徴的なデータと同期している、
請求項
18に記載のバイオマーカー生成方法。
【請求項20】
少なくとも計算機と、メモリと、MRIシステムによって取得された
MRI画像を受信するためのインターフェイスとを備えるシステムであって、前記システムは、請求項1~
19のいずれか一項に記載の方法のステップを実施するように構成されている、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、肺領域のバイオマーカーを生成するための方法の分野に関する。より具体的には、本発明は、所定の病理学と関連付けることができる特性の存在を定量化するために、画像を処理するための方法に関する。本発明の分野は、より具体的には、MRIによって取得された画像の処理に適用される。
【背景技術】
【0002】
現在、炎症現象の定量化や気道のリモデリングは、主にスキャナー画像診断装置から行われている。この技術は、トモデンシトメトリー、TDM、又はCTスキャンの名称でより良く知られており、定量化戦略を精巧に実行するための分解能及び十分なコントラストレベルを提供する三次元(3D)画像を得られる。より一般的には、CTスキャン画像により、肺管の異常の三次元(3D)的な拡張の指標を得られる。
【0003】
しかし、この技術は放射線を浴びるという欠点がある。また、気道のリモデリングから炎症を識別することができない。そこで、非照射イメージングを用いたバイオマーカーを精緻化し、MRIイメージングで可能となるような、活発な炎症現象のシグナルと決定的な瘢痕病変のシグナルとを区別できる必要がある。
【0004】
しかし、肺領域の組織や細胞構造は多様であり、現在に至るまでデータの損失なくセグメント化することが困難であるため、MRIによる肺領域の画像処理を可能とする様式を定義することは困難である。さらに、MRIシグナルはスキャナーのように較正されていないため、与えられた画像上のシグナル値の生データを使用することはできない。一方、肺のT1及びT2の実測値のパラメトリックマッピングは、正常肺の磁化率によって「アーティファクトを含む」、すなわち取得誤差を有するという性質がある。CTスキャンに代わるバイオマーカーを生成するのに十分な効率で、気道の適切なセグメント化を定義できるような撮影様式は今日まで存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このため、この問題に対応できる解決策を特定する必要がある。本発明は、前記の欠点を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様によれば、本発明は、以下を含むバイオマーカー生成方法に関する:
【0007】
-MRI装置を用いて画像を取得し;
【0008】
-前記MRI画像を処理して、肺の三次元(3D)画像を生成し;
【0009】
-前記取得された三次元(3D)画像の一部の各ボクセルの異なるシグナル強度値の分布に対応する第1の関数を生成し;
【0010】
-前記取得された三次元(3D)画像の一部の各ボクセルの異なるシグナル強度値の少なくとも1つの第2の分布関数から、前記第1の関数の少なくとも1つのフィルタリング閾値を自動的に計算し;
【0011】
-以下を含むボリューム(体積)をセグメント化し、
【0012】
・肺ボリューム(体積)に対応する、メインボリューム(体積);
【0013】
・第1の関数によって定量化され、少なくとも計算されたフィルタリング閾値によってフィルタリングされたボクセルのボリューム(体積)のフィルタリングボリューム(体積)、
【0014】
-前記画像のボクセルのシグナル強度値の絶対値と少なくとも前記算出されたフィルタリング閾値から、前記肺ボリューム(体積)の三次元(3D)画像の値を正規化し;
【0015】
-正規化された分割ボリューム(体積)比を示すバイオマーカーを生成する。
【0016】
肺のボリューム(体積)は、肺の壁によって区切られたボリューム(体積)に相当する。
【0017】
有利には、本発明は、患者に応じた適応的な閾値を定義しながら、バイオマーカーの生成の自動化を可能にする。別の利点は、生成を希望する使用例に応じて、異なるバイオマーカーを生成するように取得を構成することが可能になることである。
【0018】
取得された三次元(3D)画像の一部の各ボクセルの異なるシグナル強度値の分布に対応する第1の関数を生成するステップは、言い換えれば、取得された三次元(3D)画像の一部の各ボクセルの異なるシグナル強度値の分布の生成につながる第1の関数の適用に対応する。
【0019】
一実施例によれば、本方法は、取得されたMRI画像を利用するためのコンソール内の機能、又はMRIシステムを利用するためのコンソールとの物理的又は無線インターフェイスを構成する装置内の機能によって実施される。本発明の方法を実施するために、MRI画像を受信するためのインターフェイスと、それらを格納するためのメモリとが使用されてもよい。
【0020】
本発明の方法を実施することを可能にする装置は、有利には、生成することが望まれるバイオマーカーに従ってパラメーター化を構成するために、ディスプレイとグラフィックインターフェイスとからなる。
【0021】
一実施形態によれば、本方法は以下を含む、
【0022】
-MRIシステムを用いた三次元(3D)画像の取得であって以下によって構成されたもの:
【0023】
・T2重み付け;
【0024】
・あらかじめ定義された閾値よりも大きいエコー時間TE。
【0025】
-少なくとも1つの以下の閾値を自動計算することを含む:
【0026】
・基準ボリューム(体積)を取得すること;
【0027】
・基準ボリューム(体積)の各ボクセルの異なるシグナル強度値の分布に対応する基準関数を生成すること、前記基準関数は第2の分布関数である;
【0028】
・参照関数の標準偏差を計算すること;
【0029】
・算出された基準関数の標準偏差から基準閾値を決定すること。
【0030】
利点は、放射線技術を用いることなく、粘液負荷及び/又は水腫の量を定量化することを可能にするバイオマーカーを生成することを可能にすることである。
【0031】
本実施形態の一例によれば、取得はパラメーター化されており、以下のように構成される。
【0032】
-少なくとも4つのエコー時間のサイクルにわたって取得された複数の画像からなる画像の取得であって、エコー時間は、増加する持続時間に従って構成される、画像取得;
【0033】
-スピンエコーシーケンス;
【0034】
-取得されたシグナルを予備飽和又は飽和させるシグナルを発することを目的としたパラメーター設定。
【0035】
利点は、画像処理から循環ボリューム(体積)を排除するために、循環ボリューム(体積)の処理を改善することについて顕著である。
【0036】
この同じ実施形態の一例によれば、画像の第2の取得は、肺ボリューム(体積)の輪郭を描くための第1の構成で行われ、画像処理のステップは、T2重み付けで取得した画像と第2の取得によって取得した画像とを結合するように行われる。第1の構成は、T1重み付け又は陽子密度重み付け撮影のパラメーター化を定義する。別の言い方をすれば、第1の撮影は、T1型重み付け又はプロトン密度型重み付けを構成することを可能にする。
【0037】
T2重み付けで取得した画像を処理するために、肺ボリューム(体積)や心臓などの臓器の輪郭を描くことが可能なマスクを構築することが利点である。実際、一般に、T2重み付けで取得された画像は、臓器の輪郭を描くことを可能にする肺ボリューム(体積)のセグメント化を得ることを可能にすることはない。
【0038】
この実施形態の例によれば、超短エコー時間UTEにおいてT1重み付けで取得された少なくとも1つの画像とT2重み付けで取得された少なくとも1つの画像との間の結合動作が実現され、取得した画像から得られるデータを結合して肺ボリューム(体積)をセグメント化した画像が生成される。
【0039】
利点は、2つの画像の結合から画像を生成することであり、生成された画像は、肺ボリューム(体積)内の関心ゾーンの最適な分離能力を提供することである。
【0040】
本実施形態の一例によれば、基準閾値は、基準関数FAの基準分布値と、基準関数FAの標準偏差бAの値の10倍から20倍の間で構成される値との間の組み合わせから決定される。
【0041】
ノイズレベルを除去することが可能となる利点がある。別の利点は、多数の患者に適合する閾値を生成するために、適応的な閾値を定義することである。
【0042】
本実施形態の一例によれば、基準関数FAの参照分布値は、肺ボリューム(体積)VP内のT2重み付けで取得された画像のシグナル強度値の分布のメインモードMBである。利点は、異なるプロファイルを有する異なるタイプの患者に適用可能なフィルタを実現するために基準値を使用することである。このように、フィルタは適応的であり、撮影構成や患者のプロファイルに依存しないことが可能となる。また、メインモードの選択により、患者ごとに適応的な閾値を定義することが可能となる。
【0043】
この実施形態の例によれば、方法は、正規化のステップを含み、正規化は、フィルタリングされたボリューム(体積)VF、フィルタリングされたボリューム(体積)VFから得られるボリューム(体積)、及び肺ボリューム(体積)VPのシグナルの絶対値からシグナルのボリューム(体積)強度積(VIP)を計算することを含む。利点は、例えば、肺のゾーンの炎症のレベルを定量化することである。別の利点は、時間の経過に伴う炎症の伝播を定量化することが可能であることである。
【0044】
別の実施形態によれば、本発明のバイオマーカー生成方法は、以下のことを特徴とする。
【0045】
-MRIシステムを用いた三次元(3D)画像の取得は、以下によって構成される。
【0046】
・エコー時間のプロトン密度又はT1重み付け;
【0047】
・あらかじめ定義された閾値よりも小さいエコー時間;
【0048】
-少なくとも1つの閾値の自動計算は、以下のように構成される:
【0049】
・第1の関数の調整により、少なくとも2つのガウス関数をモデル化し;
【0050】
・第1のガウス関数と第2のガウス関数の交点の計算によって、第1のフィルタリング閾値を決定し;
【0051】
・第1のガウス関数の最小値とボクセルのシグナル強度値の最小値とに対応する第2の閾値を決定する;
【0052】
-前記フィルタリングされたボリューム(体積)は、前記第1の閾値と前記第2の閾値との間で構成される前記第1のガウス関数によって定量化されたボクセルに対応する第1のボリューム(体積)であり、前記ボクセルは空気媒体に対応することを特徴とし、
【0053】
-算出された前記第1の閾値と前記第2の閾値とから、前記肺のボリューム(体積)の三次元(3D)画像の値を正規化し、
【0054】
-正規化されたセグメント化されたボリューム(体積)のボリューム(体積)特性の比率を示す第1のバイオマーカーを生成し、前記比率は、特性ボリューム(体積)と肺ボリューム(体積)との間で計算される。
【0055】
この構成の利点は、肺気腫に関連する現象の代表である可能性があるバイオマーカーのおかげで特徴的なボリューム(体積)を分離しながら、肺の良好なセグメント化を得ることである。
【0056】
本実施形態の一例によれば、エコー時間は1m秒以下である。比較的短いTEを有する取得構成の利点は、フーコー(Foucault)電流に鈍感であることである。この構成によれば、肺実質のシグナルを最大化することが可能となる。
【0057】
本実施形態の一例によれば、セグメント化は、第1の閾値よりも大きい第2のガウス関数によって定量化されたボクセルに対応する第2のボリューム(体積)を定義することを含み、前記ボクセルは脂肪性又は中間媒質に対応する。利点は、肺の異なるボリューム(体積)のセグメント化を改善することである。
【0058】
この実施形態の例によれば、セグメント化は、シグナル強度値が第3の予め定義された閾値未満であるフィルタリングボリューム(体積)のボクセルからなる特性ボリューム(体積)を抽出するステップを含み、前記予め定義された閾値は、[0;1]の正規化スケールにわたって決定される。利点は、肺気腫現象を代表するバイオマーカーを得ることである。
【0059】
この実施形態の例によれば、セグメント化は、同じ定量化のボクセルのその近傍から切断されたボクセルを除外/削除するステップを含む。利点は、取得アーティファクトを減少させ、病理の特徴的なボリューム(体積)に実際に対応するボリューム(体積)を選択することである。
【0060】
本実施形態の一例によれば、ガウス関数のモデリングは、以下のように構成される:
【0061】
-1回のエンコード時間を短縮し、ノイズ除去のための放射状取得で取得画像に適用されるガウススムージング;
【0062】
-局所フィルタの適用による輪郭のアウトライン化;
【0063】
-ボクセルの分布頻度を表す曲線調整法の使用。
【0064】
利点は、画像中のシグナルの値の強度分布の現実的で忠実なモデリングを得ることができることである。ガウス関数からの処理の関数化により、代表的であると同時に適応的な、各患者に対して同一の処理を生成することが可能となる。
【0065】
実施形態によれば、本方法は、第1の関数によって定量化された各ボクセルのシグナル強度値の取得を含み、強度値は、画像コントラストデータに対応する。
【0066】
実施形態によれば、取得は、レスピレーターと同期して行われる。一例によれば、レスピレーターは、ナビゲーター又は呼吸ベルトである。利点は、画像の取得中に肺の動きによる制約がないことである。
【0067】
実施形態によれば、MRIによって取得された画像からボリューム(体積)画像を抽出するステップが実施され、前記抽出された画像は、シーケンスの決定された瞬間に実現される。
【0068】
別の実施形態によれば、三次元(3D)画像の取得は、取得された二次元画像の積み重なりによってなされ、断面の厚さは、少なくともボクセルの幅に等しい。
【0069】
別の態様によれば、本発明は、少なくとも計算機と、メモリと、MRIシステムによって取得された画像を受信するためのインターフェイスとを備えるシステムに関し、前記システムは、本発明の方法のステップを実施するように構成される。有利には、ディスプレイによって、取得されたMRI画像及び処理された画像を視覚化することが可能である。バイオマーカーは、生成された画像内でグラフィカルに表現することができる。一実施例によれば、グラフィックインターフェイスにより、撮影パラメーターを調整し、関心領域又は病理学的検索を定義することが可能である。
【0070】
実施形態によれば、本発明の方法による第1の取得及び第2の取得は、呼吸サイクル内で連続して実施され、各取得は、吸気及びそれぞれ呼気の特徴的なデータに同期され、本方法は、さらに、以下を含む:
【0071】
-同一の呼吸周期の各取得について、第1のバイオマーカーを生成し;
【0072】
-同一の呼吸周期の各取得について、メインボリューム(体積)の定量を抽出し;
【0073】
-前記各取得において生成された2つのバイオマーカーの間の補正された差を代表するボクセルを選択するために、これら2つの呼吸時間の間で弾性的に再設定する。
【0074】
実施形態によれば、本方法は、2つの取得の間の前記選択されたボクセルの正規化された定量化を含む。
【0075】
実施形態によれば、取得は、単位時間あたりの第1のバイオマーカーの変動を予め定義された持続時間にわたって取得するように構成された四次元(4D)取得である。
【0076】
実施形態によれば、四次元(4D)取得は、呼吸サイクルの持続時間に対応する時間単位にわたってボクセルのボリューム(体積)を取得するように構成され、前記取得は、吸気及び/又は呼気の特徴的なデータと同期している。
【発明の効果】
【0077】
本発明の他の特徴及び利点は、図示する添付の図を参照しながら、以下の詳細な説明を読むことによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【0079】
【
図2】第1のバイオマーカーを生成するために、肺気量を定量化するために適用される本発明の方法の第1の実施形態;
【0080】
【
図3】第2のバイオマーカーを生成するために、気道の変位量を定量化するために適用される本発明の方法の第2の実施形態;
【0081】
【
図4】肺の三次元(3D)画像の二次元断面、その断面又は三次元(3D)画像はMRI装置によって取得されたものである;
【0082】
【
図5】第1の実施形態に従って正規化された第1のバイオマーカーを生成するために、第1の閾値を決定するための2つの関数の例示的な使用例;
【0083】
【
図6A】スキャナーを用いて得られた異なる二次元(2D)画像コントラストを定量化する曲線と、慢性閉塞性肺疾患患者の肺気腫の定量化を表す指標の生成を可能にする閾値の一例;
【0084】
【
図6B】スキャナーを用いて得られた二次元(2D)画像の異なるコントラストを定量化した曲線と、健常者の肺気腫の定量化を表す指標を生成することを可能とする閾値の一例;
【0085】
【
図7A】MRIによって得られ、慢性閉塞性肺疾患を有する患者の肺気腫の定量化を表す指標を生成することを可能にする閾値を自動的に計算するために本発明の方法に従って処理された二次元(2D)画像の異なるコントラストを定量化する曲線の一例;
【0086】
【
図7B】MRIを用いて得られ、健康な患者の肺気腫の定量化を表す指標を生成することを可能にする閾値を自動的に計算するための本発明の方法に従って処理された二次元画像の異なるコントラストを定量化する曲線の一例;
【0087】
【
図8】MRIの断面における、患者における肺ボリューム(体積)の鬱血量(粘液の分泌量など)を表す図、
【0088】
【
図9】マスクを生成するために、高強度のボクセルをフィルタリングすることを可能にする基準閾値を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0089】
定義
【0090】
本明細書の残りの部分では、三次元(3D)画像は、ボクセルとも呼ばれる複数のボリューム(体積)画素からなる。画像ピクセル又は画像ボクセルという用語は、無差別に使用される。
【0091】
本明細書の残りの部分では、「低シグナル」は、MRI画像上に黒又は濃い灰色のパッチとして現れる、強度の低いシグナルを指定することになる。これは、プロトン(空気)の不存在、T2の短い物質(石灰化組織(皮質骨、エナメル、石灰化)、コラーゲンに富む組織(腱、靭帯、筋膜など)、タンパク質に富む液体、滞留液(尿、LCS、胸水、水腫、炎症など)、常磁性効果物質(濃縮ガドリニウム)、高い濃度の鉄(ヘモクロマトシス)、特定の血腫などである。
【0092】
本明細書の残りの部分では、「高シグナル」は、MRI画像上に白又はライトグレーのパッチとして現れる、高強度のシグナルを指定する。T1では、T1の短い物質のシグナルである:脂質(脂肪、脂肪性腫瘍、脂肪性骨髄など)、タンパク質に富む液体(粘膜、腫瘍性嚢胞など)、常磁性効果物質(ガドリニウムなど)、鉄(亜急性血腫)、フリーラジカル(メラニン)、脳下垂体後葉、その他である。T2では、遊離水(尿、LCS、胸水、滑液など)、間質水(水腫、炎症など)、滞留血、低蛋白液などで見られる。
【0093】
図1は、本発明の方法の例示的な実施形態の主要なステップを表す。ステップは、MRIシステムを用いた画像又は画像のシーケンスの取得を含んでいる。取得は、例えば、三次元(3D)画像を形成するために次に積み重ねられる二次元断面の取得によって行われる。別の実施例によれば、取得は、三次元(3D)画像を得ることを可能にする直接的な三次元(3D)取得である。 本発明は、画像処理アルゴリズムを使用して画像を生成し再構成するために時間的スケールが考慮される、いわゆる「四次元(4D)」取得にも適合する。
【0094】
実施形態によれば、呼吸同期を伴うシグナルを取得するために、呼吸数を測定するための装置が使用される。レスピレーターを用いてもよいし、呼吸数を画像取得に同期させることが可能な他の装置を用いてもよい。この特性により、動きの影響を受けにくい取得を行うことができる。
【0095】
本発明の方法は、シグナル強度の関数としての画像のボクセルの分布の第1の分布関数F1を生成することを目的とするステップを含む。パラメーターの解像度は、MRI画像の取得モードに応じて設定される。他の実施形態によれば、考慮されるシグナル強度は、階調、飽和又は輝度レベル、又はこれら3つの要素の組み合わせから表される。一実施例によれば、シグナル強度は、取得された画像に応じた絶対的な尺度に従って符号化されたパラメーターである。別の実施例によれば、パラメーターは、取得された画像のボクセルの全てにおけるパラメーターの変動の振幅の関数として、相対的なスケールに従って符号化される。
【0096】
このようにして、第1の関数F1により、画像におけるこのシグナル強度の分布を考慮することが可能となる。
【0097】
本発明の方法は、得られた分布値を正規化するために関数F1に適用される閾値を自動的に計算することを可能にする第2の関数F2を生成するステップを含む。
【0098】
第2の関数F2は、有利には、画像のシグナル強度の分布を記述する関数である。異なる実施形態によれば、この関数は、閾値の計算を最適化するように、最適化された正規化を可能にする閾値を生成するように、又は関数F1の分布に関連する画像内のパターン若しくは特異点の識別の目的の関数として実装及び定義されてもよい。
【0099】
本発明の方法は、少なくとも1つの閾値を自動的に決定することを可能にするステップDET_Sを含んでいる。決定された少なくとも1つの閾値は、特に、第1の関数F1又は第2の関数F2によって表されるシグナル強度の分布をフィルタリングするために使用される。
【0100】
異なる実施形態によれば、複数の閾値が決定されてもよい。閾値は、少なくとも第2関数F2に対する演算又は演算の組合せを用いて決定されてもよい。演算は、曲線交差計算、標準偏差計算、又は特性値の決定、あるいはその代わりに、デジタル関数に対して実行することができる任意の他のタイプの計算を含んでいてもよい。
【0101】
本方法は、少なくとも1つの事前に決定された閾値でフィルタリングされた関数F1に相対する画素を選択することによって、取得された画像のボリューム(体積)をセグメント化することを目的とするステップSEGを含む。
【0102】
セグメント化は、肺ボリューム(体積)VPと少なくとも1つのフィルタリングボリューム(体積)VFのセグメント化から構成される。フィルタリングボリューム(体積)VFは、関数F1又はF2のフィルタリング後に得られたボリューム(体積)に対応してもよい。このセグメント化は、いくつかのステップで実施されてもよい。第1のステップは、肺のボリューム(体積)VPのセグメント化、すなわち、肺の裏打ち組織に対応してもよい。
【0103】
実施形態によれば、本発明の方法は、特に、肺ボリューム(体積)VPにわたってセグメント化されたフィルタリングボリューム(体積)VFの割合を正規化することを可能にする正規化のステップを含む。
【0104】
実施形態によれば、本発明の方法は、生理学的徴候の代表であるフィルタリングされたボリューム(体積)の特徴的なボリューム(体積)を抽出することを目的とするステップを備える。それは、病理の存在を定量化又は定性化することを可能にするバイオマーカーであってもよい。
【0105】
したがって、この方法は、特性ボリューム(体積)VCの割合を評価することを可能にするバイオマーカーBINDを生成することを可能にする。
【0106】
本発明の第1の実施形態によれば、本方法の実施により、第1のバイオマーカーBIND1を生成することが可能となる。別の実施形態、すなわち第2の実施形態によれば、本発明の方法は、第2のバイオマーカーBIND2を生成することを可能にする。
【0107】
-第1のバイオマーカー
【0108】
図2は、本発明の第1の実施形態の主要なステップを表している。本実施形態では、MRI画像診断装置の第1の構成CONF
1が実現される。第1の構成CONF
1では、T
1型又はプロトン密度型の重み付けを設定することが可能となる。いずれの重み付けの場合も、TEと記されたエコー時間は、予め定められた閾値よりも小さく定義される。繰り返し時間TRは、それ自体、使用される重み付けに従って短い又は長いとみなされる値の範囲に従って設定される。当業者であれば、TE、TRの構成と選択された重み付けとの間の関連性を確立する方法を知っているであろう。
【0109】
-取得
【0110】
このMRI撮影は、ボリューム(体積)撮影、すなわち、得られる画像が直接的に三次元(3D)画像である場合もある。この構成CONF1により、「UTE」と称される超短エコー時間、又はその代わりにZTEとも称されるZero TEシーケンスを定義することが可能となる。
【0111】
UTEシーケンスを使用して、等方性3D画像を取得してもよい。三次元(3D)画像は、例えば、放射状平面を積み重ねた円筒形取得、又は3方向の放射状投影を用いた球形取得によって取得されてもよい。また、螺旋上に分布する球面上の光線の端部を撮影することも可能である。このような取得モードは、例えば、文献“IRM pulmonaire 3D a temps d'echo ultracourt par acquisition spiralee ou spherique de l'espace-k (Pulmonary 3D MRI with ultraashort echo time by spiral or spherical acquisition of the k-space), Joseph Yazbek”に記述されている。ボリューム(体積)の充填は、読影勾配によって行われる。これは、球座標において実質的に均一な方法で離散化された表面で終わる。
【0112】
ZTEシーケンスも3D取得技術である。この技術は、安定した振幅勾配の適用と、非常に短い持続時間と小さなフリップ角を有するRFパルスの送信とからなる。撮影は、発光と受信の間のフリップに対応する所定の時間後に開始される。2つのTRの間にて、読取勾配の振幅は徐々に増加する。この構成は、収集時間中の勾配の強度の変化速度に制約がないため、フーコー(Foucault)電流の影響を受けにくいという利点がある。
【0113】
UTE又はZTEシーケンスの興味は、肺実質で利用可能なシグナルを最大化することである。
【0114】
取得された画像は、ノイズの低減、アーティファクトの除去、又はコントラストスケールの適合のために、画像処理アルゴリズムによって処理される場合がある。
【0115】
実施形態によれば、取得が3Dではなく二次元(2D)で行われる場合、3D画像の再構成のステップは、二次元(2D)レイヤーの積み重なりごとに実施されてもよい。得られた三次元(3D)画像、及び任意に処理された三次元(3D)画像は、次に、複数のボクセルから構成される。
【0116】
-画像処理
【0117】
図4は、肺ボリューム(体積)V
Pを有する各肺の三次元(3D)画像の断面を表している。胸郭のボリューム(体積)は、例えばここではボリューム(体積)V
Tで表されている。この画像では、各肺のボリューム(体積)と胸郭のボリューム(体積)とを区切るボクセルのシグナル強度の不連続性のおかげで、各肺の裏打ちとなる組織の輪郭が顕著に図示されている。
【0118】
実施形態によれば、MRIイメージングシステムは、PETRAシーケンスを用いて構成される。例示的な実施形態によれば、輪郭ブースターフィルタが、取得された画像に適用されてもよい。関心事は、画像のコントラストのより良い定義を得ることである。輪郭のアウトライン化は、局所フィルタの適用から得られてもよい。
【0119】
実施形態によれば、本発明の方法は、1回のエンコード時間を短縮し、ノイズ除去のための放射状取得を伴って取得された画像に適用されるガウススムージングのステップを含む。この処理の興味は、得られた曲線の想定された規則性のこの処理方法によって取得中に得られたノイズを低減することである。
【0120】
-肺ボリューム(体積)の抽出
【0121】
本発明の方法によって、シグナル強度値又は比色パラメーターに応じたボクセルの広がり又は分布を表す曲線C1を生成することが可能となる。この分布は、肺の三次元(3D)の裏打ち組織の抽出を予め実施することによって、肺ボリューム(体積)VPに限定することができる。この抽出は、ボクセルとその近傍のシグナル強度値又は比色パラメーターの解析に基づく輪郭処理のためのアルゴリズムを使用して自動的に実行されてもよい。
【0122】
ボクセルの分布を実現するシグナル強度値又は測色パラメーターは、有利には、コントラストデータである。任意の他のタイプのパラメーターが、取得された画像の関数として使用され得る。例えば、輝度、色調又は飽和データが、組み合わせて又は代替のコントラストデータで使用され得る。
【0123】
このように、第1の関数F1は、所定の解像度に応じた肺ボリューム(体積)VPにおけるボクセル分布曲線を表している。所与の解像度は、画像の取得の解像度に対応する。したがって、解像度は、画像の取得構成に依存する。
【0124】
関数F
1は、連続関数であってもよいし、離散関数であってもよい。この後者の場合、ボクセルは、コントラスト単位を定義するスケールに従って集められてもよい。このスケールは、例えば最小値及び最大値と肺ボリューム(体積)との関数として、及び/又は考慮されるボクセルの数の関数として、予め定義されてもよく、自動的に計算されてもよい。関数F
1のグラフ表現である曲線C
1は、
図5に図示されている。
【0125】
実施形態によれば、フィルタリングボリューム(体積)VF又は特性ボリューム(体積)VCなどの肺ボリューム(体積)VP内のボリューム(体積)の抽出は、その近傍のボクセルから切り離された同じ範囲のコントラストのボクセルを除外、又は排除することを可能にする画像処理を含んでいる。その目的は、偽陽性、撮影エラー、又は生理学的若しくは病理学的徴候を代表する関心領域の外側にあるボクセルを排除することである。
【0126】
本発明の方法は、関数F1又は関数F1をモデル化した関数によって表される分布のボクセルをフィルタリングすることを可能にする少なくとも1つの閾値S1を自動的に計算するステップからなる。
【0127】
この第1実施形態では、2つの閾値S1、S2が算出される。閾値S1は、ボクセルの分布を生成するために考慮されるシグナル強度値又は測色パラメーターの最大値を定義し、第2の閾値は、最小値を定義する。
【0128】
-第二関数の定義
【0129】
この第1の実施形態によれば、最適な閾値を決定するために、この方法は、第1の関数F1の調整によって少なくとも2つのガウス関数Fg1、Fg2のモデル化を目指すステップを含む。
【0130】
これら2つのガウス関数Fg1,Fg2は、それぞれが肺ボリューム(体積)VPのシグナルの分布、すなわち肺ボリューム(体積)VP内のボクセルの分布をモデル化するように取得される。
【0131】
第1のガウス関数Fg1は、本質的に、空気媒体に対応する肺ボリューム(体積)VPのシグナルをモデル化する。第2のガウス関数Fg2は、本質的に、心臓、筋肉、血管、又は骨髄などの中間媒体に対応する肺ボリューム(体積)VPのシグナルをモデル化する。
【0132】
曲線C
1の調整によるモデル化により、2つのガウス分布を表す2つの関数Fg
1、Fg
2を得ることが可能となる。
図5は、関数Fg
1、Fg
2に関連する曲線を表している。また、曲線C
1の調整により、
図5に示す第3の曲線Fg
3を得ることができる。関数Fg
3は、本質的に、脂肪質の媒体に対応する肺のボリューム(体積)V
Pのシグナルをモデル化する。
【0133】
-閾値の生成
【0134】
第1の閾値S
1は、曲線Fg
1とFg
2の交点の計算によって自動的に生成される。第1の閾値S
1は、肺活量V
Pにおけるシグナルの定量化の最大値を定義する。
図5の場合、それは、コントラストパラメーターの最大値である。最大値S
1により、C
1の分布のボクセルが第1の閾値S
1の値以下であるようにフィルタリングすることが可能である。
【0135】
第1の閾値S1を定義することの興味は、肺実質組織と軟部との値の間で最良のセグメント化を得ることである。
【0136】
第2の閾値S
2は、第1のレベルのコントラストを有する第1のボクセルを定義する最小のコントラスト値を考慮することにより、自動的に生成される。
図5は、第2の閾値S
2を表す。
【0137】
興味は、患者から他の患者へ、又は所定の構成から他の構成へ依存し得る画像のシグナルの絶対値の変動から解放されることである。本発明の方法は、画像のシグナルの最小値を、0に正規化された値として考慮することを可能にする。
【0138】
次に、シグナル強度値又は比色パラメーターが第2の閾値S2(最小値)と第1の閾値S1(最大値)との間で構成される曲線C1のボクセルを定義するフィルタリングされたボリューム(体積)VFを抽出する目的で、肺ボリューム(体積)のセグメント化SEGのステップが実施される。
【0139】
各肺の裏打ちの組織を形成する肺VPのボリューム(体積)も、以前に行われていなければ、このステップで抽出される。
【0140】
-正規化
【0141】
この方法は、2つの閾値S2及びS1の間に構成されるシグナルの値を正規化することを可能にする正規化NORMのステップを含む。閾値S2に対応する最小値は値0に定義され、閾値S1に対応する最大値は値1に定義される。0の値は、肺内空気媒体に対応するボクセルの値に近い。1の値は、胸部の柔らかい部分に相当するボクセルの値に近い。
【0142】
したがって、本発明の方法は、値がこの第1の閾値S1より小さいシグナルの量を定量化することを可能にする第1の適応的な閾値S1を選択することを可能にする。
【0143】
有利には、本方法は、患者に応じた閾値の可能な変動を考慮することを可能にする。
【0144】
-バイオマーカーをモニタリングするための四次元(4D)取得
【0145】
本発明の方法は、静的な三次元(3D)MRI画像に適用してもよいし、時間成分を追加した動的な三次元(3D)MRI画像に適用してもよい。そして、これは、四次元(4D)取得と呼ばれる。四次元(4D)取得の興味は、所与の持続時間に対する第1のバイオマーカーBIOIND1の時間的変化を評価することを可能にする動的マーカーを生成することである。この取得は、指標の変動が患者の吸気と呼気との間で測定される場合に、特に興味深い。そして、第1のバイオマーカーBIOIND1によって、細い気道の機能障害を定量化することが可能となる。
【0146】
実際、時間経過に伴う肺シグナルの変動の全体的な測定では、肺気腫と呼ばれる固定された破壊病変を、細い気道の潜在的に可逆的な障害、すなわち肺胞トラッピングから体系的に識別することはできない。したがって、本発明の興味は、小気道の可逆的な障害から肺気腫を識別することを可能にするボクセルの定量化を得ることを可能にする動的バイオマーカーを定義することである。
【0147】
本発明の四次元(4D)取得方法は、肺低シグナルの処理に特に適しており、効率的である。
【0148】
肺の四次元(4D)取得は、2つの実施形態に従って実現することができる。
【0149】
第1の実施形態では、2つの静的取得が実施される。第1の取得は吸気中に行われ、第2の取得は呼気中又は患者が呼吸を止めているときに行われる。各取得は、対象となる見込み呼吸の同期と共同でトリガーされてもよい。この同期は、例えば、患者の呼気又は吸気を測定することを目的とする装置から実行されてもよい。
【0150】
第2のモードでは、自由呼吸での捕捉が行われ、回顧的呼吸同期によって呼吸周期の全体を分解することが可能となる。
【0151】
第1の実施形態によれば、肺気腫を代表するシグナルの抽出と、肺実質全体のシグナルの抽出により、これら2つの呼吸時間の間で弾性リセットが可能となり、肺気腫であると特定されたボクセルを肺実質全体の変動に関連するボクセルから減算し、肺胞トラッピングの正確かつ客観的な測定が可能となる。この識別は、肺シグナルの変動の単純な全体的な測定では容易に不可能である。したがって、この取得モードは、この識別を定量化する場合に、関心のあるボクセルを代表する動的バイオマーカーを生成するために特に有利である。
【0152】
実施形態によれば、吸気時に第1の取得が行われ、呼気時に第2の取得が行われる場合、取得は、各呼吸サイクルにおいて、そのサイクルの瞬間にトリガーされるように構成される。この実施形態では、2つの捕捉が呼吸周期で実施される。
【0153】
代替の実施形態によれば、取得は吸気毎に行われ、差分量は2つの吸気の間で測定される。別の代替的な実施形態によれば、取得は呼気ごとに行われ、差分ボリューム(体積)は2つの呼気の間で測定される。この場合、呼吸サイクルにおいて1回の捕捉が行われる。
【0154】
第2の実施形態によれば、吸気時、又は呼気時の時間経過に伴う肺気腫のボリューム(体積)の変動により、時間単位あたりのこの肺気腫のボリューム(体積)の変動を得ることが可能となる。したがって、この動的バイオマーカーは、肺のコンプライアンスを反映するものである。
【0155】
2つの実施形態の一方又は他方によれば、ボクセル強度の閾値は、吸気相の過程及び/又は呼気相の過程での取得中に構成されてもよい。本発明の方法は、構成された各閾値の変動の測定を実施することを可能にする。これらの変動は、2つの静的取得の間又は四次元(4D)取得の間に測定されてもよい。
【0156】
利点は、呼吸動態の間に識別能力を有する動的マーカーを得ることである。異なる病態に対応するボクセルのボリューム(体積)をより効率的に識別することが関心事である。
【0157】
1つの使用態様によれば、動的バイオマーカーは、取得された画像及び病的状況の第1の特徴付けを確認又は確証するために、本発明の静的バイオマーカーを補完するものとして使用され得る。
【0158】
-バイオマーカーを生成するための第3の閾値の定義
【0159】
図6A及び
図6Bは、スキャナーを用いて得られた画像からセグメント化されたボリューム(体積)のシグナル分布曲線を表す図である。この例では、所定のスケールで予め定義された閾値S
3により、
図6Bで表される場合に得られる特性ボリューム(体積)V
Cよりも
図6Aで表される特性ボリューム(体積)V
Cを構成する肺を重要視して判別することができるようになる。ボリューム(体積)V
Cは、所定の生理学的徴候を裏付ける中間媒体に対応することができる。
図6A及び
図6Bで得られた曲線は、2人の患者の曲線に対応することができる。
図6Aは、肺気腫の存在に特徴的である。
図6Bは、健康な被験者の特徴である。
【0160】
図7A及び7Bは、本発明の方法の実施によって得られた特徴的なセグメント化ボリューム(体積)V
Cの2つの閾値S
1及びS
2の間に構成されるシグナルの分布曲線を表す。
図7Aは、例えば、
図6Aと同じ患者に対応し、
図6Bは、
図7Bと同じ患者に対応する。
図7A及び7Bは、本発明の方法に従ってMRI撮像システムから得られたものである。
【0161】
図7Aは、0から1に正規化されたスケール上で予め定義された閾値未満の値を有するボクセルについて得られた特性ボリューム(体積)V
Cを表す。
図7A及び7Bの場合、予め定義された閾値は、値0.2に対応する。この閾値により、低シグナルがこの第3の閾値S
3未満で有意に表される場合、患者の肺気腫の良好な代表性を得ることが可能になる。
【0162】
閾値S2と閾値S1の間に構成される閾値S3が低い、すなわち0に近い、例えば0~0.30である場合、第1のバイオマーカーBIOIND1は、肺気腫現象に特有の兆候の検出において使用することができる。
【0163】
閾値S2と閾値S1との間に構成される閾値S3が、中間値、すなわちスケール[0;1]の中央値又は平均値の周りに定義される値の範囲、例えば0.35~0.65を有する閾値である場合、バイオマーカーBIOIND1は気道のトラップのマーカーとして使用することができる。
【0164】
したがって、この第1の閾値レベルは、生理学的データに従って特定の患者を分類することを可能にするバイオマーカーBIOIND1を生成することを可能にする。
【0165】
図6Aに対する
図7Aの興味は、得られた特性ボリューム(体積)V
Cの部分が、従来技術の方法よりも本発明の方法の方が重要であることである。さらに、
図7Bに表される健康な被験者と肺気腫を有する被験者との間の差は、
図6Aと
図6Bとの間よりも、
図7Aと
図7Bとの間でより顕著である。
【0166】
正規化スケールで0.2に定義された閾値S3は、肺における中間媒体の特徴的なボリューム(体積)の存在を識別することを可能にする当業者にとって満足のいく結果を得ることを可能にする。
【0167】
-第2のバイオマーカー
【0168】
図3は、本発明の第2の実施形態の主要なステップを表している。本実施形態では、MRI画像診断装置の第2の構成CONF
2が実現される。第2の構成CONF
2により、T
2型の重み付けを構成することが可能となる。
【0169】
本実施形態の目的は、肺ボリューム(体積)内の粘液負荷及び/又は水腫のボリューム(体積)を代表するバイオマーカーを生成することである。T2型重み付けの利点は、水、粘液、非循環血液などの滞留流体に特有の画像のシグナルを表現することである。この目的のために、本発明の方法は、粘液負荷の代表的なボリューム(体積)を分離するために特定のボリューム(体積)をフィルタリングするステップを含んでいる。
【0170】
取得ACQ
2の第2の構成CONF
2は、有利には、T
1重み付け又はプロトン密度重み付けを有する画像の相補的な取得ACQ
1によって完了することができる。この補完的な取得ACQ
1は、特に、肺ボリューム(体積)V
Pのセグメント化を改善することを可能にし、それは、
図2に表される第1の実施形態の取得として優先的に構成される。
【0171】
-取得
【0172】
第2の実施形態によれば、T2重み付けは、長いエコー時間TEと十分に長いと考えられる繰り返し時間TRとで有利に実現される。この用語、長いTE、短いTE、長いTR、短いTRは、T2重み付けを有するMRIシステムの適切な構成を決定する方法を知っているであろう当業者には知られていることが想起されるであろう。可能な構成は、エコー時間に対応する。TE>80ms及び繰り返し時間。TR>2000msである。
【0173】
この取得ACQ
2は、例えば、二次元(2D)又は三次元(3D)で行われる。第1の場合、3D画像の再構成のステップは、二次元(2D)レイヤーの積み重なりによって実施され得る。得られた、そして任意に処理された三次元(3D)画像は、その後、複数のボクセルから構成される。このステップは、
図3ではGEN 3Dというステップで表されている。このステップは、二次元(2D)取得から三次元(3D)画像を生成することを目的としている。
【0174】
-RTSE取得
【0175】
実施形態によれば、T2重み付けを伴う取得は、「ターボ・スピン・エコー」とよばれるラジアル取得シーケンスである。より一般的には、T2-RTSEと表記される。
【0176】
このT2-RTSEシーケンスは、k空間において放射状の軌道を有する二次元(2D)スピンエコーベースのシーケンスである。ラジアルデータの取得中に、取得構成に起因する平均化効果を用いて、k空間の中心が自然に得られる。この特性により、動きに起因するアーティファクトを改善することが可能である。 また、PACE(Prospective Acquisition and CorrEction)と呼ばれる撮影手法を用いることで、ラジアル方向の動きに対する耐性が強化されている。
【0177】
この撮影技術は、RTSEシーケンスをはじめとする様々なシーケンスに対応している。特に、S/N比を向上させるために、運動動作の一部を削除することが可能である。
【0178】
T2-RTSEでは、半径が大きくなるリング状にサンプリング密度を設定し、隣接するエコー時間TEの半径方向の投影を線形補間により求める。このプロセスは、例えば刊行物に記載されている擬似黄金角比を有するアルゴリズムを用いて、最大半径に達するまで繰り返される:“Multi-Echo Pseudo-Golden Angle Stack of Stars Thermometry with High Spatial and Temporal Resolution Using k-Space Weighted Image Contrast”。
【0179】
複数のエコーを取得し、各TEで取得した画像のコントラストを保持するk空間階層化法を用いて再構成される。この技術は、次に、連続する複数のTEにわたって取得された全ての画像から構築された合成画像の生成と、複数のエコー取得からT2重み付けを行った画像の再構成とから構成される。
【0180】
一実施例によれば、連続するエコー時間TEは、持続時間が長くなるにつれて互いに連続する。一実施例によれば、シグナルは、例えば、それぞれの値:20ms、50ms、85ms、100ms及び150msを有する5つのTEにわたって取得される。
【0181】
150msまでの長いエコー時間TEを使用することで、血管内を循環する血液量からのシグナルの除去率を向上させることが可能となる。循環血液量からのシグナルの除去のこの関数は、空間飽和及び/又は二重反転回復、及び/又は拡散モジュールを用いた取得によって改善され得る。二重反転回復は、DIRと表記されるMRIシーケンスであり、当業者には知られている。逆に、短い持続時間から中間の持続時間のTEを有する非循環流体は、長いTEにわたって消去され得る。TE全体にわたって再構成された合成画像における短いTEの利用可能性は、このように、短いTEの情報を失わないようにするための性質である。このように、マルチTE撮影は、非循環流体の効率的な可視化と、軟部又は循環血管の消去との間の最適な妥協を可能にする。
【0182】
有利には、MRIイメージングシステムの第2の構成CONF2は、TR時間及びTE時間のパラメーター化からなる。適切なパラメーター化により、循環ボリューム(体積)、例えば血管ボリューム(体積)を排除することを目的とした撮影に寄与することが可能となる。実際、TRというパラメーターはプロトン流入現象を制御することを可能にし、TEはプロトン流出現象を制御することを可能にする。スピンエコー撮影では、循環速度が速くなると取得シグナルが急激に低下する。実際、循環しているプロトンはリフェーズ(rephase)されない。
【0183】
この現象は、長いTE時間をパラメーターとする場合、シグナルを収集した時点で励起されたプロトンのほぼ全体が流出しているため、さらに顕著になる。スピンエコーシーケンスの使用により、血管のシグナル強度は弱くなる。特に、150msまでの長いTEと、各エコー列の上流の空間飽和を利用することで、循環中の血管のシグナル強度をさらに排除することが可能である。
【0184】
第2の構成CONF2は、有利には、さらに、予備飽和又は飽和を含んでいる。この技術は、例えば、高周波パルスの放出によって実施され得る放出周波数の選択に基づいている。このパルスによって、プロトンの縦磁化をキャンセルすることができる。このパルスは、有利には、各TEサイクルの前にプレパルスの形で放射される。高周波パルスは、再位相勾配を伴わずにスピン相を分散させるが、残留磁化を除去するスポイラーを伴う。例えば、セクション(断面)の積み重なりの上流に置かれた予備飽和ストリップは、セクション(断面)に入りやすいプロトンの磁化をぼかすことが可能である。このようにして、これらのプロトンのシグナルは減少し、あるいはゼロになり、それなしには、予備飽和がない場合に検出可能なシグナルを持つことになりやすい。この構成により、循環流を減少させるか、又は排除することが可能になる。結果として、本発明の方法は、移動するプロトンのシグナルをキャンセルし、移動しないプロトンのシグナルを保存することを目的としたステップを含んでいる。この操作は、したがって、シグナルの飽和の構成のおかげで実施され得る。
【0185】
例示的な実施形態によれば、第2の構成CONF2を確立するために以下のパラメーターを定義してもよい:再構成TE=20、50、85、100及び150ms、TR=2350ms、フリップ角=145°、ピクセルのサイズ=1.6 x 1.6 mm2、セクション(断面)の厚さ=1.6mm、インターレースなし、平均取得時間=12分。
【0186】
本実施例によれば、二次元(2D)画像の積み重なりによって2次的に三次元(3D)画像を構築することができる。等方性ボクセルで構成されるボリューム(体積):例えば{1.6mm}3の寸法のもの、を得ることができる。
【0187】
-T1又はプロトン密度重み付けによる相補的な取得
【0188】
肺ボリューム(体積)VPの裏打ち組織をセグメント化するために、T1重み付け又はプロトン重み付けによる第2のMRI取得を行う場合、T1重み付けによる構成は、例えば、エコー時間から構成されてもよい。TE=10~20ms、繰り返し時間。TR=400~600msである。この第2のMRI撮影は、ボリューム(体積)撮影、即ち、得られる画像が直接的に三次元(3D)画像であってもよい。そして、この構成は、実質的に第1の実施形態の構成CONF1に近いものとなっている。この最終的な構成は、超短エコー時間UTEを定義することによって実現されてもよいし、代わりにZero TEシーケンスを定義することによって実現されてもよい。
【0189】
その後、T1重み付け又はプロトン重み付けで取得した画像を、T2重み付けで取得した画像でリセットする。T1重み付け取得画像から抽出された肺ボリューム(体積)VPの輪郭をT2重み付け取得画像上でリセットし、T2重み付け取得画像の肺ボリューム(体積)VPをセグメント化してもよい。
【0190】
このリセットの利点は、循環血液量の処理のためにコントラストが低下した肺活量の輪郭を回復させることが可能になることである。
【0191】
別の実施例によれば、TR=4.1ms、TE=0.05ms、傾斜角=5°のシーケンスが定義されてもよい。
【0192】
同様に、この第2のT1重み付けMRI取得によって取得された画像は、ノイズの低減、アーティファクトの除去、又はコントラストスケールの適応のために、画像処理アルゴリズムによって処理されてもよい。
【0193】
-肺ボリューム(体積)の抽出
【0194】
第1のT2重み付け取得から得られた三次元(3D)画像と第2のT1重み付け取得から得られた三次元(3D)画像とを、肺ボリューム(体積)VPの内部の画像のボクセルをフィルタリングするように重ね合わせてもよい。最後に、このT1重み付け取得により、心臓のボリューム(体積)を概算し、関心ボリューム(体積)から差し引くことも可能となる。
【0195】
T1重み付け又はプロトン密度重み付け撮影の目的は、肺の裏打ち組織のマスクを実現することである。この三次元(3D)マスクを実現するために、三次元(3D)UTE収集は、T2-RTSE収集の空間分解能に対応するように補間される。一実施例によれば、画像は、強度に基づく最適化されたマルチモーダルアルゴリズムを用いて記録されている。最適な強度閾値を選択するための反復アルゴリズムが実装されてもよい。このアルゴリズムは、背景画像及び前景画像を分離する2つのクラスの平均を計算する。さらに、最適な分離閾値を反復して計算し、この計算が変化しないたびに停止する。このアルゴリズムは、肺マスクを作成するために、ヒストグラムを2つのボクセル強度クラスに従って2つの画像に分割することに基づいてもよい。次に、肺マスクは、例えば、肺ボリューム(体積)VPに構成されるボクセルを分離するために、記録されたT2-RTSE画像に適用される。他の技術により、肺ボリューム(体積)のマスクを取得することが可能である。例えば、マスクは、他の撮像システムから取得されてもよいし、以前に取得されてメモリに記録された画像から取得されてもよい。
【0196】
-第1関数 F1
【0197】
本発明の方法は、T2重み付け取得によって取得された画像のボクセルの分布をシグナル強度の関数として第1の分布関数F1を生成することを目的とするステップを含む。肺ボリューム(体積)内の粘液負荷を代表する関数F1を得るために、肺ボリューム(体積)VPを外形化するステップが、例えば、前述したように、第2のT1重み付け取得から実施される。さらに、血管内を循環する血液流体に対応するボクセルをフィルタリングするステップも、先に詳述したように、T2重み付け画像取得モードを理由に実施される。
【0198】
このようにして、第1の関数F1により、水などの流体のボリューム(体積)を代表する画像におけるシグナル強度などの測色パラメーターの分布を考慮することが可能となる。したがって、関数F1により、肺のボリューム(体積)において、実質的に95%の水で形成されている粘液のボリューム(体積)、又は実質的に90%の水で形成されている停滞した水腫のボリューム(体積)を識別することが可能となる。シグナル強度は、優先的にコントラストパラメーターである。
【0199】
関数F1が生成されると、肺ボリューム(体積)中のボクセルの分布を代表する曲線C1が得られる。ボクセルの分布は、解像度が画像取得構成に依存するボクセルの絶対的なスケールについて取得される。
【0200】
-第2関数F2
【0201】
自動閾値設定関数F2により、フィルタリングボリューム(体積)VFと特性ボリューム(体積)VCを抽出することが可能である。フィルタリングされたボリューム(体積)は、関心ゾーンに対応するセグメント化された画像から抽出されたボリューム(体積)であることが想起されるであろう。特徴的なボリューム(体積)Vcは、バイオマーカーを生成するような方法でフィルタリングされたボリューム(体積)から得られたボリューム(体積)である。
【0202】
このため、取得した画像において、基準ボリューム(体積)VAを特定する。基準ボリューム(体積)VAは、優先的に、空気ゾーンのレベル、すなわち、空気のボリューム(体積)に対応するボリューム(体積)で選択される。基準ボリューム(体積)VAは、画像のアーティファクトや特異なゾーンではなく、空気のボリューム(体積)に対応するゾーンを十分に代表することが可能となる最小寸法のゾーンに対応する。言い換えれば、空気のコントラストレベルを代表する値を得るために、十分に大きなゾーンが選択される。この基準ボリューム(体積)VAは、肺裏VP内の所定位置又は肺裏VPの外側の所定位置で自動的に選択されてもよい。例えば、胸郭の表面の限界から予め定められた距離の位置は、空気帯を得る確率を高くすることが可能となる。この距離は、例えば、1cm~4cm、優先的には1.5cm~3cmの間で構成することができる。2cmとすることで、多くの被験者に対応することが可能となる。基準ボリューム(体積)VAは、コントラストレベルの分布値など、基準ボリューム(体積)VAの測色パラメーターの分布、すなわち例えばシグナル強度値の分布を選択することを可能とする。この基準ボリューム(体積)VAのボクセルの分布を表す関数は、本実施形態では、第2の関数F2であり、この第2の実施形態ではFAとも記されている。
【0203】
本発明の方法は、第2の関数FAの標準偏差σAを測定することを目的とするステップを含む。標準偏差σAは、基準ボリューム(体積)VA上で計算される。次に、本発明の方法は、算出された標準偏差σAから算出された基準閾値SAを算出することを含んでいる。実施形態によれば、基準閾値SAは、標準偏差σAの倍数である。一例によれば、基準閾値SAの値は、標準偏差σAの値に、肺実質のボクセルの分布の主要モードの値を加算した値の8倍から16倍の間に構成される。この目的のために、ボクセルのベースボリューム(体積)VBは、肺のゾーンにおいて自動的に選択される。このベースボリューム(体積)VBは、例えば肺の内膜からの最小距離で予め定義されてもよいし、関心のあるゾーンの周囲で決定されてもよい。関心ゾーンは、呼吸細気管支、肺胞管及び肺胞の近傍又はその近傍に定義されてもよい。例示的な場合によれば、各肺のボリューム(体積)の全体が考慮される。別の実施例によれば、異なる場所で異なるベースボリューム(体積)VBが計算され、次に平均値が生成される。別の実施例によれば、この方法は、異なるベースボリューム(体積)VBについて繰り返される。そして、ベースボリューム(体積)VBのメインモードは、MBと記される。
【0204】
メインモードは、測色パラメーター又はシグナル強度の値の最大分布の値を表し、それはMBと記されている。このメインモードにより、患者及び患者自身の生理学的データに依存する適応的な閾値を生成することが可能になる。これは、個人に対して相対的に粘液量を測定し定量化するために、本発明の真の利点を構成するものである。粘液負荷量を弁別するフィルタリング量を得るために、基準閾値SAの値は、メインモードMBが加えられた標準偏差σAの値の10倍から14倍の間で構成される。好ましい実施例によれば、基準閾値SAの値は、メインモードMBを加えた標準偏差σAの値の11倍から13倍の間に定義される。具体的には、基準閾値SAの値=12-σA+MBである。
【0205】
図9は、肺ボリューム(体積)V
Pのシグナルの最も代表的な分布から得られる主モードから算出される閾値S
Aの一例を表す図である。Y軸CIにはT
2で取得したシグナル強度を、X軸には断面の表現画像に特有の距離の指標を図示している。距離「Distance(VP)」は、ミリメートルで表され、肺の裏側から肺の別の端までの距離に相当する。
【0206】
第1の実施例によれば、距離関数(VP)は、肺ボリューム(体積)の壁上に位置し、壁に垂直な第1の点と、第1の点とは反対側の肺壁の交点で定義される第2の点から定義される直線セグメントによって定義される。
【0207】
別の実施例によれば、距離関数(VP)は、肺ボリューム(体積)の壁上に位置する第1の点から定義され、肺ボリューム(体積)の中心を通過する直線セグメントから定義される。肺ボリューム(体積)の中心は、肺ボリューム(体積)VPの裏地に適用される、バリセンターを決定する関数などの幾何学的関数から定義することができる、架空の中心である。
【0208】
別の実施例によれば、距離関数(VP)は、肺ボリューム(体積)の壁上で考えられる2点間に構成されるセグメントを考慮することによって定義される。
【0209】
また、メインモードMBは、肺ボリューム(体積)VPの部分ボリューム(体積)内で計算されてもよい。
【0210】
シグナルSNは、断面画像(2D)におけるシグナル強度に相当する。従って、肺の裏打ちの距離から測定される。閾値SAは、メインモードMBの計算を使用して得られ、ここでは、断面のシグナルの強度の分布にわたって指示の目的で表される。閾値SAを得るために、メインモードには、肺ボリューム(体積)の外側で採取した空気の基準ボリューム(体積)で測定したシグナルの標準偏差の倍数、典型的には12倍から16倍が加えられている。
【0211】
-セグメント化
【0212】
本方法は、閾値SAより大きいボクセルのボリューム(体積)をセグメント化するステップを含んでいる。得られたボリューム(体積)は、フィルタリングされたボリューム(体積)VFである。このフィルタリングされたボリューム(体積)は、高強度のボクセルを保存することを可能にし、ノイズに対応するシグナルの一部を除去することを可能にする。
【0213】
実施形態によれば、関数FA、即ち第2の関数F2は、関数F1のフィルタを定義する。フィルタは、関数FAによってフィルタリングされたボクセル、すなわち、ボクセルが閾値SAよりも大きいコントラストレベルを有するボクセルを抽出するように適用される。この場合、関数FAは、関数F1に適用されるマスクを定義する。
【0214】
関数F1の分布のボクセルを基準閾値SAでフィルタリングして構成されるボリューム(体積)がフィルタリングボリューム(体積)VFと定義される。従って、フィルタリングされたボリューム(体積)のボクセルは、基準閾値SAよりも大きいコントラスト強度を有する。興味は、肺のボリューム(体積)に存在する粘液のゾーンのT2重み付けを有する強度値を得ることである。関数F2は、取得された高シグナル強度をフィルタリングするボリューム(体積)マスクとして機能する。
【0215】
図8は、2つの肺葉P
A,P
Bの断面の一例を表すもので、閾値S
Aより大きい強度のゾーンボリューム(体積)部分に対応するゾーン10が二次元(2D)で表現されている。したがって、
図8は、関数F
2によってフィルタリングされたボリューム(体積)の一例を表している。
【0216】
本方法は、フィルタリングされたボリューム(体積)VFのボクセル値を正規化するステップを含んでいる。第1の代替実施形態によれば、コントラスト強度値は、例えば0と1との間で構成されるスケール上で正規化される。
【0217】
第1の代替案と組み合わせてもよいし、第1の代替案の代替として実現してもよい別の代替実施形態によれば、正規化は、VIPと記されるボリューム(体積)強度積の計算を含んでいる。このVIPは、ボリューム(体積)とシグナルの強度T2との間の積によって得られる。これにより高シグナルのボリューム(体積)強度を定量化することができ、したがって炎症のレベルを定量化することができる。さらに、炎症部位のボリューム(体積)の増減とシグナル強度の増減の相関から、その部位の進化を定量化することが可能となる。
【0218】
従って、正規化は、測色パラメーターの絶対値又はボクセルのシグナル強度の正規化からなり、ここでは、例えばmsで表されるシグナルT2の定量化と、閾値SAのおかげで、適用されたフィルタリングボリューム(体積)のマスクに対応するフィルタリング閾値により表現される。
【0219】
一実施例によれば、VIPはミリ秒単位で表され、以下の式から得られる。
【0220】
【0221】
-iはT2の値に対応し、この目的のために、T2シグナルの値の分布が実現され;
【0222】
-maxは、T2シグナルの最大値に対応し;
【0223】
-T2iは、三次元(3D)画像のレベルiのシグナルを表し;
【0224】
-HSViは、分布のT2値レベルに関連するボリューム(体積)に対応し、前記ボリューム(体積)は、T2シグナルの高強度のフィルタリングされたボリューム(体積)VFに対応する三次元(3D)画像のマスクに構成され;
【0225】
-VPは、肺のボリューム(体積)に相当する。
【0226】
利点は、ボリューム(体積)単位あたりの強度を反映した指標を用いて正規化された値を得ることができることである。閾値SAのおかげで得られた適応閾値が与えられると、本発明の方法は、個人差による画像の解釈のばらつきを抑えつつ利用可能なバイオマーカーを生成することを可能にする。さらに、このバイオマーカーは、粘液の発達の経時変化を測定するための時間的基準点を得ることを可能にする。
【0227】
実施形態によれば、UTE画像及びRTSE画像をマージすることを含むステップが実施される。超短エコー時間UTEを有するシーケンスを用いて得られた高解像度形態画像のマージ、及びセグメント化されたT2高シグナルのボリューム(体積)のマスクは、この場合、2つの情報項目を結合するために実施される。この手法は、当業者であればPET-TDMに適用することができる。