(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
H05K3/46 T
H05K3/46 B
(21)【出願番号】P 2019197563
(22)【出願日】2019-10-30
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】517319525
【氏名又は名称】株式会社ライジングテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【氏名又は名称】竹内 功
(72)【発明者】
【氏名】明島 周三
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-156453(JP,A)
【文献】特開2017-228734(JP,A)
【文献】特開2015-191968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっきで選択的に形成された配線層を包有する樹脂層
をビルドアップ層として複数積層
する多層
配線構造を形成すると共にそれぞれの前記配線層と所定の接続をなす複数のビアを備えた配線基板において、
前記樹脂層は、シート状補強材を有さ
ず、
前記樹脂層は、前記配線層を包有する第1樹脂層と、前記第1樹脂層と積層方向において隣接する第2樹脂層とを有し、
前記第1樹脂層の母材はエポキシ樹脂であり、前記第2樹脂層の母材はポリイミド樹脂であり、
前記第2樹脂層の厚さは、前記第1樹脂層の厚さおよび前記配線層の厚さよりも薄く、前記第1樹脂層における前記配線層の上面を覆う部分の厚さは、前記第2樹脂層の厚さよりも薄い配線基板。
【請求項2】
前記樹脂層は、フィラーを含有し、
前記第2樹脂層の前記フィラーの密度は、前記第1樹脂層の前記フィラーの密度よりも低い請求項1記載の配線基板。
【請求項3】
前記フィラーは、シリカである請求項
2記載の配線基板。
【請求項4】
前記第2樹脂層の厚さは8μm以下であり、
前記第1樹脂層における前記配線層の上面を覆う部分の厚さは5μm以下である請求項
1~3のいずれか1つに記載の配線基板。
【請求項5】
前記配線層のライン幅およびライン間スペースは30μm以下である請求項1~
4のいずれか1つに記載の配線基板。
【請求項6】
シート状補強材に樹脂を含浸させて硬化してなるコア材をさらに備え、
前記配線層および前記樹脂層は、前記コア材に積層されている請求項1~
5のいずれか1つに記載の配線基板。
【請求項7】
シート状補強材に樹脂を含浸させて硬化してなるコア材を有さない請求項1~
5のいずれか1つに記載の配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年電子機器の小型化、高性能化に伴い配線基板の多層化および高密度化が進んでいる。従来、配線基板における絶縁層として用いられている例えばガラスクロスなどのシート状補強材を含む樹脂層は多層配線基板の薄型化の妨げになっている。また、シート状補強材を含まない樹脂層を特に熱および機械的圧力を加えて積層する場合には、安定した積層が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-89745号公報
【文献】特開2005-150424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、配線層間の高い絶縁信頼性を確保しつつ薄型化が可能な配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、配線基板は、めっきで選択的に形成された配線層を包有する樹脂層が複数積層されて多層構造を形成すると共にそれぞれの前記配線層と所定の接続をなす複数のビアを備えている。前記樹脂層は、シート状補強材を有さずにフィラーを含有する。前記樹脂層は、前記配線層を包有する第1樹脂層と、前記第1樹脂層と積層方向において隣接する第2樹脂層とを有する。前記第2樹脂層の前記フィラーの密度は、前記第1樹脂層の前記フィラーの密度よりも低い。
本発明の一態様によれば、配線基板は、めっきで選択的に形成された配線層を包有する樹脂層が複数積層されて多層構造を形成すると共にそれぞれの前記配線層と所定の接続をなす複数のビアを備えている。前記樹脂層は、シート状補強材を有さない。前記樹脂層は、前記配線層を包有する第1樹脂層と、前記第1樹脂層と積層方向において隣接する第2樹脂層とを有する。前記配線層の厚さをa、前記第2樹脂層の厚さをb、前記配線層の上面と前記第2樹脂層の下面との間の距離をcとすると、c<b<aである。
本発明の一態様によれば、配線基板の製造方法は、第1配線層が形成された下地の表面に、シート状補強材を含まない第1樹脂層と、前記第1樹脂層に重ねられ、前記第1樹脂層よりも薄く且つ硬く、シート状補強材を含まない第2樹脂層とを含む積層膜を重ねて加圧および加熱することで、前記第2樹脂層よりも軟化した前記第1樹脂層中に前記第1配線層を埋め込む工程と、少なくとも前記第2樹脂層を貫通して、前記第1配線層に達するホールを形成する工程と、選択的に開口が形成されたマスクを使っためっき法により、前記ホール内に前記第1配線層と接続したビアを形成し、且つ前記第2樹脂層上に前記ビアと接続した第2配線層を形成する工程と、を備えている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、配線層間の高い絶縁信頼性を確保しつつ薄型化が可能な配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態の配線基板の模式断面図である。
【
図2】(a)は本発明の実施形態の配線基板の一部分の模式拡大断面図であり、(b)は本発明の実施形態の配線基板の一部分の顕微鏡による断面画像である。
【
図3】本発明の実施形態の配線基板の製造方法を示す模式断面図である。
【
図4】本発明の実施形態の配線基板の製造方法を示す模式断面図である。
【
図5】本発明の実施形態の配線基板の製造方法を示す模式断面図である。
【
図6】本発明の実施形態の配線基板の製造方法を示す模式断面図である。
【
図7】本発明の実施形態の配線基板の製造方法を示す模式断面図である。
【
図8】本発明の実施形態の配線基板の製造方法を示す模式断面図である。
【
図9】本発明の実施形態の配線基板の製造方法を示す模式断面図である。
【
図10】本発明の実施形態の配線基板の製造方法を示す模式断面図である。
【
図11】本発明の実施形態の配線基板の製造方法を示す模式断面図である。
【
図12】サブトラクティブ法による配線層のパターニングを示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ要素には同じ符号を付している。
【0009】
図1は、本発明の実施形態の配線基板1の模式断面図である。
【0010】
配線基板1は、配線層31を包有する樹脂層20が複数積層されて多層構造を形成すると共にそれぞれの配線層31と所定の接続をなす複数のビア32を備えている。配線基板1は、コア材10と、コア材10の両面に積層された積層体11、12とを有する。積層体11はコア材10の一方の面に積層され、積層体12はコア材10の他方の面に積層されている。
【0011】
本明細書において、要素間の上下関係は、相対的にコア材10を下に、積層体11、12を上にした状態での上下関係を表す。
【0012】
コア材10は、例えば、ガラスクロス、アラミド不織布などのシート状補強材を含む熱硬化性の樹脂部材である。コア材10は、例えば、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させてなる。
【0013】
コア材10の両面には配線層13が形成されている。配線層13は、金属層であり、例えば銅を主に含む。コア材10の両面の配線層13は、コア材10を貫通するビア14によって物理的および電気的に接続されている。ビア14は、金属ビアである。なお、コア材10の内部に配線層が設けられてもよい。
【0014】
コア材10の一方の面に積層された積層体11は、絶縁層である複数の樹脂層20と、樹脂層20を介して積層体11の積層方向(
図1において上下方向)に積層された複数の配線層31とを有する。配線層31は、金属層であり、例えば銅を主に含む。配線層31は、後述するように、選択的に開口が形成されたマスク(めっきレジスト)を使っためっきで選択的に形成される。それぞれの樹脂層20は、第1樹脂層21と第2樹脂層22とを有する。
【0015】
コア材10の表面上に、第1樹脂層21と第2樹脂層22が交互に積層されている。第1樹脂層21および第2樹脂層22はコア材10よりも薄い。積層体11の積層方向において隣り合う第1樹脂層21の間に、1層の第2樹脂層22が設けられている。積層体11の積層方向において隣り合う第2樹脂層22の間に、1層の第1樹脂層21が設けられている。コア材10と、最下層の第2樹脂層22との間に、最下層の第1樹脂層21が設けられている。
【0016】
第1樹脂層21は、配線層13、31を包有する。コア材10の表面に形成された配線層13は、最下層の第1樹脂層21中に埋め込まれている。配線層13の上面および側面が第1樹脂層21に覆われている。
【0017】
配線層13よりも上層の配線層31も、第1樹脂層21中に埋め込まれている。配線層31の上面および側面が第1樹脂層21に覆われている。第2樹脂層22は積層体11の積層方向において隣り合う配線層31の間に設けられ、積層方向において第1樹脂層21に隣接している。配線層31の下面は第2樹脂層22に接している。すなわち、第2樹脂層22は、配線層31の下地になっている。
【0018】
異なる層の配線層31間は、ビア32によって物理的および電気的に接続されている。ビア32は、上層の配線層31から、第2樹脂層22を貫通し、さらに下層の配線層31の上面を覆う第1樹脂層21を貫通して、下層の配線層31に達している。
【0019】
最上層の第2樹脂層22上には、絶縁膜であるソルダレジスト40が形成されている。最上層の第2樹脂層22の表面に形成された配線層31の一部は、ソルダレジスト40に形成された開口から露出している。ソルダレジスト40から露出する配線層31上には電子部品が実装される。または、ソルダレジスト40から露出する配線層31は、例えば、はんだボール、ワイヤを介して、外部回路や他の配線基板と接続される。
【0020】
第1樹脂層21は、ガラスクロス、アラミド不織布などのシート状補強材を含まず、第2樹脂層22もそのようなシート状補強材を含まない。一つの例では、第1樹脂層21の母材と第2樹脂層22の母材とは異なり、後述するように、第1樹脂層21と第2樹脂層22のそれぞれに適した特性が与えられる。第1樹脂層21の母材は例えばエポキシ樹脂である。第2樹脂層22の母材は例えばポリイミド樹脂である。または、第1樹脂層21と第2樹脂層22は、母材が同じで、特性(例えば弾性率、硬化反応率、シリカ含有率)が異なったものでもよい。
【0021】
後述するように、コア材10に対して第1樹脂層21および第2樹脂層22を積層する際には、第1樹脂層21は完全硬化前の(半硬化の)接着性を持った熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂であり、積層の際の機械的加圧および加熱プロセスにより、第1樹脂層21はさらに一時的に軟化し、配線層13、31が第1樹脂層21中に埋め込まれる。その後、第1樹脂層21は、架橋等の反応が進み硬化される。
【0022】
第2樹脂層22は、上記積層の前の時点で、既に硬化反応が終了したフィルムシート(またはテープ)であり、第1樹脂層21よりも硬い。第2樹脂層22は、第1樹脂層21よりも、温度等によって硬度が変化しにくい。第2樹脂層22は、第1樹脂層21よりも、機械的加圧および加熱による弾性率の変化が少なく形状が安定している。
【0023】
図2(a)は配線基板1の一部分の模式拡大断面図であり、
図2(b)は配線基板1の一部分の顕微鏡による断面画像である。
図2(a)及び(b)は、配線層31の長手方向に沿った断面を表す。
【0024】
積層方向(上下方向)において隣り合う任意の2層の配線層31のうち、相対的に下層の配線層31を第1配線層、相対的に上層の配線層31を第2配線層と呼ぶ。
【0025】
樹脂層20は、例えばシリカなどのフィラーを含む。樹脂層20は、母材や特性の異なる2層の樹脂層(第1樹脂層21と第2樹脂層22)からなる。第2樹脂層22のフィラーの密度は、第1樹脂層21のフィラーの密度よりも低い。本実施形態では、第1樹脂層21はフィラーを含み、第2樹脂層22はフィラーを含まない。または、第2樹脂層22中のフィラーは、第1樹脂層21に比べて極端に少ない。
【0026】
配線層31の厚さをa、第2樹脂層22の厚さをb、第1配線層31の上面と、その第1配線層31の上の第2樹脂層22の下面との間の距離をcとすると、c<b<aである。距離cは、第1樹脂層21における配線層31の上面を覆う部分21bの厚さに対応する。第1樹脂層21は、配線層31の側面のみを覆い、配線層31の上面を覆わない場合もあり得、この場合距離cはゼロである。ただし、配線層31と第2樹脂層22との接着性を考慮すると、配線層31と第2樹脂層22との間に第1樹脂層21があることが好ましい。配線層31と第2樹脂層22との間の第1樹脂層21に求められる機能は、配線層31と第2樹脂層22との接着であり、配線層31と第2樹脂層22との間の第1樹脂層21は極薄くてよい。
【0027】
第1樹脂層21の厚さは、配線層31の厚さ以上である。第2樹脂層22の厚さbは、配線層31の厚さaよりも薄く、また第1樹脂層21の厚さよりも薄い。例えば、第2樹脂層22の厚さbは、2μm以上8μm以下である。距離cは、0以上5μm以下である。配線層31の厚さaは、15μm以下である。配線層31のライン幅およびライン間スペース(ラインアンドスペース)は、30μm以下である。
【0028】
図2(b)の断面画像においては、配線層31の厚さは10μmであり、配線層31の長さは30μmであり、第2樹脂層22の厚さは7μmであり、第1樹脂層21の配線層31の上面を覆う部分21bの厚さは3μmであり、第1樹脂層21の厚さは13μmである。
【0029】
以上、一方の積層体11について説明したが、コア材10の他方の面に積層された積層体12についても、積層体11と同様、複数の第1樹脂層21と、複数の第2樹脂層22と、複数の配線層31と、ビア32とを有し、積層体11と同じ構成を有する。
【0030】
本実施形態の配線基板1によれば、樹脂層20はシート状補強材を含まず、シート状補強材を含む樹脂層よりも薄くできる。これにより、配線基板1の全体を薄型化できる。また、配線基板1の絶縁層がシート状補強材を含まないため、誘電正接を低くしやすくできる。これにより、高周波特性に優れた絶縁層を使った薄型配線基板が可能となる。
【0031】
例えば、コア材10の両面のそれぞれに5層ずつの配線層を形成し、トータルで10層の配線層を有する構成において、ガラスクロスを含む樹脂層を配線層間の絶縁層として用いた構造を比較例とする。これに対して、比較例と同様にトータルで10層の配線層を有する構成において(1層の配線層の厚さも比較例と同じ)、ガラスクロスを含まない上記樹脂層20を用いた本実施形態の配線基板1は、上記比較例に比べて厚さを約30%低減できた。なお、本実施形態の配線基板1における1層の第1樹脂層21の厚さと、1層の第2樹脂層22の厚さの合計値は、上記比較例におけるガラスクロスを含む1層の樹脂層の厚さよりも薄い。
【0032】
第2樹脂層22は、シート状補強材を含まず、フィラー密度も極端に小さいかゼロであるため、配線層31の下地となる面の平坦性が保たれ、さらに後述するアディティブ法で形成することと相まって、例えば15μm以下のラインアンドスペースのファイン且つ狭ピッチな配線層31を安定して形成することができる。また、配線層31と第2樹脂層22との密着性も向上する。
【0033】
次に、
図3(a)~
図11(b)を参照して、実施形態の配線基板1の製造方法について説明する。
【0034】
図3(a)に示すように、コア材10の両面に金属膜113がベタ状に形成される。金属膜113は、例えば、コア材10の両面に圧着積層される銅箔である。金属膜113は、選択的なエッチングによりパターニングされ、
図3(b)に示すように、コア材10の両面に配線層13が形成される。コア材10は例えばシート状補強材としてガラスクロスを含む熱硬化性の樹脂部材であり、完全硬化されている。そのコア材10を貫通する貫通孔が例えばドリルで形成され、その貫通孔内に例えばめっき法により、ビア14が形成される。ビア14は、両面の配線層13間を接続する。
【0035】
この後、コア材10を下地として、コア材10の両面に複数層のビルドアップ層が積層されていく。
【0036】
図4(a)に示すように、配線層13が形成されたコア材10の両面に積層膜50を重ねて機械的圧力および熱を加える。積層膜50は、第1樹脂層21と、第2樹脂層22と、金属層31aを含む。金属層31aは、例えば銅箔である。金属層31aよりも厚い支持体としての例えば銅層23に積層膜50は支持され、積層膜50をコア材10に積層した後、厚い銅層23は剥離される。
図4(b)に示すように、第1樹脂層21、第2樹脂層22、および金属層31aが順にコア材10の表面に重ねられる。
【0037】
このとき、第1樹脂層21は完全硬化前の(半硬化の)接着性を持った状態であり、第2樹脂層22は、第1樹脂層21よりも、機械的加圧および加熱による弾性率の変化が少なく硬い。そして、機械的加圧および加熱により第1樹脂層21は一旦さらに軟化する。このときの加熱温度は、例えば100℃以上200℃以下である。この温度において、第1樹脂層21として例えばエポキシ樹脂のヤング率は数百MPaであり、第2樹脂層22として例えばポリイミド樹脂のヤング率は3GPa~5GPaである。
【0038】
図4(b)に示すように、第1樹脂層21はコア材10の表面に接着され、配線層13は第1樹脂層21中に埋め込まれ、配線層13の側面および上面を第1樹脂層21が覆う。その後、第1樹脂層21は、架橋が進み硬化する。第2樹脂層22は第1樹脂層21に接着され、金属層31aは第2樹脂層22に接着され、最表面に金属層31aが露出する。
【0039】
この後、
図5(a)に示すように、積層膜50を貫通するホール33を、例えばレーザーで形成する。ホール33は、金属層31a、第2樹脂層22、および配線層13の上面を覆う第1樹脂層21を貫通して、配線層13に達する。ホール33の底に、配線層13の一部が露出する。
【0040】
ホール33の側壁、底面、および金属層31aの表面には、
図5(b)に示すように、無電解めっき法により金属層31bが形成される。金属層31aおよび金属層31bは、電解めっきのシード層として機能する。金属層31aと金属層31bの積層膜をまとめて金属層(シード層)31cとして表す。
【0041】
図10(a)に示すように、金属層31c上にめっきレジスト60が形成される。めっきレジスト60には選択的に開口60aが形成される。そして、このめっきレジスト60をマスクに使った電解めっき法により、開口60a内の金属層31c上に、
図10(b)に示すようにめっき金属31dが析出される。
図6(a)に示すように、ホール33内にも金属が析出し、金属ビア32が形成される。めっき金属31dは、下地の金属層(シード層)31cよりも厚い。金属ビア32とめっき金属31dは同じ金属材料(例えば銅)で同時に形成される。金属ビア32は、下層の配線層13に達し、配線層13と接続される。
【0042】
その後、
図6(b)および
図11(a)に示すように、めっきレジスト60は除去される。そして、例えばエッチバック法により、めっき金属31dで覆われていない金属層31cを除去する。
図11(b)に示すように、金属層31cは、めっき金属31dの下のみに残る。このエッチバックにより、めっき金属31dも、金属膜31cの厚さ分エッチングされ、薄くなる。
【0043】
これにより、
図7に示すように、コア材10の両面に、1層目のビルドアップ層51が形成される。ビルドアップ層51は、第1樹脂層21と、第2樹脂層22と、配線層31と、ビア32とを有する。配線層31は、金属層31cとめっき金属31dとからなる。配線層31間の金属層31cは、
図11(b)に示すように、上記エッチバックにより除去されている。
【0044】
1層目のビルドアップ層51上には、上述と同様のプロセスにより2層目のビルドアップ層51が形成される。
【0045】
すなわち、
図8に示すように、1層目のビルドアップ層51の表面に再び積層膜50を重ねて機械的圧力および熱を加える。このときの加圧および加熱により、2層目の積層膜50の第1樹脂層21は一旦軟化し、
図9に示すように、1層目のビルドアップ層51の配線層31は2層目の積層膜50の第1樹脂層21中に埋め込まれる。
【0046】
この後、前述したプロセスと同様に、2層目の積層膜50を貫通するホールが形成され、そのホール内に金属ビア32が形成され、2層目の積層膜50上に金属ビア32と一体に配線層31が形成される。このようにして、1層目のビルドアップ層51上に、2層目のビルドアップ層51が形成される。
【0047】
以降、同様のプロセスが繰り返され、3層目以降のビルドアップ層が形成され、
図1に示すようにコア材10の両面に積層体11、12が形成される。
【0048】
本実施形態によれば、上記加圧および加熱の際には、すでに硬化され、第1樹脂層21よりも加圧および加熱による弾性率の変化が少なく硬い第2樹脂層22によって、配線層31の下地となる面の平坦性が保たれる。第2樹脂層22は、配線層31を埋め込む機能が求められる第1樹脂層21に比べて薄い。このような薄く且つ硬い第2樹脂層22を設けることで、上下の配線層31間の樹脂層の厚さの薄型化が可能となる。第1樹脂層21における配線層31の上面を覆う部分21bの厚さは極薄くてよく、すなわち
図2(a)の距離cはゼロに近い。この場合でも、上下の配線層31間に第2樹脂層22が介在され、製造中における上下の配線層31間の適切な絶縁性が担保される。
【0049】
また、第1樹脂層21にフィラーを含ませることで、第1樹脂層21が軟化したときの形状安定性を高める。本実施形態によれば、シート状補強材(ガラスクロスやアラミド不織布)を用いないことで薄型化を図りつつも、加圧および加熱下においてビルドアップ層を形状安定性よく積層することができる。また、第2樹脂層22がフィラーを含まない、または第2樹脂層22にフィラーが含まれるとしても極わずかとすることで、第2樹脂層22を下地とする配線層31のファイン化および狭ピッチ化が可能になる。また、シート状補強材(ガラスクロスやアラミド不織布)を用いないことにより、誘電正接が低い材料を絶縁層として使用でき、電気特性の非常によい配線基板を提供することができる。
【0050】
ここで、
図12(a)及び(b)は、サブトラクティブ法による配線層のパターニングを示す模式断面図である。
【0051】
サブトラクティブ法においては、絶縁層120上に圧着積層でベタ状に形成された金属層131をエッチングマスク160を使ったエッチングで選択的に除去してパターニングする。
【0052】
薬液によって、エッチングマスク160の開口160aに露出している部分からエッチングが等方的に進む。この場合、エッチングを金属層131の厚さ方向のみに進めることが難しく、サイドエッチングも進み、金属層(配線層)131の断面が台形状になる傾向がある。
【0053】
一方、本実施形態では前述したように、マスクを使った選択的なめっきにより、配線層31が形成される。このようなアディティブ法によって形成された配線層31は、
図11(b)に示すようにサイドエッチングによる形状劣化がなく、側面が下地表面に対して垂直または垂直に近い角度で立ち上がった形状が得られ、サブトラクティブ法では難しいラインアンドスペースが30μm以下のファイン且つ狭ピッチな配線層31の形成が可能となる。
【0054】
第1樹脂層21の母材としては、エポキシ樹脂に比べて誘電正接が低く高周波特性に優れた液晶ポリマー樹脂を用いてもよい。その他、第1樹脂層21の母材として、一般のエポキシ樹脂に比較して誘電正接の低い添加物を添加したエポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、フッ素樹脂、またはポリイミド樹脂を用いてもよい。
【0055】
例えば、液晶ポリマー樹脂は、熱可塑性樹脂であり、エポキシ樹脂に比べて、機械的加圧および加熱時に軟らかくなる。本実施形態によれば、液晶ポリマー樹脂を第1樹脂層21として用いても、第1樹脂層21よりも、加圧および加熱による弾性率の変化が少なく硬い第2樹脂層22を設けることで、積層時の形状安定性を確保できる。
【0056】
なお、機械的加圧および加熱の際に、第1樹脂層21として半硬化状態のBステージのエポキシ樹脂を用い、第2樹脂層22として完全硬化されたエポキシ樹脂またはその他樹脂のシートやテープを用いてもよい。
【0057】
また、コア材10の両面に積層体11、12を積層した後、コア材10を除去して、積層体11、12のみの構成にすることも可能である。この場合、コア材10に形成されていた配線層13が露出し、その配線層13の一部(はんだ付けしない部分や、部品などが接合されない部分)は、ソルダレジスト40で覆われる。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1…配線基板、10…コア材、11…積層体、12…積層体、13…配線層、14…ビア、20…樹脂層、21…第1樹脂層、22…第2樹脂層、31…配線層、32…ビア