(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】ポンプユニット及びポンプ並びに搬送物の特性検出方法
(51)【国際特許分類】
F04B 43/12 20060101AFI20240625BHJP
F04B 43/113 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
F04B43/12 T
F04B43/113
(21)【出願番号】P 2019238223
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-11-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】599011687
【氏名又は名称】学校法人 中央大学
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 太郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】若松 康太
(72)【発明者】
【氏名】萩原 大輝
(72)【発明者】
【氏名】足立 遼
(72)【発明者】
【氏名】松井 大育
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-005480(JP,A)
【文献】特開2016-084719(JP,A)
【文献】特開2013-174140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/12
F04B 43/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と、
外筒の内周側に設けられた内筒と、
前記内筒と前記外筒との間に設けられた圧力供給室と、
を備え、
前記圧力供給室内に加圧媒体を供給することにより前記内筒を径方向内側に膨張させて該内筒内の搬送物を搬送するポンプユニットであって、
前記内筒の膨張時における該内筒内の搬送物の情報を取得する搬送物情報取得手段を備え、
前記搬送物情報取得手段は、
前記圧力供給室への加圧媒体の供給により前記内筒が搬送物を押圧する押圧力を計測する押圧力計測手段
と、前記圧力供給室に供給される加圧媒体の流量を計測する流量計測手段と、
を備えたことを特徴とするポンプユニット。
【請求項2】
前記請求項
1に記載のポンプユニットを備えたポンプであって、
前記ポンプユニットへの加圧媒体の供給、排出を制御する給排制御手段と、
前記流量計測手段により計測された加圧媒体の流量と、前記押圧力計測手段により計測された内筒が搬送物を加圧する圧力とに基づいて、内筒内の搬送物の体積を算出する体積算出手段と、
前記体積算出手段により算出された体積に基づいて、搬送物の特性を判別する特性判別手段と、
を有する搬送物情報処理手段と、
を備えたことを特徴とするポンプ。
【請求項3】
前記搬送物情報取得手段により取得された搬送物の情報に基づいて、搬送異常を検出する搬送異常検出手段を備えたことを特徴とする請求項
2に記載のポンプ。
【請求項4】
前記給排制御手段は、
前記搬送異常検出手段による異常の検出に基づいて、前記検出された異常を解消するように複数のポンプユニットの動作を制御することを特徴とする請求項
3に記載のポンプ。
【請求項5】
前記給排制御手段は、
前記搬送物情報処理手段により判別された搬送物の特性に基づいて、複数のポンプユニットの動作を制御することを特徴とする
請求項2乃至請求項4いずれかに記載のポンプ。
【請求項6】
前記給排制御手段は、
前記搬送異常検出手段による異常の検出に基づいて、前記検出された異常を解消するように複数のポンプユニットの動作を制御、又は、前記搬送物情報処理手段により判別された搬送物の特性に基づいて、複数のポンプユニットの動作を制御可能とされ、
前記搬送物情報処理手段は、
各ポンプユニットが備える搬送物情報取得手段から入力される搬送物の情報に基づいて、
前記給排制御手段による、前記検出された異常を解消するための複数のポンプユニットの動作の制御、又は、前記判別された搬送物の特性に基づく複数のポンプユニットの動作の制御を選択し、選択した内容を前記給排制御手段に出力することを特徴とする請求項
3に記載のポンプ。
【請求項7】
外筒と、
外筒の内周側に設けられた内筒と、
内筒と前記外筒との間に設けられた圧力供給室と、
を備え、
前記圧力供給室内に加圧媒体を供給することにより前記内筒を径方向内側に膨張させて該内筒内の搬送物を搬送するポンプユニットにより搬送される搬送物の特性を検出する搬送物の特性検出方法であって、
前記内筒の膨張時における該内筒内の搬送物の体積を、前記内筒が搬送物を加圧する圧力と、前記圧力供給室への流量とに基づいて算出し、当該体積に基づいて搬送物の特性を検出することを特徴とする搬送物の特性検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプユニット及びポンプ並びに搬送物の特性検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特許文献1に示すように、二重管構造となるように、円筒状の外筒内に内筒を設け、外筒と内筒との間で形成した環状のチャンバー内に、空気等の流体を供給し、内筒を径方向内側に向けて膨張可能に構成され、内筒の膨張に伴う内筒内の容積の変化により搬送物を搬送するポンプユニットが知られている。このようなポンプユニットは、単体、或いは複数連結した搬送装置として用いられる。複数連結した場合には、連結された各ポンプユニットの内筒を、例えば、人の腸における蠕動運動を模して、順に膨張させることにより、搬送物の搬送がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のポンプユニットでは、搬送物によって搬送が困難となる場合がある。例えば、搬送物が、液体や流動性の高い(粘性の低い)固液混合物等である場合には、容易に搬送できるが、粘性の高い固液混合物等の場合には、搬送が困難となる場合があり、搬送効率の向上を図る上で、搬送物の流動性の有無等の特性について知る必要がある。
そこで、本発明では、搬送物の特性を検出可能なポンプユニットおよびポンプ並びに搬送物の特性検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのポンプユニットの構成として、外筒と、外筒の内周側に設けられた内筒と、前記内筒と前記外筒との間に設けられた圧力供給室と、を備え、前記圧力供給室内に加圧媒体を供給することにより前記内筒を径方向内側に膨張させて該内筒内の搬送物を搬送するポンプユニットであって、前記内筒の膨張時における該内筒内の搬送物の情報を取得する搬送物情報取得手段を備え、前記搬送物情報取得手段は、前記圧力供給室への加圧媒体の供給により前記内筒が搬送物を押圧する押圧力を計測する押圧力計測手段と、前記圧力供給室に供給される加圧媒体の流量を計測する流量計測手段と、を備えた構成とした。
本構成によれば、搬送物の特性を検出するための搬送物の情報を取得することができる。
また、上記課題を解決するためのポンプの構成として、ポンプユニットを備えたポンプであって、ポンプユニットへの加圧媒体の供給、排出を制御する給排制御手段と、搬送物情報取得手段により取得された搬送物の情報に基づいて、搬送物の特性を判別する搬送物情報処理手段とを備える構成としたり、ポンプユニットへの加圧媒体の供給、排出を制御する給排制御手段と、流量計測手段により計測された加圧媒体の流量と、押圧力計測手段により計測された内筒が搬送物を加圧する圧力とに基づいて、内筒内の搬送物の体積を算出する体積算出手段と、体積算出手段により算出された体積に基づいて、搬送物の特性を判別する特性判別手段とを有する搬送物情報処理手段とを備えた構成としたりしても良い。
本構成によれば、搬送物の特性を検出することができる。例えば、膨張時におけるポンプユニット内の搬送物の体積を算出することにより、搬送物の特性を検出することができる。
また、ポンプは、搬送物情報取得手段により取得された搬送物の情報に基づいて、搬送異常を検出する搬送異常検出手段を備える構成としたり、給排制御手段が、搬送異常検出手段による異常の検出に基づいて、検出された異常を解消するように複数のポンプユニットの動作を制御する構成としたり、給排制御手段が、搬送物情報処理手段により判別された搬送物の特性に基づいて、複数のポンプユニットの動作を制御する構成としたりすることにより、搬送物の搬送を最適化し、搬送効率を向上させることができる。
また、給排制御手段は、搬送異常検出手段による異常の検出に基づいて、検出された異常を解消するように複数のポンプユニットの動作を制御、又は、搬送物情報処理手段により判別された搬送物の特性に基づいて、複数のポンプユニットの動作を制御可能とされ、搬送物情報処理手段は、各ポンプユニットが備える搬送物情報取得手段から入力される搬送物の情報に基づいて、給排制御手段による、検出された異常を解消するための複数のポンプユニットの動作の制御、又は、判別された搬送物の特性に基づく複数のポンプユニットの動作の制御を選択し、選択した内容を給排制御手段に出力する構成としても良い。
また、搬送物の特性検出方法の態様として、外筒と、外筒の内周側に設けられた内筒と、内筒と外筒との間に設けられた圧力供給室とを備え、圧力供給室内に加圧媒体が供給されることにより内筒を径方向内側に膨張させて該内筒内の搬送物を搬送するポンプユニットにより搬送される搬送物の特性を検出する搬送物の特性検出方法であって、内筒の膨張時における該内筒内の搬送物の体積を、前記内筒が搬送物を加圧する圧力と、前記圧力供給室への流量とに基づいて算出し、当該体積に基づいて搬送物の特性を検出するようにした。
本態様によれば、膨張時におけるポンプユニット内の搬送物の体積を算出することにより、搬送物の特性を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】ポンプユニットの軸方向及び半径方向の断面図である。
【
図3】搬送物情報取得手段及び搬送物情報処理手段の構成図である。
【
図4】搬送物検出装置の形成形態の一例を示す図である。
【
図5】複数のポンプユニットが連結されたときのポンプの概略構成図である。
【
図7】搬送物情報処理手段の他の形態を示す図である。
【0007】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、ポンプ1の一実施形態を示す概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態に係るポンプ1は、概略、搬送対象物(以下搬送物という)を搬送する搬送部として機能するポンプユニット10と、ポンプユニット10の動作を制御する駆動制御装置100と、搬送物の情報について検出する搬送物検出装置200とを備える。
【0009】
ポンプユニット10は、単体、或は複数連結して既設の配管の途中に設けられたり、複数連結することで配管として直接的に設けられたり、搬送物の供給元の出口に接続されたりして用いられる。なお、以下の説明では、ポンプ1が動作する最小単位のポンプユニット10が一つの場合を用いて説明する。
【0010】
図2は、ポンプユニット10の軸方向断面図及び径方向断面図である。
図2に示すように、ポンプユニット10は、外筒12と、この外筒12と二重管を構成するように外筒12の内周側に設けられる内筒14と、外筒12と内筒14との間に気密室Vを形成するように外筒12及び内筒14の両端部を閉塞する一対のエンドリング16;16とを備える。
外筒12、内筒14及びエンドリング16;16は、ポンプユニット10を形成する最小構成である。
【0011】
本実施形態に係る外筒12は、気密性を維持しつつ伸縮を許容する弾性体よりなる筒体として形成される。外筒12は、例えば、ゴム素材と繊維素材とを含んで形成され、半径方向の断面視においてゴム層と、ゴム層の間に複数の繊維素材を層状に設けた繊維層を有するように形成される。繊維層を形成する各繊維は、例えば、外筒12の一端側から他端側まで連続して延長する長さを有し、外筒12の軸方向に沿って延長するように配設される。
なお、外筒12における繊維の配設形態は、必ずしも層状に含まれる必要はなく、ゴム素材内に分散して埋設されていても良い。
【0012】
ゴム層を形成するゴム素材には、例えば、低アンモニア天然ラテックスゴムや、シリコーンゴム、合成ゴムなどを用いることができる。
また、繊維層を形成する繊維素材には、軸方向への伸縮変化の小さい、高弾性繊維が好適である。例えば、アラミド繊維、炭素(カーボン)繊維、ガラス繊維、ナイロン、ポリアミド系繊維やポリオレフィン系繊維、金属繊維等の被伸長性を有するものを適宜選択して用いることができる。繊維には、適当なプライマー処理、又は、表面酸化処理を行うことで、接着性を十分に向上させることができるが、好ましくは、ゴム素材との接着性に応じて選択すると良い。
また、繊維素材の形態としては、フィラメント、ヤーン(スパン・ヤーン及びフィラメント・ヤーン)、ストランド等のいずれの形態でも用いることができ、さらに、撚りをかけずに収束させた無撚繊維、これらの繊維を複数本撚って作成した繊維を用いることも可能である。繊維の種類にもよるが、二種類以上の素材の異なる繊維や形態の異なる繊維を組み合わせても良い。
なお、繊維の長さは、一端側から他端側まで連続する長さに限定されず、外筒12の軸方向長さよりも短い複数の繊維を軸方向に沿って連続的に分布させて一端側から他端側まで到達するように構成しても良い。
【0013】
内筒14は、気密性を維持しつつ伸縮を許容する弾性体よりなる筒体として形成される。内筒14は、例えば、ゴム素材により形成される。内筒14の内周側の空間は、搬送物を搬送するための搬送路Sである。内筒14を形成するゴム素材には、外筒12の形成に用いた天然ラテックスゴムやシリコーンゴム、合成ゴムなどのゴム素材を用いることができる。
なお、内筒14についても外筒12と同様に繊維を含んで形成しても良く、気密室V内への空気の導入より内筒14が膨張しようとする場合の軸方向への伸長を規制しても良い。
【0014】
一対のエンドリング16;16は、円筒状の筒部16A;16Aと、筒部16A;16Aの一端側において筒部16A;16Aの外径よりも大径に形成された平板円板状のフランジ部16B;16Bとを備える。
【0015】
筒部16A;16Aの外周側には、外筒12の内周が挿入され、筒部16A;16Aの外周面と外筒12の内周面との気密状態が維持されるように、図外の固定手段によって固定される。
【0016】
筒部16A;16Aの内周側には、内筒14の各端部が挿入され、筒部16A;16Aの内周と、内筒14の外周との気密状態が維持されるように、図外の固定手段によって固定される。内筒14の筒部16Aへの固定は、内筒14の端部がエンドリング16;16の端面16t;16tにできるだけ近づくようにすると良い。
【0017】
フランジ部16B;16Bには、
図2(b)に示すように、ポンプユニット10同士の連結を可能にする連結部22が設けられる。連結部22は、例えば、フランジ部16Bの板厚方向に貫通する孔として外筒12の半径方向外側に、円周方向に沿って均等な間隔で複数設けられる。これにより、ボルトナット等の締結手段を用いたポンプユニット10同士の連結や搬送物の供給元の配管等との連結を可能としている。
【0018】
このように外筒12及び内筒14の両端部を一対のエンドリング16;16により閉塞することにより、ポンプユニット10には、外筒12、内筒14及び一対のエンドリング16;16によって囲まれた気密室Vが形成される。
【0019】
一方のエンドリング16には、
図2(a)に示すように、気密室Vに加圧媒体を供給、排出するための給排部24が設けられる。
給排部24は、例えば、一端がフランジ部16Bの外周面に開口し、エンドリング16内を延長して、他端が筒部16Aに固定された外筒12及び内筒14との間に開口する孔として設けられる。この給排部24には、後述の駆動制御装置100から延長するチューブが接続され、気密室Vへの加圧媒体の給排がなされる(
図1参照)。
【0020】
ポンプユニット10は、気密室Vに加圧媒体を供給することにより、外筒12が半径方向外向きに、内筒14が半径方向内向き(求心方向)に膨張する。この膨張では、外筒12に軸方向に延長する繊維が設けられているため、外筒12が膨張しようとするときに、軸方向への伸長(膨張)が繊維によって拘束され、径方向外向きへの膨張のみが許容されるとともに軸方向に収縮することになる。
また、ポンプユニット10は、気密室Vから加圧媒体を排出することにより、外筒12が半径方向内向きに、内筒14が半径方向外向き(求心方向)に収縮しつつ、軸方向に伸長することになる。
つまり、ポンプユニット10は、外筒12と、内筒14と、一対のエンドリング16;16とで形成された気密室Vに加圧媒体を供給・排出することで上述のように軸方向及び半径方向に膨縮する膨縮体として機能する。
ポンプユニット10の内筒14内にある搬送物は、内筒14の膨張に伴なう加圧力と、軸方向への収縮とにより、内筒14の外へと押し出される。即ち、気密室Vは、内筒14により搬送物を加圧して、内筒14内から押し出すための圧力供給室として機能する。
【0021】
気密室Vには、該気密室Vに加圧媒体を供給したときの内筒14の膨張を、容易かつ安定化させるためのシェイパーリング30が設けられる。シェイパーリング30は、内筒14の軸周りに設けられ、内径部が楕円状、外径部が円状に形成された環状体である。内筒14がシェイパーリング30の内径内に位置することにより、楕円の短軸と対応して向かい合う内筒14の内周面が、楕円の長軸と対応して向かい合う内筒14の内周面よりも予め径方向内側に接近した状態とされる。つまり、シェイパーリング30は、内筒14の膨張時の形状を規定する膨張規定部材として機能する。
【0022】
図1に示すように、駆動制御装置100は、加圧媒体供給装置102と、レギュレータ104と、供給弁106と、排出弁108と、給排制御装置(給排制御手段)110とを備える。
加圧媒体供給装置102は、ポンプユニット10の膨張に必要な圧力に加圧媒体を昇圧し、生成する装置であって、例えば、コンプレッサーを利用することができる。つまり、コンプレッサーを用いることにより、大気中の空気を圧縮空気として生成し、加圧媒体として利用することができる。
なお、加圧媒体は、空気に限定されず、空気以外の気体であっても良く、また気体に限定されず水等の液体であっても良い。以下の説明では、加圧媒体を空気(圧縮空気)として説明する。
【0023】
レギュレータ104は、加圧媒体供給装置102とチューブを介して接続され、加圧媒体供給装置102から供給された加圧媒体を、所定の圧力に減圧し、ポンプユニット10に一定の圧力に調圧して供給するための装置である。レギュレータ104により調圧された加圧媒体は、該レギュレータ104とチューブを介して接続された供給弁106に供給される。
【0024】
供給弁106は、ポンプユニット10と接続され、レギュレータ104により調圧された加圧媒体のポンプユニット10への供給、停止を制御する。
排出弁108は、供給弁106とポンプユニット10との間に設けられ、ポンプユニット10に供給された加圧媒体を排出する。本実施形態では、排出弁108は、ポンプユニット10に供給された圧縮空気を大気中に放出するように構成されている。
【0025】
供給弁106及び排出弁108には、例えば、電気的な信号により動作するソレノイドバルブを適用することができる。供給弁106及び排出弁108にソレノイドバルブを用いることにより、ポンプユニット10を膨張或いは収縮させるときの応答速度を向上させることができる。
供給弁106及び排出弁108は、給排制御装置110と電気的に接続され、給排制御装置110から入力される信号に基づいて弁の開閉が制御される。本実施形態では、供給弁106及び排出弁108は、信号が入力されていない状態ではそれぞれ弁は閉じられた状態にあり、信号が入力されることにより弁を開き、信号の入力が停止されることにより弁を閉じる。
【0026】
給排制御装置110は、演算手段としてのCPUや記憶手段としてのROM,RAM、入出力手段としての通信インターフェース等のハードウェアを備えたコンピュータであって、記憶手段に記憶されたプログラムをCPUが実行することにより、該給排制御装置110に接続された供給弁106や排出弁108の開閉を制御し、ポンプユニット10の膨張・収縮動作を制御する。
【0027】
具体的には、給排制御装置110は、供給弁106にのみ信号を出力し、供給弁106を開くことにより、ポンプユニット10の気密室V内への加圧媒体の流入を強要し、
図2(c)に示すように、ポンプユニット10を膨張させる。
また、給排制御装置110は、この膨張過程において、供給弁106への信号の出力を停止し、供給弁106を閉じることにより、ポンプユニット10の膨張状態を維持させる。
また、給排制御装置110は、ポンプユニット10の膨張状態が維持された状態において、排出弁108にのみ信号を出力し、排出弁108を開くことにより、気密室V内の加圧媒体の流出を許容し、
図2(a)に示すように、ポンプユニット10を収縮させる。
【0028】
ポンプユニット10は、外筒12に軸方向に沿って延長する繊維層が設けられているため、軸方向への伸長が規制され、その結果、外筒12の膨張方向は径方向外側に限定され、当該径方向外側への膨張に伴って、軸方向長さが収縮することとなる。また、内筒14は、気密室V内への空気の供給によって、シェイパーリング30の位置と対応する内筒14の軸方向中央部における上記短軸と対応して向かい合う内筒14の内周面が先行して径方向内側(軸心方向)に向けて膨張を開始し、更なる空気の供給によって内筒14内の搬送物が軸方向に搬送され、
図2(c)に示すように、内筒14内が略完全に閉塞されることとなる。この内筒14の膨張により内筒14内の搬送物が内筒14により加圧されて軸方向に押し出され、搬送される。
【0029】
搬送物検出装置200は、搬送物情報取得手段210と、搬送物情報処理手段220とを備える。
搬送物情報取得手段210は、流量計測手段212と、押圧力計測手段214とを備え、ポンプユニット10の動作に基づいて搬送物の情報を取得する。ここでいう搬送物の情報とは、例えば、流動性(粘性)、硬さなどの搬送物の有する特性を言う。
【0030】
流量計測手段212は、供給弁106とポンプユニット10との間に設けられ、内筒14の膨張時に気密室Vに供給された加圧媒体の流量を計測する。流量計測手段212には、例えば、計測した流量を電気的な信号に変換可能な流量センサを用いることができる。流量計測手段212は、搬送物情報処理手段220と電気的に接続され、計測した流量を搬送物情報処理手段220に出力する。
【0031】
押圧力計測手段214は、流量計測手段212とポンプユニット10との間に設けられ、気密室V内の加圧媒体の圧力を計測する。押圧力計測手段214には、例えば、計測した圧力を電気的な信号に変換可能な圧力センサを用いることができる。押圧力計測手段214は、搬送物情報処理手段220と電気的に接続され、計測した圧力を搬送物情報処理手段220に出力する。なお、押圧力計測手段214の設けられる位置は、気密室V内の加圧媒体の圧力が計測できればどこであっても良い。
このように加圧媒体の圧力を計測することにより、内筒14が搬送物を加圧する押圧力を間接的に計測することができる。
【0032】
また、押圧力計測手段214は、上記圧力センサに限定されず、内筒14が搬送物を押圧する力を検出できるものであれば良く、例えば、搬送物に内筒14が接する表面に圧電素子を取り付けて直接的に内筒14が搬送物を押圧する力を検出したり、例えば、加速度センサを用いることで内筒14の応力や変形を測定し、間接的に内筒14が搬送物を押圧する力を検出するようにしても良い。
なお、上記実施形態では、膨張時の内筒14が搬送物を加圧する圧力を、圧力センサにより気密室V内の空気の圧力を計測するものとして説明したがこれに限定されない。例えば、内筒14の表面に、搬送物と直接接触するように荷重センサを設け、直接的に内筒14の膨張過程や最大膨張時に搬送物を加圧する加圧力(押圧力)を検出するようにしても良く、また、内筒14の膨張時の張力を計測し、間接的に内筒14が搬送物を加圧する圧力を検出するようにしても良い。
【0033】
搬送物情報処理手段220は、演算手段としてのCPUや記憶手段としてのROM,RAM等のハードウェアを備えたコンピュータであって、流量計測手段212や押圧力計測手段214から入力された流量や圧力等の情報に基づいて搬送物の情報を処理する。搬送物情報処理手段220は、記憶手段に記憶されたプログラムをCPUが実行することにより、当該搬送物情報処理手段220を後述の各手段や各部として機能させる。流量計測手段212や押圧力計測手段214から入力された流量や圧力は、例えば流量履歴及び圧力履歴として時間とともに記憶手段に記憶される。
【0034】
図3は、搬送物情報処理手段220の構成を示すブロック図である。なお、
図3においてシェイパーリング30は、省略してある。
図3に示すように、搬送物情報処理手段220は、体積算出手段222と、特性判別手段224と、故障検出手段226とを備える。
【0035】
体積算出手段222は、流量計測手段212及び押圧力計測手段214から入力される流量値及び圧力値に基づいて、内筒14内に含まれる搬送物の体積を算出する。
搬送物の体積は、例えば、流量、圧力及び搬送物の体積の関係を求めたデータマップ、或いは、流量及び圧力を入力することで搬送物の体積を算出することができる数式をあらかじめ記憶手段に記憶させておくことにより算出することができる。
搬送物の体積は、例えば、流量、圧力が入力される毎に、体積の時間変化として算出される。算出された搬送物の体積は、時間とともに記憶手段に記憶される。
【0036】
特性判別手段224は、計測された流量、圧力及び算出された体積値に基づいて、搬送物の特性について判別をする。本実施形態でいう搬送物の特性とは、例えば、粘性、硬さをいう。
粘性は、搬送物の体積の時間変化に基づいて判別することができる。例えば、体積の時間変化が遅い場合、搬送物は粘性が高いものと判別することができ、体積の時間変化が速い場合、搬送物は粘性が低いものと判別することができる。
また、硬さは、搬送物の体積の時間変化と圧力の変化に基づいて判別することができる。例えば、体積の変化が速く、圧力の変化が小さい場合には、搬送物が硬いものと判別することができ、体積の変化が速く、圧力の変化が小さい場合には、搬送物が柔らかいものと判別することができる。
【0037】
なお、特性判別手段224により判別される搬送物の特性は、粘性、硬さに限定されず、計測された流量、圧力及び算出された体積に基づいて判別されるものであれば良い。
特性判別手段224により判別された結果は、例えば、図示しない表示手段に表示可能に構成したり、駆動制御装置100に出力したりすると良い。
【0038】
故障検出手段226は、例えば、流量及び圧力に基づいて、ポンプユニット10の故障の有無を検出する。即ち、流量の増加に伴い圧力が上昇しない場合には、ポンプユニット10内に空気漏れが生じていることを検出することができる。
【0039】
以上説明したように、駆動制御装置100により内筒14の膨張・収縮が制御されるポンプユニット10により構成されるポンプ1が搬送物検出装置200を備えることにより、ポンプユニット10により搬送される搬送物の特性を検出することができる。これにより、上記ポンプユニット10による搬送物の可否を判定することができる。
【0040】
なお、上記実施形態では、供給弁106に所定時間信号を連続的に出力し、継続的に膨張させるようにするものとして説明したが、これに限定されず、例えば、信号を断続的に所定時間間隔で供給弁106に出力し、段階的に膨張させるようにしても良い。
【0041】
また、ポンプユニット10により搬送物を加圧するときの供給弁106の制御は、時間に限定されず、押圧力計測手段214により検出された圧力、或いは、体積算出手段222により算出された搬送物の体積に基づいて、実施されるようにしても良い。
【0042】
図4は、搬送物検出装置200の設置形態の一例を示す図である。上記実施形態で説明した搬送物検出装置200は、例えば、次のように構成することもできる。上記実施形態では、搬送物情報取得手段210を構成する流量計測手段212を供給弁106とポンプユニット10との間、押圧力計測手段214を流量計測手段212とポンプユニット10との間に設けるものとして説明したがこれに限定されない。
例えば、
図4に示すように、例えば、流量計測手段212及び押圧力計測手段214を、給排部24を有するエンドリング16に一体的に設けるとともに、さらに流量計測手段212により計測された流量及び押圧力計測手段214により計測された圧力をインターネット回線に出力可能な無線通信手段を設けるように構成しても良い。なお、無線通信装置に必要とされる電力は、駆動制御装置100から延長する配管とともに電気ケーブルを介して各ポンプユニット10に供給すれば良い。
そして、インターネット回線により形成されたネットワークに、有線或いは無線通信により接続されたサーバー300に、搬送物情報処理手段220としての機能を設定し、サーバー300に処理させることにより、インターネット等のネットワーク上においてポンプユニット10の動作状態を監視することができる。
【0043】
図5は、
図1に示す構成を有するポンプ1においてポンプユニット10を複数連結した場合について示す図である。なお、
図5においてシェイパーリング30は、省略してある。
図5に示すように、複数のポンプユニット10を連結してポンプ1を構成する場合、駆動制御装置100を構成する供給弁106及び排出弁108がポンプユニット10毎に設けられる。供給弁106には、レギュレータ104により調圧された加圧媒体がそれぞれに分配されるように、レギュレータ104と個別に接続される。また、各供給弁106及び各排出弁108は、給排制御装置110と接続され、給排制御装置110からの信号の出力により対応するポンプユニット10への加圧媒体の供給、停止が制御される。
【0044】
また、流量計測手段212及び押圧力計測手段214は、ポンプユニット10毎に設けられ、搬送物情報処理手段220の体積算出手段222による搬送物の体積の算出や、特性判別手段224によるポンプユニット10内の搬送物の特性の判別、故障検出手段226によるポンプユニット10の故障の検出は、ポンプユニット毎に実行される。
【0045】
このように、複数のポンプユニット10が連結された場合、給排制御装置110は、例えば、腸の蠕動運動を模すように、搬送方向上流側から順に、ポンプユニット10の膨張と収縮とが下流側に移動するように、各ポンプユニット10に接続された供給弁106及び排出弁108を制御する。
【0046】
図5に示すポンプユニット10を搬送方向の上流側から下流側に10A,10B,…,10F等として搬送動作について説明する。例えば、給排制御装置110は、各ポンプユニット10A~10Fに設けられた供給弁106及び排出弁108を制御し、ポンプユニット10A~10Fを次のように動作させることにより、搬送物を動作させることができる。
まず、ポンプユニット10B~10Fの収縮状態を維持したままポンプユニット10Aのみを膨張させる(ステップ1)。
次に、ポンプユニット10Aの膨張後に、ポンプユニット10C~10Fの収縮状態を維持したまま、ポンプユニット10Aを収縮させるとともにポンプユニット10Bを膨張させる(ステップ2)。
次に、ポンプユニット10Bの膨張後に、ポンプユニット10A:10D~10Fの収縮状態を維持したまま、ポンプユニット10Bを収縮させるとともにポンプユニット10Cを膨張させる(ステップ3)。
次に、ポンプユニット10Cの膨張後に、ポンプユニット10A,10B,10E,10Fの収縮状態を維持したまま、ポンプユニット10Cを収縮させるとともにポンプユニット10Dを膨張させる(ステップ4)。
次に、ポンプユニット10Dの膨張後に、ポンプユニット10A~10C,10Fの収縮状態を維持したまま、ポンプユニット10Dを収縮させるとともにポンプユニット10Eを膨張させる(ステップ5)。
次に、ポンプユニット10Eの膨張後に、ポンプユニット10A~10Dの収縮状態を維持したまま、ポンプユニット10Eを収縮させるとともにポンプユニット10Fを膨張させる(ステップ6)。
次に、ポンプユニット10Fの膨張後に、ポンプユニット10B~10Eの収縮状態を維持したまま、ポンプユニット10Fを収縮させるとともにポンプユニット10Aを膨張させる(ステップ7)。
給排制御装置110は、上記ステップ1~ステップ7を一つのサイクルとして繰り返すことにより、搬送物を下流側へと搬送することができる。給排制御装置110では、ステップ1~ステップ7に示すポンプユニット10(A~F)の制御を例えば、動作パターン1等として記憶手段に記憶させておけば良い。
【0047】
また、例えば、給排制御装置110は、次のようにポンプユニット10A~10Fを動作させることもできる。
まず、ポンプユニット10B~10Fの収縮状態を維持したままポンプユニット10Aのみを膨張させる(ステップ1)。
次に、ポンプユニット10Aの膨張後に、ポンプユニット10C~10Fの収縮状態、及びポンプユニット10Aの膨張状態を維持したままポンプユニット10Bを膨張させる(ステップ2)。
次に、ポンプユニット10Bの膨張後に、ポンプユニット10D~10Fの収縮状態、及びポンプユニット10Bの膨張状態を維持したまま、ポンプユニット10Aを収縮させるとともにポンプユニット10Cを膨張させる(ステップ3)。
次に、ポンプユニット10Cの膨張後に、ポンプユニット10A,10E,10Fの収縮状態、及びポンプユニット10Cの膨張状態を維持したまま、ポンプユニット10Bを収縮させるとともにポンプユニット10Dを膨張させる(ステップ4)。
次に、ポンプユニット10Dの膨張後に、ポンプユニット10A,10B,10Fの収縮状態、及びポンプユニット10Dの膨張状態を維持したまま、ポンプユニット10Cを収縮させるとともにポンプユニット10Eを膨張させる(ステップ5)。
次に、ポンプユニット10Eの膨張後に、ポンプユニット10A~10Cの収縮状態、及びポンプユニット10Eの膨張状態を維持したまま、ポンプユニット10Dを収縮させるとともにポンプユニット10Fを膨張させる(ステップ6)。
次に、ポンプユニット10Fの膨張後に、ポンプユニット10B~10Dの収縮状態、及びポンプユニット10Fの膨張状態を維持したまま、ポンプユニット10Eを収縮させるとともにポンプユニット10Aを膨張させる(ステップ7)。
次に、ポンプユニット10Aの膨張後に、ポンプユニット10C~10Eの収縮状態、及びポンプユニット10Aの膨張状態を維持したまま、ポンプユニット10Fを収縮させるとともにポンプユニット10Bを膨張させる(ステップ8)。
給排制御装置110は、上記動作パターンをポンプユニット10A~10Fに繰り返させることにより、ポンプユニット10の内筒14内の搬送物が、内筒14の膨張により順次下流側へと圧送され、搬送物を搬送することができる(ステップ9)。
給排制御装置110は、上記ステップ1~ステップ9を一つのサイクルとして繰り返すことにより、搬送物を下流側へと搬送することができる。給排制御装置110では、ステップ1~ステップ9に示すポンプユニット10(A~F)の制御を、例えば動作パターン2等として前述の動作パターン1とともに記憶手段に記憶させておけば良い。
【0048】
なお、ポンプユニット10A~10Fの動作は、上記動作パターン1,2に限定されず、ポンプユニット10A~10Fにより搬送物の搬送を可能とする他の動作パターンを給排制御装置110の記憶手段に記憶させておけば良い。
図6は、複数の動作パターンを給排制御装置110に記憶させたときの給排制御装置110の構成の一例を示す図である。
図6に示すように、複数の動作パターンを給排制御装置110の記憶手段に記憶させた場合、特性判別手段224により判別された結果に基づいて、動作パターンを選択するように構成すると良い。
例えば、搬送物情報処理手段220と給排制御装置110とを電気的に接続し、特性判別手段224による判別結果を給排制御装置110に出力可能に構成する。さらに、給排制御装置110には、入力された判別結果に基づいて、当該判別結果に対応する搬送物の特性に紐付けされた動作パターンを選択する動作パターン選択手段として給排制御装置110を機能させるプログラムを記憶手段に記憶させておけばよい。
【0049】
即ち、各ポンプユニット10A~10Fが流量計測手段212及び押圧力計測手段214を備え、ポンプユニット10A~10F毎の搬送物の特性が検出されることから、特性判別手段224により得られた判別結果を直ちに駆動制御装置100に出力することにより、例えば、異なる特性の搬送物が混合されて搬送され、連結されたポンプユニット10A~10F内で、搬送物の状態が変化する場合であっても、搬送効率を低下させることなく搬送物を搬送することができる。
【0050】
上記実施形態では、
図5に示すように連結されたポンプユニット10A~10Fは、給排制御装置110の記憶手段に記憶されたプログラムに基づいて所定の動作パターンをするものとして説明したがこれに限定されない。
例えば、ポンプユニット10A~10Fが、所定の動作パターン(以下、基本動作という)の動作中に、いずれかのポンプユニットで搬送の異常が検出されたときに、割り込み処理として、異常を検出したポンプユニットの搬送異常を解消するのに好適な他のポンプユニットを動作させるプログラムを記憶手段に記憶させても良い。即ち、給排制御装置110を搬送異常解消手段として機能させるプログラムを記憶手段に記憶させおけば良い。そして、搬送異常が解消された後に、再び基本動作を実行させれば良い。
【0051】
図7は、搬送物情報処理手段220の他の形態を示す図である。
図5に示すようにポンプユニット10A~10Fが複数連結されたときに、搬送物が正常に搬送されているかどうかを検出する搬送異常検出手段228を各ポンプユニット10A~10Fに設けても良い。
搬送異常検出手段228は、例えば、各ポンプユニット10A~10Fにおいて算出される搬送物の体積を比較し、一つのサイクルにおいて、上流側から下流側にかけて閾値以上の体積が減少している場合や、途中のポンプユニット10の体積が、前後のポンプユニット10よりも多い場合に、詰まり等の搬送異常があることを検出することができる。
【0052】
また、故障検出手段226が、ポンプユニット10A~10F毎の故障を検出しているので、搬送異常検出手段228により検出された搬送異常の原因がポンプユニット10の故障によるものか、搬送物の特性に起因する搬送異常か直ちに把握することができる。
【0053】
また、
図5に示すようにポンプユニット10を連結し、各ポンプユニット10を
図4に示すように構成して、サーバー300にポンプユニット10毎に入力された流量や圧力、サーバー300の体積算出手段222により算出された体積、特性判別手段224により判別された搬送物の特性は、サーバー300の記憶手段に動作履歴としてポンプユニット毎に記憶すると良い。
【0054】
また、サーバー300に記憶された動作履歴は、連結されたポンプユニットにより構成される1つのポンプを単位として紐付けして記憶すると良く、さらに、ポンプ1の設置された場所や搬送物等の情報を紐付けしてサーバー300に記憶させると良い。
そして、異なる場所で利用されるポンプ1から上記情報をサーバー300に集約し、例えば、集約された情報を機械学習することにより、例えば、搬送物に応じた動作パターンや、搬送物によって生じうる搬送異常を予測することができる。これにより、搬送効率の向上や搬送異常の回避が可能となり、ポンプ1の信頼性を向上させることができる。
【0055】
また、
図4に示すように各ポンプユニット10が無線通信装置を備える場合、駆動制御装置100から給排制御装置110の機能を分離して各ポンプユニット10に設け、各ポンプユニット10が個別に動作を制御するようにしても良い。例えば、ポンプユニット10に、給排制御装置110、搬送物検出装置200、無線通信装置とともに供給弁106,排出弁108を設け、レギュレータ104から延長するチューブと、給排制御装置110,搬送物検出装置200,無線通信装置,供給弁106,排出弁108に供給する電力とを接続することにより、動作可能にしても良い。即ち、一つのポンプユニット10を所謂IoT機器として構成しても良い。この場合、各ポンプユニット10は、サーバー300との通信に加え、ポンプユニット10同士の通信を可能とし、このポンプユニット10同士の通信に基づいて、上述の搬送の基本動作や、故障が検出されたときの動作、搬送異常の解消動作、搬送物の特性に対応する動作などを実行するように、給排制御装置110を構成すれば良い。
このように、ポンプユニット10に、給排制御装置110の機能や、搬送物検出装置200の機能を設ける場合、CPU、記憶手段、無線通信装置として機能する通信手段を1つにまとめたワンチップマイコンを利用することができる。
そして、各ポンプユニット10の搬送物情報取得手段により取得された搬送物の情報を、ポンプユニット10同士が交換、或いは共有することにより、各ポンプユニット10が、自立して搬送物の搬送動作、故障が検出されたときの動作、検出された異常を解消する動作、搬送物の特性に対応する複数のポンプユニットの動作を実行させるプログラムをワンチップマイコンの記憶手段に記憶させておくことで、サーバー300を用いることなく、ポンプユニット10のみで自立して動作させることができる。
この場合、前述の複数のポンプユニット10の異常を解消する動作の制御、又は、前記判別された搬送物の特性に基づく複数のポンプユニットの動作の制御等を取得された搬送物の情報に基づいて選択する機能を搬送物情報処理手段に設け、選択した内容を前記給排制御手段に出力するように構成することで、ポンプ1の動作をより自動化させることができる。
【0056】
以上説明したように、ポンプユニット10により搬送される搬送物の特性を検出し、当該検出した搬送物の特性に基づいて、ポンプユニットに、搬送の基本動作、故障が検出されたときの動作、搬送異常の解消動作、搬送物の特性に対応する動作をさせることにより、搬送物の搬送を最適化することができ、効率的な搬送を行うことができる。
また、上述したポンプ1の構成は、一つの例を示すものであって、給排制御装置110の有する手段や、搬送物検出装置200の有する手段が設けられる場所は、ポンプユニット10や、駆動制御装置100、サーバー300等に適宜変更しても良い。
【0057】
図8は、ポンプユニット10の他の形態を示す図である。上記実施形態では、ポンプユニット10を構成する外筒12を弾性体により構成し、内筒14とともに膨張可能に構成したが、
図8に示すように、半径方向に膨張しない硬質な樹脂等によって外筒12を構成しても良い。
図8に示すポンプユニット10では、外筒12の内周面に沿うように内筒14が設けられている。外筒12の内周面には円周方向に沿って一周にわたり窪み圧力供給室として機能する溝15が形成されており、当該溝15に外筒12を貫通する給排部24から加圧媒体を供給することにより、図中破線で示すように、内筒14が求心方向に膨張する。このようにポンプユニット10を構成しても、内筒14内の搬送物を内筒14により加圧して搬送物が搬送することができる。
【0058】
図9は、ポンプユニット10に供給される流量及びポンプユニット10内の圧力を計測し、計測した流量及び圧力から得られる搬送物の特性の有効性を評価するための評価試験の試験結果を示すグラフである。
評価試験では、
図1に示すように、一つのポンプユニット10の内筒14内に、搬送物を想定したアクリルパイプを挿入し、空気の流量及び圧力の変化に基く搬送物の体積検出の有効性について評価した。アクリルパイプは、外径が、15mm、20mm、25mm、30mm、35mmの5種類を用意し、それぞれについて体積検出の影響について調べた。外径の違いは、搬送物の粘性の大きさの違いや、圧縮性等の特性の違いを再現するものとして設定した。
なお、ポンプユニット10の内筒14の寸法は、内径が55mm、軸方向の長さが110mmである。
ポンプユニット10に供給される圧力は、レギュレータ104により60kPaに調圧し、供給弁106を3秒間開いた後に閉じると同時に、排出弁108を開いて空気を排出した。
【0059】
図9(a)は、気密室V内の圧力の変化を示すグラフであり、給気開始後、内筒14内が空の状態、アクリルパイプ挿入時のいずれの場合も13kPaまで遅れることなく立ち上がる。これは、気密室V内に空気が充満したためであると考える。その後、印加圧力である60kPaまで緩やかに上昇する。気密室V内の圧力の上昇は、外径の太いアクリルパイプを挿入した場合ほど立ち上がりが速い。これは、外径の太いアクリルパイプほど内筒14の表面が速く剛体と接することで、内筒14の膨張が抑えられ、気密室V内の圧力が上昇するためと考えられる。
図9(b)は、流量センサにより計測された気密室V内への供給空気量を示すグラフであり、アクリルパイプの直径が太い程、供給空気量は少ない。これはアクリルパイプの直径が太い程、内筒14の膨張が抑えられるためと考えられる。
図9(c)は、アクリルパイプの体積と、内筒14内が空状態との比較から算出した排除体積の相関を示すグラフである。プロットした点について線形近似を行った結果、0.9987という強い正の相関が確認された。即ち、内筒14内へのアクリルパイプの太さの増加に則した排除体積となっている。よって、気密室Vに供給される圧縮空気の流量を計測することにより、ポンプユニット10内における搬送物の体積を検知できることが確認された。
したがって、計測された流量及び圧力に基づいて搬送物の体積を検知し、内筒14が最大膨張したとき、或いは内筒14が最大膨張に至るまでの体積の変化を調べる搬送物の特性検出方法を行うことにより、搬送物の粘性や硬さなどの特性を知ることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 ポンプ、10(A~F) ポンプユニット、12 外筒、14 内筒、
16 エンドリング、24 給排部、30 シェイパーリング、
100 駆動制御装置、102 加圧媒体供給装置、104 レギュレータ、
106 供給弁、108 排出弁、110 給排制御装置、
200 搬送物検出装置、210 搬送物情報取得手段、212 流量計測手段、
214 押圧力計測手段、
220 搬送物情報処理手段、222 体積算出手段、224 特性判別手段、
226 故障検出手段、228 搬送異常検出手段、V 気密室。