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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】皮下組織療法施術器
(51)【国際特許分類】
   A61H 39/04 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
A61H39/04 S
A61H39/04 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020132578
(22)【出願日】2020-08-04
(62)【分割の表示】P 2019514661の分割
【原出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2020175246
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-03-04
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2017088282
(32)【優先日】2017-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516145851
【氏名又は名称】岩上 明治
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩上 明治
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】栗山 卓也
【審判官】安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-131890(JP,U)
【文献】特開2001-46466(JP,A)
【文献】実開昭52-112692(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手状の把持部と、
前記把持部の先端に形成した頸頭部用の二又状施術部と、
前記把持部の後端に形成したグリップ部と、により施術器本体を構成し、
前記把持部と前記グリップ部とは、
前記把持部をT字縦辺部、前記グリップ部をT字横辺部とする平面視T字形状であり、
上下方突起の前端は、それぞれ丸みを帯びた形状とし、把持部から分岐した二又状施術部の上方突起及び下方突起の各先端は、下方突起の先端が上方突起の先端より前記把持部の長手方向に突出するように形成し、
上方突起は頭頂部に近い上方に位置するような場所に、下方突起は頸部に近い下方に位置するような場所にそれぞれ当接可能とし、
しかも、上方突起前端と下方突起前端は、頭蓋骨表面の後頭部から前頭部に形成した4区分帯のうち各区分帯の境界線を跨って定置可能な間隔に形成したことを特徴とする皮下組織療法施術器。
【請求項2】
頭蓋骨表面の4区分帯は、
左右側頭骨間の頭蓋底を層状に被覆する後頭下筋群部分で、且つ頭項線中の下項線と頭項線中の上項線との間に位置する表面湾曲状エリアを仮定した第1区分帯と、
左右側頭骨間の頭蓋冠後半部を被覆する後頭筋部分と帽状腱膜部分で、且つ頭項線中の上項線と前頭筋との間におけるエリアと左右側頭骨のエリアとの各エリアで区画された表面湾曲状エリアを仮定した第2区分帯と、
左右側頭骨間の頭蓋冠前半部を被覆する前頭筋部分で区画された表面湾曲状エリアを仮定した第3区分帯と、
左右側頭骨を被覆する側頭筋部分で区画された表面湾曲状エリアを仮定した第4区分帯と、より構成したことを特徴とする請求項1に記載の皮下組織療法施術器。
【請求項3】
二又状施術部の上下方突起前端の間隔は、
第1区分帯と第2区分帯との境界線を跨いで下方突起が第1区分帯の経絡に上方突起が第2区分帯の経絡にそれぞれ当接する間隔、第2区分帯のエリア内において各前後方向に散在する前後経絡に当接する間隔、第2区分帯と第3区分帯との境界線に沿って上方突起を変位させながら下方突起が第3区分帯の経絡に当接する間隔、第2区分帯と第4区分帯との境界線に沿って上方突起を変位させながら下方突起が第4区分帯の経絡に当接する間隔を充足すると共に、施術器本体は棒状又は細幅平板状の前記把持部と、前記把持部の先端に形成した二又状施術部と、前記把持部の後端に形成した前記グリップ部と、より構成し、しかも、二又状施術部の下方突起の先端は上方突起の先端よりも前記把持部の長手方向に突出するように形成したことを特徴とする請求項2に記載の皮下組織療法施術器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、後頭骨を中心として頸部から前頭筋又は側頭筋に至る頭蓋骨表面を4区分帯に区分けしてそれぞれの区分帯の幅員の幅を保持して構成された頸頭部用の二又状施術部を使用することにより、専門的な技術を要することなく簡易に頸部から前頭筋又は側頭筋に至る4区分帯の皮下組織に刺激を付与して免疫力を向上することができる皮下組織療法施術器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、頸部から前頭部又は側頭筋にかけては多種多様の筋肉や神経、リンパ管が走行、特に東洋医学上、散在集中したつぼ(経穴)同士を繋ぐ経絡が走行しており、かかる筋肉、神経、リンパ管、及び経絡を刺激することは、血流の改善などの医学的効果、心身の緊張を解きほぐすリラクゼーション効果、揉み解しなどのマッサージ効果が得られる医療法として活用されてきた。そのためにかかる部位の経絡や神経筋や筋肉等を施術者の手指を使用して刺激診療するいわゆる指圧療法がある。
【0003】
これは施術者の技量によって患者に与える効果が異なり、従って、多くの施術者に画一的な技量療法を求めることができない欠点があり、しかも、長時間の単純な指圧や揉み作業のため施術者には肉体的負荷が大であり、また、鍛錬して一定水準の指圧技能を習得するためには長期間の実施訓練を必要とする。
【0004】
そこで、これらの欠点を解消するために一定の形状に構成した指圧器具を用いて施術者の手指に代わって道具により人体のつぼや所定の筋肉を指圧する技術が考案されてきた。
【0005】
かかる指圧器具はそのために指圧個所に適合した手指の押圧に代わる一定形状の器具構造とする必要があり、かかる指圧器具の形状に関して多数の意匠や形状特許が出願(例えば、特許文献1参照。)されたり登録されたりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-43270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように一定形状に造形された指圧器具は、例えば雲型に形成された板体の突出部分を患部に押し当て力加減をしながら指圧と同等の効果を狙ったものであったり、患部の指圧個所に応じて型取った造形体であったり、また、複数の患部に同時に押し当て短時間に療養できるように多数の突出部を形成した造形体であったりする。
【0008】
しかも、器具の使用形態としては器具本体中央部に指孔を複数穿設して指孔に指を挿入して手掌部で器具全体を握りしめ一定の形状の器具突部を患部に押し当てて押圧応力が有効に器具から患部に伝播するようにしたものである。
【0009】
しかし、これらの指圧器具はいずれも一長一短を有し、指圧具本体を手掌部で把持し患部に押圧しても、施術者の手掌部の押圧力が有効に器具本体に伝達されないため押圧応力が充分に患部に伝わらず、かえって施術に余分の力を要し施術者の肉体的負荷が大となり長時間施術を行うことが困難となる欠点を有していた。
【0010】
また、頭部における頭蓋骨への刺激療法を行うためには指圧具形状が頭部の略全表面に共通に使用できる構造となっていないため患部の頭部位置によっては異なる形状の指圧具を多数そろえておく必要があり、指圧療法が煩雑となり療法器具も高価となる等の欠点があり、結局は、一個の施術器で後頭部から頭頂部に至る広範囲で簡便にかつ可及的に少ない肉体的負荷で有効な皮下組織の刺激施術が行うことができるものがなかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来の課題を解決するために、この発明は、手状の把持部と、前記把持部の先端に形成した頸頭部用の二股施術部と、前記把持部の後端に形成したグリップ部と、により施術器本体を構成し、前記把持部と前記グリップ部とは、
前記把持部をT字縦辺部、前記グリップ部をT字横辺部とする平面視T字形状であり、上下方突起の前端は、それぞれ丸みを帯びた形状とし、把持部から分岐した二又状施術部の上方突起及び下方突起の各先端は、下方突起の先端が上方突起の先端より前記把持部の長手方向に突出するように形成し、上方突起は頭頂部に近い上方に位置するような場所に、下方突起は頸部に近い下方に位置するような場所にそれぞれ当接可能とし、しかも、上方突起前端と下方突起前端は、頭蓋骨表面の後頭部から前頭部に形成した4区分帯のうち各区分帯の境界線を跨って定置可能な間隔に形成したことを特徴とする皮下組織療法施術器を提供せんとするものである。
【0012】
また、頭蓋骨表面の4区分帯は、左右側頭骨間の頭蓋底を層状に被覆する後頭下筋群部分で、且つ頭項線中の下項線と頭項線中の上項線との間に位置する表面湾曲状エリアを仮定した第1区分帯と、左右側頭骨間の頭蓋冠後半部を被覆する後頭筋部分と帽状腱膜部分で、且つ頭項線中の上項線と前頭筋との間におけるエリアと左右側頭骨のエリアとの各エリアで区画された表面湾曲状エリアを仮定した第2区分帯と、左右側頭骨間の頭蓋冠前半部を被覆する前頭筋部分で区画された表面湾曲状エリアを仮定した第3区分帯と、左右側頭骨を被覆する側頭筋部分で区画された表面湾曲状エリアを仮定した第4区分帯と、より構成したことを特徴とする。
【0013】
二又状施術部の上下方突起前端の間隔は、第1区分帯と第2区分帯との境界線を跨いで下方突起が第1区分帯の経絡に上方突起が第2区分帯の経絡にそれぞれ当接する間隔、第2区分帯のエリア内において各前後方向に散在する前後経絡に当接する間隔、第2区分帯と第3区分帯との境界線に沿って上方突起を変位させながら下方突起が第3区分帯の経絡に当接する間隔、第2区分帯と第4区分帯との境界線に沿って上方突起を変位させながら下方突起が第4区分帯の経絡に当接する間隔等、各間隔を充足すると共に、施術器本体は棒状又は細幅平板状の把持部と、把持部の先端に形成した二又状施術部と、把持部の後端に形成したグリップ部と、より構成し、しかも、二又状施術部の下方突起は上方突起よりも先端方向に長く突出形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、二又状施術部は基本的に頭蓋骨の球表面をなぞりながら患部を押圧刺激しながら施術するものであるため頭蓋骨に対して最も押圧応力のかかる方向をうつ伏せに寝た患者の頭部の垂直方向、要するに、患者の起立姿勢での頭部水平方向を4区分帯に区分けしこの4区分帯を頭蓋骨の後面部から頭頂部にかけて皮下組織の刺激療法をすることができる。
【0020】
請求項2の発明では、頭蓋骨を後頭部から前頭部にかけて4区分帯に区画した場合、頭蓋骨表面を区分けした第1区分帯は、左右側頭骨間の頭蓋底を層状に被覆する後頭下筋群部分で、且つ頭項線中の下項線と頭項線中の上項線との間に位置する表面湾曲状エリアを仮定し、頭蓋骨表面を区分けした第2区分帯は、左右側頭骨間の頭蓋冠後半部を被覆する後頭筋部分と帽状腱膜部分で、且つ頭項線中の上項線と前頭筋との間におけるエリアと左右側頭骨のエリアとの各エリアで区画された表面湾曲状エリアを仮定し、頭蓋骨表面を区分けした第3区分帯は、左右側頭骨間の頭蓋冠前半部を被覆する前頭筋部分で区画された表面湾曲状エリアを仮定し、頭蓋骨表面を区分けした第4区分帯は、左右側頭骨を被覆する側頭筋部分で区画された表面湾曲状エリアを仮定している。また、請求項3の発明では、二又状施術部の上下方突起前端の間隔は、第1区分帯と第2区分帯との境界線を跨いで下方突起が第1区分帯の経絡に上方突起が第2区分帯の経絡にそれぞれ当接する間隔、第2区分帯のエリア内において各前後方向に散在する前後経絡に当接する間隔、第2区分帯と第3区分帯との境界線に沿って上方突起を変位させながら下方突起が第3区分帯の経絡に当接する間隔、第2区分帯と第4区分帯との境界線に沿って上方突起を変位させながら下方突起が第4区分帯の経絡に当接する間隔等、各間隔を充足するように構成している。
【0021】
このような各区分帯に対して施術器本体を垂直に押し当て把持部の軸線方向に押圧応力をかけると、この押圧応力は均等に上下方突起を介して患部に伝わり各区分帯上下縁の皮下組織の経絡等を刺激することができる効果がある。
【0022】
すなわち、本発明では、うつ伏せの頭部略球体に対し垂直の入力方向としても上下方突起先端は頭部患部に密着当接し刺激応力を可及的最大限に発揮できるような二又状施術部構造としたことに特徴がある。
【0023】
また、うつ伏せに寝た患者の頭部の4区分帯をうつ伏せ頭蓋骨の後面から垂直方向に刺激する場合は、頭部の表面形状は各区分帯の下縁線程に施術器本体からみて遠くにある。
【0024】
すなわち、仮に上下方突起が同一長さであれば4区分帯に対して施術器本体を垂直姿勢とすれば各区分帯の下縁に向かっている下方突起は、各区分帯の上縁線に向かっている上方突起よりも遠くに位置することになる。
【0025】
そのために必然的に各突起が頭蓋骨の患部に均等に当接するために下方突起を上方突起よりも必然的に長く形成する。
【0026】
かかる論理に適合する形状として、請求項に係る発明では、二又状施術部の下方突起は、上方突起よりも先端方向に長く突出した形状に構成、すなわち頸頭部用の二又状施術部を施術時に頭蓋骨に遠い方に位置する下方突起と近い方に位置する上方突起との組み合わせにより構成し、その結果、うつ伏せの頭蓋骨の各区分帯に垂直方向に棒状の把持部を押圧することにより先端長さが異なる上下方突起は異なる位置の皮下細胞へ可及的有効で均等な刺激を付与することができる効果がある。
【0027】
しかも、二又状施術部の上下方突起の前端同士の間隔は4区分帯に共通して使用できるように、第1区分帯と第2区分帯との境界線を跨いで長い方の下方突起が第1区分帯の経絡に短い方の上方突起が第2区分帯の経絡にそれぞれ当接する間隔、第2区分帯のエリア内において各前後方向に散在する前後経絡に当接する間隔、第2区分帯と第3区分帯との境界線に沿って短い方の上方突起を変位させながら長い方の下方突起が第3区分帯の経絡に当接する間隔、第2区分帯と第4区分帯との境界線に沿って短い方の上方突起を変位させながら長い方の下方突起が第4区分帯の経絡に当接する間隔等、各間隔を充足する前端間隔を構成しているので、一個の施術器のみで頭蓋骨のほぼ全体の必要な皮下組織の刺激をこなすことができることになり、施術効率を向上することができると共に、特に熟練を要することなく多数の施術者が共通した一定レベルの施術技術を患者に施すことができる。
【0028】
また、本発明の選択的な態様の1つにおいて、二又状施術部の上方突起は把持部の軸線方向に沿って突出させると共に、下方突起は把持部の軸線方向に対して約40°~60°傾斜して設けることとすれば、各区分帯に対して施術器本体を垂直に押し当て把持部の軸線方向に押圧応力をかけた際の押圧応力をより均等に上下方突起を介して患部に伝え、各区分帯上下縁の皮下組織の経絡等を刺激することができる効果がある。
【0029】
また、本発明の選択的な態様の1つにおいて、二又状施術部の上下方突起は扁平状とし、扁平先端縁は肉厚中央部を凹状に形成することにより扁平両側面に左右両側突縁部を形成すれば、施術時に頭蓋骨表面の皮膚接点が多い分摩擦抵抗が大となり、安定した押圧力を患部に対してかけることができる効果がある。
【0030】
また、本発明の選択的な態様の1つにおいて、二又状施術部とグリップ部との間の棒状の把持部を施術者の手掌握部の幅員として把持した際に手掌握部の幅員両端面が二又状施術部とグリップ部に密着するように構成すれば、棒状の把持部を把持するために丸めた手掌握部の幅員は二又状施術部とグリップ部に密着して収まるので手掌握部での把持応力を充分に発揮でき施術者の意のままに患部への押圧力を施術器を介して伝えることができ、患部に対して確実な皮下組織刺激を行うことができる効果がある。
【0031】
また、本発明の選択的な態様の1つにおいて、二又状施術部は先端に向かって漸次先鋭状とすると共に、最先端部分は平面視アール形状且つ側面視先端漸次肉薄状とすれば、患部の施術有効点に適確に定置することができると共に、患部に不要な過度の刺激を付与することなく患部皮下組織に有効に二又状施術部を機能させることができる効果がある。
【0032】
また、本発明の選択的な態様の1つにおいて、把持部の前端に形成した二又状施術部の機能表面は滑り摩擦が大となるような粗造面に形成すれば、患部表面に施術器を押圧した場合に滑動してずれる虞が無く施術器を患部皮下組織に確実に位置させて施術操作作業を効率よく機能的に行うことできる効果がある。
【0033】
また、本発明の選択的な態様の1つにおいて、施術器本体は素材を樹脂とし、施術作業時に重量感を保持し安定した施術が実施できるように構成すれば、施術器本体の自重により施術器具の把持と共に施術操作を行い易くすることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本実施形態に係る皮下組織療法施術器の正面図である。
図2】本実施形態に係る皮下組織療法施術器の正面図である。
図3】本実施形態に係る皮下組織療法施術器の正面図及び平面図である。
図4】本実施形態に係る皮下組織療法施術器の使用例を示す説明図である。
図5】本実施形態に係る皮下組織療法施術器の使用例を示す説明図である。
図6】本実施形態に係る皮下組織療法施術器の使用例を示す説明図である。
図7】本実施形態に係る皮下組織療法施術器の使用例を示す説明図である。
図8】頭蓋骨表面を区分けした場合の正面斜視図である。
図9】頭蓋骨表面を区分けした場合の背面斜視図である。
図10】頭蓋骨表面を区分けした場合の正面図である。
図11】頭蓋骨表面を区分けした場合の背面図である。
図12】頭蓋骨表面を区分けした場合の側面図である。
図13】本実施形態に係る皮下組織療法施術器の二又状施術部の正面拡大図である。
図14】本実施形態に係る皮下組織療法施術器の変形例を示す正面図、平面図、及び断面図である。
図15】本実施形態に係る皮下組織療法施術器の変形例を示す斜視図及び平面図である。
図16】本実施形態に係る皮下組織療法施術器の変形例を示す斜視図及び平面図である。
図17】本実施形態に係る皮下組織療法施術器の把持状態を示す説明図である。
図18】本実施形態に係る皮下組織療法施術器の把持状態を示す説明図である。
図19】本実施形態に係る皮下組織療法施術器の把持状態を示す説明図である。
図20】本実施形態に係る皮下組織療法施術器の使用例を示す説明図である。
図21】本実施形態に係る皮下組織療法施術器の使用例を示す説明図である。
図22】本実施形態に係る皮下組織療法施術器の使用例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の要旨は、把持部と把持部の先端に形成した頸頭部用の二又状施術部と把持部の後端に形成したグリップ部とにより施術器本体を構成し、しかも、頸頭部用の二又状施術部は施術時に頸部に近い方に位置する下方突起と頭頂部に近い方に位置する上方突起の組み合わせにより構成し、二又状施術部の上方突起前端と下方突起前端は頭蓋骨表面を後頭部から前頭部にかけて4区分帯に区分けした場合の各区分帯の両側縁線に跨って定置可能な間隔に形成しており、しかも、頭蓋骨を後頭部から前頭部にかけて区分した4区分帯のうち、頭蓋骨表面を区分けした第1区分帯は、左右側頭骨間の頭蓋底を層状に被覆する後頭下筋群部分で、且つ頭項線中の下項線と頭項線中の上項線との間に位置する表面湾曲状エリアを仮定し、頭蓋骨表面を区分けした第2区分帯は、左右側頭骨間の頭蓋冠後半部を被覆する後頭筋部分と帽状腱膜部分で、且つ頭項線中の上項線と前頭筋との間におけるエリアと左右側頭骨のエリアとの各エリアで区画された表面湾曲状エリアを仮定し、頭蓋骨表面を区分けした第3区分帯は、左右側頭骨間の頭蓋冠前半部を被覆する前頭筋部分で区画された表面湾曲状エリアを仮定し、頭蓋骨表面を区分けした第4区分帯は、左右側頭骨を被覆する側頭筋部分で区画された表面湾曲状エリアを仮定した場合において、二又状施術部の上下方突起前端の間隔は、第1区分帯と第2区分帯との境界線を跨いで下方突起が第1区分帯の経絡に上方突起が第2区分帯の経絡にそれぞれ当接する間隔、第2区分帯のエリア内において各前後方向に散在する前後経絡に当接する間隔、第2区分帯と第3区分帯との境界線に沿って上方突起を変位させながら下方突起が第3区分帯の経絡に当接する間隔、第2区分帯と第4区分帯との境界線に沿って上方突起を変位させながら下方突起が第4区分帯の経絡に当接する間隔等、各間隔を充足することを特徴とする皮下組織療法施術器を提供することにある。
【0036】
本発明に係る皮下組織療法施術器は、一般的なマッサージ器のように単に「押す」、「摩る」役割を果たしてマッサージ効果を得ようとするものとは根本的に異なり、「皮膚のストレッチ状況下」で「押す」「回す」「引き寄せる」ことによりその下の組織が押圧方向から逃れることなく圧縮され、組織やリンパ、筋靭帯等の活性化を図るための、頭皮下組織のストレッチ伸張押圧専用の器具である。
【0037】
頭皮は、皮膚、結合組織、帽状腱膜、疎性輪紋状結合組織、頭蓋骨膜5つに分けられ、皮膚は、さらに表皮組織、真皮組織、皮下組織に分けられる。
【0038】
表皮組織は角質層,顆粒層、有棘層及び基底層、真皮組織は乳頭層、乳頭下層、網上層、血管、神経、皮脂腺及び汗腺等の付属器からなり、皮下組織は多量の脂肪や毛細血管を有した組織でありクッション機能により組織を保護する役割が有る。
【0039】
頭皮下の頭頂部は大半が帽状腱膜により覆われており、人体の他の部位よりも結合組織が薄く堅いため、手指による指圧力は皮膚のみにしか伝わらない。
【0040】
しかしながら、摩擦係数を大とした皮下組織療法施術器を使用すれば、皮膚だけの押圧と異なり、患部の皮膚面を滑らずに掴むように皮下組織を捕らえた安定状態で押圧力を表皮組織の血管、神経、汗腺等の人体有用機能部に押圧刺激を与えて整体施術効果を向上する。
【0041】
すなわち、二又状施術部が皮膚と接触する機能表面において、その接触面積を増大させ、しかも粗造面を形成して摩擦抵抗を大きくすることにより、「頭皮を皮下組織ごと掴み引っ張る」、要するに皮膚を最大最高に伸張して皮下組織細胞の逃げ場のない状態とするように突っ張っらせ、皮膚と頭蓋骨との間の帽状腱膜及び前頭筋、後頭筋、側頭筋の堅くなった組織を押し潰す様に最大限に引っ張った上で回したり押したりする器具であると言える。
【0042】
以下、具体的な実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1及び図2は本実施形態に係る皮下組織療法施術器の正面図、図3(a)及び図3(b)は本実施形態に係る皮下組織療法施術器の正面図及び平面図、図4図7並びに図20図22は皮下組織療法施術器の使用例を示す説明図、図8図12は頭部を施術区域として区分帯に区分けした場合の説明図、図13は二又状施術部の上下方突起の前端を拡大した正面図、図14図16は本実施形態に係る皮下組織療法施術器の変形例を示す説明図、図17図19は施術者の手掌により皮下組織療法施術器を把持した状態を示す説明図である。
【0043】
〔1.実施形態〕
本発明に係る皮下組織療法施術器Aにおいて施術器本体1は、図1及び図3に示すように、棒状或いは細幅平板状の把持部2と、把持部2の先端に形成した頸頭部用の二又状施術部3と、把持部2の後端に形成したグリップ部4と、により構成されている。
【0044】
しかも、施術器本体1における頸頭部用の二又状施術部3は施術時に頸部や顔面部に近い方に位置する下方突起6と頭頂部に近い方に位置する上方突起5の組み合わせにより構成している。すなわち、施術器本体1は、図1及び図3に示すように略Y字状に形成しており、そのY字形において中央部で伸延する肉厚部分を把持部2とし、把持部2先端から二股に分岐して伸延する部分を二又状施術部3としている。
【0045】
二又状施術部3の上方突起前端5aと下方突起前端6aを当接する位置は、図4図6に示すように、患者の頭蓋骨表面を後頭部から前頭部にかけて、第1区分帯C1、第2区分帯C2、第3区分帯C3及び第4区分帯C4の4区分帯に区分し、各区分帯の表面湾曲状エリアに網目状に分布する経絡同士の間に跨がる位置とする。すなわち、二又状施術部3の上方突起前端5aと下方突起前端6aとの間隔は、各区分帯にそれぞれ存在する経絡(つぼ)同士を繋ぐ共通の間隔である。
【0046】
その理由としては、図4図6に示すように、二又状施術部3は基本的に頭蓋骨の球表面をなぞりつつ患部を押圧刺激しながら施術するものであるため、頭蓋骨に対して最も押圧応力のかかる方向は可及的に球表面に対して直角的な入射方向となるような押圧力を最大限に発揮するための二又状施術部構造が望まれる。
【0047】
一般的に、施術ポイントとしての経絡は頭頂部近傍エリアよりも頸部や顔面部の近傍エリア、すなわち頭頂部の略全域を被覆する肉薄組織の帽状腱膜よりも、肉厚組織である側頭部の側頭筋や、前頭部の前頭筋、後頭下部の複数の筋肉群に多く存在している。また、頭部表面は、頭頂部から遠ざかるほど湾曲率を高くした湾曲部分を経て側頭部や前頭部、後頭下部に至る。
【0048】
すなわち、図8図12に示すように本発明では適切な施術ポイントに合わせた施術を行うために頭蓋骨を後頭部から前頭部にかけて4区分帯に区画し、頭蓋骨表面を区分けした第1区分帯C1は、左右側頭骨B4、B4’間の頭蓋底B1を層状に被覆する後頭下筋群M1部分で、且つ頭項線中の下項線D1と頭項線中の上項線D2との間に位置する表面湾曲状エリアを仮定し、頭蓋骨表面を区分けした第2区分帯C2は、左右側頭骨B4、B4’間の頭蓋冠後半部B2を被覆する後頭筋M3部分と帽状腱膜M2部分で、且つ頭項線中の上項線D2と前頭筋M4との間におけるエリアと、左右側頭骨B4、B4’のエリアとの各エリアで区画された表面湾曲状エリアを仮定し、頭蓋骨表面を区分けした第3区分帯は、左右側頭骨B4、B4’間の頭蓋冠前半部B3を被覆する前頭筋M4部分で区画された表面湾曲状エリアを仮定し、頭蓋骨表面を区分けした第4区分帯C4は、左右側頭骨B4、B4’を被覆する側頭筋M5、M5’部分で区画された表面湾曲状エリアを仮定した形状としている。
【0049】
かかる論理に適合する形状として、特に本実施形態では図1及び3に示すように、頸頭部用の二又状施術部3を施術時に頸部等に近い方に位置する下方突起6と頭頂部に近い方に位置する上方突起5の組み合わせにより構成している。
【0050】
そして二又状施術部3は、上方突起前端5aと下方突起前端6aとの間隔Lを各区分帯にそれぞれ存在する経絡(つぼ)同士を繋ぐ共通の間隔とするように形成している。
【0051】
具体的には、二又状施術部3の上方突起5の前端5aと下方突起の前端6aとの間隔Lは、基本的に東洋医学上の尺度に合わせて形成されており、例えば患者の頭部の大きさや形状、例えば子供用や大人用、女性用や男性用など患者の身体的特徴ごとに存在する一般的な経絡同士の間隔にあわせて形成することができる。なお、本実施形態における二又状施術部3の上方突起の前端5aと下方突起の前端6aとの間隔Lの長さは、約4~7cm、好ましくは5~6cmとしている。
【0052】
ここで皮下組織療法施術器Aにおける二又状施術部3とは、単に施術器本体1について二又の施術部を形成したものだけでなく施術器本体1の把持部2先端で上下方向に三又、四又、五又、、、といった複数の又状施術部を形成し、この複数の又状施術部のうち各区分帯に適合した間隔の二又部分をも含むものである。
【0053】
すなわち、本発明の二又状施術部3が、図2に示すように施術器本体1における複数の又状施術部に含まれていればよい。なお、図2(a)は三又状施術部において、2つの二又状施術部3、3’が、図2(b)は三又状施術部において、3つの二又状施術部3、3’、3’’が含まれる態様を示している。
【0054】
具体的には、図2(a)や図2(b)に示すように正面視において把持部2の先端で上下方向に連なるように複数の突起を形成した場合に、同複数の突起のうち上下に隣接する2つの突起において、その前端同士の間隔が各区分帯にそれぞれ存在する経絡(つぼ)同士を繋ぐ共通の間隔Lであれば、それら2つの突起5、6や突起5'、6'、突起5''、6''はそれぞれ本発明の上下方突起5、6であり、二又状施術部3を構成していることとなる。
【0055】
また、把持部2の前端に形成した二又状施術部3の機能表面は、図10に示すように、摩擦抵抗が大となるような粗造面30に形成している。
【0056】
このような粗造面30を形成する方法としては、例えば、施術器本体1表面にサンドブラスト処理や粉粒体塗装処理を施したり、施術器本体1自体を3Dプリンタ積層成形又は粉粒体分散硬化成形することにより、施術器本体1表面に微細な凹凸面を形成することができる。
【0057】
サンドブラスト処理を施すにあたっては、研磨用砥石やサンドペーパー、やすりで施術器本体1の表面をこすって微細な凹凸面、例えば鑢の目の粗さの凹凸面を形成する。
【0058】
また、粉粒体塗装処理を施すにあたっては、施術器本体1表面にガラス粉末や砂粒などの微細な粉粒体を吹き付け接着することで微細な凹凸面を形成する。
【0059】
また、施術器本体1を3Dプリンタ積層成形するにあたっては、例えば、把持部の軸線に直交する方向、具体的には上方突起5の前端面及び下方突起6の前端面によりなす仮想平面に直交する方向に樹脂等を積層していくことにより、上下方突起5、6の前端面に、上下方向に沿った微細な凹凸を形成する。
【0060】
また、施術器本体1を粉粒体分散硬化成形するにあたっては、微細な粉粒体を分散させた未硬化状態の樹脂を施術器本体1の型枠に流し込み硬化させることにより、施術器本体1外表面に粉粒体を露出させて微細な凹凸面を形成する。なお、粉粒体塗装処理や粉粒体分散硬化成形に用いる粉粒体の粒径は、施術器本体1の表面に粗造面30が形成されれば特に限定されることはない。
【0061】
また、上記方法により形成された二又状施術部3の機能表面である粗造面30は、表面粗さをRa 10μm~35μm、より好ましくはRa 15μm~30μmとすることにより、二又状施術部3の頭皮表面に対する摩擦抵抗力を確実に得ることができる。
【0062】
なお、二又状施術部3の機能表面は、摩擦抵抗が大となれば特に限定されることはなく、例えば、別体に構成した弾性素材(例えばビニル樹脂)や粗造面を有したキャップ状パーツを二又状施術部3の上下方突起5、6表面に外装することにより構成してもよい。すなわち、二又状施術部3の機能表面は、上下方突起5、6に着脱可能な摩擦抵抗を大としたキャップ状パーツにて構成してもよい。
【0063】
ここで、二又状施術部3の機能表面とは、上方突起5の前端面と下方突起6の前端面とがそれぞれ頭皮表面と接触する面である。上方突起5や下方突起6のそれぞれの前端面の表面積は、5mm2~30mm2、より好ましくは10mm2~25mm2となるように形成している。
【0064】
このような構成により、二又状施術部3を頭皮表面にあてがった際には、上下方突起5、6の前端面が頭皮表面に面接触して摩擦抵抗面を増加させることを可能としつつ上下方突起5、6の前端による頭皮表面の損傷を防止し、施術器本体1の頭皮表面上での滑動を防止することができる。また、二又状施術部3が頭皮深部の皮下組織を広範囲に渡って該組織ごと頭皮表面を掴み施術器本体1を押し回し操作をした際に患部組織を確実に解すことができる。
【0065】
また、二又状施術部3の下方突起6は、図3に示すように上方突起5よりも先端方向に長く突出した形状に構成している。すなわち、頭蓋骨の表面に対して垂直方向に棒状の把持部2を押圧する際に、図7に示すように上下方突起5、6は前端までの長さが異なるために球状の頭蓋骨表面に両突起の同じ押圧応力で異なる位置の皮下細胞へ可及的に均等な刺激を付与することができるようにしている。
【0066】
すなわち、図4図7に示すように、4区分帯に区分けした頭蓋骨表面はいずれも球状表面であるために、頭蓋骨の湾曲形状に伴う凹凸に適合すべく頭蓋骨表面に対して垂直に向かった把持部2の押圧方向に対して、各区分帯における一定間隔の二か所の患部は把持部2からみて下方(後方)が上方(前方)より距離が長くなる。
【0067】
そのために上下方突起5、6の長さを上記のように下方突起6を長くして区分帯の上下縁部の二か所の患部に均等に施術押圧力がかかるようにしている。
【0068】
特に、施術ポイントとなる経絡(つぼ)が密に分布する第1区分帯C1の表面湾曲状エリアにある後頭下筋群M1部分、及び第3区分帯C3の表面湾曲状エリアにある前頭筋M4部分、並びに第4区分帯C4の表面湾曲状エリアにある側頭筋M5部分を押圧する際には、第2区分帯C2の表面湾曲状エリアにある帽状腱膜M2部分に二又状施術部3の上方突起5の前端5aを挺子の支点として配置し、下方突起6の前端6aを作用点として後頭下筋群M1や前頭筋M4、側頭筋M5のそれぞれの患部に押圧力を作用させることで各区分帯の表面湾曲状エリアに分布する経絡を確実に押圧刺激することができる。
【0069】
なお、上下方突起5、6の長さ(把持部軸方向において二股谷部を基端としてそれぞれの突起前端までの距離)関係は、上下方突起5、6によりなす二又の拡開角度(傾斜角度)により異なるが、一例として上方突起の長さ:下方突起の長さ=1:1~1.5となるようにしている。
【0070】
また、本発明に係る皮下組織療法施術器Aは、図3に示すように、施術器本体1において二又状施術部3の上方突起5を把持部2の軸線E方向(図3中、破線で示す。)に沿って突出させると共に、下方突起6を把持部2の軸線E方向に対して傾斜角度約40°~60°で傾斜して設けている。
【0071】
より具体的には、上方突起5は、施術器本体1において、軸線Eと所定間隔を隔て、且つ把持部2の軸線Cと平行に伸延する上方突起軸線E1の一端を上方突起5の前端5aとするように形成している。
【0072】
一方、下方突起6は、施術器本体1において、上方突起5の前端5aと先端方向を同一とし、上方突起軸線E1の略中央部E1aから傾斜角度約40°~60°で傾斜して伸延する下方突起軸線E2の先端を下方突起6の前端6aとするように形成している。
【0073】
このような構成により、図4図7に示すように、頭蓋骨の表面に対して垂直方向に棒状の把持部2を押圧する際の押圧応力は、把持部2の軸線Eの中途部や上方突起軸線E1の略中央部E1aから上下方突起5、6のそれぞれ前端5a、6a向かって分解された略同一の押圧分力となる。
【0074】
すなわち、下方突起6は頭蓋骨の球状表面に応じて上方突起5の押圧応力の方向である上方突起軸線E1に対して略中央部E1aから約40°~60°の傾斜をもって形成していることにより上方突起軸線E1の押圧応力は略中央部E1aから二手に分かれた略均等の押圧分力となる。
【0075】
その結果、皮下組織療法施術器Aは、頭蓋骨の表面に対して垂直方向に棒状の把持部2を押圧する際には、上方突起5により押圧分力を頭蓋骨の表面に対して垂直方向に作用させることができる一方で、下方突起6により上方突起5の押圧分力と略同じ押圧分力を頭蓋骨の球状表面に対して傾斜方向に作用させることができ、区分帯の上下縁部の二か所の患部に対してより均等な施術押圧力がかかるようにしている。
【0076】
しかも、上下方突起5、6の前端間隔は4区分帯に共通して使用できるように、第1区分帯C1と第2区分帯C2との境界線(上項線D2)を跨いで長い方の下方突起6が第1区分帯C1の経絡に、短い方の上方突起5が第2区分帯C2の経絡にそれぞれ当接する間隔、第2区分帯のエリア内において各前後方向に散在する前後経絡に当接する間隔、第2区分帯と第3区分帯との境界線D3に沿って短い方の上方突起を変位させながら長い方の下方突起が第3区分帯の経絡に当接する間隔、第2区分帯と第4区分帯との境界線D4に沿って短い方の上方突起を変位させながら、長い方の下方突起が第4区分帯の経絡に当接する間隔等、各間隔を充足する前端間隔としている。
【0077】
ここで、頭蓋骨及びこれを被覆する筋肉等の各部の名称は、図8図11に示すように、その場所が定められており、特に本明細書で使用する各部の名称の用語は以下のように定義される。
・頭蓋骨‐顔構造を支持し脳を外部から保護し、22個の骨が縫合されて形造られている骨
・頭蓋冠‐頭蓋骨のうち頭部の上半分の丸い部分の骨
・頭蓋底‐頭蓋骨のうち頭部の下半分の骨
・頭項線‐上下部にそれぞれ上項線と下項線とを形成する領域
・上項線‐後頭骨の隆起部分に存在して頭蓋冠の後頭平面と頭蓋底の項平面との境を乳様突起に向かって走行する横線
・下項線‐上項線の下方に存在して乳様突起に向かって走行する横線
・側頭骨‐頭蓋骨の左右側部を形成する骨
・頭頂骨‐頭蓋骨の一部で頭のてっぺん(頭頂)から頭の真後ろまでを形成する骨
・前頭骨‐頭蓋骨のうち左右側頭骨の間に存在する前部を形成する骨
・後頭骨‐頭蓋骨のうち左右側頭骨の間に存在する後部を形成する骨
・側頭筋‐左右の側頭骨の略全域を被覆する筋肉
・帽状腱膜‐各筋肉に向って頭蓋骨を被覆する肉薄の繊維状組織
・前頭筋‐帽状腱膜が前方に延びて頭蓋骨前部を被覆する筋肉
・後頭筋‐上項線の上方で後頭骨の一部を被覆する筋肉
・後頭下部筋‐上項線の下方で頭蓋底に付着する複数の筋肉からなる筋群
【0078】
また経絡とは、点在するつぼとつぼを結びつらねるように網目状に走る線であり頭部全域に分布、特に前頭筋や後頭筋、側頭筋に密集している。
【0079】
各区分帯に存在する経絡位置は、患者の頭部の大きさや形状により異なるが、一般的には施術者の手指を患者の頭部にあてがい手指幅で計測することで決定する。
【0080】
より具体的には、頭部に存在する基準位置から手指の幅、例えば、親指の幅(東洋医学上の一寸)、人差し指から薬指までの幅(東洋医学上の二寸)、人差し指から小指までの幅(東洋医学上の三寸)などを経絡までの距離の目安として各区分帯に分布する経絡位置を決定する。
【0081】
また、施術器本体1を形成する素材は特に限定されることはなく、例えば、金属製、樹脂製、木製を採用することができる。
【0082】
施術器本体1を形成する素材として樹脂を採用した場合には、硬質樹脂(例えばナイロン樹脂)にて施術器本体1を形成すると共にその表面を弾性を有する軟質樹脂(例えばビニル樹脂)にてコーティング形成することにより、施術時において頭皮表面を不用意に損傷することを可及的防止できる。
【0083】
本実施形態では施術器本体1をナイロン樹脂で形成しており、施術器全体に重量感を持たせ、施術器本体1の自重により施術器の把持と共に施術操作が行い易くしている。
【0084】
また、施術器本体1において、把持部2の厚みを肉厚とし、二又状施術部3の厚みを基端から先端にかけて漸次肉薄とするように形成することで施術器全体に重厚感を保持させることができる。具体的には、把持部の厚みを約1.5cm~3.5cmとし、二又状施術部3の厚みを基端から先端にかけて肉薄となるように約0.3cm~3.5cmに形成している。
【0085】
また、上述した粗造面30を施術器本体1の外表面全域に形成することとすれば、把持部2やグリップ部4を施術者が手掌把持した際の摩擦抵抗を大とし、手掌の手汗や乾燥などで把持部2やグリップ部4から手掌が不用意に滑動してずれてしまうことを防止できる。
【0086】
換言すれば、施術器本体1外表面全域には表面粗造の凹凸加工がなれていることから、皮下組織療法施術器Aは施術器本体1と接触する皮膚や頭皮をかかる粗造面の凹凸によりあたかも掴みこむような施術を可能としている。
【0087】
また、図17に示すように、二又状施術部3とグリップ部4との間に形成された棒状或いは細幅状の把持部2の長さは施術者Rの手掌握部の幅員と略同等の長さL1としている。従って、手掌握部を丸めて把持部2を把持した際に手掌握部の幅員の両端面が二又状施術部3の基部3aとグリップ部4の基部4aに密着することになる。
【0088】
なお、図3(a)に示すように、二又状施術部3の下方突起6側の基部3aだけでなく上方突起5を外方へ向けて膨出形成することで上方突起5側にも基部3bを形成してもよく、この上下基部3a、3bにより棒状の把持部2を把持した場合の丸めた手掌握部の幅員及び手掌幅員は二又状施術部3の上下基部3a、3bとグリップ部4の上下基部4a、4bとに密着して各基部同士の間に収まり手掌握部での把持応力をより確実に得ることもできる。
【0089】
また、他の変形例として図14(c)の断面図に示すように、棒状の把持部2は略平板状としその厚み(図中、A-A断面で示す。)は二又状施術部3とグリップ部4の肉厚部に比し膨大した肉厚部形状に形成してもよい。
【0090】
更に、図14(a)及び図14(b)に示すように、二又状施術部3は前端に向かっては漸次先鋭状とすると共に、最前端部分は平面視アール形状、側面視前端漸次肉薄状に形成することとすれば、患部の施術有効点に適確に定置することができると共に、患部に不要な過度の刺激を付与することなく患部皮下組織に有効に二又状施術部3を機能させることができる。
【0091】
また、図3に示すように、グリップ部4は平面視略T字形状とし、施術時にはグリップ部4のT字横辺部が施術者手掌に当接し、T字縦辺部が施術者Rの手指間で挟持されるように構成している。二又状施術部3を患部に押圧する際には、図18及び図19に示すように、施術者手掌と施術者Rの手指間でグリップ部4を把持して支持する。
【0092】
また、グリップ部4のT字横辺部は湾曲状として首基部の皮下組織(経絡)を押圧刺激可能に構成することとすれば、把持部2を前後反転して把持することによりグリップ部4を把持部2の先端方向に位置すれば後頭部とは異なる首筋近傍の患部皮下組織の施術に利用することができ施術器本体1の有効利用の範囲を拡大することができる。
【0093】
また、他の実施例として図15に示すように、二又状施術部3の上下方突起5、6は扁平状とし、扁平先端縁は肉厚中央部を凹状に形成することにより扁平両側面に左右両側突縁部5b、5c、6b、6cを形成してもよい。
【0094】
さらに、他の実施例として図16に示すように、二又状施術部3の上下方突起5、6において、上方突起5は、扁平状の肉厚より左右外方に突出した二又状に拡開して2つ形成してもよい。すなわち皮下組織療法施術器Aを同2つの上方突起50、51と1つの下方突起6とにより三脚状としてもよい。
【0095】
2つの左右上方突起50、61は、施術器本体1の厚み方向で下方突起6の前端6a位置を中心位置とし、それぞれの前端5b、5cを中心位置から左右側に配置するよう施術器本体1の扁平肉厚より厚み方向左右外方へ二又状に突出形成している。
【0096】
〔2.皮下組織療法施術器を使用した臨床実施態様〕
次に本発明の皮下組織療法施術器Aを患者の頭部に応用する場合の臨床実施態様について具体的に説明する。
【0097】
患者は、図4図6、及び図22に示すように、各区分帯の施術に合わせて体勢で寝台に寝る。すなわち、第1区分帯C1及び第2区分帯C2の施療にあたっては図4に示したよう後頭部を上に向けた俯せ寝状態、第3区分帯C3の施療にあたっては図5に示すように前頭部を上に向けた仰向寝状態、第4区分帯C4の施療にあたっては図6に示すように側頭部を上に向けた横向寝状態とする。
【0098】
このような状態において4区分帯を本発明の皮下組織療法施術器Aにより図7の矢印方向、すなわち、頭蓋骨表面に対して垂直方向に押圧刺激することにより施術がなされる。
【0099】
まず、図17に示すように施術器本体1の把持部2を手掌握部で把持し二又状施術部3を頭部の所定位置に当てる。特に二又状施術部3の上方突起5は頭頂部に近い上方に位置し、下方突起6は頸部等に近い下方に位置する。
【0100】
第1区分帯では、左右側頭骨B4、B4’間の頭蓋底B1を層状に被覆する後頭下筋群M1部分で、且つ頭項線中の下項線D1と頭項線中の上項線D2との間に位置する表面湾曲状エリアの押圧を行う。すなわち図4及び図22に示すように、第1区分帯C1における療法では、第1区分帯C1と第2区分帯C2との境界線を跨いで長い方の下方突起6が第1区分帯C1の経絡に、また短い方の上方突起5が第2区分帯C2の経絡にそれぞれ当接する間隔を二又状施術部3の前端間隔(先端間隔)として刺激療法を行う。
【0101】
より具体的には、第1区分帯C1と第2区分帯C2との境界線である上項線D2を跨ぐように、二又状施術部3の上方突起5の前端5aを第2区分帯の帽状腱膜M2後部或いは後頭筋M3に分布する経絡に当接すると共に下方突起6の前端6aを第1区分帯C1の後頭下筋群M1に分布する経絡に当接して、各エリアに分布する経絡を押圧施術する。
【0102】
施術箇所の位置決めに際しては、図4に示すように、まず二又状施術部3の上方突起5の前端5aを第2区分帯の帽状腱膜M2後部或いは後頭筋M3の経絡に押し当てた状態で皮下組織療法施術器Aを上方(図4中、破線矢印方向)に移動し、帽状腱膜M2或いは後頭筋M3を介して後頭下筋群M1を緊張させる。
【0103】
次いで、第1区分帯C1における緊張状態の後頭下筋群M1に下方突起6を押し当てることで、各区分帯に分布する経絡同士を二又状施術部3で把握するようにして確実に捉える。
【0104】
しかもこの状態において、把持部2の押圧応力の推進方向はうつ伏せの患者の頭部頭蓋骨に対して垂直方向に向くように使用する。
【0105】
特に第1区分帯における療法では、第1区分帯C1の後頭下筋群M1の表面湾曲状エリアと、第2区分帯の帽状腱膜M2後部或いは後頭筋M3の表面湾曲状エリアに沿って二又状施術部3を左右方向に少しずつ横移動しながら後頭部を横断していく。
【0106】
横移動に際しては、図20に示すように、第1区分帯C1と第2区分帯C2とでそれぞれ左右7つの経絡ポイント(経絡上のつぼ)、左右合計14経絡ポイントの位置の皮下脂肪組織を押圧して刺激施術を行う。
【0107】
更には、第1区分帯C1と第2区分帯C2との各ポイントにおいて二又状施術部3の上方突起5を第2区分帯C2の帽状腱膜M2後部或いは後頭筋M3、下方突起6を第1区分帯C1の後頭下筋群M1とに交互に又は同時に押圧応力をかける。
【0108】
すなわち、まず第2区分帯C2の帽状腱膜M2後部或いは後頭筋M3を二又状施術部3の上方突起5により、また、第1区分帯C1の後頭下筋群M1を下方突起6によりそれぞれ押圧刺激するに際し、図21に示すように、把持部2を挺子の力点、短めの上方突起5の前端5aを挺子の支点、長めの下方突起6の前端6aを挺子の作用点として患部を押圧刺激する。
【0109】
次いで、その反対に長手状の下方突起6の前端6aを支点とし上方突起5の前端5aを作用点として押圧刺激することにより上下各突起5、6を交互に押圧支点と押圧作用点となるように押圧刺激点を変更しながら施術を行う。
【0110】
すなわち、第2区分帯C2の帽状腱膜M2後部或いは後頭筋M3と第1区分帯C1の後頭下筋群M1との各ポイントにおいて、上方突起5による押圧力は頭蓋冠後半部B2外側面上の帽状腱膜M2或いは後頭筋M3に、下方突起6による押圧力は頭蓋底B1外底面上の後頭下筋群M1に対してそれぞれ垂直方向に作用する。
【0111】
その結果、第2区分帯C2の帽状腱膜M2後部或いは後頭筋M3に分布する経絡は上方突起5により頭蓋冠側面に垂直に、第1区分帯C1の後頭下筋群M1に分布する経絡は下方突起6により頭蓋底B1外底面を押し上げるように、それぞれ頭部横断方向に沿って順次押圧刺激されることとなる。
【0112】
このように、上下方突起5、6の長さを異にし、施術時に各上下方突起5、6を交互に支点、作用点が変位するようにしたことにより、略球面の頭蓋骨表面に対して少ない交互の押圧動作で支点と作用点の入れ替え動作が可能となる。
【0113】
特に、上方突起5を支点とし下方突起6を作用点として二又状施術部3を患部に作用させることから、その押圧力を複数の筋肉が層状に重なり合う後頭下筋群M1の深部、すなわち下層位置にある筋肉まで作用させることができる。
【0114】
次に第2区分帯C2では、左右側頭骨B4、B4’間の頭蓋冠後半部B2を被覆する後頭筋M3部分と帽状腱膜M2部分で、且つ頭項線中の上項線D2と前頭筋M4との間におけるエリアと、左右側頭骨B4、B4’のエリアとの各エリアで区画された表面湾曲状エリアの押圧を行う。具体的には、図4に示すように第2区分帯C2における療法では、第2区分帯C2のエリア内において各前後方向に散在する前後経絡に当接する間隔を二又状施術部3の前端間隔として刺激施術を行う。
【0115】
この状態における把持部2の押圧応力の軸線方向はうつ伏せの患者の頭部頭蓋骨の第2区分帯に対する垂直方向、言い換えれば、起立状態の人体頭部の第2区分帯略水平横断方向に向くように使用する。
【0116】
すなわち、第2区分帯C2のエリア内において各前後方向に散在する前後経絡の間隔に合わせて、頭蓋骨の前後方向で二又状施術部3の帽状腱膜M2頭頂部側に上方突起5を、帽状腱膜M2前頭部側、または帽状腱膜M2後頭部側、或いは後頭筋M3に下方突起6をそれぞれあてがい施術する。
【0117】
施術箇所の位置決めに際しては、図4に示すように、まず二又状施術部3の上方突起5の前端5aを頭頂部側に位置する帽状腱膜M2の経絡に押し当てた状態で皮下組織療法施術器Aを頭頂部側(図4中、第2区分帯における破線矢印方向)に移動し、上方突起5の帽状腱膜M2或いは後頭筋M3を緊張させる。
【0118】
次いで、第2区分帯における緊張状態の帽状腱膜M2或いは後頭筋M3に下方突起6を押し当てることで、各区分帯に分布する経絡同士を二又状施術部3の上下方突起5、6で把握するように確実に捉える。
【0119】
しかも、第2区分帯C2における療法では第2区分帯C2のエリア内において各前後方向に散在する前後経絡を横断するように二又状施術部3を左右方向に少しづつ横移動しながら第2区分帯C2の表面湾曲状エリアを横断施術していく。
【0120】
但し、必要によってはかかる横断施術ではなく所定のポイントのみを選択して施術することも可能である。所定の施術ポイントは第2区分帯C2における経絡(つぼ)に沿って有効な皮下組織施術に適合するポイントとし、この位置は施術者の知見と経験により選択特定されるものである。
【0121】
更には、第2区分帯における療法では、表面湾曲状エリアの各ポイントにおいて二又状施術部3の上方突起5を頭頂部側の帽状腱膜M2に分布する経絡に、下方突起6を後頭部側又は前頭部側の帽状腱膜M2、或いは後頭筋M3に分布する経絡とに、交互に又は同時に押圧応力をかける。
【0122】
特に、頭頂部側の帽状腱膜M2に分布する経絡を二又状施術部3の上方突起5により、後頭部側又は前頭部側の帽状腱膜M2、或いは後頭筋M3に分布する経絡を下方突起6により押圧刺激するに際しては、第1区分帯で説明したのと同様、図21に示すように、まず短手状の上方突起5の前端5aを支点とし長手状の下方突起6の前端6bを作用点として押圧刺激し、次いでその反対に長めの下方突起6を支点とし上方突起5の前端5aを作用点として押圧刺激することにより上下各突起5、6を交互に押圧支点と押圧作用点となるように押圧刺激点を変更しながら頭部を横断するように施術を行う。
【0123】
次に第3区分帯C3では、左右側頭骨間の頭蓋冠前半部B3を被覆する前頭筋M4部分で区画された表面湾曲状エリアの押圧を行う。すなわち、第2区分帯C2と第3区分帯C3との境界線D4に沿って短い方の上方突起を変位させながら長い方の下方突起が第3区分帯C3の経絡に当接する間隔を二又状施術部3の前端間隔として押圧刺激施術を行う。
【0124】
より具体的には、図5に示すように二又状施術部3の上方突起前端5aを第2区分帯C2と第3区分帯C3との境界線D3(帽状腱膜M2と前頭筋M4との境界)に分布する経絡に当接すると共に下作方突起前端6aを第3区分帯C3の前頭筋M4に分布する経絡に当接して経絡を捉える。
【0125】
施術箇所の位置決めに際しては、第1、2区分帯と同様に、図5に示すように、まず二又状施術部3の上方突起前端5aを第2区分帯と第3区分帯との境界線D3に押し当てた状態で皮下組織療法施術器Aを頭頂部側に上方移動し、第3区分帯の前頭筋M4を頭頂部側に引っ張り上げるように緊張させる。
【0126】
次いで、第3区分帯C3における緊張状態の前頭筋M4に下方突起6を押し当てることで、第2区分帯C2と第3区分帯C3との境界線D3と第3区分帯C3に分布する経絡同士を二又状施術部3で把握するようにして確実に捉える。
【0127】
この状態における把持部2の押圧応力の軸線方向は仰向けの患者の頭部頭蓋骨の第3区分帯C3に対する垂直方向、言い換えれば、起立状態の人体頭部の第3区分帯水平横断方向に向くように使用する。すなわち、第2区分帯C2と第3区分帯C3との境界線D3と第3区分帯C3の前頭筋M4との経絡同士の間を跨ぐように二又状施術部3をあてがって施術する。
【0128】
しかも、特に第3区分帯における療法では第2区分帯C2と第3区分帯C3との境界線D3に沿って短い方の上方突起5を変位させながら長い方の下方突起6が第3区分帯C3の経絡に当接する間隔に沿って二又状施術部3を左右方向に少しづつ横移動しながら頭頂部を横断していく。
【0129】
但し、必要によってはかかる横断施術ではなく所定のポイントのみを選択して施術することも可能である。所定の施術ポイントは第3区分帯における経絡に沿って有効な皮下組織施術に適合するポイントとし、この位置は施術者Rの知見と経験により選択特定されるものである。
【0130】
更には、第3区分帯における療法では第2区分帯C2と第3区分帯C3との各ポイントにおいては、図21に示すように二又状施術部3の上方突起5と下方突起6をそれぞれとに交互に又は同時に押圧応力をかける。
【0131】
特に、第2区分帯C2と第3区分帯C3との境界線D3を二又状施術部3の上方突起5により、第3区分帯の前頭筋M4を下方突起6により押圧刺激するに際しては第1、2区分帯で説明したと同様にまず短手状の上方突起前端5aを支点とし下方突起前端6aを作用点として押圧刺激し、次いでその反対に長めの下方突起前端6aを支点として上方突起5を作用点として押圧刺激することにより上下各突起5、6を交互に押圧支点と押圧作用点となるように押圧刺激点を変更しながら施術を行う。
【0132】
次に第4区分帯C4では、図6に示すように、左右側頭骨B4、B4’を被覆する側頭筋M5、M5’部分で区画された表面湾曲状エリアの押圧を行う。すなわち、第4区分帯C4における療法では、第2区分帯C2と第4区分帯C4との境界線D4に沿って短い方の上方突起5を変位させながら長い方の下方突起6が第4区分帯C4の経絡に当接する間隔を二又状施術部3の前端間隔として左右それぞれに刺激療法を行う。
【0133】
より具体的には、二又状施術部3の上方突起前端5aを第2区分帯C2と第4区分帯C4との境界線D4(帽状腱膜M2と側頭筋M5との境界)に分布する経絡に当接すると共に下方突起前端6aを第4区分帯C4の前頭筋M4に分布する経絡に当接して、各エリアに分布する経絡を捉える。
【0134】
施術箇所の位置決めに際しては、第1~3区分帯と同様に、図6に示すように、まず二又状施術部3の上方突起前端5aを第2区分帯C2と第4区分帯C4との境界線D4に押し当てた状態で皮下組織療法施術器Aを頭頂部側に上方移動し、第4区分帯C4の側頭筋M5を頭頂部側に引っ張り上げるように緊張させる。
【0135】
次いで、第4区分帯C4における緊張状態の側頭筋M5に下方突起6を押し当てることで、第2区分帯C2と第4区分帯C4との境界線D4と第4区分帯C4に分布する経絡同士を二又状施術部3で把握するようにして確実に捉える。
【0136】
この状態における把持部2の押圧応力の軸線方向は頭部を横向きにしたうつ伏せの患者の頭部頭蓋骨の第4区分帯C4に対する垂直方向、言い換えれば、起立状態の人体頭部の第4区分帯水平横断方向に向くように使用する。すなわち、第2区分帯C2と第4区分帯C4との境界線D4と第4区分帯C4の側頭筋M5との経絡同士の間を跨ぐように二又状施術部3をあてがって施術する。
【0137】
特に第4区分帯C4における療法では第2区分帯C2と第4区分帯C4との境界線D4に沿って短い方の上方突起5を変位させながら長い方の下方突起6が第4区分帯C4の経絡に当接する間隔に沿って二又状施術部3を前後に少しずつ移動しながら頭頂部を前後方向に横断していく。
【0138】
但し、必要によってはかかる横断施術ではなく所定のポイントのみを選択して施術することも可能である。所定の施術ポイントは第4区分帯における経絡に沿って有効な皮下組織施術に適合するポイントとし、この位置は施術者Rの知見と経験により選択特定されるものである。
【0139】
更には、第4区分帯における療法では第2区分帯C2と第4区分帯C4との各ポイントにおいては二又状施術部3の上方突起5と下方突起6をそれぞれとに交互に又は同時に押圧応力をかける。
【0140】
特に、第2区分帯C2と第4区分帯C4との境界線D4を二又状施術部3の上方突起5により、第4区分帯の側頭筋M5を下方突起6により押圧刺激するに際してはまず短手状の上方突起前端5aを支点とし下方突起前端6aを作用点として押圧刺激し、次いでその反対に長めの下方突起前端6aを支点として上方突起5を作用点として押圧刺激することにより上下各突起5、6を交互に押圧支点と押圧作用点となるように押圧刺激点を変更しながら施術を行う。
【0141】
上記のように第1区分帯から第4区分帯の各エリアにおいて二又状施術部3による施術が行われるものであるが、施術器本体1の使用に際しては膨大した肉厚部形状の把持部2を左手の手のひらで握りうつ伏せに寝た患者の頭部に対して二又状施術部3を垂直に当てる。
【0142】
同時に右手の手のひらを二又状施術部3の基部のグリップ部4の後端、例えばグリップ部のT字横辺部に当てて把持部2を後端方向から押圧しながら左手で把持部2を介して二又状施術部3を患者の頭部に押圧し所定の皮下組織に療養刺激を行う。
【0143】
しかも、二又状施術部3の上方突起5は把持部2の軸線方向に沿って突出させると共に、下方突起は把持部の軸線方向に対して約40°~60°傾斜して設けたため、各区分帯に対して施術器本体1を垂直に押し当て把持部2の軸線方向に押圧応力をかけた際の押圧応力をより均等に上下方突起5、6を介して的確に患部に伝え、各区分帯のエリアにおける皮下組織の経絡等を刺激することができる。
【0144】
また、施術器本体1は素材を樹脂とし、二又状施術部3の機能表面は滑り摩擦が大となるような粗造面30に形成し、先端に向かっては漸次先鋭状とすると共に、最先端部分は平面視アール形状、側面視先端漸次肉薄状としたことにより、患部に二又状施術部3を押し当て長さの異なる上下方突起5、6をそれぞれ交互に支点と作用点の各機能を果たすように操作使用するときに重量感を持って正確な押圧操作ができると共に、支点と作用点となる上下方突起前端5a、6aが滑動して患部からずれる虞がなく皮下組織に有効な刺激作用を確実に付与し、皮下組織刺激による現代病療法施術が可能となる。
【0145】
また、湾曲状としたグリップ部4のT字横辺部は首の基部の皮下組織を押圧刺激に使用することも可能である。
【0146】
また、二又状施術部3の上下方突起5、6は扁平状とし、扁平先端縁は肉厚中央部を凹状に形成することにより扁平両側面に左右両側突縁部5b、5c、6b、6cを形成して、頭蓋骨表面の皮膚接点が多い分摩擦抵抗を大として安定した押圧力を患部に対してかけることも可能である。
【0147】
〔3.皮下組織療法施術器における表面粗さの測定〕
次に、本実施例に係る皮下組織療法施術器において、二又状施術部の機能表面に形成した粗造面の表面粗さの検証を行なった。
【0148】
検証に用いた皮下組織療法施術器は、二又状施術部の上下方突起前端の機能表面としてサンドブラスト処理して粗造面を形成したもの、3Dプリンタにより上下方突起前端に上下方向に沿った微細な凹凸の粗造面を形成したものとした。また、比較用に、硬質プラスチックで扁平状に金型成形され、端縁に複数の押圧突部を有したかっさプレートを測定に供した。
【0149】
皮下組織療法施術器の二又施術部における粗造面の測定は、表面粗さ・輪郭形状統合測定機((株)東京精密 Surfcom5000DX)を用い、測定器の計測針にて平面視で上下方突起表面をそれぞれ外側から二又の谷部、二又の谷部から外側へとなぞることを複数回(それぞれ5回)実施することで行った。また、表面粗さは、JIS B6001-2001に準じて算術平均高さ(Ra)として算出した。同様に、比較用のかっさプレートの表面粗さの測定は、上記測定方法に準じて行い、Raを算出することにより行った。
【0150】
その結果、皮下組織療法施術器における二又施術部の粗造面の表面粗さはRa 10μm~35μmの範囲、特にRa 15μm~30μmの範囲で多く検出された。また、皮下組織療法施術器の外観は、施術器本体全体の粗造面に由来するくすんだ色合いを呈していた。
【0151】
一方で、比較用のかっさプレートは、外観に光沢があり、表面粗さはRa 0.04μm~0.2μmの範囲で皮下組織療法施術器の低い値を示した。
【0152】
このような結果から本発明にかかる皮下組織療法施術器では、表面粗さRa 10μm~35μmの粗造面に由来する凸部が患部の皮膚組織にくい込み皮膚面を滑らずに掴むようにして皮下組織療法施術器を安定状態とし、凸部から直接的に皮下組織に押圧力を付与して人体有用機能部に押圧刺激を与えて整体施術効果を向上することが示唆された。
【0153】
〔4.皮下組織療法施術器の評価〕
次に、皮下組織療法施術器の評価を行った。評価に用いる器具は、皮下組織療法施術器として粗面加工を施さない施術器S1、表面粗さRa 10μm~35μmの粗面加工を施した施術器S2、また、比較用として〔3.皮下組織療法施術器における表面粗さの測定〕に供した比較用かっさプレートとした。
【0154】
皮下組織療法施術器の評価は、各器具を用いて〔2.皮下組織療法施術器を使用した臨床実施態様〕で示した押圧施術をした場合において、施療者の操作性の観点評価と被施療者の被施療感の観点評価とに分けて行なった。
【0155】
施療者の操作性の観点評価は、施療者5名によりそれぞれが担当する被施療者の頭皮表面での器具の安定感やグリップ感を総合的に判断して1~5の5段階評価とし、数値が大きいほど安定性やグリップ性が高い印象であることとした。その結果を表1に示す。
【表1】
【0156】
表1からも分かるように、施術器S1及び施術器S2は、比較用かっさに比して施術者にとっていずれも安定性やグリップ性が高い印象であることが示された。
【0157】
特に、粗面加工を施していない施術器S1より粗面加工を施した施術器S2の方が、施術時の安定性やグリップ性が良好で、違和感なく少ない応力で押圧施療がしやすいとの回答が複数あった。
【0158】
次に、被施療者の被施療感の観点評価を行なった。被施療者の被施療感の観点評価は、上述した各施療者がそれぞれ担当した被施療者5名による器具先端から伝わる感覚、すなわち器具の突起部分による被掴持感、器具による頭皮突っ張り操作時の頭皮の緊張感、器具による頭皮への押圧感を総合的に判断して1~5の5段階評価とし、数値が大きいほど頭皮の被掴持感や緊張感、押圧感といった被施療感が高い印象であることとした。その結果を表2に示す。
【表2】
【0159】
表2からも分かるように、施術器S1及び施術器S2は、施療者の操作性の観点評価と同様にその被施術者にとっても、比較用かっさに比して被施療感が高い印象であることが示された。
【0160】
また、粗面加工を施していない施術器S1よりも粗面加工を施した施術器S2の方が、二又施術部を頭皮表面に押し当てられた際にはあたかも手指により区分帯における頭皮を掴みこまれた状態で押圧されている感覚であるとの回答が複数あった。
【0161】
以上のことから、本実施形態にかかる皮下組織療法施術器は、従来のマッサージ器としての「かっさプレート」のように、単に「押す」、「摩る」といった従来の役割を果たしてマッサージ効果を得ようとするものとは根本的に異なり、「皮膚のストレッチ状況下」で「押す」「回す」「引き寄せる」ことによりその下の組織が押圧方向から逃れることなく圧縮されることが示唆された。
【0162】
特に、皮下組織療法施術器において、二又状施術部の機能表面を滑り摩擦が大となるような粗造面に形成したことにより、頭皮を皮下組織ごと掴み、同組織を押し潰す様に最大限に引っ張った上で押し回すことができることが判明した。
【0163】
このように、本発明に係る皮下組織療法施術器によれば、二又状施術部により頭蓋骨の球表面をなぞりながら患部を押圧刺激しながら施術し、頭蓋骨に対して最も押圧応力のかかる方向をうつ伏せに寝た患者の頭部の垂直方向、すなわち、患者の起立姿勢での頭部水平方向を4区分帯に区分けしこの4区分帯を頭蓋骨の後面部から頭頂部にかけて皮下組織の刺激療法をすることができる効果がある。
【0164】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0165】
A 皮下組織療法施術器
1 施術器本体
2 把持部
3 二又状施術部
4 グリップ部
5 上方突起
6 下方突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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