(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】レンズ保持枠およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20240625BHJP
G02B 25/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
G02B7/02 A
G02B25/00
(21)【出願番号】P 2020138291
(22)【出願日】2020-08-18
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】597033731
【氏名又は名称】株式会社オーツカ光学
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島▲崎▼ 竜也
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-130311(JP,U)
【文献】実開昭61-070824(JP,U)
【文献】特開昭55-057808(JP,A)
【文献】実開昭61-165513(JP,U)
【文献】国際公開第2016/204188(WO,A1)
【文献】特開平03-223707(JP,A)
【文献】実開昭58-067305(JP,U)
【文献】中国実用新案第203608236(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/00 - 7/24
H01F 27/00 - 27/06
G02B 9/00 - 17/08
G02B 25/00 - 25/04
G02C 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズの外周部に対向方向から嵌める2つの枠構成部品と前記2つの枠構成部品を連結する連結構造とからなるレンズ保持枠であって、
各前記枠構成部品
は、
その内周面に
形成された、前記レンズの外周部を嵌挿するための保持溝
と、
前記保持溝における底面に
形成されたバネ用凹部と、
前記バネ用凹部の底面から突出形成されて、前記レンズの外周面に対し弾性的に当接する板バネ状のバネ部
と、
を有し、
前記レンズの外周部を前記枠構成部品の前記保持溝に嵌挿した状態において、前記バネ部が
前記バネ用凹部内で弾性的に変形しつつ、前記レンズの外周面に対し弾性反発力を発揮することで、前記レンズが前記レンズ保持枠内で光軸方向に対し直角方向に遊動することを抑えることを特徴とするレンズ保持枠。
【請求項2】
前記バネ部の先端は、鋭角に形成されて傾斜面を有しており、前記レンズの外周部を前記枠構成部品の前記保持溝に嵌挿する際、前記バネ用凹部内で弾性的に変形する過程において、前記傾斜面に前記レンズの外周部が接触することを特徴とする請求項1記載のレンズ保持枠。
【請求項3】
前記バネ部が前記底面から垂直方向に向けて突出形成されるとともに、外力により前記底面側に傾斜変形させることが可能であることを特徴とする請求項1または2記載のレンズ保持枠。
【請求項4】
前記バネ部が前記底面から斜め上方に向けて突出形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のレンズ保持枠。
【請求項5】
前記枠構成部品の前記保持溝に前記レンズの外周部を嵌挿していく過程で、前記バネ部が前記レンズの外周面に押圧されることによって、前記底面側に傾斜変形することを特徴とする請求項1,2,3または4記載のレンズ保持枠。
【請求項6】
前記レンズおよび連結された前記枠構成部品に形成された前記保持溝が平面視において角丸四角形であって、前記バネ
用凹部が前記枠構成部品の前記保持溝における屈曲部に形成されるとともに、
前記バネ部が前記レンズの挿入方向と平行する方向に突出して形成され
ており、前記枠構成部品の前記保持溝に前記レンズの外周部を嵌挿していく過程で、前記バネ部が前記レンズの外周面に押圧されることによって前記
バネ用凹部の底面側に傾斜変形することを特徴とする請求項1または2記載のレンズ保持枠。
【請求項7】
前記保持溝の側面所定位置に所定高さで突出した弾性を有する突条部が形成されているとともに、前記突条部が前記レンズの加工で想定される寸法公差の最小側を基準として前記レンズが光軸方向に遊動しない高さ及び位置に配置されており、前記保持溝内へ前記レンズの外周部を嵌挿することにより前記レンズの外周部側面に当接した前記突条部が前記寸法公差の大きさに応じて潰れながら、前記レンズが前記レンズ保持枠の前記保持溝内で光軸方向に遊動することを抑えることを特徴とする
請求項1,2,3,4,5または6記載のレンズ保持枠。
【請求項8】
前記連結構造が、一方の前記枠構成部品の両端面と他方の前記枠構成部品の両端面とに形成された凸形状と凹形状の組合せであって、
前記凸形状が前記端面から突設したアームの先端に鈎構造を設けてなる連結アームであり、前記凹形状が前記端面に開口して前記連結アームを挿入可能な形状および深さを有しながらその内部に前記鈎構造を掛止させる掛止構造を設けてなる連結孔であり、
2つの前記枠構成部品を内周側に前記レンズを挟み込みながら、対向している前記枠構成部品の前記両端面同士を突き合わせ、前記連結アームを前記連結孔に挿入して前記鈎構造を前記掛止構造に掛止させることで、対向した前記端面同士が密着した状態にて2つの前記枠構成部品の連結作業が完了することを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6または7記載のレンズ保持枠。
【請求項9】
2つの前記枠構成部品が同一形状および同一サイズであることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7または8記載のレンズ保持枠。
【請求項10】
前記枠構成部品が硬質合成樹脂により一体的に射出成型されていることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8または9記載のレンズ保持枠。
【請求項11】
請求項4に記載のレンズ保持枠の製造方法であって、前記バネ部が前記底面から垂直方向に突出する前記枠構成部品を射出成形した後に、前記枠構成部品の前記バネ部に外力を加えて底面側に傾斜させることにより、底面から斜め上方に向けて突出させることを特徴とするレンズ保持枠の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズの外周部を保持して所定の機器にレンズを交換可能に装着および固定させるために用いられるレンズ保持枠およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば拡大鏡などのようにレンズ交換が可能な機器やレンズの固定が必要な光学機器等において、その所定位置に目的のレンズを正確かつ安定的に装着・固定させるために、レンズの外周部を嵌め込んで保持する構造を備えたレンズ保持枠を介して装着されることが行われている。
【0003】
また、前記光学機器で使用されるレンズは、その加工時に寸法上の公差が生じるのが一般的であるが、レンズ側でその加工精度を高めて高い装着精度を実現することはコストアップに繋がりやすい。そこで、レンズを保持する枠体(鏡枠)側でレンズの装着精度を高めて装着後のガタつき等の不具合を解消することが、様々な方式を用いながら行われており、例えば、樹脂製のレンズ保持枠においては、接着剤でレンズを枠体側に固定する方式のほか、特開2015-16001号公報に記載されているように、枠体を縮径方向に締めるようにしてねじ止めする方式や、特開2014-174224号公報に記載されているように、枠体に設けたカシメ用突起部を熱溶融させてレンズを固定するカシメ方式が知られており、いずれの方式も部品点数の増加を抑えながら、枠体にレンズを固定可能としており、金属製のレンズ保持枠においては、例えば実開平7-26811号公報に記載されているように、枠体に載せたレンズをレンズ押え環で固定することで、レンズのガタつきを解消しながら高い装着精度を実現している。或いは、実開平3-71316号公報に記載されているように、ゴム等の可撓性素材からなるレンズ保持枠にレンズを嵌め込んで固定する方式も知られており、部品点数を削減しながら製造の手間を軽減可能としている。
【0004】
しかしながら、前記従来の接着方式、ねじ止め方式、カシメ方式においては、製造上の工程数を増加させてコスト高に繋がりやすいことに加え、清掃性・メンテナンス性を低下させやすくなるという難点がある。また、レンズ押え環を装着する方式においては、枠体やレンズ押え環の嵌合部へのねじ切り等の加工を行う工程に加え、外観の表面処理等の工程も必要となるため、さらにコスト高となり易い。
【0005】
一方、ゴム素材等の可撓性を有したレンズ保持枠による方式では、レンズの装着作業自体は容易になるものの、例えば角型レンズのゴム枠においてはその長辺側を把持した際にゴムがめくれやすくなって、レンズの保持が困難な状態となりやすい。その対策として、ゴム枠を太くしたりゴムの硬度を高めたりすることも考えられるが、これでは可撓性を有したレンズ保持枠としての実用性を低下させる結果となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-16001号公報
【文献】特開2014-174224号公報
【文献】実開平7-26811号公報
【文献】実開平3-71316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するものであり、部品点数と工程上の手間を低減して製造コストを抑えながら、レンズの取付精度を確保できるようにするレンズ保持枠およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するためになされた本発明であるレンズ保持枠は、レンズの外周部に対向方向から嵌める2つの枠構成部品と前記2つの枠構成部品を連結する連結構造とからなるレンズ保持枠であって、前記枠構成部品の内周面にレンズの外周部を嵌挿するための保持溝が形成されるとともに、前記保持溝における底面に前記レンズの外周面に対し弾性的に当接する板バネ状のバネ部が突出形成されており、前記レンズの外周部を前記枠構成部品の前記保持溝に嵌挿した状態において、前記バネ部が前記レンズの外周面に対し弾性反発力を発揮することで、前記レンズが前記レンズ保持枠内で光軸方向に対し直角方向に遊動することを抑えることを特徴とする。
【0009】
本発明は、前記レンズが前記レンズ保持枠内に保持された状態において、前記バネ部が前記レンズの外周面に当接して弾性反発力を発揮することによって前記レンズのレンズ保持枠内での光軸方向と直角方向(平面方向)への遊動(いわゆるガタつき)を抑える構成であり、前記バネ部が前記レンズの加工時に生ずる平面方向の寸法上の公差を吸収した上で前記レンズの外周面に当接し、弾性反発力によって押圧してガタつきを抑えることとなるため、レンズ側でその加工精度を高めたり、枠体を縮径方向に締めるなどの製造上の手間やコストを要することなく、前記2つの枠構成部品を突き合わせて連結するだけでガタつきを抑えることが実現できる。
【0010】
また、本発明において、前記バネ部が、前記保持溝の底面に形成されたバネ用凹部内の底面から突出形成されていることを特徴とする場合には、前記バネ部が前記レンズの外周面に押されて前記バネ用凹部内に収容されることで、前記レンズの外周面が前記保持溝の前記バネ用凹部以外の底面全体に密接することができるため、バネ部によるガタつきが生じることが無く、しかも前記バネ用凹部内に収容される前記バネ部が前記レンズの外周面に対して常に弾性的に押圧する十分なバネ機能を発揮することができる。
【0011】
更に、本発明において、前記バネ部が前記底面から垂直方向に向けて突出形成されるとともに、外力により前記底面側に傾斜変形させることが可能であることを特徴とする場合には、当初から前記底面から斜め方向に向けて突出形成されている場合に比べて大きな弾発力を発揮可能であり、また前記バネ部にアンダーカット成型箇所がないのでスライド機構を要さない金型で成形できるので生産コストを軽減することもできる。
【0012】
また、本発明において、前記バネ部が前記底面から斜め外上方に向けて突出形成されている場合には、当初から前記バネ部が傾斜しているので、外力によって傾斜変形させる必要が無く、レンズを挟み込みながら前記保持溝に前記レンズの外周部を嵌挿していくことで、バネ部がレンズの外周面に対し弾性的に当接し、レンズの外周面にバネ作用を発揮させることができることから作業能率の向上を図ることができる。
【0013】
また、本発明において、当初から前記バネ部が傾斜している場合は、前記底面から垂直方向に向けて突出形成したままの場合のように、その形成位置によっては、前記レンズを挿入した際に前記レンズの外周面が前記バネ部を垂直方向に押圧することになって前記バネ部が潰れてしまい、弾性反発力を発揮できなくなるといったことも生じない。
【0014】
更にまた、本発明において、前記枠構成部品の前記保持溝に前記レンズの外周部を嵌挿していく過程で、前記バネ部が前記レンズの外周面に押圧されることによって、前記底面側に傾斜変形することを特徴とする場合は、前記バネ部が、前記枠構成部品により前記レンズを挟み込みながら前記保持溝に前記レンズの外周部を嵌挿していく組立過程で、前記レンズの外周面に押圧されることによって自然に底面側に傾斜変形する位置に形成されていることで、前記バネ部が前記レンズに垂直方向から押されて潰れた状態となってバネ性を発揮できないままレンズを挟み込むことがなく、しかもわざわざ事前に前記バネ部を外力で斜めに倒すという作業工程を必要とせず、前記バネ部が確実に前記レンズの外周面に当接して底面側に傾斜変形しながら弾性反発力を発揮することができる。
【0015】
特に、本発明において、前記レンズおよび連結された前記枠構成部品に形成された前記保持溝が平面視において角丸四角形であって、前記バネ部が前記枠構成部品の前記保持溝における屈曲部に形成されるとともに、前記レンズの挿入方向と平行する方向に突出して形成され、前記枠構成部品の前記保持溝に前記レンズの外周部を嵌挿していく過程で、前記バネ部が前記レンズの外周面に押圧されることによって、前記底面側に傾斜変形することを特徴とする場合には、前記バネ部が角丸四角形の屈曲部に形成されるため、前記レンズを光軸方向に対し直角方向であって対角線方向に押圧することになるため、角丸四角形の直線部に位置するよりも効率的で確実にレンズの遊動を抑えることができる。
【0016】
更に、前記バネ部が、屈曲部において前記レンズの挿入方向と平行する方向に突出して形成されるため、前記枠構成部品を射出成形した場合に前記バネ部にアンダーカット箇所がなく、前記枠構成部品を金型から離型するだけで製造することができる。
【0017】
しかもバネ部をこのように屈曲部において前記レンズの挿入方向と平行する方向に突出して形成することで、製造後に前記バネ部を傾斜させる作業は必要とせず、前記レンズを前記枠構成部品の保持溝に嵌挿していくだけで、前記バネ部が前記レンズの外周面に押圧されて自然に前記枠構成部品の開口方向の底面側に傾斜変形して前記レンズの外周面に弾性当接することになるため、レンズ保持枠の製造からレンズを嵌めて保持するまでの工程が極めて簡単となる。
【0018】
更にまた、本発明において、前記保持溝の側面所定位置に所定高さで突出した弾性を有する突条部が形成されているとともに、前記突条部が前記レンズの加工で想定される寸法公差の最小側を基準として前記レンズが光軸方向に遊動しない高さ及び位置に配置されており、前記保持溝内へ前記レンズの外周部を嵌挿することにより前記レンズの外周部側面に当接した前記突条部が前記寸法公差の大きさに応じて潰れながら、前記レンズが前記レンズ保持枠の前記保持溝内で光軸方向に遊動することを抑えることを特徴とすることで、精度高いレンズの加工を要することなく組立後にレンズが光軸方向すなわち厚さ方向にガタつくのを低減することができる。
【0019】
加えて、本発明のレンズ保持枠を構成する前記連結構造が、一方の前記枠構成部品の両端面と他方の前記枠構成部品の両端面とに形成された凸形状と凹形状の組合せであって、前記凸形状が前記端面から突設したアームの先端に鈎構造を設けてなる連結アームであり、前記凹形状が前記端面に開口して前記連結アームを挿入可能な形状および深さを有しながらその内部に前記鈎構造を掛止させる掛止構造を設けてなる連結孔であり、2つの前記枠構成部品を内周側に前記レンズを挟み込みながら、対向している前記枠構成部品の前記両端面同士を突き合わせ、前記連結アームを前記連結孔に挿入して前記鈎構造を前記掛止構造に掛止させることで、対向した前記端面同士が密着した状態にて2つの前記枠構成部品の連結作業が完了することにした場合には、その連結構造を枠構成部品の一部として一体的に成形できるとともに、その連結作業を前記レンズ保持枠に前記レンズを嵌める作業と連続して一つの作業工程で容易に行えるようにしながら堅固な連結、固定状態を実現することができる。ことに、連結作業が、前記両端面同士を突き合わせて一方の端面の凸形状を他方の端面の凹形状に挿入・掛止するだけで連結作業が完了するものとしたことで、これらを連結してレンズを保持する際には、ねじ止め作業、接着作業、カシメ作業等の工程が不要になるとともに、作業用の治具も不要になるため、製造上の手間とコストを大きく低減しながら、高い取付精度を実現可能である。
【0020】
また、本発明において、2つの前記枠構成部品が相互に同一形状および同一サイズであると、枠体を構成する部品が一種類の金型だけで作成可能なものとなり、製造上の手間とコストを大きく低減可能である。
【0021】
更にまた、本発明において、前記バネ部が前記底面から垂直方向に突出する前記枠構成部品を射出成形した後に、前記枠構成部品の前記バネ部に外力を加えて底面側に傾斜させることにより、底面から斜め上方に向けて突出させることを特徴とするレンズ保持枠の製造方法によれば、枠構成部品のバネ部にアンダーカット成型箇所がないのでスライド機構を要さない金型で成形できるので生産コストを軽減することができるばかりかレンズを挟み込みながら前記保持溝に前記レンズの外周部を嵌挿していく際にバネ部が潰れることなくレンズの外周面に弾性的に当接して確実にバネ作用を発揮させることができる。
【0022】
また、本発明において、前記枠構成部品および前記連結構造が硬質合成樹脂の射出成形により一体成型されることを特徴とするレンズ保持枠の製造方法によれば、ゴム製のようにめくれが生じることも無く、レンズの保持が強固であって、製造工程やコストも低減できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明であるレンズ保持枠およびその製造方法によれば、部品点数と工程上の手間を低減して製造コストを抑えながら、レンズの取付精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明であるレンズ保持枠の好ましい実施の形態を示す斜視図であり、(A)はレンズを保持した状態に組立てる前の状態を示し、(B)はレンズを保持した状態に組立後の状態を示す。
【
図2】
図1に示した実施の形態のレンズ保持枠を構成する1対の枠構成部品の詳細な構成を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示した実施の形態のレンズ保持枠の枠構成部品にレンズを装着する際の保持溝内の状態を説明するための横断面図およびその一部を拡大した部分図である。
【
図4】
図3の状態からレンズをバネ部に当接するまで保持溝中に挿入した状態を示す横断面図およびその一部を拡大した部分図である。
【
図5】
図4の状態からレンズを更に奥まで挿入してバネ部を圧縮した状態を示す横断面図およびその一部を拡大した部分図である。
【
図6】本発明であるレンズ保持枠の枠構成部品についての異なる実施の形態についてのレンズ保持枠の枠構成部品にレンズを装着する際の保持溝内の状態を説明するための横断面図およびその一部を拡大した部分図である。
【
図7】
図1に示した実施の形態のレンズ保持枠の枠構成部品に形成した突条部の詳細な構成を説明するための斜視図およびその一部を拡大した部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0026】
図1はレンズおよび連結した前記枠構成部品が角丸四角形である本発明におけるレンズ保持枠1の好ましい実施の形態を示すものであり、レンズ50の外周部を保持して例えば拡大鏡のアーム先端側にレンズを装着・固定する手段などの用途に用いられる(図示せず)。
【0027】
図1(A)は、平面視が略コ字状を呈した枠構成部品2,2で平面視が角丸四角形の凸型のレンズ50を保持する前の状態を示すものであり、レンズ保持枠1は例えばポリプロピレン(PP)などの柔軟性と機械的強度を有する硬質合成樹脂により角丸四角形の枠体状に成形されて、内周面にレンズ50の外周部を嵌挿する保持溝21を備えている。
【0028】
また、レンズ保持枠1は、
図1(A)に示すように同一形状・同一サイズの2つの枠構成部品2,2を平面において互いに対称に対向させて配置して連結し、
図1(B)に示すように組み立てたときに前記レンズ50に外装する平面視角丸四角形の枠状に形成してなるものであり、各枠構成部品2は、保持される角丸四角形のレンズ50の外周部を短辺の中央位置で2等分した範囲を挿入して保持可能な形状およびサイズを有しており、互いに連結する両端面には、組合せる枠構成部品2の端面側と連結するための凸形状である連結アーム22a,22bと凹形状である連結孔23a,23bの組合せにより構成される連結構造を備えている。
【0029】
そして、前記2つの枠構成部品2,2をレンズ50の外周部に装着するには、前記2つの枠構成部品2,2を対向させた内周側に、保持するレンズ50の外周部を保持溝21,21に嵌挿するように挟み込みながら、一方の枠構成部品2における端面側の連結アーム22a,22bを他方の枠構成部品2における端面側の連結孔23b,23aに互いに挿入するとともに、他方の枠構成部品2における端面側の連結アーム22b,22aを一方の枠構成部品2における端面側の
連結孔23a,23bに挿入するだけで連結作業が完了して、
図1(B)に示すように、レンズ50を保持した状態で固定される。
【0030】
このように、本実施の形態は、レンズ50を保持した状態で固定する硬質合成樹脂製の枠体を、同一部品である2つの枠構成部品2,2から構成し、その連結する端面側に連結構造を設けて連結アーム22a,22bを連結孔23b,23aに挿入することで連結作業が完了し、レンズ50が保持された状態で固定される方式を採用したことにより、レンズ50を保持・固定するための枠体の構成部品が、一種類の金型だけで作成可能であり、レンズ保持枠1の製造コストを低廉に抑えることができる。
【0031】
また、枠構成部品2,2の連結作業でレンズ50を保持・固定する際には、ねじ止め作業、接着剤による接着作業、カシメ作業などの工程が不要になるとともに、その連結作業に使用する治具も不要となるため、製造上の手間とコストをさらに低減可能なものとしながら、レンズの取付精度を確保しやすいものとなる。
【0032】
連結構造について更に詳細に説明すると、本実施の形態は、
図2に示すように、前記平面視がコ字状を呈した枠構成部品2の両端面から突設した連結アーム22a,22bの先端側に鈎構造221,222が各々設けられており、全体としてスナップフックを構成している。
【0033】
また、前記連結アーム22aを設けた端面には連結孔23aが開口されているとともに連結アーム22bを設けた端面にも連結孔23bが開口されており、一つの端面に連結アームと連結孔が一対で配置されていることで、全体として4つの連結構造を備えたものとなっており、均等で確実な連結を実現しているが、連結構造の数はこれに限らない。
【0034】
そして、前記連結孔23a,23bは、前記連結アーム22b,22aを挿入可能な形状および深さを有しながら、その内部には連結アーム22b,22a先端側の鈎構造222,221が各々掛止する掛止構造が設けてあり、連結アーム22b,22aを連結孔23a,23bに挿入して鈎構造222,221を掛止構造に掛止させることで、対向した端面同士が密着した状態で1対の枠構成部品2,2の連結作業を完了させるものであり、ネジや接着剤の使用を不要として連結作業の容易化を実現しながら、堅固な連結状態を確保可能なものとしている。
【0035】
また、前記連結構造は、硬質合成樹脂成形品である枠構成部品2の一部として金型を用いた射出成型などにより一体的に成形可能であるため、これらを設けるために部品点数と作業工程の増加を伴わない。
【0036】
尚、前記連結孔23a,23bは、
図2に示したように、その先端側が枠構成部品2の外周面に開口しており、その開口部分を介して連結アーム22b,22aの鈎構造222,221を掛止構造から外すことで、その連結状態を外側から解除することもできるので、レンズ50の保持と解除が簡単で、レンズの交換も容易である。
【0037】
また、前記連結構造は、連結アームと連結孔によるスナップフックとしたが、本発明の連結構造はこれに限らず2つの枠構成部品2,2を連結できればよいので、他の凹凸形状による係止や両端面を接着するなど他の手段でもよい。
【0038】
更に、本実施の形態であるレンズ保持枠1は、
図3に示すように、前記枠構成部品2の屈曲部における保持溝21の底面にバネ用凹部211が形成されるとともに、バネ用凹部211の底面に、嵌挿されるレンズ50の外周面に対し弾性的に当接する板バネ状のバネ部210a,210bが、レンズ50の挿入方向と平行する方向に突出して形成されている。
【0039】
そして、
図4に示すように、レンズ50を保持溝21内に保持させるためにその外周部を挿入していくと、保持溝21に形成されたバネ用凹部211の底面からレンズ50に向かって突出しているバネ部210a,210bの先端にレンズ50の外周面が当接し、さらに深く挿入すると、
図5に示すようにバネ部210a,210bは、レンズ50の角Rに沿って弾性的に当接しながら、バネ用凹部211内であって枠構成部品2の開口方向の底面側に傾斜変形するようになっている。
【0040】
このとき、バネ部210a,210bの先端は鋭角に形成されているため、レンズ50と当接しながらレンズ50の角Rに沿って弾性的に底面側に変形する際にスムーズに滑って変形しやすい。
【0041】
また前記バネ部210a,210bは、屈曲部において前記レンズの挿入方向と平行する方向に突出して形成される形状であるため、前記枠構成部品を射出成形してレンズの挿入方向に離型すれば、前記バネ部にアンダーカット箇所がなく、前記枠構成部品を金型から離型するだけで製造することができる。
【0042】
しかも前記バネ部210a,210bは、前記レンズ50を前記枠構成部品2の保持溝21に嵌挿していくだけで、前記レンズ50の外周面に押圧されて、自然に傾斜変形して前記レンズの外周面に弾性的に当接することになるため、製造後レンズを嵌挿する前に前記バネ部を傾斜させるための作業は必要とせず、レンズ保持枠の製造からレンズを嵌めて保持するまでの工程が極めて簡単となる。
【0043】
以上のように、レンズ50を枠構成部品2,2の内周側に挟み込みながら保持溝21に嵌挿させて連結すると、バネ部210a,210bがレンズ50の外周面に押されて傾斜変形しつつレンズ50の外周面に対し押し戻すように弾性反発力を発揮するため、各レンズが製造上の寸法公差を有していても、バネ部210a,210bは公差を吸収してレンズ50の外周面に常に弾性的に当接することにより、枠構成部品2,2内で保持されたレンズ50が保持溝21,21内で広さ方向に遊動してガタつきが生じるのを防止する機能を発揮する。
【0044】
更に、本実施の形態では、バネ部210a,210bが枠構成部品2の屈曲部における保持溝21に形成されているため、バネ部210a,210bの弾性反発力がレンズ50の対角線方向に働くことから、対向辺方向のみに働く場合と比較して、効率よく遊動を抑えて保持を安定させることができ、4カ所の屈曲部に形成すれば、極めて効果的となる。
【0045】
また、本実施の形態では、バネ部210a,210bが保持溝21の底面に形成したバネ用凹部211内の底面に形成されているため、レンズ50の外周面が保持溝21のバネ用凹部211以外の底面に当接するまで嵌挿された状態でも、バネ部210a,210bはレンズ外周面を押し戻すように弾性反発力を発揮して当接しながら傾斜変形して、バネ用凹部211内に収容されるので、レンズ50の外周面が保持溝21の底面に密接することが妨げられることが無く、レンズ50は安定して保持される。
【0046】
尚、本実施の形態では、バネ部210a,210bがバネ用凹部211内であって枠構成部品2の開口方向の底面側に傾斜変形するが、バネ部210a,210bが反対方向(枠構成部品2の奥方向)に傾斜変形してもよい。
【0047】
図6は、本発明における各枠構成部品2の異なる実施の形態を示すものであり、全体の構成は前記
図1乃至
図5に示した実施の形態と略同様であるが、板バネ状のバネ部210c,210c,210cが枠構成部品2の突き当りの直辺における保持溝21の底面から垂直方向に向けて突出している点が異なる。
【0048】
この実施の形態では、バネ部210c,210c,210cが突き当りの直辺から垂直方向に突出しているので、このままレンズ50を嵌挿すると、レンズ50の外周面でバネ部210c,210c,210cを潰してしまうので、レンズを嵌挿する前に、外力(例えば工具を介して手で曲げる)を加えて図の鎖線で示すように予め底面側に倒す作業が必要とはなるが、射出成型により製造する際にアンダーカット箇所が無くスライド機構を設けない金型で製造可能であるから、経済的に優れているという利点を有している。
【0049】
他方、当初からバネ部を底面から斜め方向に突出するように形成して製造した場合は(図示せず)、製造後にバネ部を傾斜変形させる必要は無い。
【0050】
尚、このバネ部210a,210b,210cも、例えば枠構成部品2の本体部分と一体的に形成した金型を用いた射出成形により容易且つ多量に製造することができる。
【0051】
更にまた、
図7は、本実施の形態において各枠構成部品2の保持溝21内に配設したもう一つのガタつき防止構造を示すものであり、各枠構成部品2における保持溝21の側面に、所定高さで突出した突条部220a,220bが枠構成部品2と一体的に成形されている。
【0052】
この突条部220a,220bは、レンズ50の加工工程において生じることが想定される厚さ方向の最小側の寸法公差を基準として、レンズ50が光軸方向に遊動しないように規制する高さ及び位置にて配設されており、保持溝21内にレンズ50の外周部を嵌挿する際、レンズ外周部の側面が当接して突条部220a,220bが押圧され、レンズ加工上の公差の大きさに応じて潰れつつ反発力を発揮するようになっている。
【0053】
即ち、枠構成部品2と一体的に成形されて柔軟性を有する硬質合成樹脂素材からなる突条部220a,220bが、レンズ50の挿入動作によりその厚さに応じて潰れつつ反発することで、レンズ50が光軸(スラスト)方向に遊動するのを抑制する機能を発揮するものであり、レンズ50に光軸方向のガタつきが生じることを低減している。そのため、前述したバネ部210a,210b,210cの機能と相俟って、固定対象であるレンズ50において高い加工精度を要さずとも、レンズ保持枠に安定して保持することができる。
【0054】
以上のように、本発明によると、レンズ保持枠について、部品点数と工程上の手間を低減して製造コストを抑えながら、レンズの取付精度を充分に確保することができるようになった。
【0055】
尚、本実施の形態は本発明を平面視において角丸四角形の所謂角型レンズについて実施した場合を示したが、本発明は角型レンズに限らず例えば円形レンズのように異なる形状のレンズについても同様に実施することができるものであり、また、レンズの材質も問わない。
【0056】
更に、本実施の形態では、枠構成部品2,2を成形する合成樹脂材料としてポリプロピレン(PP)を用いたので柔軟性を備えながら機械的強度を確保しやすい点で好適であるが、本発明はこれに限らず他の素材を用いてもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0057】
1 レンズ保持枠、2 枠構成部品、21 保持溝、22a,22b 連結アーム、23a,23b 連結孔、50 レンズ、210a,210b,210c バネ部、220a,220b 突条部、211 バネ用凹部、221,222 鈎構造