IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 岡本株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-靴下 図1
  • 特許-靴下 図2
  • 特許-靴下 図3
  • 特許-靴下 図4
  • 特許-靴下 図5
  • 特許-靴下 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】靴下
(51)【国際特許分類】
   A41B 11/00 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
A41B11/00 G
A41B11/00 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020142785
(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公開番号】P2022038338
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】592154411
【氏名又は名称】岡本株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】吹上 正人
(72)【発明者】
【氏名】澤田 匡弘
(72)【発明者】
【氏名】今尾 聖太郎
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3211891(JP,U)
【文献】特開2020-084370(JP,A)
【文献】特開2020-029637(JP,A)
【文献】登録実用新案第3158946(JP,U)
【文献】特開2013-213301(JP,A)
【文献】登録実用新案第3137194(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0167462(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B11/00-11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
足の指を収容する少なくとも1つの指袋と、
前記指袋と接続され、前記足のうち前記指以外を覆う本体部と、を備え、
前記指袋の少なくとも1つの一対の指側面部は、足幅方向を向く前記指の側面を覆い、
少なくとも一方の該指側面部の少なくとも一部に、前記指袋の立体形状を保持する形状保持部が形成され
前記形状保持部は、前記指袋のうち前記指側面部のみに形成されることを特徴とする靴下。
【請求項2】
足の指を収容する少なくとも1つの指袋と、
前記指袋と接続され、前記足のうち前記指以外を覆う本体部と、を備え、
前記指袋には、前記指袋の立体形状を保持する形状保持部が形成され
前記指袋の少なくとも1つの一対の指側面部は、足幅方向を向く前記指の側面を覆い、少なくとも一方の該指側面部の少なくとも一部に前記形状保持部が形成され、
前記形状保持部は、熱融着糸が溶融した硬化領域であり、
前記硬化領域は、前記指袋のうち前記指側面部のみに形成されることを特徴とする靴下。
【請求項3】
前記形状保持部は、形態安定性を有する糸から構成されることを特徴とする請求項1に記載の靴下。
【請求項4】
少なくとも2つの前記指袋を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の靴下。
【請求項5】
前記硬化領域は、前記指の付け根部分を覆う付け根被覆部に形成されることを特徴とする請求項2に記載の靴下。
【請求項6】
前記硬化領域は、前記少なくとも一方の指側面部の全面に形成されることを特徴とする請求項2または5に記載の靴下。
【請求項7】
前記硬化領域は、全ての前記指側面部の全面に形成されることを特徴とする請求項2または5に記載の靴下。
【請求項8】
前記形態安定性を有する糸は、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を含む編地から構成されることを特徴とする請求項3に記載の靴下。
【請求項9】
前記靴下のうち、前記足の中足趾節関節を覆う部分よりも前記指袋側にある部分のみが、前記形態安定性を有する糸から構成されることを特徴とする請求項3またはに記載の靴下。
【請求項10】
前記本体部は、
前記足の中足趾節関節を覆う第1伸張部と、
前記本体部のうち前記第1伸張部以外の部分である第2伸張部と、を有し、
前記第1伸張部は、前記第2伸張部が有する伸張力よりも強い伸張力を有することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の靴下。
【請求項11】
前記指袋が横編み編成され、前記第2伸張部のうち前記指袋と前記第1伸張部との間の中間部分が横編み編成されると共に、
前記靴下のうち、前記指袋及び前記中間部分以外の部分が丸編み編成されることを特徴とする請求項10に記載の靴下。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は靴下に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、足の五本指に対応する各指袋が爪先側に設けられた靴下が開示されている。特許文献1に開示の靴下において、各指袋に対して形状記憶加工が施される、または、形状記憶繊維もしくは金属製繊維が織り交ぜられることにより、各指袋の形状が各足の指に対応するサイズの筒状に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3211891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の靴下では、各指袋に対して形状記憶加工等が施されるため、ユーザが靴下を履いたとき、形状記憶加工された繊維等によってユーザによる靴下の履き心地が悪くなるという問題がある。
【0005】
本発明の一態様は、ユーザによる靴下の良好な履き心地を維持した上で、ユーザが指袋に足の指を入れ易くなり靴下を履き易くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る靴下は、足の指を収容する少なくとも1つの指袋と、前記指袋と接続され、前記足のうち前記指以外を覆う本体部と、を備え、前記指袋には、前記指袋の立体形状を保持する形状保持部が形成される。
【0007】
指袋の立体形状を保持する形状保持部が指袋に形成されることにより、指袋が立ち上がると共に、ユーザによる靴下の履き心地を損なうことを低減することができる。このため、ユーザによる靴下の良好な履き心地を維持した上で、ユーザが指袋に足の指を入れ易くなり靴下を履き易くすることができる。
【0008】
前記指袋の少なくとも1つの一対の指側面部は、足幅方向を向く前記指の側面を覆い、少なくとも一方の該指側面部の少なくとも一部に前記形状保持部が形成され、前記形状保持部は、熱融着糸が溶融した硬化領域であってもよい。
【0009】
指側面部の少なくとも一部に熱融着糸が溶融した硬化領域が形成されることにより指側面部の少なくとも一部が硬化して指袋が立ち上がる。また、指側面部の少なくとも一部が硬化するため、ユーザによる靴下の履き心地を損なうことを低減することができる。このため、ユーザによる靴下の良好な履き心地を維持した上で、ユーザが指袋に足の指を入れ易くなり靴下を履き易くすることができる。
【0010】
前記形状保持部は、形態安定性を有する糸から構成されてもよい。形状保持部が形態安定性を有する糸から構成されることにより、指袋が立ち上がると共に、ユーザによる靴下の履き心地を損なうことを低減することができる。このため、ユーザによる靴下の良好な履き心地を維持した上で、ユーザが指袋に足の指を入れ易くなり靴下を履き易くすることができる。
【0011】
前記靴下は、少なくとも2つの前記指袋を備えてもよい。これにより、靴下が2つ以上の指袋を備える場合であっても、ユーザが靴下を履き易くなる。
【0012】
前記硬化領域は、前記指の付け根部分を覆う付け根被覆部に形成されてもよい。指袋を立ち上がらせるためには、硬化領域が、指の付け根部分を覆う付け根被覆部に形成されることが効果的である。
【0013】
前記硬化領域は、前記少なくとも一方の指側面部の全面に形成されてもよい。硬化領域が、指側面部の全面に形成されることにより、指側面部の全面が硬化して指袋が立ち上がる。これにより、指袋を効果的に立ち上がらせることができ、ユーザが靴下を履き易くなる。
【0014】
前記硬化領域は、全ての前記指側面部の全面に形成されてもよい。硬化領域が、全ての指側面部の全面に形成されることにより、全ての指側面部の全面が硬化して指袋が立ち上がる。これにより、指袋を効果的に立ち上がらせることができ、ユーザが指袋に足の指を入れ易くなり靴下を履き易くなる。
【0015】
前記硬化領域は、前記指袋のうち前記指側面部のみに形成されてもよい。硬化領域が、指袋のうち指側面部のみに形成されることにより、硬化領域が指袋全体に形成される場合に比べて、ユーザによる靴下の良好な履き心地を維持することができる。
【0016】
前記形態安定性を有する糸は、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を含む編地から構成されてもよい。指袋が、形態安定性を有する糸としてポリトリメチレンテレフタレート繊維を含む編地から構成されることにより、ユーザによる靴下の良好な履き心地を維持することができる。
【0017】
前記靴下のうち、前記足の中足趾節関節を覆う部分よりも前記指袋側にある部分のみが、前記形態安定性を有する糸から構成されてもよい。上記構成によれば、ユーザが指袋に足の指を入れ易くなり靴下を履き易くすることを実現するために必要な部分のみを、形態安定性を有する糸から構成することができる。
【0018】
前記本体部は、前記足の中足趾節関節を覆う第1伸張部と、前記本体部のうち前記第1伸張部以外の部分である第2伸張部と、を有し、前記第1伸張部は、前記第2伸張部が有する伸張力よりも強い伸張力を有してもよい。第1伸張部は第2伸張部に比べて強い伸張力を有するため、第1伸張部によって足の中足趾節関節が締め付けられる。これにより、ユーザが靴下を履いたときに、足の指が外側に広がり易くなり、指袋に足の指を入れ易くなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、ユーザによる靴下の良好な履き心地を維持した上で、ユーザが指袋に足の指を入れ易くなり靴下を履き易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態1に係る靴下の構成を示す斜視図である。
図2図1に示す靴下が備える指袋を示す図である。
図3】足の中足趾節関節を説明する図である。
図4図1に示す靴下の変形例1としての靴下を示す斜視図である。
図5図1に示す靴下の変形例2としての靴下を示す斜視図である。
図6】本発明の実施形態2に係る靴下の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔実施形態1〕
<靴下1の構成>
図1は、本発明の実施形態1に係る靴下1の構成を示す斜視図である。図2は、図1に示す靴下1が備える指袋10Aを示す図である。図1において、靴下1が足を覆っている状態で、指袋10Eから指袋10Aに向かう方向をXの正の方向、指袋10から本体部20に向かう方向をYの正の方向、靴下1の足裏に対応する部分から足の甲に対応する部分に向かう方向をZの正の方向とする。
【0022】
また、X方向は足幅方向、つまり、足の指が並ぶ方向であり、Y方向は足長方向、つまり、足の指から足の甲に向かう方向である。図1の符号101は、靴下1をXの正の方向側から見た斜視図であり、図1の符号102は、靴下1をXの負の方向側から見た斜視図である。
【0023】
図1に示すように、靴下1は指袋10及び本体部20を備える。実施形態1において、靴下1は、横編み編成されている。つまり、靴下1は、靴下を横編みで製造する横編み機によって製造されるものである。なお、指袋10の少なくとも一部及び本体部20の少なくとも一部のうち少なくとも一方が横編み編成されていてもよい。例えば、指袋10及び第2伸張部22が横編み編成されると共に、靴下1のうち指袋10及び第2伸張部22以外の部分が丸編み編成されてもよい。
【0024】
<指袋10の構成>
指袋10には、指袋10の立体形状を保持する形状保持部が形成される。実施形態1では、指袋10に、該形状保持部の一例として硬化領域12が形成される場合について説明する。指袋10は、足の5本指に対応した指袋10A,10B,10C,10D,10Eから構成される。指袋10A~10Eはそれぞれ、足の親指,人差し指,中指,薬指,小指を収容する。
【0025】
ここでは、指袋10A~10Eが互いに異なる構成であるものとして説明しない限り、指袋10A~10Eは互いに同様の構成であるものとし、まず、指袋10Aについてのみ説明する。指袋10Aは指側面部11を含む。指側面部11はX方向を向く指の側面を覆う。図2に基づいて指側面部11を説明する。
【0026】
図2において、指袋10AにおけるX方向及びZ方向の中心をC1とし、X方向に平行かつ中心C1を通る軸をA1とする。また、XZ平面上において軸A1とのなす角度がαである2つの軸をそれぞれ、A2,A3とする。指側面部11は、軸A1を含む軸A2と軸A3との間のXZ平面での領域R1をY方向に動かして形成される領域内の指袋10Aの表面である。
【0027】
また、指袋10Aには一対の指側面部11として、指側面部11P,11Mが形成されている。指側面部11PはXの正の方向を向く指の側面を覆い、指側面部11MはXの負の方向を向く指の側面を覆う。指側面部11P,11Mの全面にはそれぞれ硬化領域12が形成されている。硬化領域12は熱融着糸が溶融した領域である。なお、指側面部11P,11Mの少なくとも一方の少なくとも一部に硬化領域12が形成されてもよい。
【0028】
他の指袋10B~10Eについても同様に、一対の指側面部11の両方の全面に硬化領域12が形成されている。つまり、硬化領域12は、指袋10の全ての指側面部11の全面に形成される。これにより、全ての指側面部11の全面が硬化して指袋10が立ち上がる。これにより、指袋10を効果的に立ち上がらせることができ、ユーザが指袋10に足の指を入れ易くなり靴下1を履き易くなる。
【0029】
硬化領域12は、指袋10Aのうち指側面部11P,11Mのみに形成されることが好ましい。他の指袋10B~10Eについても同様である。これにより、硬化領域12が指袋10A全体に形成される場合に比べて、ユーザによる靴下1の良好な履き心地を維持することができる。
【0030】
なお、本発明の一態様は、硬化領域12が指側面部11P,11Mの両方の全面に形成される構成に限定されるものではなく、硬化領域12が指側面部11P,11Mの少なくとも一方の全面に形成される構成も含む。
【0031】
また、硬化領域12は、指袋10A~10Eのうち少なくとも1つの指袋の指側面部11の全面に形成されてもよい。この場合、指袋10A~10Eのうち、薬指,小指をそれぞれ収容する指袋10D,10Eには、特に足の指を入れ難いため、硬化領域12は、指袋10D,10Eの指側面部11の全面に形成されることが好ましい。さらに、硬化領域12は、指側面部11P,11Mの少なくとも一方の全面に形成されてもよい。
【0032】
<硬化領域12の構成>
硬化領域12の熱融着糸は特に限定されず、芯糸と鞘とが融着されて構成されているものでもよく、糸全体が溶融されて構成されているものでもよい。硬化領域12の熱融着糸が、芯糸と鞘とが融着されて構成されているものである場合、芯糸の周りに鞘がコーティングされている。鞘の融点は芯糸の融点よりも低いため、芯糸及び鞘に対して熱処理を施すと、鞘が溶融されて芯糸が残る。
【0033】
硬化領域12の熱融着糸が、糸全体が溶融されて構成されているものである場合、その糸に対して熱処理を施すと、糸全体が溶融される。該糸は、例えばナイロンまたはポリウレタンである。
【0034】
硬化領域12を形成するための熱処理は特に限定されず、例えば、編み上がった靴下に対して蒸気を吹きかけることにより行われてもよく、該靴下を濡らした後にオーブン等で加熱することにより行われてもよい。この熱処理は、硬化領域12を有しない通常の靴下において、該通常の靴下のしわを伸ばす等の目的のために行われる。よって、硬化領域12を形成するために新たな工程が増える訳ではない。
【0035】
硬化領域12は、肌側つまり内側に露出する裏糸と、外側に露出する表糸と、で構成される。硬化領域12において、該裏糸としてFTY(Filament Twisted Yarn)及び1本の熱融着糸を用いる。また、硬化領域12において、該表糸として3本の綿、ポリエステル、ナイロン、ウール等からなる糸またはこれらの混紡糸を用いる。靴下1のうち硬化領域12以外の部分も裏糸及び表糸で構成される。靴下1のうち硬化領域12以外の部分において、該裏糸としてFTYを用いると共に、該表糸として硬化領域12の表糸と同様のものを用いる。
【0036】
<本体部20の構成>
本体部20は指袋10と接続され、足のうち指以外を覆う。つまり、本体部20は指袋10A~10Eと接続される。本体部20は第1伸張部21及び第2伸張部22,23を備える。第1伸張部21は、図3に示す足の中足趾節関節BOを覆う。図3は、足の中足趾節関節BOを説明する図である。第2伸張部22,23は、本体部20のうち第1伸張部21以外の部分である。第1伸張部21は、第2伸張部22,23が有する伸張力よりも強い伸張力を有する。
【0037】
第1伸張部21は第2伸張部22,23に比べて強い伸張力を有するため、第1伸張部21によって足の中足趾節関節BOが締め付けられる。これにより、ユーザが靴下1を履いたときに、足の指が外側に広がり易くなり、指袋10に足の指を入れ易くなる。
【0038】
本体部20は、綿もしくはウール等の天然繊維、ナイロンもしくはポリエステル等の合成繊維、または、レーヨン等の半合成繊維等から構成されている。本体部20は、これらを混紡した紡績糸から構成されてもよい。なお、指袋10のうち硬化領域12以外の部分は、上述の本体部20の素材と同様の素材から構成されてもよい。
【0039】
<変形例1>
図4は、図1に示す靴下1の変形例1としての靴下2,3を示す斜視図である。図4の符号201は靴下2の斜視図であり、図4の符号202は靴下3の斜視図である。図4の符号201に示すように、靴下2は靴下1に比べて、指袋10が指袋10Hに変更されている点が異なる。靴下2は1つの指袋10Hを備える。指袋10Hは足の5本指を収容する。つまり、指袋10Hは、足の親指、人差し指、中指、薬指及び小指を収容する。
【0040】
指袋10Hには一対の指側面部11が形成されている。一方の指側面部11はXの正の方向を向く指の側面を覆い、他方の指側面部11はXの負の方向を向く指の側面を覆う。硬化領域12は、一対の指側面部11の両方の全面に形成されている。なお、硬化領域12は、一対の指側面部11のうち少なくとも一方の指側面部11の全面に形成されてもよい。
【0041】
図4の符号202に示すように、靴下3は靴下2に比べて、指袋10Hが指袋10Iに変更されている点が異なる。指袋10Iは2つの指袋10J,10Kから構成される。指袋10Jは足の親指を収容し、指袋10Kは足の人差し指、中指、薬指及び小指を収容する。指袋10J,10Kのそれぞれには一対の指側面部11が形成されている。指袋10Iの指側面部11及び硬化領域12の構成は、指袋10Hの指側面部11及び硬化領域12の構成と同様である。
【0042】
また、靴下3において、硬化領域12は、指袋10J,10Kのうち少なくとも一方の指袋の指側面部11の全面に形成されてもよい。この場合、指袋10Jは指袋10Kよりも小さく、指袋10J,10Kのうち指袋10Jには、特に足の指を入れ難いため、硬化領域12は、指袋10Jの指側面部11の全面に形成されることが好ましい。靴下1の構成、及び、変形例1の靴下2,3の構成から、靴下は少なくとも1つの指袋を備える。
【0043】
さらに、靴下3において、指袋10Jは足の5本指のうち少なくとも1本の指を収容するものであってもよい。この場合、指袋10Kは足の5本指のうち指袋10Jが収容する指以外の指を収容する。また、靴下3は3つ以上の指袋を備えてもよく、それらの指袋のうち1つの指袋が足の5本指のうち少なくとも1本の指を収容し、他の指袋が、足の5本指のうち該1つの指袋が収容する指以外の指を収容する。上記構成により、靴下は少なくとも2つの指袋を備える。靴下が2つ以上の指袋を備える場合であっても、ユーザが靴下を履き易くなる。
【0044】
<変形例2>
図5は、図1に示す靴下1の変形例2としての靴下4を示す斜視図である。図5に示すように、靴下4は靴下1に比べて、指袋10が指袋10Lに変更されている点が異なる。指袋10Lは、足の5本指に対応した指袋10P,10Q,10R,10S,10Tから構成される。指袋10P~10Tはそれぞれ、足の親指,人差し指,中指,薬指,小指を収容する。
【0045】
指袋10P~10Tのそれぞれには一対の指側面部11が形成されている。指側面部11は付け根被覆部31を含む。付け根被覆部31は足の指の付け根部分を覆う。硬化領域12Aは、付け根被覆部31に形成される。指袋10P~10Tを立ち上がらせるためには、硬化領域12が、指の付け根部分を覆う付け根被覆部31に形成されることが効果的である。なお、指側面部11のうち、付け根被覆部31以外の部分には硬化領域12Aが形成されておらず、該部分は第2伸張部22,23と同様の素材で構成されてもよい。
【0046】
図1に示す硬化領域12、及び、図5に示す硬化領域12Aから、硬化領域は指側面部11の少なくとも一部に形成される。指側面部11の少なくとも一部に熱融着糸が溶融した硬化領域12が形成されることにより指側面部11の少なくとも一部が硬化して指袋が立ち上がる。また、指側面部11の少なくとも一部が硬化するため、ユーザによる靴下の履き心地を損なうことを低減することができる。このため、ユーザによる靴下の良好な履き心地を維持した上で、ユーザが指袋に足の指を入れ易くなり靴下を履き易くすることができる。
【0047】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。図6は、本発明の実施形態2に係る靴下5,6の構成を示す斜視図である。図6の符号301は靴下5の斜視図であり、図6の符号302は靴下6の斜視図である。図6の符号301に示すように、靴下5は指袋40及び本体部50を備える。
【0048】
実施形態2において、靴下5,6は、丸編み編成されている。つまり、靴下5,6は、靴下を丸編みで製造する丸編み機によって製造されるものである。横編み機は靴下の一部のみを編むことができるが、丸編み機は靴下の一部のみを編むことができないため、靴下5,6は指袋全体に一括して糸が編まれる。
【0049】
<指袋40の構成>
指袋40には、指袋40の立体形状を保持する形状保持部が形成される。実施形態2では、該形状保持部の一例として形態安定性を有する糸から構成されるものについて説明する。指袋40は、足の5本指に対応した指袋40A,40B,40C,40D,40Eから構成される。指袋40A~40Eはそれぞれ、足の親指,人差し指,中指,薬指,小指を収容する。指袋40A~40Eは形態安定性を有する糸から構成される。以下、形態安定性を有する糸を形態安定糸と称する。
【0050】
形態安定糸は、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を含む編地から構成される。これにより、指袋40A~40Eが、形態安定糸としてポリトリメチレンテレフタレート繊維を含む編地から構成されるため、ユーザによる靴下5の良好な履き心地を維持することができる。
【0051】
形態安定糸の形状を整えるための熱処理は特に限定されず、例えば、編み上がった靴下に対して蒸気を吹きかけることにより行われてもよく、該靴下を濡らした後にオーブン等で加熱することにより行われてもよい。この熱処理は、形態安定糸から構成されない通常の靴下において、該通常の靴下のしわを伸ばす等の目的のために行われる。よって、形態安定糸を形成するために新たな工程が増える訳ではない。
【0052】
<本体部50の構成>
本体部50は指袋40と接続され、足のうち指以外を覆う。つまり、本体部50は指袋40A~40Eと接続される。本体部50は、第1伸張部21と、前方部分51と、第2伸張部23と、を備える。前方部分51は第2伸張部23と同様の構成であってもよいが、形態安定糸から構成されていてもよい。前方部分51が第2伸張部23と同様の構成である場合、前方部分51は第2伸張部となる。
【0053】
前方部分51が形態安定糸から構成される場合、靴下5のうち、足の中足趾節関節BOを覆う部分としての第1伸張部21よりも指袋40側にある部分のみが、形態安定糸から構成されることになる。これにより、ユーザが指袋40に足の指を入れ易くなり靴下5を履き易くすることを実現するために必要な部分のみを、形態安定糸から構成することができる。
【0054】
なお、靴下5のうち、指袋40から足の指の付け根の近傍を覆う部分までの部分が、形態安定糸から構成されてもよい。つまり、靴下5のうち、足の基節骨を覆う部分よりも指袋40側にある部分のみが、形態安定糸から構成されてもよい。また、指袋40の全体及び本体部50の全体が形態安定糸から構成されてもよく、指袋40の全体のみが形態安定糸から構成されてもよい。指袋40の全体のみが形態安定糸から構成される場合、本体部50の全体は形態安定糸から構成されない。
【0055】
図6の符号302に示すように、靴下6は靴下5に比べて、指袋40が指袋40Fに変更されている点が異なる。指袋40Fは2つの指袋40G,40Hから構成される。指袋40Gは足の親指を収容し、指袋40Hは足の人差し指、中指、薬指及び小指を収容する。指袋40G,40Hは形態安定糸から構成される。
【0056】
靴下5,6のように、実施形態2においては、靴下は少なくとも1つの指袋を備える。また、靴下6において、指袋40Gは足の5本指のうち少なくとも1本の指を収容するものであってもよい。この場合、指袋40Hは足の5本指のうち指袋40Gが収容する指以外の指を収容する。
【0057】
また、靴下6は3つ以上の指袋を備えてもよく、それらの指袋のうち1つの指袋が足の5本指のうち少なくとも1本の指を収容し、他の指袋が、足の5本指のうち該1つの指袋が収容する指以外の指を収容する。上記構成により、実施形態2では、靴下は少なくとも2つの指袋を備える。
【0058】
以上により実施形態2では、指袋が形態安定性を有する糸から構成されることにより、指袋が立ち上がると共に、ユーザによる靴下の履き心地を損なうことを低減することができる。このため、ユーザによる靴下の良好な履き心地を維持した上で、ユーザが指袋に足の指を入れ易くなり靴下を履き易くすることができる。
【0059】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1,2にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、その説明を繰り返さない。実施形態3では、指袋に形成されると共に指袋の立体形状を保持する形状保持部の一例として、可撓性を有する樹脂シートを指袋に熱融着させることにより形成される樹脂硬化部について説明する。
【0060】
該樹脂硬化部は、指袋に該樹脂シートを熱融着させることにより硬化する部分である。樹脂硬化部は、実施形態1で説明した硬化領域が形成される場所と同一の場所に形成されてもよく、実施形態2で説明した形態安定性を有する糸から構成される部分と同一の場所に形成されてもよい。
【0061】
樹脂硬化部は、少なくとも1つの一対の指側面部のうち少なくとも一方の該指側面部の少なくとも一部に形成されてもよく、指袋の全体に形成されてもよい。樹脂シートは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルまたはポリウレタン等の熱可塑性樹脂であってもよい。
【0062】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1~6 靴下
10 指袋
11 指側面部
12、12A 硬化領域
20、50 本体部
21 第1伸張部
22、23 第2伸張部
31 付け根被覆部

図1
図2
図3
図4
図5
図6