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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 9/00 20060101AFI20240625BHJP
   A47C 7/54 20060101ALI20240625BHJP
   A47C 7/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
A47C9/00 Z
A47C7/54
A47C7/00 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021087081
(22)【出願日】2021-05-24
(65)【公開番号】P2022180145
(43)【公開日】2022-12-06
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】591058334
【氏名又は名称】株式会社八木研
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八木 龍一
(72)【発明者】
【氏名】横山 憲二
【審査官】永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-203055(JP,A)
【文献】実開平05-007160(JP,U)
【文献】特開2015-008924(JP,A)
【文献】特開2003-102582(JP,A)
【文献】実開昭63-128847(JP,U)
【文献】特開2004-160066(JP,A)
【文献】特開2012-050721(JP,A)
【文献】特開2009-297276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 9/00
A47C 7/54
A47C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に載置されて使用される椅子であって、
使用者が着座する座部と、
前記座部に接続される脚部と、
前記脚部に接続され、前記床面に載置される支持台と、
前記座部に接続される背凭れ部と
を備え、
前記座部は、前記床面から前記座部の座面までの高さが前記使用者の足裏から膝下までの高さより低くなるように配置され、
前記支持台は、前記支持台の後端が前記座部の後端より後方に位置するように配置され、
前記座部の前方側の先端領域の下方と、前記座部の前方側の先端領域より後方の側方領域の下方において、前記座部と前記床面との間に、前記脚部および前記支持台が存在せず、前記使用者の下腿部の少なくとも一部が挿入可能な空間が形成され、
前記背凭れ部が、後方に向かって凸となるように略円弧状に湾曲しており、
前記椅子が、前記背凭れ部の水平方向の両端から前記背凭れ部に連続して形成される一対の肘掛け部をさらに有し、
前記一対の肘掛け部が、前記背凭れ部から離れるに従って、水平方向で前記座部から離れるように配置され、
前記脚部が、前記支持台から前記背凭れ部まで連続して延びる後方側脚部を備え、
前記後方側脚部が、前記支持台から前記背凭れ部に向かうに従って後方に傾斜しており、
前記座部の上下方向の厚さが、50mm以下であり、
前記床面から前記座部の座面までの高さが、150mm以上、350mm以下である
椅子。
【請求項2】
前記脚部が、前記座部の前方側を支持する前方側脚部を備え、
前記前方側脚部の水平方向の断面が、前後方向に延びるように形成されている、請求項1に記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、旅館の和室などにおいて、周りの景色に違和感なくとけ込み、ゆったりとくつろいで着座するために、たとえば特許文献1に開示されるような、低い高さの座部を有する椅子が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公昭63-20376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるような低い高さの座部を有する椅子は、一般的に、座部が使用者の下腿部の長さよりも低い高さになるように設計されている。そのため、使用者は、足の裏が床面につくように膝を曲げて着座すると、膝が高い位置にきて、いわゆる体育座りのような姿勢になるため、前方の視界が塞がれてしまう。特に女性の場合は、スカートや浴衣などを着用していると、膝が高い位置にくるような姿勢で着座することができない。
【0005】
たとえば、女性の場合、膝が高い位置にくるような姿勢を避けるために、両方の下腿部を揃えて側方から後方に延びるように膝を曲げて(いわゆる横座りのような姿勢で)着座し、あるいは、両方の下腿部をそれぞれ両側の側方から後方に延びるように膝を曲げて(いわゆる割座のような姿勢で)着座することが考えられる。しかし、横座りまたは割座のような姿勢で着座するためには、椅子の前側の脚部が邪魔になって座部の下方に下腿部を挿入することができないので、座部の前方に着座する必要がある。また、男性の場合、両方の下腿部のそれぞれを反対側の側方から後方に延びるように膝を曲げて(いわゆる胡坐のような姿勢で)着座することが考えらえるが、この場合も、前側の脚部が邪魔になって座部の下方に下腿部を挿入することができないので、座部の前方に着座する必要がある。使用者は、座部の前方に着座することによって、座部上で不安定な姿勢となって、ゆったりとくつろぐことができない。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、使用者が、座部の下方に下腿部を挿入して着座することが可能な椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の椅子は、床面に載置されて使用される椅子であって、使用者が着座する座部と、前記座部に接続される脚部と、前記脚部に接続され、前記床面に載置される支持台と、前記座部に接続される背凭れ部とを備え、前記座部は、前記床面から前記座部の座面までの高さが前記使用者の足裏から膝下までの高さより低くなるように配置され、前記支持台は、前記支持台の後端が前記座部の後端より後方に位置するように配置され、前記座部の前方側の先端領域の下方と、前記座部の前方側の先端領域より後方の側方領域の下方において、前記座部と前記床面との間に、前記脚部および前記支持台が存在せず、前記使用者の下腿部の少なくとも一部が挿入可能な空間が形成され、前記背凭れ部が、後方に向かって凸となるように略円弧状に湾曲していることを特徴とする。
【0008】
また、前記椅子が、前記背凭れ部の水平方向の両端から前記背凭れ部に連続して形成される一対の肘掛け部をさらに有し、前記一対の肘掛け部が、前記背凭れ部から離れるに従って、水平方向で前記座部から離れるように配置されることが好ましい。
【0009】
また、前記脚部が、前記支持台から前記背凭れ部まで連続して延びる後方側脚部を備え、前記後方側脚部が、前記支持台から前記背凭れ部に向かうに従って後方に傾斜していることが好ましい。
【0010】
また、前記座部の上下方向の厚さが、50mm以下であることが好ましい。
【0011】
また、前記脚部が、前記座部の前方側を支持する前方側脚部を備え、前記前方側脚部の水平方向の断面が、前後方向に延びるように形成されていることが好ましい。
【0012】
また、前記床面から前記座部の座面までの高さが、150mm以上、350mm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、使用者が、座部の下方に下腿部を挿入して着座することが可能な椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る椅子の斜視図である。
図2図1の椅子の正面図である。
図3図1の椅子の背面図である。
図4図1の椅子の側面図である。
図5図1の椅子の平面図である。
図6図1の椅子の底面図である。
図7図2のA-A線断面図である。
図8図2のB-B線断面図である。
図9図2のC-C線断面図である。
図10図2のD-D線断面図である。
図11図1の椅子の使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る椅子を説明する。ただし、以下の実施形態は一例に過ぎず、本発明の椅子は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本発明の一実施形態に係る椅子1は、図11に示されるように、床面Fに載置され、使用者Uが着座するために使用される。椅子1が載置される床面Fとしては、使用者Uが使用するために椅子1を載置可能な面であれば、特に限定されることはなく、畳、カーペット、木製床材、タイルなどの表面が例示される。なお、本明細書においては、特に限定されることはなく、椅子1が略水平な床面Fに載置されていることを想定して、「上」および「下」という用語を、鉛直方向の「上」および「下」を意味するものとして用い、「前」および「後」という用語を、椅子1に通常の姿勢で着座した状態の使用者Uから見た「前」および「後」を意味するものとして用いる。また、本明細書においては、特に限定されることはなく、椅子1の前後を結ぶ方向を「前後方向」とし、床面Fに沿って前後方向に直交す方向を「幅方向」とし、椅子1の上下を結ぶ方向を「上下方向」する。また、本明細書においては、「水平方向」という用語は、水平面内に含まれる任意の方向を意味するものとして用いる。
【0017】
椅子1は、図1および図11に示されるように、使用者Uが着座する座部2と、座部2に接続される脚部3と、脚部3に接続され、床面Fに載置される支持台4と、座部2に接続される背凭れ部5とを備えている。椅子1は、支持台4が床面Fに接触するように配置されることで、床面Fに載置されて使用される。
【0018】
座部2は、使用者Uが臀部を載せて着座する部位である。座部2は、図1図5に示されるように、上面に使用者Uが臀部を載せて着座する座面2aを有し、下面に脚部3が接続される。なお、本実施形態では、座部2は、接続部材7を介して脚部3が接続されるが、接続部材7を介さずに脚部3が直接接続されてもよい。座部2は、床面Fに載置される支持台4に脚部3を介して接続されることで、床面Fから所定の高さに位置付けられる。座部2は、床面Fから座部2の座面2aまでの高さHが使用者U(たとえば標準的な成人)の足裏から膝下(たとえば脛骨粗面のある位置)までの高さより低くなるように配置される。これにより、使用者Uは、目線を床面Fに近づけて落ち着いて椅子1に着座することができる。特に、たとえば高さが50cmなどの低い高さの机やテーブルに向かって着座するような場合にも、図11に示されるように直角より大きい角度で膝を折り曲げた状態の脚を机やテーブルの下に挿入できるので、机やテーブルに椅子1を近づけて、机やテーブル上で作業できる姿勢で着座することができる。床面Fからの座部2の座面2aまでの高さHは、少なくとも使用者Uの足裏から膝下までの高さより低ければよく、特に限定されることはないが、たとえば使用者Uが目線を床面Fに近づけて落ち着いて着座するという観点から、350mm以下であることが好ましく、320mm以下であることがさらに好ましく、290mm以下であることがよりさらに好ましい。また、床面Fからの座部2の座面2aまでの高さHは、使用者Uが座部2に容易に着座し、座部2から離れて容易に立ち上がるという観点から、150mm以上が好ましく、180mm以上がさらに好ましく、220mm以上がよりさらに好ましい。
【0019】
座部2は、本実施形態では、図1に示されるように、略円形の板状に形成される。座部2が略円形の板状に形成されることで、使用者Uは、着座姿勢のまま座面2aに沿って身体を水平面内で回転したときに、どの回転位置でも、身体の中心から座部2の端縁までの水平距離が略一定となるので、同じように立ち上がることができる。たとえば、低い高さの机やテーブルに椅子1を近づけて着座していて、そこから立ち上がるような場合には、前方にある机やテーブルが障害となるので、椅子1から前方に向かって立ち上がることが難しい。そのような場合には、使用者Uは、着座姿勢のまま身体を水平面内で回転させることで机やテーブルに対して身体の向きを変えて、机やテーブルを避けながら立ち上がる必要がある。本実施形態では座部2が略円形に形成されているので、身体の向きを座部2の前後方向Yから回転させたときに、身体が水平面内のどの方向を向いていても、身体の向く方向の身体の中心から座部2の端縁までの水平距離が変わらないので、椅子1の前方を向いて立ち上がるのと同じように立ち上がることができる。ただし、座部2は、使用者Uが臀部を載せることができれば、その形状は特に限定されることはなく、略矩形状や略楕円形状など他の形状に形成されていてもよい。
【0020】
座部2は、図1図4および図6に示されるように、座部2の前端が支持台4の前端より前後方向Yの前方に位置するように配置される。これにより、座部2の前方側の先端領域2bの下方と、座部2の前方側の先端領域2bより後方の側方領域2cの下方において、座部2と床面Fとの間に、脚部3および支持台4が存在せず、使用者Uの下腿部の少なくとも一部が挿入可能な空間Sが形成される。使用者Uは、図11に示されるように、この空間Sに下腿部を挿入して椅子1に着座することができるので、座部2の適正な位置に着座することができ、着座している際にゆったりとくつろぐことができる。特に、使用者Uは、座部2の先端領域2bおよび側方領域2cの下方に空間Sが形成されることで、着座した際に直角より大きい角度で膝を折り曲げて、座部2の前方から斜め後方に向かって下腿部を挿入することができる。したがって、使用者Uは、たとえば横座り、割座、胡坐などのような姿勢で椅子1に着座することができる。
【0021】
ここで、空間Sは、図1および図4に示されるように、座部2と、座部2を鉛直方向の下方に投影した時の床面F上の投影面との間にあって、脚部3および支持台4が存在しない空間として定義される。このように空間Sが座部2と床面Fとの間に形成されることで、空間が座部2と脚部3や支持台4との間に形成される場合と比べて、座部2の座面2aの床面Fからの高さHが同じであっても、脚部3や支持台4の分だけ空間Sの上下方向の長さを大きくすることができる。それによって、座部2の高さを低くしながらも、使用者Uの下腿部の少なくとも一部を挿入することができる高さを有する空間Sを形成することができる。
【0022】
空間Sは、本実施形態では、図1および図4に示されるように、座部2の先端領域2bおよび側方領域2cと、先端領域2bおよび側方領域2cを鉛直方向の下方に投影した時の床面F上の投影面(図1中、床面F上に点線で示された領域)との間に形成される。座部2の先端領域2bは、図5および図6において良く見ることができるように、支持台4の前端よりも前後方向Yの前方に位置する座部2の全幅領域である。また、座部2の側方領域2cは、先端領域2bよりも後方の領域の中の幅方向Xの側方に位置し、支持台4の水平面内の外縁よりも幅方向Xの外側に位置する領域である。空間Sの水平面内の形状は、座部2の先端領域2bおよび側方領域2cの水平面内の形状に応じて画定され、座部2の先端領域2bおよび側方領域2cの水平面内の形状は、座部2および支持台4の水平面内の形状ならびに座部2および支持台4の相対的位置に応じて画定される。また、空間Sの大きさは、座部2の先端領域2bおよび側方領域2cの水平面内の大きさと、床面Fから座部2の先端領域2bおよび側方領域2cまでの高さにより画定される。空間Sは、本実施形態では、座部2の先端領域2bおよび側方領域2cの下方にのみ形成されている。しかし、空間Sは、少なくとも座部2の先端領域2bおよび側方領域2cの下方に形成されていればよく、先端領域2bおよび側方領域2c以外の座部2の他の領域の下方に形成されていても構わない。
【0023】
空間Sは、座部2の先端領域2bおよび側方領域2cの下方に形成され、使用者Uの下腿部の少なくとも一部を挿入することができればよく、その形状や大きさは特に限定されることはない。そして、空間Sの形状および大きさを画定する要素の1つである座部2の水平面内の形状および大きさも特に限定されることはない。たとえば、座部2の水平面内の形状は、本実施形態では略円形であり、それに伴って空間Sの水平面内の形状は略三日月形状を有している。これにより、使用者Uは、側方から後方にかけて膝を折り曲げやすく、空間Sに下腿部を挿入し易い。ただし、座部2の水平面内の形状は、上述したように、略円形に限定されることはなく、略矩形や略楕円形など他の形状であっても構わない。また、座部2の水平面内の大きさは、使用者Uの下腿部の少なくとも一部を挿入することができる空間Sを形成するように先端領域2bおよび側方領域2cを有し、使用者Uが臀部を載せることができる大きさであれば、特に限定されることはなく、使用者Uの身体の大きさに応じて適宜設定することができる。
【0024】
座部2は、使用者Uが着座した状態で使用者Uを支持する強度を有するような厚さを有していればよく、特に限定されることはないが、座部2の上下方向Zの厚さは、50mm以下であることが好ましい。座部2の上下方向Zの厚さが50mm以下であることで、床面Fからの座部2の座面2aまでの高さHを低くしながらも、使用者Uの下腿部を挿入するための空間Sの高さを確保することができる。その観点から、座部2の上下方向Zの厚さは、40mm以下であることがさらに好ましく、30mm以下であることがよりさらに好ましい。また、座部2は、使用者Uが着座した状態で使用者Uを支持する強度を有していれば、その材質は特に限定されることはなく、木材、樹脂、金属などの任意の材料により形成することができる。なお、座部2は、座面2aに直接使用者Uの臀部が載せられてもよいし、図11に示されるように、座面2aに敷かれたクッションCなどを介して間接的に使用者Uの臀部が載せられてもよい。
【0025】
脚部3は、座部2を所定の高さに位置付け、所定の高さで座部2を支持する部位である。脚部3は、座部2を支持し、座部2を介して、座部2に着座する使用者Uを支持する。また、脚部3は、本実施形態では、背凭れ部5を所定の高さ(たとえば使用者Uが座部2に着座した際の腰および/または背中近傍の高さ)に位置付け、所定の高さで背凭れ部5を支持する。脚部3は、座部2および背凭れ部5を支持することができれば、その構成は特に限定されない。脚部3は、本実施形態では、図1図4に示されるように、椅子1の前方側に位置する一対の前方側脚部31、31と、椅子1の後方側に位置する一対の後方側脚部32、32とを備えている。
【0026】
前方側脚部31は、座部2の前方側を支持する。前方側脚部31は、図1図4に示されるように、上下方向Zに延びるように形成され、その下端が支持台4に固定され、その上端が側方接続部材71を介して座部2に固定される。なお、前方側脚部31の上端は、側方接続部材71を介さずに、座部2に直接固定されてもよい。前方側脚部31は、使用者Uが座部2に着座した際など、負荷がかかったときに、固定箇所が破損しない程度に固定されていれば、その固定方法は特に限定されることはない。前方側脚部31の下端は、木ネジなどの固定具WS(図6参照)により支持台4の上面に固定され、前方側脚部31の上端は、木ネジなどの固定具WS(図6参照)により座部2の下面に固定された側方接続部材71に嵌合により固定される。
【0027】
前方側脚部31は、座部2に使用者Uが着座した状態で座部2および使用者Uを支持することができればよく、その形状は特に限定されることはない。前方側脚部31は、本実施形態では、図1図4図10に示されるように、前方側脚部31の水平方向の断面が前後方向Yに延びるように形成されている。前方側脚部31は、前方側脚部31の断面が前後方向Yに延びることで、幅方向Xに延びる軸を中心とする回転モーメントに対する剛性が高まるので、たとえば座部2の前方側に大きな負荷がかかったとしても、椅子1が前方に傾斜するのを抑制することができる。本実施形態の椅子1は、座部2の前方側の下方に空間Sが形成されているので、前方に傾斜しやすくなっているが、前方側脚部31の断面が前後方向Yに延びることで、前方への傾斜が抑制される。
【0028】
前方側脚部31は、本実施形態では上下方向Zに延びているが、座部2の前方側を支持することができれば、本実施形態に限定されることはなく、上下方向Zから傾斜して延びていてもよい。また、前方側脚部31は、座部2に使用者Uが着座した状態で座部2および使用者Uを支持することができる強度を有していれば、その材質は特に限定されることはなく、木材、樹脂、金属などの任意の材料により形成することができる。
【0029】
後方側脚部32は、座部2の後方側を支持するとともに、背凭れ部5を支持する。後方側脚部32は、図1図4に示されるように、支持台4から背凭れ部5まで他の部材を介することなく連続して延びるように形成され、その下端が支持台4に固定され、その上端が背凭れ部5に固定される。また、後方側脚部32は、その上端と下端との間の中間部において、後方接続部材72を介して座部2に固定される。なお、後方側脚部32の中間部は、後方接続部材72を介さずに、座部2に直接固定されてもよい。後方側脚部32は、少なくとも、使用者Uが座部2に着座した際などに負荷がかかったときに、固定箇所が破損しない程度に固定されていれば、その固定方法は特に限定されることはない。後方側脚部32の下端は、木ネジなどの固定具WS(図6参照)により支持台4の上面に固定され、後方側脚部32の上端は、背凭れ部5に嵌合により固定される。また、後方側脚部32の中間部は、木ネジなどの固定具WS(図6参照)により座部2の下面に固定された後方接続部材72に嵌合により固定される。
【0030】
後方側脚部32は、支持台4から背凭れ部5まで延びていればよく、特に限定されることはないが、本実施形態では、図4に示されるように、支持台4から背凭れ部5に向かうに従って後方に傾斜している。たとえば、以下で詳しく述べるように、使用者Uが後述の肘掛け部6、6に手をかけて立ち上がると、肘掛け部6、6には下向きの押圧力が加わるが、後方側脚部32が後方に傾斜していることで、その押圧力の一部を後方に逃がすことができる。上述したように、本実施形態の椅子1は、座部2の前方側の下方に空間Sが形成されているので、前方に傾斜しやすくなっているが、肘掛け部6、6に加わる下向きの押圧力の一部を後方に逃がすことで、前方への傾斜が抑制される。
【0031】
後方側脚部32は、座部2に使用者Uが着座した状態で座部2および使用者Uを支持し、また、使用者Uが背凭れ部5に負荷をかけた際にその負荷を支持することができれば、その材質は特に限定されることはなく、木材、樹脂、金属などの任意の材料により形成することができる。
【0032】
支持台4は、床面Fに載置され、その上面に脚部3の下端が固定され、脚部3を支持する部位である。支持台4は、脚部3を支持し、脚部3を介して、座部2および背凭れ部5、ならびに座部2に着座する使用者Uを支持する。支持台4は、図1図4および図6に示されるように、支持台4の前端が座部2の前端より前後方向Yの後方に位置するように配置される。これにより、上述したように、座部2の前方側の下方に使用者Uの下腿部の少なくとも一部が挿入可能な空間Sが形成される。また、支持台4は、支持台4の後端が座部2の後端より前後方向Yの後方に位置するように配置される。これにより、椅子1は、後方への傾斜が抑制される。たとえば、後述するように、背凭れ部5に後方への押圧力が加わった場合でも、支持台4の後端が座部2の後端より後方に位置することで、椅子1の後方への傾斜が抑制される。また、上述したように、肘掛け部6、6に加わる下向きの押圧力の一部が、後方に傾斜した後方側脚部32によって後方に逃げた場合も、支持台4の後端が座部2の後端より後方に位置することで、椅子1の後方への傾斜が抑制される。支持台4は、支持台4の前端を座部2の前端より後方に位置付け、支持台4の後端を座部2の後端より後方に位置付けるために、本実施形態では、図4および図6に示されるように、支持台4の水平面内の中心が座部2の水平面内の中心より前後方向Yの後方に位置するように配置される。
【0033】
支持台4は、支持台4の前端が座部2の前端より後方に位置し、支持台4の後端が座部2の後端より後方に位置し、脚部3などを支持する強度を有するように形成されていれば、その形状は特に限定されない。たとえば、支持台4は、板状に形成され、床面Fに接触する下面の略全面が略平坦に形成されることが好ましい。これにより、支持台4は、床面Fに載置されたときに、下面の略全面が床面Fに面接触する。そのため、床面Fに載置された椅子1に使用者Uが着座しても、椅子1の荷重および使用者Uの体重により床面Fを押圧する力が、支持台4の下面の略全面に亘って分散されるので、床面Fが変形する(たとえば畳が凹む)のが抑制される。また、椅子1を移動させようとして、床面F上で支持台4を介して椅子1を摺動させても、床面Fに加わる力が支持台4の下面の略全面に亘って分散されるので、床面Fが傷付くことが抑制される。ただし、支持台4は、脚部3を支持し、脚部3を介して座部2および使用者Uなどを支持することができればよく、必ずしも板状でなくても構わない。支持台4は、たとえば下面の一部だけが略平坦に形成されて、上面が凹凸を有する構造であっても構わない。
【0034】
支持台4は、本実施形態では、図1および図6に示されるように、略円環形の板状に形成されている。支持台4は、その外周が略円形に形成されることで、座部2の下方の空間Sに下腿部を挿入したときに、たとえば踵などが支持台4に当接しても、当接したときの感触を和らげることができる。また、支持台4は、環状に形成されることで、軽量化することができる。ただし、支持台4は、図示された例に限定されることはなく、中実の略円形の板状に形成されてもよいし、略矩形や略楕円形など他の形の板状に形成されてもよい。
【0035】
支持台4の水平面内の大きさは、座部2の下方に空間Sが形成され、座部2より後方に支持台4が突出する大きさであれば、特に限定されることはないが、図6に示されるように、座部2の水平面内の大きさよりも小さいことが好ましい。これにより、空間Sの水平面内の大きさを大きくでき、特に座部2の側方領域2cの水平面内の大きさを大きくすることができる。したがって、使用者Uは、下腿部を椅子1の中心により近づけて膝を折り曲げることができるので、よりくつろいで椅子1に着座することができる。
【0036】
支持台4は、脚部3を支持し、脚部3を介して座部2および使用者Uなどを支持する強度を有していれば、その材質は特に限定されることはなく、木材、樹脂、金属などの任意の材料により形成することができる。
【0037】
背凭れ部5は、使用者Uの腰および/または背中を後方から水平方向に支持する部位である。使用者Uは、座部2に着座し、背凭れ部5に腰および/または背中を凭れかけることにより、ゆったりとくつろぐことができる。背凭れ部5は、図1図4に示されるように、後方側脚部32に固定されて、後方側脚部32を介して座部2に接続される。なお、背凭れ部5は、後方側脚部32ではなく他の部材を介して、または直接、座部2に接続されてもよい。背凭れ部5(腰および/または背中が接する面)は、後方に向かって凸となるように略円弧状に湾曲している。使用者Uは、背凭れ部5が略円弧状に形成されることで、腰および/または背中が部分的に水平面内で囲まれるように側方からも支持されるので、安定して着座することができる。さらに、上述したように、低い高さの机やテーブルに椅子1を近づけて着座している場合に、立ち上がる際に机やテーブルを避けるために座部2の座面2a上で着座したまま身体を回転させる必要があるが、その際にも略円弧状の背凭れ部5を利用することで身体を回転させやすくなる。本実施形態の椅子1のように、直角より大きい角度で膝を折り曲げて着座している場合、脚で床面Fに力強く踏ん張ることができないために、脚の力だけで着座姿勢のまま身体を回転させることが難しい。その際に、略円弧状の背凭れ部5に腰および/または背中を押し付けることにより、腰および/または背中が背凭れ部5に案内されて、身体を容易に回転させることができる。また、このように背凭れ部5に腰および/または背中を押し付けても、支持台4が座部2より後方に突出していて、椅子1の後方への傾斜が抑制されているので、使用者Uは安心して腰および/または背中を背凭れ部5に押し付けることができる。
【0038】
背凭れ部5は、後方に向かって凸となるように略円弧状に湾曲していればよく、特に限定されることはないが、座部2の水平面内の半径と略等しいか、またはわずかに大きい曲率半径を有するように湾曲していることが好ましい。ここでいう略等しいか、またはわずかに大きい曲率半径とは、座部2の水平面内の半径と略等しいか、または、座部2の水平面内の半径の24%以内、好ましくは20%以内、さらに好ましくは16%以内で、座部2の水平面内の半径より大きいことを意味する。背凭れ部5が、座部2の水平面内の半径と略等しいか、またはわずかの大きい曲率半径を有することで、着座姿勢のまま身体を回転させる際に、座部2の外縁に沿って身体が回転するように腰および/または背中が案内されるので、身体を容易に回転させることができる。また、どの回転位置でも、身体の向く方向の座部2の外縁と背凭れ部5との間の水平距離が略同じになるので、同じように立ち上がることができる。
【0039】
背凭れ部5は、使用者Uの腰および/または背中を水平方向で支持する強度を有していれば、その材質は特に限定されることはなく、木材、樹脂、金属などの任意の材料により形成することができる。
【0040】
椅子1は、さらに、任意で、一対の肘掛け部6、6を備えていてもよい。一対の肘掛け部6、6は、図1図5に示されるように、背凭れ部5の水平方向の両端から背凭れ部5に他の部材を介することなく連続して形成される。椅子1が肘掛け部6、6を備えることにより、使用者Uは、椅子1に着座する際に、肘掛け部6、6に両方の肘をそれぞれ載せることができるので、よりゆったりとくつろいで椅子1に着座することができる。さらに、使用者Uは、椅子1から立ち上がる際に肘掛け部6、6を支えとして使用することができるので、椅子1から容易に立ち上がることができる。ここで、使用者Uが肘掛け部6、6を支えとして椅子1から立ち上がる際に、肘掛け部6、6は下方に押圧される。肘掛け部6、6は、背凭れ部5を介して接続された後方側脚部32より前方に位置しているので、椅子1には、後方側脚部32を中心として前方に傾斜する向きの回転モーメントが生じる。しかし、肘掛け部6、6が接続された後方側脚部32は後方に傾斜しているので、下向きの押圧力の一部が、椅子1を後方に傾斜させるように作用する(後方に逃げる)。これにより、椅子1の前方への傾斜が抑制されるので、使用者Uは安心して肘掛け部6、6を支えとして使用することができる。なお、椅子1の後方への傾斜は、上述したように、支持台4が座部2の後方に突出していることにより抑制される。
【0041】
一対の肘掛け部6、6は、使用者Uが肘を載せやすいように背凭れ部5から前方に延びていればよく、特に限定されることはないが、図5および図6に示されるように、背凭れ部5から離れるに従って、水平方向で座部2から離れるように配置されることが好ましい。これにより、使用者Uが身体を水平面内で回転させて椅子1から立ち上がる際に、肘掛け部6、6により阻害されることが抑制されるので、椅子1から容易に立ち上がることができる。肘掛け部6は、本実施形態では、肘掛け部6の水平方向の内側の面が背凭れ部5の水平方向の内側の面と略等しい曲率半径を有するように略円弧状に形成されている。これにより、上述したように座部2の座面2a上で身体を回転させる際に、背凭れ部5だけでなく肘掛け部6に沿っても連続的に案内されるので、より大きい角度範囲に亘って身体を容易に回転させることができる。
【0042】
肘掛け部6は、使用者Uが着座する際に肘を支持し、使用者Uが立ち上がる際に使用者Uを支持する強度を有していれば、その材質は特に限定されることはなく、木材、樹脂、金属などの任意の材料により形成することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 椅子
2 座部
2a 座面
2b 先端領域
2c 側方領域
3 脚部
31 前方側脚部
32 後方側脚部
4 支持台
5 背凭れ部
6 肘掛け部
7 接続部材
71 側方接続部材
72 後方接続部材
C クッション
F 床面
H 床面から座部の座面までの高さ
S 空間
U 使用者
WS 固定具
X 幅方向
Y 前後方向
Z 上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11