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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】双性イオン二重ネットワークヒドロゲル
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/14 20060101AFI20240625BHJP
   A61L 27/52 20060101ALI20240625BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20240625BHJP
   A61L 27/26 20060101ALI20240625BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20240625BHJP
   A61L 29/06 20060101ALI20240625BHJP
   A61L 29/14 20060101ALI20240625BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20240625BHJP
   A61L 31/06 20060101ALI20240625BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20240625BHJP
   A61L 33/06 20060101ALI20240625BHJP
   A61L 27/20 20060101ALI20240625BHJP
   A61L 27/24 20060101ALI20240625BHJP
   A61L 27/16 20060101ALI20240625BHJP
   A61L 29/04 20060101ALI20240625BHJP
   A61L 33/08 20060101ALI20240625BHJP
   A61L 33/12 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 6/887 20200101ALI20240625BHJP
   A61K 6/898 20200101ALI20240625BHJP
   A61K 6/891 20200101ALI20240625BHJP
   C08F 265/00 20060101ALI20240625BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240625BHJP
   C08J 3/075 20060101ALI20240625BHJP
   G02C 7/04 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
C08L101/14
A61L27/52
A61L27/50
A61L27/26
A61L27/58
A61L29/06
A61L29/14
A61L29/14 300
A61L29/14 500
A61L31/04 100
A61L31/06
A61L31/14
A61L31/14 300
A61L31/14 500
A61L33/06 100
A61L27/20
A61L27/24
A61L27/16
A61L29/04 100
A61L31/04 110
A61L33/06 200
A61L33/08
A61L33/12
A61K6/887
A61K6/898
A61K6/891
C08F265/00
C08F2/44 C
C08J3/075 CER
G02C7/04
【請求項の数】 41
(21)【出願番号】P 2021507672
(86)(22)【出願日】2019-08-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 US2019046558
(87)【国際公開番号】W WO2020106338
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】62/718,759
(32)【優先日】2018-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/818,574
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514104933
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ オブ ワシントン
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジアン,シャオイ
(72)【発明者】
【氏名】ホン,シアン-ジェ
(72)【発明者】
【氏名】ドン,ディエンユィ
(72)【発明者】
【氏名】ツアオ,キャロライン
(72)【発明者】
【氏名】タン,チェンジュエ
(72)【発明者】
【氏名】マッカーサー, ジョエル
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-052604(JP,A)
【文献】ZHANG, Z. et al.,Physical, Chemical, and Chemical-Physical Double Network of Zwitterionic Hydrogels,J. Phys. Chem. B,2008年,Vol. 112,p. 5327-5332
【文献】YIN, H. et al.,Double network hydrogels from polyzwitterions: high mechanical strength and excellent anti-biofouling properties,J. Mater. Chem. B,2013年,Vol. 1,p. 3685-3693
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
A61L 27/00- 27/60
C08J 3/075
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)50~100モルパーセントの双性イオン部分を有する第1の架橋双性イオンポリマーを含む、第1のポリマーネットワーク、および
(b)50~100モルパーセントの双性イオン部分を有する第2の架橋双性イオンポリマーを含む、第2のポリマーネットワーク
を含む、二重ネットワークヒドロゲルであって、0.9MPa超の圧縮破壊応力を有する、二重ネットワークヒドロゲル。
【請求項2】
(a)50~100モルパーセントの双性イオン部分を有する第1の化学的架橋双性イオンポリマーを含む、第1の化学ポリマーネットワーク、および
(b)50~100モルパーセントの双性イオン部分を有する第2の化学的架橋双性イオンポリマーを含む、第2の化学ポリマーネットワーク
を含む、二重ネットワークヒドロゲル。
【請求項3】
(a)50~100モルパーセントの双性イオン部分を有する第1の架橋双性イオンポリマーを含み、前記第1の架橋双性イオンポリマーがポリ(スルホベタイン)ではない、第1のポリマーネットワーク、および
(b)50~100モルパーセントの双性イオン部分を有する第2の架橋双性イオンポリマーを含む、第2のポリマーネットワーク
を含む、二重ネットワークヒドロゲル。
【請求項4】
前記第1の架橋双性イオンポリマーが、ポリ(カルボキシベタイン)(pCB)、ポリ(スルホベタイン)(pSB)、ポリ(スルファベタイン)(pSAB)、ポリ(ホスホベタイン)(pPB)、ポリ(ホスホリルコリン)(pPC)、ポリ(コリンホスフェート)(pCP)、ポリ(トリメチルアミン-N-オキシド)(pTMAO)、またはこれらの潜在的な誘導体である、請求項1から3のいずれか1項に記載の二重ネットワークヒドロゲル。
【請求項5】
前記第2の架橋双性イオンポリマーが、ポリ(カルボキシベタイン)(pCB)、ポリ(スルホベタイン)(pSB)、ポリ(スルファベタイン)(pSAB)、ポリ(ホスホベタイン)(pPB)、ポリ(ホスホリルコリン)(pPC)、ポリ(コリンホスフェート)(pCP)、ポリ(トリメチルアミン-N-オキシド)(pTMAO)、またはこれらの潜在的な誘導体である、請求項1から3のいずれか1項に記載の二重ネットワークヒドロゲル。
【請求項6】
前記第1の架橋双性イオンポリマーがポリ(カルボキシベタイン)(pCB)であり、前記第2の架橋双性イオンポリマーがポリ(スルホベタイン)(pSB)である、請求項1から3のいずれか1項に記載の二重ネットワークヒドロゲル。
【請求項7】
前記第1の架橋双性イオンポリマーがポリ(スルホベタイン)(pSB)であり、前記第2の架橋双性イオンポリマーがポリ(スルホベタイン)(pSB)である、請求項1または2に記載の二重ネットワークヒドロゲル。
【請求項8】
前記第1の架橋双性イオンポリマーがポリ(トリメチルアミン-N-オキシド)(pTMAO)であり、前記第2の架橋双性イオンポリマーがポリ(スルホベタイン)(pSB)である、請求項1から3のいずれか1項に記載の二重ネットワークヒドロゲル。
【請求項9】
前記第1の架橋双性イオンポリマーがポリ(ホスホリルコリン)(pPC)であり、前記第2の架橋双性イオンポリマーがポリ(スルホベタイン)(pSB)である、請求項1から3のいずれか1項に記載の二重ネットワークヒドロゲル。
【請求項10】
前記第2の架橋双性イオンポリマーがポリ(スルホベタイン)である、請求項1から3のいずれか1項に記載の二重ネットワークヒドロゲル。
【請求項11】
前記双性イオン部分が、-N(CH および-SO 、または-N(CH および-SO から選択される、請求項1から3のいずれか1項に記載の二重ネットワークヒドロゲル
【請求項12】
0.3MPa超の引張破壊応力、200%超の引張破壊ひずみ、または0.01MPa超のヤング弾性率を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の二重ネットワークヒドロゲル
【請求項13】
0.9MPa超の圧縮破壊応力を有する、請求項2または3に記載の二重ネットワークヒドロゲル
【請求項14】
前記第1のポリマーネットワークが、化学的に架橋または物理的に架橋されており、前記第2のポリマーネットワークが、化学的に架橋または物理的に架橋されている、請求項1または3に記載の二重ネットワークヒドロゲル
【請求項15】
物理的架橋が、イオン性相互作用、水素結合、または双極子-双極子相互作用を通じた、ポリマー間の架橋である、請求項14に記載の二重ネットワークヒドロゲル
【請求項16】
フィブリノゲン結合アッセイ(pH7.4の0.15Mリン酸緩衝生理食塩水中の1.0mg/mLフィブリノゲン溶液によって、ポリマー表面が37℃で90分間インキュベートされる)によって試験された組織培養ポリスチレン(TCPS)の結合レベルに対して、20%未満のフィブリノゲン結合レベルを有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の二重ネットワークヒドロゲル
【請求項17】
50%超の含水率を有し、ほとんどまたはまったく膨潤しない[すなわち、膨潤率V2e/Vが2未満であり、ここで、Vは調製したままの状態におけるDNヒドロゲルの体積であり、V2eは、DI水またはpH7.4の0.15Mリン酸緩衝生理食塩水に平衡まで浸漬させたDNヒドロゲルの体積である]、請求項1から3のいずれか1項に記載の二重ネットワークヒドロゲル
【請求項18】
前記第1のポリマーネットワークを形成し、次いで、前記第1のポリマーネットワークを、前記第2のポリマーネットワークの前駆体を含む溶液に平衡まで浸漬させ、続いて前記前駆体を重合して前記二重ネットワークをもたらす2ステッププロセスによって得られる、請求項1から3のいずれか1項に記載の二重ネットワークヒドロゲル
【請求項19】
前記第1のポリマーネットワークの存在下、前記第2のポリマーネットワークを、(a)モノマー重合、(b)コモノマー共重合、または(c)双性イオンポリマーもしくは双性イオンコポリマーの物理的架橋によって形成する単一ポットプロセスによって得られる、請求項1から3のいずれか1項に記載の二重ネットワークヒドロゲル
【請求項20】
前記第1のネットワークが、[1~10]-[1~50]-[0.1~1]の[モノマーモル濃度]-[架橋剤mol%]-[開始剤mol%]の比を有し、ここでmol%は、重合性双性イオンモノマーまたはコモノマーを基準とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の二重ネットワークヒドロゲル
【請求項21】
前記第1のネットワークが、[1~2]-[2~4]-0.1の[モノマーモル濃度]-[架橋剤mol%]-[開始剤mol%]の比を有し、ここでmol%は、重合性双性イオンモノマーまたはコモノマーを基準とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の二重ネットワークヒドロゲル
【請求項22】
前記第2のネットワークが、[1~10]-[0~10]-[0.01~1]の[モノマーモル濃度]-[架橋剤mol%]-[開始剤mol%]の比を有し、ここでmol%は、重合性双性イオンモノマーまたはコモノマーを基準とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の二重ネットワークヒドロゲル
【請求項23】
前記第2のネットワークが、[2~6]-[0~0.5]-0.01の[モノマーモル濃度]-[架橋剤mol%]-[開始剤mol%]の比を有し、ここでmol%は、重合性双性イオンモノマーまたはコモノマーを基準とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の二重ネットワークヒドロゲル
【請求項24】
前記第1のネットワークが、[1~3]-[2~50]-[0.1~1]の[モノマーモル濃度]-[架橋剤mol%]-[開始剤mol%]の比を有するポリ(カルボキシベタイン)ネットワークであり、ここでmol%は、重合性双性イオンモノマーまたはコモノマーを基準とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の二重ネットワークヒドロゲル
【請求項25】
前記第1のネットワークが、1-4-0.1の[モノマーモル濃度]-[架橋剤mol%]-[開始剤mol%]の比を有するポリ(カルボキシベタイン)ネットワークであり、ここでmol%は、重合性双性イオンモノマーまたはコモノマーを基準とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の二重ネットワークヒドロゲル
【請求項26】
前記第2のネットワークが、[2~6]-[0~0.5]-[0.01~1]の[モノマーモル濃度]-[架橋剤mol%]-[開始剤mol%]の比を有するポリ(スルホベタイン)ネットワークであり、ここでmol%は、重合性双性イオンモノマーまたはコモノマーを基準とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の二重ネットワークヒドロゲル
【請求項27】
前記第2のネットワークが、4-0.1-0.01の[モノマーモル濃度]-[架橋剤mol%]-[開始剤mol%]の比を有するポリ(スルホベタイン)ネットワークであり、ここでmol%は、重合性双性イオンモノマーまたはコモノマーを基準とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の二重ネットワークヒドロゲル
【請求項28】
前記第1のネットワークが、[1~3]-[2~50]-[0.1~1]の[モノマーモル濃度]-[架橋剤mol%]-[開始剤mol%]の比を有するポリ(カルボキシベタイン)ネットワークであり、ここでmol%は、重合性双性イオンモノマーまたはコモノマーを基準とし、前記第2のネットワークが、[2~6]-[0~0.5]-[0.01~1]の[モノマーモル濃度]-[架橋剤mol%]-[開始剤mol%]の比を有するポリ(スルホベタイン)ネットワークであり、ここでmol%は、重合性双性イオンモノマーまたはコモノマーを基準とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の二重ネットワークヒドロゲル
【請求項29】
全体にまたは一部に、請求項1から28のいずれか1項に記載の二重ネットワークヒドロゲルを含む、製造物品。
【請求項30】
生物医学デバイスである、請求項29に記載の製造物品。
【請求項31】
前記生物医学デバイスが、カテーテル、耳用ドレナージ管、栄養管、緑内障ドレナージ管、水頭症シャント、人工角膜移植、神経導管、組織接着剤、x線導管、人工関節、人工心臓弁、人工血管、ペースメーカー、左室補助人工心臓(LVAD)、動脈移植片、血管移植片、ステント、血管内ステント、噴門弁、関節置換物、血管補綴、皮膚修復デバイス、蝸牛置換物、コンタクトレンズ、人工靭帯および腱、歯科用インプラント、ならびに再生組織工学のための組織スキャフォールドからなる群から選択される、請求項30に記載の製造物品。
【請求項32】
消費者製品である、請求項29に記載の製造物品。
【請求項33】
海洋製品である、請求項29に記載の製造物品。
【請求項34】
前記海洋製品が、海洋船舶船体、海洋構造物、橋、プロペラ、熱交換器、潜望鏡、センサ、魚網、ケーブル、管/パイプ、コンテナ、膜、およびオイルフェンスからなる群から選択される、請求項33に記載の製造物品。
【請求項35】
請求項1から28のいずれか1項に記載の二重ネットワークヒドロゲルを含む、マイクロゲル。
【請求項36】
請求項1から28のいずれか1項に記載の二重ネットワークヒドロゲルを含む、基材のための表面コーティング。
【請求項37】
前記基材が生物医学デバイスである、請求項36に記載の表面コーティング。
【請求項38】
前記生物医学デバイスが、カテーテル、耳用ドレナージ管、栄養管、緑内障ドレナージ管、水頭症シャント、人工角膜移植、神経導管、組織接着剤、x線導管、人工関節、人工心臓弁、人工血管、ペースメーカー、左室補助人工心臓(LVAD)、動脈移植片、血管移植片、ステント、血管内ステント、噴門弁、関節置換物、血管補綴、皮膚修復デバイス、蝸牛置換物、コンタクトレンズ、人工靭帯および腱、歯科用インプラント、ならびに再生組織工学のための組織スキャフォールドからなる群から選択される、請求項37に記載の表面コーティング。
【請求項39】
前記基材が消費者製品である、請求項38に記載の表面コーティング。
【請求項40】
前記基材が海洋製品である、請求項36に記載の表面コーティング。
【請求項41】
前記海洋製品が、海洋船舶船体、海洋構造物、橋、プロペラ、熱交換器、潜望鏡、センサ、魚網、ケーブル、管/パイプ、コンテナ、膜、およびオイルフェンスからなる群から選択される、請求項40に記載の表面コーティング。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2018年8月14日に出願された米国特許出願第62/718,759号、および2019年3月14日に出願された同62/818,574号の利益を主張し、それぞれは全体が明白に、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府ライセンス権の申告
この発明は、Office of Naval Researchによって与えられた助成金N00014-16-1-3084およびN00014-19-1-2063のもと、政府支援を受けてなされた。政府は、本発明における一定の権利を有する。
【0003】
発明の背景
3次元架橋ネットワークを有し保水率の高いヒドロゲルは、バイオセンサデバイス、組織埋込み物、およびコンタクトレンズなどの生物医学用途、または船体、海洋構造物、海洋センサ、および網具などの海洋用途における潜在性のため、関心を集めている。双性イオン材料から作製されるヒドロゲルはさらに、超親水性、ならびにタンパク質、細胞、および微生物の非特異的な生物付着に抵抗することによって合併症およびデバイスの故障を防止する優れた非付着特性が理由で、高い関心を集めている。しかしながら、高分子電解質的性質および高いガラス転移温度(Tg)に起因して、双性イオンヒドロゲルの機械的特性の改善が望ましい。
【0004】
双性イオンヒドロゲルの有利な非付着特性にもかかわらず、改善された機械的特性を有する双性イオンヒドロゲルへの必要性が存在する。本発明は、この必要性を満たすことを求め、さらなる関連する利点を提供する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、双性イオン二重ネットワークヒドロゲル、双性イオン二重ネットワークヒドロゲルを作製するための方法、双性イオン二重ネットワークヒドロゲルを使用するための方法、ならびに双性イオン二重ネットワークヒドロゲルから作製された、およびこれによってコーティングされた物品を提供する。
【0006】
一態様では、本発明は、双性イオン二重ネットワークヒドロゲルを提供する。
一実施形態では、双性イオン二重ネットワークヒドロゲルは、
(a)約50~約100モルパーセントの双性イオン部分を有する第1の架橋双性イオンポリマーを含む、第1のポリマーネットワーク、および
(b)約50~約100モルパーセントの双性イオン部分を有する第2の架橋双性イオンポリマーを含む、第2のポリマーネットワーク
を含む二重ネットワークヒドロゲルであって、約0.9MPa超の圧縮破壊応力を有する、二重ネットワークヒドロゲルである。
【0007】
別の実施形態では、双性イオン二重ネットワークヒドロゲルは、
(a)約50~約100モルパーセントの双性イオン部分を有する第1の架橋双性イオンポリマーを含む、第1の化学ポリマーネットワーク、および
(b)約50~約100モルパーセントの双性イオン部分を有する第2の双性イオンポリマーを含む、第2の化学ポリマーネットワーク
を含む、二重ネットワークヒドロゲルである。
【0008】
さらなる実施形態では、双性イオン二重ネットワークヒドロゲルは、
(a)約50~約100モルパーセントの双性イオン部分を有する第1の架橋双性イオンポリマーを含み、第1の架橋双性イオンポリマーがポリ(スルホベタイン)ではない、第1のポリマーネットワーク、および
(b)約50~約100モルパーセントの双性イオン部分を有する第2の架橋双性イオンポリマーを含む、第2のポリマーネットワーク
を含む、二重ネットワークヒドロゲルである。
【0009】
別の実施形態では、双性イオン二重ネットワークヒドロゲルは、
(a)第1の架橋ポリマーを含む第1のポリマーネットワークであって、第1のポリマーネットワークがヒドロゲルである、第1のポリマーネットワーク、および
(b)約50~約100モルパーセントの双性イオン部分を有する第2の架橋双性イオンポリマーを含む、第2のポリマーネットワーク
を含む、二重ネットワークヒドロゲルである。
【0010】
さらなる実施形態では、双性イオン二重ネットワークヒドロゲルは、
(a)第1の架橋ポリマーを含む第1のポリマーネットワークであって、第1のポリマーネットワークがヒドロゲルである、第1のポリマーネットワーク、および
(b)約50~約100モルパーセントの双性イオン部分を有する架橋ポリ(スルホベタイン)を含む、第2のポリマーネットワーク
を含む二重ネットワークヒドロゲルであって、約0.9MPa超の圧縮破壊応力を有する、二重ネットワークヒドロゲルである。
【0011】
別の態様では、本発明は、双性イオン二重ネットワークヒドロゲルを作製するための方法を提供する。一実施形態では、この方法は2ステップの方法である。別の実施形態では、この方法は1ステップ(単一ポット)プロセスである。
【0012】
本発明のさらなる態様では、双性イオン二重ネットワークヒドロゲルから作製された、またはこれを含む製造物品を提供する。
【0013】
前述の態様およびこの発明に伴う利点の多くは、添付図面を一緒に利用する場合、以下の詳細な記載を参照することでより良好に解されるにつれて、よりたやすく理解されるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の代表的な双性イオン二重ネットワーク(ZDN)ヒドロゲルである、pCB/pSB ZDNヒドロゲルの調製の概略図である。
図2A】調製したままのpCB/pSB ZDNヒドロゲルと、DI水における浸漬後の膨潤(十分に平衡化した)ZDNヒドロゲルとの膨潤挙動を比較するグラフである。ヒドロゲルは、1-4-0.1/4-0.1-0.01の組成に従って作製した。
図2B】3種の双性イオン単一ネットワーク[ZSN1(1-2-0.1、1-4-0.1、および2-4-0.1)]と、7種の双性イオン単一ネットワーク[ZSN2(4-0-0.01、4-0.01-0.01、4-0.1-0.01、4-0.2-0.01、4-0.5-0.01、2-0.1-0.01、および6-0.1-0.01)]との成分比を有するpCB/pSB ZDNヒドロゲルの平衡膨潤率(%)および平衡含水率(%)を比較するグラフである。
図3A】3種の異なるpCB ZSN1(1-2-0.1、1-4-0.1、および2-4-0.1)と、7種のpSB ZSN2(2-0.1-0.01、4-0-0.01、4-0.01-0.01、4-0.1-0.01、4-0.2-0.01、4-0.5-0.01、および6-0.1-0.01)との成分比を有する、代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲルの圧縮破壊応力(3A)、圧縮破壊ひずみ(3B)、および圧縮弾性率(3C)を比較するグラフである。
図3B】3種の異なるpCB ZSN1(1-2-0.1、1-4-0.1、および2-4-0.1)と、7種のpSB ZSN2(2-0.1-0.01、4-0-0.01、4-0.01-0.01、4-0.1-0.01、4-0.2-0.01、4-0.5-0.01、および6-0.1-0.01)との成分比を有する、代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲルの圧縮破壊応力(3A)、圧縮破壊ひずみ(3B)、および圧縮弾性率(3C)を比較するグラフである。
図3C】3種の異なるpCB ZSN1(1-2-0.1、1-4-0.1、および2-4-0.1)と、7種のpSB ZSN2(2-0.1-0.01、4-0-0.01、4-0.01-0.01、4-0.1-0.01、4-0.2-0.01、4-0.5-0.01、および6-0.1-0.01)との成分比を有する、代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲルの圧縮破壊応力(3A)、圧縮破壊ひずみ(3B)、および圧縮弾性率(3C)を比較するグラフである。
図4】3種の異なるpCB ZSN1(1-2-0.1、1-4-0.1、および2-4-0.1)と、7種のpSB ZSN2(2-0.1-0.01、4-0-0.01、4-0.01-0.01、4-0.1-0.01、4-0.2-0.01、4-0.5-0.01、および6-0.1-0.01)との成分比を有する、代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲルの質量百分率を比較するグラフである。
図5A】代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)、pCB単一ネットワーク(SN)ヒドロゲル(1-4-0.1)、およびpSB単一ネットワーク(SN)ヒドロゲル(4-0.1-0.01)の代表的な一軸圧縮曲線(5A)、ならびに圧縮弾性率、破壊応力、および破壊ひずみ(5B)を比較するグラフである。
図5B】代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)、pCB単一ネットワーク(SN)ヒドロゲル(1-4-0.1)、およびpSB単一ネットワーク(SN)ヒドロゲル(4-0.1-0.01)の代表的な一軸圧縮曲線(5A)、ならびに圧縮弾性率、破壊応力、および破壊ひずみ(5B)を比較するグラフである。
図6A】代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)、pCB単一ネットワークヒドロゲル(SN、1-4-0.1)、およびpSB単一ネットワークヒドロゲル(SN、4-0.1-0.01)の代表的な引張曲線(6A)、ならびに引張弾性率、破壊応力、および破壊ひずみ(6B)を比較するグラフである。
図6B】代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)、pCB単一ネットワークヒドロゲル(SN、1-4-0.1)、およびpSB単一ネットワークヒドロゲル(SN、4-0.1-0.01)の代表的な引張曲線(6A)、ならびに引張弾性率、破壊応力、および破壊ひずみ(6B)を比較するグラフである。
図7A】代表的な双性イオン二重ネットワーク(pCB/pSB ZDN)ヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)表面の相対非付着(タンパク質および細胞の接着)を比較するグラフである:ヒトフィブリノゲン(7A)、非希釈ヒト血清中のタンパク質(7B)、ラット血小板(7C)、RIN-m5F細胞(7D)、およびDC 2.4細胞(7E)。すべてのデータは、組織培養ポリスチレン(TCPS)に対して正規化した。図7Fでは、それぞれTCPSおよびpCB/pSB ZDNヒドロゲル表面に接着した、RIN-m5F細胞およびDC 2.4細胞の光学画像を比較する。すべての画像の倍率は200倍であった。
図7B】代表的な双性イオン二重ネットワーク(pCB/pSB ZDN)ヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)表面の相対非付着(タンパク質および細胞の接着)を比較するグラフである:ヒトフィブリノゲン(7A)、非希釈ヒト血清中のタンパク質(7B)、ラット血小板(7C)、RIN-m5F細胞(7D)、およびDC 2.4細胞(7E)。すべてのデータは、組織培養ポリスチレン(TCPS)に対して正規化した。図7Fでは、それぞれTCPSおよびpCB/pSB ZDNヒドロゲル表面に接着した、RIN-m5F細胞およびDC 2.4細胞の光学画像を比較する。すべての画像の倍率は200倍であった。
図7C】代表的な双性イオン二重ネットワーク(pCB/pSB ZDN)ヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)表面の相対非付着(タンパク質および細胞の接着)を比較するグラフである:ヒトフィブリノゲン(7A)、非希釈ヒト血清中のタンパク質(7B)、ラット血小板(7C)、RIN-m5F細胞(7D)、およびDC 2.4細胞(7E)。すべてのデータは、組織培養ポリスチレン(TCPS)に対して正規化した。図7Fでは、それぞれTCPSおよびpCB/pSB ZDNヒドロゲル表面に接着した、RIN-m5F細胞およびDC 2.4細胞の光学画像を比較する。すべての画像の倍率は200倍であった。
図7D】代表的な双性イオン二重ネットワーク(pCB/pSB ZDN)ヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)表面の相対非付着(タンパク質および細胞の接着)を比較するグラフである:ヒトフィブリノゲン(7A)、非希釈ヒト血清中のタンパク質(7B)、ラット血小板(7C)、RIN-m5F細胞(7D)、およびDC 2.4細胞(7E)。すべてのデータは、組織培養ポリスチレン(TCPS)に対して正規化した。図7Fでは、それぞれTCPSおよびpCB/pSB ZDNヒドロゲル表面に接着した、RIN-m5F細胞およびDC 2.4細胞の光学画像を比較する。すべての画像の倍率は200倍であった。
図7E】代表的な双性イオン二重ネットワーク(pCB/pSB ZDN)ヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)表面の相対非付着(タンパク質および細胞の接着)を比較するグラフである:ヒトフィブリノゲン(7A)、非希釈ヒト血清中のタンパク質(7B)、ラット血小板(7C)、RIN-m5F細胞(7D)、およびDC 2.4細胞(7E)。すべてのデータは、組織培養ポリスチレン(TCPS)に対して正規化した。図7Fでは、それぞれTCPSおよびpCB/pSB ZDNヒドロゲル表面に接着した、RIN-m5F細胞およびDC 2.4細胞の光学画像を比較する。すべての画像の倍率は200倍であった。
図7F】代表的な双性イオン二重ネットワーク(pCB/pSB ZDN)ヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)表面の相対非付着(タンパク質および細胞の接着)を比較するグラフである:ヒトフィブリノゲン(7A)、非希釈ヒト血清中のタンパク質(7B)、ラット血小板(7C)、RIN-m5F細胞(7D)、およびDC 2.4細胞(7E)。すべてのデータは、組織培養ポリスチレン(TCPS)に対して正規化した。図7Fでは、それぞれTCPSおよびpCB/pSB ZDNヒドロゲル表面に接着した、RIN-m5F細胞およびDC 2.4細胞の光学画像を比較する。すべての画像の倍率は200倍であった。
図8A】3ラウンドのオートクレーブ処理(ZDN-R1、ZDN-R2、およびZDN-R3)後の代表的な双性イオン二重ネットワーク(pCB/pSB ZDN)ヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)表面の相対非付着(タンパク質および細胞の接着)を比較するグラフである:非希釈ヒト血清中のタンパク質(8A)、ラット血小板(8B)、RIN-m5F細胞(8C)、およびDC 2.4細胞(8D)。すべてのデータは、TCPSに対して正規化した。
図8B】3ラウンドのオートクレーブ処理(ZDN-R1、ZDN-R2、およびZDN-R3)後の代表的な双性イオン二重ネットワーク(pCB/pSB ZDN)ヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)表面の相対非付着(タンパク質および細胞の接着)を比較するグラフである:非希釈ヒト血清中のタンパク質(8A)、ラット血小板(8B)、RIN-m5F細胞(8C)、およびDC 2.4細胞(8D)。すべてのデータは、TCPSに対して正規化した。
図8C】3ラウンドのオートクレーブ処理(ZDN-R1、ZDN-R2、およびZDN-R3)後の代表的な双性イオン二重ネットワーク(pCB/pSB ZDN)ヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)表面の相対非付着(タンパク質および細胞の接着)を比較するグラフである:非希釈ヒト血清中のタンパク質(8A)、ラット血小板(8B)、RIN-m5F細胞(8C)、およびDC 2.4細胞(8D)。すべてのデータは、TCPSに対して正規化した。
図8D】3ラウンドのオートクレーブ処理(ZDN-R1、ZDN-R2、およびZDN-R3)後の代表的な双性イオン二重ネットワーク(pCB/pSB ZDN)ヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)表面の相対非付着(タンパク質および細胞の接着)を比較するグラフである:非希釈ヒト血清中のタンパク質(8A)、ラット血小板(8B)、RIN-m5F細胞(8C)、およびDC 2.4細胞(8D)。すべてのデータは、TCPSに対して正規化した。
図9A】pHEMAおよび対照と比較した、1週間の埋込み後の代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)を有する皮膚組織についての、ヘモトキシリン(hemotoxylin)およびエオシン(H&E)染色を比較する画像である(9A);pHEMAと比較した、1、4、および12週間の埋込み後の代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)を有する皮膚組織についてのマッソントリクローム染色の画像である;24週間の埋込み後の、埋込みしたマウス、および取り出した代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)、ならびにpCB/pSB ZDNヒドロゲルを有する皮膚組織についてのマッソントリクローム染色の画像である。埋込みしていないマウスの皮膚組織を、対照として設定した。すべての組織染色画像の倍率は100倍であった。
図9B】pHEMAおよび対照と比較した、1週間の埋込み後の代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)を有する皮膚組織についての、ヘモトキシリン(hemotoxylin)およびエオシン(H&E)染色を比較する画像である(9A);pHEMAと比較した、1、4、および12週間の埋込み後の代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)を有する皮膚組織についてのマッソントリクローム染色の画像である;24週間の埋込み後の、埋込みしたマウス、および取り出した代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)、ならびにpCB/pSB ZDNヒドロゲルを有する皮膚組織についてのマッソントリクローム染色の画像である。埋込みしていないマウスの皮膚組織を、対照として設定した。すべての組織染色画像の倍率は100倍であった。
図9C】pHEMAおよび対照と比較した、1週間の埋込み後の代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)を有する皮膚組織についての、ヘモトキシリン(hemotoxylin)およびエオシン(H&E)染色を比較する画像である(9A);pHEMAと比較した、1、4、および12週間の埋込み後の代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)を有する皮膚組織についてのマッソントリクローム染色の画像である;24週間の埋込み後の、埋込みしたマウス、および取り出した代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)、ならびにpCB/pSB ZDNヒドロゲルを有する皮膚組織についてのマッソントリクローム染色の画像である。埋込みしていないマウスの皮膚組織を、対照として設定した。すべての組織染色画像の倍率は100倍であった。
図10】12週間の埋込み後の代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)の分解(重量残存)および機械的特性(圧縮弾性率残存、圧縮応力残存、圧縮ひずみ残存)を比較するグラフである。
図11A】本発明の代表的なZDNヒドロゲル:pCB/pSB、pCB/pCB、pSB/pCB、pSB/pSB ZDNヒドロゲルについて、圧縮応力曲線(11A)、圧縮弾性率、破壊応力、および破壊ひずみ(11B)、ならびに平衡膨潤率および平衡含水率を比較するグラフである。pCB/pSBおよびpSB/pSB ZDNヒドロゲルは、1-4-0.1/4-0.1-0.01の組成に従って作製し、pCB/pCBおよびpSB/pCB ZDNヒドロゲルは、1-4-0.1/4-0.2-0.01の組成に従って作製した。
図11B】本発明の代表的なZDNヒドロゲル:pCB/pSB、pCB/pCB、pSB/pCB、pSB/pSB ZDNヒドロゲルについて、圧縮応力曲線(11A)、圧縮弾性率、破壊応力、および破壊ひずみ(11B)、ならびに平衡膨潤率および平衡含水率を比較するグラフである。pCB/pSBおよびpSB/pSB ZDNヒドロゲルは、1-4-0.1/4-0.1-0.01の組成に従って作製し、pCB/pCBおよびpSB/pCB ZDNヒドロゲルは、1-4-0.1/4-0.2-0.01の組成に従って作製した。
図11C】本発明の代表的なZDNヒドロゲル:pCB/pSB、pCB/pCB、pSB/pCB、pSB/pSB ZDNヒドロゲルについて、圧縮応力曲線(11A)、圧縮弾性率、破壊応力、および破壊ひずみ(11B)、ならびに平衡膨潤率および平衡含水率を比較するグラフである。pCB/pSBおよびpSB/pSB ZDNヒドロゲルは、1-4-0.1/4-0.1-0.01の組成に従って作製し、pCB/pCBおよびpSB/pCB ZDNヒドロゲルは、1-4-0.1/4-0.2-0.01の組成に従って作製した。
図12A】代表的なZDNヒドロゲル:pSB/pSB(12A)、pCB/CB(12B)、およびpSB/CB(12C)の圧縮試験を比較するグラフである。それぞれにおいて、ZDNヒドロゲルの第1のネットワークは、1-4-0.1の組成に従って作製した。ZDNヒドロゲルの第2のネットワークは、図に示すように、7種の異なる組成に従って作製した。
図12B】代表的なZDNヒドロゲル:pSB/pSB(12A)、pCB/CB(12B)、およびpSB/CB(12C)の圧縮試験を比較するグラフである。それぞれにおいて、ZDNヒドロゲルの第1のネットワークは、1-4-0.1の組成に従って作製した。ZDNヒドロゲルの第2のネットワークは、図に示すように、7種の異なる組成に従って作製した。
図12C】代表的なZDNヒドロゲル:pSB/pSB(12A)、pCB/CB(12B)、およびpSB/CB(12C)の圧縮試験を比較するグラフである。それぞれにおいて、ZDNヒドロゲルの第1のネットワークは、1-4-0.1の組成に従って作製した。ZDNヒドロゲルの第2のネットワークは、図に示すように、7種の異なる組成に従って作製した。
図13A】代表的なpCB/CB ZDNヒドロゲルの圧縮試験を比較するグラフである。ヒドロゲルの第1のネットワークは、1-2-0.1(13A)、1-4-0.1(13B)、および2-4-0.1(13C)の組成に従って作製した。pCB/pCB ZDNヒドロゲルの第2のネットワークは、図に示すように、7種の異なる組成に従って作製した。
図13B】代表的なpCB/CB ZDNヒドロゲルの圧縮試験を比較するグラフである。ヒドロゲルの第1のネットワークは、1-2-0.1(13A)、1-4-0.1(13B)、および2-4-0.1(13C)の組成に従って作製した。pCB/pCB ZDNヒドロゲルの第2のネットワークは、図に示すように、7種の異なる組成に従って作製した。
図13C】代表的なpCB/CB ZDNヒドロゲルの圧縮試験を比較するグラフである。ヒドロゲルの第1のネットワークは、1-2-0.1(13A)、1-4-0.1(13B)、および2-4-0.1(13C)の組成に従って作製した。pCB/pCB ZDNヒドロゲルの第2のネットワークは、図に示すように、7種の異なる組成に従って作製した。
図14A】代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)、ガラス、およびPDMSへの珪藻の付着および接着試験:2時間経ち、続いて洗浄した後の付着珪藻の密度(個/mm)(14A);26Paのせん断応力への曝露に起因する珪藻の除去(%)(14B);ならびに洗浄および26Paのせん断応力への曝露後に残存する珪藻の密度(個/mm)を比較するグラフである。各点は、3つの複製スライドにおける90回のカウントからの平均である。バーは、逆正弦変換データから導出された95%信頼限界を示す。
図14B】代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)、ガラス、およびPDMSへの珪藻の付着および接着試験:2時間経ち、続いて洗浄した後の付着珪藻の密度(個/mm)(14A);26Paのせん断応力への曝露に起因する珪藻の除去(%)(14B);ならびに洗浄および26Paのせん断応力への曝露後に残存する珪藻の密度(個/mm)を比較するグラフである。各点は、3つの複製スライドにおける90回のカウントからの平均である。バーは、逆正弦変換データから導出された95%信頼限界を示す。
図14C】代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)、ガラス、およびPDMSへの珪藻の付着および接着試験:2時間経ち、続いて洗浄した後の付着珪藻の密度(個/mm)(14A);26Paのせん断応力への曝露に起因する珪藻の除去(%)(14B);ならびに洗浄および26Paのせん断応力への曝露後に残存する珪藻の密度(個/mm)を比較するグラフである。各点は、3つの複製スライドにおける90回のカウントからの平均である。バーは、逆正弦変換データから導出された95%信頼限界を示す。
図15A】代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)、ガラス、およびPDMSへのUlva胞子の付着および接着試験:洗浄に続く45分間の沈殿後の付着胞子の密度(個/mm)(15A);洗浄および52Paのせん断応力への曝露に起因する胞子の除去(%)(15B);ならびに洗浄および52Paのせん断応力への曝露後に残存する胞子の密度(個/mm)(15C)を比較するグラフである。各点は、3つの複製スライドにおける90回のカウントからの平均である。バーは、逆正弦変換データから導出された95%信頼限界を示す。
図15B】代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)、ガラス、およびPDMSへのUlva胞子の付着および接着試験:洗浄に続く45分間の沈殿後の付着胞子の密度(個/mm)(15A);洗浄および52Paのせん断応力への曝露に起因する胞子の除去(%)(15B);ならびに洗浄および52Paのせん断応力への曝露後に残存する胞子の密度(個/mm)(15C)を比較するグラフである。各点は、3つの複製スライドにおける90回のカウントからの平均である。バーは、逆正弦変換データから導出された95%信頼限界を示す。
図15C】代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)、ガラス、およびPDMSへのUlva胞子の付着および接着試験:洗浄に続く45分間の沈殿後の付着胞子の密度(個/mm)(15A);洗浄および52Paのせん断応力への曝露に起因する胞子の除去(%)(15B);ならびに洗浄および52Paのせん断応力への曝露後に残存する胞子の密度(個/mm)(15C)を比較するグラフである。各点は、3つの複製スライドにおける90回のカウントからの平均である。バーは、逆正弦変換データから導出された95%信頼限界を示す。
図16】代表的なpTMAO/pSB ZDNヒドロゲルについての圧縮応力(MPa)および圧縮ひずみ(%)を比較するグラフである。第1のネットワークは組成1-4-0.1に従って作製し、第2のネットワークは組成4-0.1-0.01に従って作製した。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、双性イオン二重ネットワークヒドロゲル、双性イオン二重ネットワークヒドロゲルを作製するための方法、双性イオン二重ネットワークヒドロゲルを使用するための方法、ならびに双性イオン二重ネットワークヒドロゲルから作製された、およびこれによってコーティングされた物品を提供する。
【0016】
双性イオン二重ネットワークヒドロゲル
一態様では、本発明は、双性イオン二重ネットワークヒドロゲルを提供する。
【0017】
一実施形態では、双性イオン二重ネットワークヒドロゲルは、
(a)約50~約100モルパーセントの双性イオン部分を有する第1の架橋双性イオンポリマーを含む、第1のポリマーネットワーク、および
(b)約50~約100モルパーセントの双性イオン部分を有する第2の架橋双性イオンポリマーを含む、第2のポリマーネットワーク、
を含む二重ネットワークヒドロゲルであって、約0.9MPa超の圧縮破壊応力を有する、二重ネットワークヒドロゲルである。
【0018】
本明細書において用いる場合、「架橋」という用語は、別段の指定がない限り、化学的架橋ポリマーと物理的架橋ポリマーとの両方を指す。
【0019】
この実施形態では、二重ネットワークヒドロゲルは、約0.9MPa超の圧縮破壊応力を有する。これらの実施形態のいくつかでは、約2、3、5、8、10、12、または15MPa超の圧縮破壊応力である。
【0020】
二重ネットワークヒドロゲルは約0.9MPa超の圧縮破壊応力を有するが、二重ネットワークヒドロゲルはまた、約0.3MPa超(例えば、約0.5、0.7、もしくは1.0MPa超)の引張破壊応力、約200%超(例えば、約250%もしくは300%超)の引張破壊ひずみ、または約0.01MPa超(例えば、約0.1、0.5、1.0MPa超)のヤング弾性率を有するものとして特徴付けられうることが理解されるであろう。
【0021】
本明細書において用いる場合、「双性イオンポリマー」という用語は、重合性双性イオンモノマーを重合することによって調製された(100モルパーセントの双性イオン部分を有する双性イオンポリマーを提供する)ポリマーを指し(すなわち、双性イオンポリマーの各繰り返し単位が双性イオン部分である)、または重合性双性イオンモノマーと重合性コモノマーとを共重合することによって調製された(100モルパーセント未満の双性イオン部分を有する双性イオンポリマーを提供する)ポリマーを指す(例えば、重合性双性イオンモノマーと重合性コモノマーとが、重合混合物中に等しい割合で存在する場合、生成物は、50モルパーセントの双性イオン部分を有する双性イオンポリマーである)。
【0022】
本明細書において用いる場合、「重合性コモノマー」という用語は、双性イオンモノマーと共重合可能な非双性イオンコモノマーを指す。代表的な重合性コモノマーとしては、アクリル酸、アクリレート、メタクリル酸、メタクリレートが挙げられ、他のコモノマーとしては、ポリエチレンオキシドなどの親水性部分を含むものが挙げられる。本明細書に記載する重合性コモノマーは、双性イオン部分を含む重合性モノマーではない。
【0023】
代表的な重合性双性イオンモノマー、および双性イオンモノマーから調製される双性イオンポリマーは、それぞれ全体が明白に、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7,879,444号および同第8,835,671号、ならびに本明細書に記載されている。
【0024】
双性イオンモノマーから調製される代表的な双性イオンポリマーは、式:
【0025】
【化1】
【0026】
[式中、
は、水素、フッ素、トリフルオロメチル、C1~C6アルキル、およびC6~C12アリール基からなる群から選択され、
およびRは、アルキルおよびアリールからなる群から独立して選択されるか、またはこれらが結合している窒素と一緒になってカチオン中心を形成し、
は、カチオン中心[N(R)(R)]をポリマー主鎖[-(CH-CR-]に共有結合的に連結させるリンカーであり、
は、アニオン中心[A(=O)-O]をカチオン中心に共有結合的に連結させるリンカーであり、
は、C、S、SO、P、またはPOであり、
は、(A=O)Oアニオン中心に会合している対イオンであり、
は、カチオン中心に会合している対イオンであり、
nは、5~約10,000の整数である]
を有する。
【0027】
本発明に有用なカルボキシベタインポリマー(例えば、上の式においてA=C)を作製するための代表的なモノマーとしては、2-カルボキシ-N,N-ジメチル-N-(2’-メタクリロイルオキシエチル)エタンアミニウム分子内塩のようなカルボキシベタインメタクリレート;カルボキシベタインアクリレート;カルボキシベタインアクリルアミド;カルボキシベタインビニル化合物;カルボキシベタインエポキシド;およびヒドロキシル、イソシアネート、アミノ、またはカルボキシル基を有する他のカルボキシベタイン化合物が挙げられる。
【0028】
本発明に有用なスルホベタインポリマー(例えば、上の式においてA=SO)を作製するための代表的なモノマーとしては、スルホベタインメタクリレート(SBMA)、スルホベタインアクリレート、スルホベタインアクリルアミド、スルホベタインビニル化合物、スルホベタインエポキシド、およびヒドロキシル、イソシアネート、アミノ、またはカルボキシル基を有する他のスルホベタイン化合物が挙げられる。
【0029】
代表的な重合方法としては、原子移動ラジカル重合(ATRP)、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合、およびフリーラジカル重合が挙げられる。重合のための任意の従来のラジカル開始剤を、本発明を実施するために用いてもよい。通常の熱的または光化学的フリーラジカル重合のための代表的な開始剤としては、過酸化ベンゾイル、2,2’-アゾ-ビス(2-メチルプロイオニトリル)(2-methylproionitrile)、およびベンゾインメチルエーテルが挙げられる。ATRPのための代表的な開始剤としては、ブロモイソブチリルブロミド(BIBB)などのハロゲン化アルキルが挙げられる。RAFT重合のための代表的な開始剤(すなわち、鎖可逆的媒介(chain reversible agency)(CTA)を有するフリーラジカル開始剤)としては、チオカルボニルチオ化合物が挙げられる。
【0030】
他の双性イオンポリマーは、全体が明白に、参照によって本明細書に組み込まれるWO2019/006398に記載されており、下に示すように、N-オキシドモノマーから調製することができる。
【0031】
一定の実施形態では、N-オキシドモノマーは、ポリマー主鎖からのペンダントである(すなわち、ポリマー側鎖の部分を形成する)N-オキシド部分を含む、ポリマー繰り返し単位を提供する。ポリマー主鎖からのペンダントであるN-オキシド部分を有する代表的なポリマーは、次の式
【0032】
【化2】
【0033】
[式中、
は、繰り返し単位が、ポリマーまたはコポリマー中の他の繰り返し単位に付く点を示し、
Bはポリマー主鎖であり、
Lは、N-オキシド部分を主鎖に連結するリンカー基であり、代表的な基としては、-(CH-、-(CH(CN))-、-C(=O)NH(CH)x-、-C(=O)O(CH-、-C(=O)OC(=O)O(CH-、-(CH-O-(CH-、および-(CH-S-S-(CH-が挙げられ、ここで、xは各出現毎に、1~20から独立して選択される整数であり、
およびRは、水素、C~C20アルキル(環状アルキル、例えばC3~C7シクロアルキルを含む)、およびC~C12アリールからなる群から独立して選択され、
nは、約10~約500の整数である]
を有する。
【0034】
他の実施形態では、N-オキシドモノマーは、ポリマー主鎖内にある(すなわち、ポリマー主鎖の部分を形成する)N-オキシド部分を含む、ポリマー繰り返し単位を提供する。ポリマー主鎖内にあるN-オキシド部分を有する代表的なポリマーは、次の式
【0035】
【化3】
【0036】
[式中、
は、水素、フッ素、トリフルオロメチル、シアノ、C~C20アルキル、およびC~C12アリールからなる群から選択され、
およびRは、付加重合、縮合重合、またはフリーラジカル重合による重合に好適な官能基から独立して選択され、
およびLは、-(CH-、-(CH(CN))-、-C(=O)NH(CH-、-C(=O)O(CH-、-C(=O)OC(=O)O(CH-、-(CH-O-(CH-、および-(CH-S-S-(CH-から独立して選択され、ここで、xは各出現毎に、0~20から、好ましくは1~20から独立して選択される整数であり、nは、約10~約500の整数である]
を有する。
【0037】
「双性イオンポリマー」という用語はまた、それぞれ、重合混合物中に実質的に等しい割合で存在する、重合性の負に帯電したモノマーと重合性の正に帯電したモノマーとを共重合することによって調製された、実質的に等しい数の負(アニオン性)電荷と正(カチオン性)電荷とを有するポリマーを指す。このような共重合の生成物は、100モルパーセントの双性イオン部分を有する双性イオンポリマーであり、各双性イオン部分は、一対の繰り返し単位、すなわち、負電荷を有する繰り返し単位および正電荷を有する繰り返し単位として定義される。このような双性イオンポリマーは、混合電荷コポリマーと呼ばれる。「双性イオンポリマー」という用語はまた、それぞれ、重合混合物中に実質的に等しい割合で存在する、重合性の負に帯電したモノマーと、重合性の正に帯電したモノマーと、重合性コモノマーとを共重合することによって調製された(100モルパーセント未満の双性イオン部分を有する双性イオンポリマーを提供する)ポリマーを指す(例えば、重合性の負に帯電したモノマーおよび重合性の正に帯電したモノマーの組み合わせと、重合性コモノマーとが、重合混合物中に等しい割合で存在する場合(すなわち、50%の重合性の負に帯電したモノマーおよび重合性の正に帯電したモノマーの組み合わせ、ならびに50%の重合性コモノマー)、生成物は、50モルパーセントの双性イオン部分を有する双性イオンポリマーである)。
【0038】
代表的な重合性の負に帯電したモノマー、および重合性の正に帯電したモノマー、ならびにこれらのモノマーから調製された双性イオンコポリマーは、それぞれ全体が明白に、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第8,835,671号および同第9,045,576号、ならびに本明細書に記載されている。
【0039】
重合性の負に帯電したモノマーと、重合性の正に帯電したモノマーとから調製された代表的な双性イオンポリマーは、式:
【0040】
【化4】
【0041】
[式中、
およびRは、水素、フッ素、トリフルオロメチル、C1~C6アルキル、およびC6~C12アリール基から独立して選択され、
、R10、およびR11は、アルキルおよびアリールから独立して選択されるか、またはこれらが結合している窒素と一緒になってカチオン中心を形成し、
(=O)-OM)はアニオン中心であり、ここでAは、C、S、SO、P、またはPOであり、Mは金属または有機対イオンであり、
は、カチオン中心[N(R)(R10)(R11)]をポリマー主鎖に共有結合的に連結させるリンカーであり、
は、アニオン中心[A(=O)-OM]をポリマー主鎖に共有結合的に連結させるリンカーであり、
は、カチオン中心に会合している対イオンであり、
nは、5~約10,000の整数であり、
pは、5~約10,000の整数である]
を有する。
【0042】
一実施形態では、本発明に有用な双性イオンコポリマーは、(a)複数の負に帯電した繰り返し単位、または複数の潜在的に負に帯電した繰り返し単位、および(b)複数の正に帯電した繰り返し単位、または複数の正に帯電した繰り返し単位を含み、コポリマーは実質的に電気的に中性である。
【0043】
本明細書において用いる場合、「実質的に電気的に中性」という用語は、正に帯電した繰り返し単位の数と負に帯電した繰り返し単位の数とが実質的に等しいこと、および混合荷電基が、ナノメートル規模において一様に分布していることを意味する。
【0044】
一般に、負に帯電した繰り返し単位、または潜在的に負に帯電した基を有する繰り返し単位の数と、正に帯電した繰り返し単位、または潜在的に正に帯電した基を有する繰り返し単位の数との比は、約1:1.1~約1:0.5である。一実施形態では、負に帯電した繰り返し単位、または潜在的に負に帯電した基を有する繰り返し単位の数と、正に帯電した繰り返し単位、または潜在的に正に帯電した基を有する繰り返し単位の数との比は、約1:1.1~約1:0.7である。一実施形態では、負に帯電した繰り返し単位、または潜在的に負に帯電した基を有する繰り返し単位の数と、正に帯電した繰り返し単位、または潜在的に正に帯電した基を有する繰り返し単位の数との比は、約1:1.1~約1:0.9である。
【0045】
一定の実施形態では、本発明に有用な双性イオンコポリマーは、正に帯電したペンダント基を有する、複数の正に帯電した繰り返し単位を含む。代表的な正に帯電したペンダント基としては、第四級アンモニウム基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、第四級ホスホニウム基、第三級ホスホニウム基、アミド基、複素芳香族窒素基、およびスルホニウム基が挙げられる。一定の実施形態では、本発明に有用なコポリマーは、負に帯電したペンダント基を有する、複数の負に帯電した繰り返し単位を含む。代表的な負に帯電したペンダント基としては、硫酸基、カルボン酸基、リン酸基、硝酸基、フェノール基、およびスルホンアミド基が挙げられる。
【0046】
一定の実施形態では、本発明に有用なコポリマーは、潜在的に負に帯電した基を有する繰り返し単位を含み、潜在的に負に帯電した基は、硫酸エステル基、カルボン酸エステル基、リン酸エステル基、スルホン基、スルフィド基、ジスルフィド基、オルトエステル基、無水物基、およびβ-ケトスルホン基からなる群から選択される。一定の実施形態では、本発明に有用なコポリマーは、潜在的に正に帯電した基を有する繰り返し単位を含み、潜在的に正に帯電した基は、イミド基およびオキシイミノ基からなる群から選択される。
【0047】
本発明に有用なコポリマー中の潜在的に負に帯電した基、および潜在的に正に帯電した基は、酸化剤、還元剤、熱、光、酸、塩基、酵素、または電磁界に曝露した際に、帯電した基に変換されうる。
【0048】
負に帯電した繰り返し単位は、負に帯電したペンダント基を有する繰り返し単位であっても、モノマー主鎖構造に負電荷を有する繰り返し単位であってもよい。負に帯電したペンダント基は、負電荷を有する任意の基であってよい。代表的な負に帯電したペンダント基としては、硫酸基、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、フェノール基、およびスルホンアミド基が挙げられる。
【0049】
負に帯電した繰り返し単位は、負に帯電したペンダント基または負に帯電した主鎖を有するモノマーから誘導することができる。本発明に有用なコポリマー中の負に帯電した繰り返し単位コポリマーを誘導するために用いることができる代表的なモノマーは、2-カルボキシエチルアクリレート、3-スルホプロピルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、およびポリ(エチレングリコール)メタクリレート、ならびにD-グルクロン酸が挙げられる。
【0050】
正に帯電した繰り返し単位は、正に帯電したペンダント基を有する繰り返し単位であっても、モノマー主鎖構造に正電荷を有する繰り返し単位であってもよい。正に帯電したペンダント基は、正電荷を有する任意の基であってよい。代表的な正に帯電したペンダント基としては、第四級アンモニウム基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、第四級ホスホニウム基、第三級ホスホニウム基、アミド基、複素芳香族窒素基、スルホニウム基、および金属有機酸が挙げられる。
【0051】
正に帯電した繰り返し単位は、正に帯電したペンダント基または正に帯電した主鎖を有するモノマーから誘導することができる。本発明に有用なコポリマー中の正に帯電した繰り返し単位を誘導するために用いることができる代表的なモノマーとしては、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、およびN-アセチルグルコサミンが挙げられる。
【0052】
重合性双性イオンモノマー、重合性の負に帯電したモノマー、および重合性の正に帯電したモノマーは、帯電していない(例えば保護された)モノマーであってもよく、帯電していないモノマーは、本明細書に記載するように重合し、次いで、(例えば、化学的刺激またはpHのような環境的刺激によって)さらに反応させて、生成物の双性イオンポリマー中に、双性イオン対応部分、負に帯電した部分、または正に帯電した部分を示すことができると理解されるであろう。このような帯電していないモノマーは、双性イオン対応部分、負に帯電した対応部分、または正に帯電した対応部分を示す潜在的モノマーであると考えられる。
【0053】
代表的な帯電していない(潜在的)モノマーは、それぞれ全体が明白に、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第8,268,301号および同第8,349,966号、ならびに本明細書に記載されている。
【0054】
別の実施形態では、双性イオン二重ネットワークヒドロゲルは、
(a)約50~約100モルパーセントの双性イオン部分を有する第1の架橋双性イオンポリマーを含む、第1の化学ポリマーネットワーク、および
(b)約50~約100モルパーセントの双性イオン部分を有する第2の双性イオンポリマーを含む、第2の化学ポリマーネットワーク
を含む、二重ネットワークヒドロゲルである。
【0055】
この実施形態では、第1の架橋双性イオンポリマーが化学的架橋双性イオンポリマーであり、第2の架橋双性イオンポリマーが化学的架橋双性イオンポリマーであることが理解されるであろう。
【0056】
本明細書において用いる場合、「化学ポリマーネットワーク」という用語は、化学的方法によって、特に重合によって調製されたポリマーネットワークを指す。本発明の二重ネットワークにおいて、第1のネットワークおよび第2のネットワークのそれぞれは、重合によって調製される。より詳細には、第1の化学ポリマーネットワークが調製されると、第1のポリマーネットワークの存在下、好適な重合性モノマーを重合すること(または好適なコモノマーを共重合すること)によって(例えば、第1のポリマーネットワークを含む溶液中で、好適な重合性モノマーを重合することによって)、第2の化学ポリマーネットワークが調製される。化学ポリマーネットワークは、機械的手段によってポリマー(またはコポリマー)から調製される、イオン結合、水素結合、および双極子-双極子架橋などのポリマー間架橋を含めた物理ネットワークとは区別される。したがって、二重ネットワークは、化学-化学ネットワーク、化学-物理ネットワーク、または物理-物理ネットワークでありうる。双性イオンヒドロゲルの物理、化学、および化学-物理二重ネットワークは、Jiangら、J.Phys.Chem.B、2008、112巻:5327~5332頁に記載されている。
【0057】
さらなる実施形態では、双性イオン二重ネットワークヒドロゲルは、
(a)約50~約100モルパーセントの双性イオン部分を有する第1の架橋双性イオンポリマーを含み、第1の架橋双性イオンポリマーがポリ(スルホベタイン)ではない、第1のポリマーネットワーク、および
(b)約50~約100モルパーセントの双性イオン部分を有する第2の架橋双性イオンポリマーを含む、第2のポリマーネットワーク
を含む、二重ネットワークヒドロゲルである。
【0058】
別の実施形態では、双性イオン二重ネットワークヒドロゲルは、
(a)第1の架橋ポリマーを含む第1のポリマーネットワークであって、第1のポリマーネットワークがヒドロゲルである、第1のポリマーネットワーク、および
(b)約50~約100モルパーセントの双性イオン部分を有する第2の架橋双性イオンポリマーを含む、第2のポリマーネットワーク
を含む二重ネットワークヒドロゲルであって、約0.9MPa超の圧縮破壊応力を有する、二重ネットワークヒドロゲルである。
【0059】
これらの実施形態のいくつかでは、第1の架橋ポリマーは、双性イオンポリマー、多糖、またはコラーゲンである。代表的な第1の架橋ポリマーとしては、ヒアルロン酸、アルギン酸塩、またはデキストランが挙げられる。
【0060】
この実施形態では、二重ネットワークヒドロゲルは、約0.9MPa超の圧縮破壊応力を有する。これらの実施形態のいくつかでは、約2、3、5、8、10、12、または15MPa超の圧縮破壊応力である。
【0061】
二重ネットワークヒドロゲルは約0.9MPa超の圧縮破壊応力を有するが、二重ネットワークヒドロゲルはまた、約0.3MPa超(例えば、約0.5、0.7、もしくは1.0MPa超)の引張破壊応力、約200%超(例えば、約250%もしくは300%超)の引張破壊ひずみ、または約0.01MPa超(例えば、約0.1、0.5、1.0MPa超)のヤング弾性率を有するものとして特徴付けられうることが理解されるであろう。
【0062】
さらなる実施形態では、双性イオン二重ネットワークヒドロゲルは、
(a)第1の架橋ポリマーを含む第1のポリマーネットワークであって、第1のポリマーネットワークがヒドロゲルである、第1のポリマーネットワーク、および
(b)約50~約100モルパーセントの双性イオン部分を有する架橋ポリ(スルホベタイン)を含む、第2のポリマーネットワーク
を含む、二重ネットワークヒドロゲルである。
【0063】
これらの実施形態のいくつかでは、第1の架橋ポリマーは、双性イオンポリマー、多糖、またはコラーゲンである。代表的な第1の架橋ポリマーとしては、ヒアルロン酸、アルギン酸塩、またはデキストランが挙げられる。
【0064】
上に記載した二重ネットワークヒドロゲルのいくつかでは、第1の架橋双性イオンポリマーは、ポリ(カルボキシベタイン)(pCB)、ポリ(スルホベタイン)(pSB)、ポリ(スルファベタイン)(pSAB)、ポリ(ホスホベタイン)(pPB)、ポリ(ホスホリルコリン)(pPC)、ポリ(コリンホスフェート)(pCP)、ポリ(トリメチルアミン-N-オキシド)(pTMAO)、またはこれらの潜在的な誘導体である。
【0065】
上に記載した二重ネットワークヒドロゲルのいくつかでは、第2の架橋双性イオンポリマーは、ポリ(カルボキシベタイン)(pCB)、ポリ(スルホベタイン)(pSB)、ポリ(スルファベタイン)(pSAB)、ポリ(ホスホベタイン)(pPB)、ポリ(ホスホリルコリン)(pPC)、ポリ(コリンホスフェート)(pCP)、ポリ(トリメチルアミン-N-オキシド)(pTMAO)、またはこれらの潜在的な誘導体である。
【0066】
上に記載した二重ネットワークヒドロゲルのいくつかでは、第1の架橋双性イオンポリマーはポリ(カルボキシベタイン)(pCB)であり、第2の架橋双性イオンポリマーはポリ(スルホベタイン)(pSB)である。
【0067】
上に記載した二重ネットワークヒドロゲルのいくつかでは、第1の架橋双性イオンポリマーはポリ(スルホベタイン)(pSB)であり、第2の架橋双性イオンポリマーはポリ(スルホベタイン)(pSB)である。
【0068】
上に記載した二重ネットワークヒドロゲルのいくつかでは、第1の架橋双性イオンポリマーはポリ(トリメチルアミン-N-オキシド)(pTMAO)であり、第2の架橋双性イオンポリマーはポリ(スルホベタイン)(pSB)である。
【0069】
上に記載した二重ネットワークヒドロゲルのいくつかでは、第1の架橋双性イオンポリマーはポリ(ホスホリルコリン)(pPC)であり、第2の架橋双性イオンポリマーはポリ(スルホベタイン)(pSB)である。
【0070】
上に記載した二重ネットワークヒドロゲルのいくつかでは、第1の架橋ポリマーは、Fe3+、Ca2+、Mg2+、Cu2+、およびZn2+から選択される金属イオンによって架橋されている双性イオンポリマーである。
【0071】
上に記載した二重ネットワークヒドロゲルのいくつかでは、第2の架橋双性イオンポリマーはポリ(スルホベタイン)である。
【0072】
上の実施形態のいくつかでは、双性イオン部分は、-N(CH および-SO 、または-N(CH および-SO から選択される。
【0073】
本明細書に記載する双性イオン二重ネットワークヒドロゲルは約0.9MPa超(例えば、約2、3、5、8、10、12、もしくは15MPa超)の圧縮破壊応力、約0.3MPa超(例えば、約0.5、0.7、もしくは1.0MPa超)の引張破壊応力、約200%超(例えば、約250%もしくは300%超)の引張破壊ひずみ、または約0.01MPa超(例えば、約0.1、0.5、もしくは1.0MPa超)のヤング弾性率のうちの1つまたは複数を有するものとして特徴付けられる、有利な機械的強度を有する。
【0074】
本明細書に記載する双性イオン二重ネットワークヒドロゲルについて、一定の実施形態では、第1のポリマーネットワークは、化学的に架橋または物理的に架橋されており、第2のポリマーネットワークは、化学的に架橋または物理的に架橋されている。本明細書において用いる場合、「物理的に架橋」という用語は、イオン性相互作用、水素結合相互作用、および/または双極子-双極子相互作用を通じた、ポリマー間の架橋を指す。
【0075】
本明細書に記載する双性イオン二重ネットワークヒドロゲルは、フィブリノゲン結合アッセイ(pH7.4の0.15Mリン酸緩衝生理食塩水中の1.0mg/mLフィブリノゲン溶液によって、ポリマー表面が37℃で90分間インキュベートされる)によって試験された組織培養ポリスチレン(TCPS)の結合レベルに対して、約20%未満(例えば、約15%未満、または約10%未満)のフィブリノゲン結合レベルを有するものとして特徴付けられる、有利な非付着特性を有する。
【0076】
本明細書に記載する双性イオン二重ネットワークヒドロゲルは、約50%超(例えば、約70%、80%、または90%超)の含水率を有し、ほとんどまたはまったく膨潤しない(すなわち、膨潤率V2e/Vは2未満であり、ここで、Vは調製したままの状態におけるZDNヒドロゲルの体積であり、V2eは、DI水またはpH7.4の0.15Mリン酸緩衝生理食塩水に平衡に達するまで浸漬させたZDNヒドロゲルの体積である)。
【0077】
本明細書に記載するように、一定の実施形態では、双性イオン二重ネットワークヒドロゲルは、少なくとも50モルパーセントの双性イオン部分(例えば、60、70、80、90、100モルパーセント)を有する。有利な機械的特性が達成される限り、ヒドロゲルに非付着特性を付与するためには、より多い双性イオン含有量が好ましい。
【0078】
一般に、本発明の双性イオン二重ネットワークヒドロゲルについて、相対的に軽度に架橋されている第2のネットワークと比較して、第1のネットワークは、相対的に重度に架橋されている。一定の実施形態では、本発明の双性イオン二重ネットワークヒドロゲルは、図4(質量%として与えられる)に示すように、2~15質量%の第1のネットワーク(例えばpCB)と、85~98質量%の第2のネットワーク(例えばpSB)とを含有するものとして定義することができる。
【0079】
本明細書に記載するように、本発明の双性イオン二重ネットワーク(ZDN)ヒドロゲルは、第1のヒドロゲルネットワークと第2のヒドロゲルネットワークとのそれぞれについての重合条件:モノマーモル濃度-架橋剤mol%-開始剤mol%(重合性双性イオンモノマーまたはコモノマーを基準としたmol%)によって命名される。例えば、第1のネットワークについての代表的な命名は1-4-0.1であり、第2のネットワークについての代表的な命名は4-0.1-0.01であり、このような第1および第2のネットワークについて、代表的な二重ネットワークは1-4-0.1/4-0.1-0.01と命名される。
【0080】
本明細書において用いる場合、「モノマーモル濃度」という用語は、第1および第2のポリマーネットワークを調製するために用いる溶液の、1キログラムの溶媒当たりのモノマーのモル数を指す。
【0081】
上に述べたように、本発明の双性イオン二重ネットワークヒドロゲルについて、相対的に軽度に架橋されている第2のネットワークと比較して、第1のネットワークは、相対的に重度に架橋されている。代表的な実施形態では、第1のネットワーク(1-4-0.1)は、弾性(または硬さ)を提供するために、相対的に高い架橋密度であると考えられる4%の架橋剤を有し、第2のネットワーク(4-0.1-0.01)は、粘性(または軟らかさ)を提供するために、相対的に低い架橋密度であると考えられる0.1mol%の架橋剤を有する。これら2つの特性の組み合わせ(弾性/硬さおよび粘性/軟らかさ)は、本発明のZDNヒドロゲルの高い強度をもたらす。
【0082】
さらに、第2のネットワークは、ロッキング効果を提供し、質量を基準としてZDNヒドロゲルの大部分である(ZDNヒドロゲル全体の約85~95mol%の量)。
【0083】
以下は、本発明の代表的なZDNヒドロゲルについてのモノマーモル濃度-架橋剤mol%-開始剤mol%(重合性双性イオンモノマーまたはコモノマーを基準としたmol%)の概要である。第1のネットワークの一定の実施形態では、[1~10]-[1~50]-[0.1~1]。第1のネットワークの他の実施形態では、[1~2]-[2~4]-0.1。第1のネットワークの一実施形態では、1-4-0.1。第2のネットワークの一定の実施形態では、[1~10]-[0~10]-[0.01~1]。第2のネットワークの他の実施形態では、[2~6]-[0~0.5]-0.01。第2のネットワークの一実施形態では、4-0.1-0.01。
【0084】
以下は、本発明の代表的なZDNヒドロゲル:第1のネットワークがポリ(カルボキシベタイン)、第2のネットワークがポリ(スルホベタイン)、についてのモノマーモル濃度-架橋剤mol%-開始剤mol%(重合性双性イオンモノマーまたはコモノマーを基準としたmol%)の概要である。第1のネットワークの一定の実施形態では、[1~3]-[2~50]-[0.1~1]。第1のネットワークの他の実施形態では、[1~2]-[2~4]-0.1。第1のネットワークの一実施形態では、1-4-0.1。第2のネットワークの一定の実施形態では、[2~10]-[0~0.5]-[0.01~1]。第2のネットワークの他の実施形態では、[2~6]-[0~0.5]-0.01。第2のネットワークの一実施形態では、4-0.1-0.01。代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲルについては、[1~3]-[2~50]-[0.1~1]/[2~6]-[0~0.5]-[0.01~1]。代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲルについては、1-4-0.1/4-0.1-0.01。
【0085】
本明細書に記載するZDNヒドロゲルの一定の実施形態では、第1のネットワークは、約[1~10]-[1~50]-[0.1~1]の[モノマーモル濃度]-[架橋剤mol%]-[開始剤mol%]の比を有し、ここでmol%は、重合性双性イオンモノマーまたはコモノマーを基準とする。これらの実施形態のいくつかでは、第1のネットワークは、約[1~2]-[2~4]-0.1の[モノマーモル濃度]-[架橋剤mol%]-[開始剤mol%]の比を有し、ここでmol%は、重合性双性イオンモノマーまたはコモノマーを基準とする。
【0086】
本明細書に記載するZDNヒドロゲルの一定の実施形態では、第2のネットワークは、約[1~10]-[0~10]-[0.01~1]の[モノマーモル濃度]-[架橋剤mol%]-[開始剤mol%]の比を有し、ここでmol%は、重合性双性イオンモノマーまたはコモノマーを基準とする。これらの実施形態のいくつかでは、第2のネットワークは、約[2~6]-[0~0.5]-0.01の[モノマーモル濃度]-[架橋剤mol%]-[開始剤mol%]の比を有し、ここでmol%は、重合性双性イオンモノマーまたはコモノマーを基準とする。
【0087】
本明細書に記載するZDNヒドロゲルの一定の実施形態では、第1のネットワークは、約[1~2]-[2~4]-[0.1]の[モノマーモル濃度]-[架橋剤mol%]-[開始剤mol%]の比を有するポリ(カルボキシベタイン)ネットワークであり、ここでmol%は、重合性双性イオンモノマーまたはコモノマーを基準とする。これらの実施形態のいくつかでは、第1のネットワークは、約1-4-0.1の[モノマーモル濃度]-[架橋剤mol%]-[開始剤mol%]の比を有するポリ(カルボキシベタイン)ネットワークであり、ここでmol%は、重合性双性イオンモノマーまたはコモノマーを基準とする。
【0088】
本明細書に記載するZDNヒドロゲルの一定の実施形態では、第2のネットワークは、約[2~6]-[0~0.5]-[0.01~1]の[モノマーモル濃度]-[架橋剤mol%]-[開始剤mol%]の比を有するポリ(スルホベタイン)ネットワークであり、ここでmol%は、重合性双性イオンモノマーまたはコモノマーを基準とする。これらの実施形態のいくつかでは、第2のネットワークは、約4-0.1-0.01の[モノマーモル濃度]-[架橋剤mol%]-[開始剤mol%]の比を有するポリ(スルホベタイン)ネットワークであり、ここでmol%は、重合性双性イオンモノマーまたはコモノマーを基準とする。
【0089】
本明細書に記載するZDNヒドロゲルの一定の実施形態では、第1のネットワークは、約[1~3]-[2~50]-[0.1~1]の[モノマーモル濃度]-[架橋剤mol%]-[開始剤mol%]の比を有するポリ(カルボキシベタイン)ネットワークであり、ここでmol%は、重合性双性イオンモノマーまたはコモノマーを基準とし、第2のネットワークは、約[2~6]-[0~0.5]-[0.01~1]の[モノマーモル濃度]-[架橋剤mol%]-[開始剤mol%]の比を有するポリ(スルホベタイン)ネットワークであり、ここでmol%は、重合性双性イオンモノマーまたはコモノマーを基準とする。
【0090】
双性イオン二重ネットワークヒドロゲルを作製するための方法
一定の実施形態では、本明細書に記載する双性イオン二重ネットワークヒドロゲルは、第1のポリマーネットワークを(例えば、双性イオンモノマー、架橋剤、および必要に応じて開始剤の重合;双性イオンおよび非双性イオンコモノマー、架橋剤、ならびに必要に応じて開始剤の共重合;または双性イオンポリマーもしくは双性イオンコポリマーの物理的架橋によって)形成し、次いで、第2のポリマーネットワークの前駆体(例えば、双性イオンモノマー、架橋剤、および必要に応じて開始剤;双性イオンおよび非双性イオンコモノマー、架橋剤、ならびに必要に応じて開始剤;または双性イオンポリマーもしくは双性イオンコポリマー、および物理的架橋剤)を含む溶液に平衡まで浸漬させ、得られた第1のポリマーネットワークと第2のポリマーネットワークの前駆体とを、第2のネットワークの重合および形成を、その結果として二重ネットワークヒドロゲルの重合および形成を行うのに好適な重合条件に供する、2ステッププロセスによって得ることができる。
【0091】
他の実施形態では、本明細書に記載する双性イオン二重ネットワークヒドロゲルは、第1のポリマーネットワークの存在下で第2のポリマーネットワークが形成される、1ステップ(例えば単一ポット)プロセスによって得ることができる。1ステップ(例えば単一ポット)プロセスでは、第1のポリマーネットワークの存在下、第2のポリマーネットワークを、(a)双性イオンモノマーの重合(例えば、モノマー、架橋剤、および開始剤の重合)、(b)双性イオンおよび非双性イオンコモノマーの重合(例えば、コモノマー、架橋剤、および開始剤の共重合)、または(c)双性イオンポリマーもしくは双性イオンコポリマーの物理的架橋(例えば、双性イオンポリマーまたは双性イオンコポリマーと、物理的架橋剤との物理的架橋)によって形成する。
【0092】
双性イオン二重ネットワークヒドロゲルからの製造物品
別の態様では、本発明は、全体にまたは一部に、本明細書に記載する双性イオン二重ネットワークヒドロゲルを含む製造物品を提供する。
【0093】
一実施形態では、物品は生物医学デバイスである。代表的な生物医学デバイスとしては、カテーテル、耳用ドレナージ管、栄養管、緑内障ドレナージ管、水頭症シャント、人工角膜移植、神経導管、組織接着剤、x線導管、人工関節、人工心臓弁、人工血管、ペースメーカー、左室補助人工心臓(LVAD)、動脈移植片、血管移植片、ステント、血管内ステント、噴門弁、関節置換物、血管補綴、皮膚修復デバイス、蝸牛置換物、コンタクトレンズ、人工靭帯および腱、歯科用インプラント、ならびに再生組織工学のための組織スキャフォールドが挙げられる。
【0094】
別の実施形態では、物品は消費者製品である。代表的な消費者製品としては、創傷被覆材、または創傷ケアデバイス、皮膚シーラント、皮膚科学デバイス(皮膚修復デバイス、包帯)、化粧用デバイスまたは配合物(局所用クリーム、局所用マスク、審美、再建、もしくは若返り目的のための注入可能もしくは埋込み可能なゲルもしくは他の配合物)、コンタクトレンズ、産婦人科学デバイス(埋込み可能なまたは局所用の産児制限デバイス、膣スリング)、眼内レンズ、審美埋込み物(胸部埋込み物、鼻部埋込み物、頬部埋込み物)、ホルモン制御埋込み物(血糖センサ、インスリンポンプ)、泌尿器科デバイス(カテーテル、人工尿道)が挙げられる。
【0095】
さらなる実施形態では、物品は海洋製品である。代表的な海洋製品としては、全体にまたは一部において、海洋船舶船体、海洋構造物、橋、プロペラ、熱交換器、潜望鏡、センサ、魚網、ケーブル、管/パイプ、コンテナ、膜、およびオイルフェンスが挙げられる。
【0096】
別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載する双性イオン二重ネットワークヒドロゲルを含むマイクロゲルを提供する。
【0097】
さらなる実施形態では、本発明は、本明細書に記載する双性イオン二重ネットワークヒドロゲルを含む、基材のための表面コーティングを提供する。基材の表面のすべてまたは一部が、双性イオン二重ネットワークヒドロゲルによってコーティングされうる。
【0098】
一実施形態では、基材は生物医学デバイスである。代表的な生物医学デバイスとしては、上に列挙したものが挙げられる。
【0099】
別の実施形態では、基材は消費者製品である。代表的な消費者製品としては、上に列挙したものが挙げられる。
【0100】
さらなる実施形態では、基材は海洋製品である。代表的な海洋製品としては、上に列挙したものが挙げられる。
【0101】
本明細書において用いる場合、「約」という用語は、述べられた値の±5%を指す。
以下の実施例は、本発明を限定する目的ではなく、説明する目的で提供される。
【実施例
【0102】
実施例1
代表的なZDNヒドロゲルの調製
この実施例では、本発明の代表的なZDNヒドロゲルの調製を記載する。
【0103】
pCB/pSB ZDNヒドロゲルの調製。ZDNヒドロゲルは、2ステップ逐次フリーラジカル重合によって合成した。第1のステップにおいて、透明シート型または管状ロッド型において、305nmの波長および6ワットの出力を有する紫外線(UV)照射下、窒素ブランケットにおいて6時間、1m(モル濃度)のCB、4mol%の架橋剤N,N-メチレンビス(アクリルアミド)(MBAA)、および0.1mol%の開始剤2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(1173)(双方はCBモノマーに対する)を用いた光重合によって、第1のネットワークであるポリ{3-[3-(アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロピオネート}(pCB)ヒドロゲルを合成した。第1のネットワークヒドロゲルの重合条件は、1-4-0.1(CBモル濃度-架橋剤mol%-開始剤mol%)として表す。第2のステップにおいて、4mの[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル-(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド(SB)、0.1mol%のMBAA、および0.01mol%の開始剤1173(双方はSBモノマーに対する)を含有する第2のネットワークの前駆体溶液に、24時間、調製したままのpCBヒドロゲルを液浸した。第2のネットワークヒドロゲルの重合条件は、4-0.1-0.01(SBモル濃度-架橋剤mol%-開始剤mol%)として表す。したがって、ZDNヒドロゲルの重合条件は、1-4-0.1/4-0.1-0.01として表す。第2のネットワークの前駆体溶液を含有する、十分に膨潤した第1のネットワークヒドロゲルを、窒素ブランケットにおいて、305nmの波長および6ワットの出力を有する、6時間のUV照射によって、さらに重合した。この2ステップ合成の後、調製したままのpCB/pSB ZDNヒドロゲルを、膨潤平衡に達するまで、水溶液中に1日液浸した。ZDNヒドロゲルの合成について、1-4-0.1/4-0.1-0.01に加えて、異なる組み合わせの第1のネットワーク(1-2-0.1および2-4-0.1)ならびに第2のネットワーク(4-0-0.01、4-0.01-0.01、4-0.2-0.01、4-0.5-0.01、2-0.1-0.01、および6-0.1-0.01)を用いた。
【0104】
pCB/pCB、pCB/pSB、およびpSB/pSB ZDNヒドロゲルの調製。上に記載した方法に従って、ZDNヒドロゲルを調製した。ZDNヒドロゲルの合成について、1-4-0.1/4-0.1-0.01に加えて、異なる組み合わせの第1のネットワーク(1-2-0.1および2-4-0.1)ならびに第2のネットワーク(4-0-0.01、4-0.01-0.01、4-0.2-0.01、4-0.5-0.01、2-0.1-0.01、および6-0.1-0.01)を用いた。
【0105】
実施例2
平衡膨潤率、平衡含水率、および質量百分率試験
この実施例では、本発明の代表的な双性イオン二重ネットワーク(ZDN)ヒドロゲルである、pCB/pSB ZDNヒドロゲルの特性を測定するために用いた、平衡膨潤率、平衡含水率、および質量百分率試験を記載する。
【0106】
平衡化ZDNヒドロゲルと、調製したままの状態との平衡膨潤率(ESR)を、寸法測定法によって評価した。調製したままのZDNヒドロゲルディスクを、生検パンチ(直径5または10mm)によって切り出した。調製したままのZDNヒドロゲルディスクの直径(r1)および高さ(h1)を測定し、次いで、完全な膨潤のために、37℃の脱イオン水に2日間浸漬させた。対応する平衡化状態の直径(r2)および高さ(h2)を測定した。ESRを、下記の通り計算した。各測定は、3回反復で実行した。
【0107】
【数1】
【0108】
ZDNヒドロゲルの平衡含水率(EWC)を、重量法によって測定した。ZDNヒドロゲルディスク(直径10mmおよび厚さ1mm)を、37℃における平衡に達するまで、脱イオン水中で膨潤させた。平衡化サンプルを取り出し、濾紙上で転がすことによって表面の過剰な水を除去した後、湿潤質量(M)を測定した。次いで、サンプルを液体窒素中で急速凍結させ、完全に乾燥するまで、2日間凍結乾燥させ、乾燥質量(M)を測定した。EWCを、下記の通り計算した。各測定は、3回反復で実行した。
【0109】
【数2】
【0110】
第1のネットワークヒドロゲルを、37℃における平衡に達するまで、脱イオン水中で膨潤させた。液体窒素における急速凍結および2日間の凍結乾燥の後、乾燥質量(M)を得た。第1のネットワークヒドロゲルの質量百分率(MS)を、下記の通り計算した。各測定は、3回反復で実行した。
【0111】
【数3】
【0112】
実施例3
圧縮および引張試験
この実施例では、本発明の代表的な双性イオン二重ネットワーク(ZDN)ヒドロゲルである、pCB/pSB ZDNヒドロゲルの特性を測定するために用いた、圧縮および引張試験を記載する。
【0113】
圧縮および引張試験は、1kNロードセルを有する引張-圧縮機械的試験機(Instron 5543A(Instron Corp.、Norwood、MA))によって実行し、平衡化pCB/pSB ZDNヒドロゲルサンプルの機械的特性を記録した。引張試験については、クロスヘッド速度を10mm分-1に設定した。平衡シートサンプルを、20mm×2mm×0.50mmの寸法を有する長方形小片に切断した。圧縮試験については、クロスヘッド速度を1mm分-1に設定した。平衡管状ロッドサンプルを、直径および高さがそれぞれ5mmおよび3.5~4mmに切断した。平均データは、各サンプルについて5つの試験片を試験することによって取得した。平衡化pCB/pSB ZDNヒドロゲルは、15MPa超の圧縮破壊応力を有しており、圧縮試験によって測定された圧縮ひずみの99%で損傷を受けなかった。平衡化pCB/pSB ZDNヒドロゲルは、引張試験によって測定される、約1MPaの引張破壊応力および300%超の引張破壊ひずみを有していた。
【0114】
実施例4
フィブリノゲン吸着試験
この実施例では、本発明の代表的な双性イオン二重ネットワーク(ZDN)ヒドロゲルである、pCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)の特性を測定するために用いた、フィブリノゲン吸着試験を記載する。
【0115】
ZDNサンプルの非付着特性を検査するために、試験タンパク質としてフィブリノゲン(Fg)を選択した。Fg接着を測定するため、平衡化pCB/pSB ZDNヒドロゲルサンプルをまず、1mLのpH7.4の0.15Mリン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液中の1mg mL-1 Fgによって、1.5時間インキュベートし、続いて、純粋なPBS緩衝液によって5回洗浄した。次いで、サンプルを新しいウェルに移し、1mLのPBS緩衝液中の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート抗フィブリノゲン(1μg mL-1)によって、1.5時間インキュベートした。次いで、純粋なPBS緩衝液によってさらに5回洗浄した後、すべてのサンプルを新しいウェルに移した。次に、0.03%の過酸化水素を含有する、1mg mL-1 o-フェニレンジアミン(OPD)の0.1Mクエン酸リン酸pH5.0溶液を1mL加えた。15分間のインキュベーション後、等体積の1N HClを加えることによって、酵素反応を停止させた。プレートリーダー(Cytation 3(BioTek、Winooski、VT))によって、492nmにおける吸光度値を記録し、組織培養ポリスチレン(TCPS)サンプルの吸光度値に対して正規化した。3つの試験片から、平均データを取得した。平衡化pCB/pSB ZDNヒドロゲルサンプルを試験して、TCPSに対して、10%未満のフィブリノゲン結合レベルを有していた。
【0116】
実施例5
マイクロBCAアッセイによる血清吸着試験
この実施例では、本発明の代表的な双性イオン二重ネットワーク(ZDN)ヒドロゲルである、pCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)の特性を測定するために用いた、マイクロBCAアッセイによる血清吸着試験を記載する。
【0117】
マイクロBCA法によって、ZDNヒドロゲルのヒト血清付着を評価した。PBS中で事前に平衡化したZDNヒドロゲルディスク(直径5mmかつ厚さ1mm)を、24ウェルTCPSにおいて、400μLの非希釈ヒトプール血清に懸濁させ、続いて、37℃で2時間インキュベートした。新しいウェルに移す前に、すべてのサンプルを1mLのPBSによって5回すすいで、解離タンパク質を除去した。次いで、マイクロBCAアッセイを直接行って、ヒドロゲルに吸着されたタンパク質の量を決定し、すべてのサンプルの562nmにおける吸光度値を、プレートリーダーによって記録し、TCPS(96ウェル、対照)の吸光度値に対して正規化した。各サンプルは、3回反復で測定した。
【0118】
実施例6
乳酸デヒドロゲナーゼアッセイによる血小板付着分析
この実施例では、本発明の代表的な双性イオン二重ネットワーク(ZDN)ヒドロゲルである、pCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)の特性を測定するために用いた、乳酸デヒドロゲナーゼアッセイによる血小板付着分析を記載する。
【0119】
接着分析のために用いた血小板は、Sprague Dawley(SD)ラットの血液から新たに収集した。次いで、収集した新鮮な血液を、直ちに200gにおける10分間の遠心分離にかけ、多血小板血漿(PRP)を得た。残留物を、2000gにおける20分間のさらなる遠心分離にかけ、乏血小板血漿(PPP)を入手した。PRPおよびPPPを穏やかに再混合し、最終的な血小板密度を2×108mL-1に調節した。PBS中で事前に平衡化したヒドロゲルディスク(直径5mmかつ厚さ1mm)を、ウェル毎に1つのディスクで24ウェルTCPSに入れ、400μLの最終血小板溶液によって液浸し、37℃で3時間インキュベートした。インキュベート後、ディスクを1mLのPBSによって5回すすぎ、次いで、新しいウェルに移した。接着した血小板の個数を、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)アッセイによって決定した。LDHアッセイについては、すすいだサンプルを24ウェルTCPS中で300μLのPBSおよび10μL 10×溶解緩衝液に浸漬させ、37℃、5%二酸化炭素において、45分間インキュベートした。次いで、50μLの反応混合物を各ウェルに加え、室温において30分間、暗所でインキュベートした。反応を停止させるため、50μLの停止溶液を各ウェルに加え、穏やかにピペット分注することによって混合した。最後に、各ウェルから200μLの混合物を採取し、490nmおよび680nmにおける吸光度を、血小板リーダー(Platelet reader)によって測定した。490nmの吸光度値から680nmの吸光度値を減算することによって、LDH活性を決定した。データを、TCPS(96ウェル、対照)のLDH活性に対して正規化した。各サンプルは、3回反復で測定した。
【0120】
実施例7
細胞付着アッセイ
この実施例では、本発明の代表的な双性イオン二重ネットワーク(ZDN)ヒドロゲルである、pCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)の特性を測定するために用いた、細胞付着アッセイを記載する。
【0121】
ヒドロゲルについての細胞付着アッセイのために、ラット膵臓β細胞であるRIN-m5FおよびネズミDC 2.4樹状細胞を選択した。端的に言えば、PBSで事前に平衡化し、UV滅菌したヒドロゲルディスク(直径5mmかつ厚さ1mm)を個々に、96ウェルプレートのウェルに入れた。対応する培養培地に懸濁したRIN-m5FまたはDC 2.4細胞を、それぞれ細胞1×105個/mLまたは細胞5×104個/mLの密度でヒドロゲルに接種し、37℃で、5%の二酸化炭素を有する加湿雰囲気中、24時間増殖させた。次いで、培地を除去し、PBSによってヒドロゲルを穏やかに洗浄し、PBSによって再液浸した。光学画像化については、サンプル上の細胞接着および細胞のモルフォロジーを、顕微鏡(Nikon Eclipse 80i)を用いて400倍の倍率で観察した。接着した細胞の定量分析については、サンプルを穏やかに新しいウェルに移し、次いで、上に記載したプロトコルに従って、LDHアッセイを行った。すべてのデータを、TCPS(96ウェル、対照)のデータに対して正規化した。各サンプルは、6回反復で測定した。
【0122】
実施例8
オートクレーブ処理による代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲルの滅菌
この実施例では、pCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)を、標準的なオートクレーブ法によって滅菌した。
【0123】
調製したままのpCB/pSB ZDNヒドロゲルを、水またはPBSに平衡まで浸漬させ、次いで、対応する浸漬溶液とともに121℃において30分間滅菌した。次いで、さらなる使用または試験のために、滅菌されたヒドロゲルを室温に冷却した。1、2、または3ラウンドのこのような加熱-冷却オートクレーブ滅菌プロセスを経たヒドロゲルを、それぞれ、ZDN-R1、ZDN-R2、およびZDN-R3と名付けた。これに続く、オートクレーブ処理ZDNヒドロゲルの機械的特性、タンパク質接着、および細胞接着試験は、すべて上に記載したプロトコルに従った。
【0124】
実施例9
代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲルシートのin vivo埋込み
この実施例では、代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)シートのin vivo埋込みを記載する。
【0125】
6~8週齢の雄C57BL/6マウスを、Charles River Labsから購入した。すべての動物実験は、連邦ガイドラインに従って操作し、University of Washington Animal Care and Use Committeeによって承認された。皮下埋込み実験を行い、pCB/pSB ZDNヒドロゲルの異物反応および線維性被膜形成を評価した。細菌感染症を防止するため、正方形pCB/pSB ZDNヒドロゲルディスク(10mm×10mm×1mm)を、埋込みの前にオートクレーブ処理によって滅菌した。同じ形状および寸法を有するpHEMAヒドロゲルを陽性対照として設定し、外科手術の前にUVによって30分間滅菌した。動物の外科手術は、麻酔および無菌条件下で実行した。端的に言えば、各マウスは2つのZDNまたは2つのpHEMAヒドロゲルを、1つのサンプルを各側に、対称に背部に皮下埋込みされた。マウスは、3%イソフルランを用いて麻酔し、剃毛した。切開部が作製される領域を、ヨウ素および70%エタノールを用いて滅菌した。外科手術用はさみを用いて、中央背側表面に長軸方向の切開部(1cm未満の長さ)を作製し、皮下空間への進入路をもたらした。切開部のいずれかの側に、先鈍鉗子によって、ヒドロゲルサンプルの埋込みのための皮下ポケットを作製した。埋込み後、創傷ナイロン縫合糸を用いて切開部を閉じ、鎮痛剤(メロキシカム)を投与した。組織学研究における統計的有意性をもたらすため、各タイプのヒドロゲルの12個の複製を、6体の異なるマウスに埋込みさせた。麻酔から回復するまでマウスをモニタリングし、サンプルを取り出すまで、1週間、4週間、12週間、または24週間収容した。
【0126】
実施例10
代表的なZDNマイクロゲルの調製
この実施例では、本発明の代表的な双性イオン二重ネットワーク(ZDN)マイクロゲルである、pCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)の調製を記載する。
【0127】
本発明のバルクヒドロゲルであるpCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)が、前進するにつれて微細になるmicronic鋼メッシュ(TWP;500μmから25μmまでの細孔)を通じて押出しされる、ステンレス鋼ピストンおよびシリンダー機器を用いて、ZDNマイクロゲルを生成した。サイズの均一化のため、マイクロゲルには最終メッシュサイズを5回通過させた。
【0128】
実施例11
Ulva胞子の付着および接着試験
この実施例では、本発明の代表的な双性イオン二重ネットワーク(ZDN)ヒドロゲルである、pCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)の特性を測定するために用いた、ulva胞子の付着および接着試験を記載する。
【0129】
胞子の付着。標準的な方法によって、U.linzaの成熟植物から遊走子を入手した。サンプルを収容したquadriPERMディッシュの個々の区画に、遊走子の懸濁液(15ml;7.5×10胞子ml-1)を加えた。約20℃の暗所において45分後、顕微鏡下でスライドを観察して、表面に何らかの沈殿があるかを確認した。次いで、海水下で前後に動かすことによってサンプルを洗浄し、非沈殿(すなわち、遊泳している)胞子を除去した。サンプルが、空気と水との界面を動かないように注意した。顕微鏡を通じてサンプルを再び見て、湿潤サンプルにおける胞子のカウントを行った。蛍光顕微鏡に付属している画像分析システムを用いて、3つの複製スライドのそれぞれにおいて、表面に付着した遊走子の密度をカウントした。胞子は、クロロフィルの自家蛍光によって可視化された。各スライドにおいて、30視野(それぞれ、0.15mm)についてカウントを行った。
【0130】
胞子の付着の強度。湿潤状態におけるカウント後、コーティングに付着した胞子は3時間齢であった(標準的なアッセイにおける45分と比較される)。付着した胞子を有するスライドを、特別に設計された乱流水チャネルにおいて、52Paのせん断応力に曝露した。次いで、スライドを、上に記載したように、湿潤状態において再カウントした。
【0131】
実施例12
N.incerta珪藻の付着および接着試験
この実施例では、本発明の代表的な双性イオン二重ネットワーク(ZDN)ヒドロゲルである、pCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)の特性を測定するために用いた、N.incerta珪藻の付着および接着試験を記載する。
【0132】
珪藻の付着。N.incertaの細胞を、250mlコニカルフラスコ中に収容されたF/2培地において培養した。3日後、細胞は対数期増殖にあった。細胞を新しい培地中で3回洗浄してから収穫し、希釈して、およそ0.2μg ml-1のクロロフィルa含有量を有する懸濁液を得た。実験台において約20℃で、15mlの懸濁液を収容した個々のquadriPERM(登録商標)ディッシュ中、各サンプルの3つの複製のコーティングスライド上で、細胞を沈殿させた。2時間後、オービタルシェーカー(60rpm)上の5分間の振とうにスライドを曝露し、続いて、海水中の浸水洗浄によって、付着していない細胞を除去した(液浸プロセスは、サンプルが空気と水との界面を通過することを回避した)。まだ湿っている間に、蛍光顕微鏡に付属している画像分析システムを用いて、各タイプの3つのスライドをカウントした。細胞は、クロロフィルの自家蛍光によって可視化された。各スライドにおいて、30視野(それぞれ、0.56mm)についてカウントを行った。
【0133】
珪藻の付着の強度。カウントした後、付着した細胞を有するスライドを、水チャネルにおいて5分間、26Paのせん断応力に曝露した。付着したままであった細胞の個数を、上に記載したように湿潤でカウントした。
【0134】
実施例13
代表的なpCB/pSB ZDNヒドロゲルコーティングの調製
この実施例では、本発明の代表的な双性イオン二重ネットワーク(ZDN)ヒドロゲルコーティングである、pCB/pSB ZDNヒドロゲル(1-4-0.1/4-0.1-0.01)コーティングを調製するための単一ポット法を記載する。
【0135】
単一ポット手順は、単一の容器内で、双性イオンpCBポリマー、Ca2+イオン、SBモノマー、MBAA架橋剤、1173光反応開始剤、およびDI水を、単純に混合することによって実施した。pCBはCa2+イオンと相互作用(イオン結合)して第1のネットワークを形成し、続いて、窒素ブランケットにおいて、305nmの波長および6ワットの出力を有するUVに6時間曝露して、SBの光開始重合を行った。調製したままのZDNヒドロゲルをDI水に液浸させたところ、膨潤率V2e/Vは2未満であり、ここで、Vは調製したままの状態におけるZDNヒドロゲルの体積であり、V2eはDI水に平衡まで浸漬させたZDNヒドロゲルの体積である。
【0136】
ハイブリッド(物理的および化学的)架橋pCB/pSB ZDNヒドロゲルが、単一ポット法によって首尾よく形成された。Ca2+に加えて、Mg2+、Cu2+、およびFe3+をそれぞれ用いてpCBと相互作用させ、イオン結合によって首尾よく第1のネットワークが形成された。
【0137】
実施例14
代表的なpTMAO/pSB ZDNヒドロゲルの調製および特徴
この実施例では、本発明の代表的な双性イオン二重ネットワーク(ZDN)ヒドロゲルである、pTMAO/pSB ZDNヒドロゲルの調製および特徴を記載する。
【0138】
pTMAO/pSB ZDNヒドロゲルは、2ステップ逐次フリーラジカル重合によって合成した。第1のステップにおいて、透明シート型または管状ロッド型において、305nmの波長および6ワットの出力を有する紫外線(UV)照射下、窒素ブランケットにおいて6時間、1mのTMAO、4mol%の架橋剤N,N-メチレンビス(アクリルアミド)(MBAA)、および0.1mol%の開始剤2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(1173)(双方はTMAOモノマーに対する)を用いた光重合によって、第1のネットワークであるポリ(トリメチルアミン-N-オキシド)(pTMAO)ヒドロゲルを合成した。第2のステップにおいて、4mの[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル-(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド(SB)、0.1mol%のMBAA、および0.01mol%の開始剤1173(双方はSBモノマーに対する)を含有する第2のネットワークの前駆体溶液に、2日間、調製したままのpTMAOヒドロゲルを液浸した。第2のネットワークの前駆体溶液を含有する、十分に膨潤した第1のネットワークヒドロゲルを、窒素ブランケットにおいて、305nmの波長および6ワットの出力を有する、6時間のUV照射によって、さらに重合した。この2ステップ合成の後、調製したままのpTMAO/pSB ZDNヒドロゲルを、膨潤平衡に達するまで、水溶液中に1日液浸した。平衡化pTMAO/pSB ZDNヒドロゲルは、DI水中でわずか7%の体積増加を伴う、調製したままの状態におけるpTMAO/pSB ZDNヒドロゲルの体積増加と比較して低い膨潤挙動を有していた。
【0139】
圧縮および引張試験は、10kNロードセルを有する引張-圧縮機械的試験機(Instron 5543A(Instron Corp.、Norwood,MA))によって実行し、平衡化pTMAO/pSB ZDNヒドロゲルサンプルの機械的特性を記録した。引張試験については、クロスヘッド速度を10mm分-1に設定した。平衡シートサンプルを、20mm×2mm×0.50mmの寸法を有する長方形小片に切断した。圧縮試験については、クロスヘッド速度を1mm分-1に設定した。平衡管状ロッドサンプルを、直径および高さがそれぞれ5mmおよび3.5~4mmに切断した。平均データは、各サンプルについて5つの試験片を試験することによって取得した。平衡化pTMAO/pSB ZDNヒドロゲルは、10MPa超の圧縮破壊応力を有しており、圧縮試験によって測定された圧縮ひずみの95%で損傷を受けなかった。
【0140】
例示的な実施形態を示し、記載してきたが、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、その中で様々な変更をなすことができると理解されるであろう。
【0141】
独占的な財産権または特権を主張する本発明の実施形態を、以下に定義する。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図15C
図16